説明

画像形成装置用のロール、その製造方法、及び画像形成装置

【課題】主鎖にエーテル基を持たないフッ素化ポリイミド樹脂から構成される場合に比べて、長期間に渡り離型性を有する画像形成装置用のロールを提供する。
【解決手段】表面層の少なくとも外表面を、主鎖にエーテル基を持つフッ素化ポリイミド樹脂から構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置用のロール、その製造方法、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリ、電子写真機器等の画像形成装置においては、記録用紙等の被記録部材上にトナー像等の未定着画像又は未転写画像を、例えば、加熱や静電力等によって定着又は転写させる、金属製、プラスチック製又はゴム製等の回転体からなる定着ロール又は中間転写ロールが用いられている。例えば、アルミニウム、鉄、ステンレス鋼等からなる支持体上に、弾性を有する弾性層及び離型性を有する表面層等が積層、形成された構成を有している。ここで、弾性層としてはシリコーンゴム等が用いられ、また、表面層としてはフッ素ゴム、フッ素樹脂等が、特に、離型性の面でフッ素樹脂がよく用いられている。
【0003】
上述のロールを用いる定着装置としては、例えば、ベルトニップ方式のものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この定着装置は、回転可能な定着ロールと、定着ロールに接触し、定着ロールに従って回転するように配置された無端ベルトとから主に構成されている。このような構成を有する定着装置を用いた定着操作は、表面が加熱された定着ロールと無端ベルトとの接触部を、トナー像を形成した記録用紙等の被記録部材を通過させることにより、トナー像を記録用紙表面に加熱定着することにより行われている。
【0004】
この場合に、定着ロールの表面層(離型層)としては、PFA樹脂(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)が主に用いられ、用途によっては、カーボンを分散させて導電性を向上させた樹脂や、SiOやBaSO等の無機物のフィラーを混合して耐久性を向上させた樹脂等が用いられている。
【0005】
表面層(離型層)としてPFA樹脂を用いない方法としては、例えば、フッ素化ポリイミドを用いる方法が提案されている(特許文献2〜4参照)。
【0006】
また、シリコーンからなる弾性層にフッ素樹脂からなる表面層(離型層)はそのままでは接着しないため、エキシマレーザー等の表面処理をした後で、シランカップリング剤等の接着層を設ける方法が採用されている。
【0007】
一方、従来から使われている部分フッ素化ポリイミドではなく、完全フッ素化したポリイミド樹脂が、光通信用の材料として研究され、通信波長帯での光の透明性を利用した導波路用途に開発され、研究されている(特許文献5、6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−262903号公報
【特許文献2】特許公報第3069041号
【特許文献3】特開2000−137396号公報
【特許文献4】特許公報第4142465号
【特許文献5】特許公報第2737871号
【特許文献6】特許公報第3085666号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、主鎖にエーテル基を持たないフッ素化ポリイミド樹脂から構成される場合に比べて、長期間に渡り離型性を有する画像形成装置用のロールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明によれば、以下の画像形成装置用ロール、その製造方法、及び画像形成装置が提供される。
【0011】
[1]その少なくとも外表面が主鎖にエーテル基を持つフッ素化ポリイミド樹脂から構成された表面層を有してなる画像形成装置用のロール。
【0012】
[2]前記主鎖にエーテル基を持つフッ素化ポリイミド樹脂は、完全フッ素化された酸無水物とフッ素化ジアミン類とから合成されるフッ素化ポリアミック酸から調製された樹脂である前記[1]に記載の画像形成装置用ロール。
【0013】
[3]前記完全フッ素化された酸無水物は、下記化学式(1)又は(2):
【0014】
【化1】

【0015】
【化2】

【0016】
で表されるものであり、かつ前記フッ素化ジアミン類は、下記化学式(3):
【0017】
【化3】

【0018】
で表されるものである前記[2]に記載の画像形成装置用のロール。
【0019】
[4]前記フッ素化ジアミン類は、下記化学式(4)〜(13)で表されるもののいずれかである前記[3]に記載の画像形成装置用のロール。
【0020】
【化4】

【0021】
【化5】

【0022】
【化6】

【0023】
【化7】

【0024】
【化8】

【0025】
【化9】

【0026】
【化10】

【0027】
【化11】

【0028】
【化12】

【0029】
【化13】

【0030】
[5]前記主鎖にエーテル基を持つフッ素化ポリイミド樹脂は、側鎖にパーフルオロアルキル基を持つ樹脂である前記[1]〜[4]のいずれかに記載の画像形成装置用ロール。
【0031】
[6]前記表面層の裏面側に積層された筒状の弾性層をさらに有する前記[1]〜[5]のいずれかに記載の画像形成装置用ロール。
【0032】
[7]前記[1]〜[6]のいずれかに記載の画像形成装置用ロールを用いた画像形成装置。
【0033】
[8]柱状又は筒状の支持体、又は前記支持体上に弾性層を積層した積層体を用意し、前記支持体又は積層体上に、完全フッ素化された酸無水物とフッ素化ジアミン類とから合成したフッ素化ポリアミック酸(フッ素化ポリイミド前駆体溶液)を塗布して、表面層となる塗膜を形成し、次いで形成された前記塗膜を加熱、焼成して表面層を形成することを含む画像形成装置用ロールの製造方法。
【0034】
[9]前記完全フッ素化された酸無水物は、下記化学式(1)又は(2):
【0035】
【化14】

