説明

画像形成装置の現像制御装置

【課題】現像ローラのトナー薄層の剥ぎ取りを適切に行い、長期間にわたって良好な画像形成を行うことができる画像形成装置の現像制御装置の提供。
【解決手段】感光体ドラム31上の静電潜像を現像するための現像ローラ342と、現像ローラ342の表面にトナー薄層342aを形成するとともに現像ローラ342の表面からトナー薄層342aを剥ぎ取る磁気ローラ343とを有するプリンタ1の現像制御装置100は、テストパターン像形成部91と、濃度センサ5と、動作実行部92とを備える。テストパターン像形成部91は、所定のタイミングで現像ローラ342によりトナー像としてのテストパターン像を形成させる。濃度センサ5は、テストパターン像のトナー濃度を検知する。動作実行部92は、濃度センサ5の検知結果に基づいて、磁気ローラ343にトナー薄層342aの剥ぎ取り動作を行わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置の現像制御装置、特に、像担持体上の静電潜像を現像するための現像ローラと、現像ローラの表面にトナー薄層を形成するとともに現像ローラの表面からトナー薄層を剥ぎ取る磁気ローラと、を有する画像形成装置の現像制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、特許文献1に示すように、感光体ドラムと、感光体ドラム上の静電潜像をトナーを用いて現像する現像ローラと、現像ローラ表面にトナー薄層を形成するための磁気ローラとを備えた、所謂タッチダウン法が採用された画像形成装置が知られている。この画像形成装置において静電潜像の現像が行われる際、現像ローラ表面のトナー薄層におけるトナーは、感光体ドラムと現像ローラとの電位差により現像ローラ表面から感光体ドラム側に飛ばされる。
【0003】
しかしながら、静電潜像が現像された後の現像ローラ表面のトナー薄層には、トナーが現像用として消費された消費領域と、消費されずにトナーが残留している非消費領域とが生じる。この場合、現像ローラ表面におけるトナーの付着状態(即ち、トナー薄層の状態)とトナーの電位差とにばらつきが生じるため、前に現像した静電潜像の少なくとも一部分が次の現像時に残像(ゴースト)として現れる、いわゆる履歴現象が生じる恐れがある。
【0004】
そこで、履歴現象の発生を抑制するための技術として、現像ローラに交流バイアスを印加するとともに磁気ローラに直流バイアスを印加して、現像ローラ表面のトナーを磁気ローラにより入れ替えるものが知られている(特許文献2、特許文献3)。
【特許文献1】米国特許第3,929,098号
【特許文献2】特開2003−21966号公報
【特許文献3】特開2003−345134号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2及び特許文献3において、現像ローラ表面のトナーの入れ替えを確実に行うためには、適切なデューティ比やピーク間電圧を有する交流バイアスを現像ローラに印加させる必要がある。しかし、交流バイアスのデューティ比を変化させる方法では、現像ローラ上のトナーを完全に回収することが困難であるため、必ずしも履歴現象の発生を抑制できるとは限らない。これに対し、交流バイアスのピーク間電圧を変化させる方法は、交流バイアスのデューティ比を変化させる方法よりもトナーの入れ替えを確実に行うことができる。しかしながら、交流バイアスのピーク間電圧が大きくなると、感光体ドラムと現像ローラとの電位差が大きくなるため、現像ローラから感光体ドラムへのリーク電流が発生し易くなる。すると、黒点画像や、瞬間的に交流バイアスが落ちることにより白帯及び黒帯状の画像が出力されてしまう等の画像不良が生じる恐れがある。
【0006】
また、このような画像不良の発生を防ぐべく、所定期間毎に、画像形成動作を停止してから現像ローラ上のトナーを回収する画像形成装置が知られている。しかしながら、現像ローラ表面のトナーの状態は、その時々に応じて異なるため、トナー回収時に現像ローラ上のトナーが必ずしも回収すべき状態にあるとは限らない。
