説明

画像形成装置

【課題】画像形成装置において、感光体上に形成された画素サイズの変動を阻止することを目的とする。
【解決手段】画素毎に対応する発光素子を、感光体の主走査方向に列状に配置するとともに感光体の副走査方向に複数列設けた発光素子ラインヘッド(光学ヘッド)62と、発光素子と感光体との間に配置された結像光学系と、複数列の発光素子ライン(発光素子列)62k,62l,62mを1ラインずつ所定の使用期間にわたって順次使用して感光体を露光する画像データ処理手段65とを備えた画像形成装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光源として発光素子列が用いられた記録ヘッドを有する画像形成装置に関し、特に画像形成する際に発光源の光量劣化による画像品質の低下の防止に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、カラー画像を形成する画像形成装置が広く実用化されてきている。特に、画像担持体(感光体)を複数備えたカラー画像形成装置が、その画像形成の生産性の利点を生かして、従来の複数回転(たとえば4回転)で1コピーを得る方式のカラー画像形成装置と並んで開発されてきている。
【0003】
ここで、図11に従来の画像担持体としての感光体を複数備えたカラー画像形成装置の構成の一例を示す。
【0004】
図11において、4つの感光体101,102,103,104と、これらに跨って延在している転写ユニット105が図示されている。それぞれの感光体101,102,103,104の周辺には、帯電装置106,107,108,109、露光装置110,111,112,113、現像装置114,115,116,117、感光体クリーニング装置118,119,120,121が配置されている。
【0005】
現像装置114,115,116,117に隣接して設けられた現像剤格納部122,123,124,125には、それぞれ現像装置114,115,116,117に対応する色のトナーが格納されており、それらに格納されているトナーは用紙に記録される画像の濃度がほぼ一定となるように各現像装置114,115,116,117へ補給される。
【0006】
転写ユニット105は、ベルト状転写体126と、このベルト状転写体126を回転搬送するための駆動ローラ127と、ベルト状転写体126に記録紙128を介して押圧力を与える押圧ローラ129と、ベルト状転写体126を挟んで駆動ローラ127とは反対側に位置する支持ローラ130と、画像形成時においてベルト状転写体126に張力を与えることによりベルト状転写体126における感光体101,102,103,104と当接または対向する面を平面化させるための張力ローラ131等とで構成されている。
【0007】
図11において、ベルト状転写体126はトナー画像をその表面上に直接搭載してから記録紙128に転写するいわゆる中間転写体であるが、その代わりに、例えばベルト上に用紙を吸着してその用紙上にトナー画像を転写するいわゆる転写紙搬送体であってもよい。
【0008】
なお、転写ユニット105には、記録紙128に転写されずにベルト状転写体126の表面に残ったいわゆる残トナーをクリーニングするためのベルトクリーニング装置132が設けられている。
【0009】
この他、図11に示すカラー画像形成装置には、記録紙128を格納しておくための給紙カセット133、その給紙カセット133より記録紙128を支持ローラ130および押圧ローラ129からなる記録紙転写部134へ供給するための給紙ローラ135、ピックアップローラ136、レジストローラ137等からなる給紙部138や、記録紙128の表面に転写されたトナー像を定着させるための定着装置139等が設けられている。
【0010】
次に、露光装置110,111,112,113について、図12を用いて説明する。
【0011】
従来、感光体上に潜像を書き込む画像形成装置において、書き込み手段として、LEDアレイを用いたものが知られている。そして、LEDのような発光素子を用いた場合には、各発光素子の輝度(光量)と寿命との関係に留意する必要がある。
【0012】
すなわち、発光素子の輝度を小さくすることにより寿命を延長させることができるが、この場合には画像を形成するための露光量が不足するという問題が生じる。また、発光素子の輝度を大きくすると画像を形成するために必要な露光量が得られるが、寿命が短縮されるという問題が生じる。
【0013】
このため、輝度が大きく、しかも寿命が長い発光素子を得るために、材料開発が進められているが、現状ではコストが高く実用化が困難な状況にある。
【0014】
そこで、1画素を複数の発光素子で照射して重ねて露光する、多重露光方式のラインヘッド(光学ヘッド)が開発されている。
【0015】
