説明

画像形成装置

【課題】湿式定着方式の画像形成装置において、定着液を用いてトナー像を記録媒体に定着させるのに際し、トナー像がトナー像担持体上に残留することによって画像欠陥が発生するのを防止し、高画質画像を安定的に形成する。
【解決手段】トナー像形成手段2と、中間転写ベルト21を含むトナー像担持手段3と、中間転写ベルト21上のトナー像に定着液32を塗布して膨潤・軟化状態にする定着液塗布手段4と、転写定着手段5と、記録媒体供給手段6と、スキャナ部7とを含む湿式定着方式の画像形成装置1において、中間転写ベルト21上の膨潤・軟化状態のトナー像を記録媒体に転写定着するに際し、該トナー像を構成するトナーと中間転写ベルトとの粘着力Aが、トナーと記録媒体との粘着力Bよりも小さくなるように、定着液塗布手段4と転写定着手段5とを配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリなどに多く採用される、電子写真方式の画像形成装置においては、表面に光導電性物質を含む感光層を形成した感光体を用い、感光体表面に電荷を塗布して均一に帯電させた後、種々の作像プロセスにて画像情報に対応する静電潜像を形成し、この静電潜像を、現像手段から供給されかつトナーを含む現像剤により現像してトナー像とし、このトナー像を紙などの記録媒体に直接転写するかまたは中間転写媒体に一旦転写した後、さらに記録媒体に転写することが行なわれる。そして、記録媒体に転写されるトナー像を記録媒体上に定着させるためには、加熱手段を含む定着ローラなどを用いる熱定着方式の定着手段によって記録媒体を加熱および加圧するのが一般的である。
【0003】
しかし、最近では地球温暖化対策として省エネルギー化が志向されており、電子写真方式の画像形成装置においても、トナー像を記録媒体に定着させる際の消費電力の低減が求められる。また、熱定着方式では画像形成装置内部で加熱手段が用いられ、装置内部が高温になるので、構成部材の耐熱性を高める必要があり、材料コストが増大する。また、熱定着方式では、定着部分が所定の温度まで上昇しないと定着を行えないので、所定の温度に達するまでの時間すなわちウォームアップ時間が長くなる傾向にある。さらに、熱定着方式では、多色トナー像の記録媒体への定着が、単色トナー像の定着に比べて、時間を要するという問題がある。したがって、多色トナー像の定着時間の短縮化が要望される。
【0004】
このような要望に鑑み、水と、水に溶解または分散可能でかつトナーを軟化または膨潤させる作用を有する液体とを含む定着液を用いる湿式定着方式が知られている。この方式では、定着液の塗布により軟化または膨潤状態にしたトナー像を記録媒体に付着させ、加圧することによって、トナー像を記録媒体に定着させる。湿式定着方式は、熱定着方式に比べて消費電力が非常に少ないので、省エネルギーという観点からは有用な方式である。また、多色トナー像の定着を行う際も、多量の熱量を必要としないので、熱定着方式に比べて定着時間を短縮できる。したがって、湿式定着方式のさらなる改良について、種々の提案がなされている。
【0005】
たとえば、記録媒体上に転写されたトナー像に定着液を塗布してトナー像を記録媒体に定着させる際、定着液の塗布前にトナー像を加熱または加圧することで、トナー像を構成するトナー同士の結着力を増大させる画像形成装置が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1の画像形成装置によれば、定着液の塗布前に加熱または加圧を行うことによって、トナー像を構成するトナーがある程度軟化した状態になっているので、定着液の使用量を削減できる。ところが、その一方で、記録媒体として最も汎用される記録紙を用いる場合には、記録紙が定着液を大量に吸収するので、全体としての定着液消費量を大幅に削減するには至っていない。そこで、定着液の吸収が少ない中間転写ベルト上のトナー像に対して定着液を塗布し、トナー像を構成するトナーを中間転写ベルト上で軟化および/または膨潤させた後に、転写定着部において中間転写ベルトと記録媒体とを接触させ、軟化・膨潤したトナーの粘着力で中間転写ベルト上のトナー像を記録媒体に転写定着する方式が多くの文献において提案されている。この方式によれば、中間転写ベルトが定着液を吸収することがないので、定着液消費量を大幅に削減できるものの、中間転写ベルトを用いることに起因する新たな問題が生じる。すなわち、この方式では、転写定着部において中間転写ベルトと記録媒体とを接触させ、中間転写ベルト上のトナー像を記録媒体に転写定着させた後、中間転写ベルトから記録媒体を剥離させる。ところが、中間転写ベルトから記録媒体を剥離させるタイミングによっては、トナー像の記録媒体への転写が不充分になり、中間転写ベルト上に残留することがある。この場合、形成される画像には画像欠陥を生じることになる。
【0006】
【特許文献1】特開2004−294847号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者の研究によれば、トナー像が記録媒体に転写されるかまたは中間転写ベルト上に残留するかを左右するのは、主に、定着液の塗布量、中間転写ベルト上のトナー像に定着液を塗布してから記録媒体を中間転写ベルトから剥離するまでの所要時間における、中間転写ベルトと膨潤・軟化したトナーとの粘着力(以後「粘着力A」と称す)および記録媒体と膨潤・軟化したトナーとの粘着力(以後「粘着力B」と称す)の変動であると推測される。
【0008】
図20〜22は、トナー像への定着液塗布後の経過時間と粘着力(粘着力A、粘着力B)との関係を示すグラフである。図において、トナー像への定着液塗布後の経過時間は横軸にプロットし、「塗布後の経過時間」とする。粘着力は縦軸にプロットし、粘着力Aは実線、粘着力Bは破線で表す。また、粘着力は後述する測定方法によって測定された値である。図20は、定着液塗布量がトナー像を充分に膨潤・軟化させる量よりも多い場合における、塗布後の経過時間と粘着力との関係を表すグラフである。中間転写ベルトが他の部材と接触する際に伝達される熱または静電気を保持することから、粘着力Aは定着液の塗布開始時点からある程度高い値となる。この状態で定着液が塗布されると、トナー像を構成するトナーが膨潤・軟化することによって、粘着力Aは塗布開始時の値よりも徐々に増加し、その後定着液の乾燥、中間転写ベルト表面の離型性の発現などによって徐々に低下し、一定になる。粘着力Bは定着液の塗布開始時点では粘着力Aよりも大幅に小さい値であるけれども、定着液が塗布されると、粘着力Aよりも急速に増大し、記録媒体の表面粗さ、記録媒体への浸透性などによって最大値が決まり一定になる。定着液塗布量が多い場合には、粘着力Aの最大値は粘着力Bの最大値よりも大きい。
【0009】
図21は、定着液塗布量がトナー像を膨潤・軟化させるのに過不足のない量(適量)である場合における、塗布後の経過時間と粘着力との関係を示すグラフである。この場合には、定着液塗布量が適量であるため、中間転写ベルトとトナー像との界面まで定着液がほとんど浸透しない。したがって、粘着力Aは中間転写ベルトが保有する熱または静電気に起因する当初の値を時間の経過に関係なく保持し、値は一定である。粘着力Bは、図20の場合と同様に、定着液塗布直後は定着液がトナーに浸透するので急速に増大するけれども、最大値に達した時点で一定になる。定着液塗布量が適量である場合は、粘着力Aの最大値は粘着力Bの最大値よりも小さい。図22は、定着液塗布量がトナー像を充分に膨潤・軟化させる量よりも少ない場合における、塗布後の経過時間と粘着力との関係を示すグラフである。この場合には定着液塗布量が少ないため、図21の場合と同様に、中間転写ベルトとトナー像との界面まで定着液がほとんど浸透しない。したがって、粘着力Aは中間転写ベルトが保有する熱または静電気に起因する当初の値を時間の経過に関係なく保持し、値は一定である。粘着力Bは、定着液塗布直後は定着液がトナーに浸透することで急速に増大するけれども、定着液塗布量が少ないため、急速な増大は一時的なものであり、粘着力Aよりも低い値で一定になる。
【0010】
以上のような関係から、記録媒体にトナー像がほぼ完全な状態で転写された状態で、中間転写ベルトと記録媒体とを剥離するには、塗布後の経過時間において、粘着力Bが粘着力Aよりも高い値を示す時間帯を選択することが必要である。これによって、画像欠陥のない高画質画像が得られる。一方、カラー画像形成装置で形成されるトナー像には、単色のトナー像や異なる2色以上のトナー像が積層された積層トナー像が混在する状態となっている。この積層トナー像に、単色トナー像を膨潤・軟化させるのに適する量の定着液を塗布すると、定着液塗布量が不足し、図22に示すように粘着力Bが粘着力Aよりも常に低くなるので、中間転写ベルト上にトナー像が残留する可能性が高い。また、単色トナー像に多色トナー像の膨潤・軟化に適する量の定着液を塗布すると、定着液塗布量が過剰になり、図20に示すように、時間t1〜時間t2までの間または時間t3以降に剥離を行うように設計しなければならない。したがって、常に粘着力Bが粘着力Aよりも高い値を示し、トナー像が記録媒体上にほぼ完全に転写された状態で記録媒体を中間転写ベルトから剥離できる画像形成装置が望まれる。
【0011】
本発明の目的は、定着液を用いてトナー像を記録媒体に定着させるのに際し、トナー像がトナー像担持体上に残留することによって画像欠陥が発生するのを防止した画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、
トナー像を形成するトナー像形成手段と、
トナー像形成手段により形成されるトナー像を表面に担持して回転駆動するトナー像担持体を含むトナー像担持手段と、
トナー像担持体上のトナー像を記録媒体上に転写する転写手段と、
トナー像担持体上のトナー像にトナーを軟化させる作用を有する定着液を塗布する定着液塗布手段とを含み、
トナー像担持体上で定着液を塗布されたトナー像を記録媒体に転写するに際し、トナーとトナー像担持体との粘着力A(N/25mm)が、トナーと記録媒体との粘着力B(N/25mm)よりも小さくなるように、定着液塗布手段と転写手段とが配置されることを特徴とする画像形成装置である。
【0013】
また本発明の画像形成装置は、