【0036】
【化15】

【0037】
で表されるものであり、かつ前記フッ素化ジアミン類は、下記化学式(3):
【0038】
【化16】

【0039】
で表されるものである前記[8]に記載の画像形成装置用ロールの製造方法。
【0040】
[10]前記フッ素化ジアミン類は、下記化学式(4)〜(13)で表されるもののいずれかである前記[9]に記載の画像形成装置用のロールの製造方法。
【0041】
【化17】

【0042】
【化18】

【0043】
【化19】

【0044】
【化20】

【0045】
【化21】

【0046】
【化22】

【0047】
【化23】

【0048】
【化24】

【0049】
【化25】

【0050】
【化26】

【0051】
[11]前記積層体上に前記塗膜を形成する場合、前記塗膜を形成する前に、前記積層体を構成する前記弾性層の表面に、180nm以下の波長を有する真空紫外光を照射し、弾性層の表面を親水化することをさらに含む前記[8]〜[10]のいずれかに記載の画像形成装置用ロールの製造方法。
【0052】
[12]前記真空紫外光は、波長172nmの誘電体バリア放電エキシマランプから出射されたものである前記[11]に記載の画像形成用の定着ロールの製造方法。
【発明の効果】
【0053】
請求項1〜5に係る発明によれば、主鎖にエーテル基を持たないフッ素化ポリイミド樹脂から構成される場合に比べて、長期間に渡り離型性を有する画像形成装置用のロールを提供することができる。
【0054】
請求項6に係る発明によれば、中間層として弾性層を有しない場合に比べて、耐久性にさらに優れた画像形成装置用のロールを提供することができる。
【0055】
請求項7に係る発明によれば、本構成の画像形成装置用のロールを用いない場合に比べて、長期間に渡り画像の汚れが抑制された画像形成装置を提供することができる。
【0056】
請求項8〜10に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べて、長期間に渡り離型性を有する画像形成装置用のロールを効率的に製造することができる。
【0057】
請求項11〜12に係る発明によれば、エキシマレーザー等の表面処理をした後で、シランカップリング剤等の接着層を設ける方法に比べて、工程数を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1A】本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置用のロール(表面層の単層が支持体に支持されてなる場合)を示す斜視図である。
【図1B】図1Aに示す画像形成装置用のロールの縦断面図である。
【図1C】図1Aに示す画像形成装置用のロールの横断面図である。
【図2A】本発明の第2の実施の形態に係る画像形成装置用のロール(表面層及び弾性層の複層が支持体に支持されてなる場合)を示す斜視図である。
【図2B】図2Aに示す画像形成装置用のロールの縦断面図である。
【図2C】図2Aに示す画像形成装置用のロールの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
[第1の実施の形態に係る画像形成装置用のロール]
図1Aは、本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置用のロール(表面層の単層が支持体に支持されてなる場合)を示す斜視図である。図1Bは、図1Aに示す画像形成装置用のロールの縦断面図である。また、図1Cは、図1Aに示す画像形成装置用のロールの横断面図である。
【0060】
図1A〜1Cに示すように、本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置用のロール10は、被記録部材(図示せず)上に画像を形成する画像形成装置(図示せず)において被記録部材上に未定着画像又は未転写画像を定着又は転写させる定着ロール又は中間転写ロールとして用いられる画像形成装置用のロール10であって、定着又は転写時に被記録部材に接触する筒状の表面層11を有し、表面層11(表面層11自体が複数層からなる場合は少なくともその最外層)は、主鎖にエーテル基を持つフッ素化ポリイミド樹脂から構成されてなるものである。
【0061】
図1A〜1Cにおいては、上述のように、表面層11として、円筒状のものを用いた場合を示したが、例えば、角筒、楕円筒等であってもよい。また、上述のように単層のものを用いた場合を示したが、例えば、表面層11自体が複数層からなるものであっても、単層からなり内側から外側に向かって主鎖にエーテル基を持つフッ素化ポリイミド樹脂の含有量が段階的又は傾斜的に増加するものであってもよい。これらの場合、その外表面は、主鎖にエーテル基を持つフッ素化ポリイミド樹脂から構成されることが必要である。
【0062】
なお、第1の実施の形態における画像形成装置用のロール10は、表面層11自体が複数層からなるものであっても、例えば、後述する支持体50上に支持される層として、表面層11以外の層、例えば、後述する弾性層12(図2A参照)等を有しないので、「表面層11の単層からなる場合」(すなわち、画像形成装置用のロール10として、他の層、例えば、弾性層等を有しない場合)に含まれる。
【0063】
第1の実施の形態に係る画像形成装置用のロール10の表面層11(表面層11自体が複数層からなる場合は少なくともその最外層)は、上述のように主鎖にエーテル基を持つフッ素化ポリイミド樹脂から構成される。このような主鎖にエーテル基を持つフッ素化ポリイミド樹脂としては、例えば、完全フッ素化された酸無水物とフッ素化ジアミン類とから合成されるフッ素化ポリアミック酸から調製された樹脂を挙げることができる。
【0064】
本実施の形態の画像形成装置用のロールを転写ロール(転写体、転写(接触帯電)フィルム)のような静電力を利用した帯電体として用いる場合には、画像形成装置用のロール10の表面層11中に導電性粒子を分散させることができ、後述するようなPI前駆体溶液やフッ素化PI前駆体溶液(フッ素化ポリイミドワニス)を用いて本実施の形態のロールを製造する場合には、PI前駆体溶液やフッ素化PI前駆体溶液に、これらの導電性粒子を添加することが好ましい。
【0065】
導電性粒子としては、例えば、カーボンブラック、カーボンブラックを造粒したカーボンビーズ、カーボンファイバー、グラファイト等の炭素系物質、銅、銀、アルミニウム等の金属又は合金、酸化錫、酸化インジウム、酸化アンチモン、SnO−In複合酸化物等の導電性金属酸化物、チタン酸カリウム等の導電性ウィスカー等を挙げることができる。中でも、カーボンブラック粒子が少ない添加量で所定の導電性を得られることから好ましい。
