説明

画像形成装置

【課題】MFP内蔵のハードディスクにたまった未処理のジョブの処理を促すために、ユーザが携帯するIDカード等のID番号を検知した際に、未処理のジョブの存在を通知する。
【解決手段】 処理を保留されたジョブデータを記憶するジョブデータ記憶手段と、前記ジョブデータ記憶手段に記憶されたジョブデータの処理を再開する権利のあるユーザ情報を記憶するユーザ情報記憶手段と、ユーザに対してジョブデータが保留されていることを通知する通知手段と、ユーザを識別する情報を検知するユーザ情報検知手段と、前記ユーザ情報検知手段によって検知されたユーザ情報が、前記ユーザ情報記憶手段によって記憶されたユーザ情報と一致したことを検出可能な一致検出手段とを有し、前記一致検出手段が一致を検出した場合に、前記通知手段によってユーザにジョブデータが保留されていることを通知することを特徴とする画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、FAX、コピー、スキャナなどのいずれかの機能を備え、内部に画像データ等を保持可能なメモリを有する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、FAX、コピーなどのいずれかの機能を有する画像形成装置には、内部に画像データ等を大量に保持可能な大容量メモリを持つことで、一旦データを大容量メモリに記憶してから、後に印字や転送などの処理が可能である。たとえば、プリンタにおいて大容量メモリを使用するセキュアプリントと呼ばれる例がある。プリントジョブを大容量メモリに保存し、印字は保留しておく。その後に、ユーザが装置の操作部でパスワードを入れることによって印字開始することで、自分の印字物を他人に見られることを防止できる。
【特許文献1】特開2000−276314号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述したような機能においては、ジョブを発生させる事と保留されたジョブを処理する事とは別の時間、場所で行うものであることから、ユーザが保留されたジョブの存在を忘れやすいという問題や、忘れられて処理が行われないジョブデータによって大容量メモリを消費してしまうという問題点があった。また、上述したセキュアプリント機能においては、保留されたジョブが装置内に長くとどまることはセキュリティーの観点から好ましくない。
【0004】
上述した問題点を解決するために、本発明は、保留されたジョブのユーザに対して効果的にジョブの存在を伝える手段を提供するものである。すなわち、ユーザがIDカードを携帯しているオフィスなどの環境において、IDカードのリーダを備え、保留されたジョブのユーザのIDが検知されたときに、ユーザに対して画面表示や音声や光などで通知するものである。例えば、IDカードは非接触型の無線タグを備え、画像形成装置には無線タグリーダを備え、保留されたジョブの存在を音声で通知する例においては、ユーザがその場で画像形成装置を処理するきっかけを提供することができ、非常に効果的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は下記の構成を備えることにより上記課題を解決できるものである。
【0006】
(1)処理を保留されたジョブデータを記憶するジョブデータ記憶手段と、前記ジョブデータ記憶手段に記憶されたジョブデータの処理を再開する権利のあるユーザ情報を記憶するユーザ情報記憶手段と、ユーザに対してジョブデータが保留されていることを通知する通知手段と、ユーザを識別する情報を検知するユーザ情報検知手段と、前記ユーザ情報検知手段によって検知されたユーザ情報が、前記ユーザ情報記憶手段によって記憶されたユーザ情報と一致したことを検出可能な一致検出手段とを有し、前記一致検出手段が一致を検出した場合に、前記通知手段によってユーザにジョブデータが保留されていることを通知することを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によって、ユーザがジョブを保留にしたまま忘れていた場合においてもユーザの存在を検知したときにユーザに通知することが可能となり、確実に処理を促すことが可能となる。
【0008】
また本発明によれば、ハードディスクドライブ6に保存されたデータのID番号と、ユーザが携帯しているカード等に保持されているID番号とを比較することで、ユーザがデータの所有者であると判断した場合に、効果的に処理を促すことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明を実施するための最良の形態を、実施例により詳しく説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は本発明の実施例の画像処理装置の構成を示すブロック図である。リーダ部1は原稿の画像を読み取り、原稿画像に応じた画像データをプリンタ部2及び画像入出力制御部3へ出力する。プリンタ部2はリーダ部1及び画像入出力制御部3からの画像データに応じた画像を記録紙上に記録する。画像入出力制御部3はリーダ部1に接続されており、ファクシミリ部4、ファイル部5、ネットワークインターフェース部7、LIPSフォーマッタ部8、ポストスクリプトフォーマッタ部9、コア部10などからなる。