定着液塗布手段をトナー像担持体に沿って移動可能に支持する移動手段と、
移動手段による定着液塗布手段の移動位置を制御する移動制御手段とをさらに含むことを特徴とする。
【0014】
さらに本発明の画像形成装置は、
トナー像担持体の回転駆動方向における転写手段よりも上流側に、トナー像担持体上のトナー像を加熱する加熱手段および/またはトナー像担持体上のトナー像を加圧する加圧手段をさらに含むことを特徴とする。
【0015】
さらに本発明の画像形成装置は、トナー像担持体が、フッ素樹脂含有層を表面に有する無端ベルト状部材であることを特徴とする。
【0016】
さらに本発明の画像形成装置は、トナー像担持体が、弾性層を含む無端ベルト状部材であることを特徴とする。
【0017】
さらに本発明の画像形成装置は、
定着液塗布手段によるトナー像への定着液塗布量を制御する定着液塗布量制御手段をさらに含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、トナー像形成手段と、トナー像を表面に担持して回転駆動するトナー像担持体を含むトナー像担持手段と、トナー像担持体上のトナー像を記録媒体上に転写する転写手段と、トナー像担持体上のトナー像に定着液を塗布する定着液塗布手段とを含む画像形成装置において、トナー像担持体上で定着液を塗布されて膨潤・軟化状態にあるトナー像を記録媒体に転写定着するに際し、トナーとトナー像担持手段との粘着力A(N/25mm)が、トナーと記録媒体との粘着力B(N/25mm)よりも小さくなるように、定着液塗布手段と転写手段とを配置することによって、記録媒体をトナー像担持体からの剥離に当たって、トナー像担持体にトナー像が残留せず、トナー像をほぼ完全に記録媒体に転写することができる。したがって、本発明の画像形成装置によれば、トナー像のトナー像担持体への残留によって生じる画像欠陥がない高画質画像を安定的に形成できる。また、本発明の画像形成装置は、定着液を用いる湿式定着方式によりトナー像を記録媒体に定着させるので、熱定着方式を主とする画像形成装置に比べて電力消費量を大幅に削減できる。
【0019】
本発明によれば、定着液塗布手段をトナー像担持体に沿って移動可能に支持する移動手段と、移動手段による定着液塗布手段の移動位置を制御する移動制御手段とをさらに含むことによって、トナー像の記録媒体への転写定着の際に、粘着力B>粘着力Aを実現するための定着液塗布手段と転写定着手段との位置関係を容易に得ることができる。
【0020】
本発明によれば、トナー像担持体の回転駆動方向における転写手段よりも上流側に、トナー像担持体上のトナー像を加熱する加熱手段および/またはトナー像担持体上のトナー像を加圧する加圧手段を設けることによって、トナー像担持体上におけるトナー像表面、すなわち記録媒体への定着面のみが熱または圧力でフィルム化されて高い粘着性を示すようになる。一方、トナー像担持体とトナー像との界面ではトナー像のフィルム化は起こらないので、粘着力Aが増加することはない。そして、トナー像のフィルム化された表面が記録媒体に接触すると、粘着力Bはフィルム化を行わない場合よりも増加する。したがって、トナー像はフィルム化された部分がフィルム形状を保持したまま確実に記録媒体に転写定着される。
【0021】
本発明によれば、トナー像担持体の表面層、すなわちトナー像担持面がフッ素樹脂を含むことによって、粘着力Aを一層低下させることができ、トナー像の記録媒体への転写定着が一層確実に実行される。
【0022】
本発明によれば、トナー像担持体が弾性層を含むことによって、トナー像を記録媒体に転写する際に、トナー像と記録媒体との接触面積が増加し、粘着力Bが増加する。したがって、トナー像の記録媒体への転写定着が一層確実に実行される。
【0023】
本発明によれば、本発明の画像形成装置が、定着液塗布手段によるトナー像への定着液塗布量を制御する定着液塗布量制御手段をさらに含むことによって、膨潤・軟化状態にあるトナー像の記録媒体への転写定着の際に、粘着力B>粘着力Aの関係を得ることが一層容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は、本発明の第1の実施形態である画像形成装置1の構成を概略的に示す断面図である。図2は、図1に示す画像形成装置1の要部(後述のトナー像形成手段2)の構成を拡大して示す断面図である。図3は、図1に示す画像形成装置1の要部(後述の定着液塗布手段4)の構成を拡大して示す断面図である。図4は、定着液塗布手段4の構成を概略的に示す正面図である。画像形成装置1は、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの4色のトナー像を順次重ね合わせて転写するタンデム構成の電子写真方式の画像形成装置である。画像形成装置1は、トナー像形成手段2と、中間転写手段3と、定着液塗布手段4と、転写定着手段5と、記録媒体供給手段6、スキャナ部7とを含む。
【0025】
トナー像形成手段2は、作像ユニット10y,10m,10c,10bを含む。作像ユニット10y,10m,10c,10bは、後述する中間転写ベルト21の回転駆動方向(副走査方向)すなわち矢符29の方向における上流側からこの順番で一列に配置され、デジタル信号などとして入力される各色の画像情報に対応する静電潜像を形成し、該静電潜像に対応する色のトナーを供給し、現像して各色のトナー像を形成する。すなわち、作像ユニット10yはイエローの画像情報に対応するトナー像を形成し、作像ユニット10mはマゼンタの画像情報に対応するトナー像を形成し、作像ユニット10cはシアンの画像情報に対応するトナー像を形成し、作像ユニット10bはブラックの画像情報に対応するトナー像を形成する。作像ユニット10yは、感光体ドラム11yと、帯電ローラ12yと、光走査ユニット13yと、現像装置14yと、ドラムクリーナ15yとを含む。
【0026】
感光体ドラム11yは、図示しない駆動手段によって軸線回りに回転駆動可能に支持され、その表面に静電潜像ひいてはトナー像が形成される感光層を有するローラ状部材である。感光体ドラム11yとしては、たとえば、図示しない導電性基体と、導電性基体表面に形成される感光層とを含むものが挙げられる。導電性基体には、円筒状、円柱状、シート状などの導電性基体を使用でき、その中でも円筒状導電性基体が好ましい。感光層としては、有機感光層、無機感光層などが挙げられる。有機感光層としては、電荷発生物質を含む樹脂層である電荷発生層と、電荷輸送物質を含む樹脂層である電荷輸送層との積層体、1つの樹脂層中に電荷発生物質と電荷輸送物質とを含む樹脂層などが挙げられる。無機感光層としては、酸化亜鉛、セレン、アモルファスシリコンなどから選ばれる1種または2種以上を含む層が挙げられる。導電性基体と感光層との間には、下地層を介在させてもよく、感光層の表面には主に感光層を保護するための表面層(保護層)を設けてもよい。本実施の形態では、接地電位(GND)に接続されるアルミニウム素管(導電性基体)と、アルミニウム素管の表面に形成される厚さ20μmの有機感光層とを含む直径30mmの感光体ドラムを用いる。また、本実施の形態では、感光体ドラム11yは、時計周りの方向に周速度117mm/sで回転駆動する。
【0027】
帯電ローラ12yは、図示しない駆動手段によって軸線回りに回転駆動可能に支持され、感光体ドラム11yの表面を所定の極性および電位に帯電させるローラ状部材である。帯電ローラ12yには図示しない電源が接続され、該電源から電圧を印加されて放電することによって、感光体ドラム11y表面を帯電させる。本実施の形態では、帯電ローラ12yに−1200Vの電圧が印加され、感光体ドラム11y表面は−600Vに帯電する。帯電ローラ12yに代えて、ブラシ型帯電器、チャージャー型帯電器、スコロトロンといったコロナ帯電器などを使用できる。光走査ユニット13は、帯電状態にある感光体ドラム11y表面にイエローの画像情報に対応するレーザ光13yを照射し、感光体ドラム11y表面にイエローの画像情報に対応する静電潜像を形成する。光走査ユニット13には、半導体レーザなどを使用できる。本実施の形態では、−600Vに帯電した感光体ドラム11y表面に、露光電位−70Vの静電潜像を形成する。
【0028】
現像装置14yは、現像ローラ17yと、現像ブレード18yと、現像槽19yと、攪拌ローラ20ya,20ybとを含む。現像ローラ17yは、その表面にイエロートナー16yを担持し、現像ローラ17yと感光体ドラム11yとの圧接部(現像ニップ部)において、イエロートナー16yを感光体ドラム11y表面の静電潜像に供給する。現像ローラ17yは現像槽19yに支持され、現像槽19yの感光体ドラム11yを臨む面に形成される開口部からその一部が外方に向けて突出し、感光体ドラム11y表面に圧接しかつ軸線回りに回転駆動可能に設けられるローラ状部材である。現像ローラ17yは、感光体ドラム11yと逆方向に回転駆動する。したがって、現像ニップ部において、現像ローラ17yと感光体ドラム11yとは同じ方向に回転駆動する。また、現像ローラ17yには図示しない電源が接続され、該電源から直流電圧(現像電圧)が印加される。これによって、現像ローラ17y表面のイエロートナー16yが静電潜像に円滑に供給される。本実施の形態では、現像ローラ17yには−240Vの現像電圧が印加される。また、現像ローラ17yは、感光体ドラム11yの周速度の1.5倍である175.5mm/sの周速度で回転する。現像ローラ17y表面のイエロートナー層が現像ニップ部において感光体ドラム11yと接触し、静電潜像にイエロートナー16yが供給される。現像ブレード18yは、一端が現像槽19yによって支持され、他端が現像ローラ17y表面に圧接するように設けられる板状部材であり、現像ローラ17y表面に担持されるイエロートナー層を均一化(層規制)する。現像槽19yは前記のように感光体ドラム11yを臨む面に開口部が形成され、内部空間を有する容器状部材である。現像槽19yは、その内部空間に現像ローラ17yと攪拌ローラ20ya,20ybとを内蔵し、かつイエロートナー16yを貯留する。現像槽19yには、イエロートナー16yの消費状況に応じて、図示しないトナーカートリッジからイエロートナー16yが補給される。本実施の形態では、イエロートナー16yのみを含む1成分現像剤の形態で使用されるけれども、それに限定されず、イエロートナー16yと磁性キャリアとが混合された2成分現像剤の形態でも使用できる。攪拌ローラ20ya,20ybは、現像槽19yの内部空間において互いに圧接しかつ軸線回りに回転駆動可能に支持されるスクリュー状部材である。攪拌ローラ20yaは、現像ローラ17y表面に圧接するように設けられる。攪拌ローラ20ya,20ybは、それぞれの回転駆動によって、図示しないトナーカートリッジから現像槽19y内に補給されるイエロートナー16yを現像ローラ17yの表面周辺に送給する。本実施の形態では、感光体ドラム11y、現像ローラ17y、現像ブレード18yおよび攪拌ローラ20ya,20ybが適宜当接するように設けられるけれども、それに限定されず、それぞれの当接部に対応する部分で互いに間隙を有して離隔するように設けることもできる。
