説明

画像形成装置

【課題】作像に有害な物質を含む空気が、非作像時に作像ケース内に入り込むことを防止できるようにする。
【解決手段】像坦持体14およびこの像坦持体14にトナー像を作像する電子写真方式の作像ユニット6を、用紙等の被転写体へのトナー像の転写位置である転写用開口19を除いて像坦持体14の周囲に略密閉空間を形成する作像ケース13内に収納する作像モジュール6を備える画像形成装置で、作像モジュール6における作像動作に際しては、対向部材39が作像位置に位置付けられて転写用開口19を開放し、非作像時には、対向部材39を非作像位置に位置付けて転写用開口19を閉塞することで作像ケース13内を密閉するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、現像ユニットを用いて、像担持体(感光体)表面に形成したトナー像を記録材(用紙)に転写することにより画像を形成する電子写真方式の画像形成装置がある。電子写真方式の画像形成装置には、感光体、現像ユニット、クリーニングユニット等の各種の作像ユニットをケース内に収納した作像モジュールを備えるものがある。
【0003】
ところで、電子写真方式の画像形成装置においては、一般に、トナー、キャリア等の帯電微粒子および帯電している像担持体(感光体)を用いて作像するので、装置本体の内部の空気の組成、特に、湿度、硝酸化合物、アンモニアガス等のイオン性物質の影響による帯電状態の変化によって画像品質が不安定になる。
【0004】
例えば、湿度の高い気候の地域では装置本体内部が高温となり、画像品質が不安定になったり、感光体の異常磨耗が発生して作像部の耐久性が著しく低下したり、「画像流れ」と呼ばれる異常画像が発生したりすることが知られている。これらの原因については様々な研究が行われ、おおよそ次のようなメカニズムで問題が発生することが分かっている。
【0005】
一般的に、電子写真方式の画像形成装置で使用するトナーやキャリア等の帯電微粒子は、高分子樹脂に帯電制御剤を添加することで静電的な帯電状態を安定化するように設計されている。しかし、高分子樹脂の電気的な特性は疎水化処理等を尽くしても空気中の水分を取り込み、電気抵抗、粉体同士の摩擦抵抗や流動性の変化を引き起こし、現像工程におけるトナー帯電量を低下させてしまうことがある。このため、濃度上昇等の画質変動を招くことがある。
【0006】
また、放電現象を利用している帯電器では、放電に伴って硝酸化合物が生成され、空気中にアンモニアガスが存在する場合には放電の影響により硝酸アンモニウムが生成される。このような硝酸化合物は空気中の水分と結合した硝酸や硝酸塩等のイオン性物質となり、これらのイオン性物質や硝酸アンモニウムが感光体表面に付着すると、感光体表面の劣化が加速されて感光体の異常磨耗が生じたり、イオン性物質によって感光体表面が導電化することによりこの感光体の表面に形成される静電潜像がぼやけて「画像流れ」が生じたりする。
【0007】
このような観点から、感光体の耐久性を向上させ、形成される画像の品質を高めるためには、感光体の周囲から水分、硝酸化合物、アンモニアガス等を除去し、あるいは、低減する必要がある。特公平6−82234号公報、特開平7−72770号公報、特開平8−286577号公報には、感光体の周囲から作像に有害な水分、硝酸化合物、アンモニアガス等を除去するために空調手段を設けるようにした電子写真方式の画像形成装置が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、特公平6−82234号公報、特開平7−72770号公報、特開平8−286577号公報に開示された発明では、空調手段によって感光体の周囲の空気を対象として空調するようにしているが、装置本体内の全域を空調する構造であるため空調すべき容積が極めて大きくなり、非作像時等、空調手段が運転を停止している場合には装置本体の内部に滞留している空調されていない空気、すなわち、水分、硝酸化合物、アンモニアガス等の作像に有害な物質が、感光体の周囲に存在することとなる。
【0009】
この対策として、非作像時にも空調手段を運転させることが考えられるが、空調手段の運転により消費電力が多くかかるという不具合が発生する。
【0010】
また、特公平6−82234号公報、特開平7−72770号公報、特開平8−286577号公報に開示された発明では、装置本体内の全域を空調する構造であるため空調すべき容積が極めて大きくなり、空調手段を大型化しなければならない。このため、空調手段自体のコストが高くなり、空調手段運転時に発生する騒音が大きくなったり、空調手段運転時の消費電力が大きくなったりするという不具合が発生する。
