説明

画像形成装置

【課題】 必要とする画像形成物に影響を与えることなくメンテナンス性を向上できると共に画像形成時間の長時間化を防止することが可能なインクジェット印刷部を備えた画像形成装置、及び画像不良の発生を防止することが可能なインクジェット印刷部を備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】 孔版印刷部4とインクジェット印刷部5とを備えた画像形成装置1において、用紙2に対して孔版印刷画像とインクジェット印刷画像とを形成する場合に、孔版印刷部4は孔版印刷画像の形成前に製版済みマスタ19を版胴20へ密着させる版付け動作を行い、インクジェット印刷部5は版付け動作時に使用される用紙2に対してインクジェット印刷画像とは無関係に記録ヘッド26からインクを吐出する空吐出を行う構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、詳しくは孔版印刷方式による画像形成とインクジェット記録方式による画像形成との双方を行うことが可能な画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔性の支持円筒体からなる版胴と、熱可塑性樹脂フィルムに多孔性支持体を貼り合わせたラミネート構造のマスタとを用い、マスタの熱可塑性樹脂フィルム面をサーマルヘッドで加熱溶融穿孔製版した後に版胴に巻装し、版胴内部に設けられたインキ供給手段により版胴内周面に適量のインキを供給し、プレスローラあるいは圧胴等の押圧手段によって用紙を版胴外周面に押圧することにより、版胴開孔部及びマスタ穿孔部より滲出したインキを用紙に転写させて印刷を行うデジタル式感熱孔版印刷装置が知られている。このような孔版印刷装置は、主に同一の画像を数十枚以上の多枚数必要とする際に用いられている。これは、印刷物1枚当たりのコストが低く、かつ高速印刷が可能であるために短時間で多数の印刷物を得ることができるためである。
【0003】
しかし、孔版印刷では印刷に際して必ず版(マスタ)を必要とするため、1枚ないし数枚程度の少量印刷を行いたい場合、あるいは数十枚の同一画像に一部だけ1枚毎に異なる画像を印刷したい場合等には対応できない。また、複数の原稿に対応した印刷を行い、これを冊子にしたい場合には印刷動作後に丁合作業が必要となり、異なる原稿画像をページ順に繰り返して出力することが可能な複写装置のような画像形成には対応できないという問題点を有している。
【0004】
従って、多種少量の画像形成を行う場合には電子写真方式あるいはインクジェット方式のような無版画像形成方法を用いた画像形成装置の方が適しているが、同種多量の画像形成を行う場合には孔版印刷方式を用いた画像形成装置の方が適している。このように、必要とする画像に応じて画像形成装置が一長一短を有しているため、画像形成を行うユーザはこれらを使い分ける必要があるが、各方式の画像形成装置をそれぞれ保持するとコスト及び設置スペースがそれぞれ2倍増となってしまうため、通常は使用頻度の多い画像形成に応じた画像形成装置のみを使用せざるを得ない。そこで、孔版印刷部とインクジェット印刷部とを備えた画像形成装置が、例えば「特許文献1」、「特許文献2」に記載されている。
【0005】
しかし、上述のインクジェット印刷部を備えた画像形成装置では、所定時間インクヘッドが使用されずに放置されることに伴うインクの乾燥によるノズルの目詰まりを防止するため、画像形成動作とは別にインクをノズルより吐出させる空吐出という動作を定期的に行う必要がある。この空吐出によってノズルより吐出されたインクは、廃インクとして専用の廃インクタンクに貯容される。この廃インクタンクは通常装置本体の下部に配設されており、ユーザによる取り扱いができないように構成されている。このため、廃インクタンク内に廃インクが一杯となると警告が行われ、装置の交換あるいはメーカによる保守点検を必要とし、そのメンテナンス性に問題があった。
【0006】
さらに上述の空吐出は画像形成途中においても定期的に行われ、その動作時においてはインクヘッドが空吐出を行うための、画像形成位置とは異なる空吐出位置に移動するため、画像形成時間が空吐出に要する時間分だけ長くなり、全体の画像形成時間が長くなってしまうという問題点もある。
【0007】
そこで上述した各問題点を解決するため、画像形成がなされる用紙に対してノズルを有するインクヘッドが対向しているときに空吐出を行う技術が、例えば「特許文献3」に開示されている。この技術によれば、用紙に空吐出を行うために廃インクタンクが不要となってメンテナンス性が向上し、さらに画像形成位置において空吐出を行うために画像形成時間の長時間化を防止できる。
【0008】
【特許文献1】特開2002−137514号公報
【特許文献2】特開2003−334993号公報