【0029】
ドラムクリーナ15yは、後述のように、感光体ドラム11y表面のイエロートナー像が中間転写ベルト21に転写した後に、感光体ドラム11y表面に残存するイエロートナー16yを除去、回収する。作像ユニット10yによれば、帯電ローラ12yによって帯電状態にある感光体ドラム11yの表面に、光走査ユニット13からイエローの画像情報に対応する信号光13yを照射して静電潜像を形成し、該静電潜像に現像装置14yからイエロートナー16yを供給して該静電潜像を現像し、イエロートナー像が形成される。このイエロートナー像は、後述のように、感光体ドラム11yの表面に圧接して矢符29の方向に回転駆動する中間転写ベルト21に転写される。感光体ドラム11y表面に残留するイエロートナー16yはドラムクリーナ15yによって除去され、回収される。この画像(トナー像)形成動作は繰返し実行される。作像ユニット10m,10c,10bは、イエロートナー16yに代えてマゼンタトナー16m、シアントナー16cまたはブラックトナー16bを使用する以外は、作像ユニット10yに対応する構造を有するので、同一の参照符号を付し、かつ各参照符号の末尾にマゼンタを示す「m」、シアンを示す「c」およびブラックを示す「b」を付し、説明を省略する。
【0030】
トナー16y,16m,16c,16b(以後特に断らない限り「トナー16」と総称する)は、結着樹脂、着色剤および離型剤を含有する。
【0031】
結着樹脂としては、後述する定着液32によって軟化または膨潤する樹脂であれば特に制限されず、たとえば、ポリスチレン、スチレンの置換体の単独重合体、スチレン系共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタンなどが挙げられる。結着樹脂は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。これらの結着樹脂の中でも、カラートナー用としては、保存性、耐久性、後述する定着液32による軟化または膨潤制御などの観点から、軟化点100〜150℃、ガラス転移点50〜80℃の結着樹脂が好ましく、前記の軟化点およびガラス転移点を有するポリエステルが特に好ましい。ポリエステルは入手容易な有機溶剤によって軟化・膨潤し易く、軟化・膨潤状態で透明になる。結着樹脂が前記のポリエステルである場合は、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックのトナー像が重ね合わされた多色トナー像を定着液32によって記録媒体8に定着させると、ポリエステル自体は透明化するので、減法混色によって充分な発色が得られる。また、熱定着方式で使用されるトナーに含まれる結着樹脂よりも軟化点または分子量の高い樹脂を用いても、定着液32による定着が可能である。軟化点または分子量の高い樹脂を用いれば、現像の際の負荷による劣化が防止され、長期間にわたって画質の劣化が少ない高画質画像が得られる。
【0032】
着色剤としては、従来から電子写真方式の画像形成に用いられるトナー用顔料および染料を使用できる。その中でも、定着液32の塗布によって、特にトナー像の記録媒体8への転写定着時などに滲みなどが発生するのを防止するために、定着液32に溶解しない顔料が好ましい。顔料としては、たとえば、アゾ系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、キナクリドン系顔料、フタロシアニン系顔料、イソインドリノン系顔料、イソインドリン系顔料、ジオキサジン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体系顔料などの有機系顔料、カーボンブラック、酸化チタン、モリブデンレッド、クロムイエロー、チタンイエロー、酸化クロム、ベルリンブルーなどの無機系顔料、アルミニウム粉などの金属粉などが挙げられる。顔料は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。離型剤としては、たとえば、ワックスを使用できる。ワックスとしてはこの分野で常用されるものを使用でき、その中でも、定着液32によって軟化または膨潤するものが好ましい。その具体例としては、たとえば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、パラフィンワックスなどが挙げられる。トナー16は、結着樹脂、着色剤および離型剤の他に、帯電制御剤、流動性向上剤、定着促進剤、導電剤などの一般的なトナー用添加剤の1種または2種以上を含有することができる。トナー16は、着色剤、離型剤などを結着樹脂と溶融混練して粉砕する粉砕法、着色剤、離型剤、結着樹脂のモノマーなどを均一に分散した後、結着樹脂のモノマーを重合させる懸濁重合法、結着樹脂粒子、着色剤、離型剤などを凝集剤によって凝集させ、得られる凝集物の微粒子を加熱する乳化凝集法などの公知の方法に従って製造できる。なお、トナー16の形状は、表面積を大きくするために、完全球形よりは不定形の方が好ましい。これによって、定着液32と接触し易くなるので、定着液32の消費量を低減化し得ると同時に、トナー像の短時間での定着および乾燥が可能になる。
【0033】
トナー16の体積平均粒径は、特に制限されないけれども、好ましくは2〜7μmである。このような小粒径トナーを用いると、トナー像の単位面積当りの表面積が大きくなり、定着液32との接触面積が増加するので、トナー像を短時間で記録媒体8に定着させ得る。短時間での定着は、定着液32の消費量の低減化にも寄与する。また、定着液32が速やかに乾燥するので、記録媒体8にしわ、カールなどが発生することがない。トナー16の体積平均粒径が適度に小さい場合には、重量当たりの記録媒体8に対する被覆率が高くなるので、少ないトナー消費量での高画質画像を形成できる。すなわち、トナー消費量の低減化と高画質化とを両立できる。トナー16の体積平均粒径が2μm未満では、トナー16の流動性が低下し、現像動作の際に、トナー16の供給、撹拌および帯電が不充分になり、トナー量の不足、逆極トナーの増加などが起こり、高画質画像が得られないおそれがある。一方、体積平均粒径が7μmを超えると、中心部分まで軟化および/または膨潤し難い大粒径のトナー粒子が多くなるので、画像の記録媒体8への定着性が低下するとともに、画像の発色が悪くなり、特にOHPへの定着の場合には、画像が暗くなる。
【0034】
トナー16の軟化点およびガラス転移点は特に制限されないけれども、軟化点が100〜130℃、ガラス転移点が50〜80℃であることが好ましい。このような軟化点の高いトナーは、現像時の負荷に対する耐久性を向上させるには好ましいけれども、熱定着方式では充分に定着および発色しない。ところが、本発明では、定着液32を用いて化学的にトナーを軟化および/または膨潤させるので、定着および発色が充分で、高品位な画像が得られる。なお、トナー16が複数の結着樹脂を含む場合には、トナー16が複数の軟化点または複数のガラス転位点を示すことがある。その場合、トナーの軟化点またはガラス転移点とは、複数あるうちの最も低い軟化点またはガラス転移点の温度を示す。
【0035】
本実施の形態では、トナー16は、顔料以外は次に示す同じ構成を有する。トナー16は、ガラス転移点60℃、軟化点120℃、体積平均粒径6μmの負帯電性の絶縁性非磁性トナーである。このトナーを用いて、X−Rite社製310による反射濃度測定値が1.4の画像濃度を得るには、5g/mのトナー量が必要である。トナー16は、ガラス転移点60℃かつ軟化点120℃のポリエステル(結着樹脂)、ガラス転移点50℃かつ軟化点70℃の低分子ポリエチレンワックス(離型剤)および各色の顔料を含み、ワックス含有量がトナー全量の7重量%、顔料含有率がトナー全量の12重量%および残部が結着樹脂のポリエステルである。トナー16に含まれる低分子ポリエチレンワックスは、結着樹脂のポリエステルよりもガラス転移点および軟化点が低いワックスである。このようなワックスを用いれば、結着樹脂のガラス転移点よりも低い温度下でも、トナー同士の付着力、トナーと中間転写ベルト21または記録媒体8との付着力が増加するので、液状物である定着液32を塗布する際に、定着液32によるトナーの流れ、凝集などが発生するのを抑制できる。さらに、トナー中のワックスが軟化すると、ワックスが存在する箇所からトナー内部に定着液32が浸透し易くなる。したがって、定着液32の塗布時に短時間でトナー全体が軟化および/または膨潤し、記録媒体8への転写時に充分な定着強度が得られ、トナー像の重ね合わせによる発色も充分になる。
【0036】
中間転写手段3は、中間転写ベルト21と、中間転写ローラ22y,22m,22c,22bと、支持ローラ25,26,27と、ベルトクリーナ28とを含む。中間転写ベルト21は、支持ローラ25,26,27によって張架されてループ状の移動経路を形成する無端ベルト状のトナー像担持体であり、感光体ドラム11y,11m,11c,11bとほぼ同じ周速度で矢符29の方向に回転する。中間転写ベルト21には、たとえば、厚さ100μmのポリイミドフィルムを使用できる。また、トナー像または記録媒体8表面の凹凸に対応して変形するように、ポリイミドフィルムの表層に弾性体層を設けることができる。弾性層の厚みは好ましくは0.5〜2mm程度である。さらに、軟化・膨潤状態のトナー16と中間転写ベルト21との粘着力が必要以上に高まるのを抑制するために、ポリイミドフィルムの表面に、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)とPFA(テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)とを8:2(
