説明

画像形成装置、画像形成方法

【課題】潜像担持体の偏心に起因した結像光学系が形成する潜像のずれを抑制して、良好な潜像形成動作を実現可能とする技術を提供する。
【解決手段】潜像を担持する潜像担持体と、潜像担持体を回転駆動する駆動部と、第1の結像光学系、第1の結像光学系により潜像担持体に結像される光を発光する第1の発光素子、第1の結像光学系に対して潜像担持体の回転方向の異なる位置に配設された第2の結像光学系、および第2の結像光学系により潜像担持体に結像される光を発光する第2の発光素子を有する露光ヘッドと、第2の発光素子が発光するタイミングを調整する発光タイミング調整情報を記憶する記憶部と、第1の発光素子が発光した第1の発光タイミングおよび発光タイミング調整情報に基づいて第2の発光タイミングを決定し、第2の発光タイミングで第2の発光素子を発光させる制御部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発光素子の光により潜像担持体を露光する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、感光体ドラムを副走査方向に回転駆動しながら、発光素子を発光させて、感光体ドラム表面を露光する画像形成装置が知られている。また、特許文献1では、このような露光動作を行なうラインヘッドが記載されている。このラインヘッドでは、複数のレンズを主走査方向(副走査方向に直交する方向)に千鳥状に並べたレンズアレイが設けられている。また、各レンズに対しては発光素子が設けられており、発光素子からの光がレンズにより結像される。そして、この結像された光により感光体ドラムの表面が露光されて、感光体ドラム表面に潜像が形成される。
【0003】
上述のとおり、このラインヘッドでは、複数のレンズが千鳥状に並べられている。そのため、2個以上のレンズが副走査方向の異なる位置に配設されることとなる。そして、副走査方向において異なる位置に配設された各レンズは、それぞれ副走査方向の異なる位置を露光する。そこで、このラインヘッドでは特許文献1の図11に示すように、副走査方向において異なる位置に配設された各レンズが別々のタイミングで潜像を形成する。こうして各レンズにより形成された潜像が繋がって、主走査方向に1ライン分の潜像が形成される。
【0004】
より具体的に、第1のレンズおよび当該第1のレンズに対して副走査方向下流側に配設された第2のレンズを用いて説明すると、次のとおりである。まず、あるタイミングで第1のレンズが感光体ドラム表面に潜像を形成する。この潜像は感光体ドラム表面の移動に伴って、副走査方向の下流側に移動する。そして、第1のレンズが潜像を形成してから所定時間経過したタイミングで、第2のレンズが潜像を形成する。こうして第1のレンズおよび第2のレンズそれぞれが別々のタイミングで形成した潜像が主走査方向に繋がりあって、1本のライン状の潜像が形成される。したがって、このようなラインヘッドを用いて良好に潜像を形成するためには、第1のレンズおよび第2のレンズそれぞれが、感光体ドラム表面の移動に応じた適切なタイミングで潜像を形成することが重要となる。
【0005】
【特許文献1】特開2008−036937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、感光体ドラム等の潜像担持体の表面の速度(周速度)は、潜像担持体が偏心することによって変動する場合がある。つまり、潜像担持体が偏心すると、回転中心から潜像担持体表面までの距離が、潜像担持体表面における位置によって変わってしまう。その結果、潜像担持体表面において、回転中心からの距離が遠いところでは周速度が速くなり、回転中心からの距離が近いところでは周速度が遅くなる場合がある。そして、潜像担持体の偏心によって潜像担持体の周速度が変動すると、各結像光学系(第1のレンズおよび第2のレンズ)が形成した潜像が相互にずれてしまい(換言すれば、各結像光学系が形成した潜像が主走査方向にうまく繋がらず)、良好な潜像形成が行えないおそれがあった。
【0007】
この発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、潜像担持体の偏心に起因した結像光学系が形成する潜像のずれを抑制して、良好な潜像形成動作を実現可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明にかかる画像形成装置は、上記目的を達成するために、潜像を担持する潜像担持体と、潜像担持体を回転駆動する駆動部と、第1の結像光学系、第1の結像光学系により潜像担持体に結像される光を発光する第1の発光素子、第1の結像光学系に対して潜像担持体の回転方向の異なる位置に配設された第2の結像光学系、および第2の結像光学系により潜像担持体に結像される光を発光する第2の発光素子を有する露光ヘッドと、第2の発光素子が発光するタイミングを調整する発光タイミング調整情報を記憶する記憶部と、第1の発光素子が発光した第1の発光タイミングおよび発光タイミング調整情報に基づいて第2の発光タイミングを決定し、第2の発光タイミングで第2の発光素子を発光させる制御部と、を備えたことを特徴としている。
【0009】
また、この発明にかかる画像形成方法は、上記目的を達成するために、第1の結像光学系、第1の結像光学系により潜像担持体に結像される光を発光する第1の発光素子、第1の結像光学系に対して潜像担持体の回転方向の異なる位置に配設された第2の結像光学系、および第2の結像光学系により潜像担持体に結像される光を発光する第2の発光素子を有する露光ヘッドの第2の発光素子を発光させる第2の発光タイミングを決定する第1の工程と、第1の工程で決定された第2の発光タイミングで第2の発光素子を発光させる第2の工程と、を備え、第1の工程は、第2の発光素子が発光するタイミングを調整する発光タイミング調整情報を記憶部から読み出して、第1の発光素子が発光した第1の発光タイミングおよび発光タイミング調整情報に基づいて第2の発光タイミングを決定し、第2の発光タイミングで第2の発光素子を発光させることを特徴としている。
【0010】
このように構成された発明(画像形成装置、画像形成方法)では、潜像担持体の回転方向の異なる位置に第1の結像光学系および第2の結像光学系が配設されている。そして、第1の結像光学系に対応する第1の発光素子が発光して潜像担持体を露光し、第2の結像光学系に対応する第2の発光素子が発光して潜像担持体を露光する。ただし、上述のとおり、このような構成では、第1の結像光学系が形成した潜像と、第2の結像光学系が形成した潜像とが互いにずれるおそれがあった。これに対して、本発明では、第2の発光素子が発光するタイミングを調整する発光タイミング調整情報が記憶部に記憶されている。そして、第1の発光素子が発光した第1の発光タイミングおよび発光タイミング調整情報に基づいて第2の発光タイミングが決定され、当該第2の発光タイミングで第2の発光素子が発光する。したがって、潜像のずれを抑制することが可能となっている。