【特許文献3】特開平6−15815号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし「特許文献3」に開示された技術では、必要な画像が形成された用紙中に空吐出の際に形成される不要な文字やパターンが混在してしまうという問題点がある。これは画像形成品質を大きく損なうこととなり、重要な書類あるいは美的センスを求められる画像形成物等においては非常に問題となる。
【0010】
また上述した各技術では、それぞれ所定時間毎あるいは所定画像形成枚数毎等、定期的に空吐出が行われている。このため、高度に画像品質を要求される画像を得る場合には、若干量ではあるが文字や線が切れたりかすれたりする場合があり、この場合には画像不良となってしまう。
【0011】
本発明は上述した問題点を解決し、必要とする画像形成物に影響を与えることなくメンテナンス性を向上できると共に画像形成時間の長時間化を防止することが可能なインクジェット印刷部を備えた画像形成装置、及び画像不良の発生を防止することが可能なインクジェット印刷部を備えた画像形成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1記載の発明は、記録ヘッドを有するインクジェット印刷部と孔版印刷部とを備え、用紙に対して孔版印刷画像及び/またはインクジェット印刷画像を形成する画像形成装置において、用紙に対して孔版印刷画像とインクジェット印刷画像とを形成する場合に、前記孔版印刷部は前記孔版印刷画像に対応した製版画像が形成された製版済みマスタを版胴へ密着させる版付け動作を行い、前記インクジェット印刷部は前記版付け動作時に使用される用紙に対して前記インクジェット印刷画像とは無関係に前記記録ヘッドからインクを吐出する空吐出を行うことを特徴とする。
【0013】
請求項2記載の発明は、記録ヘッドを有するインクジェット印刷部と孔版印刷部とを備え、用紙に対して孔版印刷画像及び/またはインクジェット印刷画像を形成する画像形成装置において、画像形成がなされた画像形成済み用紙の間に画像形成がなされない合紙を挿入する合紙モードを有し、前記合紙モード選択時において前記合紙に対して前記インクジェット印刷画像とは無関係に前記記録ヘッドからインクを吐出する空吐出を行うことを特徴とする。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の画像形成装置において、さらに前記合紙は前記画像形成済み用紙が所定枚数に達する毎に前記画像形成済み用紙の間に挿入されることを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項2記載の画像形成装置において、さらに前記合紙は前記インクジェット印刷部における画像形成動作開始後、所定時間毎に前記画像形成済み用紙の間に挿入されることを特徴とする。
【0016】
請求項5記載の発明は、請求項2ないし4の何れか1つに記載の画像形成装置において、さらに画像形成動作中、任意に前記合紙を挿入させる合紙挿入指令手段を有することを特徴とする。
【0017】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし5の何れか1つに記載の画像形成装置において、さらに用紙を仕分ける用紙仕分け手段を有し、該用紙仕分け手段は前記空吐出が行われた用紙を他の用紙と区別すべくずらすことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、画像形成済みの用紙としてカウントされない版付け用紙に空吐出を行うことにより、廃インクタンクの使用を低減しかつ必要とする画像形成物に影響を与えることなく空吐出を行うことでメンテナンス性をより一層向上することができると共に、画像形成時間内には空吐出を行わないことにより画像形成時間の長時間化を防止することができる。また、合紙挿入指令手段により確認した画像に応じた任意のタイミングで空吐出を行うことで画像不良による多量の損紙の発生を防止することができ、用紙仕分け手段により空吐出が行われた用紙を排紙トレイ上に積載されている他の用紙からずらして区別することで画像形成が行われていない用紙を簡単に区別することができ、作業効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、本発明の第1の実施形態を採用した画像形成装置を示している。同図において画像形成装置1は、用紙2を給送する給紙部3、給紙部3より給送された用紙2に対して孔版印刷を行う孔版印刷部4、用紙2に対してインクジェット画像を形成するインクジェット印刷部5、画像形成済みの用紙2を機外へ排出する排紙部6等を有している。
【0020】