重量比)の割合で含むフッ素樹脂組成物からなる厚さ20μmの被覆層を設けてもよい。ポリイミドフィルムおよび被覆層中には、中間転写ベルト21としての電気抵抗値を調整するために、ファーネスブラック、サーマルブラック、チャネルブラック、グラファイトカーボンなどの導電材が配合される。被覆層表面が、トナー像担持体21のトナー像担持面21aになる。なお、中間転写ベルト21の材料は前述のものに限定されず、定着液32を浸透させないものであれば特に制限なく使用できる。たとえば、導電性塗料を塗布したポリカーボネート、フッ素ゴムなどのフィルムに、PTFEおよび/またはPFA、ETFEからなる被覆層を設けたものでもよい。また、ベルト基材またはベルトの弾性層上にフッ素を含浸させ、被覆層の離型性を向上させてもよい。中間転写ベルト21のトナー像担持面21aは、中間転写ベルト21の回転駆動方向における上流側から、感光体ドラム11y,11m,11c,11bにこの順番で圧接する。中間転写ベルト21の感光体ドラム11y,11m,11c,11bに圧接する位置が、各色トナー像の中間転写位置である。中間転写ベルト21を介して感光体ドラム11y,11m,11c,11bに対向する位置に、中間転写ローラ22y,22m,22c,22bが配置される。
【0037】
中間転写ローラ22y,22m,22c,22bは、それぞれ、中間転写ベルト21を介して感光体ドラム11y,11m,11c,11bに対向し、かつ中間転写ベルト21におけるトナー像担持面21aの反対面に圧接し、かつ図示しない駆動手段によりその軸線回りに回転駆動可能に設けられるローラ状部材である。中間転写ローラ22y,22m,22c,22bには、たとえば、金属製軸体と、該金属製軸体の表面に被覆される導電性層とを含むローラ状部材が用いられる。軸体は、たとえば、ステンレス鋼などの金属により形成される。軸体の直径は特に制限されないけれども、好ましくは8〜10mmである。導電性層は、導電性弾性体などにより形成される。導電性弾性体としてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、カーボンブラックなどの導電性制御剤を含む、EPDM、発泡EPDM、発泡ウレタンなどが挙げられる。導電性層によって、中間転写ベルト21に高電圧が均一に印加される。中間転写ローラ22y,22m,22c,22bには、感光体ドラム11y,11m,11c,11bの表面に形成されるトナー像を中間転写ベルト21上に転写するために、トナーの帯電極性とは逆極性の中間転写バイアスが定電圧制御によって印加される。これによって、感光体ドラム11y,11m,11c,11bに形成されるイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックのトナー像が中間転写ベルト21のトナー像担持面21aに順次重ね合わさって転写され、多色トナー像が形成される。ただし、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの一部のみの画像情報が入力される場合には、作像ユニット10y,10m,10c,10bのうち、入力される画像情報の色に対応する作像ユニットのみにおいてトナー像が形成される。
【0038】
支持ローラ25,26,27は、図示しない駆動手段によって軸心回りに回転駆動可能に設けられ、中間転写ベルト21を張架して矢符29の方向に回転駆動させる。支持ローラ25,26,27には、たとえば、直径30mmおよび肉厚1mmのアルミニウム製円筒体(パイプ状ローラ)が用いられる。支持ローラ25の内部には、加熱手段31が設けられ、中間転写ベルト21および中間転写ベルト21に担持されるトナー像を予備加熱する。加熱手段31は、トナー像を加熱することによって、トナー像におけるトナー16同士の結着力を高め、中間転写ベルト21の回転駆動方向において支持ローラ25よりも下流側に配置される定着液塗布手段4からトナー像に定着液が塗布される際に、トナー16の流動、凝集などが発生するのを防止できる。すなわち、加熱手段31は、トナー結着力増強手段として用いられる。加熱手段31には、たとえば、ハロゲンランプ、赤外線ヒータなどの、電力の供給を受けて発熱する公知の加熱手段を使用できる。加熱手段31に供給される電力量は、トナー16の種類、中間転写ベルト21の材質、厚み、プロセススピードなど種々の条件に応じて適宜変更可能であるけれども、中間転写ベルト21が支持ローラ25から離反する際のベルト表面温度が90〜120℃になるように制御するのが好ましい。支持ローラ26は、中間転写ベルト21を介して後述する2次転写ローラ30に圧接して転写定着ニップ部を形成し、かつ電気的に接地される。支持ローラ26は中間転写ベルト21を張架する機能と共に、中間転写ベルト21上のトナー像を記録媒体8に転写定着させる機能をも有する。
【0039】
ベルトクリーナ28は、中間転写ベルト21のトナー像担持面21a上のトナー像を後述の2次転写定着手段5において記録媒体8に転写した後に、トナー像担持面21a上に残存するトナーを除去する部材であり、中間転写ベルト21を介して支持ローラ27に対向するように設けられ、図示しない加圧手段により、中間転写ベルト21のトナー像担持面21aに圧接し、トナー像担持面21a上の残存トナーなどを掻き取るクリーニングブレード28aと、クリーニングブレード28aに掻き取られるトナーなどを貯留するトナー貯留容器28bとを含んで構成される。クリーニングブレード28aには、たとえば、弾性を有するゴム材料(たとえば、ウレタンゴム)などからなるブレードを使用できる。
【0040】
中間転写手段3によれば、感光体ドラム11y,11m,11c,11b上に形成されるトナー像が、中間転写ベルト21のトナー像担持面21aの所定位置に重ね合わされて転写され、トナー像が形成される。このトナー像は、後述するように、定着液塗布手段4によって定着液32を塗布され、該トナー像を構成するトナー16を軟化・膨潤状態にした後、転写定着ニップ部において記録媒体8に転写定着される。転写定着後に中間転写ベルト21のトナー像担持面21aに残留するトナー、オフセットトナー、紙粉などがベルトクリーナ28により除去され、トナー像担持面21aには再度トナー像が転写される。
【0041】
定着液塗布手段4は、中間転写ベルト21に担持されて搬送されてきた未定着トナー像に定着液32を塗布するための静電霧化装置であり、中間転写ベルト21の回転方向(矢符29の方向)において、トナー像形成手段2による中間転写ベルト21へのトナー像の転写位置から転写定着手段5によるトナー像の記録媒体8への転写定着位置(転写定着ニップ部)までの間に設けられ、定着液槽33と、定着液搬送部材35と、印加電極36と、対向電極37と、空気流制御部材38とを含んで構成される。
【0042】
定着液槽33は、印加電極36および対向電極37を支持し、その鉛直方向下部に定着液32を貯留する定着液貯留部34を有する。さらに、定着液槽33の短手方向において、空気流制御ローラ38が設けられる側の側壁33bに対向する側壁33aは、鉛直方向上方に延びるほど側壁33bに近づくように湾曲し、その先端部分は、中間転写ベルト21上のトナー像が該先端部分に接触することなく通過可能な程度の間隔を有して中間転写ベルト21に離隔するように設けられる。また、側壁33aの長手方向において、印加電極36が側壁33aに接する位置と、対向電極37が側壁33aに接する位置との間には、複数の吸気孔40が形成される。本実施の形態では、吸引孔40は方形状であるけれども、それに限定されず、たとえば、円形状、楕円形状、多角形状などの種々の形状に形成することができる。定着液槽33には、図示しない定着液供給管を介して図示しない定着液供給ポンプおよび定着液収容タンクが接続され、定着液槽33内に設けられる図示しない液量検知センサによる検知結果に応じて、定着液貯留部34における定着液面の高さが一定になるように、定着液収容タンクから定着液32が補給される。また、それに限定されず、定着液貯留部34の定着液32が消費された場合に、新しい定着液槽33に交換するカートリッジ方式にすることもできる。
【0043】
定着液搬送部材35は、両端に開口部を有しかつその内部に両端の開口部に連なる定着液搬送路を有する中空棒状部材であり、印加電極36により支持されて一方の端部が定着液貯留部34に貯留される定着液32に浸漬し、他方の端部の先端部が中間転写ベルト21のトナー像担持面21aを臨むように設けられて、一方の端部から他方の端部に向けて毛細管現象などを利用して定着液32を搬送する。また、定着液搬送部材35は、一方の端部が定着液槽33の鉛直方向の底面に接しないように設けられる。また、定着液搬送部材35は、少なくとも他方の端部の先端部が、印加電極36から定着液搬送方向に突出するように設けられる。また、少なくとも他方の端部の先端部は、針状に形成されるのが好ましい。それによって、定着液32の液滴径のさらなる小径化を図ることができ、定着液滴のトナー像への選択的付与を一層有利に実行できる。また、複数の定着液搬送部材35は、定着液槽33の長手方向に一列に配列される。隣り合う定着液搬送部材35の間隔については、定着液搬送部材35の他端先端部の角度(定着液32の広がり易さ)、中間転写ベルト21のトナー像担持面21aと定着液搬送部材35の他端先端部との距離、画像形成速度などの各種条件に応じて適宜選択できる。本実施の形態では、20mm間隔で12本の定着液搬送部材35が一列に配列される。定着液搬送部材35には、たとえば、棒状多孔質体、1または複数の毛細管などを使用できる。棒状多孔質体としては、アルミナ、ジルコニアなどが主成分の多孔質セラミックを棒状に形成したものなどが挙げられる。一般的な多孔質セラミックは絶縁体であるけれども、アルミナ、ジルコニアなどからなる多孔質酸化物中に導電性セラミックス粒子を微細に分散させた導電性多孔質セラミック、半導電多孔質セラミックなども使用できる。毛細管としては、たとえば、金属製毛細管、合成樹脂製毛細管などを使用できる。定着液搬送部材35は、定着液32に浸漬する一方の端部から、中間転写ベルト21のトナー像担持面21aを臨む他方の端部に向けて、毛細管現象などを利用して定着液32を搬送する。他方の端部に搬送される定着液32は、その先端部で表面張力により液滴となって外方に向けて露出する。この定着液32の液滴は、後述するように印加電極36と対向電極37との間に発生する電界によって微小液滴化され、空気流により搬送される。