【0011】
本発明の目的は、作像ユニットを収納した作像モジュールを有する画像形成装置において、非作像時における作像モジュール内の環境を良好に保つことである。
【0012】
本発明の目的は、作像ユニットを収納した作像モジュールを有する画像形成装置において、電力を消費することなく、非作像時における作像モジュール内の環境を良好に保つことである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1記載の発明の画像形成装置は、像坦持体およびこの像坦持体にトナー像を作像する電子写真方式の作像ユニットを、被転写体へのトナー像の転写位置である転写用開口を除き前記像坦持体の周囲に略密閉空間を形成する作像ケース内に収納する作像モジュールと、前記転写用開口を開放させる作像位置と前記転写用開口を閉塞して前記作像ケース内を密閉する非作像位置とに変位自在な対向部材と、前記作像モジュールにおける作像動作に際しては前記対向部材を作像位置に位置付け非作像時には前記対向部材を非作像位置に位置付ける変位手段と、を具備する。
【0014】
ここで、「略密閉空間」とは、作像モジュールの外部の雰囲気が、転写用開口以外に入り込む可能性を有する開口がなく、作像ケースの内部と外部とを区別可能な程度の密閉性を有する空間を意味する。
【0015】
したがって、作像モジュールにおける作像動作に際しては、対向部材が作像位置に位置付けられて転写用開口が開放され、非作像時には、対向部材が非作像位置に位置付けられて転写用開口が閉塞されることにより作像ケース内が密閉される。これによって、非作像時に、作像ケース内に作像に有害な物質を含む空気が入り込むことが防止される。
【0016】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の画像形成装置において、非作像位置に位置付けられる前記対向部材と前記作像ケースとに接触する弾性体を具備する。
【0017】
したがって、非作像位置に位置付けられる対向部材と作像ケースとは、弾性体を介して接触される。これによって、対向部材と作像ケースとが直接接触することによって対向部材や作像ケースが変形してしまうことを防止するとともに、作像ケース内の密閉性を高めて、非作像時における作像ケース内をより効果的に密閉することができる。
【0018】
請求項3記載の発明の画像形成装置は、像坦持体およびこの像坦持体にトナー像を作像する電子写真方式の作像ユニットを作像ケース内に収納する作像モジュールと、前記作像モジュールで作像されたトナー像を被転写体に転写させる転写位置に設けられた転写部材と、前記作像ケースの一部を構成し、前記転写部材に対向する位置に転写用開口を形成する作像位置と、一部を作像ケースに接触させ別の一部を前記転写部材に接触させることにより前記像坦持体の周囲に略密閉空間を形成する非作像位置とに変位自在な遮蔽部材と、前記作像モジュールにおける作像動作に際しては前記遮蔽部材を作像位置に位置付け非作像時には前記遮蔽部材を非作像位置に位置付ける変位手段と、を具備する。
【0019】
ここで、「略密閉空間」とは、作像モジュールの外部の雰囲気が、作像ケースと遮蔽部材と転写部材とによって形成される空間内に入り込む可能性を有する開口がなく、作像ケースと遮蔽部材と転写部材とによって形成される空間と他とを区別可能な程度の密閉性を有する空間を意味する。
【0020】
したがって、作像モジュールにおける作像動作に際しては、作像位置に位置付けられる遮蔽部材によって形成される転写用開口を介して前記作像モジュールで作像されたトナー像が被転写体へ転写され、非作像時には、一部が作像ケースに接触される遮蔽部材の別の一部が転写部材に接触されることによって像坦持体の周囲に略密閉空間が形成される。これによって、非作像時に、作像ケース内に作像に有害な物質を含む空気が入り込むことが防止される。
【0021】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の画像形成装置において、前記遮蔽部材に設けられて、非作像位置で前記転写部材に接触する弾性体を具備する。
【0022】
したがって、非作像位置に位置付けられる遮蔽部材は、弾性体を介して転写部材に接触する。これによって、遮蔽部材と転写部材とが直接接触することによって遮蔽部材が転写部材を損傷させてしまうことを防止するとともに、像坦持体の周囲に形成される略密閉空間の密閉性を高めて、非作像時における作像ケース内をより効果的に密閉することができる。