このような多重露光方式のラインヘッドの例として、例えば(特許文献1)には、露光装置110にMドットで一列をなす発光素子110aを複数列(N列)配置し、感光体101を移動させると共に当該発光素子110aを列方向にシフトさせて、同一画素に重ねて画像データを形成する技術が記載されている。
【0016】
この技術では、発光出力が低い発光素子を用いた場合でも高速に画像形成が行えるという利点がある。
【特許文献1】特開昭61−182966号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、(特許文献1)に記載の従来の画像形成装置においては、ラインヘッドに複数列の発光素子を配置し、感光体を移動させると共に当該発光素子を列方向にシフトさせて同一画素に重ねて画像データを形成しているので、感光体の回転速度変動によって同一画素のずれた位置に画像データを形成してしまい、画素サイズが変動して画像ムラが発生するという問題があった。
【0018】
そこで、本発明は、発光素子を用いて画像形成する際において、感光体上に形成される画素サイズの変動を阻止することのできる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この課題を解決するために、本発明の画像形成装置は、画像情報に応じた光を感光体に照射し、当該感光体上に静電潜像を形成する画像形成装置であって、画素毎に対応する発光素子を、前記感光体の主走査方向に列状に配置すると共に、前記感光体の副走査方向に複数列設けた光学ヘッドと、前記光学ヘッドの複数列の発光素子のうち、少なくとも一つの列を使用して前記感光体を露光させると共に、所定の使用期間使用すると発光素子列を切り換える画像データ処理手段と、を有することを特徴とする。
【0020】
本発明の好ましい形態において、前記画像データ処理手段は、所定の使用期間として、1つの発光素子列の所定の使用時間×発光素子の列数≧画像形成ユニット寿命、を満たすよう設定する。
【0021】
本発明のさらに好ましい形態において、前記発光素子列の切り換えは、非印字動作時または印字領域外で行う。
【0022】
本発明のさらに好ましい形態において、前記発光素子列の使用期間は、発光輝度の劣化速度と発光時間とが略比例している期間である。
【0023】
本発明のさらに好ましい形態において、前記発光素子は、隣り合う列において主走査方向に対してずらして配置され、同時に複数列を使用可能とする。
【0024】
本発明のさらに好ましい形態において、前記発光素子は有機EL発光素子である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、光記録ヘッドである発光素子ラインヘッドの寿命を短縮することなく、感光体上に形成された画素サイズの変動を阻止することができるという有効な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の請求項1に記載の発明は、画像情報に応じた光を感光体に照射し、当該感光体上に静電潜像を形成する画像形成装置であって、画素毎に対応する発光素子を、感光体の主走査方向に列状に配置すると共に、感光体の副走査方向に複数列設けた光学ヘッドと、光学ヘッドの複数列の発光素子のうち、少なくとも一つの列を使用して感光体を露光させると共に、所定の使用期間使用すると発光素子列を切り換える画像データ処理手段と、を有する画像形成装置であり、光学ヘッドの寿命を短縮することなく、感光体上に形成された画素サイズの変動を阻止することができるという作用を有する。
【0027】
本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、画像データ処理手段は、所定の使用期間として、1つの発光素子列の所定の使用時間×発光素子の列数≧画像形成ユニット寿命、を満たすよう設定する画像形成装置であり、光学ヘッドを備えた露光装置の寿命によって画像形成ユニットの寿命に制限を加える必要がないので、1つの発光素子列の設定使用時間が短くても画像形成ユニット全体としての寿命を十分満足させることができるという作用を有する。
【0028】
本発明の請求項3に記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、発光素子列の切り換えは、非印字動作時または印字領域外で実施する画像形成装置であり、発光素子列の切り換えに伴う印字効率を損なうことがないので、印字スピードが低下しないという作用を有する。
【0029】
本発明の請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の発明において、発光素子列の使用期間は、発光輝度の劣化速度と発光時間とが略比例している期間であることを特徴とする画像形成装置であり、発光素子の輝度低下を精度よく予測することが可能となり、画像劣化をさらに精度良く防止することができる。また、累積発光時間による輝度低下を補正する輝度補正手段が不要になるという作用を有する。