給紙部3は、多数の用紙2が積載される給紙トレイ10、給紙トレイ10上の用紙2をその最上位のものから1枚ずつ給送する給紙ローラ11、給紙ローラ11によって給送された用紙2を一時停止させた後に孔版印刷部4に向けて所定のタイミングで給送するレジストローラ対12等を有している。
【0021】
孔版印刷部4の右上方には製版部7が配設されている。製版部7は、ロール状に巻装されたマスタ13を収容するマスタ収容部14、マスタ収容部14よりもマスタ搬送方向下流側に配設されたサーマルヘッド15及びプラテンローラ16、マスタ13を切断するマスタ切断手段17、マスタを挟持搬送するマスタ搬送ローラ対18等を有している。製版部7は、マスタ13に穿孔製版画像を形成した後、製版済みマスタ19を孔版印刷部4に向けて搬送する。
【0022】
孔版印刷部4は、製版部7において製版された製版済みマスタ19を外周面上に巻装する多孔性円筒体からなる版胴20、版胴20の外周面に対して接離自在に設けられたプレスローラ22、用紙2を版胴20の外周面上から剥離する剥離爪23、剥離された用紙2を吸引ファン24でベルト面に吸引しつつ搬送するベルト搬送部25等を有している。版胴20の内部には、インキローラ21及びドクターローラ8を有するインキ供給手段9が配設されている。孔版印刷部4は、給紙部3より給送された用紙2をプレスローラ22によって版胴20の外周面上に巻装された製版済みマスタ19に押圧することにより、インキ供給手段9から供給されたインキを用紙2に転写させ、用紙2上に孔版印刷画像を形成する。版胴20の左上方には、版胴20の外周面上から使用済みの製版済みマスタ19を剥離して廃棄する図示しない排版装置が配設されている。
【0023】
インクジェット印刷部5は、用紙2の搬送径路上方に配置されたインクジェット記録ヘッド26、インクジェット記録ヘッド26の用紙搬送方向上流側及び下流側に配置された用紙搬送ローラ対27,29、搬送される用紙2を案内する下ガイド板31、用紙2の搬送方向先端を検出して用紙2に対するインクジェット印刷の開始基準を設定するための用紙検出センサ32等を有している。各用紙搬送ローラ対27,29は、用紙2を所定のインクジェット印刷スピードで搬送する。このときの搬送速度は、孔版印刷部4の排紙搬送速度と同等もしくはそれ以上となるように設定されている。
【0024】
各用紙搬送ローラ対27,29において、用紙搬送径路の上方に位置するローラは用紙2上に形成された孔版印刷画像に直接接触するため、未乾燥インキによる汚損防止のためにその周面に微細な凹凸を有するものを用いることが望ましい。具体的には、ローラ周面に微細なセラミック砥粒あるいは微細なガラスビーズを散りばめたフィルム等を貼り付けることが効果的である。
【0025】
インクジェット記録ヘッド26は、移動機構36によって用紙搬送方向と直交する用紙幅方向に移動自在に構成されている。図2に示すように、インクジェット記録ヘッド26の上部には、フレーム75に設けられた案内レール70に案内されて図の左右方向である用紙幅方向に移動可能な保持部71が一体的に設けられている。また、インクジェット記録ヘッド26にはリードねじ73が螺合しており、フレーム75に設けられたステッピングモータ72によってリードねじ73が回転駆動されると、インクジェット記録ヘッド26が用紙幅方向に移動される。インクジェット記録ヘッド26の位置は、案内レール70に設けられインクジェット記録ヘッド26の初期位置を検出するホームポジションセンサ74とステッピングモータ72のステップ数とによって検出される。同図において、符号76は着脱可能なインク容器を、符号77はインク送出用のポンプを、符号78はインク搬送用のパイプをそれぞれ示しており、符号Hはインクジェット記録ヘッド26の用紙幅方向における画像形成可能長さを示している。
【0026】
上述した移動機構36により、用紙2に形成されるインクジェット印刷画像の用紙幅方向における位置が移動調整される。また、用紙2に形成されるインクジェット印刷画像の用紙搬送方向における位置は、インクジェット記録ヘッド26の作動タイミングによって調整移動される。インクジェット記録ヘッド26は、画像形成装置1に接続されたパーソナルコンピュータ45(図5参照)あるいは画像形成装置1の内部に設けられた可変データ記録メモリ48(図5参照)から送出される画像データに基づいて画像形成を行う。また、孔版印刷部4には、用紙2に形成される孔版印刷画像の位置、すなわち版胴20の外周面上に巻装された製版済みマスタ19の製版画像に対する用紙2の位置を移動調整させる図示しない移動機構が設けられている。この図示しない移動機構としては、例えば特開平9−104159号公報に開示された移動機構80,280と同様のものを用いることができる。
【0027】
