画像合成装置及び画像合成方法
【課題】被検体におけるビームの吸収の影響が少ない画像合成装置及び画像合成方法を提供する。
【解決手段】実際に検出される前方回折ビーム強度及び回折ビーム強度は、被検体Saでの吸収の影響が含まれるが、これらのビームにおける被検体を通過したときの吸収による減衰率が同じであると仮定して、この減衰率と前方回折ビーム強度と回折ビーム強度で表される、減衰の影響を含まない前方回折ビーム強度及び回折ビーム強度により、被検体Saを通過した際のビームの屈折角θ0を求め、その屈折角θ0を用いて被検体Saの合成画像を得る。
【解決手段】実際に検出される前方回折ビーム強度及び回折ビーム強度は、被検体Saでの吸収の影響が含まれるが、これらのビームにおける被検体を通過したときの吸収による減衰率が同じであると仮定して、この減衰率と前方回折ビーム強度と回折ビーム強度で表される、減衰の影響を含まない前方回折ビーム強度及び回折ビーム強度により、被検体Saを通過した際のビームの屈折角θ0を求め、その屈折角θ0を用いて被検体Saの合成画像を得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体にビームを照射し、その被検体により屈折されたビームを用いて、被検体の合成画像を得る画像合成装置及び画像合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1895年のレントゲンによるX線の発見以来、X線による画像診断は医学の進歩へ多大な貢献をしてきた。とくに、ハウンズフィールドらによるX線CTは、診断精度を飛躍的に高めた点で画期的な発明であった。以降、X線CT技術は現在も着実な発展を遂げており、サブミリメートル空間分解能の実現をはじめ、実時間で3次元断層情報を取得できる4次元CTも実用段階に到達しつつある。
【0003】
しかしながら、従来のX線撮像技術には原理的な限界が存在する。現在臨床で用いられているX線撮像技術は、物質により固有な吸収特性を利用してコントラストを生成している。X線の吸収は、骨を構成するCaのような高い原子番号の元素に対しては十分なコントラストを生成するのに有用であるが、軟部組織を構成するC、H、Oのような低原子番号の元素に対しては著しく弱い。したがって、軟部組織においては従来の吸収コントラストによる撮影では陰影がつきにくい。そのため、マンモグラフィの読影の際、病変の見落としが著しく多いことが指摘されている。これに対して、硬X線領域では、屈折現象は吸収の約1000倍の感度があるため、軟部組織においても高いコントラストが期待できる。
【0004】
一方、放射光源の開発により、高品質な平行単色X線の利用が容易になったため、従来のX線管球を光源として撮像された画像に比し、著しく高精細な画像を取得できるようになってきている。また、放射光X線の優れた特性を利用することで、X線の屈折現象によりコントラストを生成する撮像技術の研究開発も精力的に行われるようになってきている。
【0005】
その中でもX線の回折エンハンスト(DEI、Diffraction−Enhanced Imaging)法や、X線の暗視野(DFI、Dark−Field Imaging)法は、被写体による屈折X線をSi単結晶薄板から作製されるアナライザにより弁別することで、低原子番号の元素から構成される被写体に対しても、吸収コントラストに比べ格段に高いコントラストでの撮像を可能にした。現在、マンモグラフィやリウマチ性骨関病変の観察などの臨床応用へ向けた研究も精力的に行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2006/090925号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来のDEI法及びDFI法により得られる画像は、被検体での吸収の影響を受けているという問題がある。このため、被検体から得られるX線の強度が減少し、正しい屈折率を求めることができず、定量的診断の困難化という問題をもたらす。その結果、投影上の正しい屈折情報が得られず、屈折率分布CT像を求めることができない。
【0008】
DEI法においては従来、角度アナライザを、ロッキングカーブより求めた上の2つの角度(コントラストから角度情報を最大抽出できるロッキングカーブ上の反射点)に保持して、画像を2回撮影し、この吸収の影響を排除している。しかし、この手法は、被検体に対するX線の被曝量が多くなる。また、角度アナライザの角度を変えて撮影する際に、被検体が移動すると正しい合成画像が得られない。DFI法においては、バックグラウンドの影響が小さいため、従来ロッキングカーブより求めた2つの角度における画像の撮影は行われておらず、吸収に対する対策はなされていない。
【0009】
本発明の課題は、被検体に対するビームの被曝量を増加させることなく、被検体の移動の影響が小さく、且つ被検体におけるビームの吸収の影響が少ない画像合成装置及び画像合成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明は、上述の課題を解決するために、被検体に照射された平行なビームを、前方回折ビーム及び回折ビームに分離する角度アナライザと、前記角度アナライザにより分離された前記前方回折ビームの強度である第1前方回折ビーム強度、及び前記回折ビームの強度である第1回折ビーム強度をそれぞれ検出する検出装置と、前記第1前方回折ビーム強度と前記第1回折ビーム強度とにおける、前記被検体を通過する際の減衰率が同じであると仮定し、前記第1前方回折ビーム強度及び前記第1回折ビーム強度を前記減衰率により補正して得られる、減衰の影響を排除した第2前方回折ビーム強度及び第2回折ビーム強度を用いて、前記角度アナライザの特性を示す、前方回折ビームの強度と屈折角との関係を表す前方回折曲線、及び回折ビームの強度と屈折角との関係を表す回折曲線より、前記ビームにおける前記被検体による屈折角を求め、該当する屈折角から前記被検体の画像合成を行う演算装置と、を備える画像合成装置を提供する。
【0011】
(2)また、本発明は、上述の課題を解決するために、被検体に照射された平行なビームを、角度アナライザにより前方回折ビーム及び回折ビームに分離し、前記角度アナライザにより分離された前記前方回折ビームの強度である第1前方回折ビーム強度、及び前記回折ビームの強度である第1回折ビーム強度をそれぞれ検出し、前記第1前方回折ビーム強度と前記第1回折ビーム強度とにおける、前記被検体を通過する際の減衰率が同じであると仮定し、前記第1前方回折ビーム強度及び前記第1回折ビーム強度を前記減衰率により補正して得られる、減衰の影響を排除した第2前方回折ビーム強度及び第2回折ビーム強度を用いて、前記角度アナライザの特性を示す、前方回折ビームの強度と屈折角との関係を表す前方回折曲線、及び回折ビームの強度と屈折角との関係を表す回折曲線より、前記ビームにおける前記被検体による屈折角を求め、該屈折角から前記被検体の画像合成を行う画像合成方法を提供する。
【0012】
実際に検出される第1前方回折ビーム強度及び第1回折ビーム強度は、被検体での吸収の影響が含まれる。しかし、本発明では、第1前方回折ビーム強度と第1回折ビーム強度とにおける被検体を通過したときの吸収によるビーム減衰率が同じであると仮定して、この減衰率と第1前方回折ビーム強度と第1回折ビーム強度で表される、減衰の影響を含まない第2前方回折ビーム強度及び第2回折ビーム強度により、被検体を通過した際のビームの屈折角を求め、その屈折角により被検体の合成画像を得る。したがって、被検体におけるビームの吸収の影響を含まない画像を得ることができる。また、従来、DEIの場合、吸収の影響は被検体に対するビームを2度照射することにより排除していたが、本発明では1度の照射で吸収の影響を排除することができる。このため、従来の1/2の被曝量で吸収の影響を含まない画像を得ることができる。さらに、吸収の影響を排除するために被検体にビームを2度照射する従来の場合、被検体が移動すると画像にブレが生じるが、本発明の場合、1度の照射で合成画像を得ることができるので、このように画像のブレを生じない。
