説明

画像形成装置及びその省エネルギーモード制御方法

【課題】画像形成装置に対して設定された消費電力量の予算内で最適な省エネルギーモードを設定出来るようにする。
【解決手段】今月の消費電力量を内部の記憶部から読み出し(S21)、予めユーザーが設定した予算(許容消費電力量)と比較する(S22)。比較の結果、マージンが大きいときは(S23:大)、消費電力が大きくレスポンスが高速な省エネモードを維持する第1の制御パターンで更新する。マージンが小さいときは(S23:小)、消費電力が小さくレスポンスが低速な省エネモードを維持する第3の制御パターンで更新する。マージンが中間のときは(S23:中)、消費電力が大きいがレスポンスが高速な省エネモードから消費電力が小さくレスポンスが低速な省エネモードに遷移ずる第2の制御パターンで更新する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置及びその省エネルギーモード制御方法に関し、より詳しくは、ユーザーが事前に設定した消費電力量の予算内で、複数の省エネルギーモードの中から最適な省エネルギーモードを設定出来る画像形成装置及びその省エネルギーモード制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題に対する関心や、電気料金の節約の観点から、画像形成装置に対して消費電力量低減の要求があり、様々な対策が実施されている。例えば特許文献1には、プリンタ装置が、クライアント装置から転送される印刷データに基づいて課金の判定を行い、印刷データとともに転送されてくる制御条件に基づいて印刷出力動作の制御を行うとき、印刷データの印刷出力に要するコストが予め設定されている予算上限を超えると、予算上限値内で印刷可能な印刷出力条件(印刷枚数、用紙サイズ、ソート、パンチ、ステープル等)での印刷出力を実行するプリントシステムが開示されている。
【0003】
しかしながら、上記従来のプリントシステムは、印刷出力条件のみに注目した課金管理を行うものであり、画像形成装置の消費電力にかかる費用に対する施策が実行されていない。即ち、パンチ、ステープル等の動作を減少させることで消費電力量を削減する仕組みは取られていたが、あくまでも印刷出力動作のみに着眼したものであり、印刷出力動作以外の消費電力量をも考慮した施策ではない。
【0004】
一方、印刷出力動作以外の消費電力量を考慮した施策としては、省エネルギーモードの設定がある。例えば、電力を多く消費する定着ヒータを、装置が稼働していない場合に通常よりも低い温度で制御したり、定着ヒータへの電力供給を停止したりして消費電力量の低減を図る。或いは省エネルギーモードから通常モードへの復帰信号を監視するCPU(Central Processing Unit)等以外、装置を構成する殆ど全ての部品への電源供給を停止する。
【0005】
また、消費電力の異なる複数の省エネルギーモードを備えた画像形成装置もある(特許文献2)。この画像形成装置によれば、消費電力が最小の省エネルギーモードに設定することで、最大の消費電力量低減効果が得られる。
【0006】
しかし、一般に消費電力の小さい省エネルギーモード程、通常モードへの復帰時間が長い、つまり、消費電力量の低減と復帰応答速度(レスポンス)の高速化とはトレードオフの関係にあるため、最大の消費電力量低減効果を得ようとすると、装置の生産性が低下してしまうという問題がある。
【0007】
つまり、従来の省エネルギーモードを備えた画像形成装置では、消費電力量を管理し、ユーザーが事前に設定した消費電力量の予算内で最適な省エネルギーモードの設定(予算内であればレスポンスが高速な省エネルギーモードを維持し、予算をオーバーしそうであれば消費電力のより低い省エネルギーモードに移行する等)が出来ないという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、画像形成装置に対して設定された消費電力量の予算内で最適な省エネルギーモードを設定出来るようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、消費電力の異なる複数の省エネルギーモードを有する画像形成装置であって、所定期間の許容消費電力量を設定する手段と、前記期間内で消費電力量を算出する手段と、前記複数の省エネルギーモードの一つ以上を所定時間選択することで構成された消費電力量の異なる複数の省エネルギーモード制御パターンを記憶する省エネルギーモード制御パターン記憶部と、前記設定された許容消費電力量、及び前記算出された消費電力量に基づいて、前記所定期間の末日の消費電力量が前記設定された許容消費電力量を越えないように、前記複数の省エネルギーモード制御パターンの内の一つを動的に設定する省エネルギーモード制御パターン設定手段とを有することを特徴とする画像形成装置である。