【0030】
本発明の請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載の発明において、発光素子は、隣り合う列において主走査方向に対してずらして配置され、同時に複数列を使用可能とすることを特徴とする画像形成装置であり、主走査方向解像度を高めることが可能になるという作用を有する。
【0031】
本発明の請求項6に記載の発明は、請求項1〜5の何れか一項に記載の発明において、発光素子は有機EL発光素子であることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の画像形成装置であり、レーザ走査光学系よりも光路長が短くてコンパクトであるため、装置の小型化を図ることができるという作用を有する。
【0032】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照しつつさらに具体的に説明する。ここで、添付図面において同一の部材には同一の符号を付しており、また、重複した説明は省略されている。なお、ここでの説明は本発明が実施される最良の形態であることから、本発明は当該形態に限定されるものではない。
【0033】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1の画像形成装置の構成を示す概略図、図2は図1の画像形成装置に設けられた露光装置の要部を示す斜視図、図3は図2の露光装置における副走査方向の断面図、図4は図2の露光装置に設けられた有機EL発光素子アレイの発光部近傍の構成を示す断面図、図5は本発明の実施の形態1の画像形成装置における光学ヘッドの構成を示す説明図、図6は本発明の実施の形態1の画像形成装置における光学ヘッドの制御部の概略構成を示すブロック図、図7は本発明の実施の形態1の画像形成装置におけるイエローのラインヘッドの構成を示す説明図、図8は本発明の実施の形態1の画像形成装置におけるイエローのラインヘッドのブロック図である。
【0034】
図1に示す画像形成装置において、4つの像形成体としての感光体1,2,3,4と、これらに跨って延在している転写ユニット5が図示されている。それぞれの感光体1,2,3,4の周辺には、帯電装置6,7,8,9、露光装置10,11,12,13、現像装置14,15,16,17、感光体クリーニング装置18,19,20,21が配置され、これら感光体1,2,3,4、帯電装置6,7,8,9、露光装置10,11,12,13、現像装置14,15,16,17および感光体クリーニング装置18,19,20,21で現像色に対応した4つの画像形成ユニットが形成されている。なお、画像形成ユニットは、感光体1,2,3,4および露光装置10,11,12,13を含んでいれば足り、これ以外の構成要素については、本実施の形態に限定されるものではない。
【0035】
現像装置14,15,16,17に隣接して設けられた現像剤格納部22、23、24、25には、それぞれ現像装置14,15,16,17に対応する色のトナーが格納されており、それらに格納されているトナーは用紙に記録される画像の濃度がほぼ一定となるように各現像装置14,15,16,17へ補給される。
【0036】
転写ユニット5は、ベルト状転写体26と、このベルト状転写体26を回転搬送するための駆動ローラ27と、ベルト状転写体26に記録紙28を介して押圧力を与える押圧ローラ29と、ベルト状転写体26を挟んで駆動ローラ27とは反対側に位置する支持ローラ30と、画像形成時においてベルト状転写体26に張力を与えることによりベルト状転写体26における感光体1,2,3,4と当接または対向する面を平面化させるための張力ローラ31等とで構成されている。
【0037】
本実施の形態1において、ベルト状転写体26はトナー画像をその表面上に直接搭載してから記録紙28に転写するいわゆる中間転写体であるが、その代わりに、例えばベルト上に用紙を吸着してその用紙上にトナー画像を転写するいわゆる転写紙搬送体であってもよい。
【0038】
なお、転写ユニット5には、記録紙28に転写されずにベルト状転写体26の表面に残ったいわゆる残トナーをクリーニングするためのベルトクリーニング装置32が設けられている。
【0039】
この他、図1に示すカラー画像形成装置には、記録紙28を格納しておくための給紙カセット33、その給紙カセット33より記録紙28を支持ローラ30および押圧ローラ29からなる記録紙転写部34へ供給するための給紙ローラ35、ピックアップローラ36とレジストローラ37等からなる給紙部38や、記録紙28の表面に転写されたトナー像を定着させるための定着装置39等が設けられている。
【0040】
次に、画像形成の詳細について、ベルト状転写体26が中間転写体の場合で説明する。
【0041】
