説明

画像形成装置及び画像形成方法

【課題】ライン画像を有する画像出力を行う場合でも、ライン画像部におけるトナー散りが発生することを防止できるようにする。
【解決手段】画像形成装置は、静電潜像が形成される感光体41と、感光体41にトナーを付着させる現像部44と、1次転写部51と、水分供給部60とを備えている。1次転写部51は、感光体に付着さえたトナーを中間転写ベルト50に転写する。水分供給部60は、現像部41によって感光体41に付着させたトナーに対して、1次転写部51によって中間転写ベルト50に転写する前に水分を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光体に付着したトナーを転写材に転写する画像形成装置及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、画像形成装置及び画像形成方法は、まず感光体を帯電させると共に原稿画像に合わせて電荷を消去、いわゆる露光し、静電潜像を形成する。この感光体の静電潜像に現像部を用いてトナーを付着させる。そして、感光体に付着したトナーを中間転写ベルトや用紙等の転写材に転写して、画像を形成している。
【0003】
ここで、トナーの帯電量が適正値よりも高い場合、同じ極性を有するトナー同士が反発しあい、感光体から転写材に転写する際に、転写チリが発生するおそれがあった。この転写チリの発生を抑制する技術は、例えば、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された画像形成装置では、除電器を用いて感光体や中間転写ベルトに形成されたトナーの帯電量を適正値まで低下させ、これにより、トナー同士が反発し合うことを防止している。
【0004】
また、エアーコンディショナーを装置内に配置し、このエアーコンディショナーによって装置内の湿度や温度を管理することで、転写する際のトナーの帯電量を適正値に設定する技術も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−138891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、ライン画像は、電荷が集中し易く、トナーが集まり感光体上に付着したトナー(トナー像)の高さが面画像よりも高くなるため、転写材に接触する際にトナー像が崩れ、転写チリが発生するおそれがある。
【0007】
特許文献1に記載された画像形成装置を用いた場合、ライン画像の帯電量を適正値まで下げると、面画像の帯電量が適正値よりも低くなっていた。ゆえに、ライン画像の帯電量を適正値まで下げることができず、ライン画像を転写する際にトナー散りが発生する、という問題があった。さらに、現像性を下げて感光体上のライン画像のトナー像の高さを低くすると、面画像の濃度が不足し、画質が低下するという問題もあった。
【0008】
なお、装置内に湿度や温度を管理するエアーコンディショナーを設けた画像形成装置では、現像した感光体から転写材に転写する前のトナー像のみならず、また感光体を帯電させる時や露光する時だけでなく、感光体にトナーを付着させる現像時の湿度や温度にまで影響を与えていた。そのため、転写する前のトナーの帯電量が適正値となっていても、現像する際の帯電量が低下したり、トナーが感光体に付着し難くなったりする、という不具合を有していた。
【0009】
本発明の目的は、上記の問題点を考慮し、ライン画像を有する画像出力を行う場合でも、ライン画像部におけるトナー散りが発生することを防止できる画像形成装置及び画像形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の画像形成装置は、静電潜像が形成される感光体と、感光体の静電潜像にトナーを付着させる現像部と、感光体に付着させたトナーを転写材に転写する転写部と、を備える。そして、現像部によって感光体に付着させたトナーに対して、転写材に転写する前に水分を供給する水分供給部を備える。
【0011】
また、本発明の画像形成方法は、以下(1)〜(3)に示す工程を含んでいる。
(1)感光体に静電潜像を形成するステップ。
(2)感光体に形成した静電潜像にトナーを付着させるステップ。
(3)感光体に付着させたトナーに対して、転写材にトナーを転写させるステップの前に水分供給部から水分を供給するステップ。
【発明の効果】
【0012】