【発明の効果】
【0023】
請求項1記載の発明の画像形成装置によれば、作像モジュールにおける作像動作に際して、対向部材を作像位置に位置付けられて転写用開口を開放させ、非作像時には、対向部材を非作像位置に位置付けて転写用開口を閉塞して作像ケース内を密閉することにより、非作像時に、作像ケース内に作像に有害な物質を含む空気が入り込むことが防止されるので、例えば、長時間の待機状態の後や画像形成装置の電源投入直後に作像する場合も、作像されるトナー像の画像品質の安定化を図ることができる。また、電力を消費することなく、作像ケース内に作像に有害な物質を含む空気が入り込むことを防止でき、ランニングコストの抑制を図ることができる。
【0024】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の画像形成装置において、非作像位置に位置付けられる対向部材と作像ケースとを、弾性体を介して接触させることで、対向部材と作像ケースとが直接接触することによって対向部材や作像ケースが変形してしまうことを防止するとともに、作像ケース内の密閉性を高めて、非作像時における作像ケース内をより効果的に密閉することができる。
【0025】
請求項3記載の発明の画像形成装置によれば、作像モジュールにおける作像動作に際しては、作像位置に位置付けられる遮蔽部材によって形成される転写用開口を介して前記作像モジュールで作像されたトナー像を被転写体へ転写させ、非作像時には、一部が作像ケースに接触される遮蔽部材の別の一部を転写部材に接触させることによって像坦持体の周囲に略密閉空間を形成することにより、非作像時に、作像ケース内に作像に有害な物質を含む空気が入り込むことが防止されるので、例えば、長時間の待機状態の後や画像形成装置の電源投入直後に作像する場合も、作像されるトナー像の画像品質の安定化を図ることができる。また、電力を消費することなく、作像ケース内に作像に有害な物質を含む空気が入り込むことを防止でき、ランニングコストの抑制を図ることができる。
【0026】
請求項4記載の発明によれば、請求項3記載の画像形成装置において、非作像位置に位置付けられる遮蔽部材を、弾性体を介して転写部材に接触させることにより、遮蔽部材と転写部材とが直接接触することによって遮蔽部材が転写部材を損傷させてしまうことを防止するとともに、像坦持体の周囲に形成される略密閉空間の密閉性を高めて、非作像時における作像ケース内をより効果的に密閉することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の第一の実施の形態を図1および図2を参照して説明する。本実施の形態は、電子写真方式の画像形成装置への適用例を示す。
【0028】
図1は、本実施の形態の画像形成装置の概略構造を示す縦断正面図である。本実施の形態の画像形成装置の装置本体1内には、例えば、シート状の用紙等の記録媒体が積層保持される給紙部2から、画像形成後の記録媒体が排紙される排紙部3に至る記録媒体搬送路4が形成されている。記録媒体搬送路4上には、レジストローラ5、作像モジュール6、転写器7、定着器8等が配置されている。また、装置本体1内には、画像データに応じて潜像形成光であるレーザ光を出射することにより後述する感光体14の外周面に静電潜像を形成する露光手段9、装置本体1内からの排気を行う排気手段10、後述するように作像モジュール6内を空調する空調手段11が設けられている。
【0029】
作像モジュール6は、作像ユニットとしての現像ユニット12、像坦持体としての感光体14、作像ユニットとしての帯電器15、作像ユニットとしてのクリーニングユニット16を収納する作像ケース13を有している。作像ケース13には、作像モジュール6内で感光体14の表面に作像されたトナー像を記録媒体に転写するための転写用開口19のみが形成されている。作像ケース13内は、転写用開口19以外に開口を有さず、作像モジュール6の外部の雰囲気が入り込む可能性のない略密閉空間とされている。
【0030】
本実施の形態の「略密閉空間」は、作像モジュール6の外部の雰囲気が、転写用開口19以外に入り込む可能性を有する開口がなく、作像ケース13の内部と外部とを区別可能な程度の密閉性を有する空間を意味することに加えて、空調手段11による空調を作像ケース13の内部と外部とを区別可能な程度の密閉性を有する空間を意味する。
【0031】
