説明

画像形成装置

【課題】画像形成装置の装置本体に対して着脱されるプロセスカートリッジの部品を長寿命とし、且つ画像品質の低下を防止する。
【解決手段】表面に静電潜像が形成される像担持体11、帯電手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、トナーを収容するトナー容器の内の少なくとも2つの部品を着脱可能としたプロセスカートリッジ6とを有する。記録紙に画像を転写し定着する装置本体の内部にプロセスカートリッジ6が着脱自在に装着される。装置本体内部の温度または湿度の少なくとも一つの環境データを検知する検知センサと、プロセスカートリッジ6に対して空気流を供給する空気供給手段22と、検知センサが検知する環境データの値がプロセスカートリッジ6内の部品の最適環境条件の範囲を逸脱したとき、プロセスカートリッジ6の内部またはその周辺を最適環境条件の範囲内とするように空気供給手段22の駆動を制御する制御手段23とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置本体の内部にプロセスカートリッジを着脱可能に装着した画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、複写機やファクシミリ等の画像形成装置では、画像形成プロセスに用いる感光体やトナーボトル等の部品は消耗等によって使用限界があるため、プロセスカートリッジの形態で供給されている。プロセスカートリッジは、感光体などの像担持体や現像ユニットなどを内部に配置したユニットとなっており、画像形成装置に対して着脱可能となっていることにより、使用者が簡単に、間違いなく、しかもスピーディに必要な部品を交換することが可能となる。
【0003】
特許文献1には、プロセスカートリッジにICチップ等の記憶手段を設け、記憶手段が記憶している記録紙への累積画像枚数が使用限界画像枚数を超えたとき、プロセスカートリッジの交換を報知する構造とした画像形成装置が開示されている。これにより、部品の適正な管理や保守を行うことが可能となっている。
【特許文献1】特開2002−169431号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の画像形成装置では、部品の使用限界を記録紙への累積画像枚数によって把握するものであり、使用環境に対する配慮がなされていない。すなわち、画像形成装置では、設置場所によって温度や湿度等の環境条件が異なっていると共に、タンデム型画像形成装置のように各色毎にプロセスカートリッジを設けた場合には、実装条件によりプロセスカートリッジ内の部品の温度特性や実装周囲温度等が異なっており、これにより部品が劣化して早期に使用不可能となることもある。このような状態で画像形成を継続する場合には、画像品質が低下したり、装置全体が故障する問題が発生する。
【0005】
本発明は、このような問題点を考慮してなされたものであり、プロセスカートリッジ内の部品の使用環境を最適な雰囲気に保持する機構を用いることにより、プロセスカートリッジの部品を長寿命とするばかりでなく、画像品質の低下を防止することが可能な画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明の画像形成装置は、表面に静電潜像が形成される像担持体、像担持体の表面を帯電させる帯電手段、像担持体表面の静電潜像をトナーによって現像する現像手段、像担持体から記録紙への転写を行うために現像されたトナー像が転写される転写手段、像担持体表面のトナーを除去するクリーニング手段、トナーを収容するトナー容器の内の少なくとも2つの部品を着脱可能としたプロセスカートリッジとを有し、記録紙に画像を転写し定着する装置本体の内部に前記プロセスカートリッジが着脱自在に装着される画像形成装置であって、装置本体内部の温度または湿度の少なくとも一つの環境データを検知する検知センサと、前記プロセスカートリッジに対して空気流を供給する空気供給手段と、前記検知センサが検知する環境データの値がプロセスカートリッジ内の部品の最適環境条件の範囲を逸脱したとき、プロセスカートリッジの内部またはその周辺を最適環境条件の範囲内とするように空気供給手段の駆動を制御する制御手段とを有することを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の画像形成装置であって、前記検知センサがプロセスカートリッジに取り付けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の画像形成装置であって、前記装置本体の内部に複数のプロセスカートリッジを着脱可能に収容するカートリッジ収容室が設けられており、前記空気供給手段はカートリッジ収容室の内部に空気流を