【0007】
そこで、本発明は、現像ローラのトナーの回収を適切に行い、長期間にわたって良好な画像形成を行うことができる画像形成装置の現像制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明1に係る画像形成装置の現像制御装置は、像担持体上の静電潜像を現像するための現像ローラと、現像ローラの表面にトナー薄層を形成するとともに現像ローラの表面からトナー薄層を剥ぎ取る磁気ローラとを有する画像形成装置の現像制御装置であって、テストパターン像形成手段と、濃度検知部と、動作実行手段とを備える。テストパターン像形成手段は、所定のタイミングで現像ローラによりトナー像としてのテストパターン像を形成させる。濃度検知部は、テストパターン像のトナー濃度を検知する。動作実行手段は、濃度検知部の検知結果に基づいて、磁気ローラにトナー薄層の剥ぎ取り動作を行わせる。
【0009】
現像ローラ表面におけるトナー薄層の状態は、テストパターン像のトナー濃度に影響を及ぼす。そこで、この画像形成装置の現像制御装置は、テストパターン像のトナー濃度に基づいて、磁気ローラにトナー薄層の剥ぎ取り動作を開始させるか否かを決定する。これにより、現像ローラの表面に形成されたトナー薄層は、現像ローラの状態に応じて適切に剥ぎ取られる。
【0010】
発明2に係る画像形成装置の現像制御装置は、発明1に係る画像形成装置の現像制御装置であって、動作実行手段は、テストパターン像のトナー濃度が所定値以下である場合、磁気ローラにトナー薄層の剥ぎ取り動作を行わせる。
【0011】
磁気ローラがトナー薄層の剥ぎ取り動作を行う時には、現像ローラによる現像動作を一時的に停止させる必要がある。しかし、この画像形成装置の現像制御装置によると、トナー薄層の剥ぎ取り動作は、現像ローラ上のトナー薄層を剥ぎ取る必要がある場合に行われるため、現像ローラによる現像動作を不必要に停止させずに済む。
【0012】
発明3に係る画像形成装置の現像制御装置は、発明2に係る画像形成装置の現像制御装置であって、テストパターン像形成手段は、テストパターン像とは別の画像が所定枚数の記録媒体に記録される毎に、現像ローラによりテストパターン像を形成させる。
【0013】
この画像形成装置の現像制御装置によると、テストパターン像の濃度は、別の画像が所定枚数分記録される毎に検知され、トナー薄層の剥ぎ取り動作は、その濃度に応じて開始されるか否かが決定される。そのため、トナー薄層の剥ぎ取り動作を行うために現像ローラの現像動作を停止させる回数は、別の画像が所定枚数印刷されるたびにトナー薄層の剥ぎ取り動作を行う場合よりも、比較的少なくて済む。
【0014】
発明4に係る画像形成装置の現像制御装置は、発明1〜3のいずれかに係る画像形成装置の現像制御装置であって、磁気ローラには、トナーとキャリアとからなる磁気ブラシが形成されており、現像ローラ及び磁気ローラは、それぞれ電圧を印加されることが可能である。そして、動作実行手段は、トナー薄層の剥ぎ取り動作時、トナー薄層が磁気ブラシにより剥ぎ取られるように磁気ローラを回転させると共に、現像ローラと磁気ローラとの電位差がトナー薄層の形成時における電位差と異なるように、現像ローラ及び磁気ローラに印加される電圧を制御する。
【0015】
現像ローラと磁気ローラとの電位差が変化すると、現像ローラ及び磁気ローラ上のトナーの帯電量(即ち、電位差)も変化する。そこで、この画像形成装置の現像制御装置は、トナー薄層の形成時には、現像ローラ及び磁気ローラの電位差が磁気ローラの表面から現像ローラの表面にトナーが飛翔するような電圧差となるように、現像ローラ及び磁気ローラそれぞれに電圧を印加する。逆に、トナー薄層の剥ぎ取り動作時には、現像制御装置は、現像ローラ及び磁気ローラの電位差が現像ローラからトナー薄層が剥がれるような電圧差となるように、現像ローラ及び磁気ローラそれぞれに電圧を印加すると共に、トナー薄層が磁気ブラシにより剥ぎ取られるように磁気ローラを回転させる。これにより、トナー薄層の剥ぎ取り動作時、トナー薄層は、現像ローラの表面から容易に剥がれる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、現像ローラ表面のトナーは、現像ローラの状態に応じて適切に回収されるため、画像形成装置は、長期間にわたって良好な画像形成を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明に係る画像形成装置の現像制御装置について説明する。