まず、感光体1が帯電装置6により一様に所定の電位に帯電された後、露光装置10により露光され、これにより形成された静電潜像を単色のトナーにより現像する。静電潜像が可視化されたトナー画像(第1のトナー画像)は、ベルト状転写体26と対向または接する位置でベルト状転写体26に転写される。
【0042】
この第1のトナー画像が感光体2と接触する位置に進むタイミングに合わせて、第1のトナー画像と同様に感光体2の表面に形成された他の色のトナー画像が、第2のトナー画像として第1のトナー画像の上に重ねて転写される。以下、同様にして第3のトナー画像、第4のトナー画像が順次重ねて転写され、4色の重ね画像が完成する。
【0043】
このベルト状転写体26の上に形成された重ね画像は、その後駆動ローラ27および押圧ローラ29からなる記録紙転写部34において記録紙28に一括転写され、定着装置39により記録紙28に定着されて、記録紙28にカラー画像が形成される。
【0044】
ここで、実施の形態1の画像形成装置が前述した従来の画像形成装置と異なるのは露光装置10,11,12,13の構成である。つまり、実施の形態1の画像形成装置では、露光装置10,11,12,13には、有機EL発光素子(organic Light Emitting Diode)を感光体1の軸方向に列状に配列した有機ELアレイ露光ヘッドが用いられている。有機ELアレイ露光ヘッドは、レーザ走査光学系よりも光路長が短くてコンパクトであり、感光体1,2,3,4に対して近接配置が可能であり、装置全体を小型化できるという利点を有する。
【0045】
図2は露光装置10の要部を拡大して示す斜視図である。なお、露光装置11,12,13は露光装置10と同一の構成であるため、説明を省略する。
【0046】
有機EL素子アレイ40は、長尺のハウジング41中に保持されている。そして、ハウジング41の両端に設けられた位置決めピン42をハウジング41の対向する位置決め穴に挿入するとともに、ハウジング41の両端に設けられたねじ挿入孔43を通して固定することにより、各露光装置10,11,12,13が所定位置に固定される。
【0047】
露光手段10は、ガラス基板44上に有機EL発光素子アレイ40の発光部50を載置し、同じガラス基板44上に形成されたTFT51(図4)により駆動される。屈折率分布型のロッドレンズアレイ46は結像光学系を構成し、発光部50の前面に屈折率分布型ロッドレンズ47が配置されている。
【0048】
ハウジング41はガラス基板44の周囲を覆っており、感光体1に面した側は開放している。このようにして、屈折率分布型ロッドレンズ47から感光体1に光線を射出する。ハウジング41のガラス基板44の端面と対向する面には、光吸収性の部材(塗料)が設けられている。
【0049】
図3は露光装置10の副走査方向の断面図である。
【0050】
露光装置10には、ハウジング41中の屈折率分布型のロッドレンズアレイ46の背面に面して取り付けられた有機EL発光素子アレイ40と、ハウジング41の背面からその中の有機EL発光素子アレイ40を遮蔽する不透明なカバー48とが設けられている。
【0051】
また、固定板ばね49によりハウジング41の背面に対してカバー48を押圧して、ハウジング41内を光密に密閉する。すなわち、ガラス基板44は、固定板ばね49によりハウジング41で光学的に密閉されている。なお、固定板ばね49は、ハウジング41の長手方向に複数個所設けられている。
【0052】
露光装置10のハウジング41は不透明部材で形成され、その背面には不透明なカバー48により覆われている。このため、有機EL発光素子アレイ40の背面に入射する蛍光灯や太陽からの紫外線も、有機EL発光素子アレイ40の発光部50へ達することが防止される。
【0053】
図4は図3に示した有機EL発光素子アレイ40の発光部50近傍の構成を示す断面図である。
【0054】
有機EL発光素子アレイ40は、例えば0.5mm厚のガラス基板44上に、発光部50の発光を制御する厚さ50nmのポリシリコンからなるTFT(薄膜トランジスタ)51が、例えば千鳥配置された2列の発光部50の各々に対応して欄外に設けられている。
【0055】
ガラス基板44上には、そのTFT51上のコンタクトホールを除いて厚さ100nm程度のSiO2からなる絶縁膜52が形成され、コンタクトホールを介してTFT51に接続するように発光部50に厚さ150nmのITO(In−Sn−Oxides:インジウム・スズ・酸化物)からなる陽極53が形成されている。
【0056】
次いで、発光部50以外の位置に対応する部分には、厚さ120nm程度のSiO2からなる別の絶縁膜54が形成され、その上に発光部50に対応する穴55を形成した厚さ2μmのポリイミドからなるバンク56が設けられている。
【0057】