上記構成の画像形成装置及び画像形成方法によれば、感光体に現像して転写される前のトナーに対して水分を供給することで、トナー間の液架橋力を増大させることができる。これにより、トナー像の高さが高い場合でも転写材に転写する際にトナー散りが発生することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の画像形成装置の一実施形態を示す全体構成図である。
【図2】本発明の画像形成装置に係る要部を示す概略構成図である。
【図3】本発明の画像形成装置に係る水蒸気発生手段を示す概略構成図である。
【図4】トナーに水分を供給した状態を示す模式図である。
【図5】本発明の画像形成装置の一実施形態の制御系を示すブロック図である。
【図6】水蒸気発生手段によって1秒間に発生する水分量と消費電力を示すグラフである。
【図7】本発明の画像形成装置に係る水分供給部の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の画像形成装置及び画像形成方法の実施の形態例(以下、本例という。)について、図1〜図7を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。また、本発明は、以下の形態に限定されるものではない。
なお、説明は以下の順序で行う。
1.画像形成装置の構成例
2.画像形成装置の動作
3.本例の画像形成装置と従来例との比較
【0015】
1.画像形成装置の構成例
まず、画像形成装置の構成例について、図1を参照して説明する。
図1は、本例の画像形成装置を示す全体構成図である。
【0016】
図1に示すように、画像形成装置1は、電子写真方式により用紙に画像を形成するものであり、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)及びブラック(Bk)の4色のトナーを重ね合わせるタンデム形式のカラー画像形成装置である。この画像形成装置1は、原稿搬送部10と、用紙収納部20と、画像読取部30と、画像形成部40と、中間転写ベルト50と、2次転写部70と、定着部80を有する。
【0017】
原稿搬送部10は、原稿をセットする原稿給紙台11と、複数のローラ12とを有している。原稿搬送部10の原稿給紙台11にセットされた原稿Gは、複数のローラ12によって、画像読取部30の読取位置に1枚ずつ搬送する。画像読取部30は、原稿搬送部10により搬送された原稿G又は原稿台13に載置された原稿の画像を読み取って、画像信号を生成する。
【0018】
用紙収納部20は、装置本体の下部に配置されており、用紙Sのサイズに応じて複数設けられている。この用紙Sは、給紙部21により給紙されて搬送部23に送られ、搬送部23によって転写位置である2次転写部70に搬送される。また、用紙収納部20の近傍には、手差部22が設けられている。この手差部22からは、用紙収納部20に収納されていないサイズの用紙やタグを有するタグ紙、OHPシート等の特殊紙が転写位置へ送られる。
【0019】
画像読取部30と用紙収納部20の間には、画像形成部40と中間転写ベルト50が配置されている。画像形成部40は、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の各色のトナー像を形成するために、4つの画像形成ユニット40Y,40M,40C,40Kを有する。
【0020】
第1の画像形成ユニット40Yは、イエローのトナー像を形成し、第2の画像形成ユニット40Mは、マゼンダのトナー像を形成する。また、第3の画像形成ユニット40Cは、シアンのトナー像を形成し、第4の画像形成ユニット40Kは、ブラックのトナー像を形成する。これら4つの画像形成ユニット40Y,40M,40C,40Kは、それぞれ同一の構成を有しているため、ここでは第1の画像形成ユニット40Yについて説明する。
【0021】
第1の画像形成ユニット40Yは、ドラム状の感光体41と、感光体41の周囲に配置された帯電部42と、露光部43と、現像部44と、クリーニング部45を有している。感光体41は、不図示の駆動モータによって反時計回りに回転する。帯電部42は、感光体41に電荷を与え感光体41の表面を一様に帯電する。露光部43は、原稿Gから読み取られた画像データに基づいて、感光体41の表面に対して露光操作を行い感光体41上に静電潜像を形成する。
【0022】
現像部44は、感光体41に形成された静電潜像にイエローのトナーを付着させる。これにより、感光体41の表面は、イエローのトナー像が形成される。なお、第2の画像形成ユニット40Mの現像部44は、感光体41にマゼンタのトナーを付着させ、第3の画像形成ユニット40Cの現像部44は、感光体41にシアンのトナーを付着させる。そして、第4の画像形成ユニット40Kの現像部44は、感光体41にブラックのトナーを付着させる。