また、本発明は、消費電力の異なる複数の省エネルギーモードを有する画像形成装置の省エネルギーモード制御方法であって、所定期間の許容消費電力量を設定する工程と、所定期間内で消費電力量を算出する工程と、前記設定された許容消費電力量、及び前記算出された消費電力量に基づいて、前記所定期間の末日の消費電力量が前記設定された許容消費電力量を越えないように、予め前記複数の複数の省エネルギーモードの一つ以上を所定時間選択することで作成した消費電力量の異なる複数の省エネルギーモード制御パターンの内の一つを前記画像形成装置に動的に設定する省エネルギーモード制御パターン設定工程とを有することを特徴とする画像形成装置の省エネルギーモード制御方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、画像形成装置に対して設定された消費電力量の予算内で最適な省エネルギーモードを設定することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態の画像形成装置のブロック図である。
【図2】本発明の実施形態の画像形成装置におけるモード毎の基準消費電力データテーブルの一例を示す図である。
【図3】本発明の実施形態の画像形成装置におけるモード毎の使用可能量テーブルの一例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態の画像形成装置においてモード毎に消費電力量データを蓄積する処理を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態の画像形成装置の省エネルギーモード制御パターンを示す図である。
【図6】本発明の実施形態の画像形成装置における第2の省エネルギーモード制御パターンの設定期間の入力及び実行動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態の画像形成装置における省エネルギーモード制御パターン更新処理の一例を示すフローチャートである。
【図8】図7におけるユーザーの設定予算、消費電力量及びマージンを説明するためのグラフの一例である。
【図9】図7におけるマージンの大きさに応じて図5の設定時間を変更する処理を示すフローチャートである。
【図10】図7の処理において、月末までの残り日数によってマージンの大小判断の基準を変更する処理を示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施形態の画像形成装置における省エネルギーモード制御パターン更新処理の別の一例を示すフローチャートである。
【図12】図11におけるユーザー設定予算及びマージンを説明するためのグラフの一例である。
【図13】図12におけるコピーモードの消費電力量を示す図である。
【図14】図12におけるプリントモードの消費電力量を示す図である。
【図15】本発明の実施形態の画像形成装置において、ユーザーの要求に対して実施する動作の一例を示す図である。
【図16】本発明の実施形態の画像形成装置において、ユーザーの要求に対して実施する動作の別の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
〈画像形成装置のブロック図〉
図1に示すように、本発明の実施形態の画像形成装置1は、この装置のユーザーI/F(インターフェース)としての操作・表示部2、画像の入力を行うスキャナ3、この装置全体の制御などを行うコントロールユニット4、画像の書き込みを行うプロッタ5、及び装置の消費電力を監視する電力監視ユニット6を備えている。
【0013】
操作・表示部2は、画像形成装置1の操作に必要な各種キーを備えるとともに、ディスプレイ(例えば、液晶ディスプレイ)やLED(Light Emitting Diode)等のランプを備えている。
【0014】