【0044】
印加電極36は、定着液槽34の短手方向の両側壁によって、定着液貯留部34に貯留される定着液32の液面に接しない位置に水平に支持され、その長手方向に一列に鉛直方向の貫通孔である図示しない定着液搬送部材挿通孔が形成され、この定着液搬送部材挿通孔に定着液搬送部材35を挿通させることによって、定着液搬送部材35を支持する。印加電極36には、導電性材料から形成されるものを使用できる。導電性材料としては、たとえば、合成樹脂とカーボーブラック、導電性ウィスカ、導電性金属酸化物などの導電材とを含む導電性樹脂組成物、ステンレス鋼などの導電性金属などが挙げられる。印加電極36には、図示しない高電圧発生装置が接続され、トナー像の帯電電位とは逆の電圧が印加される。本実施の形態では、+5〜6kVの電圧が印加される。印加電極36に印加される電圧を調整することによって、微小液滴化される定着液32の量を適宜選択できる。対向電極37は、定着液槽34の側壁33aによって、印加電極36に対向しかつ定着液搬送部材35の他端の先端部と離隔する位置に水平に支持される。また、対向電極37には、上方から見て網目状に形成され、鉛直方向の貫通孔である図示しない定着液滴流過孔が形成される電極部材が用いられる。この部材における網目(メッシュ)の粗さは、定着液滴が支障なく通過し得る粗さであれば特に制限はない。これによって定着液32の微小液滴を含む空気流が中間転写ローラ21上のトナー像に向けて流過する。対向電極37の形成には、印加電極36を形成するための導電性材料と同じものを使用できる。本実施の形態では、対向電極37には網目状の電極部材が用いられるけれども、定着液滴を支障なく通過させ得る鉛直方向の貫通孔を有する電極部材であれば特に制限なく使用できる。印加電極36に高電圧を印加すると、印加電極36と対向電極37との間に電界が発生し、電界は定着液搬送部材35の他方の先端部に搬送されて外方に向けて露出する定着液32の液滴に集中する。電界の集中度合いは、他方の先端部の形状が針状である場合に大きくなる。定着液32の液滴には電荷が注入され、液滴の電荷がレイリー(Rayleigh)限界を超えると、液滴が不安定になって液滴から強く荷電された1つまたは複数の微小液滴が放出される。この微小液滴が空気流に乗り、微小液滴の電荷により、さらに空気流が後述の空気流制御部材38にて中間転写ベルト21のトナー像に向けて流過するように制御されることも相俟って、微小液滴がトナー像に選択的に付与される。
【0045】
空気流制御部材38は、矢符39の方向に回転自在に支持されるローラ状部材であり、定着液槽34よりも中間転写ベルト21の回転方向下流側において、その回転を妨げずかつ微小間隔を有して定着液槽34の側壁33bの上端部および対向電極37の水平方向の側壁33b側端部と離隔し、かつ空隙を有して中間転写ベルト21に離隔するように設けられる。中間転写ベルト21との空隙は、たとえば、0.5〜3mm程度である。空気流制御部材38をこのように配置し、矢符39の方向に回転駆動させ、吸引口40から空気を吸入して空気流を発生させ、さらに定着液32の微小液滴を含む空気流を空気制御部材38と中間転写ベルト21との間の空隙に集中的に導入できる。そして、中間転写ベルト21上のトナー像が該空隙に搬送され、そこで定着液32の微小液滴の付与を受けることによって、トナー像に定着液32の微小液滴を選択的に付与し、トナー像を膨潤および/または軟化させることができる。このような空気流制御部材38は、特に画像形成速度が速くなるほど効果的に作用する。
【0046】
定着液32は、トナー16を軟化および/または膨潤させる液状物である。定着液32として、トナー16を軟化および/または膨潤させる作用を有する有機化合物(以後「トナー定着用有機化合物」と称す)と、トナー定着用有機化合物を溶解または分散できる溶媒成分とを含むものが好ましい。
【0047】
トナー定着用有機化合物としては、たとえば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトンなどのケトン類、メチルエチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルブチルエーテル、メチルイソブチルエーテル、ジメチルエーテルなどのエーテル類、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸などのカルボン酸とメタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類とのエステル類などが挙げられる。これらの中でも、エーテル類およびエステル類が好ましく、エステル類が特に好ましい。エーテル類の中では、ジエチルエーテルが特に好ましい。エステル類の中では、酢酸エチル、酢酸メチル、蟻酸メチル、蟻酸エチルなどがさらに好ましく、酢酸エチルが特に好ましい。トナー定着用有機化合物は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。トナー定着用有機化合物は、常温での揮発性を有するとともに、ポリエステルなどのトナー用結着樹脂を軟化および/または膨潤させる作用に優れる。トナー定着用有機化合物の定着液32における含有量は特に制限されず、広い範囲から適宜選択できるけれども、好ましくは定着液32全量の1〜50重量%、さらに好ましくは定着液32全量の5〜50重量%、特に好ましくは定着液32全量の10〜40重量%である。1重量%未満では、トナー16の軟化および/または膨潤作用が不充分になり、トナー像の記録媒体8への定着強度が低下するおそれがある。また、50重量%を超えると、相対的に溶媒成分の含有量が減少することによって、定着液32のトナー像に対する浸透性が低下し、トナー像の表層のみが軟化および/または膨潤するので、トナー像の記録媒体8に対する定着強度が低下するおそれがある。
【0048】
溶媒成分としては、トナー定着用有機化合物を溶解または分散し得る液体成分であれば特に制限されないけれども、トナー像への浸透性などを考慮すると、ハイドロフルオロエーテルが好ましい。ハイドロフルオロエーテルは表面張力および粘度が小さいので、トナー粒子間、トナーと記録媒体8との接触面などに良く浸透する。このため、トナー定着用有機化合物が、ハイドロフルオロエーテルとともにトナー粒子間、トナーと記録媒体8との接触面などに運ばれ、トナーを瞬時に軟化および/または膨潤させ得る。また、ハイドロフルオロエーテルは、蒸発潜熱が小さいので、室温でも短時間で揮発し、記録媒体8の乾燥が速くなる。ハイドロフルオロエーテルとしては公知のものを使用でき、たとえば、メチルノナフルオロブチルエーテル、メチルノナフルオロイソブチルエーテル(COCH)、エチルノナフルオロブチルエーテル、エチルノナフルオロイソブチルエーテル(COC)、1,1,2,2−テトラノナフルオロエチル 2,2,2−トリフルオロエチルエーテル(CHFCFOCHCF)などが挙げられる。ハイドロフルオロエーテルは1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。ハイドロフルオロエーテルの定着液32における含有量は特に制限されず、広い範囲から適宜選択できるけれども、好ましくは定着液32全量の50〜99重量%、さらに好ましくは定着液32全量の50〜95重量%、特に好ましくは定着液32全量の60〜90重量%である。50重量%未満では、定着液32のトナー像に対する浸透性が低下し、トナー像の表層のみが軟化および/または膨潤するに留まり、トナー像の記録媒体8に対する定着強度が低くなるおそれがある。一方、99重量%を超えると、相対的にトナー定着用有機化合物の含有量が少なくなり、定着液32のトナーに対する軟化・膨潤作用が低下し、トナー像の記録媒体8に対する定着強度が不充分になるおそれがある。
【0049】
定着液32には、トナー定着用有機化合物および溶媒成分のほかに、トナー定着用有機化合物の水中での分散状態を保ち、定着液32のトナーとの濡れ性を向上させる界面活性剤を添加できる。界面活性剤としては公知のものを使用でき、たとえば、脂肪酸誘導体硫酸エステル塩、リン酸エステルなどの陰イオン界面活性剤、四級アンモニウム塩、複素環アミンなどの陽イオン界面活性剤、アミノ酸エステル、アミノ酸などの両性イオン界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミンなどが挙げられる。
【0050】
定着液塗布手段4によれば、空気流制御部材38の回転によって吸引口40から定着液槽33内に導入される空気流が、定着液槽33内で形成され、トナー像とは逆電位の帯電状態にある定着液32の微小液滴を乗せて、空気流制御部材38と中間転写ベルト21との間の空隙に集中し、そこに搬送されるトナー像に定着液32の微小液滴を選択的に付与し、トナー像を膨潤および/または軟化させる。なお、本実施の形態では、定着液塗布手段4として静電霧化装置が用いられるけれども、これに限定されず、インクジェットヘッド、超音波発振器などを利用する塗布装置も使用できる。
【0051】