図3において、インクジェット記録ヘッド26の用紙幅方向における画像形成可能長さはHであり、孔版印刷部4の用紙幅方向における製版可能長さはKである。通常、製版可能長さKはA3サイズの孔版印刷を可能とするために290mm前後に設定されている。しかし画像形成可能長さHをこれと同じとすると、インクジェット記録ヘッド26が非常に高価なものとなってしまう。そこで、本実施形態ではインクジェット記録ヘッド26を安価なものとするため、その画像形成可能長さHを60〜100mm程度としている。この画像形成装置1において、インクジェット記録ヘッド26により画像形成を行いたい部分は宛名部分あるいは通し番号部分等の全体画像における一部分であるので、この程度の画像形成可能長さHで十分に対応が可能である。なお、図3中における符号28は用紙2に形成される孔版印刷画像を、符号30は用紙2に形成されるインクジェット印刷画像をそれぞれ示している。
【0028】
インクジェット印刷部5の用紙搬送方向下流側には排紙部6が配設されている。排紙部6は、孔版印刷部4及び/またはインクジェット印刷部5において画像が形成された用紙2を吸引ファン33でベルト面に吸引しつつ搬送するベルト搬送部34、ベルト搬送部34によって搬送された画像形成済みの用紙2を積載する排紙トレイ35等を有している。
【0029】
孔版印刷部4の上方には画像読取部40が配設されている。画像読取部40は、原稿42上の画像を読み取る移動自在な走査ユニット41、走査ユニット41によって走査された画像データが入力されるCCD等の画像センサ43等を有する周知の構成である。
【0030】
図4は、画像形成装置1の操作パネルを示している。同図において操作パネル50は、画像形成装置1の装置本体の上部前面に配設されている。操作パネル50には、製版スタートキー51、プリントスタートキー52、試し刷りキー53、ストップキー54、テンキー55、クリアキー56、7セグメントLEDからなる表示装置57、LCDからなる表示装置58、4方向キー59、印刷切替キー60等が設けられている。表示装置57には各種の数値が置数され、表示装置58は階層構造となっていて各種情報を表示する。4方向キー59は、上キー59a、下キー59b、左キー59c、右キー59dを有していて各種設定時に使用される。印刷切替キー60はセレクトスイッチであり、画像形成装置1による画像形成を、孔版印刷部4のみによる画像形成、インクジェット印刷部5のみによる画像形成、孔版印刷部4及びインクジェット印刷部5による画像形成の何れかに選択的に切り替える。
【0031】
図5は、画像形成装置1の制御ブロック図を示している。本実施形態で示す画像形成装置1は装置本体の内部に画像処理装置37を備えており、画像読取部40で読み取られ孔版印刷部4において画像形成がなされる共通画像データは、画像処理装置37内の共通画像データ処理装置38で所定の画像処理が行われた後、同じく画像処理装置37内の画像形成部選択手段39を経由してサーマルヘッド駆動制御装置44に送られ、このデータに基づいてサーマルヘッド15の各発熱素子が選択的に発熱してマスタ13に対する穿孔製版が行われる。
【0032】
一方、パーソナルコンピュータ45から送出されインクジェット印刷部5において画像形成がなされる可変画像データは、可変画像データ処理装置46で所定の画像処理が行われた後、画像形成部選択手段39を経由してインクジェットヘッド駆動装置47に送られ、このデータに基づいてインクジェット記録ヘッド26が選択的にインクを噴射して画像形成を行う。または、予め必要な画像データが記録されている可変データ記録メモリ48から送られた可変画像データが画像形成部選択手段39を経由してインクジェットヘッド駆動装置47に送られ、このデータに基づいてインクジェット記録ヘッド26が選択的にインクを噴射して画像形成を行う。搬送される用紙2に対するインクジェット記録ヘッド26の作動は、記録ヘッド位置決め駆動制御装置49によって制御される。
【0033】
上述の構成に基づき、以下に第1の実施形態における、画像形成装置1を用いて用紙2上に孔版印刷画像とインクジェット印刷画像とを形成する際の動作を説明する。オペレータは操作パネル50上の印刷切替キー60を「インクジェット+孔版」の位置に切り替えると共に、画像読取部40に原稿42をセットして製版スタートキー51を押下する。製版スタートキー51が押下されると、走査ユニット41が原稿42の画像を走査してこのデータを画像センサ43に送ると共に、図示しない排版装置が作動して版胴20の外周面上より使用済みの製版済みマスタ19が剥離される。排版動作完了後、版胴20は所定の給版待機位置まで回転して停止し、その外周面上に設けられた図示しないクランパを開放して給版待機状態となる。
【0034】