コントロールユニット4は、外部I/F部41、記憶部42、及び図示しないCPUを備えている。外部I/F部41には、LAN(Local Area Network)等のネットワークNWを介してコンピュータ等の外部端末装置9が接続されている。外部I/F部41は、CPUの制御下で、ネットワークNWに接続されている外部端末装置9との間で制御信号及びデータの送受を行う。記憶部42は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等で構成され、画像形成装置1の基本プログラムや後述する各種フローを実行する制御プログラム及びこれらのプログラムを実行するのに必要な各種データを格納するとともに、CPUのワークメモリとしても利用される。
【0015】
プロッタ5は定着部51を備えており、電子写真プロセスで用紙に画像を形成する。電力監視ユニット6には、電源プラグ7が取り付けられた電源コード8が接続されており、電力監視ユニット6は、電源プラグ7及び電源コード8を介して供給される商用電源電圧を画像形成装置1の内部で必要な電源電圧に昇圧及び降圧して、画像形成装置1の各部に供給するとともに、画像形成装置1の各モードの消費電力を監視して、監視結果をコントロールユニット4に出力する。
【0016】
画像形成装置1は、スキャナ3、プロッタ5、外部I/F部41等の資源を利用して、複数の動作モード処理を実行する。例えば、スキャナ3で読み取った原稿の画像データをプロッタ5で用紙に出力するコピーモード処理、外部I/F部41で受信した画像データに基づいてプロッタ5で用紙に画像を出力するプリントモード処理、スキャナ3で読み取った原稿の画像データを、外部I/F部41を介して外部装置に出力するスキャンモード処理を備えている。
【0017】
また、画像形成装置1は、消費電力を削減する省エネルギーモード(以下、省エネモードと言う)して、高速起動省エネモード、通常省エネモード、及び節電省エネモードを備えている。高速起動省エネモードでは、図1の全てのユニット(コントロールユニット4、プロッタ5等)に電源電圧が投入されているため、ユーザーからの動作要求に対して高速に応答できるが、消費電力は大きくなる。節電省エネモードでは、図1の最小限のユニット(コントロールユニット4内のCPUのみ)に電力が供給されているため、消費電力は小さいが、ユーザーから動作要求があった場合は、各ユニットに電力供給を行った後に、ソフトウェアの起動時間や、定着部の温度調整・その他調整時間を待つ必要があるためレスポンスは遅い。通常省エネモードでは、電力供給が行われていない状態の場合、動作要求があったときに起動時間が長くなってしまうユニット(例えば図1の定着部51)にある程度の電力供給を行うことで、節電省エネモードよりも高速なレスポンスを実現する。
【0018】
〈各動作モード及び省エネモードの消費電力〉
記憶部42には、図2に示すように、上述した各動作モード及び省エネモードの基準消費電力データを保持するテーブルが格納されている。この基準消費電力データテーブルは、例えば予め各動作モード及び省エネモードでの消費電力を測定することによって取得し、作成したものである。なお、ここでは、説明の便宜上、動作モード毎に一律に消費電力を登録しているが、実際は、同じ動作モードであっても異なった消費電力になる。即ち、例えばプリントモードであっても、用紙サイズやカラーかモノクロか等のプリント条件によって消費電力が変化する。
【0019】
〈動作モード毎及び省エネモードの使用可能量〉
画像形成装置1は、所定の消費期間(例えば1カ月)毎にユーザーが予め設定した消費電力量の範囲内で要求された動作の処理を行う。即ち、画像形成装置1のユーザー(管理者を含む)は、所定の期間毎に画像形成装置1を使用するユーザー毎に使用を許可する許容消費電力量を操作・表示部2や外部端末装置9から入力し、コントロールユニット4は、許容消費電力量が入力されると、記憶部42に格納されている基準消費電力データテーブルを参照して、設定された消費期間(例えば月毎)でのモード毎の許容使用量(例えば部数)を算出して、図3に示すような許容使用量テーブルを記憶部42に格納する。
【0020】
なお、以下の説明では、説明の便宜上、月毎に許容消費電力量を設定して、その設定値に対して、各モードにおいて、そのモードのみで許容消費電力量を消費すると仮定した場合の許容使用量をテーブルに登録して管理するものとした。
【0021】
〈モード毎の消費電力量データの蓄積〉
図4に示すように、ユーザー要求動作に応じて画像形成装置1が消費した電力量は、電力監視ユニット6によって算出され(ステップS1)、モードに関連付けられてコントロールユニット4内部の記憶部42に蓄積される(ステップS2)。