転写定着手段5は、支持ローラ26と、転写定着ローラ30とを含む。転写定着ローラ30は、中間転写ベルト21を介して支持ローラ26に圧接し、かつ軸線方向に回転駆動可能に設けられ、主に加圧ローラとして機能するローラ状部材である。転写定着ローラ30にはこの分野で常用されるものを使用できるけれども、本実施の形態では、直径10mmの芯金の外周に、厚さ4mmのウレタンゴム層を設けたローラ状部材が用いられる。また、本実施の形態では、転写定着ローラ30は5N/cmの線圧で中間転写ベルト21を介して支持ローラ26に押圧される。支持ローラ26と転写定着ローラ30との圧接部である転写定着ニップ部に、中間転写ベルト21に担持される軟化・膨潤状態にあるトナー像が搬送されると、それに同期して、後述する記録媒体供給手段6から記録媒体8が送給され、トナー像と記録媒体8とが重ね合わされて押圧される。て転写および定着される。このトナー像は前述のように軟化・膨潤状態にあるので、押圧によって記録媒体8に付着する。このとき、記録媒体8が紙類である場合には、トナー像は紙繊維に強く入り込み、それと同時にトナー粒子同士が融合し、トナー像の表面が平滑になる。その結果、減法混色による発色性と表面の光沢性に優れる高品位なカラー画像が得られる。本実施の形態において、中間転写ベルト21の表面にトナー16との付着力が小さいフッ素樹脂層を設ける場合には、トナー像のほぼ全量が記録媒体8に転写される。また、中間転写ベルト21は、フッ素樹脂層の下層に弾性層を設ける場合は、記録媒体8表面の凹凸に従って変形するので、記録媒体8の凹部にもトナー像を接触させることができ、均一な転写定着像が得られる。このとき、トナー像の転写定着を補助するために、転写定着ローラ30のように、表面にカーボンなどの導電材を配合してなるウレタンゴム層を設け、表面が導電性を示すようにした転写定着ローラを用い、芯金にたとえば+1kVの電圧を印加してもよい。これによって、中間転写ベルト21上のトナー像が一層円滑に記録媒体8に転写定着される。
【0052】
記録媒体供給手段6は、記録媒体カセット42と、ピックアップローラ43と、レジストローラ44a,44bとを含む。記録媒体カセット42は記録媒体8を貯留する。記録媒体8には、たとえば、普通紙、コート紙、カラーコピー専用用紙、OHP(オーバーヘッドプロジェクタ)用フィルム、葉書などがある。サイズとしては、A4、A3、B5、B4、葉書サイズなどである。ピックアップローラ43は、記録媒体8を搬送路Pに1枚ずつ送給する。レジストローラ44a,44bは互いに圧接するように設けられる一対のローラ状部材であり、中間転写ベルト21上の多色トナー像が転写定着ニップ部に搬送されるのに同期して、転写定着ニップ部に記録媒体8を送給する。記録媒体供給手段6によれば、記録媒体カセット42内に貯留される記録媒体8が、ピックアップローラ43によって1枚ずつ搬送路Pに送給され、さらに、レジストローラ44a,44bによって転写定着ニップ部に送給される。
【0053】
スキャナ部7は、原稿台41と、光源(不図示)と、CCDセンサ9とを含む。原稿台41の上面には、複写すべき原稿が載置される。原稿台41には透明ガラスなどの透明性材料からなる板状部材が用いられる。光源は、原稿台41に載置される原稿を照明する。CCDセンサ9は、光源によって照明される原稿からの反射光を光電変換することで、反射光を画像情報(画像信号)に変換する。CCDセンサ9は変換部と転送部と出力部とを含み、変換部では反射光である光信号を電気信号に変換し、転送部ではクロックパルスに同期して電気信号を順次出力部へ転送し、出力部では電気信号を電圧信号に変換し、増幅、低インピーダンス化して出力する。このようにして得られたアナログ信号を周知の画像処理を行ってデジタル信号に変換する。スキャナ部7により読み取られる原稿の画像情報は、画像形成装置の全動作を制御する図示しないCPUに送られ、各種画像処理が施された後、メモリに一旦記憶され、出力指示に応じてメモリ内の画像を読出して光走査ユニット13に転送して記録媒体8である記録紙上に画像を形成させる。
【0054】
画像形成装置1には、図示しない制御手段が設けられる。制御手段は、たとえば、画像形成装置1の内部空間における上部に設けられ、図示しない、制御部、演算部、記憶部などからなる中央処理装置(CPU)を備えるマイクロコンピュータなどによって実現される処理回路を含む。CPUの記憶部には、画像形成装置1の上面に配置される図示しない操作パネルを介する画像形成命令、画像形成装置1内部の各所に配置される図示しないセンサなどからの検知結果、外部機器からの画像情報などが入力され、入力される各種データ(画像形成命令、検知結果、画像情報など)に基づいて演算部による判定が行われ、演算部の判定結果に応じて制御部から制御信号が送付され、画像形成装置1の全動作が制御される。記憶部には、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、リードオンリィメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ハードディスクドライブ(HDD)などが挙げられる。外部機器には、画像情報の形成または取得が可能であり、かつ画像形成装置に電気的に接続可能な電気・電子機器を使用でき、たとえば、コンピュータ、デジタルカメラ、テレビ、ビデオレコーダ、DVDレコーダ、ファクシミリ装置などが挙げられる。制御手段は、前述の処理回路とともに電源を含み、電源は制御手段だけでなく、画像形成装置1内部における各装置にも電力を供給する。
【0055】
画像形成装置1は、図示しない移動手段と、移動制御手段とを含むことができる。移動手段は、定着液塗布手段4を中間転写ベルト21に沿って移動可能に支持する。移動制御手段は、トナー像に関する情報(トナー像形成領域の大きさ、トナー像形成領域におけるトナー付着面積の割合、トナー像の層数など)ならびに設定されるプロセス速度および定着液塗布量に応じて、移動手段による定着液塗布手段4の移動を制御し、定着液塗布手段4による定着液32の塗布位置を適宜変更する。この場合、移動制御手段にはCPUが用いられる。CPUの記憶部には、トナー像情報、プロセス速度および定着液塗布量と、定着液32の塗布位置との関係がデータテーブルとして入力される。ここで、定着液32の塗布位置とは、定着液32の塗布後からどれだけの時間を経過して転写定着ニップ部に到達する位置であるかを意味する。演算部は、トナー像情報、プロセス速度および定着液塗布量を記憶部から取り出し、さらに前述のデータテーブルから定着液32の最適な塗布位置を判定する。制御部は演算部による判定結果に応じ、移動手段を駆動させる図示しない駆動手段に制御信号を送り、移動手段によって定着液塗布手段4を最適な塗布位置に移動させる。したがって、移動手段と移動制御手段とを含む構成によって、転写定着ニップ部におけるトナー像の粘着力B>粘着力Aという状態を容易に実現できる。
【0056】
さらに、画像形成装置1において定着液塗布量を制御すれば、転写定着ニップ部におけるトナー像の粘着力B>粘着力Aという状態の実現が一層容易になる。定着液塗布量の制御は、定着液塗布手段4においては、空気流制御部材38の回転速度を変更することによって行われる。通常、空気流制御部材38の回転速度を速めるほど、定着液塗布量は増加する。図示しないCPUが定着液塗布量制御手段になる。CPUは記憶部と演算部と制御部とを含む。記憶部には、画像情報および空気流制御部材38の回転速度と定着液塗布量との関係がデータテーブルとして入力される。また、所定のトナー像形成領域におけるトナーが実際に付着する面積の割合と定着液32の最適塗布量との関係、およびトナー像の層数と定着液32の最適塗布量との関係も、データテーブルとして入力される。なお、トナー像形成領域は、画像形成が行われる記録媒体のサイズに応じて画像形成装置毎に設定される画像形成可能範囲を意味する。演算部では、記憶部に入力される画像情報のデータの中から、トナー像形成領域におけるトナー付着面積の割合、トナー像の層数を取り出し、その値に基づいて記憶部のデータテーブルから最適塗布量を判定し、さらに最適塗布量を得るための空気流制御部材38の回転速度を判定する。制御部は、演算部による判定結果に応じて、空気流制御部材38を回転させる図示しない駆動手段に電力を供給する図示しない電源に制御信号を送り、空気流制御部材38の回転速度を制御する。これによって、中間転写ベルト21上に担持されるトナー像に応じて、定着液塗布量を適宜変更でき、粘着力B>粘着力Aの状態でトナー像を転写定着ニップ部に送給できる。
【0057】
CPUは、トナー像に関する情報(トナー像形成領域の大きさ、トナー像形成領域におけるトナー付着面積の割合、トナー像の層数など)に応じて、画像形成装置における各プロセス速度(主に感光体ドラム11および中間転写ベルト21のプロセス速度)を適宜選択することによって、転写定着ニップ部において、トナー像が粘着力B>粘着力Aの状態になるように制御できる。すなわち、プロセス速度制御手段としても機能する。プロセス速度は回転駆動速度でもよい。この場合、記憶部には、トナー像に関する情報と定着液塗布量とプロセス速度との関係がデータテーブルとしてさらに入力される。判定部は、判定時点で設定されている定着液塗布量を記憶部から取り出し、さらにトナー像が何層であるかというデータを記憶部から取り出し、前述のデータテーブルに基づいてプロセス速度を選択し、感光体ドラム11および中間転写ベルト21の回転駆動を制御する。感光体ドラム11については感光体ドラム11の駆動手段の回転駆動を制御し、中間転写ベルト21については支持ローラ25,26,27の駆動手段の回転駆動を制御する。このプロセス速度制御手段を用いることによっても、転写定着ニップ部でのトナー像における粘着力B>粘着力Aを実現できる。
【0058】
画像形成装置1によれば、トナー像形成手段2により画像情報に応じて形成されるトナー像が中間転写ベルト21に転写され、支持ローラ25による予備加熱を受けた後、定着液塗布手段4によって定着液32を塗布され、トナーが膨潤および/または軟化し、転写定着部5において、粘着力B>粘着力Aの関係が実現され、トナー像が確実に記録媒体8に転写定着される。
【0059】
図5は、本発明の実施の第2形態である画像形成装置50の構成を概略的に示す断面図である。図6は、図5に示す画像形成装置50の要部(特に後述の定着液塗布手段51)の構成を拡大して示す断面図である。画像形成装置50は画像形成装置1に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。画像形成装置50は、画像形成装置1における中間転写手段3に代えて、中間転写手段3aを備えることを特徴とする。また、画像形成装置50は、画像形成装置1における定着液塗布手段4に代えて、定着液塗布手段51を備えることを特徴とする。
【0060】
