説明

画像形成システムおよび画像形成装置

【課題】他の画像形成装置の画品質状態を捉えた上で,好適な状態を形成できる画像形成装置および画像形成システムを提供すること。
【解決手段】画像形成システム500は,画像形成システム500に属するMFP100,101,102,103が個々に位置ずれや濃度ずれの補正量の取得を行う取得処理を行うにあたって,サーバ200が本画像形成システム500に属するMFP100,101,102,103の少なくとも1台の画品質状態を確認する。そして,その確認結果に基づいて,取得処理を実行するMFPを決定し,そのMFPに対して実行要求を送信する。各MFP100,101,102,103は,その実行要求の受信を契機に,取得処理の実行を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,画調整用のマークを形成する画像形成装置および複数の画像形成装置によって構成される画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から,画像形成装置では,画像の位置や濃度にずれが生じないように画調整を行っている。画調整の手順としては,例えば,画調整用の画像パターンであるレジストパターンを色ごとに形成し,基本色のレジストパターンと被検色のレジストパターンとのずれ量(補正量)を取得し,その補正量に基づいて被検色の画像の位置ずれを補正する。
【0003】
また,画調整用の補正量の取得には時間がかかり,印刷効率の低下を招くことが知られている。そこで,例えば,特許文献1には,補正量の取得処理を途中で中断し,コピー時間を短縮する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−013753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,前記した従来の画像形成装置には,次のような問題があった。すなわち,補正量の取得タイミングを,直前の取得からの経過時間や印刷枚数等の,装置自身の都合によって決定している。つまり,他の画像形成装置の動作状況等を補正量の取得タイミングの決定に反映していない。そのため,複数の画像形成装置によって構成される画像形成システムにおいて,例えば,取得直前の画像形成装置ばかりとなって高画質の画像が得られない可能性があった。
【0006】
本発明は,前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,他の画像形成装置の画品質状態を捉えた上で,好適な状態を形成できる画像形成装置および画像形成システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題の解決を目的としてなされた画像形成システムは,位置ずれと濃度ずれとの少なくとも一方を検出するためのマークを形成し,そのマークを測定することによって補正量の取得を行う取得処理を実行する画像形成装置を複数備える画像形成システムであって,画像形成システムに属する画像形成装置の,画品質状態を確認する確認手段と,確認手段にて確認した画像形成装置の画品質状態に基づいて,画像形成装置の取得処理の実行要否を決定する決定手段とを備えることを特徴としている。
【0008】
本発明の画像形成システムは,本画像形成システムに属する画像形成装置の画品質状態を確認する。そして,その確認結果に基づいて取得処理の実行要否を決定する。ここでいう「画品質状態」は,例えば,前回の取得処理が行われてからの経過時間,トナー残量,印刷枚数などから判断できる。なお,確認対象となる画像形成装置は,必ずしも画像形成システムに属する画像形成装置全てである必要はなく,例えば,あらかじめ決められた画像形成装置や,印刷可能状態の画像形成装置に限定してもよい。
【0009】
すなわち,本発明の画像形成システムでは,各画像形成装置の取得処理の実行要否が,他の画像形成装置の画品質状態に応じて決定される。そのため,例えば,低画質の画像形成装置のみになる状況や必要以上に高画質を維持する状況を回避することができる。
【0010】
また,本発明の画像形成システムの決定手段は,確認手段の確認結果に基づいて,画品質状態が基準よりも高い画像形成装置の数が閾値以下である場合に,画品質状態が基準よりも低い画像形成装置のうち少なくとも1つに対して取得処理の実行が必要と決定するとよい。この構成によれば,画品質状態が基準よりも高い,つまり高画質状態の画像形成装置の数が少ない場合に,高画質状態となる画像形成装置の数が増える。そのため,どの画像形成装置を利用しても低画質となる状態を回避できる。なお,画品質状態が基準よりも高かった画像形成装置の「数」は,台数であっても割合であってもよい。
【0011】
また,本発明の画像形成システムの確認手段は,画品質状態が基準よりも高い画像形成装置が印刷不能となったことを契機に,少なくとも印刷可能状態の画像形成装置の画品質状態を確認し,決定手段は,確認手段による確認を契機に,少なくとも印刷可能状態の画像形成装置の1つを前記取得処理の実行対象に決定するとよい。高画質の役割を果たしていた画像形成装置が利用不能になった場合,早期に他の画像形成装置にその役割を変更することが望ましい。