【0066】
また、本実施の形態の画像形成装置用のロールを定着ロール(定着体、定着フィルム)として用いる場合には、画像形成装置用のロール10の外周面に付着するトナー画像の剥離性を向上させるため、PI前駆体溶液やフッ素化PI前駆体溶液(フッ素化ポリイミドワニス)に、離型性を有する樹脂被膜材料の微粒子を添加することも有効である。
【0067】
このような離型性を有する樹脂被膜材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等のフッ素樹脂が好ましい。また、静電オフセットの向上のためにカーボン粉末が分散含有されていてもよい。
【0068】
上述のフッ素樹脂の微粒子は、0.1μm〜5μmの平均粒子径を有するものが好ましく、0.1μm〜1.0μmの平均粒子径を有するものがさらに好ましい。
【0069】
また、表面層11(複数層からなる場合は少なくとも最外層)は、半導電性を有し、その表面抵抗率が、10Ω/□〜1012Ω/□であることが好ましく、定着ロールとしては、10Ω/□〜10Ω/□であることが、転写ロールとしては、10Ω/□〜1012Ω/□であることがさらに好ましい。
なお、表面層11の表面抵抗率の測定は、円形電極(例えば、三菱油化社製ハイレスターIPの「URプローブ」)を用い、JIS K6911に従って測定される。
【0070】
また、表面層11(複数層からなる場合は少なくとも最外層)は、0.5μm〜20μmの膜厚を有することが好ましく、0.5μm〜10μmの膜厚を有することがさらに好ましい。0.5μm未満であると、摩耗によって寿命が短くなることがあり、20μmを超えると、厚紙に対応することが難しくなることがある。さらに、表面層11(複数層からなる場合は少なくとも最外層)は、0.01μm〜2μmの表面粗さRaを有することが好ましく、0.01μm〜0.5μmの表面粗さRaを有することがさらに好ましい。
【0071】
[第2の実施の形態に係る画像形成装置用のロール]
図2Aは、本発明の第2の実施の形態に係る画像形成装置用のロール(表面層及び弾性層の複層が支持体に支持されてなる場合)を示す斜視図である。図2Bは、図2Aに示す画像形成装置用のロールの縦断面図である。図2Cは、図2Aに示す画像形成装置用のロールの横断面図である。
【0072】
図2A〜2Cに示すように、第2の実施の形態に係る画像形成装置用のロール20は、第1の実施の形態に係る画像形成装置用のロール10の場合と比べて、支持体50上に形成される層に関して、第1の実施の形態に係る画像形成装置用のロール10の場合が表面11の単層であったのに対して、表面層21及び弾性層22の複層からなる点において異なるが、その他の点では基本的に第1の実施の形態の場合と同様である。具体的には、第2の実施の形態に係る画像形成装置用のロール20は、被記録部材(図示せず)上に画像を形成する画像形成装置(図示せず)において被記録部材上に未定着画像又は未転写画像を定着又は転写させる定着ロール又は中間転写ロールとして用いられる画像形成装置用のロール20であって、円筒状の弾性層22を有し、この弾性層22上に、定着又は転写時に被記録部材に接触する筒状の表面層21を有し(換言すれば弾性層22は表面層21の裏面側に設けられる)、表面層21(表面層21自体が複数層からなる場合は少なくともその最外層)は、主鎖にエーテル基を持つフッ素化ポリイミド樹脂から構成されてなるものである。以下、第1の実施の形態の場合と異なる点について主に説明する。
【0073】
第2の実施の形態に係る画像形成装置用のロール20に用いられる弾性層22は、厚紙に対応した画像を得るために用いられる。図2A〜2Cにおいては、上述のように、弾性層22として、円筒状のものを用いた場合を示したが、例えば、角筒、楕円筒等であってもよい。また、表面層21の場合と同様に、弾性層22自体が複数層であってもよい。
【0074】
弾性層22(複数層からなる場合は、その少なくとも最内層)は、シリコーンゴム、フッ素ゴム等から構成することができる。中でも、シリコーンゴム又はフッ素ゴムが好ましい。シリコーンゴムとしては、例えば、HTV、LTV、RTV等のシリコーンゴムを好適に用いることできる。フッ素ゴムとしては、例えば、VDF系フッ素ゴム、VDF−HFP系フッ素ゴム(二元、三元系)等を好適に用いることができる。弾性層22の厚さは、100μm〜3000μmが好ましく、150μm〜1000μmがさらに好ましい。100μm未満であると、未定着トナー像への変形追従性が低下し、画像欠陥をもたらすことがあり、3000μmを超えると、スタンバイ時におけるウォームアップ時間が長くなり、消費電力の増加を招くことがある。
【0075】
また、上述のように、本実施の形態のロールを転写ロール(転写体、転写(接触帯電)フィルム)のような静電力を利用した帯電体として用いる場合には、画像形成装置用のロール20の表面層21及び弾性層22中に導電性粒子を分散させることができ、後述するようなPI前駆体溶液やフッ素化PI前駆対溶液(フッ素化ポリイミドワニス)を用いて本実施の形態のロールを製造する場合には、PI前駆体溶液やフッ素化PI前駆体溶液(フッ素化ポリイミドワニス)に、これらの導電性粒子を添加することが好ましい。すなわち、上述の弾性層22を構成するシリコーンゴム又はフッ素ゴムには、後述の導電性粒子やSiOやBaSO等の無機物のフィラー等が分散されてなることが好ましい。このように構成することによって、弾性層22の機械的な特性を改善したり、熱導電性や電気伝導性を向上させることができる。この場合、適宜、最適な種類と量とを選択することができる。
【0076】
導電性粒子としては、例えば、カーボンブラック、カーボンブラックを造粒したカーボンビーズ、カーボンファイバー、グラファイト等の炭素系物質、銅、銀、アルミニウム等の金属又は合金、酸化錫、酸化インジウム、酸化アンチモン、SnO−In複合酸化物等の導電性金属酸化物、チタン酸カリウム等の導電性ウィスカー等を挙げることができる。中でも、カーボンブラック粒子が少ない添加量で所定の導電率を得られることから好ましい。
【0077】
[支持体]
支持体50は、画像形成装置用のロール10、20を構成する表面層11,21、並びに表面層11,21及び弾性層12,22を支持するために用いられる。
【0078】