【0013】
(3)前記演算装置は、前記前方回折曲線をn次の多項式で近似した前方回折曲線と前記回折曲線をn次の多項式で近似した回折曲線を求めた上で、前方回折および回折において被写体を透過したX線は同等の減衰を被写体から受けることを前提条件とすると,両者の観測強度が満たすべきn次方程式を導出することができる.この方程式を解くことで前記屈折角を求めることができる。
【0014】
(4)前記角度アナライザは、透過型角度アナライザを用いてもよい。この場合、暗視野による合成画像を得ることができる。また、前記角度アナライザは、反射型角度アナライザを用いてもよい。
【0015】
(5)前記ビームは、例えば、電磁波又は中性子線である。
【0016】
(6)前記検出装置は、前記角度アナライザにより分離された前記前方回折ビームを検出する第1検出装置と、前記回折ビームを検出する第2検出装置とを有することができる。検出装置を2つ設けることにより、それぞれのビームを分けて検出することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、被検体におけるビームの吸収の影響が少ない画像合成装置及び画像合成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態の画像合成装置の概略図である。
【図2】第1結晶と第2結晶の強度曲線を示すグラフである。
【図3】X線のブラッグケース(第1結晶)での回折強度曲線を示すグラフである。
【図4】X線形状で第1結晶と第2結晶の強度曲線のコンボリューションを行った強度曲線を示すグラフである。
【図5】(a)は角度アナライザの前方回折強度特性を示す前方回折強度曲線であり、(b)は回折強度特性を示す回折曲線である。
【図6】入射X線の試料内経路Lを示す図である。
【図7】基本的なCT構成を示す図である。
【図8】シミュレーションで得られた投影像からCT再構成を行った画像である。
【図9】CT画像の縦の1ラインの屈折率実数部をグラフにしたものである。
【図10】被検体を第1実施形態の手法を用いて実際に撮影した写真である。
【図11】第2実施形態の画像合成装置の概略図である。
【図12】第3実施形態の画像合成装置の概略図である。
【図13】第3実施形態の変形例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、被写体に照射する平行ビームがX線である場合を例にして、X線の暗視野(DFI、Dark−Field Imaging)法を用いた本発明の第1実施形態について説明する。なお、平行ビームとしては、波の性質を有し、回折するビームであればX線に限定されず、可視光等のその他の電磁波、中性子線であってもよい。
【0020】
(装置の説明)
図1は、第1実施形態の画像合成装置1の概略図である。画像合成装置1は、撮像のための光学系10と演算装置20とを備える。光学系10は、非対称ブラッグケース結晶Si(440)である第1結晶(コリメータ)11と、対称ラウエケース結晶Si(440)である第2結晶(角度アナライザ)12と、それらに対してX線の進む方向に配置された2台のX線カメラ13,14と、被検体Saを回転させる回転ステージ15とを備える。演算装置20は、X線カメラ13,14のそれぞれに接続され、X線カメラ13,14から得られたX線の情報に基づき、後述する演算を行い、被検体Saの画像を合成する。なお、結晶の指数(440)は一例であって、これに限定されず、他の適格な指数であってもよい。
【0021】
第1結晶11と第2結晶12の回折面は平行になっている。被検体Saは、第1結晶11と第2結晶12との間に配置された回転ステージ15上に配置される。本実施形態では、入射するX線(図1中矢印Xで表す)のエネルギーは34.8keVに想定している。X線は、第1結晶11により反射されることで、平面波に近くなり視野が拡大される。X線は、次に回転ステージ15上の被検体Saに入射し、被検体Saで一部吸収及び屈折され、第2結晶12に運ばれる。ここで前方回折波Aと回折波Bに分かれ、それぞれのCCDカメラ13及び14により同時に検出される。
【0022】
図2は第2結晶12の前方回折理論曲線Aと回折理論曲線Bを示す。これらの理論曲線A,Bは、第2結晶12に入射するビームの角度広がりは無いと仮定して計算されたものである。しかし、第1結晶11で反射したX線は、平面波に近いもののわずかに広がるため、第2結晶12に入射するビームは、実際には、わずかな角度広がりを有している。図3はX線のブラッグケースでの回折強度曲線であり、その広がりが、〜100分の6秒台の場合を一例として示したものである。このように第2結晶12に入射するビームは角度広がりを有するため、第二結晶12の前方回折曲線Aと回折曲線Bは、現実には、図3で示す第1結晶11で反射を通過したX線の強度曲線(論値)と、図2で示す第2結晶12を通過したX線の強度曲線(理論値)とのコンボリューションとなる。図4は、その結果を示したものである。なお、測定されたX線強度から屈折角度θ0を求める際に、強度曲線は振動成分が除去されて滑らかになる必要があるため、入射X線は、わずかに角度広がりを持っている方が望ましい。
【0023】
(撮像原理)
図5(a)は角度アナライザ12の前方回折波Aの強度特性を示す前方回折強度曲線21であり、図5(b)は回折波Bの強度特性を示す回折強度曲線22である。それぞれ、横軸が回折角度θ、縦軸がX線の強度Iを示す。被検体SaでのX線の屈折角度θ0を推定するためには、被検体Sa内での吸収による強度減衰がなければ、CCDカメラ13で取得されたX線強度Iを前方回折強度曲線21又は回折強度曲線22に当てはめることで求めることができる。なお、前方回折、回折の役割は逆転してもよい。
【0024】
しかし、図6のように入射X線は被検体Saの内部の経路Lを通る際に減衰率exp(−∫Lμdl)で強度が減衰する。そのため、図5で示すように、実際に測定される前方回折強度IFdetはIF(θ0)exp(−∫Lμdl)となり、回折強度IDdetはID(θ0)exp(−∫Lμdl)となる。それぞれの強度曲線21,22において、これらの実測強度IFdet、IDdetにより屈折角度を求めると、現実にはθ0となるところ、θF、θDと誤った屈折角度が取得される。
【0025】
そこで、被写体内の減衰率exp(−∫Lμdl)は前方回折及び回折で等しいことに着目し、連立方程式を導き、θ0を推定する。実際には、それぞれの強度曲線21,22をN次多項式で近似し、ニュートン法を用いて解く。以下では、2次多項式での近似の例を示す。それぞれの強度曲線21,22は次の式で表される。
【0026】
【数1】
【0027】
IF(θ)は前方回折強度曲線21、ID(θ)は回折強度曲線22を表す。実際の屈折角度θ0は、
【数2】
を満たす。測定で得られる強度IFdet及びIDdetと本来の強度IF(θ0)及びID(θ0)の関係は、減衰率exp(−∫Lμdl)を用いると、それぞれ以下の式で与えられる。
【0028】
【数3】
【0029】
(3)〜(6)から次の方程式が得られる。
【数4】
この方程式の解を解くことで、実際の屈折角度θ0が得られる。ここでの例は、2次方程式を解くだけであるので解析的な解θ0が推定できる。