【0012】
また,本発明の画像形成システムは,画像形成装置の画品質状態を報知する報知手段を備えるとよい。本発明の画像形成システムは,画品質状態が自動的に変更される。そのため,ユーザが画品質状態を把握できるような仕組みを設けることが望ましい。なお,報知先は,画像形成装置の操作パネルでもよいし,ユーザの情報処理端末でもよい。また,報知の実行は,取得処理の実行の度でもよいし,ユーザ命令でもよい。
【0013】
また,本発明は,位置ずれと濃度ずれとの少なくとも一方を検出するためのマークを形成し,そのマークを測定することによって補正量の取得を行う取得処理を実行する取得手段と,他の画像形成装置の,画品質状態を確認する確認手段と,確認手段にて確認した他の画像形成装置の画品質状態に基づいて,自装置の取得処理の実行要否を決定する決定手段とを備えることを特徴とする画像形成装置を含んでいる。
【0014】
また,本発明の画像形成装置は,取得処理が完了した際に,他の画像形成装置に完了通知を出力する通知手段と,画品質状態が基準よりも高い状態での印刷ができなくなった場合に,他の画像形成装置に取得処理の実行要求を出力する要求手段と,他の画像形成装置から実行要求を受け取ったことを契機に,他の画像形成装置と異なる長さが設定された待機時間が経過するまで待機し,その待機時間の終了時に他の画像形成装置から完了通知を受け取ったか否かを判断する判断手段とを備え,確認手段は,判断手段が完了通知を受け取っていないと判断した場合に,他の画像形成装置の画品質状態を確認し,決定手段は,確認手段による確認を契機に,取得処理の実行要否を決定するとよい。本発明の画像形成装置のように,各画像形成装置がサーバ機能を有する場合,各画像形成装置が並行して実行要否を検討して取得処理の実行が重複してしまうことが考えられる。そこで,本構成のように,他の画像形成装置と異なる待機時間を設けることで,取得処理の並行実行の回避が期待できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば,他の画像形成装置の画品質状態を捉えた上で,好適な状態を形成できる画像形成装置および画像形成システムが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の形態にかかる画像形成システムの構成を示す概念図である。
【図2】画像形成システムに含まれるMFPおよびサーバの電気的構成を示すブロック図である。
【図3】MFPの画像形成部の構成を示す概略図である。
【図4】図3に示したMFPにかかるマークセンサの配置を示す概念図である。
【図5】第1の形態にかかる,MFPの取得実行処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】第1の形態にかかる,サーバの取得管理処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】第2の形態にかかる画像形成システムの構成を示すブロック図である。
【図8】第2の形態にかかる,MFPの取得実行処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下,本発明にかかる画像形成装置および画像形成システムを具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,カラー印刷機能を有する複合機(MFP:Multi Function Peripheral )を複数備えた画像形成システムに本発明を適用したものである。
【0018】
[第1の形態]
[画像形成システムの全体構成]
第1の形態にかかる画像形成システム500は,図1に示すように,カラー印刷機能を有するMFP(画像形成装置の一例)100,101,102,103と,画像形成システム500に属するMFP100,101,102,103を管理するサーバ200とを備えている。そして,画像形成システム500では,MFP100,101,102,103とサーバ200とがネットワーク400に接続されている。
【0019】
なお,画像形成システム500に属する画像形成装置(MFPに限らず,プリンタ,コピー機等であってもよい)は何台であってもよい。また,ネットワーク400には,その他の情報処理装置(例えば,パーソナルコンピュータ)を接続してもよい。また,画像形成システム500は,他の画像形成システム501,502にもインターネット等のネットワークを介して接続されている。
【0020】
[画像形成システムの電気的構成]
[MFPの構成]