また、作像ケース13には、露光手段9から出射されたレーザ光(潜像形成光)を感光体14の外周面に露光させるためのスリット状の露光口22が形成されている。この露光口22はガラスや樹脂等の透明部材23で覆われている。これにより、作像モジュール6内の空間の密閉性が高められている。透明部材23は、必要に応じて、透明部材23と露光口22との密閉性を向上させるゴムパッキン等を介して取り付けられている。これにより、作像ケース13内の密閉性を高めることができる。
【0032】
作像モジュール6の作像ケース13には、この作像モジュール6内に略密閉空間内に空調された空気が流入する流入口25と、作像モジュール6から空気が流出する図示しない流出口とが形成されている。
【0033】
装置本体1内に収納されている作像モジュール6は、装置本体1内に設けられたガイド部材(図示せず)によりスライド自在に支持されており、そのガイド部材に沿ってスライドさせることにより装置本体1外へ引き出し可能、および、装置本体1内へ収納可能に設けられている。
【0034】
特に図示しないが、空調手段11は、収納ケース26、この収納ケース26内に収納されている光触媒、光触媒を活性化させるための紫外線発光手段、外部の空気を収納ケース26内に吸入するポンプ、ポンプの駆動により収納ケース26内の空気を排気する排気口等により構成されている。光触媒は、空気中に存在する作像に有害な物質である硝酸化合物を分解する。また、空調手段11は、図示しない除湿手段を備えており、除湿手段によって空気中の水分を除去する。さらに、空調手段11は、イオン吸着性物質を備えており、このイオン吸着性物質によってアンモニアイオンを吸着して除去する。
【0035】
空調手段11の排気口は、接続パイプ34を介して、作像モジュール6の流入口25に接続されている。これによって、ポンプの駆動により収納ケース26内に吸入した外部の空気を作像モジュール6へ送ることができる。
【0036】
空調手段11は、作像モジュール6における作像動作に際して運転され、非作像時には運転が停止される。
【0037】
作像ケース13の転写用開口19の周囲である開口縁部35には、記録媒体搬送路4に対向する位置に弾性体としての弾性体シール36が設けられている。弾性体シール36は、例えば、スポンジやゴムや樹脂等の弾性を有する材料によって形成されている。弾性体シール36は、特に、ゴムや樹脂等、高い密閉性を有する材料によって形成されていることが好適である。
【0038】
装置本体1には、記録媒体搬送路4を間にして、転写用開口19に対向するように配置された対向部材としての対向ケース39が設けられている。対向ケース39は、一面側に開口部38を有する箱形状を有しており、転写器7の後方側を覆い、開口部38を転写用開口19に対向させるようにして配置されている。
【0039】
対向ケース39は、開口部38の周囲に、作像ケース13に設けられた弾性体シール36に対向する縁面部40を備えている。縁面部40は、面を記録媒体搬送路4に沿わせるようにして設けられており、記録媒体搬送路4中を搬送される記録媒体をガイドする機能も備えている。
【0040】
対向ケース39は、作像ケース13から離間する作像位置(図1参照)と、縁面部が弾性体シール36に面接触する非作像位置(図2参照)との間で変位自在に設けられており、作像位置または非作像位置のいずれか一方に選択的に位置付けられる。非作像位置は、作像ケース13の開口縁部35と対向ケース39の縁面部40との間隔が、弾性体シール36の厚さよりも小さくなるように設定されている。
【0041】
加えて、特に図示しないが、画像形成装置は、画像形成装置が備える各部を駆動制御する制御系を備えている。制御系は、作像に際して、各作像ユニットや搬送モータ露光器9、空調手段、排気手段11等を動作させる。また、制御系は、作像モジュール6における作像動作に際しては、対向ケース39を作像位置に位置付け、非作像時には、対向ケース39を非作像位置に位置付ける。ここに、変位手段としての機能が実現されている。
【0042】
このような構成において、例えば、作像時等、ポンプが駆動されている際には、空調手段11のポンプの駆動により空調手段11の外部の空気が吸気口30から空調手段11の収納ケース26内へ吸入される。吸入された空気は、空調手段11による空調によって、空気中に含まれる硝酸化合物が分解され、含まれる硝酸化合物がなくなり、または、微量とされた状態で、排気口、接続パイプ34、流入口25を経て作像モジュール6内へ流入する。作像モジュール6内へ流入した空気は、作像モジュール6内を通過して流出口から作像モジュール6の外部へ流出する。
【0043】