【0011】
ところで、上述した理由以外に、次のような理由によっても、第1の結像光学系が形成した潜像と、第2の結像光学系が形成した潜像とがずれる場合があった。つまり、潜像担持体を駆動する駆動部の駆動速度は変動することがあり、このような駆動速度の変動が発生すると、潜像担持体の速度も変動してしまう。これにより潜像のずれが発生する場合があった。
【0012】
そこで、潜像担持体の回転角度を検出する回転角度検出部を備え、制御部は、回転角度検出部の検出結果に基づいて、第2の発光素子の発光タイミングを調整するように構成しても良い。これにより、駆動速度変動に起因した潜像のずれも抑制することができ、より良好な露光動作を実行することが可能となる。
【0013】
また、潜像担持体は回転軸を有し、駆動部は回転軸を回転駆動する画像形成装置に対しては、本発明を適用することが好適である。なぜなら、このような画像形成装置では、駆動部の駆動速度が一定とならず潜像担持体の角速度が変動し、また潜像担持体が偏心することで、上述のような潜像担持体の周速度変動が引き起こされるおそれがあるからである。
【0014】
また、回転角度検出部は、潜像担持体の回転軸に配設されたエンコーダーであっても良い。このように潜像担持体の回転軸にエンコーダーを配設することで、このエンコーダーにより潜像担持体の回転角度を検出することができる。
【0015】
ところで、潜像担持体を画像形成装置の本体に着脱自在なカートリッジにより保持するように構成することができる。このような構成では、画像形成装置の保守のため、必要に応じてカートリッジが交換される。そして、カートリッジの交換に伴い潜像担持体が新しいものに変わった場合は、発光タイミング調整情報を新たな潜像担持体の偏心に応じたものとする必要がある。そこで、発光タイミング調整情報を記憶する記憶部をカートリッジに配設しておくと良い。このように構成した場合、カートリッジの工場出荷等の際に潜像担持体の偏心に応じた発光タイミング調整情報を記憶部に記憶させておけば、カートリッジの交換による潜像担持体の変更に伴って、発光タイミング調整情報を変更後の潜像担持体に応じた適切なものとすることができる。つまり、カートリッジ交換以外の特別な作業を行なわずとも、発光タイミング調整情報を常に適切なものとしておくことができるため、このような構成は好適である。
【0016】
なお、カートリッジに記憶部を配設した構成においては、記憶部は不揮発性メモリーであることが好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
A.基本構成
図1は本発明を適用可能な画像形成装置の一例を示す図である。図2は図1の画像形成装置の電気的構成を示す図である。この装置は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の4色のトナーを重ね合わせてカラー画像を形成するカラーモードと、ブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成するモノクロモードとを選択的に実行可能な画像形成装置である。この画像形成装置では、ホストコンピュータなどの外部装置から画像形成指令がCPUやメモリーなどを有するメインコントローラーMCに与えられると、このメインコントローラーMCがエンジンコントローラーECに制御信号を与え、これに基づき、エンジンコントローラーECがエンジン部ENGおよびヘッドコントローラーHCなど装置各部を制御して所定の画像形成動作を実行し、複写紙、転写紙、用紙およびOHP用透明シートなどの記録材たるシートに画像形成指令に対応する画像を形成する。
【0018】
この画像形成装置が有するハウジング本体3内には、電源回路基板、メインコントローラーMC、エンジンコントローラーECおよびヘッドコントローラーHCを内蔵する電装品ボックス5が設けられている。また、画像形成ユニット2、転写ベルトユニット8および給紙ユニット7もハウジング本体3内に配設されている。また、図1においてハウジング本体3内右側には、二次転写ユニット12、定着ユニット13およびシート案内部材15が配設されている。なお、給紙ユニット7は、ハウジング本体3に対して着脱自在に構成されている。そして、該給紙ユニット7および転写ベルトユニット8については、それぞれ取り外して修理または交換を行うことが可能な構成になっている。
【0019】
画像形成ユニット2は、複数の異なる色の画像を形成する4個の画像形成ステーション2Y(イエロー用)、2M(マゼンタ用)、2C(シアン用)および2K(ブラック用)を備えている。なお、図1においては、画像形成ユニット2の各画像形成ステーションは構成が互いに同一のため、図示の便宜上一部の画像形成ステーションのみに符号を付し、他の画像形成ステーションについては符号を省略する。
【0020】
各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kには、それぞれの色のトナー像がその表面に形成される感光体ドラム21が設けられている。各感光体ドラム21は、その回転軸AR21が主走査方向MD(図1の紙面に対して垂直な方向)に平行もしくは略平行となるように配置されている。また、各感光体ドラム21の回転軸AR21はそれぞれ専用の駆動モーターDMに接続され図中矢印D21の方向に所定速度で回転駆動される。これにより、感光体ドラム21表面が、主走査方向MDに直交もしくは略直交する副走査方向SDに搬送される。また、感光体ドラム21の周囲には、その回転方向に沿って帯電部23、ラインヘッド29、現像部25および感光体クリーナー27が配設されている。そして、これらの機能部によって帯電動作、潜像形成動作およびトナー現像動作が実行される。カラーモード実行時は、全ての画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kで形成されたトナー像を転写ベルトユニット8に設けた転写ベルト81に重ね合わせてカラー画像を形成する。また、モノクロモード実行時は、画像形成ステーション2Kのみを動作させてブラック単色画像を形成する。
【0021】