【0022】
〈省エネモード制御パターン〉
画像形成装置1は、消費電力量の異なる3つの省エネモード制御パターンを持っている。第1の省エネモード制御パターンは高速起動省エネモード維持する制御パターンである。また、第2の省エネモード制御パターンは、図5に示すように、高速起動省エネモードで時間t1が経過した時に通常省エネモードに遷移し、通常省エネモードで時間t2が経過した時に節電省エネモードに遷移する制御パターンである。また、第3の省エネモード制御パターンは、ユーザーからの動作要求がない場合に即座に節電省エネモードに移行する制御パターンである。つまり、消費電力量は、第1の省エネモード制御パターンが最大であり、第3の省エネモード制御パターンが最小である。これらの制御パターンは記憶部42に記憶されている。
【0023】
〈時間t1、t2の手動設定〉
図5に示す時間t1、t2はユーザーが手動で設定することも出来るし、自動的に設定することも出来る。図6は手動で設定する場合のフローチャートである。ユーザーは、操作・表示部2を用いて、時間t1、t2を入力する(ステップS11)。第2の省エネモード制御パターンで動作しているとき(ステップS12)、設定した時間t1、t2に従って、高速起動省エネモードから通常省エネモード、通常省エネモードから節電省エネモードへと遷移する(ステップS13)。自動的に設定する手順については後述する。
【0024】
〈省エネモード制御パターンの更新処理:その1〉
画像形成装置1は、図3に示す許容使用量テーブル、即ちユーザーにより設定された所定期間(例.1カ月)の許容使用量の上限値と、その所定期間内の使用量とを定期的(例えば毎日定時)に比較し、その差の大小に応じて、前述した省エネモード制御パターンの更新を行うことにより、所定期間の末日における使用量が使用許可量の上限値を越えないように制御する。この処理について図7のフローチャートを参照して説明する。ここでは、所定期間を1カ月とする。
【0025】
まずコントロールユニット4は記憶部42から今月分の消費電力量(電力使用量)を読み出す(ステップS21)。次いで記憶部42の許容使用量テーブルからユーザーの設定予算(許容使用量)を読み出し、両者を比較してマージン(両者の差)を算出し(ステップS22)、マージンの大きさを判定する(ステップS23)。なお、この比較の際、消費電力量を使用量に変換するか又は使用量を消費電力量に変換することで、双方の単位を合わせる。
【0026】
判定の結果に応じて、現在の省エネモード制御パターンを以下のように更新する。マージンが大きい、即ち予め定めた第1の閾値th1以上であれば(ステップS23:大)、第1の省エネモード制御パターンで更新する(ステップS24)。また、マージンが中程度、即ち第1の閾値未満であり第2の閾値th2以上であれば(ステップS23:中)、第2の省エネモード制御パターンで更新する(ステップS25)。また、マージンが小さい、即ち第2の閾値th2未満であれば(ステップS23:小)、第3の省エネモード制御パターンで更新する(ステップS26)。
【0027】
このように省エネモード制御パターンを動的に設定することにより、最適な省エネルギーモードの設定(予算内であれば高速起動省エネモードを維持し、予算をオーバーしそうであれば節電省エネモードに移行する等)を行うことができる。この結果、所定期間の末日の消費電力量が許容消費電力量以内の最大値となるように制御される。
【0028】
図8に、ユーザーが設定した許容消費電力量、各モードの消費電力量及びマージンを示す。この図の横軸は日付、縦軸は消費電力量である。また、「Wset」はユーザーの設定予算、「コピー」、「プリント」、「スキャン」、「省エネ」は、それぞれコピーモード、プリントモード、スキャンモード、省エネモードの消費電力量の推移を示し、「合計」はそれらの加算値の推移を示す。「累計」は「合計」の値の積算値を表す。マージンは、この「累計」の値をユーザーの設定予算の値から減算することにより得られる。ここでは、5日毎に消費電力量を集計している。即ち例えば1日〜5日の5日間の消費電力量を集計し、横軸の5日の消費電力量している。この図のグラフは、ユーザーの指示に基づいて、操作・表示部2に表示することができる。
【0029】
〈時間t1、t2の自動設定〉