供給することを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項記載の画像形成装置であって、前記装置本体の内部に複数のプロセスカートリッジが装着可能となっており、それぞれのプロセスカートリッジの内部に空気流が通過する空気通路が形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項1から4のいずれか1項記載の画像形成装置であって、前記空気供給手段がプロセスカートリッジに取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の画像形成装置によれば、検知センサからの環境データの値がプロセスカートリッジ内の部品の最適環境条件の範囲を逸脱したとき、制御手段がプロセスカートリッジの内部またはその周辺を最適環境条件の範囲内とするように空気供給手段の駆動を制御するため、プロセスカートリッジ内の部品の劣化を防止して長寿命とすることができると共に、画像品質の低下を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を図示する実施の形態により具体的に説明する。なお、各実施の形態において、同一の部材には同一の符号を付して対応させてある。
【0013】
(実施の形態1)
図1〜図4は、本発明の実施の形態1を示し、図1は画像形成装置の断面図、図2はプロセスカートリッジの平面図、図3は制御を示すタイミングチャートである。
【0014】
図1に示すように、画像形成装置1は、タンデムカラー画像形成装置であって、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)及びブラック(K)の4色によって記録紙にカラー画像を形成するようになっている。
【0015】
装置本体2内部の下方には記録紙を収納した給紙トレー3が多段状に格納されている。給紙トレー3内の記録紙は、各給紙トレー3の出口側の複数のローラからなる搬送路4によって装置本体2の上部に配置された画像形成部に搬送されてカラー画像が転写される。
【0016】
画像形成部は、レーザ露光ユニット5と、レーザ露光ユニット5の下方に横並び状に配置されたプロセスカートリッジ6と、プロセスカートリッジ6の下方に配置された転写ベルト7と、転写ベルト7の下方に配置されて記録紙を搬送する転写搬送ベルト9と、転写ベルト7の一端側に配置された定着ユニット8とを備えている。記録紙は、転写搬送ベルト9によって搬送されながら転写ベルト7から画像が転写された後、定着ユニット8内に導入されて画像の定着が行われた後、排出トレー10に配置される。
【0017】
プロセスカートリッジ6は、Y、C、M、Kの4色に対応するように4つが設けられるものであり、装置本体2における上述した部位に着脱可能に装着される。それぞれのプロセスカートリッジ6は、表面に静電潜像が形成される像担持体としてのドラム状の感光体11を備えている。感光体11は、レーザ露光ユニット5によって走査されるレーザ光が照射されることにより表面に静電潜像が形成される。
【0018】
プロセスカートリッジ6には、この静電潜像を現像する現像手段としての現像ユニット12が設けられている。現像ユニット12は、各色のトナーを収容するトナー容器を備えており、トナーを感光体11に供給することにより感光体11上の静電潜像をそれぞれの色のトナーによって現像する。現像されたトナー像は転写手段としての転写ベルト7に転写され、転写ベルト7から記録紙に転写される。トナー像が転写された後の感光体11の表面は、ブレード等からなるクリーニング手段によってクリーニングされた後、除電ランプから照射された光によって除電され、次の静電潜像の形成に備えられる。
【0019】
図2は、Y、C、M、Kの各色に対応したプロセスカートリッジ6を示す。感光体11及び現像ユニット12の現像ローラ15がカートリッジケース14内に設けられている。感光体11及び現像ローラ15は、回転軸11a及び15aを有しており、これらが回転することにより静電潜像の形成及び静電潜像の現像が行われる。図2においては、感光体11及び現像ローラ15のみを示しているが、クリーニング手段、トナー容器等がカートリッジケース14内に収納されることによりプロセスカートリッジ6が構成されている。
【0020】
以上に加えて、この実施の形態では、環境データを検知する検知センサとしての温度センサ17及びプロセスカートリッジ6内に空気流を供給する空気供給手段が設けられている。温度センサ17は、図2に示すように、それぞれのプロセスカートリッジ6の外面に取り付けられて装置本体2内の温度を検知するようになっている。空気供給手段としてはファンが用いられ、各プロセスカートリッジ6のカートリッジケース14内に空気を供給するものであり、プロセスカートリッジ6近辺に配置される。空気供給手段としてのファンは、ファン制御部に接続されており、ファン制御部には温度センサ17からの検知温度が入力される。ファン制御部は、温度センサ17からの温度がプロセスカートリッジ6内の部品の最適雰囲気温度を逸脱したときには、プロセスカートリッジ6の内部を最適雰囲気温度となるようにファンを駆動する。