続いて,MFP100の概略構成について説明する。MFP100は,図2に示すように,CPU31と,ROM32と,RAM33と,NVRAM(不揮発性RAM)34と,ASIC35と,ネットワークインターフェース36と,FAXインターフェース37とを備えた制御部30を備えている。また,制御部30は,用紙に画像を形成する画像形成部10,原稿の画像を読み取る画像読取部20,動作状況の表示やユーザによる入力操作の受付を行う操作パネル40と電気的に接続されている。なお,MFP101,102,103も同様の構成になっている。
【0021】
ROM32には,MFP100を制御するための各種制御プログラムや各種設定,初期値等が記憶されている。RAM33は,各種制御プログラムが読み出される作業領域として,あるいは画像データを一時的に記憶する記憶領域として利用される。
【0022】
CPU31は,ROM32から読み出した制御プログラムや各種センサから送られる信号に従って,その処理結果をRAM33またはNVRAM34に記憶させながら,MFP100の各構成要素を,ASIC35を介して制御する。
【0023】
ネットワークインターフェース36は,ネットワーク400に接続され,サーバ200等との接続を可能にしている。FAXインターフェース37は,電話回線に接続され,相手先のFAX装置との接続を可能にしている。そして,ネットワークインターフェース36やFAXインターフェース37を介して外部装置とデータのやりとりを行うことができる。
【0024】
[サーバの構成]
続いて,サーバ200の概略構成について説明する。サーバ200は,図2に示すように,CPU51と,ROM52と,RAM53と,HDD54と,キーボードやマウス等からなる操作部55と,液晶ディスプレイ等からなる表示部56と,ネットワークインターフェース58とを有している。
【0025】
また,サーバ200のHDD54には,オペレーティングシステム(OS)や,各種のデバイスを制御するデバイスドライバや,アプリケーションプログラム等が組み込まれている。特に,サーバ200には,画像形成システム500に属するMFP100,101,102,103を管理する管理プログラムが組み込まれている。
【0026】
[MFPの画像形成部の構成]
続いて,MFP100の画像形成部10の構成について,図3を参照しつつ説明する。なお,他のMFP101,102,103の画像形成部についてもMFP100と同様の構成である。
【0027】
画像形成部10は,図3に示すように,電子写真方式によってトナー像を形成し,そのトナー像を用紙に転写するプロセス部50と,用紙上の未定着のトナーを定着させる定着装置8と,画像転写前の用紙を載置する給紙トレイ91と,画像転写後の用紙を載置する排紙トレイ92とを備えている。画像形成部10の上方には,画像読取部20が配置されている。
【0028】
また,画像形成部10内には,底部に位置する給紙トレイ91に収容された用紙が,給紙ローラ71,レジストローラ72,プロセス部50,定着装置8を通り,排紙ローラ76を介して上部の排紙トレイ92への導かれるように,略S字形状の搬送路11(図3中の一点鎖線)が設けられている。
【0029】
プロセス部50は,カラー画像の形成が可能であり,イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)の各色に対応するプロセス部を並列に配置している。具体的には,Y色の画像を形成するプロセス部50Yと,M色の画像を形成するプロセス部50Mと,C色の画像を形成するプロセス部50Cと,K色の画像を形成するプロセス部50Kとを備えている。そして,各プロセス部50Y,50M,50C,50Kは,用紙の搬送方向において互いに一定の距離をおいた状態で配置されている。
【0030】
プロセス部50では,感光体の表面が帯電装置によって一様に帯電される。その後,露光装置53からの光により露光され,用紙に形成すべき画像の静電潜像が形成される。次いで,現像装置を介して,トナーが感光体に供給される。これにより,感光体上の静電潜像は,トナー像として可視像化される。
【0031】
また,画像形成部10は,各プロセス部50Y,50M,50C,50Kに光を照射する露光装置53と,各プロセス部50Y,50M,50C,50Kの転写位置に用紙を搬送する搬送ベルト7と,搬送ベルト7上に形成されたレジストパターンを検出するマークセンサ61とを備えている。
【0032】
搬送ベルト7は,搬送ローラ73,74によって張架された無端状のベルト部材であり,ポリカーボネート等の樹脂材からなる。搬送ベルト7は,搬送ローラ74が回転駆動されることにより紙面反時計回りに循環移動する。これにより,その上面に載置された用紙を,レジストローラ72側から定着装置8側に搬送する。
【0033】
画像形成部10は,給紙トレイ91に載置されている用紙を1枚ずつ取り出し,その用紙を搬送ベルト7上に搬送する。そして,プロセス部50にて形成されたトナー像をその用紙に転写する。このとき,カラー印刷では,各プロセス部50Y,50M,50C,50Kにてトナー像が形成され,用紙上で各トナー像が重ね合わせられる。一方,モノクロ印刷では,プロセス部50Kのみでトナー像が形成され,用紙に転写される。その後は,トナー像が転写された用紙を定着装置8に搬送し,トナー像をその用紙に熱定着させる。そして,定着後の用紙を排紙トレイ92に排出する。