支持体50の形状としては、円柱状等の柱状又は円筒状等の筒状を挙げることができる。その断面は、一般的に上述のように円形状のものが好適に用いられるが、楕円状等のその他の断面形状を有するものであってもよい。なお、本実施の形態において、「支持体50表面」とは、特に説明がない場合は、支持体50が筒状である場合に、支持体50の外周面を意味し、支持体50が、柱状である場合には、柱の軸方向と平行な面を意味する。
【0079】
支持体50は、アルミニウム、鉄、ステンレス等の耐熱金属材料で構成されることが好ましい。また、必要に応じて、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンゾイミダゾール、液晶ポリマー、ポリフェニレンスルフィド等の耐熱性樹脂で構成してもよい。
【0080】
支持体50の厚さとしては、特に制限はないが、例えば、0.3mm〜3mmが好ましく、0.3mm〜1mmがさらに好ましい。
【0081】
[画像形成装置用のロールの製造方法]
本実施の形態の画像形成装置用のロールの製造方法は、柱状又は筒状の支持体、又は支持体上に弾性層を積層した積層体を用意し、支持体又は積層体上に、完全フッ素化された酸無水物とフッ素化ジアミン類とから合成したフッ素化ポリアミック酸(フッ素化ポリイミド前駆体溶液、換言すれば、フッ素化ポリイミドワニス)を塗布して、表面層となる塗膜を形成し(以下、「フッ素化PI前駆体塗膜形成工程」と略称することがある)、次いで、形成された前記塗膜を加熱、焼成して表面層を形成すること(以下、「フッ素化PI樹脂皮膜(表面層)形成工程」と略称することがある)を含むものである。なお、必要に応じて、上記工程のほかに、フッ素化PI前駆体塗膜の乾燥工程等の他の工程を含んでもよい。
【0082】
本実施の形態に係る画像形成装置用のロールの製造方法としては、大別して、第1の実施の形態の場合のように、画像形成装置用のロール10が支持体50の上にフッ素化ポリイミドの単層からなる表面層11だけを有する場合(支持体50上に、主鎖にエーテル基を持つフッ素化ポリイミド樹脂の単体の膜(表面層)を直接形成する場合)と、第2の実施の形態の場合のように、画像形成装置用のロール20が支持体50の上に弾性層22及び表面層21の複数層からなる場合(まず、支持体50上に弾性層22を形成した後、支持体50及び弾性層22の積層体の上に主鎖にエーテル基を持つフッ素化ポリイミド樹脂を形成して表面層21を形成し、支持体50上に複数の層(弾性層22及び表面層21)を有する画像形成装置用のロール20を形成する場合)とに分けて説明する。
【0083】
<画像形成装置用のロールが支持体上に表面層だけを有する場合>
(フッ素化PI前駆体塗膜形成工程)
フッ素化PI前駆体塗膜形成工程では、支持体50表面に塗膜を形成するためにフッ素化ポリイミド前駆体溶液を用いる。フッ素化ポリイミド前駆体としては、上述の化学式(1)及び(2)で表される、完全フッ素化二無水物と、上述の化学式(3)〜(9)で表されるフッ素化されたジアミン類が用いられる。なお、ジアミン類は、フッ素化率が高いほど好ましい。また、フッ素化PI前駆体を溶解させる溶剤としては、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等、公知の非プロトン系極性溶剤を用いることができる。なお、フッ素化PI前駆体溶液の濃度、粘度等は、適宜選択することができ、また、フッ素化PI前駆体溶液には、必要に応じて、上述の導電性粒子等の他の材料や添加剤等を加えてもよい。
【0084】
支持体50表面への、フッ素化PI前駆体溶液の塗布方法としては、支持体50の形状にもよるが、支持体50をフッ素化PI前駆体溶液に浸漬して引き上げる浸漬塗布法、軸方向が水平方向にほぼ平行となるように設置し、周方向に回転している支持体50の表面に、支持体50のほぼ真上に設置したノズル等からフッ素化PI前駆体溶液を吐出しながら、支持体50又はノズルを軸方向に平行移動させるフローコート法、このフローコート法において、支持体50表面に形成された塗膜をブレードでメタリングするブレード塗布法等、公知の方法を利用することができる。なお、上記フローコート法やブレード塗布法では、支持体50表面に形成される塗膜は支持体50の軸方向にらせん状に形成されるため、継ぎ目ができるものの、フッ素化PI前駆体溶液に含まれる溶剤は常温での乾燥が遅いために継ぎ目は自然に平滑化される。
【0085】
(フッ素化PI前駆体乾燥工程)
フッ素化PI前駆体乾燥工程では、支持体50表面に形成された塗膜中に含まれる溶媒を加熱・乾燥することで除去することが好ましい。加熱温度は用いる溶剤の沸点以下が好ましく、例えば溶媒がN−メチルピロリドン(NMP、沸点202℃)の場合には、70〜201℃の範囲が好ましく、溶媒がジメチルアセトアミド(DMAC、沸点165℃)の場合には、60℃〜164℃の範囲が好ましい。さらに好ましくは、イミド化が始まる125℃以下の60℃〜125℃で一度加熱し、溶媒に溶けているフッ素化に悪影響を及ぼす水を除去した後、溶媒の沸点以下の温度で加熱する、2段階加熱で溶媒を除去するのが好ましい。2段階目の温度としては、例えば、溶媒がN−メチルピロリドン(NMP、沸点202℃)の場合には、125℃〜201℃の範囲が好ましく、溶媒がジメチルアセトアミド(DMAC、沸点165℃)の場合には、125℃〜164℃の範囲が好ましい。加熱時間は塗布した塗膜の濃度と膜厚とによって変わるが、各段階の加熱時間は10〜120分程度が好ましい。乾燥中に重力の影響により、支持体50表面に形成された塗膜が垂れる場合には、支持体50を、軸方向を水平にして、10〜60rpm程度で回転させながら加熱・乾燥させることも好ましい。
【0086】
(フッ素化PI樹脂皮膜(表面層)形成工程)
上記フッ素化PI前駆体乾燥工程を経て乾燥された塗膜の加熱によるフッ素化PI膜の形成は、溶媒の沸点以上で400℃程度までの温度範囲で、20〜120分間程度で実施することが好ましい。その際、上述の温度に達するまでに、段階的な上昇や、ゆっくりと一定速度で上昇させるのが好ましく、さらに好ましくは、2段階や3段階の温度で加熱・成膜する。なお、最終温度は高い方が強固な膜が形成されるため、340℃以上で加熱することが好ましい。このようにして得られた画像形成装置用のロール10には、さらに必要に応じて、端部のスリット加工、パンチング穴あけ加工、テープ巻き付け加工等を施してもよい。
【0087】
<画像形成装置用のロールが支持体上に弾性層及び表面層を有する場合>