中間転写手段3aは、中間転写ベルト21、中間転写ローラ22y,22m,22c,22b、支持ローラ25,26,27およびベルトクリーナ28とともに、温度検知手段52を有することを特徴とする。温度検知手段52は、中間転写ベルト21の回転駆動方向(矢符29の方向)における、支持ローラ25よりも下流側であってかつ定着液塗布手段4よりも上流側である位置に、中間転写ベルト21のトナー像担持面21aとは反対側の面に近接するかまたは接するように設けられる。温度検知手段52は、中間転写ベルト21の表面温度を検知する。温度検知手段52には、たとえば温度センサが用いられる。温度検知手段52による検知結果は、画像形成装置50の全動作を制御する中央処理装置(CPU)に入力される。CPUは、たとえば、記憶部と演算部と制御部とを含み、温度検知手段52による検知結果は記憶部に入力される。さらに、記憶部には、中間転写ベルト21に設定される表面温度の値が入力される。演算部は、温度検知手段52による検知結果および中間転写ベルト21に設定される表面温度値を取り出し、いずれの値が高いかを判定する。制御部は、演算部による検知結果が設定される表面温度値よりも低いという判定結果に応じて、加熱手段31に電力を供給する図示しない電源に制御信号を送付し、該電源から加熱手段31への電力供給動作を制御する。通常は、中間転写ベルト21が支持ローラ25から離反する際における中間転写ベルト21の表面温度が90〜120℃になるように制御される。温度検知手段52の設置位置は、中間転写ベルト21の支持ローラ25からの離反位置とは若干離れているけれども、たとえば、両位置間での中間転写ベルト21の温度低下を予め測定し、温度検知手段52による検知結果を補正することによって、温度制御は容易に実施できる。
【0061】
定着液塗布手段51は、定着液溜53と、塗布ローラ54と、規制ローラ55と、除去ブレード56とを含む。定着液溜53は内部空間を有する容器状部材であり、その内部空間に定着液32を貯留し、かつ中間転写ベルト21を臨む側面に開口部が形成される。塗布ローラ54は、定着液溜53の中間転写ベルト21を臨む開口部において、中間転写ベルト21に圧接し、その一部が定着液溜53に貯留される定着液32中に浸漬しかつ図示しない駆動手段により矢符54aの方向に回転駆動可能に設けられるローラ状部材である。塗布ローラ54には、芯金と、芯金の表面に形成される弾性層と、弾性層の表面に形成される親水性層とを含むローラが用いられる。弾性層には、たとえば、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴムなどが用いられる。親水性層には、たとえば、親水性処理を施したPTFEなどが用いられる。さらに、塗布ローラ54は、少なくともその表面層が、後述する定着液32との濡れ性が良好な材料を含んで構成することができる。該材料としては特に制限はないけれども、たとえば、アルミニウムなどの金属、親水性樹脂、親水性ゴム材料などが挙げられる。このような親水性の表面層を設けることによって、定着液32を薄い層として保持することができ、少量の定着液32でも広い範囲に塗布できるので、定着液32の消費量を低減化できるとともに、過剰な定着液32が未定着のトナーを押し流して画像を乱すのを防止できる。本実施の形態では、径12mmの芯金に弾性を有するシリコーンゴムからなる弾性層を設けて外径20mmのローラを得、さらに弾性層の表面に親水性処理を施したPTFEからなる厚さ10μmの親水性層を設けたローラが、接触塗布手段49として用いられる。また本実施の形態では、塗布ローラ54は、0.5N/cmの圧力で中間転写ベルト21に圧接される。さらに塗布ローラ54は、中間転写ベルト21の回転速度に対して2%遅い速度で回転する。
【0062】
規制ローラ55は、定着液溜53の中間転写ベルト21を臨む開口部において、塗布ローラ54表面に圧接しかつ図示しない駆動手段により矢符55aの方向に回転駆動可能に設けられ、塗布ローラ54の表面に付着する定着液32を適量に規制するローラ状部材である。なお、塗布ローラ54と規制ローラ55とは、たとえば、単一のギア列により駆動され、一定の周速比で回転する。規制ローラ55には、たとえば、金属製ローラが用いられる。本実施の形態では、外径12mmのステンレス鋼製ローラである。また本実施の形態では、規制ローラ55は、塗布ローラ54の周速度に対して1/2の周速度で、塗布ローラ54との圧接部で表面が逆方向に移動する方向、すなわち矢符55aの方向に回転する除去ブレード56は、一端が定着液溜53に支持されかつ他端が規制ローラ55の表面に圧接するように設けられ、規制ローラ55表面の定着液32を除去する板状部材である。除去ブレード56には、厚さ40μmのステンレス鋼製の板が用いられる。
【0063】
定着液塗布手段51によれば、まず、塗布ローラ54が定着液溜53の定着液32中を回転することにより、塗布ローラ54の表面に定着液32が付着する。この定着液32は、規制ローラ55によりほぼ一定の厚さを有する薄層に規制される。この定着液層が、塗布ローラ54と中間転写ベルト21との圧接部において、中間転写ベルト21のトナー担持面21a上に移行する。このとき、塗布ローラ54上の定着液32のほぼ1/2がトナー担持面21aの表面に移行する。中間転写ベルト21上のトナー像は後述するように加熱され、トナー16同士の結着力が高まった状態にある。したがって、定着液32を接触塗布されても、トナー像のトナー16が塗布ローラ54に付着することがない。トナー像においては塗布された定着液32によって、トナー16が膨潤・軟化し、その状態を維持したまま転写定着ニップ部に搬送され、記録媒体8上に転写定着される。
【0064】
また、図示しないけれども、定着液塗布手段51を中間転写ベルト21に沿って移動可能に支持する移動手段と、移動制御手段とを設けることができる。移動制御手段の構成は、画像形成装置1における移動制御手段と同様である。また、図示しないけれど、定着液塗布手段51によるトナー像への定着液塗布量を制御する定着液塗布量制御手段を設けることができる。図示しないCPUが定着液塗布量制御手段になる。定着液塗布量制御手段は、画像形成装置1の定着液塗布量制御手段において空気流制御部材38の回転速度に代えて塗布ローラ54の回転速度を制御する以外は、同様の構成で実施可能である。塗布ローラ54表面に担持される定着液量は常にほぼ一定であるので、塗布ローラ54の回転速度をトナー像に応じて変更することによって、トナー像への定着液塗布量を制御できる。塗布ローラ54の回転速度は、定着液塗布手段4における空気流制御部材38の回転速度の制御と同様にして制御できる。さらに、塗布ローラ54の回転速度だけでなく、塗布ローラ54の中間転写ベルト21への当接圧を適宜変更することによっても、定着液塗布量を制御できる。定着液塗布手段51を中間転写ベルト21に沿って移動可能に支持する移動手段を利用して、当接圧の調整が行われる。
【0065】
また、画像形成装置50では、支持ローラ25内部に設けられる加熱手段31がトナー結着力増加手段として機能する。加熱手段31は、中間転写ベルト21の回転駆動方向(
矢符29の方向)における定着液塗布手段51の上流側に設けられている。定着液塗布手段51は中間転写ベルト21上のトナー像に定着液9を接触塗布する構成を有する。したがって、トナー像におけるトナー16同士の結着力が低いと、トナー16が定着液塗布手段51の塗布ローラ54に付着し、トナー像が乱れる可能性がある。したがって、定着液塗布手段51よりも上流側に加熱手段31を配置してトナー像を予備加熱しておけば、トナー16同士の結着力が高まり、塗布ローラ54を接触させてもトナー像が乱れるのを防止できる。
【0066】
図7は、本発明の実施の第3形態である画像形成装置61の構成を概略的に示す断面図である。画像形成装置61は画像形成装置1に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。画像形成装置61は、画像形成装置1における中間転写手段3に代えて中間転写手段3bを備えることを特徴とし、それ以外の構成は画像形成装置1と同様である。中間転写手段3bは、中間転写ベルト21、中間転写ローラ22y,22m,22c,22b、支持ローラ25,26,27およびベルトクリーナ28とともに、第2の加熱手段62を有することを特徴とする。第2の加熱手段62は、中間転写ベルト21の回転駆動方向における支持ローラ25と定着液塗布手段4との間に、中間転写ベルト21のトナー像担持面21aを臨むように設けられる。第2の加熱手段62は、中間転写ベルト21表面のトナー像を加熱する。これによって、定着液塗布手段4からトナー像に定着液32が塗布される際に、トナー像においてトナー16の流動、凝集などが発生し、トナー像に乱れが生じるのをさらに防止できる。第2の加熱手段62には、たとえば、ハロゲンランプが用いられる。
【0067】
図8は、本発明の実施の第4形態である画像形成装置63の構成を概略的に示す断面図である。画像形成装置63は画像形成装置50に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。画像形成装置63は、画像形成装置50における中間転写手段3aおよび転写定着手段5に代えて、それぞれ中間転写手段3cおよび転写定着手段5aを備えることを特徴とし、さらに定着液それ以外の構成は画像形成装置50と同様である。中間転写手段3cは、支持ローラ25の内部に加熱手段が配置されず、かつ中間転写手段3aにおける温度検知手段52が配置されない以外は、中間転写手段3aと同じ構成である。転写定着手段5aは、支持ローラ26と、中間転写ローラ64と、転写定着ローラ30とを含む。中間転写ローラ64は、一方で中間転写ベルト21を介して支持ローラ26と圧接し、他方で転写定着ローラ30と圧接し、図示しない駆動手段によって軸線回りに回転駆動可能に設けられるローラ状部材であり、その内部には加熱手段31が配置される。また、定着液塗布手段51はその塗布ローラ54が中間転写ローラ64表面に圧接するように設けられる。転写定着手段5aによれば、中間転写ベルト21のトナー像担持面21aに担持されて支持ローラ26と中間転写ローラ64との圧接部に搬送されるトナー像は、加圧または加圧と電圧の印加とを受けて中間転写ローラ64表面に転写され、加熱手段31による加熱を受けてトナー16同士の結着力が増強され、その状態で定着液塗布手段51による定着液32の接触塗布を受け、トナー16が軟化・膨潤状態になり、中間転写ローラ64と転写定着ローラ30との圧接部において記録媒体8に転写定着される。