【0034】
また,マークセンサ61は,用紙の搬送方向におけるプロセス部50Y,50M,50C,50Kよりも下流であって定着装置8よりも上流に位置し,搬送ベルト7上に形成されたレジストパターンを検知する。
【0035】
具体的に,マークセンサ61は,図4に示すように,搬送ベルト7の幅方向の右側に配置されたセンサ61Rと,左側に配置されたセンサ61Lとの,2つのセンサによって構成される。各センサ61R,61Lは,発光素子62(例えば,LED)と,受光素子63(例えば,フォトトランジスタ)とが一対となる反射型の光学センサである。マークセンサ61は,発光素子62にて搬送ベルト7の表面(図4中の点線枠E)に対して斜め方向から光を照射し,その光を受光素子63が受光する構成になっている。そして,レジストパターン66が通過する際の受光量と搬送ベルト7から直接受ける受光量との違いによって,レジストパターンの通過を検知できる。
【0036】
[位置ずれ補正]
続いて,MFP100における位置ずれ補正について簡単に説明する。位置ずれ補正は,各色の画像の位置調整を行う補正であり,基準色に対する各色のずれ量を取得する取得処理と,そのずれ量を基に画像を補正する補正処理とに分けられる。本明細書では,取得処理について説明し,補正処理については省略する。
【0037】
取得処理では,まず,各プロセス部50Y,50M,50C,50Kによって位置ずれ補正用の画像パターンであるレジストパターンを形成する。具体的に,レジストパターンは,図4に示すように,プロセス部50Kによって形成されるマーク66Kと,プロセス部50Yによって形成されるマーク66Yと,プロセス部50Mによって形成されるマーク66Mと,プロセス部50Cによって形成されるマーク66Cとを,副走査方向に並べてなるマーク群(以下,「レジストパターン66」とする)からなる。
【0038】
レジストパターン66は,副走査方向(図4に示す搬送ベルト7の移動方向)に一定間隔で形成される。本形態の各マーク66K,66Y,66M,66Cは,矩形の棒状をなし,それぞれが主走査方向(副走査方向に直交する方向)に沿って配置される。
【0039】
次に,マークセンサ61から出力される2値化信号に基づいて,各マーク66K,66Y,66M,66Cのそれぞれの位置を検知する。そして,基準色であるマーク(例えば,マーク66K)に対する各調整色のマーク(例えば,マーク66Y,66M,66C)の副走査方向における間隔をそれぞれ算出する。基準色と調整色とのマーク間の間隔は,副走査方向に位置ずれが生じることによって変化する。そのため,基準色に対する調整色の副走査方向における位置ずれ量を特定できる。
【0040】
なお,上述したレジストパターン66の構成は,あくまでも一例であり,これに限るものではない。搬送ベルト7上に形成されるマークは,位置ずれ補正や濃度補正に利用される一般的な画像パターンであればよい。
【0041】
[画像形成システムの取得処理の管理動作]
続いて,画像形成システム500における各MFPの取得処理の管理動作について説明する。
【0042】
MFPは,前述した取得処理を実行することによって補正値が更新され,更新直後が最も高画質となることが期待でき,時間の経過等によって補正値の信頼性が低下する。そのため,高画質を維持するには頻繁に取得処理を行うことが望ましい。しかし,取得処理は,前述したように複数のマークの形成およびマークの検知を行う必要があり,一定時間,印刷ができない状態になる。また,マークの形成のために使用されたトナーは無駄になる。そのため,頻繁に取得処理を実行するのも好ましくない。
【0043】
そこで,本形態の画像形成システム500では,サーバ200がMFP100,101,102,103の画品質状態を確認し,高画質を維持するMFP(以下,「高画質指定MFP」とする)を決定し,決定されたMFPに取得処理の実行を要求することで,各MFP100,101,102,103の取得処理の実行を図るタイミングを管理する。
【0044】
以下,画像形成システム500における,上述の取得処理の実行管理動作を実現する処理を,MFP側の処理(取得実行処理)とサーバ側の処理(取得管理処理)とに分けて説明する。
【0045】
[取得実行処理(MFP側)]
始めに,各MFP100,101,102,103の処理である取得実行処理(報知手段の一例)について,図5のフローチャートを参照しつつ説明する。この取得実行処理は,所定の時間間隔(例えば1分)で定期的に実行される。
【0046】