画像形成装置用のロールが支持体上に弾性層22及び表面層21を有する場合は、予め、柱状又は筒状の支持体50上に弾性体22を積層、形成し、その弾性体22の表面に、完全フッ素化された酸無水物とフッ素化されたジアミン類を用いて作製したフッ素化ポリアミック酸(フッ素化ポリイミド前駆体溶液、換言すれば、フッ素化ポリイミドワニス)を塗布して表面層21を形成する。しかし、弾性体22として通常用いられるシリコーン弾性体は、撥水性が強く、フッ素化ポリアミック酸を塗布しても、撥水して均一に塗布することができない。そこで、均一な塗布膜の形成を可能にするため、弾性体22の表面を親水化する必要がある。この親水化の方法としては、UVオゾン処理、エキシマレーザーの照射、又は接着剤に相当するカップリング剤の塗布等が用いられている。中でも、エキシマレーザーの照射は、シリコーン弾性層に直接、撥水・撥油性の高い材料の塗膜を形成することができるため親水化の方法としては優れている。しかし、エキシマレーザーの照射の場合は、コストが高くかつ生産性の面で必ずしも満足し得るものではなかった。そこで、本実施の形態においては、エキシマレーザーの照射の代わりに、支持体50及び弾性体(シリコーン弾性体)22の積層体を回転させながら波長172nmの誘電体バリア放電エキシマランプを照射することで、エキシマレーザーよりも低コストかつ高生産性で親水化処理を実現することが可能となった。172nmのエキシマランプを照射された弾性体(シリコーン弾性体)22の表面は、SiとOの共有結合が切断され親水化される。
【0088】
上述の弾性体の表面を親水化させた(以下、「弾性体表面の親水化工程」と略称することがある)後は、「画像形成装置用のロールが支持体上に表面層だけを有する場合」と同様に、「フッ素化PI前駆体塗膜形成工程」、「フッ素化PI前駆体乾燥工程」、「フッ素化PI樹脂皮膜(表面層)形成工程」等を経て、フッ素化PI樹脂皮膜(表面層21)が形成され、画像形成装置用のロール20が得られる。このようにして得られた画像形成装置用のロール20には、さらに必要に応じて、端部のスリット加工、パンチング穴あけ加工、テープ巻き付け加工等を施してもよい。以下に、「弾性体表面の親水化工程」について、さらに詳細に説明する。
【0089】
(弾性体表面の親水化工程)
弾性体22としてシリコーン弾性体を用いる場合、シリコーン弾性体は、撥水性が高く表面処理をすることなしに表面層21を形成する材料を塗布することは困難である。そこで、SiとOとの共有結合を切断し親水化する必要があるが、SiとO間の共有結合は、105.4kcal/molと大きいため強いエネルギーが必要で、波長が短く強い光エネルギーが必要である。表面改質のためには、波長172nmの誘電体バリア放電エキシマランプを用いて、シリコーン弾性体付きのロールを一定速度で回転させながら、エキシマランプを照射する方法を用いることが好ましい。一定速度でロールを回転させて、表面処理することから、弾性層22の表面全体を均一に表面改質することができる。なお、波長172nmの光は、大気中では急激に減衰してしまうため、ランプの照射面と弾性層22の表面との距離を極力近づけて用いるのが好ましく、1mm〜10mmの距離がよく用いられる。なお、真空雰囲気下や窒素雰囲気下の無酸素状態では、光強度の減衰が少ないためランプの照射面と弾性層22の表面との距離の制限は事実上なくなる。なお、エキシマランプの代わりに、エキシマレーザーを用いることもできる。
【0090】
上述の「弾性体表面の親水化工程」の後に、「画像形成装置用のロールが支持体上に表面層だけを有する場合」と同様に、「フッ素化PI前駆体塗膜形成工程」、「フッ素化PI前駆体乾燥工程」、「フッ素化PI樹脂皮膜(表面層)形成工程」等を経て、フッ素化PI樹脂皮膜(表面層21)が形成され、画像形成装置用のロール20が得られるが、「フッ素化PI樹脂皮膜(表面層)形成工程」において、塗布される弾性体22の耐熱性が不十分である場合には、イミド化反応が進行する温度で溶媒の沸点以上であればフッ素化PI樹脂皮膜(表面層)の形成は可能である。例えば、溶媒としてNMPを用いる場合、202℃以上であればよく、塗布される弾性体22の耐熱温度は、少なくとも202℃であるということになる。
【0091】
[画像形成装置]
次に、本実施の形態の画像形成用ロールを用いた画像形成装置について説明する。本実施の形態の画像形成装置は、本実施の形態の画像形成用ロールを利用することが可能な公知の画像形成装置であればいかなる画像形成装置であってもよいが、例えば、以下のような構成を有する画像定着装置について、以下説明する。
【0092】
本実施の形態の画像形成装置(画像定着装置)は、本実施の形態の定着ロールとして用いられる加熱定着ロールと、圧力ロール等のロール群により張架された無端ベルト等から構成される。加熱定着ロールは、その内部に加熱源として、例えば、出力850Wのハロゲンランプ等が設けられている。また、その表面には適宜、温度センサが配置され、表面温度を計測し、その計測信号により、温度コントローラによってハロゲンランプがフィードバック制御されて、加熱定着ロールの表面が150〜180℃に調節されるようになっている。この画像定着装置を用いる場合、まず、転写装置により記録用紙等の被記録部材の上にトナー像が転写され、定着ロールに搬送される。そして、加熱定着ロールに対して、圧力ロールによって加えられた圧力とハロゲンランプによって加えられた熱とにより、トナー像が被記録部材上に定着することになる。
【実施例】
【0093】
以下に、本発明の画像形成装置用のロール及びその製造方法を、実施例を用いてさらに具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって、いかなる制限を受けるものではない。
【0094】
ここで、実施例1〜5は、支持体の上に表面層の単層が形成された画像形成装置用のロールの場合、実施例6〜10は、支持体の上に弾性層及び表面層の複層が形成された画像形成装置用のロールの場合、比較例1〜2は、フッ素化ポリイミド樹脂として主鎖にエーテル基を持たない樹脂を用いた場合をそれぞれ示す。
【0095】
(実施例1)
支持体50表面へのフッ素化PI前駆体を含む溶液の塗布は、フローコート装置を用いて以下のように実施した。フッ素化PI前駆体溶液としては、酸無水物(10FEDA:1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン二無水物)と芳香族ジアミン(4FMPD:テトラフルオロ−1,3フェニレンジアミン)からなる完全フッ素化ポリアミック酸のN−メチルピロリドン溶液を利用した。また、支持体50としては、外径30mm、長さ500mm、厚さ0.5mmの鉄製円筒を用意した。次いで、支持体50表面に、フローコート装置を用いて、前述の完全フッ素化ポリアミック酸のN−メチルピロリドン溶液を塗布した。次に、窒素置換した加熱炉(イナートオーブン)を使って加熱成膜を行った。加熱は、120℃で30分加熱した後、200℃で30分、250℃で30分、300℃で30分加熱し、最後に380℃で30分加熱するという方法で、支持体50表面に厚さ1μmのフッ素化PI樹脂皮膜(表面層11)を形成し、欠陥のない完全フッ素化PI樹脂皮膜(表面層11)で被覆された画像形成装置用のロール10を得た。