帯電部23は、その表面が弾性ゴムで構成された帯電ローラーを備えている。この帯電ローラーは帯電位置で感光体ドラム21の表面と当接して従動回転するように構成されており、感光体ドラム21の回転動作に伴って従動回転する。また、この帯電ローラーは帯電バイアス発生部(図示省略)に接続されており、帯電バイアス発生部からの帯電バイアスの給電を受けて帯電部23と感光体ドラム21が当接する帯電位置で感光体ドラム21の表面を所定の表面電位に帯電させる。
【0022】
ラインヘッド29は、その長手方向LGDが主走査方向MDに平行もしくは略平行となるように、かつ、その幅方向LTDが副走査方向SDに平行もしくは略平行となるように配置されている。ラインヘッド29は、複数の発光素子を備えており、感光体ドラム21に対向配置されている。そして、帯電部23により帯電された感光体ドラム21の表面に、発光素子からの光を結像して静電潜像を形成する。
【0023】
現像部25は、その表面にトナーを担持する現像ローラー251を有する。そして、現像ローラー251と電気的に接続された現像バイアス発生部(図示省略)から現像ローラー251に印加される現像バイアスによって、現像ローラー251と感光体ドラム21とが当接する現像位置において、帯電トナーが現像ローラー251から感光体ドラム21に移動してその表面に形成された静電潜像が顕像化される。
【0024】
現像位置において顕在化されたトナー像は、感光体ドラム21の回転方向D21に搬送された後、転写ベルト81と各感光体ドラム21が当接する一次転写位置TR1において転写ベルト81に一次転写される。
【0025】
また、感光体ドラム21の回転方向D21の一次転写位置TR1の下流側で且つ帯電部23の上流側に、感光体ドラム21の表面に当接して感光体クリーナー27が設けられている。この感光体クリーナー27は、感光体ドラムの表面に当接することで一次転写後に感光体ドラム21の表面に残留するトナーをクリーニング除去する。
【0026】
転写ベルトユニット8は、駆動ローラー82と、図1において駆動ローラー82の左側に配設される従動ローラー83(ブレード対向ローラー)と、これらのローラーに張架され駆動ローラー82の回転により図示矢印D81の方向(搬送方向)へ循環駆動される転写ベルト81とを備えている。また、転写ベルトユニット8は、転写ベルト81の内側に、カートリッジ装着時において各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kが有する感光体ドラム21各々に対して一対一で対向配置される、4個の一次転写ローラー85Y、85M、85Cおよび85Kを備えている。これらの一次転写ローラーは、それぞれ一次転写バイアス発生部(図示省略)と電気的に接続される。
【0027】
カラーモード実行時は、図1に示すように全ての一次転写ローラー85Y、85M、85Cおよび85Kを画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2K側に位置決めすることで、転写ベルト81を画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kそれぞれが有する感光体ドラム21に押し遣り当接させて、各感光体ドラム21と転写ベルト81との間に一次転写位置TR1を形成する。そして、適当なタイミングで一次転写バイアス発生部から一次転写ローラー85Y等に一次転写バイアスを印加することで、各感光体ドラム21の表面上に形成されたトナー像を、それぞれに対応する一次転写位置TR1において転写ベルト81表面に転写する。すなわち、カラーモードにおいては、各色の単色トナー像が転写ベルト81上において互いに重ね合わされてカラー画像が形成される。
【0028】
さらに、転写ベルトユニット8は、ブラック用一次転写ローラー85Kの下流側で且つ駆動ローラー82の上流側に配設された下流ガイドローラー86を備える。この下流ガイドローラー86は、一次転写ローラー85Kが画像形成ステーション2Kの感光体ドラム21に当接して形成する一次転写位置TR1での一次転写ローラー85Kとブラック用感光体ドラム21(K)との共通接線上において、転写ベルト81に当接するように構成されている。
【0029】
また、下流ガイドローラー86に巻き掛けられた転写ベルト81の表面に対向してパッチセンサー89が設けられている。パッチセンサー89は例えば反射型フォトセンサーからなり、転写ベルト81表面の反射率の変化を光学的に検出することにより、必要に応じて転写ベルト81上に形成されるパッチ画像の位置やその濃度などを検出する。
【0030】
給紙ユニット7は、シートを積層保持可能である給紙カセット77と、給紙カセット77からシートを一枚ずつ給紙するピックアップローラー79とを有する給紙部を備えている。ピックアップローラー79により給紙部から給紙されたシートは、レジストローラー対80によって給紙タイミングが調整された後、シート案内部材15に沿って、駆動ローラー82と二次転写ローラー121とが当接する二次転写位置TR2に給紙される。
【0031】
二次転写ローラー121は、転写ベルト81に対して離当接自在に設けられ、二次転写ローラー駆動機構(図示省略)により離当接駆動される。定着ユニット13は、ハロゲンヒータ等の発熱体を内蔵して回転自在な加熱ローラー131と、この加熱ローラー131を押圧付勢する加圧部132とを有している。そして、その表面に画像が二次転写されたシートは、シート案内部材15により、加熱ローラー131と加圧部132の加圧ベルト1323とで形成するニップ部に案内され、該ニップ部において所定の温度で画像が熱定着される。加圧部132は、2つのローラー1321,1322と、これらに張架される加圧ベルト1323とで構成されている。そして、加圧ベルト1323の表面のうち、2つのローラー1321,1322により張られたベルト張面を加熱ローラー131の周面に押し付けることで、加熱ローラー131と加圧ベルト1323とで形成するニップ部が広くとれるように構成されている。また、こうして定着処理を受けたシートはハウジング本体3の上面部に設けられた排紙トレイ4に搬送される。
【0032】
前記した駆動ローラー82は、転写ベルト81を図示矢印D81の方向に循環駆動するとともに、二次転写ローラー121のバックアップローラーとしての機能も兼ねている。駆動ローラー82の周面には、厚さ3mm程度、体積抵抗率が1000kΩ・cm以下のゴム層が形成されており、金属製の軸を介して接地することにより、図示を省略する二次転写バイアス発生部から二次転写ローラー121を介して供給される二次転写バイアスの導電経路としている。このように駆動ローラー82に高摩擦かつ衝撃吸収性を有するゴム層を設けることにより、二次転写位置TR2へシートが進入する際の衝撃が転写ベルト81に伝達されることに起因する画質の劣化を防止することができる。