【0023】
感光体41上に付着したトナーは、転写材の一例を示す中間転写ベルト50に転写される。クリーニング部45は、感光体41の表面に残留している現像剤を除去する。また、図2に示すように、画像形成部40には、水分供給部60が設けられている。水分供給部60の詳細については、後述する。
【0024】
中間転写ベルト50は、無端状に形成されており、不図示の駆動モータで感光体41の回転方向とは逆方向の時計回りに回転する。中間転写ベルト50における各画像形成ユニット40Y,40M,40C,40Kの感光体41と対向する位置には、1次転写部51が設けられている。この1次転写部51は、中間転写ベルト50にトナーと反対の極性を印可させることで、感光体41上に形成されたトナー像を中間転写ベルト50に転写させる。
【0025】
そして、中間転写ベルト50が回転することで、中間転写ベルト50の表面には、4つの画像形成ユニット40Y,40M,40C,40Kで形成されたトナー像が順次転写される。これにより、中間転写ベルト50上には、イエロー、マゼンダ、シアン及びブラックのトナー像が重なり合いカラー画像が形成される。
【0026】
中間転写ベルト50の近傍で、かつ搬送部23の下流には、2次転写部70が配置されている。2次転写部70は、ローラ状に形成されており、搬送部23によって送られてきた用紙Sを中間転写ベルト50側に押圧する。そして、2次転写部70は、搬送部23によって送られてきた用紙S上に中間転写ベルト50に形成されたカラー画像を転写する。また、2次転写部70における用紙Sの排出側には、定着部80が設けられている。定着部80は、用紙Sに転写されたトナー像を加圧加熱定着させる。
【0027】
定着部80の下流には、切換ゲート24が配置されている。切換ゲート24は、定着部80を通過した用紙Sの搬送路を切り替える。すなわち、切換ゲート24は、片面画像形成におけるフェースアップ排紙を行う場合に、用紙Sを直進させる。これにより、用紙Sは、一対の排紙ローラ25によって排紙される。また、切換ゲート24は、片面画像形成におけるフェースダウン排紙及び両面画像形成を行う場合に、用紙Sを下方に案内する。
【0028】
フェースダウン排紙を行う場合は、切換ゲート24によって用紙Sを下方に案内した後に、用紙反転搬送部26によって表裏を反転して上方に搬送する。これにより、用紙Sは、一対の排紙ローラ25によって排紙される。
両面画像形成を行う場合は、切換ゲート24によって用紙Sを下方に案内した後に、用紙反転搬送部26によって表裏を反転し、再給紙路27により再び転写位置へ送られる。
【0029】
また、一対の排紙ローラ25の下流側に、用紙Sを折ったり、用紙Sに対してステープル処理等を行ったりする後処理装置を配置してもよい。
【0030】
[水分供給部]
次に、図2〜図4を参照して水分供給部60について説明する。
図2は、本例の画像形成装置の要部を示す概略構成図である。
図2に示すように、画像形成部40には、水分供給部60が設けられている。水分供給部60は、水蒸気発生手段61と、水蒸気発生手段61で発生した水蒸気が通るダクト62と、ダクト62に水蒸気と風を送る送風手段63とから構成されている。
【0031】
図3は、水蒸気発生手段61を示す概略構成図である。
図3に示すように、水蒸気発生手段61は、水を貯蔵するタンク65と、タンク65内に設けられた超音波振動子66とを有している。超音波振動子66は、駆動回路67に接続されており、電圧が印可されることで超音波振動を発生させるものである。超音波振動子66が超音波振動することでタンク65に収納されている水Wの水面に微細な水柱が立ち、そこから水が蒸発して水蒸気が発生する。
【0032】
本例では、水蒸気発生手段61として超音波振動子66を用いた例を説明したが、これに限定されるものではない。水蒸気発生手段61としては、例えば、ヒーターを用いてタンク65内に収納された水Wを加熱することで水蒸気を発生させてもよい。
【0033】
しかしながら、ヒーターを用いた水蒸気発生手段は、水蒸気発生手段の周りが高温となるだけでなく、超音波振動子66よりも消費電力が大きくなる。そのため、水蒸気発生手段61としては、消費電力が小さく、かつ高温になりにくい超音波振動子66を用いたものが好ましい。
【0034】