【0096】
(実施例2)
フッ素化PI前駆体が、酸無水物(10FEDA:1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン二無水物)と芳香族ジアミン(8FODA:2,2’,3,3’,5,5’,6,6’−オクタフルオロ−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル)とからなること以外は、実施例1と全く同じようにして欠陥のない完全フッ素化PI樹脂皮膜(表面層11)で被覆された画像形成装置用のロール10を得た。
【0097】
(実施例3)
フッ素化PI前駆体が、酸無水物(10FEDA:1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン二無水物)と芳香族ジアミン(6FMDA:4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジアニリン)とからなること以外は、実施例1と全く同じようにして欠陥のない完全フッ素化PI樹脂皮膜(表面層11)で被覆された画像形成装置用のロール10を得た。
【0098】
(実施例4)
フッ素化PI前駆体が、酸無水物(10FEDA:1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン二無水物)と芳香族ジアミン(13FPD:1,4−ジアミノ−2−トリデカフルオロ−n−ヘキシルベンゼン)とからなること以外は、実施例1と全く同じようにして欠陥のない完全フッ素化PI樹脂皮膜(表面層11)で被覆された画像形成装置用のロール10を得た。
【0099】
(実施例5)
フッ素化PI前駆体が、酸無水物(P6FDA:3,6−ビス(トリフルオロメチル)−1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボキシリック二無水物)と芳香族ジアミン(8FODA:2,2’,3,3’,5,5’,6,6’−オクタフルオロ−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル)とからなること以外は、実施例1と全く同じようにして欠陥のない完全フッ素化PI樹脂皮膜(表面層11)で被覆された画像形成装置用のロール10を得た。
【0100】
(実施例6)
支持体50として、外径30mm、長さ500mmの鉄製円筒(厚さ:0.5mm)を用い、この表面に接着層としてプライマーを塗布後、シリコーンゴム(信越化学社製)を1mmの厚さ形成して弾性層付きのロールとした。次に、弾性層(シリコーン弾性層)22の表面に波長172nmの誘電体バリア放電エキシマランプ(光強度50mW)を用いて、支持体50と弾性体22との積層体を10rpmの速度で回転させながら、エキシマ真空紫外光を照射した。なお、エキシマランプの照射面とシリコーン弾性層との距離は5mmに固定し、窒素をパージしながら3分間光照射を行った。次に、弾性層21の表面に、フローコート装置を用いて、フッ素化PI前駆体溶液(実施例1で用いた完全フッ素化ポリアミック酸のN−メチルピロリドン溶液)を塗布した。次に、窒素置換した加熱炉(イナートオーブン)を使って加熱成膜を行った。加熱は、120℃で30分加熱した後、200℃で30分、250℃で30分、280℃で120分加熱し、弾性体22の表面に厚さ1μmのフッ素化PI樹脂皮膜(表面層21)を形成し、欠陥のない完全フッ素化PI樹脂皮膜(表面層21)で被覆された画像形成装置用のロール20を得た。
【0101】
(実施例7)
フッ素化PI前駆体が、酸無水物(10FEDA:1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン二無水物)と芳香族ジアミン(8FODA:2,2’,3,3’,5,5’,6,6’−オクタフルオロ−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル)とからなること以外は、実施例6と全く同じようにして厚さ1μmで欠陥のない完全フッ素化PI樹脂皮膜(表面層21)で被覆された画像形成装置用のロール20を得た。
【0102】
(実施例8)
フッ素化PI前駆体が、酸無水物(10FEDA:1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン二無水物)と芳香族ジアミン(6FMDA:4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジアニリン)とからなること以外は、実施例6と全く同じようにして厚さ1μmで欠陥のない完全フッ素化PI樹脂皮膜(表面層21)で被覆された画像形成装置用のロール20を得た。
【0103】
(実施例9)
フッ素化PI前駆体が、酸無水物(10FEDA:1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン二無水物)と芳香族ジアミン(13FPD:1,4−ジアミノ−2−トリデカフルオロ−n−ヘキシルベンゼン)とからなること以外は、実施例6と全く同じようにして厚さ1μmで欠陥のない完全フッ素化PI樹脂皮膜(表面層21)で被覆された画像形成装置用のロール20を得た。
【0104】
(実施例10)
フッ素化PI前駆体が、酸無水物(P6FDA:3,6−ビス(トリフルオロメチル)−1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボキシリック二無水物)と芳香族ジアミン(8FODA:2,2’,3,3’,5,5’,6,6’−オクタフルオロ−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル)とからなること以外は、実施例6と全く同じようにして厚さ1μmで欠陥のない完全フッ素化PI樹脂皮膜(表面層21)で被覆された画像形成装置用のロール20を得た。
【0105】
(比較例1)
フッ素化PI前駆体が、下記化学式(14):
【0106】
【化27】