【0021】
図3はこのファン制御部によるファン制御によって制御されるプロセスカートリッジ6の温度を示す。待機時、画像形成時を問わず、各プロセスカートリッジ6に実装された温度センサ17の出力状態により、周辺温度をモニタリングしている。プロセスカートリッジ6内にユニット化されている感光体11或いはトナー等の最適雰囲気温度のある温度幅以内に雰囲気温度がある場合には、プロセスカートリッジ6の周辺温度の制御は通常通り行われる。
【0022】
装置本体2内の温度は画像形成を行った場合やその後は、最適雰囲気温度よりもある温度幅以上となる。この温度上昇によってプロセスカートリッジ6内の部品の最適雰囲気温度を超えたとき、ファンが高速回転してプロセスカートリッジ6への供給風量を増大する。これにより、プロセスカートリッジ6内の温度上昇を低減させることができる。
【0023】
このような実施の形態では、プロセスカートリッジ6内の部品の劣化を防止して長寿命とすることができると共に、画像品質の低下を防止することができる。
【0024】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2を示す。この実施の形態では、カートリッジ収容室21を備えるものである。カートリッジ収容室21は、Y、C、M、Kの各色に対応したプロセスカートリッジ6が着脱可能に収納されており、このカートリッジ収容室21をレーザ露光ユニット5の下方に配置することにより、4つのプロセスカートリッジ6が横並び状に配置される。この場合、それぞれのプロセスカートリッジ6には、温度センサが取り付けられている。
【0025】
カートリッジ収容室21の内部において、それぞれのプロセスカートリッジ6の間には、隙間が形成されると共に、カートリッジ収容室21の内面とプロセスカートリッジ6の外面との間にも隙間が形成されている。さらに、カートリッジ収容室21の外面には、空気供給手段としてのファン22が取り付けられている。このような構造では、ファン22からの空気流がプロセスカートリッジ6及びカートリッジ収容室21の間を流動することができると共に、隣接しているプロセスカートリッジ6の間を流動することができる。この場合、ファン22は、ファン制御部23に接続されることにより、その駆動が制御されるものである。
【0026】
この実施の形態において、4つのプロセスカートリッジ6のそれぞれに取り付けられている温度センサ17の一つからの出力値が最適温度幅以上となったとき、ファン制御部23はファン22を高速回転させる。これにより、カートリッジ収容室21内の隙間を流動する空気の風量が大きくなり、プロセスカートリッジ6周囲の雰囲気温度を最適温度幅以内となるように制御することができる。この制御によって、全てのプロセスカートリッジ6の温度センサ17からの出力値が最適温度幅となったとき、ファン制御部23は通常の風量となるようにファン22を制御する。
【0027】
上記実施の形態1及びこの実施の形態2においては、4つのプロセスカートリッジ6を設けた場合について説明しているが、プロセスカートリッジ6の数や画像形成装置が白黒画像の場合であっても同様に適用することができる。
【0028】
(実施の形態3)
図5及び図6は、本発明の実施の形態3を示す。この実施の形態では、図5に示すように、現像ローラを備えた現像ユニット12がドラム状の感光体11の左側の上部に配置され、感光体11の表面をクリーニングするクリーニング手段25が感光体11の右側の上部に配置されている。
【0029】
このようなプロセスカートリッジ6において、感光体11、現像ユニット12、クリーニング手段25、その他の部品の間には、空気が流通する空気通路31が形成されている。図6で示す形態においては、感光体11と現像ローラ15との間に設けた空気通路31を示しているが、他の部品との間に空気通路31を形成することができる。図5において、32は空気通路31からの空気を外部に排出するためのダクト孔である。
【0030】
このような実施の形態では、プロセスカートリッジ6に取り付けた温度センサ17からの出力値がプロセスカートリッジ6内の部品の最適温度幅を超えたとき、実施の形態2及び実施の形態3と同様に空気流がプロセスカートリッジ6の内部を流動する。この空気流は、部品間の空気通路31を通過するため、短時間でプロセスカートリッジ6内の部品を最適温度幅以内にすることができる。
【0031】
(実施の形態4)