【0018】
(1)画像形成装置の構成
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の現像制御装置100が採用されたプリンタ1の縦断面図である。図4は、プリンタ1及び現像制御装置100の構成を模式的に示すブロック図である。本実施形態に係るプリンタ1は、タンデム型のカラープリンタであって、図1及び図4に示すように、通信部2、画像形成部3、濃度センサ5(濃度検知部に相当)、定着部6、シート収容部7、制御部9及びメモリ10を備えている。
【0019】
通信部2は、例えばPC等の外部端末と通信を行うためのものであって、外部端末から送られてくる画像データや印刷指示等を受信する。
【0020】
画像形成部3は、画像データに基づいてトナー像を形成するとともに、形成されたトナー像を用紙やOHP等の記録媒体に記録するためのものである。画像形成部3は、ブラック、シアン、マゼンダ、イエローの各色に対応する感光体ドラム31A〜31D、帯電器32A〜32D、露光器33A〜33D、現像装置34A〜34D、トナーコンテナ35A〜35D及び転写部4を含む。ここで、例えば「感光体ドラム31A〜31D」のように、画像形成部3の各機能部の参照符号末尾に付されているアルファベットA〜Dは、ブラック、シアン、マゼンダ、イエローの各色に対応するものであることを示している。また、以下の説明において、アルファベットA〜Dが各機能部の参照符号から省略されている場合は、各色の各機能部に共通するものであるとする。
【0021】
感光体ドラム31は、例えばアモルファスシリコンからなる感光層を有しており、その表面には静電潜像が形成される。帯電器32は、感光体ドラム31の表面を一様に帯電させるためのものである。露光器33は、通信部2が受信した画像データに基づいて、帯電器32により帯電された感光体ドラム31に対し露光して、感光体ドラム31の表面に静電潜像を形成する。特に、露光器33は、メモリ10に格納されているテストパターンデータに基づいて帯電後の感光体ドラム31を露光し、テストパターン像用の静電潜像を形成することも可能である。尚、本実施形態に係るテストパターン像は、主として、現像装置34に収容されている2成分現像剤のトナー濃度の調整用や、後述する現像装置34の現像ローラ342表面に形成されたトナー薄層342aの剥ぎ取り動作判断用として用いられる。
【0022】
現像装置34は、感光体ドラム31にトナーを供給し、感光体ドラム31の表面に形成された静電潜像をトナー像として現像するためのものであって、ここでは、いわゆるタッチダウン現像方式を採用したものが用いられている。この現像装置34は、図2に示すように、ケーシング341、現像ローラ342、磁気ローラ343、規制ブレード344、パドルミキサー345、攪拌ミキサー346及びトナーセンサ348を有している。
【0023】
ケーシング341は、トナー及びキャリアからなる2成分現像剤を貯留するものである。ケーシング341の内部には、現像ローラ342を一部露出して配置するための開口が設けられている。
【0024】
現像ローラ342は、感光体ドラム31の表面にトナーを供給して感光体ドラム31上の静電潜像を現像するためのものであって、感光体ドラム31から所定距離離れて配置されており、図4のモータ13aにより回転駆動される。現像ローラ342には、図2に示すように、直流電源11a及び交流電源11bが直列に接続されており、直流電源11aから出力される直流電圧に交流電源11bから出力される交流電圧が重畳された第1バイアスが印加される。また、現像ローラ342の表面には、図3に示すように、磁気ローラ343の磁気ブラシ343aによりトナー薄層342aが形成される。尚、モータ13a及び各種電源11a,11bは、制御部9により制御される。