ここで、作像モジュール6内へ供給された空調された空気中には硝酸化合物が含まれていないか、または、含まれていたとしても微量である。そして、このような空調された空気が作像モジュール6内に供給されることにより、作像モジュール6内において空気中の硝酸化合物が空気中の水分と結合して硝酸や硝酸塩等のイオン性物質が生成されるということを防止でき、生成されたイオン性物質が感光体14の表面に付着することにより発生する上述した様々な不都合、例えば、感光体14の異常磨耗、感光体14表面の導電化による静電潜像のぼやけ等を防止することができる。
【0044】
また、作像モジュール6は、現像ユニット12等の作像ユニットや感光体14等を作像ケース13内に収納した構造であり、その容積が装置本体1内の全容積に比べて大幅に小さくなっている。このため、空調手段11により空調すべき領域である作像モジュール6内の空間(略密閉空間)の容積は、装置本体1内の全体の容積に比べて大幅に小さくなり、空調手段11の小型化、空調手段11の運転時に発生する騒音の低減、空調手段11の運転に伴う消費電力の低減を図ることができる。
【0045】
非作像時等、空調手段11が動作していない場合には、対向ケース39が作像位置から非作像位置に位置付けられる。非作像位置では、作像ケース13の開口縁部35と対向ケース39の縁面部40との間隔が、弾性体シール36の厚さよりも小さくなるように設定されているため、対向ケース39が非作像位置に位置付けられることにより作像ケース13の開口縁部35と対向ケース39の縁面部40との間に弾性体シール36が挟み込まれ、作像モジュール6内が完全に近い状態で密閉状態とされる。
【0046】
これにより、空調手段11が動作していない場合に、転写用開口19から作像モジュール6の周囲の空気が入り込んでしまうことを防止して、作像モジュール6内において空気中の硝酸化合物が空気中の水分と結合して硝酸や硝酸塩等のイオン性物質が生成されるということを防止できるので、電源投入直後や長時間待機状態にあった場合であっても、生成されたイオン性物質が感光体14の表面に付着することにより発生する上述した様々な不都合、例えば、感光体14の異常磨耗、感光体14表面の導電化による静電潜像のぼやけ等を防止することができる。
【0047】
また、作像ケース13の開口縁部35と対向ケース39の縁面部40との間に弾性体シール36を挟み込むことで、作像モジュール6内を密閉状態とするため、例えば、作像ケース13の開口縁部35と対向ケース39の縁面部40とを直接接触させて作像モジュール6内を密閉状態とする場合のように剛体同士を接触させる場合と比較して、開口縁部35や縁面部40の歪みを発生させることがない。
【0048】
さらに、作像ケース13の開口縁部35と対向ケース39の縁面部40との間に弾性体シール36を挟み込むことで、作像ケース13や対向ケース39の製造精度や、開口縁部35と縁面部40との位置精度等に左右されることなく、作像モジュール6内を密閉状態とすることができる。これによって、画像形成装置の製造作業の容易化を図ることもできる。
【0049】
加えて、非作像時には対向ケース39を非作像位置に位置付けて作像モジュール6内を完全に密閉状態とすることにより、空調手段11を駆動させることなく作像モジュール6内において空気中の硝酸化合物が空気中の水分と結合して硝酸や硝酸塩等のイオン性物質が生成されるということを防止できるので、消費電力の低減を図ることができる。
【0050】
なお、本実施の形態の作像モジュール6は、装置本体1から取り外して使用済みの作像モジュール6を回収することができるので、回収した作像モジュール6をリサイクル設備を備える専用の工場等でリサイクルすることができる。
【0051】
また、本実施の形態では、単一の作像ケース13によって作像モジュール6を構成したが、これに限るものではなく、二つ以上のケースを分割可能に連結することにより作像モジュールを構成してもよい。
【0052】
さらに、本実施の形態では、単一の作像モジュール6を備える画像形成装置への適用例を示したが、これに限るものではなく、例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーをそれぞれ有する複数の作像モジュールを備えるタンデム方式のカラー画像形成装置へ適用してもよい。
【0053】
加えて、本実施の形態では、画像形成装置に適用したが、これに限るものではなく、例えば、原稿画像を読み取るスキャナを具備し、スキャナで読み取った画像を用紙等の記録材に形成する複写機や、公衆回線を介して外部装置との間でデータ通信を行なう通信機能をさらに備えるFAX等に適用してもよい。
【0054】
