説明

画像形成装置および画像形成装置の制御方法

【課題】ポリゴンモーターの起動時間に関わる動作環境温度に応じて、より早く画像形成を開始できるようにする。
【解決手段】画像形成装置のコントローラーは、検出された温度が予め設定された設定温度以上である場合、画像形成の開始指示操作が行なわれる以前にポリゴンモーターを定格回転速度よりも遅い速度で回転させておき、開始指示操作に呼応してポリゴンモーターの回転を定格回転速度の回転まで加速させるとともに、検出された温度に応じて、ポリゴンモーターの回転速度が定格回転速度に達するのに要する時間を見込んで温度が高いほど短く定められた可変時間が経過した時点で給紙機構に搬送を開始させる。検出された温度が設定温度未満である場合、開始指示操作に呼応してポリゴンモーターの回転速度を増大させ、ポリゴンモーターの回転速度が定格回転速度に達してから予め設定された設定時間が経過した時点で給紙機構に搬送を開始させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潜像形成のための露光走査にポリゴンモーターを用いる電子写真式の画像形成装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザースキャナーの回転駆動源として、オイル動圧軸受けをもつポリゴンモーターが広く用いられている。この種のポリゴンモーターにはオイルの粘性に起因する温度依存性がある。冬季のように環境温度が所定値より低いときには、そうでないときと比べて、回転開始から露光動作に適した速度で安定に回転するまでの起動時間が大幅に長い。
【0003】
このようなポリゴンモーターの起動制御に関して、特許文献1において、所定時間が経過しても回転が目標速度に達しないときにモーターの故障と判断するにあたって、低温時には判断の基準となる所定時間を延長することが記載されている。特許文献2では、電源投入時のウォーミングアップ動作として、画像形成時における回転速度より小さい速度で回転させることが提案されている。また、特許文献3では、待機状態の回転数から画像形成時の第1または第2の回転数への切替えを含む回転数の切り替えに際して、変更前と後との回転数の差に基づいて設定される時間が経過したときに光走査を許可することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−83451号公報
【特許文献2】特開2005−215174号公報
【特許文献3】特許3683666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トナー像の転写位置へ用紙を搬送する給紙の形態を、用紙スタッカーから転写位置まで途中で停止させることなく搬送する形態とすることが考えられる。途中で停止させない無停止搬送の採用により、給紙機構の構成およびその制御を簡素化して装置価格を低減することができる。無停止搬送を行なう場合、ポリゴンモーターを含む電子写真プロセスに関わるデバイスの状態が待機状態から作像に適した状態に移行した後に、用紙が転写位置に到着するように、給紙開始タイミングを設定する必要がある。ポリゴンモーターの起動時間が最も長い動作環境温度を基準に給紙開始タイミングを設定すると、ポリゴンモーターの起動完了以前に用紙が転写位置に到着してしまう不都合は生じない。しかし、比較的にポリゴンモーターの起動時間が短い環境条件での動作において、ユーザーが画像形成の開始を指示してから最初の1枚の画像形成が完了するまでの時間(ファーストプリントアウトタイム)が必要以上に長くなってしまう。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み、ポリゴンモーターの起動時間に関わる動作環境温度に応じて、より早く画像形成を開始する画像形成装置の実現を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する画像形成装置は、像担持体を露光する光ビームを偏向するためのミラーを回転させるポリゴンモーターおよび前記像担持体上で現像された画像を転写する位置へ用紙を搬送する給紙機構を有した画像形成装置であって、前記ポリゴンモーターの動作環境温度を検出する温度センサーと、