【0011】
ファクシミリ部4は電話回線を介して受信した圧縮画像データを伸長して、伸長された画像データをコア部10へ転送し、又、コア部10から転送された画像データを圧縮して、圧縮された圧縮画像データを電話回線を介して送信する。ファイル部5にはハードディスクドライブユニット6が接続されており、ファイル部5はコア部10から転送された画像データを圧縮し、その画像データを検索するためのキーワードとともにハードディスクドライブユニットに記憶させる。又、ファイル部5はコア部10を介して転送されたキーワードに基づいてハードディスクに記憶されている圧縮画像データを検索し、検索された圧縮画像データを読み出して伸長し、伸長された画像データをコア部10へ転送する。ネットワークインターフェース部7は、パーソナルコンピュータ又はワークステーション(PC/WS)11とコア部10の間のインターフェースである。12はネットワークサーバーであり、ネットワーク制御の中枢である。フォーマッタ部8、9はPC/WS11から転送されたPDLデータをプリンタ部2で記録できる画像データに展開するものである。コア部10については後述するが、コア部10はリーダ部1、ファクシミリ部4、ファイル部5、ネットワークインターフェース部7、フォーマッタ部8、9のそれぞれの間のデータの流れを制御するものである。
【0012】
図2はリーダ部1及びプリンタ部2の断面図である。リーダ部1の原稿給送装置101は原稿を最終頁から順に1枚ずつプラテンガラス102上へ給送し、原稿の読み取り動作終了後、プラテンガラス102上の原稿を排出するものである。原稿がプラテンガラス102上に搬送されると、ランプ103を点灯し、そしてスキャナユニット104の移動を開始させて、原稿を露光走査する。この時の原稿からの反射光は、ミラー105、106、107、及びレンズ108によってCCDイメージセンサ(以下CCDという)109へ導かれる。このように、走査された原稿の画像はCCD109によって読み取られるCCD109から出力される画像データは、所定の処理が施された後、プリンタ部2及び画像入出力制御部3のコア部10へ転送される。
【0013】
プリンタ部2のレーザドライバ221はレーザ発光部201を駆動するものであり、リーダ部1から出力された画像データに応したレーザ光をレーザ発光部201に発光させる。このレーザ光は感光ドラム202に照射され、感光ドラム202にはレーザ光に応じた潜像が形成される。この感光ドラム202の潜像の部分には現像器203によって現像剤が付着される。そして、レーザ光の照射開始と同期したタイミングで、カセット204及びカセット205のいずれかから記録紙を給紙して転写部206へ搬送し、感光ドラム202に付着された現像剤を記録紙に転写する。現像剤の乗った記録紙は定着部207に搬送され、定着部207の熱と圧力により現像剤は記像紙に定者される。定着部207を通過した記録紙は排出ローラ208によって排出され、ソータ220は排出された記録紙をそれぞれのピンに収納して記録紙の仕分けを行う。
【0014】
なお、ソータ220は仕分けが設定されていない場合は最上ビンに記録紙を収納する。また、両面記録が設定されている場合は、排出ローラ208のところまで記録紙を搬送した後、排出ローラ208の回転方向を逆転させ、フラッパ209によって再給紙搬送路へ導く。多重記録が設定されている場合は、記録紙を排出ローラ208まで搬送しないようにフラッパ209によって再給紙搬送路へ導く。再給紙搬送路へ導かれた記録紙は上述したタイミングで転写部206へ給紙される。
【0015】
図3はリーダ部1のブロック図である。CCD109から出力された画像データはA/D・SH部110でアナログ/デジタル変換が行われるとともに、シェーディング補正が行われる。A/D・SH部110によって処理された画像データは画像処理部111を介してプリンタ部2へ転送されるとともに、インターフェース部113を介して画像入出力制御部3のコア部10へ転送される。CPU114は操作部115で設定された設定内容に応じて画像処理部111及びインターフェース113を制御する。
【0016】
例えば、操作部115でトリミング処理を行って複写を行う複写モードが設定されている場合は、画像処理部111でトリミング処理を行わせてプリンタ部2へ転送させる。また、操作部115でファクシミリ送信モードが設定されている場合は、インターフェース113から画像データと設定されたモードに応じた制御コマンドをコア部10へ転送させる。このようなCPU114の制御プログラムはメモリ116に記憶されており、CPU114はメモリ116を参照しながら制御を行う。また、メモリ116はCPU114の作業領域としても使われる。操作部115には音声によるガイド機能があり、あらかじめメモリに記憶された音声データを再生することが可能である。
【0017】