版胴20が給版待機状態となると、プラテンローラ16及びマスタ搬送ローラ対18が作動してマスタ13が送り出される。送り出されたマスタ13はサーマルヘッド15を通過する際に画像センサ43に送られた画像データに基づいて穿孔製版される。製版され製版済みマスタ19となったマスタ13は版胴20のクランパにその先端を挟持された後、版胴20がマスタ13の搬送速度と同じ周速度で回転駆動されることにより版胴20の外周面上に巻装される。そして、1版分のマスタ13が搬送されるとマスタ切断手段17が作動してマスタ13が切断され、巻装動作が完了する。
【0035】
巻装動作完了後、給紙ローラ11が作動して給紙トレイ10上より1枚の用紙2が給送されると共に、版胴20が低速で回転駆動される。給送された用紙2はレジストローラ対12によって一時停止された後、所定のタイミングで版胴20とプレスローラ22との間に向けて給送される。そして所定のタイミングでプレスローラ22が揺動し、用紙2を版胴20の外周面上に巻装された製版済みマスタ19に圧接させる。この圧接によりインキローラ21によって版胴20の内周面に供給されたインキが、版胴20の開孔部及び製版済みマスタ19の穿孔部を介して用紙2に転写され、いわゆる版付け動作が行われる。版付け動作時に使用された用紙2は、剥離爪23によって版胴20上の製版済みマスタ19より剥離された後、ベルト搬送部25に送られてさらに下流へと搬送される。
【0036】
ベルト搬送部25によって送られた用紙2は用紙搬送ローラ対27によってさらに搬送され、その先端が用紙検出センサ32によって検出されるとインクジェット記録ヘッド26が作動し、用紙2にはインクジェット印刷画像が形成される。このときに形成されるインクジェット印刷画像は、通常の画像形成時のようにパーソナルコンピュータ45あるいは可変データ記録メモリ48から送出される画像データとは異なり、可変データ記録メモリ48内に予め記憶されている空吐出用の画像データに基づいた画像である。この空吐出用の画像データは、インクジェット記録ヘッド26のノズル内に溜まった古いインクを吐出させるためのデータであり、この空吐出用の画像データが送出されると、インクジェットヘッド駆動装置47はインクジェット記録ヘッド26に設けられている全てのノズルからのインキ吐出を行わせるようにインクジェット記録ヘッド26を駆動させる。このときのインクジェット記録ヘッド26の作動としては、全てのノズルから一度にインクを吐出させる全噴射と、一部のノズルからの吐出を複数回行って全てのノズルからインクを吐出させる部分噴射とがある。この空吐出用の画像データ形成時において、用紙2にはべた画像あるいは文字画像あるいはグラフィック画像等が形成される。この画像の形式は、可変データ記録メモリ48内に予め記憶されている。
【0037】
孔版印刷部4において版付け動作に使用された後、インクジェット印刷部5において空吐出用の画像を形成された用紙2は、用紙搬送ローラ対29によってさらに下流側へと搬送され、ベルト搬送部34を介して排紙トレイ35上に排出される。
【0038】
孔版印刷部4における版付け動作及びインクジェット印刷部5における空吐出動作が完了した後、オペレータによって試し刷りキー53が押下されると、給紙ローラ11が作動して給紙トレイ10上より1枚の用紙2が給送されると共に、版胴20が設定されている印刷速度に応じた回転周速度で回転駆動される。給送された用紙2はレジストローラ対12でタイミングを取られた後に版胴20とプレスローラ22との間に向けて送られ、プレスローラ22が揺動することにより孔版印刷画像を転写される。その後、用紙2はベルト搬送部25及び用紙搬送ローラ対27によって搬送され、その先端が用紙検出センサ32によって検出されるとパーソナルコンピュータ45あるいは可変データ記録メモリ48から送出された画像データに基づいてインクジェット記録ヘッド26が作動し、その上面にインクジェット印刷画像が形成される。孔版印刷画像とインクジェット印刷画像とを形成された用紙2は、用紙搬送ローラ対29及びベルト搬送部34によりさらに搬送されて排紙トレイ35上に排出される。
【0039】
上述の試し刷り動作によって各画像の位置あるいは濃度等が確認された後、オペレータによって画像形成枚数が表示装置57に置数された後にプリントスタートキー52が押下されると、給紙ローラ11が作動して給紙トレイ10上より用紙2が連続的に給送されると共に版胴20が設定されている印刷速度に応じた回転周速度で回転駆動され、試し刷り動作時と同様に画像形成動作が行われる。そして、設定された画像形成枚数が消化されると画像形成装置1の動作が停止され、画像形成装置1は再び画像形成待機状態となる。
【0040】