前記温度センサーによって検出された温度に応じて前記ポリゴンモーターおよび前記給紙機構を制御するコントローラーとを備え、前記検出された温度が予め設定された設定温度以上である場合、前記コントローラーは、画像形成の開始を指示する操作が行なわれる以前に前記ポリゴンモーターを潜像形成時の回転速度である定格回転速度よりも遅い速度で回転させておき、前記操作に呼応して前記ポリゴンモーターの回転を前記定格回転速度の回転まで加速させるとともに、前記検出された温度に応じて、前記ポリゴンモーターの回転速度が前記定格回転速度に達するのに要する時間を見込んで温度が高いほど短く定められた可変時間が経過した時点で前記給紙機構に搬送を開始させ、前記検出された温度が前記設定温度未満である場合、前記コントローラーは、前記操作に呼応して前記ポリゴンモーターの回転速度を増大させ、前記ポリゴンモーターの回転速度が前記定格回転速度に達してから予め設定された設定時間が経過した時点で前記給紙機構に搬送を開始させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ポリゴンモーターの起動時間に関わる動作環境温度に応じて、より早く画像形成を開始する画像形成装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】画像形成装置の構成の概略図である。
【図2】レーザー走査ユニットの構成を示す斜視図である。
【図3】コントローラーの構成を示すブロック図である。
【図4】操作パネルの構成を示す図である。
【図5】ポリゴンモーターの停止状態から定格回転速度の回転状態に達するまでの加速の所要時間の温度依存性を示すグラフである。
【図6】ポリゴンモーターの待機回転速度の先回し状態から定格回転速度の回転状態に達するまでの加速の所要時間と先回し時間との関係を示すグラフである。
【図7】ポリゴンモーターの動作環境温度に応じた制御の設定を示す図である。
【図8】ポリゴンモーターの動作環境温度が設定温度以上である場合の動作のタイミングチャートである。
【図9】ポリゴンモーターの動作環境温度が設定温度未満である場合の動作のタイミングチャートである。
【図10】コントローラーによる制御のフローチャートである。
【図11】モード設定処理サブルーチンのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に例示される画像形成装置1はイメージスキャナー5を備えた複写機である。ただし、MFP(Multi-functional Peripheral)やプリンターといった他の機器であってもよい。電子写真法によってモノクロ画像を形成するプリンターエンジン10は、像担持体としての感光体ドラム11、帯電チャージャー12、レーザー走査ユニット13、現像器14、転写チャージャー15、分離レーザージャー16、クリーナー17、イレーサーランプ18、および定着器19などを有している。これら作像エレメントを用いる電子写真プロセスは広く知られているので、各作像エレメントの機能およびプロセスの詳しい説明を省略する。
【0011】
操作パネル40において画像形成の開始を指示する操作が行なわれると、イメージスキャナー5が読み取った原稿画像に基づいて、感光体ドラム11上で静電潜像を形成するため露光パターンを決めるラスター画像が図示しないデータ処理部において生成される。生成されたラスター画像に基づいて、レーザー走査ユニット13による露光走査(印字とも呼ばれる)が行なわれる。露光走査は、用紙面上の画像形成範囲の先端が転写位置p1に到着するときに、回転する感光体ドラム11上で現像されたトナー像がちょうど転写位置p1に到着するように開始される。
【0012】
転写位置p1へ用紙を搬送する給紙機構20は、ピックアップローラー22によって用紙スタッカー21から取り出した用紙Pを、途中で停止させることなく転写位置p1まで一定速度で搬送する。つまり、画像形成装置1における用紙Pの搬送では、一般に行なわれる転写位置p1の手前で用紙を一旦停止させて作像のタイミングに合わせて給紙するレジスト制御が行なわれない。画像形成装置1では無停止搬送の採用により、給紙機構20の構成および制御の簡素化が図られている。搬送経路上の転写位置p1の上流側には用紙Pを検出するセンサー(TODセンサーという)25が設けられており、このTODセンサー25による用紙の検出時点を基準に露光走査が開始される。