そのバンク56の穴55内には、陽極53側から順に、厚さ50nmの正孔注入層57、厚さ50nmの発光層58が成膜され、発光層58の上面と穴55の内面およびバンク56の外面を覆うように、厚さ100nmのCaからなる陰極第1層59aと厚さ200nmのAlからなる陰極第2層59bとが順に成膜されている。
【0058】
そして、その上に窒素ガス等の不活性ガス60を介して厚さ1mm程度のカバーガラス61でカバーされて有機EL発光素子アレイ40の発光部50が構成されている。発光部50からの発光はガラス基板44側に行われる。
【0059】
なお、発光層58に用いる材料、正孔注入層57に用いる材料については、例えば、特開平10−12377号公報、特開2000−323276号公報等で公知の種々のものが利用でき、詳細な説明は省略する。
【0060】
そして、このような有機EL発光素子は、発光素子をガラス基板44上に容易に作製することができるので、製造コストを低減することができる。
【0061】
図5は本発明の実施の形態1に係る光学ヘッドの構成を示す説明図である。
【0062】
図5において、ロッドレンズアレイ46は、ロッドレンズ47a,47b,47c,47d,47eを2列に千鳥状に配置している。なお、符号62a,62b,62cは、複数の有機EL発光素子(発光素子)が一列に配列された発光素子ライン(発光素子列)である。なお、有機EL発光素子は各画素毎に設けられている。
【0063】
図6は本発明に係る光学ヘッドの制御部の概略構成を示すブロック図である。
【0064】
図6において、ホストコンピュータ63は、印刷データを形成して画像形成装置の制御部64に送信する。画像形成装置の制御部64は、画像データ処理手段65、記憶手段66,67,68,69、発光素子ラインヘッド(光学ヘッド)62,71,72,73を有している。
【0065】
発光素子ラインヘッド62,71,72,73は、それぞれ、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックに対応するものであり、感光体1,2,3,4にカラー画像を形成する。そして、記憶手段66,67,68,69は、各色の発光素子ラインヘッド62,71,72,73に対応した画像データを記憶する。
【0066】
画像データ処理手段65は、ホストコンピュータ63から送信された印刷データに基づいて、色分解、諧調処理、画像データのビットマップへの展開、色ずれ調整などの処理を行う。そして、画像データ処理手段65は、1ラインずつの画像データを各記憶手段66,67,68,69に出力する。
【0067】
発光素子ラインヘッド62,71,72,73には、それぞれ感光体1,2,3,4の副走査方向に複数列の発光素子が設けられており、各列の発光素子を独立して露光を行う構成とされている。このため、各記憶手段66,67,68,69は、それぞれ発光素子ラインヘッド62,71,72,73に対して必要に応じて画像データを出力している。
【0068】
図7は図6のイエローの発光素子ラインヘッド62の例を示す説明図である。
【0069】
図7において、発光素子ラインヘッド62には、それぞれの発光素子ライン62k,62l,62mの主走査方向Yに複数個の発光素子が列状に設けられている。また、この例では、感光体の副走査方向Xに対して、発光素子ライン62k,62l,62mに同数の発光素子が配置されている。なお、発光素子ラインの数は図示する数に限定されるものではなく、所望のライン数だけ設けることができる。
【0070】
図8は図6の構成を部分的に示すブロック図である。図8においては、発光素子(イエロー)ラインヘッド62と、それに対応する記憶手段66の細部を示している。
【0071】
ここで、図8では、図7で示した発光素子ライン62k,62l,62mに画像データを出力するものとする。なお、この例では、記憶手段66と発光素子ラインヘッド62は同一の基板上に形成されている。
【0072】
記憶手段66は、発光素子ライン62k,62l,62mに対して、画像データの転送、保持と発光素子への出力を行うシフトレジスタ66a、およびどの発光素子ライン62k,62l,62mに信号を送るかを選択するセレクタ66bを配列している。そして、画像データ処理手段65は、1ラインずつの画像データを記憶手段66に出力する。
【0073】
次に、図8に示すブロック図の動作について説明する。
【0074】
画像データ処理手段65からの画像データが記憶手段66に入力されると、シフトレジスタ66aからは、露光する画像データがセレクタ66bへ転送される。転送された画像データはセレクタ66bによって第1の発光素子ライン62kに画像データを出力して所定の使用期間発光素子を駆動して感光体1を露光する。
【0075】
所定の使用期間経過後(一般には、第1の発光素子ライン62kが寿命になったならば)、未使用の第2の発光素子ライン62lの発光素子を動作させるように切り換える。
【0076】