【0025】
磁気ローラ343は、図2に示すように、現像ローラ342から所定距離離れて配置されており、図4のモータ13bにより回転駆動される。磁気ローラ343は、複数の磁極を有する固定磁石と、固定磁石の外周を囲むように配置され、回転自在な非磁性金属材料からなる円筒状のスリーブとを有している。この磁気ローラ343は、図2に示すように直流電源12と接続されており、直流電源12から出力される直流電圧(以下、第2バイアスという)が印加される。そして、磁気ローラ343の表面には、図3に示すように、キャリアとトナーとからなる磁気ブラシ343aが形成されている。このような構成を有する磁気ローラ343は、現像ローラ342の表面にトナー薄層342aを形成する形成動作を行うとともに、現像ローラ342の表面からトナー薄層342aを剥ぎ取る剥ぎ取り動作を行うことができる。尚、モータ13b及び直流電源12は、制御部9により制御される。また、磁気ローラ343におけるトナー薄層342aの形成動作及び剥ぎ取り動作については、後述する。
【0026】
規制ブレード344は、磁気ローラ343上に一定の層厚の磁気ブラシ343aを形成するためのものである。パドルミキサー345及び攪拌ミキサー346は、2成分現像剤を攪拌しながら循環搬送するためのものである。尚、図2の仕切り板347は、ケーシング341の軸方向両端部においては存在しないため、パドルミキサー345及び攪拌ミキサー346間での2成分現像剤の受け渡しが可能となる。また、トナーセンサ348は、透磁率センサであって、2成分現像剤中のトナー濃度を検知する。
【0027】
トナーコンテナ35は、内部にトナーが収容され、現像装置34の上部に着脱自在に装着される。トナーコンテナ35内部のトナーは、現像装置34内のトナー濃度が所定の閾値以下であるとトナーセンサ348により検知されると、現像装置34内に補給される。
【0028】
転写部4は、現像装置34により現像されたトナー像を、用紙搬送路7aから送られてきた記録媒体に転写するためのものである。転写部4は、図1に示すように、駆動ローラ41及び従動ローラ42との間に掛け渡されて循環駆動される転写ベルト43や、転写ベルト43を介して各感光体ドラム31A〜31Dに対向するように配置された転写ローラ44A〜44Dを有している。
【0029】
濃度センサ5は、反射型の光学式センサで構成されており、転写ベルト43上に設けられている。濃度センサ5は、転写ベルト43上及び記録媒体に転写されたトナー像の濃度を検知する。
【0030】
定着部6は、記録媒体に転写されたトナー像を定着させるものであって、内部にヒータを有する加熱ローラ及び加熱ローラに押圧される加圧ローラを有している。定着部6によりトナー像が定着された記録媒体は、排出部8を介してプリンタ1の外部に排出される。
【0031】
シート収容部7は、トナー像が転写される記録媒体(具体的には、記録用紙やOHP)を収容すると共に、シート収容部7から排出部8に延びる用紙搬送路7aに記録媒体を送り出すものである。
【0032】
制御部9は、CPUを含むマイクロコンピュータで構成されており、接続された各機能部の制御等を行う。例えば、制御部9は、画像形成部3の感光体ドラム31の回転制御やトナーコンテナ35から現像装置34に補給されるトナー量の制御などを行う。特に、本実施形態に係る制御部9は、現像制御装置100(後述)としての制御も行うが、これについては後述する。
【0033】
メモリ10は、制御部9におけるCPUが読み出して実行するための各種制御プログラムを記憶している他、通信部2が外部端末から取得した画像データを一時的に記憶する。特に、本実施形態に係るメモリ10は、テストパターン像のデータであるテストパターンデータを記憶している。
【0034】
(2)現像制御装置の構成