まず,高画質印刷の実行不能を検知したか否かを判断する(S101)。高画質印刷が不能となる状態としては,例えば,自装置の画品質状態が高画質から非高画質に変化したことが該当する。画品質状態は,自装置の直前の取得処理からの経過時間やトナー残量等によって判断できる。画品質状態の種類については後述する。また,用紙ジャム等の故障や,トナー不足で取得処理の実行が不可の状態も該当する。高画質印刷の実行不能を検知した場合には(S101:YES),高画質印刷の実行不能であることを知らせる不能通知をサーバ200に送信し(S111),本処理を終了する。なお,不能通知をサーバ200に送信せず,後述するサーバ200での取得管理処理のS202,203の代わりに,サーバ200が高画質指定MFPに高画質印刷での実行不能か否かを問い合わせ,各MFPではその問い合わせに応じて高画質印刷での実行可否を応答するものとしてもよい。
【0047】
実行不能を検知していない場合には(S101:NO),サーバ200から取得処理の実行要求を受信しているか否かを判断する(S103)。実行要求を受信していない場合には(S103:NO),本処理を終了する。
【0048】
一方,実行要求を受信している場合には(S103:YES),取得処理の実行を開始する(S121)。取得処理の実行完了後は,取得処理を行った旨のメッセージを報知する(S122)。メッセージの報知先は,例えば,MFPの操作パネル40であってもよいし,画像形成システム500に属するパーソナルコンピュータ等の情報処理装置であってもよい。すなわち,S121では,取得処理を自動的に実行することになることから,ユーザが取得処理の実行を把握できるように報知する。メッセージの報知後は,本処理を終了する。
【0049】
[取得管理処理(サーバ側)]
続いて,サーバ200の処理として,画像形成システム500に属するMFP100,101,102,103の取得処理の実行タイミングを管理する実行管理処理(確認手段,決定手段の一例)について,図6のフローチャートを参照しつつ説明する。この実行管理処理は,所定の時間間隔(例えば1分)で定期的に実行される。
【0050】
まず,所定時間(例えば1時間)経過したか否かを判断する(S201)。まだ所定時間経過していない場合は(S201:NO),画像形成システム500に属するMFPから不能通知を受信したか否かを判断する(S202)。さらに,不能通知を受信した場合には(S202:YES),その不能通知が高画質指定MFPからのものであるか否かを判断する(S203)。所定時間の経過なく(S201:NO),かつ高画質指定MFPからの不能通知を受信していない(S202:NOもしくはS203:NO)場合には,本処理を終了する。なお,S202,S203の代わりに,高画質指定MFPに高画質印刷の実行可否を問い合わせ,高画質印刷の実行不能との応答があった場合に後述するS211以降の処理に移行するようにしてもよい。
【0051】
一方,所定時間経過した(S201:YES),または高画質指定MFPからの不能通知を受信した(S203:YES)場合には,画像形成システム500に属するMFP100,101,102,103に問い合わせ,各MFPの現在の画品質状態を取得する(S211)。
【0052】
各MFP100,101,102,103は,サーバ200からの問い合わせに応じて,次の3つの画品質状態のうちの1つを応答する。
(1)高画質
取得処理の実行から所定時間が経過するまでの状態。
(2)非高画質
高画質への移行が可能であるが,現在はそうではない状態。例えば,取得処理の実行から所定時間が経過した状態であって,取得処理の実行が可能な状態。あるいは,トナー不足のため以前は高画質不可であったが,トナーが補給されたために取得処理の実行が可能となった状態。
(3)高画質不可
トナー不足のため取得処理の実行ができない状態。あるいは故障等によって印刷不能になっている状態。
【0053】
また,各MFP100,101,102,103は,画品質状態とともに,トナーの残量および補正画質係数を応答する。ここでいう「補正画質係数」は,取得処理実行直後に0に初期化され,時間経過とともに加算される係数のことである。すなわち,補正画質係数が小さいほど,直前の取得処理の実行からの経過時間が短く,補正値の信頼性が高いことを意味する。
【0054】
次に,S211で取得した情報に基づいて,高画質指定MFPを決定する(S212)。具体的にS212では,高画質のMFPの数(ここでいう「数」は,装置の「台数」であっても,画像形成システム500に登録されているMFPのうち稼働しているMFPの「割合」であってもよい。)が閾値以下の場合に高画質指定MFPを決定することとし,さらに次の条件によってどのMFPを高画質指定MFPするのかを決定する。まず,画品質状態が高画質不可以外のMFPが1台しかなく,他のMFPがすべて高画質不可であれば,その高画質不可以外のMFPを高画質指定MFPに決定する。一方,画品質状態が高画質不可以外のMFPが複数台ある場合には,その中から閾値以上の数のMFPを無作為に抽出し,抽出されたMFPを高画質指定MFPに決定する。
【0055】
なお,S212では,非高画質のMFPを優先的に抽出すると,MFP単体での非高画質の長期化を回避し,画像形成システム500全体での画品質の均一化が期待できる。また,直前に高画質指定MFPとなったMFP(後述するS214で記憶されるMFP)を抽出対象から外すことでも同様の効果が期待できる。