すなわち、第2の発光素子ライン62lを動作させる場合には、画像データ処理手段65からの画像データが記憶手段66に入力され、シフトレジスタ66aから露光する画像データがセレクタ66bへ転送される。そして、セレクタ66bによって第2の発光素子ライン62lに画像データが出力して発光素子を動作させる。
【0077】
このようにして、感光体1上に露光される画像データを所定の使用期間にわたって第1の発光素子ライン62kを使用して出力し、第1の発光素子ライン62kが寿命になったならば次の所定の使用期間にわたって第2の発光素子ライン62lを使用して出力し、第2の発光素子ライン62lが寿命になったならば次の所定の使用期間にわたって第3の発光素子ライン62mを使用して出力する。
【0078】
このため、図5に示す場合では、各画素が保有する露光時間能力に比べてラインヘッドが保有する露光時間能力は3倍あることになる。なお、発光素子が配置された発光素子ラインの副走査方向の列数、すなわち画素を一列のラインで露光する場合に得られる露光時間は、必要に応じて適宜選定することができる。
【0079】
以上説明したように、感光体1の主走査方向に一列に配置されるとともに感光体1の副走査方向に複数列設けた発光素子ライン62k,62l,62mを1ラインずつ所定の使用期間にわたって順次使用して感光体1を露光するようにしたので、光記録ヘッドの寿命を短縮することなく感光体1上に形成された画素サイズの変動を阻止することができる。これにより、画像品質の劣化を防止することが可能になる。
【0080】
ここで、「1つの発光素子ラインの所定の使用時間×発光素子の列数≧画像形成ユニット寿命」とすれば、発光素子ラインヘッドを備えた露光装置6の寿命によって画像形成ユニットの寿命に制限を加える必要がないので、1つの発光素子ラインの設定使用時間(一般的には、発光素子ラインの寿命)が短くても画像形成ユニット全体としての寿命を十分満足させることができる。
【0081】
また、図8に示す発光素子ライン62k,62l,62mの使用切り替えは、セレクタ66bの動作を非印字動作時または印字領域外にて実施するようにしているので、印字効率を損なうことがないので、印字スピードが低下しない。
【0082】
(実施の形態2)
図9は本発明の実施の形態2の画像形成装置における発光素子ラインの寿命劣化を示すグラフである。なお、本実施の形態2における画像形成装置の構成要素およびその機能や作用、画像形成の詳細については実施の形態1にて説明した画像形成装置と同じであるため、これらについての詳細な説明は省略する。
【0083】
本実施の形態2は、発光素子が配置された発光素子ラインの使用期間を限定しており、発光時間と素子輝度がほぼ比例して低下していく領域を使用するという点で実施の形態1と異なっている。
【0084】
図9において、図9(a)は例えば発光素子(イエロー)ラインヘッド62の第1の発光素子ライン62kの寿命劣化グラフであり、図9(b)は例えば発光素子(イエロー)ラインヘッド62の第2の発光素子ライン62lの寿命劣化グラフである。
【0085】
図9(a)において、200,000cd/m2に発光された各素子を20時間エージングさせた後のポイント74aから、80時間経過したポント74bまでは±2%の範囲内で直線的に輝度が劣化していることを示している。
【0086】
同様に図9(b)においても、ポント75aからポイント75bまでは±2%の範囲内で直線的に輝度が劣化している。
【0087】
そこで、各発光素子ライン62k、62lの使用範囲を、発光輝度の劣化速度と発光時間とがほぼ比例している期間、すなわち、第1の発光素子ライン62kの使用範囲をポント74aから74bとし、また、第2の発光素子ライン62lの使用範囲をポイント75aから75bとする。
【0088】
これにより、発光素子の輝度低下を精度よく予測することが可能となり、画像劣化をさらに精度良く防止することができる。また、累積発光時間による輝度低下を補正する輝度補正手段が不要になる。
【0089】
(実施の形態3)
図10は本発明の実施の形態3の画像形成装置における発光素子の配列を示す説明図である。なお、本実施の形態3においても、画像形成装置の構成要素およびその機能や作用、画像形成の詳細については実施の形態1にて説明した画像形成装置と同じであるため、これらについての詳細な説明は省略する。
【0090】
本実施の形態3は、各発光素子ライン62k,62l,62mを構成する発光素子が、主走査方向に対してずらして配置されているものである。また、ユーザからの要求に応じて、複数の発光素子ラインを同時に使用できるようになっている。
【0091】
すなわち、図10において、発光素子(イエロー)ラインヘッド62の第1の発光素子ライン62kの第1番目の素子位置中心線を76、第2番目の素子中心線を77とし、第2の発光素子ライン62lの第1番目の素子中心線を78、第3の発光素子ライン62mの第1番目の素子中心線を79とする。