【0030】
近似多項式の次数を高くすれば、それだけ近似の精度は高くなる。N次多項式の場合、式(1)は以下のようになる。
【数5】
また、式(7)は以下のようになる。
【数6】
【0031】
このように求めたθ0により、以下の計算を行う。X線の屈折角θ0は、エレメンタル(elemental)屈折によるX線ビーム経路Sにわたっての積分として以下の式で計算される。
【0032】
【数7】
ここに、
【数8】
は、位置rにおける屈折率n(r)に対して
【数9】
の関係にある局所的屈折率実数部である(以下、適宜「局所的屈折率実数部」という)。
φ(r)は、X線ビーム方向と屈折率勾配
【数10】
との間の角度、すなわちX線進行方向と「局所的屈折率実数部」の微分との間の角度である。
【0033】
この積分では、物体内のX線経路Sは、X線領域では、「局所的屈折率実数部」が10−5以下であるという事実を考慮すると、直線で近似することができる。
【0034】
式(8)は、CT再合成に対しては十分でない。というのは、式(8)は2つの未知関数、すなわち「屈折率実数部勾配」の絶対値とφ(r)とを有し、これらを独立に求めることができないからである。
【0035】
「局所的屈折率実数部」の値が物体の両側で等しいので、これらの間の差は以下のように常に零である。
【数11】
【0036】
式(9)に複素単位iを乗算し、式(8)に加算するならば、式(8)及び(9)は、以下に示すように複素形式で表わすことができる。
【数12】
【0037】
この式は、CT再合成式の基礎として役立つ。図7に、基本的なCT構成を示す。X線中に被検体Saが回転可能に置かれる。Θは物体12の初期位置と現在位置(点線で示す)との間の角度を、tはX線に垂直な投影座標軸を、屈折角分布θ0(Θ,t)は屈折角についての情報を有する投影を示している。
【0038】
一般的なCT法によれば、物体の角度位置Θ及び空間座標tについての情報として、屈折角についての情報を得ることが必要である。したがって、式(10)による数学的処理の後に、CT再合成のためのアルゴリズムを、次式のように表わすことができる。
【0039】
【数13】
【0040】
ここに、積分経路Sは、直線xcosΘ+ysinΘ=tである。
式(11)は、CT再合成の結果が、屈折率場の勾配であることを示している。この式(11)は、吸収コントラストに基づくCT再合成のための式に非常に類似していることに気付くであろう。違いは、入力関数が、屈折コントラストの場合にはθ0(Θ,t)exp(iΘ)であるのに対し、吸収コントラストの場合には入力関数はlog(I(Θ,t)/Io)である点、再合成されるべき関数が、屈折コントラストの場合、
【数14】
であるのに対し、吸収コントラストの場合、
μ(r)
である点である。
【0041】
さらに、屈折コントラストの場合と吸収コントラストの場合との間には、重要な1つの違いがある。吸収コントラストに基づくCT合成のための式において、入力関数及び出力関数は、実数空間にあるが、屈折コントラストに基づくCT合成は、複素数空間における関数を利用している。このことは、吸収コントラストに基づくCTアルゴリズムを、屈折コントラストの場合には採用できず、オリジナルなアルゴリズム及びソフトウェアを必要とすることを意味している。
【0042】
式(11)の構成の故に、屈折コントラストに基づくCTアルゴリズムの数学的形式は、吸収コントラストの場合に用いられるアルゴリズム(いわゆるFiltered Backprojection method)と同じである。基本的に、数学的形式は、4つのステップよりなる。すなわち、
【0043】
i)入力関数θ0(Θ,t)exp(iΘ)のフーリエ変換(多くの場合、“サイノグラム(sinogram)”と呼ばれる):
【数15】
【0044】
ii)フーリエ変換された関数PΘ(ω)のフィルタリング:
【数16】
ここに、b(ω)は、フィルタリング関数である。CT再合成に用いられる多くのフィルタリング関数がある。しかし、吸収コントラストに基づくCTに普通用いられるフィルタリング関数は、屈折コントラストの場合にほとんど適用できない。というのは、これらフィルタリング関数のすべては、高周波成分を抑制して、低周波成分を強化するからである。これは、吸収コントラストの場合には、リーズナブルである。というのは、大半の有用な情報が低ドメイン(low domain)に含まれ、高周波成分のほとんどがノイズよりなるからである。対照的に、屈折コントラストの場合には、高次フーリエ成分が、重要な役割をはたし、フィルタリング関数によって抑制されない。
【0045】
iii)フィルタリングされた関数の後方フーリエ変換
【数17】
得られた関数QΘ(t)は、フィルタリングされたサイノグラムとして知られている。
【0046】
iv)実数空間へのフィルタリングされたサイノグラムの後方投影(Backprojecton)
【数18】
ここに、r≡(x,y)は、tに相当する。t=xcosΘ+ysinΘである。このアルゴリズムは、式の連続形式に対して与えられる。しかし、あらゆる実際的なアプリケーションにおいて、関数θ0(Θ,t)は、特定の点Θm及びtnにおいてのみ知られている。したがって、個別形式のアルゴリズムを、実際の計算に用いなければならない。
【0047】
屈折コントラストに基づくCT再合成式(11)は、次のことを示している。すなわち、再合成される関数は、
【数19】
であり、大半のユーザは勾配よりも
【数20】
の形での結果を望んでいる。物理的値を計算するためには、始めにCT再合成を実行して、次に、スカラ場勾配の特性
【数21】
を用いて、
【数22】
から
【数23】
を形成する。
【0048】
しかし、
【数24】
は、CT再合成アルゴリズム(式15参照)のステップ(iv)における演算誤差の故に、厳密には満たされない。このことは、
【数25】
の値が、積分経路の選択に依存し、その結果、種々の積分経路に沿って2つ以上の積分式(16)を計算し、最も理想的な結果として、それらの平均を用いることを必要とすることを意味している。この問題を避けるために、
【数26】
を再合成する他の方法を用いた。フィルタリングされた投影式(15)の後方投影の前に、勾配−場変換を行うことができる。というのは、フィルタリングされたサノイグラムQΘ(t)の物理的意味は、
【数27】
の投影である。したがって再合成アルゴリズムのステップ(iv)において、新しい関数
【数28】
を、関数QΘ(t)の代わりに用いる。この変換の後、式(15)の再合成された関数は、勾配ではなく、屈折率そのものである。再合成アルゴリズム内に組み込まれた(built−in)勾配−場変換は、再合成後に実行される変換に対して特定の利点を有する。まず第1に、積分式(17)は、表面(x,y)上の曲線に対して実行される積分式(16)とは対照的に1次元である。このことは、積分を数学的に容易にし、演算的に安価にする。
第2に、
【数29】
は、式(14)の被積分関数中の項|ω|によるアルゴリズムのステップ(iv)の前に、厳密に有効である。式(7)は、関数QΘ(t)の平均値が零に等しいことを保証する。
【0049】
(実施例1:シミュレーションによる有効性の検証)
以上の式を用いて、DFI法においてシミュレーションを用いて有効性を検証した。このシミュレーションでは、θ0の計算において6次多項式を用いて近似した。このときは、解析的な解は得られないのでニュートン法を用いて解いた。この際、初期値には、IFdet及びIDdet近傍を1次式で近似した場合の解を用いた。
【0050】