【0056】
高画質指定MFPを決定した後は,その高画質指定MFPに対して取得処理の実行を指示する実行要求を送信する(S213)。その後,高画質指定MFPに決定したMFPの識別番号を記憶し(S214),本処理を終了する。
【0057】
このように,第1の形態の画像形成システム500では,サーバ200が画像形成システム500に属する各MFP100,101,102,103の画品質状態を取得し,その中で適切なMFPを抽出してそのMFP(高画質指定MFP)に実行要求を送信している。一方,MFPは,その実行要求に応じて取得処理を実行する。つまり,画像形成システム500では,高画質のMFPの数が閾値よりも多くなるように取得処理の実行要否を決定している。これにより,高画質以外の画像形成装置のみになる状況が回避される。
【0058】
なお,本形態の取得管理処理は,高画質指定MFPから不能通知を受信した際には,S211以降の処理を行っているが,高画質指定MFPに限らず,画像形成システム500に属するMFPからの不能通知であればS211以降の処理を行うようにしてもよい。
【0059】
また,本形態では,高画質指定MFPを決定する際に,S211で取得した情報のうち画品質状態のみを利用しているが,その他の情報も利用して決定してもよい。例えば,次の条件によって高画質指定MFPを決定してもよい。まず,画品質状態が高画質不可以外のMFPが1台しかなく,他のMFPがすべて高画質不可であれば,その高画質不可以外のMFPを高画質指定MFPに決定する。画品質状態が高画質不可以外のMFPが複数台ある場合には,その中でトナー残量が最も多いMFPを高画質指定MFPに決定する。さらに,トナー残量が最も多いMFPが複数台ある場合(例えば,トナー満杯状態のMFPが複数台ある場合)には,補正画質係数が最も大きいMFPを高画質指定MFPに決定する。なお,これらは一例であって,この条件に限るものではない。
【0060】
また,高画質指定MFPに決定する台数を,画像形成システム500に属するMFPの台数に応じて可変としてもよい。ただし,数が多すぎると,一時的に印刷不能となるMFPが多くなる状況を招いたり,トナーの無駄が多くなる。そのため,画像形成システム500に属するMFPの数や,トナー残量によって,高画質指定MFPに決定するMFPの数を決定することが望ましい。
【0061】
[第2の形態]
続いて,第2の形態について説明する。本形態の画像形成システム600は,図7に示すように,MFP700,701,702,703を備え,各MFP700,701,702,703同士で通信可能に接続されている。一方で,第1の形態のようなサーバ200を有していない。本形態では,各MFPが,他のMFPの画品質状態を確認し,自装置の取得処理の実行要否を決定する。
【0062】
図8は,本形態の各MFP700,701,702,703が行う取得実行処理の手順を示している。本形態の取得実行処理も,所定の時間間隔(例えば1分)で定期的に実行される。
【0063】
まず,取得処理の実行要求を受信したか否かを判断する(S301)。各MFPは,自装置が印刷不能に陥ったり,高画質から非高画質に画品質状態が劣化した際に,実行要求を送信する(後述するS321)。そのため,S301では,他のMFPから出力された実行要求を受信したか否かを判断する。
【0064】
実行要求を受信していなければ(S301:NO),所定時間が経過したか否かを判断する(S311)。MFPは,経過時間を計測するタイマを有しており,所定時間が経過すると,フラグをオンする。フラグがオフからオンになることを契機に,経過時間を計るタイマはリセットされる。S311では,フラグのオンオフを判断し,フラグがオンしている場合にはオフする。つまり,S311は,通電継続中,定期的に成立する。所定時間が経過していると(S311:YES),S304に移行して,自装置が高画質指定MFPになれるか否かを判断する。S304以降の処理については後述する。
【0065】
所定時間が経過していない場合には(S311:NO),高画質印刷の不能を検知したか否かを判断する(S312)。不能を検知していない場合には(S312:NO),本処理を終了する。一方,不能を検知している場合には(S312:YES),画像形成システム600に属する他のMFPに対して,取得処理の実行要求を送信する(S321)。実行要求の送信後は,本処理を終了する。
【0066】
一方,自装置が実行要求を受信していた場合には(S301:YES),1秒から300秒までの無作為で選択された時間分,待機する(S302)。この待機時間は,各MFPによって異なるため,MFPごとに待機する時間の長さが異なる。
【0067】
待機時間の経過後,他のMFPから取得処理の完了通知を受信したか否かを判断する(S303)。完了通知を受信している場合には(S303:YES),既に他のMFPが取得処理を完了しており,そのMFPが高画質を維持している。そのため,自装置が高画質になる必要がないため,本処理を終了する。