【0013】
なお、プリンターエンジン10の感光体ドラム11および給紙機構20のピックアップローラー22は、図示しない一つのメインモーターによって駆動される。感光体ドラム11はメインモーターが回転すると所定の回転数比率を保って回転する。ピックアップローラー22にはクラッチを介してメインモーターの駆動力が伝達される。メインモーターが回転していても、クラッチがオフ状態であれば、ピックアップローラー22は停止している。メインモーターが回転する状態でクラッチがオフ状態からオン状態に切替えられることによって、用紙Pの給紙が開始される。
【0014】
図2のように、レーザー走査ユニット13において、レーザーダイオード31から射出される発散レーザー光はコリメータレンズ32によって平行なレーサビームになる。コリメータレンズ32を光路に沿って前後に微小移動させることによって、感光体ドラム11上のビーム径を調整することができる。コリメータレンズ32を透過したレーザービームは、ポリゴンモーター38によって回転するポリゴンミラー33によって偏向される。本実施形態のポリゴンモーター38は、安定した高速回転の可能なオイル動圧式である。偏向されたレーザービームは、歪曲収差を補正するための走査レンズ34を経て感光体ドラム11に入射する。感光体に対する主走査の書出し位置を制御するため、感光体ドラム11の一端部の近傍にミラー37が配置されている。ポリゴンミラー33の回転に伴ってミラー37には周期的にレーザービームが入射する。ミラー37で反射したレーザービームがSOS(Start of Scanning)センサー36に入射し、それによって主走査のための同期信号が得られる。
【0015】
レーザー走査ユニット13はポリゴンモーター38の動作環境温度を検出する温度センサー39を有する。本実施形態において、温度センサー39はポリゴンモーター38の外面に取り付けられている。画像形成装置1では、温度センサー39によって検出された温度に応じて、ポリゴンモーター38の制御のモードが切り替えられる。なお、温度センサー39の配置位置は、ポリゴンモーター38の近傍以外であってもよい。例えば、画像形成装置1のハウジングの外面または外面の近傍に配置し、ユーザーが知覚する気温またはそれに近い温度をポリゴンモーター38の動作環境温度として検出してもよい。
【0016】
図3は画像形成装置1のコントローラー50の構成を示している。コントローラー50は、マイクロコンピューター51、クロックジェネレーター52、および画像メモリ54を有している。マイクロコンピューター51および画像メモリ54の動作は、クロックジェネレーター52が出力するクロックに従う。
【0017】
マイクロコンピューター51は、SOSセンサー36からの光電変換信号をデジタル化して水平同期信号(HSYNC)を生成する。そのため、必要に応じて、マイクロコンピューター51はLDドライバー63に対してレーザーダイオード(LD)31の強制発光を指示する。
【0018】
ポリゴンモーター制御回路65に対して、マイクロコンピューター51は、Start/Stop信号(以下、S/S信号という)と、回転の目標速度に応じた周波数の方形波信号であるSCLK信号とを与える。ポリゴンモーター制御回路65によってポリゴンモーター38の回転が制御され、回転速度が目標速度になると、ポリゴンモーター制御回路65からマイクロコンピューター51に入力されるLD信号がアクティブになる。動作環境温度に応じた回転制御を指示するため、マイクロコンピューター51には温度センサー39の検出信号が入力される。
【0019】
マイクロコンピューター51は、感光体ドラム11やその他の負荷を駆動するメインモーター71のオンオフ制御、およびピックアップローラー22に駆動力を伝達するクラッチ75の制御を担う。給紙開始後の適切な時点で印字を開始させるため、TODセンサー25からの検出信号がマイクロコンピューター51に入力される。
【0020】