図7は、本発明の実施の形態4を示す。この実施の形態では、プロセスカートリッジ6のカートリッジケース14内に空気流を供給するファン22を備えるものであり、このファン22はカートリッジケース14の外面に取り付けられている。また、プロセスカートリッジ6内の部品の間には、ファン22からの空気流が流動する空気通路31が形成されている。符号17は、プロセスカートリッジ6に取り付けられた温度センサであり、プロセスカートリッジ6周囲における装置本体内部の温度を検知する。
【0032】
このような実施の形態では、プロセスカートリッジ6にファン22が直接に取り付けられると共に、空気通路31がプロセスカートリッジ6内に形成されているため、プロセスカートリッジ6内の温度制御をさらに短時間で行うことができる。
【0033】
以上の実施の形態では、検知センサとして温度を検知する温度センサ17を用いているが、湿度を検知する湿度センサであっても良く、温度及び湿度を検知する温湿度センサであっても良い。また、プロセスカートリッジ6内に空気流を供給する環境データとしては、温度以外に湿度をデータとしても良く、温度及び湿度をデータとしても良い。また、プロセスカートリッジ6としては、転写手段を内部に有した構造であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の適用される画像形成装置の断面図である。
【図2】実施の形態1に用いるプロセスカートリッジの平面からの断面図である。
【図3】実施の形態1における制御を示すタイミングチャートである。
【図4】実施の形態2に用いるプロセスカートリッジの平面からの断面図である。
【図5】実施の形態3に用いるプロセスカートリッジの側面からの断面図である。
【図6】実施の形態3に用いるプロセスカートリッジの平面からの断面図である。
【図7】実施の形態4に用いるプロセスカートリッジの平面からの断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 画像形成装置
2 装置本体
6 プロセスカートリッジ
7 転写ベルト
12 現像ユニット
17 感光体
14 カートリッジケース
15 現像ローラ
17 温度センサ
25 クリーニング手段
22 ファン
23 ファン制御部
31 空気通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に静電潜像が形成される像担持体、像担持体の表面を帯電させる帯電手段、像担持体表面の静電潜像をトナーによって現像する現像手段、像担持体から記録紙への転写を行うために現像されたトナー像が転写される転写手段、像担持体表面のトナーを除去するクリーニング手段、トナーを収容するトナー容器の内の少なくとも2つの部品を着脱可能としたプロセスカートリッジとを有し、記録紙に画像を転写し定着する装置本体の内部に前記プロセスカートリッジが着脱自在に装着される画像形成装置であって、
装置本体内部の温度または湿度の少なくとも一つの環境データを検知する検知センサと、
前記プロセスカートリッジに対して空気流を供給する空気供給手段と、
前記検知センサが検知する環境データの値がプロセスカートリッジ内の部品の最適環境条件の範囲を逸脱したとき、プロセスカートリッジの内部またはその周辺を最適環境条件の範囲内とするように空気供給手段の駆動を制御する制御手段とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記検知センサがプロセスカートリッジに取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記装置本体の内部に複数のプロセスカートリッジを着脱可能に収容するカートリッジ収容室が設けられており、前記空気供給手段はカートリッジ収容室の内部に空気流を供給することを特徴とする請求項1または2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記装置本体の内部に複数のプロセスカートリッジが装着可能となっており、それぞれのプロセスカートリッジの内部に空気流が通過する空気通路が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記空気供給手段がプロセスカートリッジに取り付けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−58398(P2006−58398A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−237651(P2004−237651)
【出願日】平成16年8月17日(2004.8.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】