この手法の有効性を評価するために、X線(入射エネルギー:34.8keV)の幾何光学に基づいたシミュレーターを開発し撮像実験を行った。試料は、直径20mmの円柱の中に直径4mmの円柱を2本とその周りに小球をランダムに配置した。複素屈折率は、水・脂肪・乳腺を想定した。図8は、シミュレーションで得られた投影像からCT再構成を行ったものである。それぞれ、吸収補正なし、試料全体が脂肪であると仮定して脂肪の吸収係数で補正、本提案で補正を表す。補正なしでは内部の円柱と球のコントラストはほとんどつかない。脂肪の吸収係数で補正を行うと、円の回りは補正がうまくいっていないものの全体的にコントラストが高い結果が得られる。これは、水・脂肪・乳腺の間で吸収係数が近いためである。本提案による補正では、ほぼ完全な屈折CT像が得られる。図9は、CT画像の縦12.5mm目の1ラインの
をグラフにしたものである。本手法は、定量性においても本来の屈折率に迫る結果となった。
【0051】
(実施例2:ヒト乳ガン組織の3次元画像)
図10は、準備した被検体Saを本実施形態の手法を用いて実際に撮影した写真である。
被検体Saは、ヒトDCIS乳がんであり、国立病院機構名古屋医療センターから借用した。サイズは25mm角で厚さは33mmで5%ホルマリン浸漬したものである。この被検体Saを、撮影時に回転させたりした時に、ずれたりしないように取り扱いしやすくする目的で、直径35mmのテフロン(登録商標)製円筒に挿入した。テフロン(登録商標)の厚さは0.05mmで、標本と円筒の隙間はアガロースで満たした。なお、この空隙を埋めるには、アルコールや寒天を用いてもよい。この円筒に挿入された被検体Saを回転ステージ15としての神津精機(株)社製ゴニオメーター上に載置し、図1に示す位置に配置した。ゴニオメーター15を回転させることにより0.2度毎で900枚、被検体Saの撮影を行った。X線は、35keVで、108光子/mm2/秒とした。CCDカメラは英国Photonic Science社製の「X−Ray VHR2、 60mm」を使用した。本方法で得られた画像データを、演算装置20としてのVGStudio社製VGStudioMAXを使用した。
図示するように、本実施例によると、コントラストの高い被検体写真を得ることが出来た。
【0052】
(第2実施形態)
以下、X線の回折エンハンスト(DEI、Diffraction−Enhanced Imaging)法を用いた本発明の第2実施形態について説明する。図11に第2実施形態の画像合成装置の概略図を示す。第1実施形態と第2実施形態の異なる点は、第2結晶(角度アナライザ)112が、反射型角度アナライザである点である。
第2実施形態において、X線は回転ステージ115上の被検体Saに入射し、被検体Saで吸収及び屈折され、第2結晶112に運ばれる。ここで前方回折波Aと反射回折波Bに分かれ、それぞれのCCDカメラ113及び114により同時に検出される。回折角度θ0の求め方、及びそれを用いた画像合成方法は第1実施形態と同様である。
【0053】
(第3実施形態)
以下、X線の暗視野(DFI、Dark−Field Imaging)法を用いた本発明の第3実施形態について説明する。図12に第3実施形態の画像合成装置の概略図を示す。第1実施形態と第3実施形態の異なる点は、CCDカメラ130が、1台である点である。すなわち、前方回折強度曲線と回折強度曲線とは、1台のCCDカメラ130で同時に検出される。回折角度θ0の求め方、及びそれを用いた画像合成方法は第1実施形態と同様である。このようにCCDカメラ130を1台とすることにより、画像合成装置1を全体として安価に構成することができる。
また、図13は、第3実施形態の変形例で、CCDカメラ130は1台であるが、中央部で折り曲げ角度調整可能となっている。この変形例によると、前方回折波Aと反射回折波BがそれぞれCCDカメラ130に垂直に入射するので、その後の演算処理が容易となる。
【0054】
以上、本実施形態の利点をまとめると、以下の通りである。
(1)吸収コントラストでは識別不可能な軟部組織を、屈折X線を用いて高コントラストでCT撮像できる。
(2)1測定点あたり1回の照射で、吸収情報と屈折情報を分離して取得できる。したがって、吸収と屈折の2つのCTが取得でき、それぞれ定量的な診断が可能である。
(3)1回照射での撮像のため、被曝量をDEI法に比べ1/2以下に低減できる。
(4)アナライザを用いてデータを取得するため、散乱線の影響がなく高い空間分解能を実現できる。
【符号の説明】
【0055】
1,100:画像合成装置、11,111:第1結晶(平行化手段)、12,112:第2結晶(角度アナライザ)、13,14,113,114,130:CCDカメラ、20,120:演算装置、A:前方回折波、B:回折波、Sa:被検体
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体にビームを照射し、その被検体により屈折されたビームを用いて、被検体の合成画像を得る画像合成装置及び画像合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1895年のレントゲンによるX線の発見以来、X線による画像診断は医学の進歩へ多大な貢献をしてきた。とくに、ハウンズフィールドらによるX線CTは、診断精度を飛躍的に高めた点で画期的な発明であった。以降、X線CT技術は現在も着実な発展を遂げており、サブミリメートル空間分解能の実現をはじめ、実時間で3次元断層情報を取得できる4次元CTも実用段階に到達しつつある。
【0003】
しかしながら、従来のX線撮像技術には原理的な限界が存在する。現在臨床で用いられているX線撮像技術は、物質により固有な吸収特性を利用してコントラストを生成している。X線の吸収は、骨を構成するCaのような高い原子番号の元素に対しては十分なコントラストを生成するのに有用であるが、軟部組織を構成するC、H、Oのような低原子番号の元素に対しては著しく弱い。したがって、軟部組織においては従来の吸収コントラストによる撮影では陰影がつきにくい。そのため、マンモグラフィの読影の際、病変の見落としが著しく多いことが指摘されている。これに対して、硬X線領域では、屈折現象は吸収の約1000倍の感度があるため、軟部組織においても高いコントラストが期待できる。
【0004】
一方、放射光源の開発により、高品質な平行単色X線の利用が容易になったため、従来のX線管球を光源として撮像された画像に比し、著しく高精細な画像を取得できるようになってきている。また、放射光X線の優れた特性を利用することで、X線の屈折現象によりコントラストを生成する撮像技術の研究開発も精力的に行われるようになってきている。
【0005】
その中でもX線の回折エンハンスト(DEI、Diffraction−Enhanced Imaging)法や、X線の暗視野(DFI、Dark−Field Imaging)法は、被写体による屈折X線をSi単結晶薄板から作製されるアナライザにより弁別することで、低原子番号の元素から構成される被写体に対しても、吸収コントラストに比べ格段に高いコントラストでの撮像を可能にした。現在、マンモグラフィやリウマチ性骨関病変の観察などの臨床応用へ向けた研究も精力的に行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2006/090925号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来のDEI法及びDFI法により得られる画像は、被検体での吸収の影響を受けているという問題がある。このため、被検体から得られるX線の強度が減少し、正しい屈折率を求めることができず、定量的診断の困難化という問題をもたらす。その結果、投影上の正しい屈折情報が得られず、屈折率分布CT像を求めることができない。