画像メモリ54に対して、マイクロコンピューター51は水平同期信号(HSYNC)と画像要求信号(TOD)とを出力する。TODがトリガーとなって、画像メモリ54において副走査カウンター541がHSYNCのカウントを開始し、カウント値に応じたラインの画像データを画像メモリ54がLDドライバー63に出力する。
【0021】
さらに、マイクロコンピューター51は、操作パネル40からの信号を受け付け、ユーザーの指定した画像形成が行なわれるように、図1に示されるプリンターエンジン10の作像エレメントを制御する。操作パネル40は、図4に示されるように、画像形成の開始を指示するためのコピーボタン42、コピー枚数の設定に用いられるテンキー44、および各種の表示のためのタッチパネル46を有する。図4において、タッチパネル46には用紙選択のための操作画面G1が表示されている。
【0022】
コピーボタン42が押下される前に何らかの他の操作が行なわれたとき、操作パネル40の出力は、その操作の内容を示す通常の操作信号としてかつポリゴンモーター38の先回しコマンドとしてマイクロコンピューター51に入力される。このとき、マイクロコンピューター51は、行なわれた操作に応じて動作設定や画面表示の切り替えなど行なうとともに、先回しを行うモードである場合にポリゴンモーター38の待機回転を開始させる。つまり、コピーボタン42が押下されたらできるだけ早く画像形成が可能になるように、画像形成時の回転速度である定格回転速度(例えば、35000rpm)よりも小さい待機回転速度(例えば27000〜30000rpm)で前もってポリゴンモーター38を回転させておく。この先回しは、何らかの操作をしたユーザーがその後の早い時期にコピーボタン42を押下するとの予想に基づいて設けられた動作である。ただし、先回しを行うモードでなければ先回しコマンドは無効となる。
【0023】
なお、本実施形態では、コピーボタン42の押下以外の操作を先回しの契機としたが、画像形成装置1にユーザーが接近したことを検知するセンサーを備える場合にはユーザーの接近の検知を先回しの契機としてもよい。ICカードの読み取りや生体認証によるログイン操作を契機としてもよい。すなわち、近々画像形成の開始が指示されると予想される状況になったときに先回しを行うようにすればよい。
【0024】
図5および図6はオイル動圧式ポリゴンモーターの起動に関する特性を示している。図5のように、停止状態から定格回転速度の回転状態に達するまでの加速の所要時間は温度に依存性する。軸受け作動流体であるオイルの特性により、概ね10℃以下になると、それより温度が高いときと比べて、加速の所要時間が極端に長くなる傾向がある。また、個体間のバラツキも大きくなり、経時変化のバラツキも大きくなる傾向がある。一方、図6のように、待機回転速度から定格回転速度に達するまでの加速の所要時間については、加速開始までの先回し時間が長いほど短くなる傾向がある。この傾向は、先回し期間中に回転していることによる自己発熱でオイルが温められるためことに因ると考えられる。
【0025】
以下、ポリゴンモーター38が停止した非稼動状態から画像形成が可能な状態へ画像形成装置1を移行させる制御(起動制御)についてさらに詳しく説明する。
【0026】
図7はポリゴンモーターの動作環境温度に応じた制御の設定を示している。本実施形態の画像形成装置1では、図示のようにポリゴンモーター38の動作環境温度に応じて制御のモードが切り替わる。モードは、大きくは温度センサー39による検出温度が10℃未満である場合のモードと、10℃以上である場合のモードとに分かれる。ただし、モードを分ける設定温度は10℃に限らず、ポリゴンモーター38の起動の温度特性に応じて適宜選定することができる。
【0027】
検出温度が10℃未満(便宜的にこれを低温という)である場合、ポリゴンモーター38の先回しは行なわれない。上述の図5のように、温度が低い場合には加速の所要時間が長いので、待機回転速度に達しない段階でコピーボタン42が押下されるのが通例となる。すなわち、速度0から待機回転速度へ加速する先回しを開始してコピーボタン42の押下に呼応して定格回転速度に加速するのと、先回しをせずにコピーボタン42の押下に呼応して速度0から定格回転速度に加速するのとで、定格回転速度に達するまでの所要時間に大差のないことが多い。したがって、低温時には不必要に回転音を発生させない静音化のため、先回しを行なわない。
【0028】