前述した図5の時間t1、t2は図7のステップS23で判定したマージンの大きさに応じて自動的に設定することが出来る。図9にこの処理のフローチャートを示す。この処理は、図7における更新前の省エネモード制御パターンが第2の省エネモード制御パターンのときに実行される。即ち第2の省エネモード制御パターンで動作しているとき(ステップS31)、図7のS23の判定結果に基づいて時間t1、t2を変更する(ステップS32)。マージンが大きい程、時間t1、t2を長くすることで、応答速度の速い状態を長くすることができる。
【0030】
〈月末までの残り日数によって基準値を変更する処理〉
図10は、図7の処理において、月末までの残り日数によりマージンの大きさを判断する際の判断基準を変更する処理である。この図のステップS41、S42は、それぞれ図7のステップS21、S22と同じである。次に月末までの残り日数を確認し(ステップS43)、ステップS42で算出したマージンが残り日数に対して大きいか小さいかを判定する(ステップS44)。
【0031】
〈省エネモード制御パターンの更新処理:その2〉
図11のフローチャートに示す省エネモード制御パターンの更新処理(その2)では、月の途中の時点での消費電力量から月末の消費電力量を予測し、その予測値と予めユーザーが設定した許容使用量とのマージンに応じて、省エネモード制御パターンを更新する。
【0032】
即ちまず記憶部42に記憶されている今月の使用量(消費電力量)から、今月の使用量の近似曲線を算出する(ステップS51)。なお、近似曲線の詳細については後述する。次にその近似曲線から今月末時点での消費電力量を予測し、その予測値と予めユーザーが設定した許容使用量のとの差であるマージンを算出し(ステップS52)、マージンの大きさを判定する(ステップS53)。
【0033】
判定の結果の処理は図7と同様である。即ちマージンが大きい、即ち予め定めた第3の閾値th3以上であれば(ステップS53:大)、第1の省エネモード制御パターンで更新する(ステップS54)。また、マージンが中程度、即ち第3の閾値未満であり第4の閾値th4以上であれば(ステップS53:中)、第2の省エネモード制御パターンで更新する(ステップS55)。また、マージンが小さい、即ち第4の閾値th4未満であれば(ステップS53:小)、第3の省エネモード制御パターンで更新する(ステップS56)。
【0034】
図12に各モードの消費電力量及びマージンを示す。この図の「多項式(累計)」は、図11のステップS51で算出した近似曲線である。それ以外は図8と同様である。ここでは、現時点が25日であるため、過去の5日毎の消費電力量の累計値を用いて近似曲線を作成し、その曲線を30日まで延長することで、月末の消費電力量の累計を予測する。ユーザーの設定予算である「Wset」から累計の予測値を減算した値がマージンである。この図のグラフは、ユーザーの指示に基づいて、操作・表示部2に表示することができる。ユーザーはグラフを見ることで、月中の使用傾向を維持した場合の月末までの消費電力量の推移を把握することができる。なお、各モードの消費電力量の対数値を併せて表示してもよい。
【0035】
本実施形態の画像形成装置1は、図12に示すような全動作モード及び省エネモードの消費電力量の予測だけでなく、動作モード毎の消費電力量を予測することもできる。図13は、コピーモードにおける各種コピー処理(白黒、カラー、集約、両面、精密)の個々の消費電力量を5日毎に集計するとともに、集計値を合計してコピーモードの消費電力量を取得し、さらに合計値を累計した累計値を用いて近似曲線(多項式)を算出している。この図のグラフを操作・表示部2に表示することで、ユーザーは月中の使用傾向を維持した場合の月末までのコピーモードの消費電力量の推移を把握することができる。
【0036】
図14は、プリントモードにおける各種プリント処理(白黒、カラー、集約、両面、精密)の個々の消費電力量を5日毎に集計するとともに、集計値を合計してコピーモードの消費電力量を取得し、さらに合計値を累計した累計値を用いて近似曲線(多項式)を算出している。この図のグラフを操作・表示部2に表示することで、ユーザーは月中の使用傾向を維持した場合の月末までのプリントモードの消費電力量の推移を把握することができる。
【0037】
〈予算オーバー通知処理〉
本実施形態の画像形成装置1は、ユーザーがコピーやプリントなどの動作要求を操作・表示部2や外部端末装置9から入力したとき、その動作の実行により、予め設定した許容消費電力量を越えるか否かを判定し、越える場合に通知することが出来る。図15はその処理のフローチャートである。
【0038】