次に、本発明の第二の実施の形態を図3および図4を参照して説明する。本実施の形態は、電子写真方式の画像形成装置への適用例を示す。なお、本実施の形態では、第一の実施の形態で説明した部分と同じ部分は同じ符号で示し、説明も省略する。
【0055】
図3は、本実施の形態の画像形成装置の概略構造を示す縦断正面図である。本実施の形態では、第一の実施の形態で説明した転写器7に代えて、転写部材としての転写ベルト51を介して、作像モジュール6で作像したトナー像を記録媒体に転写させる転写機構50を備えている。また、本実施の形態では、第一の実施の形態で説明したように、作像ケース13内を密閉する作像ケース13の開口縁部35と弾性体シール36と対向ケース39とに代えて、作像ケース13’の一部を構成する遮蔽板52が設けられている。他の部分の構成については、第一の実施の形態と同じである。
【0056】
転写機構50は、記録媒体搬送路4を間にして、作像モジュール6の全面に対向するように設けられた転写ベルト51を有している。転写ベルト51は、一対のローラ53に巻回された無端帯形状であり、転写ローラ54によって転写位置が感光体14に接触するように位置付けられている。
【0057】
作像ケース13’の記録媒体搬送路4に対向する側には、作像ケース13’に設けられた支軸55を回動中心として作像ケース13’に取り付けられた遮蔽部材としての遮蔽板52が設けられている。遮蔽板52には、転写ベルト51に対向する側に、弾性体としての弾性体シール56が設けられている。弾性体シール56は、例えば、スポンジやゴムや樹脂等の弾性を有する材料によって形成されている。弾性体シール56は、特に、ゴムや樹脂等、高い密閉性を有する材料によって形成されていることが好適である。
【0058】
遮蔽板52は、図3に示すように、記録媒体搬送路4に対して平行とされて転写ベルト51に対向する位置に転写用開口19を形成する作像位置と、図4に示すように、作像モジュール6を拡張する方向に回動されて弾性体シール56が転写ベルトに接触する非作像位置との間で回動自在とされている。
【0059】
遮蔽板52の回動は、制御系によって制御され、作像位置または非作像位置のいずれか一方に選択的に位置付けられる。ここに、変位手段としての機能が実現されている。
【0060】
このような構成において、作像モジュール6における作像動作に際しては、遮蔽板52が作像位置に位置付けられ、転写ベルト51に対向する位置に転写用開口19が形成される。作像モジュール6で作像されたトナー像は、この転写用開口19を介して、記録媒体に転写される。
【0061】
作像動作に際しては、空調手段11により作像モジュール6内が空調されているため、作像モジュール6内の環境は良好に保たれている。
【0062】
非作像時には、遮蔽板52が非作像位置に位置付けられ、弾性体シール56が転写ベルト51に接触される。これにより、作像ケース13’と遮蔽板52と転写ベルト51とによって、感光体14の周囲に略密閉空間が形成される。
【0063】
本実施の形態の「略密閉空間」とは、作像モジュール6の外部の雰囲気が、作像ケース13’と遮蔽板52と転写ベルト51とによって形成される空間内に入り込む可能性を有する開口がなく、作像ケース13’と遮蔽板52と転写ベルト51とによって形成される空間と他とを区別可能な程度の密閉性を有する空間を意味する。
【0064】
これによって、作像時には遮蔽板52を作像位置に位置付け、非作像時には遮蔽板52を非作像位置に位置付けることで、転写開口部19に対して転写開口部19よりも大きな面積で対向する転写ベルト51によってトナー像を転写させる画像形成装置でも、空調手段11を動作させていない場合に、空気中に含まれる作像に有害な物質が作像モジュール6内に入り込むことを抑制することができる。また、遮蔽板52には、弾性体シール56が設けられているため、転写ベルト51を傷つけることなく、非作像時の作像モジュール6内を密閉状態とすることができる。
【0065】
なお、本実施の形態では、作像位置/非作像位置に選択的に位置付けられる遮蔽板52に弾性体シール56を設けたが、これに限るものではなく、例えば、弾性材料によって形成された遮蔽板を遮蔽部材として設けるようにしてもよい。
【0066】