【0068】
すなわち,この取得管理実行処理では,S302で無作為に作成した待機時間によって各MFPの取得処理の実行開始時間をずらしている。これにより,取得処理が重複して実行されることを回避する。
【0069】
完了通知を受信していない場合には(S303:NO),他のMFPよりも早期に待機時間が経過し,高画質指定MFPになる機会が与えられたことになる。そこで,画像形成システム600に属する他のMFPに問い合わせ,各MFPの現在の画品質状態を取得する(S304)。各MFPから得られる情報は,第1の形態と同様である。
【0070】
次に,S304で得られた情報と自装置の情報とに基づいて,自装置が高画質指定MFPとなれるか否かを判断する(S305)。S305では,例えば,高画質のMFPの数が閾値以下であり,自装置の画品質状態が高画質不可以外であれば,自装置を高画質指定MFPに決定する。それ以外の場合は否定する。
【0071】
自装置を高画質指定MFPに決定した場合には(S305:YES),取得処理の実行を開始する(S306)。取得処理の完了後は,取得処理を行った旨のメッセージを報知する(S307)。さらに,取得処理の完了を知らせる完了通知を他のMFPに送信する(S308)。完了通知の送信後,あるいは自装置を高画質指定MFPに決定しなかった場合には(S305:NO),本処理を終了する。
【0072】
このように,第2の形態の画像形成システム600では,個々のMFPが直接他のMFPの画品質状態を取得し,自装置を高画質指定MFPにするのか否かを決定している。すなわち,取得処理の実行要否を決定している。これにより,高画質以外の画像形成装置のみになる状況が回避される。
【0073】
なお,本形態では,高画質指定MFPを決定する際に,S304で取得した情報のうち画品質状態のみを利用しているが,その他の情報も利用して決定してもよい。例えば,次の条件によって高画質指定MFPになれるか否かを判断してもよい。まず,自装置の画品質状態が高画質不可以外であり,他のMFPがすべて高画質不可であれば,自装置を高画質指定MFPに決定する。他のMFPに高画質がなくかつ非高画質があり,自装置の画品質状態が非高画質である場合には,その中で自装置のトナー残量が最も多ければ自装置を高画質指定MFPに決定する。さらに,トナー残量が最も多いMFPが自装置の他にある場合(例えば,トナー満杯状態のMFPが複数台ある場合)には,その中で自装置の補正画質係数が最も大きければ自装置を高画質指定MFPに決定する。それ以外の場合には,他のMFPを高画質指定MFPに決定する。なお,これらは一例であって,この条件に限るものではない。
【0074】
また,S308の後に自装置が高画質指定MPFであることを記憶しておき,S312では,自装置が高画質指定MPFであり,かつ,現在は高画質印刷不能になったことを検知した場合に,S321に移行して他のMFPに実行要求を送信してもよい。
【0075】
また,本形態の取得管理実行処理は,S312で高画質印刷不能を検知してS321で他のMFPに実行要求を送信した後は,高画質印刷が不能である限りは実行しないものとしてもよい。
【0076】
以上詳細に説明したように画像形成システム500あるいは600では,画像形成装置の取得処理の実行要否が,他の画像形成装置の画品質状態に応じて決定される。そのため,例えば,低画質の画像形成装置のみになる状況や必要以上に高画質を維持する状況を回避することができる。
【0077】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,画像形成装置は,MFPに限らず,プリンタ,コピー機等,印刷機能を備えるものであれば適用可能である。
【0078】
また,実施の形態では,カラー印刷機能を有するMFPに本発明を適用しているが,画像形成装置はカラー印刷装置に限るものではない。例えばモノクロ印刷装置であっても,位置ずれ補正や濃度補正等を行うためにマークを形成するものであれば適用可能である。
【0079】
また,実施の形態では,1本の棒状のマークによってレジストパターン66を構成しているが,これに限るものではない。例えば,2本で1対の棒状マークからなり,少なくとも一方が主走査方向に沿った直線に対して所定の角度だけ傾いたものであってもよい。このようなレジストパターンであれば,副走査方向に加え,主走査方向の位置ずれ量も特定できる。
【0080】
また,実施の形態では,位置ずれを補正するためのレジストパターンを,搬送ベルト7上に形成されるマークとして説明しているが,これに限るものではない。例えば,濃度ずれを補正するための濃度パターンであってもよい。濃度の補正量を取得する際には,各色濃度差があるマークを幾つか搬送ベルト7上に形成し,位置ずれ検知と共通のセンサあるいは別の光学センサによって,反射光量を検出する。そして,その反射光量の大小から濃度を特定し,所望の濃度との差を算出する。
【0081】