次に、本実施形態に係る現像制御装置100の構成について説明する。現像制御装置100は、図4に示すように、濃度センサ5、メモリ10及び制御部9を備える。尚、濃度センサ5及びメモリ10については、既に説明しているため、ここでは、現像制御装置100としての制御を行う制御部9について説明する。
【0035】
現像制御装置100としての制御部9は、主として、テストパターン像の形成指示や、磁気ローラ343が行う動作の制御を行う。このような動作を行うため、制御部9は、テストパターン像形成部91及び動作実行部92として機能する。
【0036】
テストパターン像形成部91は、所定のタイミングでトナー像としてのテストパターン像が現像ローラ342により形成されるように、現像ローラ342や露光器33等の動作を制御する。より具体的には、画像形成部3が、テストパターン像とは別の画像(即ち、通信部2が外部端末から受信した画像データに基づく画像)を記録媒体に記録している場合においては、テストパターン像形成部91は、この画像が記録媒体に記録される枚数(以下、印刷枚数と言う)をカウントする。そして、テストパターン像形成部91は、カウントした印刷枚数が所定枚数となるたびに、露光器33によりテストパターンデータに基づいて感光体ドラム31表面を露光させ、現像ローラ342にテストパターン像を形成させる。ここで、所定枚数としては、例えば100枚毎などが挙げられる。尚、テストパターン像の形成を開始させる時、テストパターン像形成部91は、テストパターン像とは別の画像の形成動作を一時的に停止させる。より具体的には、テストパターン像の形成を開始させる時、テストパターン像形成部91は、定着部6による定着動作や記録媒体の搬送動作をテストパターン形成時のみ一時的に停止させ、画像形成部3には、外部端末から取得した画像データが送られる代わりに、テストパターンデータがメモリ10から送られるようにする。これにより、現像ローラ342により形成されたテストパターン像は、転写ベルト43に直接転写され、濃度センサ5により濃度検知される。
【0037】
動作実行部92は、濃度センサ5の検知結果に基づいて、磁気ローラ343にトナー薄層342aの形成動作を行わせるか、それともトナー薄層342aの剥ぎ取り動作を行わせるかを決定すると共に、決定した動作が行われるように各種電源11a,11b,12や各モータ13a,13bを制御する。具体的には、動作実行部92は、テストパターン像のトナー濃度が所定値以下である場合、磁気ローラ343にトナー薄層342aの剥ぎ取り動作を行わせる。また、テストパターン像のトナー濃度が所定値よりも大きい場合は、磁気ローラ343にトナー薄層342aの形成動作を行わせる(もしくは継続させる)。尚、所定値は、例えばプリンタ1が設置される環境の条件や設計仕様等から適宜決定されるものとする。
【0038】
ここで、動作実行部92は、どのようにして磁気ローラ343にトナー薄層342aの形成動作または剥ぎ取り動作を行わせるかについて、具体的に説明する。
【0039】
磁気ローラ343にトナー薄層342aの形成動作を行わせる場合、動作実行部92は、現像ローラ342及び磁気ローラ343に異なる第1及び第2バイアスがそれぞれ印加されるように、各種電源11a,11b,12が出力する各電圧を決定する。この時決定される各電圧は、磁気ローラ343の磁気ブラシ343aによりトナーが現像ローラ342の表面に飛翔するような値に決定される。一例としては、現像ローラ342に印加される第1バイアスは、直流電圧Vdc=200V、交流電圧のピーク間電圧Vpp=1.6kV、周波数f=2.7kHz、Duty比=27%であって、磁気ローラの第2バイアスのVdc=400Vが挙げられる。すると、磁気ローラ343の磁気ブラシ343aは現像ローラ342の表面に接触し、第1及び第2バイアスの電圧差により現像ローラ342の表面にはトナーが供給され、トナー薄層342aが形成される。
【0040】