図2に示すように、タンク65の上方は、開口しており、送風手段63が設けられている。本例では、送風手段63としてファンを用いている。送風手段63が駆動すると、ダクト62には、水蒸気発生手段61から生じた水蒸気と風が送り込まれる。
【0035】
ダクト62は、送風手段63から4つの画像形成ユニット40Y,40M,40C,40Kの各感光体41に向かって4方向に分岐している。ダクト62における送風手段63と反対側の端部には、水蒸気を排出する4つの排出口62aが形成されている。
【0036】
排出口62aは、感光体41における現像部44と1次転写部51の間の外周面と対向するように配置されている。また、この排出口62aの幅方向の長さは、感光体41の軸方向(幅方向)の長さと略等しくなるように設定される。そのため、感光体41には、その幅方向に対して一様に水分が吹き付けられる。つまり、感光体41に付着したトナーに対して1次転写部51によって転写される前に水分供給部60から水分を供給することができる。
【0037】
図4は、トナーに水分を供給した状態を示す模式図である。
図4に示すように、トナーに対して水分供給部60から水分が供給されると、トナーT間に水Wが付着し、トナーT間の液架橋力を増大させることができる。これにより、トナー像の高さが高い場合でも、トナー像が中間転写ベルト50と接触して崩れたり、同じ極性を有するトナー同士が反発したりして、トナー散りが発生することを防止できる。
【0038】
さらに、本例の画像形成装置1によれば、感光体41に現像されて、中間転写ベルト50に転写される前のトナーに対してのみ水分を供給している。なお、感光体41に残留する水分は、クリーニング部45で除去している。そのため、水分供給部60から排出した水分が、露光直前の感光体41や現像する前のトナー等に影響を与えることがない。その結果、帯電・露光工程や現像工程を確実に行うことができ、画質の低下を防ぐことができる。
【0039】
また、ダクト62の排出口62aの近傍には、後述する検知手段の一例を示す温度計108及び湿度計109が設けられる(図5参照)。具体的には、ダクト62内又は感光体41の表面における水分が供給される箇所に配置される。これにより、ダクト62内及び/又は感光体41における水分が供給される箇所、すなわちダクト62の排出口62aの近傍の状態(温度及び湿度)を検知することできる。
【0040】
[画像形成装置の各部のハードウェア構成]
次に、図5を参照して、本例の画像形成装置1の各部のハードウェア構成について説明する。
図5は、本例の画像形成装置1の制御系を示すブロック図である。
【0041】
図5に示すように、画像形成装置1は、例えばCPU(中央演算処理装置)101と、CPU101が実行するプログラム等を記憶するためのROM(Read Only Memory)102と、CPU101の作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)103と、を有する。さらに、大容量記憶装置としてのハードディスクドライブ(HDD)104と、操作表示部105を有する。なお、ROM102としては、通常電気的に消去可能なプログラマブルROMが用いられる。
【0042】
CPU101は、制御部の一例であり、ROM102、RAM103、HDD104及び操作表示部105にそれぞれシステムバス107を介して接続され、装置全体を制御する。また、CPU101は、画像読取部30、画像処理部110、画像形成部40、給紙部21、水分供給部60にシステムバス107を介して接続されている。さらに、CPU101には、水分供給部60の動作を設定する温度計108及び湿度計109が接続されている。
【0043】
HDD104は、画像読取部30で読み取って得た原稿画像の画像データを記憶したり、出力済みの画像データ等を記憶したりする。操作表示部105は、液晶表示装置(LCD)又は有機ELD(Electro Luminescence Display)等のディスプレイからなるタッチパネルである。この操作表示部105は、ユーザに対する指示メニューや取得した画像データに関する情報等を表示する。さらに、操作表示部105は、複数のキーを備え、ユーザのキー操作による各種の指示、文字、数字などのデータの入力を受け付けて入力信号を出力する。
【0044】