また、検出温度が10℃未満(低温)である場合には、加速開始から目標速度に達するまでの加速許容時間(トラブル検出時間)が長めに設定される。例示の加速許容時間は20秒である。加速開始から加速許容時間が経過しても目標速度に達しない場合は、ポリゴンモーター38または駆動回路において何らかのトラブルが発生したものとして画像形成が中止される。
【0029】
一方、検出温度が10℃以上(便宜的にこれを中高温という)である場合には、ポリゴンモーター38の先回しが行なわれ、加速許容時間として低温時よりも短い時間が設定される。例示の加速許容時間は7秒である。また、中高温の温度範囲が10℃以上18℃未満(便宜的にこれを中温という)と18℃以上(便宜的にこれを高温という)とに区分され、さらに中温および高温のそれぞれが先回し時間Xの長さによって三つに場合分けされる。そして、計六つの場合ごとに、給紙開始タイミングが定められている。先回し時間Xは、ポリゴンモーター38の回転を開始してから待機回転速度の回転を経て待機回転速度から定格回転速度への加速を開始する時点までの時間と定義される(後述の図8参照)。先回し時間Xはコントローラー50によって計時される。
【0030】
先回しの目標速度である待機回転速度は中温と高温とで異なる。検出温度が中温である場合の待機回転速度は30000rpmであり、検出温度が高温である場合の待機回転速度は27000rpmである。温度が高いほど待機回転速度から定格回転速度への加速時間が短いので、待機回転を遅くしても感光体周辺の他のデバイスが立ち上がるのに間に合う時間内にポリゴンモーター38の回転を定格回転にすることができる。画像形成装置1の静音化の上で、ポリゴンモーター38の回転速度の小さいのが有利である。
【0031】
給紙開始タイミングに関わる給紙待ち時間Ta、すなわちコピーボタン42の押下(開始指示)からピックアップ用クラッチ75をオンする給紙開始までの時間は、所定の固定時間に先回し時間Xが長いほど短い延長時間を加算する可変時間である。検出温度が中温である場合、先回し時間Xが3秒未満であるときの延長時間は2秒であり、先回し時間Xが3秒以上4秒未満であるときの延長時間は(5−X)秒であり、先回し時間Xが4秒以上であるときの延長時間は1秒である。検出温度が高温である場合、先回し時間Xが3秒未満であるときの延長時間は1秒であり、先回し時間Xが3秒以上4秒未満であるときの延長時間は(4−X)秒であり、先回し時間Xが4秒以上であるときの延長時間は0秒である。
【0032】
図7において、中温時の延長時間と高温時の延長時間との比較から明らかなように、給紙待ち時間Taは基本的に温度が高いほど短く定められている。温度が高いほど早く、ポリゴンモーター38が定格回転状態になると見込まれるからである。このようにポリゴンモーター38が作像可能な状態になるまで給紙を待つための設定時間である給紙待ち時間Taを可変とすることは、レジスト調整をしない無停止搬送式の給紙機構20を用いて正しく画像を形成しかつ高温時の画像形成を迅速化するのに効果がある。給紙待ち時間Taが固定であれば、すなわち温度に関わらず一律のタイミングで給紙を開始するのであれば、低温時でも正しく画像を形成するために低温時の長い起動時間を基準に給紙のタイミングを定めなければならない。
【0033】
図8はポリゴンモーター38の動作環境温度が設定温度以上である中高温時の動作のタイミングチャートである。
【0034】
コントローラー50は、上述の先回しコマンドを受けると[1]、停止状態のポリゴンモーター38を回転させるために信号S/Sをオンにする[2]。このときの目標速度は待機回転速度である。信号S/Sのオンに呼応して先回し時間Xのタイマーがカウントを始める。その後、コピーボタン42が押下されると[3]、数十ms程度の一定時間後に、コントローラー50は、ポリゴンモーター38の回転速度が目標速度に達していることを示すLock信号がアクティブ(ON)であるのを確認し[4]、メインモーター71をオンする[5]。メインモーター24をオンしてから150ms後に、コントローラー50はポリゴンモーター38の回転を待機回転速度から定格回転速度へ加速する[6]。すなわち、電源に負担をかけないようメインモーター71の起動とポリゴンモーター38の加速とが時期をずらして行われる。ポリゴンモーター38の回転を待機回転速度から定格回転速度へ加速した時点で先回し時間Xのタイマーのカウントが終了し、先回し時間Xの値と温度センサー39の検出温度とに応じて、図7の設定に従って給紙待ち時間Taのうちの延長時間Aが決められる。