上述の構成によれば、画像形成済みの用紙としてカウントされない版付け用紙に空吐出を行うことにより、廃インクタンクを用いることなくかつ必要とする画像形成物に影響を与えることなく空吐出を行うことでメンテナンス性をより一層向上することができると共に、画像形成時間内には空吐出を行わないことにより画像形成時間の長時間化を防止することができる。
【0041】
図6は、本発明の第2の実施形態に用いられる操作パネル61を示している。この第2の実施形態は上述した第1の実施形態と比較すると、操作パネル50に代えて操作パネル61を用いる点、画像形成装置1が版付け動作時に空吐出を行わない点、画像形成装置1が画像形成動作時に画像形成がなされない合紙を挿入する合紙モードを有する点においてのみ相違しており、他の構成は同一である。
【0042】
操作パネル61上には、画像形成済み用紙間に目印とすべく合紙を挿入する合紙モードを設定するための合紙モードキー62が設けられている。合紙モードキー62は、押下される毎に設定と解除とが選択的に繰り返され、設定状態の場合にはその近傍に配設されたLED62aが点灯する。合紙モード設定時には、設定された枚数毎あるいは画像形成動作開始後の所定時間毎にプレスローラ22による版胴20の外周面への用紙2の押圧動作、及びインクジェット記録ヘッド26による用紙2への画像形成動作がスキップされ、用紙2は画像形成がなされない白紙の状態で排紙トレイ35上に排出される。
【0043】
以下に第2の実施形態における、画像形成装置1を用いて用紙2上に孔版印刷画像とインクジェット印刷画像とを形成する際の動作を説明する。オペレータは操作パネル61上の印刷切替キー60を「インクジェット+孔版」の位置に切り替えると共に、画像読取部40に原稿42をセットして製版スタートキー51を押下する。製版スタートキー51が押下されると、第1の実施形態と同様に排版動作及び巻装動作が行われ、版胴20の外周面上に製版済みマスタ19が巻装される。
【0044】
巻装動作完了後、給紙ローラ11が作動すると共に版胴20が低速で回転駆動され、第1の実施形態と同様に版付け動作が行われる。しかし、この第2の実施形態における版付け動作では、インクジェット印刷部5における空吐出動作及び画像形成動作は行われず、用紙2上には孔版印刷部4において版付け画像のみが形成される。版付け画像が形成された用紙2は排紙トレイ35上に排出され、版付け動作が完了して画像形成装置1は画像形成待機状態となる。
【0045】
画像形成装置1が画像形成待機状態となった後、オペレータによって試し刷りキー53が押下されると第1の実施形態と同様に試し刷り動作が行われ、孔版印刷画像とインクジェット印刷画像とが形成された用紙2が排紙トレイ35上に排出される。
【0046】
上述の試し刷り動作によって各画像の位置あるいは濃度等が確認された後、オペレータによって画像形成枚数が表示装置57に置数された後にプリントスタートキー52が押下されると、試し刷り動作時と同様に画像形成動作が行われる。この画像形成動作時において、プリントスタートキー52の押下前にオペレータにより合紙モードキー62が押下されると、LED62aが点灯して合紙モードが設定される。この合紙モード時においては、上述したように、設定された枚数毎あるいは画像形成動作開始後の所定時間毎にプレスローラ22による版胴20の外周面への用紙2の押圧動作、及びインクジェット記録ヘッド26による用紙2への画像形成動作がスキップされ、用紙2は画像形成がなされない白紙の状態で排紙トレイ35上に排出される。この合紙が挿入されるタイミングの設定は、操作パネル61上あるいは表示装置58内に設けられた図示しない設定キーにより行われる。
【0047】
上述の合紙モード時において、画像形成装置1は設定されたタイミングに合わせて画像形成済みの用紙2間に画像形成がなされない合紙を挿入する。この合紙挿入時において、給紙トレイ10上に積載された用紙2は、給紙ローラ11によってレジストローラ対12まで搬送され、レジストローラ対12により所定のタイミングで版胴20とプレスローラ22との間に向けて送られる。この給送時においてプレスローラ22は揺動せず、レジストローラ対12の回転力によって搬送された用紙2は版胴20とプレスローラ22との間を通過してベルト搬送部25に送られる。その後、用紙2は用紙搬送ローラ対27によってさらに搬送され、その先端が用紙検出センサ32によって検出されるとインクジェット記録ヘッド26が作動し、用紙2には第1の実施形態と同様の空吐出用の画像データに基づいたインクジェット印刷画像が形成される。インクジェット印刷部5において空吐出用の画像を形成された用紙2は、用紙搬送ローラ対29によってさらに下流側へと搬送され、ベルト搬送部34を介して排紙トレイ35上に排出される。
【0048】
その後、通常の画像形成動作と上述した合紙挿入動作とが繰り返され、設定された画像形成枚数が消化されると画像形成装置1の動作が停止され、画像形成装置1は再び画像形成待機状態となる。