【0033】
また、この装置では、ブレード対向ローラー83に対向してクリーナー部71が配設されている。クリーナー部71は、クリーナーブレード711と廃トナーボックス713とを有する。クリーナーブレード711は、その先端部を転写ベルト81を介してブレード対向ローラー83に当接することで、二次転写後に転写ベルト81に残留するトナーや紙粉等の異物を除去する。そして、このように除去された異物は、廃トナーボックス713に回収される。また、クリーナーブレード711及び廃トナーボックス713は、ブレード対向ローラー83と一体的に構成されている。
【0034】
なお、各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kの感光体ドラム21、帯電部23、現像部25および感光体クリーナー27を一体的にカートリッジとしてユニット化している。そして、このカートリッジが装置本体に対し着脱可能に構成されている。また、各カートリッジには、該カートリッジに関する情報を記憶するための不揮発性メモリーがそれぞれ設けられている。そして、エンジンコントローラーECと各カートリッジとの間で無線通信が行われる。こうすることで、各カートリッジに関する情報がエンジンコントローラーECに伝達されるとともに、各メモリー内の情報が更新記憶される。これらの情報に基づき各カートリッジの使用履歴や消耗品の寿命が管理される。
【0035】
また、メインコントローラーMC、ヘッドコントローラーHCおよび各ラインヘッド29がそれぞれ別ブロックとして構成され、これらは互いにシリアル通信線を介して接続されている。各ブロック間でのデータのやりとり動作について、図2を参照しながら説明する。外部装置からメインコントローラーMCに画像形成指令が与えられると、メインコントローラーMCは、エンジンコントローラーECにエンジン部ENGを起動させるための制御信号を送信する。また、メインコントローラーMCに設けられた画像処理部100が、画像形成指令に含まれる画像データに対して所定の信号処理を行い、各トナー色ごとのビデオデータVDを生成する。
【0036】
一方、制御信号を受けたエンジンコントローラーECは、エンジン部ENG各部の初期化およびウォームアップを開始する。これらが完了して画像形成動作を実行可能な状態になると、エンジンコントローラーECは、各ラインヘッド29を制御するヘッドコントローラーHCに対し画像形成動作の開始のきっかけとなる同期信号Vsyncを出力する。
【0037】
ヘッドコントローラーHCには、各ラインヘッドを制御するヘッド制御モジュール400と、メインコントローラーMCとのデータ通信を司るヘッド側通信モジュール300とが設けられている。一方、メインコントローラーMCにもメイン側通信モジュール200が設けられている。メイン側通信モジュール200は、ヘッド側通信モジュール300からの要求毎に1ライン分のビデオデータVDをヘッド側通信モジュール300に出力する。ヘッド側通信モジュール300は、このビデオデータVDをヘッド制御モジュール400に受け渡す。そして、ヘッド制御モジュール400は受け取ったビデオデータVDに基づいて各ラインヘッド29の発光素子を発光させる。なお、後述するように、発光素子の発光タイミングは水平リクエスト信号H−reqに基づいて制御される。つまり、この水平リクエスト信号H−reqは発光素子の発光タイミングを与える信号であり、発光素子は水平リクエスト信号H−reqに同期して発光する。
【0038】
図3は、ラインヘッドの概略を示す斜視図である。同図のA−A線は、後述する方向Da-aと平行な線である。上述したとおり、ラインヘッド29の長手方向LGDは主走査方向MDに平行もしくは略平行であり、ラインヘッド29の幅方向LTDは副走査方向SDに平行もしくは略平行である。また、ラインヘッド29の長手方向LGDと幅方向LTDは互いに直交もしくは略直交している。ラインヘッド29が備える各発光素子は感光体ドラム21の表面に向けて光ビームを射出する。そこで、本明細書では、長手方向LGDおよび幅方向LTDに直交もしくは略直交する方向であって、発光素子から感光体ドラム表面に向う方向を、光ビームの進行方向Doaとする。この光ビームの進行方向Doaは、後述する結像光学系の光軸OAと平行もしくは略平行である。
【0039】
ラインヘッド29が備えるケース291の長手方向LGDの両端には、位置決めピン2911とねじ挿入孔2912が設けられている。そして、感光体ドラム21に対して位置決めされた感光体カバー(図示省略)の位置決め孔(図示省略)に、位置決めピン2911を嵌め込むことで、ラインヘッド29を感光体ドラム21に対して位置決めすることができる。さらに、ねじ挿入孔2912に挿入した固定ねじを、感光体カバーのねじ孔(図示省略)にねじ込むことで、ラインヘッド29を感光体ドラム21に対して固定することができる。
【0040】
ケース291の内部には、ヘッド基板293、遮光部材297および2枚のレンズアレイ299(299A,299B)が、光ビームの進行方向Doaにこの順番で配置されている。発光素子グループ295は複数の発光素子をグループ化したものであり、ヘッド基板293の裏面に二次元的かつ離散的に配置されている。
【0041】
レンズアレイ299A、299Bのそれぞれでは、複数の発光素子グループ295に一対一の対応関係で複数のレンズLSが対向している。こうして、各レンズアレイ299において複数のレンズLSが2次元的に配置されている。また、レンズアレイ299とヘッド基板293の間に配置された遮光部材297には、光ビームの進行方向Doaに貫通する導光孔2971が設けられている。この導光孔2971は各発光素子グループ295毎に設けられている。よって、発光素子グループ295は、この導光孔2971を介して対応するレンズLSに向けて光ビームを射出する。そして、2枚のレンズLS、LSがこの光ビームを感光体ドラム21表面にスポットとして結像する。このように遮光部材297を設けることで、発光素子グループ295が射出した光が当該発光素子グループ295に対応しないレンズLSに入射するというクロストークが抑制されている。
【0042】
図4は、ヘッド基板の裏面の構成を示す平面図であり、ヘッド基板293の表面側から裏面を見た場合に相当する。なお、同図では、レンズLSが二点差線で示されているが、これはレンズアレイ299A、299BそれぞれのレンズLSと発光素子グループ295との対応関係を示すためのものであり、ヘッド基板293にレンズLSが形成されていることを示すものではない。同図を用いて、発光素子グループ295の構成および配置の詳細を説明する。