【0035】
メインモーター71のオンから固定時間の460msに延長時間Aを加算した給紙待ち時間Taが経過した時点で[7]、コントローラー50はピックアップ用のクラッチ75をオンし、ピックアップローラー22を回転させる。これにより給紙が開始される。給紙が開始されてから725msの経過後に、用紙PはTODセンサー25によって検出される[12]。TODセンサー25による用紙検出をトリガーにして、画像メモリ54内の副走査カウンター541がカウントを始め、用紙Pの先端と用紙面上の画像形成位置の先端との距離および搬送速度とで決まる所定の時間Tcが経過した時点で、画像メモリ54からLDドライバー63への画像データの出力が始まり、レーザー走査ユニット13による印字(感光体の露光走査)が始まる[14]。
【0036】
給紙が開始されてから印字が開始されるまでの間において、ポリゴンモーター38の定格回転速度への加速が開始されてから通常は長くても700msに延長時間Aを加算した時間が経過するまでに、ポリゴンモーター38の回転速度が目標の定格回転速度になったことを示すLock信号が再びオンになる。このオンを確認して[8]、コントローラー50はSOSセンサー36の出力が所定レベルになるようレーザーダイオード31の出力を調整するオープニングAPC(Auto Power Control)を15msにわたってLDドライバー63に行なわせる[9]。オープニングAPCに続いてSOSセンサー36の出力に同期して主走査の光量を調整するラインAPCが始まる[10]。この段階でレーザー走査ユニット13は画像データの入力が可能な印字開始許可状態になる。
【0037】
ポリゴンモーター38は、待機回転速度から定格回転速度への加速を開始した後、長くても1200msに延長時間Aを加算した時間が経過するまでに、回転の安定した印字開始許可状態になる[13]。ポリゴンモーター38が印字開始許可状態になるのは、時間Tcのカウントが終了する以前である。また、露光走査以外の作像プロセスを担う感光体ドラム11の周辺のデバイスは、メインモーター71のオンから1100ms後に印字開始許可状態になる。その時期も時間Tcのカウントが終了する以前である。
【0038】
図9はポリゴンモーター38の動作環境温度が設定温度未満である低温時の動作のタイミングチャートである。
【0039】
低温時には上述したとおり先回しは行われない。コピーボタン42が押下されると[1]、コントローラー50はポリゴンモーター38を起動し[2]、ポリゴンモーター38の回転速度が目標の定格回転速度に達していることを示すLock信号のオンを確認して[3]、メインモーター71をオンする[4]。ポリゴンモーター38の起動からLock信号のオンまでの時間Ttが上述の加速許容時間(トラブル検出時間)を超えると、トラブル発生をユーザーに知らせる表示が行なわれる。Lock信号のオンの後、ポリゴンモーター38は500ms後には完全に安定した回転状態(印字開始許可状態)になっている[8]。
【0040】
メインモーター71のオンから460msが経過した時点で、コントローラー50はピックアップ用のクラッチ75をオンし、ピックアップローラー22を回転させる[7]。これにより給紙が開始される。給紙が開始されてから725msの経過後に、用紙PはTODセンサー25によって検出される[10]。TODセンサー25による用紙検出をトリガーにして、画像メモリ54内の副走査541がカウントを始め、所定の時間Tcが経過した時点で、画像メモリ54からLDドライバー63への画像データの出力が始まり、レーザー走査ユニット13による印字(感光体の露光)が始まる[11]。
【0041】
Lock信号のオンを確認して[3]、コントローラー50はオープニングAPCを15msにわたってLDドライバー63に行なわせる[5]。オープニングAPCに続いてラインAPCが始まる[6]。この段階でレーザー走査ユニット13は印字開始許可状態になる。露光以外の作像プロセスを担う感光体ドラム11の周辺のデバイスは、メインモーター71のオンから1100ms後に印字開始許可状態になる[9]。その時期は時間Tcのカウントが終了する以前である。