画像読取部30は、原稿画像を光学的に読み取って電気信号に変換する。例えば、カラー原稿を読み取る場合は、一画素当たりRGB各10ビットの輝度情報をもつ画像データを生成する。画像読取部30によって生成された画像データや、画像形成装置1に接続された外部装置の一例を示すPC(パーソナルコンピュータ)120から送信される画像データは、画像処理部110に送られ、画像処理される。画像処理部110は、受信した画像データをアナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮等の処理を行う。
【0045】
なお、本例では、外部装置としてパーソナルコンピュータを用いた例を説明したが、これに限定されるものではなく、外部装置は、例えばファクシミリ装置等その他各種の装置を用いることができる。
【0046】
例えば、画像形成装置1でカラー印刷を実行する場合、画像読取部30等によって生成されたR・G・Bの画像データを画像処理部110における色変換LUTに入力する。そして、画像処理部110は、R・G・BデータをY・M・C・Bkの画像データに色変換する。そして、色変換した画像データに対して、階調再現特性の補正、濃度補正LUTを参照した網点などのスクリーン処理、あるいは細線を強調するためのエッジ処理などを行う。
【0047】
画像形成部40は、画像処理部110によって画像処理された画像データを受け取り、用紙S上に画像を形成する。
【0048】
また、検知手段である温度計108及び湿度計109は、ダクト62の排出口62aの近傍の温度データ及び湿度データを検知する。検知した温度データ及び湿度データは、CPU101に送信される。そして、CPU101は、温度計108及び湿度計109によって得られた温度及び湿度データと、プロセス速度vに基づいて水分供給部60における水蒸気発生手段61及び送風手段63の出力を制御する。なお、本例でいうプロセス速度は、感光体41の回転速度vに相当する。
【0049】
[水分供給部の設定方法]
次に、図6を参照して、水分供給部60の水蒸気発生手段61及び送風手段63の出力の設定方法について説明する。
【0050】
まず、必要な水分量Kを次のように仮定する。例えば直径6μmのトナーが感光体41上に1層ベタで付着、すなわち平面で最密充填した場合、トナー間の接触部に、例えば直径2(μm)、厚さ1(μm)の水が付着するための水分量Kは、A4サイズの用紙S一枚の面積(297mm×210mm)当たり、0.011(g)となる。なお、この水分量Kは、用紙Sのサイズや要求する画質に応じて種々設定されるものである。
【0051】
また、感光体41の軸方向(幅方向)の長さは、A4サイズの用紙Sの長手方向の長さと等しく297mmに設定されているものとする。ここで、上述したように、水分供給部60におけるダクト62の排出口62aの幅方向の長さは、感光体41の軸方向の長さ(幅方向)の長さと略等しくなるように設定されている。すなわち、感光体41の幅方向の全体に対して一様に水分が供給される。よって、1秒間に必要な水分量k(g/sec)は、用紙S一枚当たりの水分量K(g)と、感光体41が処理を行うプロセス速度v(mm/sec)と、用紙Sの短手方向の長さH(mm)から、下記式1によって決まる。
[式1] K×(v/H)=k
【0052】
そのため、プロセス速度vが300mm/secの場合、画像形成ユニット40Y,40M,40C,40Kの感光体41の一色当たり、1秒間に必要な水分量、すなわち水分供給速度kは、0.011g×(300/210)=0.0157g/secとなる。また、厚紙モードなどでプロセス速度vが150mm/secの場合では、0.011g×(150/210)=0.00786g/secとなる。
【0053】
そして、フルカラー印刷の場合には、4色分の水分量4×kが必要となるため、プロセス速度vが300(mm/sec)では、0.0628(g/sec)の水分供給速度が必要となり、プロセス速度vが150(mm/sec)では、0.0314(g/sec)の水分供給速度が必要となる。
【0054】
なお、用紙SのサイズがA3サイズの場合、感光体41の幅方向の長さと用紙の短手方向の長さが等しくなるため、1秒間に必要な水分量(水分供給速度)kは、用紙の長手方向の長さによって決まる。
【0055】
図6は、水蒸気発生手段61における消費電力(W)と1秒間に発生する水分量、いわゆる水分供給速度(g/sec)を示すグラフである。
この図6に示すように、プロセス速度が300(mm/sec)の場合、約25Wの消費電力で超音波振動子66を駆動させれば、0.0628(g/sec)を発生させることができる。
【0056】
また、ダクト62内の水分量が多すぎると、ダクト62や感光体41が結露するおそれがある。そのため、ダクト62内が結露しないように、送風手段63の風量を設定する必要がある。次に、送風手段63の風量の設定方法について説明する。