また,実施の形態では,用紙搬送ベルト上にマークを形成する画像形成装置に本発明を適用しているが,これに限るものではない。例えば,中間転写ベルトを有する画像形成装置であっても,その中間転写ベルトにマークを形成する際に本発明を適用できる。
【0082】
また,実施の形態では,画像形成システム500に属する画像形成装置全ての画品質状態を取得しているが,必ずしも全ての画像形成装置でなくてもよい。例えば,所定台数の画像形成装置の画品質状態を取得して取得処理の実行要否を決定してもよい。
【0083】
また,第1の形態では,MFP100,101,102,103の他に,各MFPを管理するサーバ200を設けているが,MFP100,101,102,103のいずれか1つにサーバ機能を持たせてもよい。
【0084】
また,実施の形態では,高画質以外のMFPばかりにならないように,高画質のMFPの数が閾値よりも大きい状態を保っているが,さらに高画質のMFPばかりにならないように,高画質のMFPの数が第2の閾値(>閾値)よりも小さい状態を保ってもよい。この場合,MFPは,所定の間隔で取得処理を実行しているもので構成され,高画質のMFPの数が第2の閾値よりも多くなった際には,高画質のMFPの幾つかに対し,取得処理の実行間隔が長くなるように取得処理の実行条件を変更するとよい。これにより,必要以上に取得処理が実行されてトナーが無駄に消費される状況を低減できる。
【符号の説明】
【0085】
50 プロセス部
61 マークセンサ
66 レジストパターン
100,101,102,103 MFP
200 サーバ
500 画像形成システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置ずれと濃度ずれとの少なくとも一方を検出するためのマークを形成し,そのマークを測定することによって補正量の取得を行う取得処理を実行する画像形成装置を複数備える画像形成システムにおいて,
前記画像形成システムに属する画像形成装置の,画品質状態を確認する確認手段と,
前記確認手段にて確認した画像形成装置の画品質状態に基づいて,画像形成装置の前記取得処理の実行要否を決定する決定手段と,
を備えることを特徴とする画像形成システム。
【請求項2】
請求項1に記載する画像形成システムにおいて,
前記決定手段は,前記確認手段の確認結果に基づいて,画品質状態が基準よりも高い画像形成装置の数が閾値以下である場合に,画品質状態が基準よりも低い画像形成装置のうち少なくとも1つに対して前記取得処理の実行が必要と決定することを特徴とする画像形成システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載する画像形成システムにおいて,
前記確認手段は,画品質状態が基準よりも高い画像形成装置が印刷不能となったことを契機に,少なくとも印刷可能状態の画像形成装置の画品質状態を確認し,
前記決定手段は,前記確認手段による確認を契機に,少なくとも印刷可能状態の画像形成装置の1つを前記取得処理の実行対象に決定することを特徴とする画像形成システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載する画像形成システムにおいて,
画像形成装置の画品質状態を報知する報知手段を備えることを特徴とする画像形成システム。
【請求項5】
位置ずれと濃度ずれとの少なくとも一方を検出するためのマークを形成し,そのマークを測定することによって補正量の取得を行う取得処理を実行する取得手段と,
他の画像形成装置の,画品質状態を確認する確認手段と,
前記確認手段にて確認した他の画像形成装置の画品質状態に基づいて,自装置の前記取得処理の実行要否を決定する決定手段と,
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項5に記載する画像形成装置において,
前記取得処理が完了した際に,他の画像形成装置に完了通知を出力する通知手段と,
画品質状態が基準よりも高い状態での印刷ができなくなった場合に,他の画像形成装置に前記取得処理の実行要求を出力する要求手段と,
他の画像形成装置から前記実行要求を受け取ったことを契機に,他の画像形成装置と異なる長さが設定された待機時間が経過するまで待機し,その待機時間の終了時に他の画像形成装置から前記完了通知を受け取ったか否かを判断する判断手段と,
を備え,
前記確認手段は,前記判断手段が前記完了通知を受け取っていないと判断した場合に,他の画像形成装置の画品質状態を確認し,
前記決定手段は,前記確認手段による確認を契機に,前記取得処理の実行要否を決定することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−133706(P2011−133706A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293771(P2009−293771)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】