説明

画像形成装置

【課題】 キャリブレーション中に印刷命令があった場合、キャリブレーションと印刷命令の優先順位をユーザが選択できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】 画像形成装置においては、キャリブレーション中に印刷指示が受け付けられた場合、キャリブレーションと印刷命令の優先順位を決定する旨をユーザに報知し、ユーザの指示によってキャリブレーションと印刷命令の優先順位を決定する。印刷命令の優先順位がキャリブレーションの順位より高い場合は、キャリブレーションを中断して印刷命令を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機や複合機、プリンタ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機や複合機、プリンタ等の画像形成装置がオフィスや家庭に急速に普及してきている。これらの画像形成装置は、単独で使用される場合もあり、また、有線、無線のネットワークにより、パーソナルコンピュータや携帯電話等の情報通信端末と接続して使用される場合もある。
【0003】
図4は一般的な画像形成装置40の概略図であり、この画像形成装置には、ユーザが印刷命令の入力を行うためのタッチパネル11が備えられている。
【0004】
また、図5は一般的な画像形成システムの概略図であり、ユーザは画像形成装置40に対して、パーソナルコンピュータ42や携帯電話43から印刷命令を送ることにより、所望の印刷を実行することが出来る。
【0005】
ところで、このような画像形成装置40においては、温度や湿度などの環境変化や、印画する際の電圧の変化により、形成される画像に乱れを生ずることがある。これを解消するために、画像形成装置は、例えば印刷100回に1度、あるいは5時間に1度という割合で、定期的に様々なキャリブレーション(自動補正)を行うのが通常である。このようなキャリブレーションの具体例は、例えば下記の特許文献1に掲載されている。
【0006】
これによれば、キャリブレーションの代表的なものとしては、感光体の画像形成領域外に基準パターンを形成して、これを光学的に読み取ることにより、トナー濃度の低下を検出することなどが挙げられている。
【0007】
他にも様々なキャリブレーションが行われるのであるが、これらの作業には通常1分から数分の時間を要し、この間に印刷命令が入力されると、この印刷命令は待ち状態となる。このため、印刷命令が待ち状態にあることをユーザに通知する技術が、以下の特許文献2に開示されている。
【0008】
また、待ち状態が解除され、実際に印刷が終了するまでの要する時間をユーザに通知する技術が、以下の特許文献3に開示されている。
【特許文献1】特開平10−173842号公報
【特許文献2】特開2002−196900号公報
【特許文献3】特開平10−157251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、これらの技術には次のような問題がある。
【0010】
画像形成装置の実際の使用に当たっては、キャリブレーションをそれほど重視しない場合がある。例えば写真や絵などの画像ではなく、文字のみからなる文書画像を印刷する場合には、多少の画像の乱れはあってもかまわないことがある。
【0011】
上記特許文献の技術では、キャリブレーションが終了するまでは、ユーザはただ待機するしか方法がなかった。しかし、急を要する文書の印刷などでは、キャリブレーションを一旦中止して、当該文書の印刷を優先したい場合も想定される。
【0012】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであって、キャリブレーション中に印刷命令があった場合、キャリブレーションと印刷命令の優先順位をユーザが選択できる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の問題を解決するために、本発明では以下のような手段を採用している。
【0014】
印刷命令がキャリブレーション中に受け付けられた場合、キャリブレーションと印刷命令の優先順位を決定する決定手段と、決定した優先順位に従って上記キャリブレーションと上記印刷命令の実行を制御する制御手段を本発明は採用している。優先順位の決定は、ユーザの指示や、キャリブレーションの進行状況や、キャリブレーションの緊急度に基いて判断される。
【発明の効果】
【0015】
以上により、キャリブレーション中に印刷命令があった場合、キャリブレーションと印刷命令の優先順位をユーザが選択することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(実施の形態1)
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1は本実施の形態の画像形成装置100のブロック構成図である。この画像形成装置100の概略図は図4に示した通りである。制御手段106は、印刷手段104と補正手段105の動作を制御している。補正手段105は、様々なキャリブレーション(自動補正)を行う。制御手段106は、このキャリブレーション中には印刷手段104の動作を停止させ、印刷手段104が印刷を行っているときには、補正手段105のキャリブレーションを停止させる。
【0018】
画像形成装置100は、LAN(Local Area Network)等のネットワークに接続されたパソコン等の情報通信端末190と通信を行う通信手段101を備える。従って情報通信端末190のユーザは、情報通信端末190から印刷命令を画像形成装置100に送信することができる。
【0019】
この情報通信端末190から送信された印刷命令は、通信手段101に一旦受信されて、受付手段102に入力される。印刷命令が入力されると、受付手段102は、印刷命令を受け付けた旨を報知手段103に通知する。印刷命令を受け付けた旨が通知されると、報知手段103は、現在補正手段105によってキャリブレーションが行われているかどうかを判断する。
【0020】
キャリブレーションが行われていると判断すると、報知手段103は、キャリブレーションの進行状況を進行状況検知手段108に問い合わせる。問い合わせがあると、進行状況検知手段108は、例えば、キャリブレーションの完了までにかかる時間や、キャリブレーション全体の何%が終了したか等を報知手段103に通知する。なお、本実施の形態では、キャリブレーションの完了までにかかる時間を進行状況検知手段108は報知手段103に通知するとする。
【0021】
完了までにかかる時間が通知されると、報知手段103は、通知された時間とキャリブレーションと印刷命令の優先順位の決定を要求する旨を上記通信手段101及びネットワークを介して情報通信端末190に報知する。
【0022】