また、磁気ローラ343にトナー薄層342aの剥ぎ取り動作を行わせる場合、動作実行部92は、現像ローラ342及び磁気ローラ343にトナー薄層342aの形成動作時とは異なる第1及び第2バイアスがそれぞれ印加されるように、各種電源11a,11b,12が出力する各電圧を決定する。この時決定される各電圧は、現像ローラ342の表面から磁気ローラ343の磁気ブラシ343a側にトナーが飛翔するような値に決定される。一例としては、現像ローラ342に印加される第1バイアスは、直流電圧Vdc=300V、交流電圧のピーク間電圧Vpp=1.6kV、周波数f=2.7kHz、Duty比=27%であって、磁気ローラの第2バイアスのVdc=200Vが挙げられる。更に、動作実行部92は、磁気ローラ343が現像ローラ342と異なる速度で回転を行うように、モータ13a,13bの回転速度を制御する。一例としては、磁気ローラ343と現像ローラ342との速度比“1.5”が挙げられる。すると、現像ローラ342及び磁気ローラ343には、トナー薄層342aの形成動作時とは異なる第1及び第2バイアスがそれぞれ印加され、現像ローラ342と異なる速度で回転している磁気ローラ343の磁気ブラシ343aは、現像ローラ342のトナー薄層342aに接触する。これにより、両ローラ342,343には、トナー薄層342aの形成動作時と異なる電圧差が生じ、トナー薄層342aは、磁気ブラシ343aにより現像ローラ342の表面から剥ぎ取られる。
【0041】
尚、このようなトナー薄層342aの剥ぎ取り動作は、トナー薄層342aが現像ローラ342の表面から十分に剥ぎ取られるまで行われる。
【0042】
(3)動作
次に、プリンタ1の動作、特に、現像制御装置100の動作について、図5を用いて説明する。はじめに、プリンタ1は電源がオンの状態にあるとする。
【0043】
ステップS1〜S2:プリンタ1の通信部2は、外部端末から印刷指示と共に画像データを受信すると(S1のYES)、画像形成部3は、受信した画像データについて画像形成動作を行う。この時、現像制御装置100の動作実行部92は、現像ローラ342の表面にトナー薄層342aが形成されるように、各種電源11a,11b,12が現像ローラ342及び磁気ローラ343それぞれに印加する電圧を決定する。これにより、現像ローラ342及び磁気ローラ343には、トナー薄層342aが形成されるような第1及び第2バイアスが印加され、現像ローラ342の表面にはトナー薄層342aが形成される(S2)。尚、テストパターン像形成部91は、印刷枚数をカウントする。
【0044】
ステップS3〜S4:テストパターン像形成部91がカウントしている印刷枚数が所定枚数未満であれば(S3のNO)、プリンタ1は、ステップS1以降の動作を繰り返す。テストパターン像形成部91がカウントしている印刷枚数が所定枚数以上であれば(S3のYES)、テストパターン像形成部91は、メモリ10内のテストパターンデータに基づいて、現像ローラ342にテストパターン像を形成させる(S4)。このようにして形成されたテストパターン像は、転写部4の転写ベルト43に転写された後、転写ベルト43上の濃度センサ5によりトナー濃度を検知される。
【0045】
ステップS5〜S6:動作実行部92は、濃度センサ5により検知されたテストパターン像のトナー濃度と所定値とを比較する(S5)。テストパターン像のトナー濃度が所定値よりも大きい場合には(S5のNO)、テストパターン像形成部91は、カウントしていた印字枚数をリセットし(S6)、プリンタ1及び現像制御装置100は、ステップS1以降の動作を行う。
【0046】
ステップS7〜S8:ステップS5において、テストパターン像のトナー濃度が所定値以下である場合には(S5のYES)、動作実行部92は、トナー薄層342aの形成動作を停止させ、トナー薄層342aの剥ぎ取り動作が磁気ローラ343により行われるように、各ローラ342,343に印加される電圧の決定及び各モータ13a,13bの駆動を制御する(S7)。これにより、現像ローラ342のトナー薄層342aは、現像ローラ342の表面から剥ぎ取られる。尚、この時、画像形成部3が画像形成動作を実行している場合は、動作実行部92は、画像形成動作を停止させる。そして、テストパターン像形成部91は、カウントしていた印字枚数をリセットする(S8)。
【0047】