【0043】
同図に示すように、複数の発光素子グループ295のそれぞれは、長手方向LGDに2行千鳥で並べた8個の発光素子2951で構成されている。そして、複数の発光素子グループ295を長手方向LGDに間隔Dgの3倍の間隔で直線状に並べて、発光素子グループ行295Rが構成されている。これに対応して、レンズアレイ299では、複数のレンズLSを長手方向LGDに間隔Dg×3の間隔で直線状に並べて、レンズ行LSRが構成されている。さらに、3行の発光素子グループ行295Rが、幅方向LTDに間隔Dtで設けられている。これに対応して、レンズアレイ299では、3行のレンズ行LSRが、幅方向LTDに間隔Dtで設けられる。しかも、各発光素子グループ行295R(各レンズ行LSR)は、長手方向LGDに間隔Dgだけ互いにずらして配置されている。こうして、各発光素子グループ295は、長手方向LGDにおいて互いに異なる位置に配置される。これに対応して、レンズアレイ299では、各レンズLSが長手方向LGDにおいて互いに異なる位置に配置される。そして、3個の発光素子グループ295(および、3個のレンズLS)が方向Da-aに直線状に並んで配置されることとなる。なお、発光素子グループ295の位置は、光の進行方向Doaから正面視した場合における発光素子グループ295の重心として求めることができる。また、レンズLSの位置は、光の進行方向Doaから正面視した場合におけるレンズLSの頂点の位置として求めることができる。
【0044】
図5は、水平リクエスト信号が出力されるタイミングを示すタイミングチャートである。上述したとおり、発光素子2951の発光は水平リクエスト信号H−reqに同期する。なお、本明細書において、「水平リクエスト信号H−reqに同期して発光素子2951が発光する」と表現した場合は、水平リクエスト信号H−reqの出力と同時に発光素子2951が発光する場合と、水平リクエスト信号H−reqの出力から所定時間をおいて発光素子2951が発光する場合との両方を含むものとする。
【0045】
同図に示すように、各発光素子2951を所定間隔で発光させて感光体ドラム21表面に潜像を形成するために、エンジンコントローラーECは所定間隔(水平リクエスト信号間隔ΔH−req)で水平リクエスト信号H−reqを出力する。ただし、上記ラインヘッド29では、3行のレンズ行LSR1〜LSR3が副走査方向SDの互いに異なる位置に配置されている。そこで、このラインヘッド29の発光を制御するにあたって、エンジンコントローラーECは、3行のレンズ行LSR1〜LSR3それぞれに対応する3種類の水平リクエスト信号H−reqを出力する。したがって、レンズ行LSR1のレンズLS_1により結像される光を発光する発光素子グループ295は、水平リクエスト信号H−req_1に同期して発光し、レンズ行LSR2のレンズLS_2により結像される光を発光する発光素子グループ295は、水平リクエスト信号H−req_2に同期して発光し、レンズ行LSR3のレンズLS_3により結像される光を発光する発光素子グループ295は、水平リクエスト信号H−req_3に同期して発光する。そして、図6〜図9に例示するようにして、感光体ドラム21表面が露光される。
【0046】
図6は時刻t(1)での露光動作を示す平面図であり、図7は時刻t(2)での露光動作を示す平面図であり、図8は時刻t(1+160)=t(161)での露光動作を示す平面図であり、図9は時刻t(1+160×2)=t(321)での露光動作を示す平面図である。図6〜図9は、感光体ドラム表面を感光体ドラムの裏面側から透視した場合に相当する。また、時刻t(1)、t(2)、t(1+160)、t(1+160×2)はそれぞれ図5で相当符号が付された時刻である。これらの図において、白丸印は1個の発光素子2951からの光が結像されて形成されるスポットSPである。また、スポットグループSGは1個の発光素子グループ295により形成される複数のスポットSPの集合である。さらに、ハッチングが施された丸印はスポットSPにより露光されて形成されたスポット潜像SIであり、スポット潜像グループSIGは1個の発光素子グループ295により形成されるスポット潜像SIの集合である。
【0047】
これらの図では、画素PXが破線四角で表されている。つまり、感光体ドラム21表面には複数の画素PXが仮想的に設けられており、詳しくは、主走査方向MDに1ライン分の画素PXを並べたものが、副走査方向SDに複数ライン並んでいる。主走査方向MDにおける隣接画素間のピッチは主走査画素ピッチRmdであり、副走査方向SDにおける隣接画素間のピッチは副走査画素ピッチRsdである。また、レンズ行LSR1、LSR2、LSR3の副走査方向SDへの間隔Dtは、副走査画素ピッチRsdの整数(160)倍となっている。このように、間隔Dtが副走査画素ピッチRsdの整数倍である場合、レンズLS_1、LS_2、LS_3それぞれに対応する発光素子2951を同時発光させて、各画素PXにスポットSPを形成することができる。
【0048】
時刻t(1)に出力される水平リクエスト信号H−req_1に同期してレンズLS_1に対応する発光素子グループ295が発光する。こうして、スポットグループSG_1が形成されて(図6)、このスポットグループSG_1により露光された部分にスポット潜像グループが形成される。そして、感光体ドラム21表面が副走査方向に1画素Rsdだけ移動した時刻t(2)に水平リクエスト信号H−req_1が再び出力され、この水平リクエスト信号H−req_1に同期してレンズLS_1に対応する発光素子グループ295が発光する。これにより、図7に示すスポットグループSG_1が形成される。なお、図7に示すスポット潜像グループSIG_1は、時刻t(1)に形成されたものである。このように、感光体ドラム21表面が副走査方向SDに1画素Rsdだけ移動するのに要する時間間隔毎に水平リクエスト信号H−reqを出力することで、各画素PXにスポット潜像SIを形成することができる。
【0049】