【0092】
各素子の中心線は第1番目の中心線76と第2番目の中心線77間でほぼ等間隔に千鳥状に配列されている。
【0093】
この構成において、通常は、前述のようにして1ラインずつ使用する。そして、ユーザからの印字要求、例えば通常画像解像度の3倍の解像度が要求された場合には、1ラインのみ使用していた状態から3ライン全て使用し、出力される画像解像度を3倍に増加させる。なお、2倍の解像度が要求された場合には、2ラインを使用することはもちろんである。
【0094】
このようにすれば、主走査方向解像度を高めることが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
以上のように本発明にかかる画像形成装置は、設置面積が小さい露光装置を長時間使用することができるところから、例えばビジネスまたはSOHO市場向けのプリンタ、複写機、ファクシミリ装置および小ロット印刷市場向けの小型オンデマンド印刷機などへの利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の実施の形態1の画像形成装置の構成を示す概略図
【図2】図1の画像形成装置に設けられた露光装置の要部を示す斜視図
【図3】図2の露光装置における副走査方向の断面図
【図4】図2の露光装置に設けられた有機EL発光素子アレイの発光部近傍の構成を示す断面図
【図5】本発明の実施の形態1の画像形成装置における光学ヘッドの構成を示す説明図
【図6】本発明の実施の形態1の画像形成装置における光学ヘッドの制御部の概略構成を示すブロック図
【図7】本発明の実施の形態1の画像形成装置におけるイエローのラインヘッドの構成を示す説明図
【図8】本発明の実施の形態1の画像形成装置におけるイエローのラインヘッドのブロック図
【図9】本発明の実施の形態2の画像形成装置における発光素子ラインの寿命劣化を示すグラフ
【図10】本発明による素子千鳥配列図
【図11】従来の画像担持体としての感光体を複数備えたカラー画像形成装置の構成の一例を示す概略図
【図12】図11のカラー画像形成装置に設けられた露光装置の構成を示す概略図
【符号の説明】
【0097】
1〜4,101〜104 感光体
5,105 転写ユニット
6〜9,106〜109 帯電装置
10〜13,110〜113 露光装置
14〜17,114〜117 現像装置
18〜21,118〜121 感光体クリーニング装置
22〜25,122〜125 現像剤格納部
26,126 ベルト状転写体
44 ガラス基板
46 ロッドレンズアレイ(結像光学系)
50 発光部
62 発光素子ラインヘッド
66 記憶手段
66a シフトレジスタ
66b セレクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像情報に応じた光を感光体に照射し、当該感光体上に静電潜像を形成する画像形成装置であって、
画素毎に対応する発光素子を、前記感光体の主走査方向に列状に配置すると共に、前記感光体の副走査方向に複数列設けた光学ヘッドと、
前記光学ヘッドの複数列の発光素子のうち、少なくとも一つの列を使用して前記感光体を露光させると共に、所定の使用期間使用すると発光素子列を切り換える画像データ処理手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記画像データ処理手段は、所定の使用期間として、
1つの発光素子列の所定の使用時間×発光素子の列数≧画像形成ユニット寿命、
を満たすよう設定することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記発光素子列の切り換えは、非印字動作時または印字領域外で行うことを特徴とする請求項1または2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記発光素子列の使用期間は、発光輝度の劣化速度と発光時間とが略比例している期間であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記発光素子は、隣り合う列において主走査方向に対してずらして配置され、同時に複数列を使用可能とすることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記発光素子は有機EL発光素子であることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−346871(P2006−346871A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−171998(P2005−171998)
【出願日】平成17年6月13日(2005.6.13)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】