【0107】
で表される酸無水物(6FDA:2,2−ビス(3,4−アンヒドロジカルボキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン)と化学式(5)で表される芳香族ジアミン(TFDB:2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン)とからなること以外は、実施例6と全く同じようにして厚さ1μmで欠陥のない部分フッ素化PI樹脂皮膜(表面層21)で被覆された画像形成装置用のロール20を得た。しかしながら、この部分フッ素化ポリイミド膜は、エーテル結合を持たないことから剛直で、柔軟性に欠けていた。
【0108】
(比較例2)
フッ素化PI前駆体が、下記化学式(15):
【0109】
【化28】

【0110】
で表される酸無水物(NTCDA:ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボキシリック二無水化物)と上述の化学式(4)で表される芳香族ジアミン(6FMDA:2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン)とからなること以外は、実施例6と全く同じようにして厚さ1μmで欠陥のない部分フッ素化PI樹脂皮膜(表面層21)で被覆された画像形成装置用のロール20を得た。しかしながら、この部分フッ素化ポリイミド膜は、エーテル結合を持たないことから剛直で、柔軟性に欠けていた。
【0111】
(評価試験)
実施例1〜10及び比較例1、2において得られた、各フッ素化ポリイミド樹脂を用いた画像形成装置用のロールを、それぞれ定着ロールとしてカラー複合機(商品名:DocuCentre C7600:富士ゼロックス社製)の定着装置に組み込み、20万枚連続通紙による耐久試験及び画質評価を行った。実施例1〜10の半導電性ロールを組み込んだ定着装置では、20万枚連続通紙後でも良好な耐久性と画質が得られたが、比較例1、2の半導電性ロールを組み込んだ定着装置では、20万枚連続通紙後でも良好な耐久性が得られたが、トナーの離型性が悪いため、ロールに付着したトナーが記録媒体の表面へと付着し、初期から10枚目には画像に汚れが発生しており、長期間に渡り良好な画質を得ることができなかった。
【符号の説明】
【0112】
10 画像形成装置用のロール
11 表面層
20 画像形成装置用のロール
21 表面層
22 弾性層
50 支持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その少なくとも外表面が主鎖にエーテル基を持つフッ素化ポリイミド樹脂から構成された表面層を有してなる画像形成装置用のロール。
【請求項2】
前記主鎖にエーテル基を持つフッ素化ポリイミド樹脂は、完全フッ素化された酸無水物とフッ素化ジアミン類とから合成されるフッ素化ポリアミック酸から調製された樹脂である請求項1に記載の画像形成装置用のロール。
【請求項3】
前記完全フッ素化された酸無水物は、下記化学式(1)又は(2):
【化1】