キャリブレーションの完了までにかかる時間と優先順位の決定を要求する旨が報知されると、情報通信端末190は、これらを図2に示すようにモニタ191に表示する。
【0023】
情報通信端末190のモニタ191に、キャリブレーションの完了までにかかる時間と優先順位の決定を要求する旨が表示されると、ユーザは、キャリブレーションが完了するまでの時間を参考にして、キャリブレーションと印刷命令のどちらを先に行うかについて判断する。ユーザは、どちらを先に行うかの判断をすると、キャリブレーションと印刷命令の優先順位を情報通信端末190に入力して、ネットワークを介して画像形成装置100に送信する。なお、本実施の形態では、印刷命令を先に行うと判断した場合は、ユーザは、図2のYesを選択し、キャリブレーションを先に行うと判断した場合は、ユーザは図2のNoを選択するものとする。
【0024】
優先順位が送信されると、上記通信手段101は受信した優先順位を決定手段107に入力する。優先順位が入力されると、決定手段107は、入力された優先順位をキャリブレーションと印刷命令の優先順位として決定し、決定した優先順位を制御手段106に入力する。
【0025】
入力された優先順位が、印刷命令よりキャリブレーションの順位が高いことを示す場合、制御手段106は、実行中のキャリブレーションが完了するまでそのキャリブレーションを補正手段105に実行させ、そのキャリブレーションが完了すると、受付手段101から印刷命令を取得して、取得した印刷命令を印刷手段104に実行させる。
【0026】
一方、入力された優先順位が、キャリブレーションより印刷命令の順位が高いことを示す場合、制御手段106は、実行中のキャリブレーションを補正手段105に中断させて、受付手段101から印刷命令を取得して、取得した印刷命令を印刷手段104に実行させる。印刷命令が完了すると、制御手段106は、中断したキャリブレーションを実行手段105に実行させる。
【0027】
以上のように、キャリブレーションと印刷命令のいずれを先に実行するかについて、ユーザが選択することができるので、急を要する文書の印刷などでは、印刷命令を先に実行させることで、当該文書の印刷を直ちに行うことができる。
【0028】
また、情報通信端末190から受付手段102に印刷命令が入力されたときに、キャリブレーションが行われていないと判断した場合、報知手段103は、受付手段102にキャリブレーションが行われていない旨を通知する。キャリブレーションが行われていない旨が通知されると、受付手段102は、制御手段106に受け付けた印刷命令を入力する。
【0029】
受付手段102から印刷命令が入力されると、制御手段106は、印刷手段104に受け付けた印刷命令を実行させる。
【0030】
よって、キャリブレーションが実行されていないときに、印刷命令があった場合は、直ちに印刷命令が実行される。
【0031】
(実施の形態2)
実施の形態1では、キャリブレーション中に印刷命令が受け付けられた場合、キャリブレーションと印刷命令の優先順位を報知手段103がユーザに問い合わせているが、キャリブレーションの進行がかなり進んでいる場合は、報知手段103はユーザへの優先順位の問い合わせをせずに、キャリブレーションの順位を印刷命令の順位より高い順位に決定してもよい。
【0032】
例えば、キャリブレーションがほとんど終了している場合や、数秒後に終了するという進行状況が進行状況検知手段108から通知されると、報知手段103はユーザに優先順位を問い合わせずに決定手段107に進行状況を通知する。決定手段107は、報知手段103から進行状況が通知されると、キャリブレーションの順位を印刷命令より高い順位に決定して、これを制御手段106に入力する。
【0033】
(実施の形態3)
実施の形態1、2の画像形成装置において、キャリブレーションの進行状況に代えてキャリブレーションの緊急度を用いてもよい。緊急度とは、例えば、キャリブレーションを実行するか否かの判断対象となる値が正常値からどのくらいかけ離れているかなどである。緊急度を用いる場合は、図3に示すように、画像形成装置100に、進行状況検知手段108に代えてキャリブレーションの緊急度を検知する緊急度検知手段301を設ける。この緊急度検知手段301は、例えば、定期的にキャリブレーションの緊急度を検知している。
【0034】
緊急度が高い場合、すなわちキャリブレーションの対象となる値が正常値から大きくかけ離れている場合は、報知手段103は、ユーザへの優先順位の問い合わせをせずに、決定手段107に緊急度を通知する。決定手段107は、報知手段103から緊急度が通知されると、キャリブレーションの優先順位を印刷命令より高い順位に決定して、これを制御手段106に入力する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の画像形成装置のブロック構成図。
【図2】ユーザに示されるメッセージの例。
【図3】本発明の画像形成装置のブロック構成図。
【図4】一般的な画像形成装置の概略図。
【図5】一般的な画像形成システムの概略図。
【符号の説明】
【0036】
100 画像形成装置
102 受付手段選択手段
103 報知手段
104 印刷手段
105 補正手段
106 制御手段
107 決定手段
108 進行状況検知手段
301 緊急度検知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷命令を受け付ける受付手段と、
キャリブレーション中に印刷命令が受け付けられた場合、キャリブレーション中である旨をユーザに報知する報知手段と、
ユーザからの指示に基いて、上記キャリブレーションと上記印刷命令の優先順位を決定する決定手段と、
決定された優先順位に従って上記キャリブレーションと上記印刷命令の実行を制御する制御手段を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
上記キャリブレーションの進行状況を検知する進行状況検知手段と、
上記決定手段は、検知された進行状況にも基いて、上記キャリブレーションと上記印刷命令の優先順位を決定する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
上記キャリブレーションの緊急度を検知する緊急度検知手段と、
上記決定手段は、検知された緊急度にも基いて、上記キャリブレーションと上記印刷命令の優先順位を決定する請求項1に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−62279(P2006−62279A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−249732(P2004−249732)
【出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】