【0008】
DEI法においては従来、角度アナライザを、ロッキングカーブより求めた上の2つの角度(コントラストから角度情報を最大抽出できるロッキングカーブ上の反射点)に保持して、画像を2回撮影し、この吸収の影響を排除している。しかし、この手法は、被検体に対するX線の被曝量が多くなる。また、角度アナライザの角度を変えて撮影する際に、被検体が移動すると正しい合成画像が得られない。DFI法においては、バックグラウンドの影響が小さいため、従来ロッキングカーブより求めた2つの角度における画像の撮影は行われておらず、吸収に対する対策はなされていない。
【0009】
本発明の課題は、被検体に対するビームの被曝量を増加させることなく、被検体の移動の影響が小さく、且つ被検体におけるビームの吸収の影響が少ない画像合成装置及び画像合成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明は、上述の課題を解決するために、被検体に照射された平行なビームを、前方回折ビーム及び回折ビームに分離する角度アナライザと、前記角度アナライザにより分離された前記前方回折ビームの強度である第1前方回折ビーム強度、及び前記回折ビームの強度である第1回折ビーム強度をそれぞれ検出する検出装置と、前記第1前方回折ビーム強度と前記第1回折ビーム強度とにおける、前記被検体を通過する際の減衰率が同じであると仮定し、前記第1前方回折ビーム強度及び前記第1回折ビーム強度を前記減衰率により補正して得られる、減衰の影響を排除した第2前方回折ビーム強度及び第2回折ビーム強度を用いて、前記角度アナライザの特性を示す、前方回折ビームの強度と屈折角との関係を表す前方回折曲線、及び回折ビームの強度と屈折角との関係を表す回折曲線より、前記ビームにおける前記被検体による屈折角を求め、該当する屈折角から前記被検体の画像合成を行う演算装置と、を備える画像合成装置を提供する。
【0011】
(2)また、本発明は、上述の課題を解決するために、被検体に照射された平行なビームを、角度アナライザにより前方回折ビーム及び回折ビームに分離し、前記角度アナライザにより分離された前記前方回折ビームの強度である第1前方回折ビーム強度、及び前記回折ビームの強度である第1回折ビーム強度をそれぞれ検出し、前記第1前方回折ビーム強度と前記第1回折ビーム強度とにおける、前記被検体を通過する際の減衰率が同じであると仮定し、前記第1前方回折ビーム強度及び前記第1回折ビーム強度を前記減衰率により補正して得られる、減衰の影響を排除した第2前方回折ビーム強度及び第2回折ビーム強度を用いて、前記角度アナライザの特性を示す、前方回折ビームの強度と屈折角との関係を表す前方回折曲線、及び回折ビームの強度と屈折角との関係を表す回折曲線より、前記ビームにおける前記被検体による屈折角を求め、該屈折角から前記被検体の画像合成を行う画像合成方法を提供する。
【0012】
実際に検出される第1前方回折ビーム強度及び第1回折ビーム強度は、被検体での吸収の影響が含まれる。しかし、本発明では、第1前方回折ビーム強度と第1回折ビーム強度とにおける被検体を通過したときの吸収によるビーム減衰率が同じであると仮定して、この減衰率と第1前方回折ビーム強度と第1回折ビーム強度で表される、減衰の影響を含まない第2前方回折ビーム強度及び第2回折ビーム強度により、被検体を通過した際のビームの屈折角を求め、その屈折角により被検体の合成画像を得る。したがって、被検体におけるビームの吸収の影響を含まない画像を得ることができる。また、従来、DEIの場合、吸収の影響は被検体に対するビームを2度照射することにより排除していたが、本発明では1度の照射で吸収の影響を排除することができる。このため、従来の1/2の被曝量で吸収の影響を含まない画像を得ることができる。さらに、吸収の影響を排除するために被検体にビームを2度照射する従来の場合、被検体が移動すると画像にブレが生じるが、本発明の場合、1度の照射で合成画像を得ることができるので、このように画像のブレを生じない。
【0013】
(3)前記演算装置は、前記前方回折曲線をn次の多項式で近似した前方回折曲線と前記回折曲線をn次の多項式で近似した回折曲線を求めた上で、前方回折および回折において被写体を透過したX線は同等の減衰を被写体から受けることを前提条件とすると,両者の観測強度が満たすべきn次方程式を導出することができる.この方程式を解くことで前記屈折角を求めることができる。
【0014】
(4)前記角度アナライザは、透過型角度アナライザを用いてもよい。この場合、暗視野による合成画像を得ることができる。また、前記角度アナライザは、反射型角度アナライザを用いてもよい。
【0015】
(5)前記ビームは、例えば、電磁波又は中性子線である。
【0016】
(6)前記検出装置は、前記角度アナライザにより分離された前記前方回折ビームを検出する第1検出装置と、前記回折ビームを検出する第2検出装置とを有することができる。検出装置を2つ設けることにより、それぞれのビームを分けて検出することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、被検体におけるビームの吸収の影響が少ない画像合成装置及び画像合成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態の画像合成装置の概略図である。
【図2】第1結晶と第2結晶の強度曲線を示すグラフである。
【図3】X線のブラッグケース(第1結晶)での回折強度曲線を示すグラフである。
【図4】X線形状で第1結晶と第2結晶の強度曲線のコンボリューションを行った強度曲線を示すグラフである。
【図5】(a)は角度アナライザの前方回折強度特性を示す前方回折強度曲線であり、(b)は回折強度特性を示す回折曲線である。
【図6】入射X線の試料内経路Lを示す図である。
【図7】基本的なCT構成を示す図である。
【図8】シミュレーションで得られた投影像からCT再構成を行った画像である。
【図9】CT画像の縦の1ラインの屈折率実数部をグラフにしたものである。
【図10】被検体を第1実施形態の手法を用いて実際に撮影した写真である。
【図11】第2実施形態の画像合成装置の概略図である。
【図12】第3実施形態の画像合成装置の概略図である。
【図13】第3実施形態の変形例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、被写体に照射する平行ビームがX線である場合を例にして、X線の暗視野(DFI、Dark−Field Imaging)法を用いた本発明の第1実施形態について説明する。なお、平行ビームとしては、波の性質を有し、回折するビームであればX線に限定されず、可視光等のその他の電磁波、中性子線であってもよい。
【0020】
(装置の説明)
図1は、第1実施形態の画像合成装置1の概略図である。画像合成装置1は、撮像のための光学系10と演算装置20とを備える。光学系10は、非対称ブラッグケース結晶Si(440)である第1結晶(コリメータ)11と、対称ラウエケース結晶Si(440)である第2結晶(角度アナライザ)12と、それらに対してX線の進む方向に配置された2台のX線カメラ13,14と、被検体Saを回転させる回転ステージ15とを備える。演算装置20は、X線カメラ13,14のそれぞれに接続され、X線カメラ13,14から得られたX線の情報に基づき、後述する演算を行い、被検体Saの画像を合成する。なお、結晶の指数(440)は一例であって、これに限定されず、他の適格な指数であってもよい。