また、本実施の形態では、作像モジュール6で作像したトナー像を、用紙に直接転写する画像形成装置への適用例を示したが、これに限るものではなく、例えば、作像モジュール6で作像したトナー像を中間転写ベルト(図示せず)に転写させ、中間転写ベルトに転写されたトナー像を用紙に転写する画像形成装置に適用してもよい。これにより、例えば、本実施の形態の遮蔽部材(遮蔽板52および弾性体シール56)を、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーをそれぞれ有する複数の作像モジュールを備えるカラー画像形成装置の各作像モジュールへ適用した場合にも同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第一の実施の形態の画像形成装置の概略構造を示す縦断正面図である。
【図2】非作像時における画像形成装置の概略構造を示す縦断正面図である。
【図3】本発明の第二の実施の形態の画像形成装置の概略構造を示す縦断正面図である。
【図4】非作像時における画像形成装置の概略構造を示す縦断正面図である。
【符号の説明】
【0068】
6 作像モジュール
12、15、16 作像ユニット
13、13’ 作像ケース
14 像坦持体
19 転写用開口
36 弾性体
39 対向部材
51 転写部材
52 遮蔽部材
56 弾性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像坦持体およびこの像坦持体にトナー像を作像する電子写真方式の作像ユニットを、被転写体へのトナー像の転写位置である転写用開口を除き前記像坦持体の周囲に略密閉空間を形成する作像ケース内に収納する作像モジュールと、前記転写用開口を開放させる作像位置と前記転写用開口を閉塞して前記作像ケース内を密閉する非作像位置とに変位自在な対向部材と、前記作像モジュールにおける作像動作に際しては前記対向部材を作像位置に位置付け非作像時には前記対向部材を非作像位置に位置付ける変位手段と、を具備する画像形成装置。
【請求項2】
非作像位置に位置付けられる前記対向部材と前記作像ケースとに接触する弾性体を具備する請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
像坦持体およびこの像坦持体にトナー像を作像する電子写真方式の作像ユニットを作像ケース内に収納する作像モジュールと、前記作像モジュールで作像されたトナー像を被転写体に転写させる転写位置に設けられた転写部材と、前記作像ケースの一部を構成し、前記転写部材に対向する位置に転写用開口を形成する作像位置と、一部を作像ケースに接触させ別の一部を前記転写部材に接触させることにより前記像坦持体の周囲に略密閉空間を形成する非作像位置とに変位自在な遮蔽部材と、前記作像モジュールにおける作像動作に際しては前記遮蔽部材を作像位置に位置付け非作像時には前記遮蔽部材を非作像位置に位置付ける変位手段と、を具備する画像形成装置。
【請求項4】
前記遮蔽部材に設けられて、非作像位置で前記転写部材に接触する弾性体を具備する請求項3記載の画像形成装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
持体およびこの像持体にトナー像を作像する電子写真方式の作像ユニットを、被転写体へのトナー像の転写位置である転写用開口を除き前記像持体の周囲に略密閉空間を形成する作像ケース内に収納する作像モジュールを具備する画像形成装置において
前記転写用開口を開放させる作像位置と前記転写用開口を閉塞して前記作像ケース内を密閉する非作像位置とに変位自在な対向部材を備え
前記作像モジュールにおける作像動作に際しては前記作像ユニットが画像形成装置本体内に収納された状態で前記対向部材を作像位置に位置付け非作像時には前記作像ユニットが画像形成装置本体内に収納された状態で前記対向部材を非作像位置に位置付ける変位手段を具備することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
非作像位置に位置付けられる前記対向部材と前記作像ケースとに接触する弾性体を具備する請求項1記載の画像形成装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−146287(P2006−146287A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−60494(P2006−60494)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【分割の表示】特願2002−78614(P2002−78614)の分割
【原出願日】平成14年3月20日(2002.3.20)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】