図4はコア部10のブロック図である。リーダ部1からの画像データはデータ処理部121へ転送されるとともに、リーダ部1からの制御コマンドはCPU123へ転送される。データ処理部121は画像の回転処理や変倍処理などの画像処理を行うものであり、リーダ部1からデータ処理部121へ転送された画像データは、リーダ部1から転送された制御コマンドに応じて、インターフェース120を介してファクシミリ部4、ファイル部5、ネットワークインターフェース部7へ転送される。また、ネットワークインターフェース部7を介して入力された画像を表すコードデータは、データ処理部121に転送され、そのPDLがLIPSであるのかあるいはポストスクリプトであるのかを判定し、しかるべきフォーマッタ部8ないし9へ転送されて画像データに展開され、この画像データはデータ処理部121に転送された後、ファクシミリ部4やプリンタ部2へ転送される。ファクシミリ部4からの画像データは、データ処理部121へ転送された後、プリンタ部2やファイル部5、ネットワークインターフェース部7へ転送される。
【0018】
また、ファイル部5からの画像データは、データ処理部121へ転送された後、ブリンタ部2やファクシミリ部4、ネットワークインターフェース部7へ転送される。CPU123はメモリ124に記憶されている制御プログラム、及びリーダ部1から転送された制御コマンドに従ってこのような制御を行う。また、メモリ124はCPU123の作業領域としても使われる。ネットワークインターフェース部7にはMIB(Management Information Base)と呼ばれるデーターベースが構築されており、SNMPプロトコルを介してネットワーク上のコンピュータと通信し、プリンタ管理が可能になっている。部門IDごとに設定可能なプリント枚数やその他の各種設定が装置の操作部あるいはネットワーク上のコンピュータから設定、管理が可能となっている。
【0019】
このように、コア部10を中心に、原稿画像の読み取り、画像のプリント、画像の送受信、画像の保存、コンピュータからのデータの入出力などの機能を複合させた処理を行うことが可能である。
【0020】
次に本実施例の動作について図5a、図5bのフローチャートに従って説明する。
【0021】
本実施例では、操作部115に無線タグリーダを持ち、ユーザの携帯する無線タグから読み取ったID番号に応じて、ハードディスク6に保存されているジョブがあれば、操作部115の音声ガイド機能によって、音声および画面表示でユーザに通知する例について説明する。
【0022】
ここで無線タグとは、無線で情報のやり取りができる半導体チップを使った極小さい電子荷札のことである。無線タグはICチップとアンテナで構成されており、ICチップ内のデータを非接触で読み取ることができる。無線タグを読み取り装置に近づけると、無線タグリーダからの電波によって無線タグ側に起電力が発生し、この電力によって回路が働き、無線タグリーダ側と制御データを交換し、記憶してある情報を無線タグリーダに送信するという仕組みになっている。無線タグ内の情報は書き換えが可能である。無線タグと無線タグリーダ間は数メートルの距離で通信することが可能である。
【0023】
図5aは、ユーザがPC/WS11から画像入出力制御部3にセキュアプリントのジョブを投入し、ハードディスクドライブ6に保存されるまでの流れを示す。S501で画像入出力制御部3は、PC/WS11からのプリントジョブを受信する。プリントジョブのデータはコンピュータインターフェース部7を経由して、コア部10のメモリ124に一旦保存される。
【0024】
コア部10はジョブデータの内容を調べ、S502において、LIPSのプリントジョブか、PSのプリントジョブかを判断する。もしLIPSのプリントジョブの場合は、S503においてジョブデータをLIPSフォーマッタ部8に転送し、ビットマップ画像に展開される。もしPSのプリントジョブであった場合は、S504においてPSフォーマッタ部9に転送し、ビットマップ画像に展開される。展開が終了した後に、コア部10はS505においてジョブがセキュアプリントであるか否かを判断する。
【0025】
もしセキュアプリントでなかった場合には、コア部10はS506においてビットマップ画像データをプリンタ部2に転送し、プリンタ部2で印字される。もしセキュアプリントであった場合には、コア部10はS507においてジョブを投入したユーザのID番号とパスワードとビットマップ画像データをファイル部5に接続されているハードディスクドライブ6に転送する。このハードディスクドライブ6に保存された画像データは、後にユーザが操作部115からID番号とパスワードを入力することによって印字することができる。印字後にID番号とパスワードとビットマップ画像データがハードディスクドライブ6から消去される。
【0026】
したがって、ユーザが印字する手続きをするまでは、ハードディスクドライブ6にビットマップ画像データが保存されることで、メモリ容量を消費するという問題と、さらには、パスワードなどの機密情報が保存されているというセキュリティー上好ましくない状態が続くことになる。
【0027】