【0021】
第1結晶11と第2結晶12の回折面は平行になっている。被検体Saは、第1結晶11と第2結晶12との間に配置された回転ステージ15上に配置される。本実施形態では、入射するX線(図1中矢印Xで表す)のエネルギーは34.8keVに想定している。X線は、第1結晶11により反射されることで、平面波に近くなり視野が拡大される。X線は、次に回転ステージ15上の被検体Saに入射し、被検体Saで一部吸収及び屈折され、第2結晶12に運ばれる。ここで前方回折波Aと回折波Bに分かれ、それぞれのCCDカメラ13及び14により同時に検出される。
【0022】
図2は第2結晶12の前方回折理論曲線Aと回折理論曲線Bを示す。これらの理論曲線A,Bは、第2結晶12に入射するビームの角度広がりは無いと仮定して計算されたものである。しかし、第1結晶11で反射したX線は、平面波に近いもののわずかに広がるため、第2結晶12に入射するビームは、実際には、わずかな角度広がりを有している。図3はX線のブラッグケースでの回折強度曲線であり、その広がりが、〜100分の6秒台の場合を一例として示したものである。このように第2結晶12に入射するビームは角度広がりを有するため、第二結晶12の前方回折曲線Aと回折曲線Bは、現実には、図3で示す第1結晶11で反射を通過したX線の強度曲線(論値)と、図2で示す第2結晶12を通過したX線の強度曲線(理論値)とのコンボリューションとなる。図4は、その結果を示したものである。なお、測定されたX線強度から屈折角度θ0を求める際に、強度曲線は振動成分が除去されて滑らかになる必要があるため、入射X線は、わずかに角度広がりを持っている方が望ましい。
【0023】
(撮像原理)
図5(a)は角度アナライザ12の前方回折波Aの強度特性を示す前方回折強度曲線21であり、図5(b)は回折波Bの強度特性を示す回折強度曲線22である。それぞれ、横軸が回折角度θ、縦軸がX線の強度Iを示す。被検体SaでのX線の屈折角度θ0を推定するためには、被検体Sa内での吸収による強度減衰がなければ、CCDカメラ13で取得されたX線強度Iを前方回折強度曲線21又は回折強度曲線22に当てはめることで求めることができる。なお、前方回折、回折の役割は逆転してもよい。
【0024】
しかし、図6のように入射X線は被検体Saの内部の経路Lを通る際に減衰率exp(−∫Lμdl)で強度が減衰する。そのため、図5で示すように、実際に測定される前方回折強度IFdetはIF(θ0)exp(−∫Lμdl)となり、回折強度IDdetはID(θ0)exp(−∫Lμdl)となる。それぞれの強度曲線21,22において、これらの実測強度IFdet、IDdetにより屈折角度を求めると、現実にはθ0となるところ、θF、θDと誤った屈折角度が取得される。
【0025】
そこで、被写体内の減衰率exp(−∫Lμdl)は前方回折及び回折で等しいことに着目し、連立方程式を導き、θ0を推定する。実際には、それぞれの強度曲線21,22をN次多項式で近似し、ニュートン法を用いて解く。以下では、2次多項式での近似の例を示す。それぞれの強度曲線21,22は次の式で表される。
【0026】
【数1】
【0027】
IF(θ)は前方回折強度曲線21、ID(θ)は回折強度曲線22を表す。実際の屈折角度θ0は、
【数2】
を満たす。測定で得られる強度IFdet及びIDdetと本来の強度IF(θ0)及びID(θ0)の関係は、減衰率exp(−∫Lμdl)を用いると、それぞれ以下の式で与えられる。
【0028】
【数3】
【0029】
(3)〜(6)から次の方程式が得られる。
【数4】
この方程式の解を解くことで、実際の屈折角度θ0が得られる。ここでの例は、2次方程式を解くだけであるので解析的な解θ0が推定できる。
【0030】
近似多項式の次数を高くすれば、それだけ近似の精度は高くなる。N次多項式の場合、式(1)は以下のようになる。
【数5】
また、式(7)は以下のようになる。
【数6】
【0031】
このように求めたθ0により、以下の計算を行う。X線の屈折角θ0は、エレメンタル(elemental)屈折によるX線ビーム経路Sにわたっての積分として以下の式で計算される。
【0032】
【数7】
ここに、
【数8】
は、位置rにおける屈折率n(r)に対して
【数9】
の関係にある局所的屈折率実数部である(以下、適宜「局所的屈折率実数部」という)。
φ(r)は、X線ビーム方向と屈折率勾配
【数10】
との間の角度、すなわちX線進行方向と「局所的屈折率実数部」の微分との間の角度である。
【0033】
この積分では、物体内のX線経路Sは、X線領域では、「局所的屈折率実数部」が10−5以下であるという事実を考慮すると、直線で近似することができる。
【0034】
式(8)は、CT再合成に対しては十分でない。というのは、式(8)は2つの未知関数、すなわち「屈折率実数部勾配」の絶対値とφ(r)とを有し、これらを独立に求めることができないからである。
【0035】
「局所的屈折率実数部」の値が物体の両側で等しいので、これらの間の差は以下のように常に零である。
【数11】
【0036】
式(9)に複素単位iを乗算し、式(8)に加算するならば、式(8)及び(9)は、以下に示すように複素形式で表わすことができる。
【数12】
【0037】
この式は、CT再合成式の基礎として役立つ。図7に、基本的なCT構成を示す。X線中に被検体Saが回転可能に置かれる。Θは物体12の初期位置と現在位置(点線で示す)との間の角度を、tはX線に垂直な投影座標軸を、屈折角分布θ0(Θ,t)は屈折角についての情報を有する投影を示している。
【0038】
一般的なCT法によれば、物体の角度位置Θ及び空間座標tについての情報として、屈折角についての情報を得ることが必要である。したがって、式(10)による数学的処理の後に、CT再合成のためのアルゴリズムを、次式のように表わすことができる。
【0039】
【数13】
【0040】
ここに、積分経路Sは、直線xcosΘ+ysinΘ=tである。
式(11)は、CT再合成の結果が、屈折率場の勾配であることを示している。この式(11)は、吸収コントラストに基づくCT再合成のための式に非常に類似していることに気付くであろう。違いは、入力関数が、屈折コントラストの場合にはθ0(Θ,t)exp(iΘ)であるのに対し、吸収コントラストの場合には入力関数はlog(I(Θ,t)/Io)である点、再合成されるべき関数が、屈折コントラストの場合、
【数14】
であるのに対し、吸収コントラストの場合、
μ(r)
である点である。
【0041】
さらに、屈折コントラストの場合と吸収コントラストの場合との間には、重要な1つの違いがある。吸収コントラストに基づくCT合成のための式において、入力関数及び出力関数は、実数空間にあるが、屈折コントラストに基づくCT合成は、複素数空間における関数を利用している。このことは、吸収コントラストに基づくCTアルゴリズムを、屈折コントラストの場合には採用できず、オリジナルなアルゴリズム及びソフトウェアを必要とすることを意味している。
【0042】
式(11)の構成の故に、屈折コントラストに基づくCTアルゴリズムの数学的形式は、吸収コントラストの場合に用いられるアルゴリズム(いわゆるFiltered Backprojection method)と同じである。基本的に、数学的形式は、4つのステップよりなる。すなわち、
【0043】
i)入力関数θ0(Θ,t)exp(iΘ)のフーリエ変換(多くの場合、“サイノグラム(sinogram)”と呼ばれる):
【数15】
【0044】
ii)フーリエ変換された関数PΘ(ω)のフィルタリング:
【数16】