そして、時刻t(1)から、感光体ドラム21表面が副走査方向に1画素Rsd×160だけ移動した時刻t(1+160)には、レンズLS_2による潜像形成が始まる。つまり、同時刻t(1+160)に水平リクエスト信号H−req_2が出力され、この水平リクエスト信号H−req_2に同期して、今度はレンズLS_2に対応する発光素子グループ295が発光する。こうして、スポットグループSG_2が形成されて(図8)、このスポットグループSG_2により露光された部分にスポット潜像グループが形成される。ここで、図8に示すスポット潜像グループSIG_1は時刻t(1)に形成されたものである。このようにして、時刻t(1)に形成されたスポット潜像グループSIG_1に主走査方向MDに隣接して、スポットグループSP_2によりスポット潜像グループが形成される。なお、時刻t(1+160)では、レンズLS_1に対応する発光素子グループ295も発光しており、スポットグループSG_1が形成されている。また、図8では、時刻t(2)〜t(160)で形成されたスポット潜像SIの記載は省略されている。
【0050】
さらに、時刻t(1)から、感光体ドラム21表面が副走査方向に1画素Rsd×160×2だけ移動した時刻t(1+160×2)には、レンズLS_3による潜像形成が始まる。つまり、同時刻t(1+160×2)に水平リクエスト信号H−req_3が出力され、この水平リクエスト信号H−req_3に同期して、今度はレンズLS_3に対応する発光素子グループ295が発光する。こうして、スポットグループSG_3が形成されて(図9)、このスポットグループSG_3により露光された部分にスポット潜像グループが形成される。ここで、図9に示すスポット潜像グループSIG_1は時刻t(1)に形成されたものであり、スポット潜像グループSIG_2は時刻t(1+160)に形成されたものである。このようにして、時刻t(1)に形成されたスポット潜像グループSIG_1および時刻t(1+160)に形成されたスポット潜像グループSIG_2に主走査方向MDに隣接して、スポットグループSP_3によりスポット潜像グループが形成される。なお、時刻t(1+160×2)では、レンズLS_1およびレンズLS_2に対応する発光素子グループ295も発光しており、スポットグループSG_1およびスポットグループSG_2が形成されている。また、図9では、時刻t(2)〜t(320)で形成されたスポット潜像SIの記載は省略されている。
【0051】
B.第1実施形態
上述したような画像形成装置は、感光体ドラム21表面の副走査方向SDへの移動に応じた発光タイミングでラインヘッド29の各発光素子2951を発光させて、感光体ドラム21表面に所望の潜像を形成する。このとき、感光体ドラム21は、その回転軸AR21に取り付けられた駆動モーターDMの回転駆動力を受けて回転する。しかしながら、次に詳しく示すように、感光体ドラム21の中心に対して回転軸AR21が偏心する場合があり、この偏心によって感光体ドラム21表面の速度(周速度)が変動する場合があった。
【0052】
図10は、感光体ドラムの偏心が感光体ドラムの周速度に与える影響を示す図である。同図の「感光体ドラム側面図」の欄は長手方向LGDから感光体ドラム21の側面を見た場合に相当する。同欄が示すように、感光体ドラム21の中心CT21が、回転軸AR21の中心CTcyに対して同図右側にずれてしまっており、感光体ドラム21の偏心が発生している。このような偏心が発生すると、回転軸AR21の中心CTcy(回転中心)から感光体ドラム21表面までの距離が、当該表面における位置によって変わってしまう。その結果、感光体ドラム21表面において、回転中心CTcyからの距離が遠いところでは周速度が速くなり、回転中心CTcyからの距離が近いところでは周速度が遅くなる場合がある。
【0053】
この様子を示したものが、同図の「感光体ドラム周速度」の欄に示すグラフである。このグラフの横軸は感光体ドラムの回転角度θ(deg)を示し、縦軸は感光体ドラム21の周速度V[SG]を表している。感光体ドラム21の回転角度θは、感光体ドラム21に固定された原点θ0からスポットグループSGの形成位置までの角度であり、感光体ドラム21の回転に伴って変化する値である(「感光体ドラム側面図」)。なお、原点θ0のとり方は任意であり、図10で示す原点θ0のとり方は一例である。また、スポットグループSGの形成位置は、例えばスポットグループSGの幾何重心として求めることができる。同グラフでは、スポットグループSGの位置での周速度が示されている。同グラフが示すように、感光体ドラム21の偏心のため、感光体ドラム21の周速度は平均周速度Vavを中心として周期360°(感光体ドラム21の1回転の周期)で周期変動している。そして、このような感光体ドラム21の周速度変動が発生すると、主走査方向MDに隣接して形成されるべき潜像(スポット潜像グループSIG_1、SIG_2、SIG_3)が副走査方向SDにずれてしまう場合があった。
【0054】
このように、良好に潜像形成を行うためには、感光体ドラム21の偏心が潜像の位置に与える影響を抑制することが重要となる。そこで、本実施形態は、このような感光体ドラム21の偏心によらず、各レンズLSが形成する潜像の位置を高精度に制御するために、水平リクエスト信号間隔ΔH−reqを調整している。つまり、同図の「調整後のΔH−req」の欄に示すように、感光体ドラムの周速度V[SG]が遅くなる回転角度θでは、水平リクエスト間隔ΔH−reqを長くする一方、感光体ドラムの周速度V[SG]が速くなる回転角度θでは、水平リクエスト間隔ΔH−reqを短くする。具体的には、同欄に示した調整後の水平リクエスト信号間隔ΔH−reqと回転角度θとを対応付けたデータ(信号間隔調整用データ)がメモリーMMに記憶されている。そして、エンジンコントローラーECは、露光動作実行中に感光体ドラム21の回転角度θを逐次検出し、検出した回転角度θとメモリーMMが記憶する信号間隔調整用データとに基づいて、各水平リクエスト信号H−req_1、H−req_2、H−req_3の出力タイミングを決定している。次に、感光体ドラム21の回転角度θを検出するための構成について説明する。
【0055】
図11は、感光体ドラムの回転角度を検出するための構成を示す斜視図であり、図12は、感光体ドラムの回転角度を検出するための構成を示す側面図である。これらの図に示すように、主走査方向MDに平行もしくは略平行な回転軸AR21の一端部に、エンコーダーECDが取り付けられている。エンコーダーECDは、円盤状のエンコーダーディスクEDと、透過型のフォトセンサーSCとを有している。エンコーダーディスクEDの中心部は感光体ドラム21の回転軸AR21に取り付けられており、エンコーダーディスクEDは感光体ドラム21の回転に伴って回転自在に構成されている。
【0056】