ユーザーが画像形成装置に対して操作(プリント要求等)を行うと(ステップS61)、その動作に必要な電力量をコントロールユニット4が記憶部42から取得する(ステップS62)。ここで、必要な電力量は図2に示した基準消費電力データテーブルに格納されている。
【0039】
次いで図4に示す処理により記憶部42に蓄積されたこれまでの消費電力量に加算し、その加算値とユーザーが予め設定した予算とのマージンを計算する(ステップS63)。そして、操作を実施しても予算内か否か、即ちマージンがゼロ以上か否かを判定し(ステップS64)、予算内であれば(ステップS64:YES)、ユーザーが要求した操作を実施し(ステップS65)、予算をオーバーする場合は(ステップS64:NO)、その旨を操作・表示部2又は外部端末装置9で表示することにより、ユーザーに通知する(ステップS66)。これを受けてユーザーがその後の動作を決定する。
【0040】
〈代替手段通知処理〉
本実施形態の画像形成装置1は、ユーザーがコピーやプリントなどの動作要求を操作・表示部2や外部端末装置9から入力したとき、その動作の実行により、予め設定した許容消費電力量を越えるか否かを判定し、越える場合に代替手段を通知することが出来る。図16はその処理のフローチャートである。
【0041】
この図のステップS71〜S74は図15のステップS61〜S64と同じである。操作を実施しても予算内であれば(ステップS74:YES)、記憶部42に格納されている現時点迄の消費電力量から近似曲線を算出し(ステップS75)、月末の消費電力量を予測する(ステップS76)。なお、この二つのステップの内容は図11のステップS51、S52と同じである。
【0042】
次いでステップS76で予測した消費電力量が予算内であるか否かを判定し(ステップS77)、予算内であれば(ステップS77:YES)、ユーザーが要求した操作を実施する(ステップS78)。
【0043】
一方、ステップS74で予算をオーバーすると判定した場合(ステップS74:NO)、又はステップS77で予算をオーバーすると判定した場合(ステップS77:NO)は、代替手段をピックアップし(ステップS79)、操作・表示部2又は外部端末装置9に表示する(ステップS80)。
【0044】
代替手段のピックアップ時には、コントロールユニット4が記憶部42にある基準消費電力データテーブルを参照し、代替手段毎に近似曲線カーブを算出し、予算内のもののみユーザーに提示する。図12〜図14から各モードの消費電力量が分かっているので、例えば要求動作がカラー片面プリントであれば、白黒両面プリントへの変更を提示する。
【0045】
なお、図7及び図11ではマージンを大、中、小の3つに区分し、省エネモード制御パターンも第1乃至第3の3つの制御パターンを設けたが、マージンを2つ或いは4つ以上とし、それに合わせて省エネモード制御パターンを2つ或いは4つ以上設けてもよい。また、図8、図12〜図14では5日毎に消費電力量を集計しているが、これより短期間(例.1日)或いは長期間毎に集計してもよい。
【符号の説明】
【0046】
1…画像形成装置、2…操作・表示部、4…コントロールユニット、42…記憶部、6…電力監視ユニット。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0047】
【特許文献1】特開2003−162397号公報
【特許文献2】特開2007−60150号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消費電力の異なる複数の省エネルギーモードを有する画像形成装置であって、
所定期間の許容消費電力量を設定する手段と、
前記所定期間内で消費電力量を算出する手段と、
前記複数の省エネルギーモードの一つ以上を所定時間選択することで構成された消費電力量の異なる複数の省エネルギーモード制御パターンを記憶する省エネルギーモード制御パターン記憶部と、
前記設定された許容消費電力量、及び前記算出された消費電力量に基づいて、前記所定期間の末日の消費電力量が前記設定された許容消費電力量を越えないように、前記複数の省エネルギーモード制御パターンの内の一つを動的に設定する省エネルギーモード制御パターン設定手段と
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載された画像形成装置において、