【0049】
上述の構成によれば、画像形成済みの用紙としてカウントされない合紙に空吐出を行うことにより、廃インクタンクの使用を低減しかつ必要とする画像形成物に影響を与えることなく空吐出を行うことでメンテナンス性をより一層向上することができると共に、画像形成時間内には空吐出を行わないことにより画像形成時間の長時間化を防止することができる。
【0050】
第2の実施形態では、印刷切替キー60を「インクジェット+孔版」の位置に切り替えて用紙2上に孔版印刷画像とインクジェット印刷画像とを形成する場合を示したが、印刷切替キー60を「インクジェット」の位置に切り替えて用紙2上にインクジェット印刷画像のみを形成する場合に本発明を適用してもよい。また、第2の実施形態では孔版印刷部4により版付けがなされた用紙2に対してインクジェット印刷部5において画像形成を行わない構成としたが、版付けがなされた用紙2に対してインクジェット部5において空吐出を行うように構成してもよい。
【0051】
図7は、本発明の第3の実施形態に用いられる操作パネル63を示している。この第3の実施形態は上述した第2の実施形態と比較すると、操作パネル61に代えて操作パネル63を用いる点においてのみ相違しており、他の構成は同一である。操作パネル63上には、画像形成動作中の任意のタイミングで合紙を挿入するための合紙挿入指令手段としての合紙挿入キー64が設けられている。
【0052】
以下に第3の実施形態における、画像形成装置1を用いて用紙2上に孔版印刷画像とインクジェット印刷画像とを形成する際の動作を説明する。オペレータは操作パネル63上の印刷切替キー60を「インクジェット+孔版」の位置に切り替えると共に、画像読取部40に原稿42をセットして製版スタートキー51を押下する。製版スタートキー51が押下されると、第1及び第2の実施形態と同様に排版動作及び巻装動作が行われ、版胴20の外周面上に製版済みマスタ19が巻装される。巻装動作完了後、第2の実施形態と同様に版付け動作が行われ、画像形成装置1は画像形成待機状態となる。
【0053】
試し刷りが行われた後、オペレータにより画像形成枚数及び合紙モード設定後にプリントスタートキー52が押下されると、第2の実施形態と同様に画像形成動作が行われる。この画像形成時において所定のタイミングで合紙が挿入されるが、オペレータにより画像確認が行われた際に、インクジェット印刷画像が切れたりかすれたりする場合がある。この場合にはインクジェット記録ヘッド26のノズルにインクが溜まっていることが考えられ、この場合には空吐出動作を必要とする。このような場合にはオペレータによって合紙挿入キー64が押下され、合紙挿入キー64が押下されると画像形成装置1は所定のタイミングに拘わらず画像形成動作を中断して合紙の挿入を行う。このときインクジェット印刷部5では空吐出が行われる。
【0054】
上述の構成によれば、第2の実施形態と同様の作用効果を得ることができると共に、確認した画像に応じて任意のタイミングで空吐出を行うことができ、画像不良による多量の損紙の発生を防止することができる。
【0055】
第3の実施形態では、画像形成装置1の合紙モード中に任意のタイミングで合紙を挿入する構成としたが、合紙モード中に限らず任意のタイミングで合紙を挿入可能な構成としてもよい。また、第3の実施形態では用紙2上に孔版印刷画像とインクジェット印刷画像とを形成する場合を示したが、印刷切替キー60を「インクジェット」の位置に切り替えて用紙2上にインクジェット印刷画像のみを形成する場合に本発明を適用してもよい。
【0056】
図8は、本発明の第4の実施形態を採用した画像形成装置を示している。この画像形成装置1は、上述した第1ないし第3の実施形態で示した画像形成装置1と比較すると、用紙仕分け手段65を有する点においてのみ相違しており、他の構成は同一である。
【0057】
特開平11−263517号公報に開示された排紙仕分け装置25と同様に構成された用紙仕分け手段65は、ベルト搬送部34の下方であって排紙トレイ35の右方に配設されている。用紙仕分け手段65は、用紙搬送方向と同方向に往復移動自在に設けられたピックアップ66、ピックアップ66を支持するホルダ67、ホルダ67が螺合されたねじ軸68、ねじ軸68を回転させることによりホルダ67を昇降させる昇降手段69、ピックアップ66の先端に取り付けられ排紙トレイ35上の用紙に接触する接触片79等を有しており、昇降手段69によってホルダ67を昇降させることにより接触片79を排紙トレイ35上の最上位の用紙2に接触させ、この状態から図示しない駆動手段によってピックアップ66を用紙搬送方向とは逆方向に移動させることにより、上記公報の図3に符号Saで示されているように最上位の用紙2のみを排紙トレイ35上に積載された他の用紙からずらし、既に排紙トレイ35上に積載されている用紙2及びその後に排紙トレイ35上に積載される用紙2とずらした用紙2とを区別するように構成されている。