エンコーダーディスクEDには、回転軸AR21を中心として放射状に複数本(64本)のスリットSLが設けられている。そして、このスリットSLを検出したフォトセンサーSCが出力するスリット検出信号が、エンジンコントローラーECに出力される。また、64本のスリットSLの内の原点θ0(図10)に対応する位置にあるスリットSL1(基準スリットSL1)は、他のスリットSL(SL2〜SL64)と比べて長い。したがって、基準スリットSL1のスリット検出信号は、基準スリットSL1以外のスリットSL(SL2〜SL64)のスリット検出信号と異なる。そのため、エンジンコントローラーECは、フォトセンサーSCから受け取ったスリット検出信号が、基準スリットSL1のスリット検出信号から何回目のものであるかを判断して、感光体ドラム21の回転角度θを検出することができる。言わば、エンジンコントローラーECは、基準スリットSL1を基点に回転角度θを検出することができる。さらには、エンジンコントローラーECは、この回転角度θの時間変化から角速度を検出することもできる。
【0057】
このように第1実施形態では、各水平リクエスト信号H−req_1、H−req_2、H−req_3の出力タイミングを感光体ドラム21の偏心に応じて決定している。したがって、例えば、スポット潜像グループSIG_1に対してスポット潜像グループSIG_2がずれてしまったり、あるいはスポット潜像グループSIG_2に対してスポット潜像グループSIG_3がずれてしまったりするとの問題の発生が抑制されている。この結果、良好な潜像形成を実行することが可能となっている。
【0058】
C.第2実施形態
ところで、上述の画像形成装置では、駆動モーターDMが感光体ドラム21を駆動している。しかしながら、駆動モーターの駆動速度は変動することがあり、このような駆動速度の変動が発生すると、感光体ドラム21表面の速度も変動してしまう。その結果、上述したような潜像のずれが発生する場合があった。このような問題に対応するために、第2実施形態では、エンコーダーECDの出力から求まる駆動速度変動に基づいて、水平リクエスト信号H−reqを補正している。なお、以下の説明では、まず、上述した感光体ドラム21の偏心に応じた調整を水平リクエスト信号H−reqに行なわずに、駆動速度変動に基づく水平リクエスト信号H−reqの補正だけを行う場合について説明する。その後に、感光体ドラム21の偏心に応じた調整および駆動速度変動の両方に基づく補正を、水平リクエスト信号H−reqに対して行なう方法について説明する。
【0059】
図13は、駆動速度変動に基づく水平リクエスト信号の補正方法を示すタイミングチャートである。本実施形態では、エンコーダーECDの信号Secdに基づいて、水平リクエスト信号間隔ΔH−reqを補正している。なお、この信号SecdはセンサーSCがスリットSLを検出する毎に出力されるスリット検出信号である。
【0060】
まず、信号Secd(0)が出力されてから信号Secd(1)が出力されるまでの信号間隔Ts(0)が計測される。そして、この信号間隔Ts(0)に基づいて、信号Secd(1)以後の水平リクエスト信号間隔ΔH−req(1)が決定される。具体的には、次式
ΔH−req(1)=(Ts(0)/Ts(ref))×ΔH−req(ref) …式1
により水平リクエスト信号間隔ΔH−req(1)が決定される。ここで、基準信号間隔Ts(ref)は、感光体ドラム21の駆動速度に変動が無い場合でのエンコーダー信号Secdの出力間隔である。また、基準水平リクエスト信号間隔ΔH−req(ref)は、駆動速度変動に基づく補正を行わない場合での水平リクエスト信号間隔ΔH−reqである。
【0061】
つまり、一般的には次のとおりである。信号Secd(n-1)が出力されてから信号Secd(n)が出力されるまでの信号間隔Ts(n-1)が計測される。そして、この信号間隔Ts(n-1)に基づいて、信号Secd(n)以後の水平リクエスト信号間隔ΔH−req(n)が、次式
ΔH−req(n)=(Ts(n-1)/Ts(ref))×ΔH−req(ref) …式2
に基づいて決定される。ここで、nは1以上の整数である。また、図13中のmも1以上の整数である。
【0062】
このように、第2実施形態では、エンコーダーECDの信号Secdが出力される間隔Tsに基づいて水平リクエスト信号H−req_1、H−req_2、H−req_3を補正している。したがって、駆動速度変動に起因した上述の潜像のずれを抑制することができ、より良好な露光動作を実行することが可能となっている。なお、第1実施形態で示したような、感光体ドラム21の偏心に応じた調整を水平リクエスト信号H−reqに対して行う場合は、上記一般式2において、基準水平リクエスト信号間隔ΔH−req(ref)に対して、図10で示した調整後の水平リクエスト信号間隔ΔH−reqを代入すれば良い。ただし、代入する調整後の水平リクエスト信号間隔ΔH−reqは、エンコーダー信号Secd(n-1)〜Secd(n)に応じた回転角度θに対応するものとする。つまり、感光体ドラム21の偏心に応じて調整した調整後の水平リクエスト信号間隔ΔH−reqを、さらにエンコーダー信号Secdの出力間隔Tsに基づいて補正することで、感光体ドラム21の偏心および駆動速度変動の両方に起因した潜像のずれを抑制することができる。
【0063】
D.その他
このように上記実施形態では、感光体ドラム21が本発明の「潜像担持体」に相当し、駆動モーターDMが本発明の「駆動部」に相当し、ラインヘッド29が本発明の「露光ヘッド」に相当し、メモリーMMが本発明の「記憶部」に相当し、エンジンコントローラーECが本発明の「制御部」に相当し、信号間隔調整用データが本発明の「発光タイミング調整情報」に相当し、エンコーダーECDが本発明の「回転角度検出部」に相当している。また、図5等に示した時刻t(1)と時刻t(1+160)の関係が本発明の「第1の発光タイミング」と「第2の発光タイミング」との関係に相当し、また、時刻t(1+160)と時刻t(1+160×2)の関係が本発明の「第1の発光タイミング」と「第2の発光タイミング」との関係に相当している。
【0064】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。つまり、上記実施形態では、信号間隔調整用データをメモリーMMに記憶させていたが、信号間隔調整用データを別の記憶素子に記憶させても良く、例えば、上述した画像形成装置の本体に着脱自在なカートリッジに設けられた不揮発性メモリーに信号間隔調整用データを記憶させても良い。また、この場合、次のような効果が奏される。つまり、このような構成では、画像形成装置の保守のため、必要に応じてカートリッジが交換される。そして、カートリッジの交換に伴い感光体ドラム21が新しいものに変わった場合は、信号間隔調整用データを新たな感光体ドラム21の偏心に応じたものとする必要がある。そこで、カートリッジの工場出荷等の際に感光体ドラム21の偏心に応じた信号間隔調整用データをカートリッジの不揮発性メモリーに記憶させておけば、カートリッジの交換による感光体ドラム21の変更に伴って、信号間隔調整用データを変更後の感光体ドラム21に応じた適切なものとすることができる。つまり、カートリッジ交換以外の特別な作業を行なわずとも、信号間隔調整用データを常に適切なものとしておくことができるため、このような構成は好適である。