【0057】
まず、温度計108によってダクト62の排出口62a付近、すなわちダクト62内及び水分が供給される感光体41の温度(状態)を検知し、検知した温度に対する飽和水蒸気量Mを算出する。また、温度計108と湿度計109によってダクト62の排出口62a付近の現状の水蒸気量Nを算出する。単位体積当たり発生させる水蒸気量Lは、飽和水蒸気量Mと現状の水蒸気量Nの差分となる。この差分以上の水蒸気量を発生させると、ダクト62が結露する。
【0058】
例えば、温度計108によって検知された温度が25℃、湿度計109によって検知した湿度が50%の場合、飽和水蒸気量Mは、23.0(g/m)となり、現状の水蒸気量Nは、23.0×0.50=11.5(g/m)となる。したがって、単位体積当たり発生させる水蒸気量Lは、飽和水蒸気量Mと現状の水蒸気量Nの差分である、23.0−11.5=11.5(g/m)、すなわち単位体積(1リットル)当たり0.0115(g/l)となる。
【0059】
また、温度計108によって検知された温度が15℃、湿度計109によって検知した湿度が75%の場合、飽和水蒸気量Mは、12.8(g/m)となり、現状の水蒸気量Nは、12.8×0.70=8.96(g/m)となる。そのため、単位体積当たり発生させる水蒸気量Lは、3.84(g/m)、すなわち0.00384(g/l)である。
【0060】
このため、送風手段63によってダクト62内に送り込まれる風量Rは、1秒間に水蒸気発生手段61によって発生する水分量4k(4色フルカラー印刷の場合を示す)と単位体積当たり発生させる水蒸気量Lから式2により算出される。
[式2]R=4k/L
【0061】
ここで、プロセス速度vが300(mm/sec)、温度25℃、湿度50%の場合、上述したように、1秒間に水蒸気発生手段61によって発生する水分量4kは、0.0628(g/sec)であり、単位体積当たり必要な水蒸気量Lは、0.0115(g/l)である。よって、送風手段63によってダクト62内に送り込まれる風量R(l/sec)は、式2より0.0628/0.0115=5.46(l/sec)となる。
【0062】
これは、ダクト62内の相対湿度がちょうと100%になる設定である。実際には、ダクト62が結露しないように相対湿度よりも若干低めに設定することが好ましいので、風量Rをやや上げて6.0(l/sec)の空気がダクト62内に送り送り込まれるように送風手段63の出力を設定する。
【0063】
上述したように、本例の画像形成装置1によれば、プロセス速度v、用紙Sのサイズ、ダクト62付近の温度データ及び湿度データに応じて水蒸気発生手段61及び送風手段63の出力を設定している。これにより、ダクト62内が結露することなく、最適な水分量をトナーに対して供給することができる。
【0064】
2.画像形成装置の動作
次に、図7を参照して、本例の画像形成装置1の動作について説明する。この動作は、画像形成装置が行う画像形成方法とそれをコンピュータに実現させるための一連のプログラムとして見ることができる。
図7は、本例の画像形成装置1における画像形成の動作を示すフローチャートである。
【0065】
図7に示すように、操作表示部105または外部装置であるPCを操作して、CPU101に対してプリントスタートの指令を行う(ステップS1)。次に、CPU101は、操作表示部105または外部装置であるPC120に入力されたプロセス速度データと、温度計108及び湿度計109から温湿度データを取得する(ステップS2)。
【0066】
CPU101は、ステップ2で取得したプロセス速度データと用紙Sのサイズに基づいて1秒間に必要な水分量kを式1により算出し、この水分量kにも基づいて水蒸気発生手段61の超音波振動子66の出力を変更する(ステップS3)。なお、水蒸気発生手段61は、迅速に水蒸気を発生させるために、超音波振動子66を常に駆動させていることが好ましい。
【0067】
また、CPU101は、送風手段63を駆動させ、ステップS2で取得した温湿度データ及びステップ3で算出した1秒間に必要な水分量kに基づいてダクト62が結露しない風量Rを式2により算出し、この算出した風量Rに基づいて送風手段63の回転数を設定する(ステップS4)。これにより、ダクト62を通って、水蒸気が感光体41に搬送され、中間転写ベルト50に転写される前のトナーに対して水分が供給される。
【0068】