ステップS9:現像制御装置100は、プリンタ1の電源がオフとなるまでステップS1以降の動作を繰り返し、プリンタ1の電源がオフとなると、一連の動作を終了する。
【0048】
(4)効果
本実施形態に係る現像制御装置100は、所定のタイミングで現像ローラ342によりトナー像としてのテストパターン像を形成させると、このテストパターン像のトナー濃度の検知結果に基づいて、磁気ローラ343にトナー薄層342aの剥ぎ取り動作を行わせるか否かを決定する。これにより、現像ローラ342の表面に形成されたトナー薄層342aは、現像ローラ342の状態に応じて適切に剥ぎ取られる。
【0049】
特に、現像制御装置100は、テストパターン像のトナー濃度が所定値以下である場合に、トナー薄層342aの剥ぎ取り動作を行う。このように、トナー薄層342aの剥ぎ取り動作は、現像ローラ342上のトナー薄層342aを剥ぎ取る必要がある場合に行われるため、現像ローラ342による現像動作を不必要に停止させずに済む。
【0050】
更に、現像制御装置100によると、テストパターン像の濃度は、テストパターン像以外の別の画像が所定枚数分記録される毎に検知され、トナー薄層342aの剥ぎ取り動作は、その濃度に応じて開始されるか否かが決定される。そのため、トナー薄層342aの剥ぎ取り動作を行うために現像ローラ342の現像動作を停止させる回数は、別の画像が所定枚数印刷されるたびにトナー薄層342aの剥ぎ取り動作を行う場合よりも、比較的少なくて済む。
【0051】
ところで、現像ローラ342と磁気ローラ343との電位差が変化すると、現像ローラ342及び磁気ローラ343上のトナーの帯電量(即ち、電位差)も変化する。そこで、本実施形態に係る現像制御装置100は、トナー薄層342aの形成時には、現像ローラ342及び磁気ローラ343の電位差が磁気ローラ343の表面から現像ローラ342の表面にトナーが飛翔するような電圧差となるように、現像ローラ342及び磁気ローラ343それぞれに電圧を印加する。逆に、トナー薄層342aの剥ぎ取り動作時には、現像制御装置100は、現像ローラ342及び磁気ローラ343の電位差が現像ローラ342からトナー薄層342aが剥がれるような電圧差となるように、現像ローラ342及び磁気ローラ343それぞれに電圧を印加すると共に、トナー薄層342aが磁気ブラシ343aにより剥ぎ取られるように磁気ローラ343を回転させる。これにより、トナー薄層342aの剥ぎ取り動作時、トナー薄層342aは、磁気ローラ343に形成された磁気ブラシ343aにより、現像ローラ342の表面から容易に剥がれる。
【実施例】
【0052】
本発明の現像制御装置100が採用されたプリンタ1を用いて連続印刷を行った場合の、履歴現象を含む画像不良及び画像濃度の抑制効果について調査した。本実施例では、感光体ドラム31、現像ローラ342、磁気ローラ343の各直径は、順に30mm、16mm、20mmであって、現像ローラ342及び磁気ローラ343間の距離は350μmであるプリンタ1を用いた。また、感光体ドラム31の線速は180mm/sec、感光体ドラム31の表面電位は310V、2成分現像剤中のトナーは20μC/g、トナー粒径(体積平均粒径)及びキャリア粒径(重量平均粒径)は、それぞれ7.5μm、50μmであるものを用いた。更に、現像ローラ342には、第1バイアスとして、直流電圧Vdc=300V、交流電圧のピーク間電圧Vpp=1.6kV、周波数f=2.7kHz、Duty比=27%である電圧を印加し、磁気ローラ343には、第2バイアスとして、Vdc=200V、ピーク間電圧Vpp=300V、周波数f=2.7kHz、Duty比=27%である電圧を印加した。また、テストパターン像にはベタ画像を用い、テストパターン像を印刷枚数が100枚となるごとに形成した。
【0053】
図6は、このようなプリンタ1において、テストパターン像のトナー濃度が1.3以下である時にトナー薄層342aの剥ぎ取り動作を行う場合において、印刷枚数が任意に100枚となる期間を抽出した結果と(本発明の実施例)、トナー薄層342aの剥ぎ取り動作を行わない場合の結果(比較例)とを示す。尚、図6の実施例及び比較例の両結果は、印字率が50%の画像を連続印刷させた場合の結果を示している。