ここに、b(ω)は、フィルタリング関数である。CT再合成に用いられる多くのフィルタリング関数がある。しかし、吸収コントラストに基づくCTに普通用いられるフィルタリング関数は、屈折コントラストの場合にほとんど適用できない。というのは、これらフィルタリング関数のすべては、高周波成分を抑制して、低周波成分を強化するからである。これは、吸収コントラストの場合には、リーズナブルである。というのは、大半の有用な情報が低ドメイン(low domain)に含まれ、高周波成分のほとんどがノイズよりなるからである。対照的に、屈折コントラストの場合には、高次フーリエ成分が、重要な役割をはたし、フィルタリング関数によって抑制されない。
【0045】
iii)フィルタリングされた関数の後方フーリエ変換
【数17】
得られた関数QΘ(t)は、フィルタリングされたサイノグラムとして知られている。
【0046】
iv)実数空間へのフィルタリングされたサイノグラムの後方投影(Backprojecton)
【数18】
ここに、r≡(x,y)は、tに相当する。t=xcosΘ+ysinΘである。このアルゴリズムは、式の連続形式に対して与えられる。しかし、あらゆる実際的なアプリケーションにおいて、関数θ0(Θ,t)は、特定の点Θm及びtnにおいてのみ知られている。したがって、個別形式のアルゴリズムを、実際の計算に用いなければならない。
【0047】
屈折コントラストに基づくCT再合成式(11)は、次のことを示している。すなわち、再合成される関数は、
【数19】
であり、大半のユーザは勾配よりも
【数20】
の形での結果を望んでいる。物理的値を計算するためには、始めにCT再合成を実行して、次に、スカラ場勾配の特性
【数21】
を用いて、
【数22】
から
【数23】
を形成する。
【0048】
しかし、
【数24】
は、CT再合成アルゴリズム(式15参照)のステップ(iv)における演算誤差の故に、厳密には満たされない。このことは、
【数25】
の値が、積分経路の選択に依存し、その結果、種々の積分経路に沿って2つ以上の積分式(16)を計算し、最も理想的な結果として、それらの平均を用いることを必要とすることを意味している。この問題を避けるために、
【数26】
を再合成する他の方法を用いた。フィルタリングされた投影式(15)の後方投影の前に、勾配−場変換を行うことができる。というのは、フィルタリングされたサノイグラムQΘ(t)の物理的意味は、
【数27】
の投影である。したがって再合成アルゴリズムのステップ(iv)において、新しい関数
【数28】
を、関数QΘ(t)の代わりに用いる。この変換の後、式(15)の再合成された関数は、勾配ではなく、屈折率そのものである。再合成アルゴリズム内に組み込まれた(built−in)勾配−場変換は、再合成後に実行される変換に対して特定の利点を有する。まず第1に、積分式(17)は、表面(x,y)上の曲線に対して実行される積分式(16)とは対照的に1次元である。このことは、積分を数学的に容易にし、演算的に安価にする。
第2に、
【数29】
は、式(14)の被積分関数中の項|ω|によるアルゴリズムのステップ(iv)の前に、厳密に有効である。式(7)は、関数QΘ(t)の平均値が零に等しいことを保証する。
【0049】
(実施例1:シミュレーションによる有効性の検証)
以上の式を用いて、DFI法においてシミュレーションを用いて有効性を検証した。このシミュレーションでは、θ0の計算において6次多項式を用いて近似した。このときは、解析的な解は得られないのでニュートン法を用いて解いた。この際、初期値には、IFdet及びIDdet近傍を1次式で近似した場合の解を用いた。
【0050】
この手法の有効性を評価するために、X線(入射エネルギー:34.8keV)の幾何光学に基づいたシミュレーターを開発し撮像実験を行った。試料は、直径20mmの円柱の中に直径4mmの円柱を2本とその周りに小球をランダムに配置した。複素屈折率は、水・脂肪・乳腺を想定した。図8は、シミュレーションで得られた投影像からCT再構成を行ったものである。それぞれ、吸収補正なし、試料全体が脂肪であると仮定して脂肪の吸収係数で補正、本提案で補正を表す。補正なしでは内部の円柱と球のコントラストはほとんどつかない。脂肪の吸収係数で補正を行うと、円の回りは補正がうまくいっていないものの全体的にコントラストが高い結果が得られる。これは、水・脂肪・乳腺の間で吸収係数が近いためである。本提案による補正では、ほぼ完全な屈折CT像が得られる。図9は、CT画像の縦12.5mm目の1ラインの
をグラフにしたものである。本手法は、定量性においても本来の屈折率に迫る結果となった。
【0051】
(実施例2:ヒト乳ガン組織の3次元画像)
図10は、準備した被検体Saを本実施形態の手法を用いて実際に撮影した写真である。
被検体Saは、ヒトDCIS乳がんであり、国立病院機構名古屋医療センターから借用した。サイズは25mm角で厚さは33mmで5%ホルマリン浸漬したものである。この被検体Saを、撮影時に回転させたりした時に、ずれたりしないように取り扱いしやすくする目的で、直径35mmのテフロン(登録商標)製円筒に挿入した。テフロン(登録商標)の厚さは0.05mmで、標本と円筒の隙間はアガロースで満たした。なお、この空隙を埋めるには、アルコールや寒天を用いてもよい。この円筒に挿入された被検体Saを回転ステージ15としての神津精機(株)社製ゴニオメーター上に載置し、図1に示す位置に配置した。ゴニオメーター15を回転させることにより0.2度毎で900枚、被検体Saの撮影を行った。X線は、35keVで、108光子/mm2/秒とした。CCDカメラは英国Photonic Science社製の「X−Ray VHR2、 60mm」を使用した。本方法で得られた画像データを、演算装置20としてのVGStudio社製VGStudioMAXを使用した。
図示するように、本実施例によると、コントラストの高い被検体写真を得ることが出来た。
【0052】
(第2実施形態)
以下、X線の回折エンハンスト(DEI、Diffraction−Enhanced Imaging)法を用いた本発明の第2実施形態について説明する。図11に第2実施形態の画像合成装置の概略図を示す。第1実施形態と第2実施形態の異なる点は、第2結晶(角度アナライザ)112が、反射型角度アナライザである点である。
第2実施形態において、X線は回転ステージ115上の被検体Saに入射し、被検体Saで吸収及び屈折され、第2結晶112に運ばれる。ここで前方回折波Aと反射回折波Bに分かれ、それぞれのCCDカメラ113及び114により同時に検出される。回折角度θ0の求め方、及びそれを用いた画像合成方法は第1実施形態と同様である。
【0053】
(第3実施形態)
以下、X線の暗視野(DFI、Dark−Field Imaging)法を用いた本発明の第3実施形態について説明する。図12に第3実施形態の画像合成装置の概略図を示す。第1実施形態と第3実施形態の異なる点は、CCDカメラ130が、1台である点である。すなわち、前方回折強度曲線と回折強度曲線とは、1台のCCDカメラ130で同時に検出される。回折角度θ0の求め方、及びそれを用いた画像合成方法は第1実施形態と同様である。このようにCCDカメラ130を1台とすることにより、画像合成装置1を全体として安価に構成することができる。
また、図13は、第3実施形態の変形例で、CCDカメラ130は1台であるが、中央部で折り曲げ角度調整可能となっている。この変形例によると、前方回折波Aと反射回折波BがそれぞれCCDカメラ130に垂直に入射するので、その後の演算処理が容易となる。
【0054】
以上、本実施形態の利点をまとめると、以下の通りである。