次に、CPU101は、プリント動作が終了されているか否かを判定する(ステップS5)。ステップS5の判定処理において、プリント動作が終了していない場合は、送風手段63を駆動させプリント作業を続行する。プリント動作が終了した場合、CPU101は、送風手段63を停止させて、感光体41に水分を吹き付けることを停止させる(ステップS6)。この処理が終了後、一連のプリント処理が終了する。
【0069】
3.本例の画像形成装置と従来例との比較実験
次に、表1を参照して本例の画像形成装置1と従来の画像形成装置との比較実験について説明する。
【0070】
この比較実験では、水分供給部60を有する本例の画像形成装置1と、水分供給部60を持たない従来の画像形成装置200において、線幅500(μm)のライン画像のトナー像の平均高さを変えてトナーのチリ状態を比較した。感光体41上に形成されるトナー像の平均高さは、15(μm)、20(μm)、25(μm)とした。プロセス速度vは、本例と従来例ともそれぞれ300(mm/sec)に設定している。また、実験環境は、温度20℃、相対湿度50%で行った。さらに、単位重量当たりの電荷Qが50(μ/Cg)のトナーを用いている。なお、実験の評価は、用紙に印刷したライン画像を顕微鏡で拡大し、目視によって評価した。
【0071】
本例の画像形成装置1の温度計108及び湿度計109で検知した装置の温度は、25℃であり、相対湿度は、50%である。そのため、本例の画像形成装置1に係る水蒸気発生手段61によって発生される水分供給速度kは、0.0628(g/sec)となり、送風手段63の風量Rは、6.0(l/sec)となる。
【0072】
比較結果を表1に示す。
【0073】
【表1】

【0074】
表1は、本例の画像形成装置1と従来例の画像形成装置200による転写時のトナー散りに関する評価を示すものである。表1に示すように、トナーに水分を供給しない、従来の画像形成装置200では、トナー像の高さが低い15(μm)のときには転写次のトナー散りが見えたかったが、トナー像の高さが20(μm)ではトナー散りが目立つようになった。さらに、トナー像の高さが25(μm)となると、転写時のトナー散りを抑制できないことが判明した。
【0075】
これに対して、本例の画像形成装置1によれば、トナー像の高さが25(μm)と高くなっても、転写時のトナー散りを抑制できていることが分かった。これは、転写前のトナー像に水分を供給することで、トナー間の液架橋力が増大し、同じ極性を有するトナー同士が反発を防ぐことができ、中間転写ベルト50に接触してもトナー像が崩れることを防止できたものと推測できる。
【0076】
以上、画像形成装置及び画像形成方法の実施の形態例について、その作用効果も含めて説明した。しかしながら、本発明の画像形成装置及び画像形成方法は、上述の実施の形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0077】
例えば、上述した実施の形態例では、画像形成部40に4つの画像形成ユニット40Y,40M,40C,40Kを設けてカラー画像を形成する例を説明したが、画像形成ユニットを1つだけ設けた単色画像を形成する画像形成装置に適用してもよい。
【0078】
さらに、感光体に形成されたトナー像を転写させる転写材として中間転写ベルトを設け、この中間転写ベルトから用紙に画像を2次転写させた例を説明したが、感光体から用紙に直接トナー像を転写させても、本発明の目的は達成できるものである。
【0079】
また、ダクト62をさらに分岐させて中間転写ベルト50における2次転写部70の上流側に排出口62aを延在させ、2次転写部70で用紙Sに転写させる前の中間転写ベルト50上に形成されたトナー像に対して水分を供給させてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1…画像形成装置、 10…原稿搬送部、 11…原稿給紙台、 12…ローラ、 13…原稿台、 20…用紙収納部、 21…給紙部、 23…搬送部、 30…画像読取部、 40…画像形成部、 40Y,40M,40C,40K…画像形成ユニット、 41…感光体、 42…帯電部、 43…露光部、 44…現像部、 45…クリーニング部、 50…中間転写ベルト(転写材)、 51…1次転写部、 60…水分供給部、 61…水蒸気発生手段、 62…ダクト、 62a…排出口、 63…送風手段、 65…タンク、 66…超音波振動子、 67…駆動回路、 70…2次転写部、 80…定着部、 101…CPU(制御部)、 108…温度計(検知手段)、 109…湿度計(検知手段)、 120…PC(外部装置)、 G…原稿、 S…用紙、 W…水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像が形成される感光体と、