【0042】
低温時にはポリゴンモーター38の起動時間が長いので、ポリゴンモーター38の回転速度が定格回転速度に達する以前にメインモーター71をオンすると、感光体ドラム11が無駄に長く回転してしまい、感光体の劣化を早める。本実施形態ではメインモーター71をLock信号がオンになった後にオンすることにより、感光体の寿命が短くなるのを防いでいる。
【0043】
図10はコントローラー50による制御のフローチャートである。電源投入またはリセット操作に呼応して、マイクロコンピューター51はプログラム実行のワークエリアやタイマーを初期化し(S1)、1ルーチンの長さを規定する内部タイマーをセットする(S2)。ポリゴンモーター38の動作環境に応じた制御のためのモード設定処理(S3)、印字のためのラスター画像を生成する画像データ処理(S4)、プリンターエンジン10および給紙機構20を制御するプリント処理(S5)、および操作の受付けや表示などのその他の処理(S6)を順に実行した後、マイクロコンピューター51は内部タイマーの終了を待ってステップS2に戻り(S7)、ステップS2〜S7を繰り返し実行する。
【0044】
図11はモード設定処理サブルーチンのフローチャートである。マイクロコンピューター51は温度センサー39によってポリゴンモーター38の動作環境温度を示す温度データを取得する(S31)。動作環境温度が10℃未満であれば(S32でYES)、制御のモードを低温時のモードとし、トラブル検出時間(加速許可時間)Ttを20秒とする(S53)。動作環境温度が10℃未満でなければ(S32でNO)、制御のモードを中高温時のモードとし、トラブル検出時間Ttを7秒とする(S53)。そして、マイクロコンピューター51は、動作環境温度が10℃以上18℃未満であれば(S35でYES)、待機回転速度を30000rpmとし、先回し時間Xのカウント値を取得して給紙待ち時間Taの延長時間Aを決める(S36)。また、マイクロコンピューター51は、動作環境温度が18℃以上であれば(S35でNO)、待機回転速度を27000rpmとし、先回し時間Xのカウント値を取得して給紙待ち時間Taの延長時間Aを決める(S37)。
【0045】
以上の実施形態によれば、用紙Pの搬送を開始してから少なくともトナー像を転写するまで途中で搬送を停止しない給紙機構20を採用した画像形成装置1において、ポリゴンモーター38の起動の温度特性に応じて、より早期に印字(露光走査)を開始することができるので、低温時以外のファーストプリントアウトタイムを短くすることができる。
【0046】
上述の実施形態において、画像形成装置1の構成を本発明に沿う範囲内で適宜変更することができる。待機回転速度、定格回転速度、制御の場合分けの設定温度、およびシーケンスに関わる時間などは例示に限らず、ポリゴンモーター38の仕様や電子写真プロセスのシステム速度に応じて選定すればよい。プリンターエンジン10はカラー画像の形成が可能なものであってよい。画像形成装置1はイメージスキャナーを備えていないプリンターであってもよい。内蔵メモリに蓄積したドキュメントをプリントする機能を有したプリンターにおいて、プリント開始操作以外の操作に呼応して先回しを行なうことができる。操作パネル40による直接の操作ではなく、例えば外部のパーソナルコンピューターからのプリントジョブの入力に呼応して画像形成を行なう場合、プリンターの状態確認や他の何らかのアクセスを先回しコマンドとすることができる。
【符号の説明】
【0047】
1 画像形成装置
11 感光体ドラム(像担持体)
33 ポリゴンミラー
38 ポリゴンモーター
p1 転写位置
P 用紙
20 給紙機構
39 温度センサー
50 コントローラー
Ta 給紙待ち時間(可変時間)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体を露光する光ビームを偏向するためのミラーを回転させるポリゴンモーターおよび前記像担持体上で現像された画像を転写する位置へ用紙を搬送する給紙機構を有した画像形成装置であって、