【0065】
また、上記実施形態では、2枚のレンズアレイ299が設けられており、レンズアレイ299AのレンズLSとレンズアレイ299BのレンズLSとで1つの結像光学系が構成されている。しかしながら、レンズアレイ299の枚数はこれに限られない。
【0066】
また、上記実施形態のレンズアレイでは、3行のレンズ行LSRが設けられている。しかしながら、レンズ行LSRの行数はこれに限られない。
【0067】
また、上記実施形態では、8の発光素子2951から発光素子グループ295が構成されている。しかしながら、発光素子グループ295を構成する発光素子2951の個数はこれに限られない。
【0068】
上記実施形態では、発光素子2951はボトムエミッション型の有機EL素子であったが、発光素子2951の構成はこれに限られない。つまり、発光素子2951は、トップエミッション型の有機EL素子でも良く、LED(Light Emitting Diode)であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明を適用可能な画像形成装置の一例を示す図。
【図2】図1の画像形成装置の電気的構成を示す図。
【図3】ラインヘッドの概略を示す斜視図。
【図4】ヘッド基板の裏面の構成を示す平面図。
【図5】水平リクエスト信号が出力されるタイミングを示すタイミングチャート。
【図6】時刻t(1)での露光動作を示す平面図。
【図7】時刻t(2)での露光動作を示す平面図。
【図8】時刻t(1+160)=t(161)での露光動作を示す平面図。
【図9】時刻t(1+160×2)=t(321)での露光動作を示す平面図。
【図10】感光体ドラムの偏心が感光体ドラムの周速度に与える影響を示す図。
【図11】感光体ドラムの回転角度を検出するための構成を示す斜視図。
【図12】感光体ドラムの回転角度を検出するための構成を示す側面図。
【図13】駆動速度変動に基づく水平リクエスト信号補正を示すタイミングチャート。
【符号の説明】
【0070】
21…感光体ドラム、 29…ラインヘッド、 295…発光素子グループ、 2951…発光素子、 299,299A,299B…レンズアレイ、 AR21…回転軸、 DM…駆動モーター、 EC…エンジンコントローラー、 ECD…エンコーダー、 ED…エンコーダーディスク、 H−req_1,H−req_2,H−req_3…水平リクエスト信号、 ΔH−req…水平リクエスト信号間隔、 LS_1,LS_2,LS_3…レンズ、 MD…主走査方向、SD…副走査方向、 MM…メモリー、 SG…スポットグループ、 SI…スポット潜像、 SIG…スポット潜像グループ、 SP…スポット、 θ…回転角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜像を担持する潜像担持体と、
前記潜像担持体を回転駆動する駆動部と、
第1の結像光学系、前記第1の結像光学系により前記潜像担持体に結像される光を発光する第1の発光素子、前記第1の結像光学系に対して前記潜像担持体の回転方向の異なる位置に配設された第2の結像光学系、および前記第2の結像光学系により前記潜像担持体に結像される光を発光する第2の発光素子を有する露光ヘッドと、
前記第2の発光素子が発光するタイミングを調整する発光タイミング調整情報を記憶する記憶部と、
前記第1の発光素子が発光した第1の発光タイミングおよび前記発光タイミング調整情報に基づいて第2の発光タイミングを決定し、前記第2の発光タイミングで前記第2の発光素子を発光させる制御部と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記潜像担持体の回転角度を検出する回転角度検出部を備え、前記制御部は、前記回転角度検出部の検出結果に基づいて前記第2の発光タイミングを調整する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記潜像担持体は回転軸を有し、前記駆動部は前記回転軸を回転駆動する請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記回転角度検出部は、前記潜像担持体の前記回転軸に配設されたエンコーダーである請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記記憶部は、前記潜像担持体を保持し、画像形成装置の本体に着脱自在なカートリッジに配設されている請求項3または4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記記憶部は不揮発性メモリーである請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
第1の結像光学系、前記第1の結像光学系により潜像担持体に結像される光を発光する第1の発光素子、前記第1の結像光学系に対して前記潜像担持体の回転方向の異なる位置に配設された第2の結像光学系、および前記第2の結像光学系により前記潜像担持体に結像される光を発光する第2の発光素子を有する露光ヘッドの前記第2の発光素子を発光させる第2の発光タイミングを決定する第1の工程と、
前記第1の工程で決定された第2の発光タイミングで前記第2の発光素子を発光させる第2の工程と、
を備え、
前記第1の工程は、前記第2の発光素子が発光するタイミングを調整する発光タイミング調整情報を記憶部から読み出して、前記第1の発光素子が発光した第1の発光タイミングおよび前記発光タイミング調整情報に基づいて前記第2の発光タイミングを決定し、前記第2の発光タイミングで前記第2の発光素子を発光させることを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−158836(P2010−158836A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−2436(P2009−2436)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】