【0058】
この第4の実施形態によれば、第1の実施形態において版付け時に空吐出が行われた用紙2、第2及び第3の実施形態において空吐出が行われた合紙としての用紙2を用紙仕分け手段65によってずらし、ずらした用紙2と排紙トレイ35上に積載されている他の用紙2とを区別することにより画像形成が行われていない用紙2を簡単に区別することができ、作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1の実施形態を採用した画像形成装置の概略正面図である。
【図2】本発明の第1ないし第4の実施形態に用いられるインクジェット印刷部の概略図である。
【図3】本発明の第1ないし第4の実施形態における孔版印刷部とインクジェット印刷部の画像範囲を説明するための図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に用いられる操作パネルの概略図である。
【図5】本発明の第1ないし第4の実施形態に用いられる画像形成装置の制御ブロック図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に用いられる操作パネルの概略図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に用いられる操作パネルの概略図である。
【図8】本発明の第4の実施形態を採用した画像形成装置の概略正面図である。
【符号の説明】
【0060】
1 画像形成装置
2 用紙
4 孔版印刷部
5 インクジェット印刷部
19 製版済みマスタ
20 版胴
26 記録ヘッド(インクジェット記録ヘッド)
28 孔版印刷画像
30 インクジェット印刷画像
64 合紙挿入指令手段(合紙挿入キー)
65 用紙仕分け手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ヘッドを有するインクジェット印刷部と孔版印刷部とを備え、用紙に対して孔版印刷画像及び/またはインクジェット印刷画像を形成する画像形成装置において、
用紙に対して孔版印刷画像とインクジェット印刷画像とを形成する場合に、前記孔版印刷部は前記孔版印刷画像に対応した製版画像が形成された製版済みマスタを版胴へ密着させる版付け動作を行い、前記インクジェット印刷部は前記版付け動作時に使用される用紙に対して前記インクジェット印刷画像とは無関係に前記記録ヘッドからインクを吐出する空吐出を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
記録ヘッドを有するインクジェット印刷部と孔版印刷部とを備え、用紙に対して孔版印刷画像及び/またはインクジェット印刷画像を形成する画像形成装置において、
画像形成がなされた画像形成済み用紙の間に画像形成がなされない合紙を挿入する合紙モードを有し、前記合紙モード選択時において前記合紙に対して前記インクジェット印刷画像とは無関係に前記記録ヘッドからインクを吐出する空吐出を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2記載の画像形成装置において、
前記合紙は前記画像形成済み用紙が所定枚数に達する毎に前記画像形成済み用紙の間に挿入されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項2記載の画像形成装置において、
前記合紙は前記インクジェット印刷部における画像形成動作開始後、所定時間毎に前記画像形成済み用紙の間に挿入されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項2ないし4の何れか1つに記載の画像形成装置において、
画像形成動作中、任意に前記合紙を挿入させる合紙挿入指令手段を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか1つに記載の画像形成装置において、
用紙を仕分ける用紙仕分け手段を有し、該用紙仕分け手段は前記空吐出が行われた用紙を他の用紙と区別すべくずらすことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−69019(P2006−69019A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−254651(P2004−254651)
【出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【出願人】(000221937)東北リコー株式会社 (509)
【Fターム(参考)】