【化2】

で表されるものであり、かつ前記フッ素化ジアミン類は、下記化学式(3):
【化3】

で表されるものである請求項2に記載の画像形成装置用のロール。
【請求項4】
前記フッ素化ジアミン類は、下記化学式(4)〜(13)で表されるもののいずれかである請求項3に記載の画像形成装置用のロール。
【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【請求項5】
前記主鎖にエーテル基を持つフッ素化ポリイミド樹脂は、側鎖にパーフルオロアルキル基を持つ樹脂である請求項1〜4のいずれかに記載の画像形成装置用のロール。
【請求項6】
前記表面層の裏面側に積層された筒状の弾性層をさらに有する請求項1〜5のいずれかに記載の画像形成装置用のロール。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の画像形成装置用のロールを用いた画像形成装置。
【請求項8】
柱状又は筒状の支持体、又は前記支持体上に弾性層を積層した積層体を用意し、
前記支持体又は積層体上に、完全フッ素化された酸無水物とフッ素化ジアミン類とから合成したフッ素化ポリアミック酸(フッ素化ポリイミド前駆体溶液)を塗布して、表面層となる塗膜を形成し、次いで
形成された前記塗膜を加熱、焼成して表面層を形成することを含む画像形成装置用のロールの製造方法。
【請求項9】
前記完全フッ素化された酸無水物は、下記化学式(1)又は(2):
【化14】

【化15】

で表されるものであり、かつ前記フッ素化ジアミン類は、下記化学式(3):
【化16】

で表されるものである請求項8に記載の画像形成装置用のロールの製造方法。
【請求項10】
前記フッ素化ジアミン類は、下記化学式(4)〜(13)で表されるもののいずれかである請求項9に記載の画像形成装置用のロールの製造方法。
【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

【化23】

【化24】

【化25】

【化26】

【請求項11】
前記積層体上に前記塗膜を形成する場合、前記塗膜を形成する前に、前記積層体を構成する前記弾性層の表面に、180nm以下の波長を有する真空紫外光を照射し、弾性層の表面を親水化することをさらに含む請求項8〜10のいずれかに記載の画像形成装置用のロールの製造方法。
【請求項12】
前記真空紫外光は、波長172nmの誘電体バリア放電エキシマランプから出射されたものである請求項11に記載の画像形成用の定着ロールの製造方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【公開番号】特開2011−13478(P2011−13478A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−157846(P2009−157846)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】