前記ポリゴンモーターの動作環境温度を検出する温度センサーと、
前記温度センサーによって検出された温度に応じて前記ポリゴンモーターおよび前記給紙機構を制御するコントローラーとを備え、
前記検出された温度が予め設定された設定温度以上である場合、前記コントローラーは、画像形成の開始を指示する操作が行なわれる以前に前記ポリゴンモーターを潜像形成時の回転速度である定格回転速度よりも遅い速度で回転させておき、前記操作に呼応して前記ポリゴンモーターの回転を前記定格回転速度の回転まで加速させるとともに、前記検出された温度に応じて、前記ポリゴンモーターの回転速度が前記定格回転速度に達するのに要する時間を見込んで温度が高いほど短く定められた可変時間が経過した時点で前記給紙機構に搬送を開始させ、
前記検出された温度が前記設定温度未満である場合、前記コントローラーは、前記操作に呼応して前記ポリゴンモーターの回転速度を増大させ、前記ポリゴンモーターの回転速度が前記定格回転速度に達してから予め設定された設定時間が経過した時点で前記給紙機構に搬送を開始させる
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記検出された温度が前記設定温度未満である場合、前記コントローラーは、前記操作が行なわれるまで、前記ポリゴンモーターを停止させておく
請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記検出された温度が前記設定温度以上である場合の前記操作が行なわれる以前における前記ポリゴンモーターの回転速度として、前記設定温度以上の温度を区分した温度範囲別に、前記検出された温度が高いほど小さい回転速度が定められている
請求項1または2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記検出された温度が前記設定温度以上である場合、前記コントローラーは、前記操作が行なわれる以前における前記ポリゴンモーターの回転開始から当該操作までの経過時間を計時し、計時した時間が長いほど、当該操作から前記給紙機構による搬送開始までの時間を短くする
請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記ポリゴンモーターのエラー判定のために当該ポリゴンモーターの回転の加速開始から目標速度に達するまでの許容時間が定められており、前記検出された温度が前記設定温度未満である場合の許容時間が、前記検出された温度が前記設定温度以上である場合の許容時間よりも長い
請求項1ないし4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
像担持体を露光する光ビームを偏向するためのミラーを回転させるポリゴンモーターおよび前記像担持体上で現像された画像を転写する位置へ用紙を搬送する給紙機構を有した画像形成装置の制御方法であって、
前記ポリゴンモーターの動作環境温度を検出し、
検出した温度が予め設定された設定温度以上である場合、画像形成の開始を指示する操作が行なわれる以前に前記ポリゴンモーターを潜像形成時の回転速度である定格回転速度よりも遅い速度で回転させておき、前記操作に呼応して前記ポリゴンモーターの回転を前記定格回転速度の回転まで加速させるとともに、前記検出した温度に応じて、前記ポリゴンモーターの回転速度が前記定格回転速度に達するのに要する時間を見込んで温度が高いほど短く定められた可変時間が経過した時点で前記給紙機構に搬送を開始させ、
検出した温度が前記設定温度未満である場合、前記操作に呼応して前記ポリゴンモーターの回転速度を増大させ、前記ポリゴンモーターの回転速度が前記定格回転速度に達してから予め設定された設定時間が経過した時点で前記給紙機構に搬送を開始させる
ことを特徴とする画像形成装置の制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−19948(P2013−19948A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150907(P2011−150907)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】