図5bは、操作部115において無線タグを検出した場合の流れを示している。ハードディスクドライブ6にジョブデータが保存されている間、この処理は定期的に繰り返される。この処理の流れを制御するのはコア部10のCPU123である。CPU123は、S508において操作部115に備わる無線タグリーダが無線タグを検出したかどうか調べる。検出した場合にはS509において、検出した無線タグのID番号とハードディスクドライブ6に保存されているID番号と比較する。一致していればS510において、操作部115に備わる音声ガイド機能によってジョブが保存されていることを通知し、画面にはその情報を表示する。
【0028】
これにより、操作部115に備わる無線タグリーダから数mの距離にいるユーザに対して通知することで、ユーザは直ちに画像形成装置において所望の処理を行うことが容易になる。
【0029】
図6は操作部115の表示画面に表示される文字情報とボタンの例である。601は、操作部115の表示画面であり、液晶による文字や図形の表示とともに、タッチパネルになっており、ボタンとしても使用可能である。602は印字処理を開始するためのボタンであり、ユーザはこのボタンを押すことにより印字ジョブを開始することが可能となる。603は、ジョブデータを印字せずに削除するためのボタンであり、ユーザがこのボタンに押すことによりジョブデータがハードディスクドライブ6から削除される。
【0030】
このように、表示画面においてはジョブが溜まっているという情報だけでなく、操作を開始するためのボタンを提供することで、ユーザが操作しやすく配慮している。ユーザがジョブの存在を忘れていたときのみならず、処理するために装置に近づいてきたときにも便利である。
【0031】
実施例1においては、非接触型の無線タグを利用した例について説明したが、接触型のカードでも良い。たとえば、部屋の扉にロック解除が接触型のカードによって可能で、カードにID番号が保存されている場合などである。また、無線タグリーダや音声ガイドや画面表示機能は、画像形成装置と別体でもよい。通路と画像形成装置とが離れている場合などでは別体の方が効果的である。
【0032】
ほかにも、ID番号と電子メールのアドレスのテーブルを持っていれば、ユーザに電子メールを送付することも可能である。また、セキュアプリント機能だけでなく、スキャンしたデータや、FAX送受信データをハードディスクドライブ6にID番号と共に保存しておく場合にも本発明を応用可能である。また、ユーザが携帯しているカード等のID番号と、ハードディスクドライブ6に保存するID番号は同一でなくても良い。その場合は、ID番号を変換するテーブルを参照することで関連を取る必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施例の画像処理装置のブロック図である。
【図2】リーダ部及びプリンタ部の断面図である。
【図3】リーダ部のブロック図である。
【図4】コア部のブロック図である。
【図5a】本発明実施例のフローチャートである。
【図5b】本発明実施例のフローチャートである。
【図6】本発明実施例における操作部の画面表示を示した図である。
【符号の説明】
【0034】
1 リーダ部
2 プリンタ部
3 画像入出力制御部
4 ファクシミリ部
5 ファイル部
7 ネットワークインターフェース部
8 フオーマッタ部
9 イメージメモリ部
10 コア部
114 プリンタ部のCPU
115 操作部
123 コア部のCPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理を保留されたジョブデータを記憶するジョブデータ記憶手段と、前記ジョブデータ記憶手段に記憶されたジョブデータの処理を再開する権利のあるユーザ情報を記憶するユーザ情報記憶手段と、ユーザに対してジョブデータが保留されていることを通知する通知手段と、ユーザを識別する情報を検知するユーザ情報検知手段と、前記ユーザ情報検知手段によって検知されたユーザ情報が、前記ユーザ情報記憶手段によって記憶されたユーザ情報と一致したことを検出可能な一致検出手段とを有し、前記一致検出手段が一致を検出した場合に、前記通知手段によってユーザにジョブデータが保留されていることを通知することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像形成装置において、前記通知手段は、音による通知であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1記載の画像形成装置において、前記通知手段は、画面表示であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1記載の画像形成装置において、前記通知手段は、電子メールの送信であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1記載の画像形成装置において、前記ユーザ情報検知手段は、非接触型無線タグリーダであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−159460(P2006−159460A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−350565(P2004−350565)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】