(1)吸収コントラストでは識別不可能な軟部組織を、屈折X線を用いて高コントラストでCT撮像できる。
(2)1測定点あたり1回の照射で、吸収情報と屈折情報を分離して取得できる。したがって、吸収と屈折の2つのCTが取得でき、それぞれ定量的な診断が可能である。
(3)1回照射での撮像のため、被曝量をDEI法に比べ1/2以下に低減できる。
(4)アナライザを用いてデータを取得するため、散乱線の影響がなく高い空間分解能を実現できる。
【符号の説明】
【0055】
1,100:画像合成装置、11,111:第1結晶(平行化手段)、12,112:第2結晶(角度アナライザ)、13,14,113,114,130:CCDカメラ、20,120:演算装置、A:前方回折波、B:回折波、Sa:被検体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に照射された平行なビームを、前方回折ビーム及び回折ビームに分離する角度アナライザと、
前記角度アナライザにより分離された前記前方回折ビームの強度である第1前方回折ビーム強度、及び前記回折ビームの強度である第1回折ビーム強度をそれぞれ検出する検出装置と、
前記第1前方回折ビーム強度と前記第1回折ビーム強度とにおける、前記被検体を通過する際の減衰率が同じであると仮定し、
前記第1前方回折ビーム強度及び前記第1回折ビーム強度を前記減衰率により補正して得られる、減衰の影響を排除した第2前方回折ビーム強度及び第2回折ビーム強度を用いて、
前記角度アナライザの特性を示す、前方回折ビームの強度と屈折角との関係を表す前方回折曲線、及び回折ビームの強度と屈折角との関係を表す回折曲線より、前記ビームにおける前記被検体による屈折角を求め、該屈折角から前記被検体の画像合成を行う演算装置と、
を備える画像合成装置。
【請求項2】
前記演算装置は、
前記前方回折曲線をn次の多項式で近似した前方回折曲線と前記回折曲線をn次の多項式で近似した回折曲線を求めた上で、前方回折および回折において被写体を透過したX線は同等の減衰を被写体から受けることを前提条件とすると,両者の観測強度が満たすべきn次方程式を導出することができる.この方程式を解くことで前記屈折角を求める請求項1に記載の画像合成装置。
【請求項3】
前記角度アナライザは、透過型角度アナライザ又は反射型角度アナライザである請求項1又は2に記載の画像合成装置。
【請求項4】
前記ビームは、電磁波又は中性子線である請求項1から3のいずれか1項に記載の画像合成装置。
【請求項5】
前記検出装置は、前記角度アナライザにより分離された前記前方回折ビームを検出する第1検出装置と、前記回折ビームを検出する第2検出装置とを有する請求項1から4のいずれか1項に記載の画像合成装置。
【請求項6】
被検体に照射された平行なビームを、角度アナライザにより前方回折ビーム及び回折ビームに分離し、
前記角度アナライザにより分離された前記前方回折ビームの強度である第1前方回折ビーム強度、及び前記回折ビームの強度である第1回折ビーム強度をそれぞれ検出し、
前記第1前方回折ビーム強度と前記第1回折ビーム強度とにおける、前記被検体を通過する際の減衰率が同じであると仮定し、
前記第1前方回折ビーム強度及び前記第1回折ビーム強度を前記減衰率により補正して得られる、減衰の影響を排除した第2前方回折ビーム強度及び第2回折ビーム強度を用いて、
前記角度アナライザの特性を示す、前方回折ビームの強度と屈折角との関係を表す前方回折曲線、及び回折ビームの強度と屈折角との関係を表す回折曲線より、前記ビームにおける前記被検体による屈折角を求め、
該屈折角から前記被検体の画像合成を行う画像合成方法。
【請求項1】
被検体に照射された平行なビームを、前方回折ビーム及び回折ビームに分離する角度アナライザと、
前記角度アナライザにより分離された前記前方回折ビームの強度である第1前方回折ビーム強度、及び前記回折ビームの強度である第1回折ビーム強度をそれぞれ検出する検出装置と、
前記第1前方回折ビーム強度と前記第1回折ビーム強度とにおける、前記被検体を通過する際の減衰率が同じであると仮定し、
前記第1前方回折ビーム強度及び前記第1回折ビーム強度を前記減衰率により補正して得られる、減衰の影響を排除した第2前方回折ビーム強度及び第2回折ビーム強度を用いて、
前記角度アナライザの特性を示す、前方回折ビームの強度と屈折角との関係を表す前方回折曲線、及び回折ビームの強度と屈折角との関係を表す回折曲線より、前記ビームにおける前記被検体による屈折角を求め、該屈折角から前記被検体の画像合成を行う演算装置と、
を備える画像合成装置。
【請求項2】
前記演算装置は、
前記前方回折曲線をn次の多項式で近似した前方回折曲線と前記回折曲線をn次の多項式で近似した回折曲線を求めた上で、前方回折および回折において被写体を透過したX線は同等の減衰を被写体から受けることを前提条件とすると,両者の観測強度が満たすべきn次方程式を導出することができる.この方程式を解くことで前記屈折角を求める請求項1に記載の画像合成装置。
【請求項3】
前記角度アナライザは、透過型角度アナライザ又は反射型角度アナライザである請求項1又は2に記載の画像合成装置。
【請求項4】
前記ビームは、電磁波又は中性子線である請求項1から3のいずれか1項に記載の画像合成装置。
【請求項5】
前記検出装置は、前記角度アナライザにより分離された前記前方回折ビームを検出する第1検出装置と、前記回折ビームを検出する第2検出装置とを有する請求項1から4のいずれか1項に記載の画像合成装置。
【請求項6】
被検体に照射された平行なビームを、角度アナライザにより前方回折ビーム及び回折ビームに分離し、
前記角度アナライザにより分離された前記前方回折ビームの強度である第1前方回折ビーム強度、及び前記回折ビームの強度である第1回折ビーム強度をそれぞれ検出し、
前記第1前方回折ビーム強度と前記第1回折ビーム強度とにおける、前記被検体を通過する際の減衰率が同じであると仮定し、
前記第1前方回折ビーム強度及び前記第1回折ビーム強度を前記減衰率により補正して得られる、減衰の影響を排除した第2前方回折ビーム強度及び第2回折ビーム強度を用いて、
前記角度アナライザの特性を示す、前方回折ビームの強度と屈折角との関係を表す前方回折曲線、及び回折ビームの強度と屈折角との関係を表す回折曲線より、前記ビームにおける前記被検体による屈折角を求め、
該屈折角から前記被検体の画像合成を行う画像合成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図8】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図8】
【図10】
【公開番号】特開2011−117954(P2011−117954A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244356(P2010−244356)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(803000115)学校法人東京理科大学 (545)
【出願人】(304036754)国立大学法人山形大学 (59)
【出願人】(591106462)茨城県 (45)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(803000115)学校法人東京理科大学 (545)
【出願人】(304036754)国立大学法人山形大学 (59)
【出願人】(591106462)茨城県 (45)
【Fターム(参考)】
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