【0054】
図6から明らかなように、本発明では、印刷枚数に依存せず、印刷される画像の濃度はほぼ一定に保たれ、かつ画像不良についても発生しなかった。これに対し、比較例では、印刷される枚数が多くなるのに伴い、印刷される画像の濃度は不均一となり、画像不良については数回生じたことが確認された。
【0055】
従って、本発明によれば、トナー薄層342aの剥ぎ取り動作が行われない場合よりも、長期にわたり良好な画像形成を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明に係る画像形成装置は、複写機、プリンタ及びファクシミリ装置の各機種や、これらの機能及びスキャナ機能を併せ持つ複合機として適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本実施形態に係る画像形成装置の現像制御装置が採用されたプリンタの概略断面図。
【図2】現像装置の縦断面図。
【図3】タッチダウン現像方式の現像装置の概略を説明するための図。
【図4】本実施形態に係るプリンタ及び現像制御装置の構成を模式的に示すブロック図。
【図5】本実施形態に係るプリンタ、特に現像制御装置の全体的な動作を説明するためのフロー図。
【図6】本実施形態に係るプリンタを用いて連続印刷を行った場合の、画像不良の抑制効果を示す表。
【符号の説明】
【0058】
1 プリンタ
3 画像形成部
31 感光体ドラム
33 露光器
34 現像装置
342 現像ローラ
342a トナー薄層
343 磁気ローラ
343a 磁気ブラシ
43 転写ベルト
5 濃度センサ
9 制御部
91 テストパターン像形成部
92 動作実行部
11a、12 直流電源
11b 交流電源
100 現像制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体上の静電潜像を現像するための現像ローラと、前記現像ローラの表面にトナー薄層を形成するとともに前記現像ローラの表面から前記トナー薄層を剥ぎ取る磁気ローラと、を有する画像形成装置の現像制御装置であって、
所定のタイミングで前記現像ローラによりトナー像としてのテストパターン像を形成させるテストパターン像形成手段と、
前記テストパターン像のトナー濃度を検知する濃度検知部と、
前記濃度検知部の検知結果に基づいて、前記磁気ローラに前記トナー薄層の剥ぎ取り動作を行わせる動作実行手段と、
を備える、画像形成装置の現像制御装置。
【請求項2】
前記動作実行手段は、前記テストパターン像のトナー濃度が所定値以下である場合、前記磁気ローラに前記トナー薄層の剥ぎ取り動作を行わせる、
請求項1に記載の画像形成装置の現像制御装置。
【請求項3】
前記テストパターン像形成手段は、前記テストパターン像とは別の画像が所定枚数の記録媒体に記録される毎に、前記現像ローラにより前記テストパターン像を形成させる、
請求項2に記載の画像形成装置の現像制御装置。
【請求項4】
前記磁気ローラには、前記トナーとキャリアとからなる磁気ブラシが形成され、
前記現像ローラ及び前記磁気ローラは、それぞれ電圧を印加されることが可能であって、
前記動作実行手段は、前記トナー薄層の剥ぎ取り動作時、前記トナー薄層が前記磁気ブラシにより剥ぎ取られるように前記磁気ローラを回転させると共に、前記現像ローラと前記磁気ローラとの電位差が前記トナー薄層の形成時における前記電位差と異なるように、前記現像ローラ及び前記磁気ローラに印加される電圧を制御する、
請求項1〜3のいずれかに記載の画像形成装置の現像制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−8979(P2009−8979A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−171726(P2007−171726)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】