前記感光体の前記静電潜像にトナーを付着させる現像部と、
前記感光体に付着させた前記トナーを転写材に転写する転写部と、
前記現像部によって前記感光体に付着させた前記トナーに対して、前記転写材に転写する前に水分を供給する水分供給部と、
を備える画像形成装置。
【請求項2】
前記水分供給部は、
水蒸気を発生させる水蒸気発生手段と、
前記水蒸気が通過するダクトと、
前記ダクトに前記水蒸気と風を送り込む送風手段と、を備え、
前記ダクトにおける前記水蒸気を排出する排出口は、前記現像部と前記転写部の間であって、前記感光体の外周面に対向して設けられる
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
画像を形成するプロセス速度に応じて前記水蒸気発生手段の出力を制御する制御部を設けた
請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記ダクト内及び/又は前記水蒸気が供給される前記感光体の状態を検知する検知手段を設け、
前記制御部は、前記プロセス速度と、前記検知手段が検知した検知結果に基づいて前記送風手段の出力を制御する
請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記プロセス速度と、前記検知手段が検知した前記感光体の状態と、画像が形成される用紙のサイズに基づいて前記水蒸気発生手段の出力を制御する
請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記検知手段は、温度計及び湿度計である
請求項4又は5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記検知結果から前記ダクト内及び前記水蒸気が供給される前記感光体の飽和水蒸気量を推定し、前記送風手段の出力を制御する
請求項4〜5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記水蒸気発生手段は、
水を貯蔵するタンクと、
超音波振動する前記タンク内に設けられた超音波振動子と、からなる
請求項2〜7のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項9】
感光体に静電潜像を形成するステップと、
前記感光体に形成した前記静電潜像にトナーを付着させるステップと、
前記感光体に付着させた前記トナーに対して、転写材に前記トナーを転写させるステップの前に水分供給部から水分を供給するステップと、
を含む画像形成方法。
【請求項10】
前記水分を供給するステップは、
画像形成装置の操作表示部または外部装置からプロセス速度データを取り込むステップと、
前記感光体の表面に水分が供給される箇所に設けられた温度計及び湿度計から、温度データ及び湿度データを取り込むステップと、
前記プロセス速度、前記温度データ、前記湿度データ及び画像が形成される用紙のサイズに基づいて、前記水分供給部の出力を制御するステップと、
前記水分供給部の出力に基づいて、前記感光体に水分を送り転写材に転写される前のトナーに対して水分を供給するステップと、
を含む請求項9に記載の画像形成方法。
【請求項11】
前記水分供給の出力を制御するステップは、
前記プロセス速度データと前記用紙のサイズに基づいて前記感光体に供給する1秒間に必要な水分量を算出するステップと、
前記算出した1秒間に必要な水分量に基づき前記水分供給部における水蒸気発生手段の超音波振動子の出力を変更するステップと、
前記算出した1秒間に必要な水分量と前記温度データ及び前記湿度データに基づいて前記感光体が結露しない風量を算出するステップと、
前記算出した風量に基づき前記水分供給部における送風手段の回転数を設定するステップと、
を含む請求項10に記載の画像形成方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−118160(P2012−118160A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266034(P2010−266034)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】