前記省エネルギーモード制御パターン設定手段は、前記設定された消費電力量又は電気料金と前記算出された消費電力量又は電気料金との差を算出する手段を有し、前記差が第1の所定値以上のときは、消費電力量が最大の第1の省エネルギーモード制御パターンを設定し、前記差が前記第1の所定値未満、第2の所定値以上のときは、消費電力量が中間の第2の省エネルギーモード制御パターンを設定し、前記差が前記第2の所定値未満のときは、消費電力量の最小の第3の省エネルギーモード制御パターンを設定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1に記載された画像形成装置において、
前記省エネルギーモード制御パターン設定手段は、前記算出された消費電力量又は電気料金に基づいて、前記所定期間の末日の消費電力量又は電気料金を予測する手段と、前記設定された消費電力量又は電気料金と前記予測された消費電力量又は電気料金との差を算出する手段を有し、前記差が第1の所定値以上のときは、消費電力量が最大の第1の省エネルギーモード制御パターンを設定し、前記差が前記第1の所定値未満、第2の所定値以上のときは、消費電力量が中間の第2の省エネルギーモード制御パターンを設定し、前記差が前記第2の所定値未満のときは、消費電力量の最小の第3の省エネルギーモード制御パターンを設定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載された画像形成装置において、
前記第1の省エネルギーモード制御パターンは消費電力が最大の省エネルギーモードを維持する制御パターンであり、前記第2の省エネルギーモード制御パターンは消費電力が最大の省エネルギーモードから最小の省エネルギーモードへ遷移する制御パターンであり、前記第3の省エネルギーモード制御パターンは消費電力が最小の省エネルギーモードを維持する制御パターンであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項4に記載された画像形成装置において、
前記第2の省エネルギーモード制御パターンでは、消費電力が段階的に減少することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項5に記載された画像形成装置において、
前記消費電力の段階的な減少における消費電力が一定の時間を前記設定された許容消費電力量と前記算出された消費電力量との差に応じて設定する手段を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項2に記載された画像形成装置において、
所定期間の末日までの残り日数に応じて、前記第1の所定値及び第2の所定値を変更する手段を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載された画像形成装置において、
動作モード毎の消費電力データを記憶する消費電力データ記憶部と、
所定の動作モードの動作要求が入力に応じて、前記所定期間の末日の消費電力量が前記設定された許容消費電力量を越えるか否かを判定する手段と、
該手段が越えると判定したとき、前記消費電力データ記憶部を参照し、要求された動作モードよりも消費電力が小さい代替動作モードを選択する手段と
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
消費電力の異なる複数の省エネルギーモードを有する画像形成装置の省エネルギーモード制御方法であって、
所定期間の許容消費電力量を設定する工程と、
所定期間内で消費電力量を算出する工程と、
前記設定された許容消費電力量、及び前記算出された消費電力量に基づいて、前記所定期間の末日の消費電力量が前記設定された許容消費電力量を越えないように、予め前記複数の複数の省エネルギーモードの一つ以上を所定時間選択することで作成した消費電力量の異なる複数の省エネルギーモード制御パターンの内の一つを前記画像形成装置に動的に設定する省エネルギーモード制御パターン設定工程と
を有することを特徴とする画像形成装置の省エネルギーモード制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−16903(P2012−16903A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156082(P2010−156082)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】