【0068】
図9は、本発明の実施の第5形態である画像形成装置65の構成を概略的に示す断面図である。画像形成装置65は画像形成装置1に類似し、対応する部分については同一の参照符号を付して説明を省略する。画像形成装置65は、画像形成装置1における構成において、さらに定着液塗布手段51を含むことを特徴とする。定着液塗布手段51は、中間転写ベルト21の回転駆動方向(矢符29の方向)における、定着液塗布手段4の下流側であってかつ転写定着ニップ部の上流側の位置に、塗布ローラ54が中間転写ベルト21のトナー像担持面21aに圧接するように設けられる。画像形成装置65によれば、中間転写ベルト21に担持されるトナー像は、支持ローラ25に内蔵される加熱手段31によって予備加熱された後、定着液塗布手段4による定着液32の非接触塗布を受け、その中に含まれるトナー16が軟化・膨潤を開始してトナー16同士の結着力が高められた状態で、定着液塗布手段51による定着液32の接触塗布を受け、トナー16が充分に軟化・膨潤し、この状態で転写定着ニップ部に搬送されて記録媒体8に転写定着される。加熱手段31による予備加熱は、主に、定着液塗布手段4による定着液32の塗布の際に、トナー16の流動、凝集などが発生するのを防止するために行われる。定着液塗布手段4による定着液32の塗布は、主に、トナー16同士の結着力を高め、定着液塗布手段51による定着液32の塗布の際にトナーが塗布ローラ54に付着してトナー像が乱れるのを防止するために行う。したがって、定着液塗布手段4による定着液32の塗布量は、画像形成装置1における塗布量よりも少なくすることができる。定着液塗布手段51による定着液32の塗布は、主に、トナー像を構成するトナー16を転写定着に適する程度まで充分に軟化・膨潤させるために行う。
【0069】
本明細書において、粘着力A(中間転写ベルト21とトナーとの粘着力)および粘着力B(記録媒体8とトナーとの粘着力)は、JIS Z 0237の「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準じ、試験板に対する180度引き剥がし法(25mm幅、測定条件:23±2℃、50±5%RH)による粘着力として求めた。ここで試験板とは、中間転写ベルト21および記録媒体8である。具体的な測定方法については、図面を参照しつつ説明する。
【0070】
(実験例1)
[粘着力Aの測定]
粘着力Aは、図10に示す粘着力測定装置70を用いて測定した。図10は、粘着力Aを測定する粘着力測定装置70の構成の概略を示す部分断面図である。粘着力測定装置70は、圧接ローラ71,72と、定着液接触塗布手段73と、搬送ベルト76と、支持ローラ84,85と、図示しない第1の記録媒体載置手段とを含む。圧接ローラ71は、図示しない駆動手段によって回転駆動可能に設けられ、プロセススピード117mm/secで回転する。圧接ローラ72は、圧接ローラ71に面圧約29.42Pa(3kg/cm)で圧接して圧接ローラ71とともに加圧ニップ部を形成するように設けられ、圧接ローラ71の回転駆動に従動により回転駆動する。定着液接触塗布手段73はスポンジローラに定着液32を含浸させたものであり、トナー像に対する定着液塗布量は0.3mg/cmとした。これは3層トナー像の定着に塗布する量である。
【0071】
搬送ベルト76には、表面にトナー像74を形成してなる半導電性ベルト片(本発明の画像形成装置における中間転写ベルト21と同じ材質、幅:50mm、長さ:150mm)75が貼り付けられ、加圧ニップ部へ搬送した。搬送の途中で、搬送ベルト76上のトナー像74には定着液接触塗布手段73によって定着液32を塗布した。トナー像74は、幅25mm、長さ150mmのベタトナー像であり、シアン単層トナー像(トナー付着量0.35mg/cm)と、シアン、マゼンタおよびイエローの3層トナー像(トナー付着量1.05mg/cm)の2種を作成した。半導電性ベルト片75へのトナー像74の形成は、図5に示す画像形成装置50において、中間転写ベルト21のトナー像担持面21aに半導電性ベルト片75を貼り付けて行い、表面にトナー像74を形成された半導電性ベルト片75が加熱手段31を内蔵する支持ローラ25表面を通過した後、定着液塗布手段51の塗布ローラ54と接触するまでの間に画像形成装置50から取り出し、搬送ベルト76に貼着した。
【0072】
第1の記録媒体載置手段には、粘着テープ77(幅25mm、長さ125mm、粘着力20N/25mm)を貼着した記録媒体78を載置した。記録媒体78は、単位面積当りの重量が64g/mである紙を用いた。また、搬送ベルト76における半導電性ベルト片75の貼着位置と、記録媒体78における粘着テープ77の貼着位置は、加圧ニップ部において搬送ベルト76と記録媒体78とが重ね合わされて加圧される際に、導電性ベルト片75と粘着テープ77とが同じ位置になるように決定される。記録媒体78の加圧ニップ部への搬送は、圧接ローラ71,72を回転駆動させて牽引することによって行った。
【0073】
このような構成を有する粘着力測定装置70を用い、加圧ニップ部でベルト片75と記録媒体78とを重ね合わせて加圧し、図11に示すように、粘着テープ77と、定着液32を塗布されて膨潤・軟化したトナー16からなるトナー層79とを貼り合せ、測定用試料80となるようにした。加圧ニップ通過後、搬送ベルト76を停止させ、定着液32の塗布から所定時間(0.1、0.2、0.3、0.5、0.7、1.0、1.5秒)経過後記録媒体78の自由端を180度折り返して、プロセススピード117mm/secで引き剥がした。その際の半導電性ベルト片75からトナー層79を貼り付けた記録媒体78を引き剥がすのに必要な荷重を測定した。図11は、粘着力A測定用試料の構成を概略的に示す断面図である。図12はJIS Z−0237に規定される180度引き剥がし法の概略を示す断面図である。同じ操作を3回繰返し、3回の測定結果の平均値を中間転写ベルト−トナー層間の粘着力Aとした。シアン1層トナー像の結果を図15に、シアン、マゼンタおよびイエローの3層トナー像での結果を図16にそれぞれ示す。
【0074】
[粘着力Bの測定]
図13は、粘着力Bの粘着力の測定を行う粘着力測定装置70の概略を示す部分断面図である。図14は、粘着力B測定用試料83の構成を概略的に示す断面図である。図13に示すように、粘着力測定装置70を用い、半導電性ベルト片75の上に粘着テープ77を貼り付け、粘着テープ77の表面にトナー像74を形成し、かつ記録媒体77の表面には粘着テープ77を貼着しない以外は、粘着力Aの測定用試料の作製と同様にして、図14に示す測定用試料83を作製した。測定用試料83は、搬送ベルト76と、導電性ベルト片75と、粘着テープ77と、定着液32の塗布によって膨潤・軟化したトナー層79と、記録媒体78とがこの順番で積層された積層体になっている。定着液32の塗布から所定時間(0.1、0.2、0.3、0.5、0.7、1.0、1.5秒)経過後、記録媒体78の自由端を180度折り返して、プロセススピード117mm/secで引き剥がした。その際のトナー層79から記録媒体78を引き剥がすのに必要な荷重を測定した。同じ操作を3回繰返し、3回の測定結果の平均値を中間転写ベルト−トナー層間の粘着力Aとした。シアン1層トナー像の結果を図15に、シアン、マゼンタおよびイエローの3層トナー像での結果を図16にそれぞれ示す。図15および図16は、トナー像への定着液塗布後の経過時間と粘着力(粘着力A、粘着力B)との関係を示すグラフである。
【0075】
図15および図17から、画像形成装置50の構成において、単層トナー像(ここではシアン単層トナー像)を形成した場合に、粘着力B>粘着力Aになるポイントは、定着液32を塗布してから0.2〜0.5秒の間、または1.0秒以上経過した時であることがわかる。また、3層トナー像(ここではシアン、マゼンタおよびイエローの3層トナー像)を形成した場合に、粘着力B>粘着力Aになるポイントは、定着液32を塗布してから0.2秒以上経過した時であった。そのときの粘着力Bの値は、5〜15(N/25mm)であった。このように、粘着力B>粘着力Aになるポイントで、膨潤・軟化状態にあるトナー像を転写定着ニップ部に搬送して記録媒体8に転写定着させるには、中間転写ベルト21の回転駆動のプロセス速度に応じて、定着液塗布手段4によるトナー像への定着液塗布位置を適宜選択すればよい。
【0076】
(実験例2)
図1に示す画像形成装置1を用いてトナー像を形成し、定着液塗布量を1.2mg/cmとし、単位面積当りの重量が52g/mである記録媒体を使用する以外は、実験例1と同様にして3層トナー像の粘着力Aおよび粘着力Bを測定した。3層トナー像での結果を図17に示す。図17は、トナー像への定着液塗布後の経過時間と粘着力(粘着力A、粘着力B)との関係を示すグラフである。図17によれば、粘着力Bは常に粘着力Aを上回っている。このことから、画像形成装置1の構成において、定着液塗布量および/または記録媒体8の種類を選択することによって、粘着力B>粘着力Aを実現できることが明らかである。
【0077】
(実験例3)
定着液塗布量を0.16mg/cmとする以外は実験例1と同様にして単層トナー像および3層トナー像の粘着力Aおよび粘着力Bを測定した。単層トナー像での結果を図18、3層トナー像での結果を図19に示す。図18および図19は、トナー像への定着液塗布後の経過時間と粘着力(粘着力A、粘着力B)との関係を示すグラフである。なお、本実験例における定着液塗布量は、単層トナー像の定着における最適量である。単層トナー像を形成した場合に、粘着力B>粘着力Aになるポイントは、定着液32の塗布してから0.2秒を経過した後であった。一方、3層トナー像を形成した場合は、粘着力Bが粘着力Aを上回ることがなかった。
【0078】
以上の結果から、定着液塗布手段4または定着液塗布手段51によって定着液32の塗布を受けたトナー像について、転写定着ニップ部において粘着力B>粘着力Aの状態を得るためには、トナー像の層数に応じて定着液塗布量を変更することが必要になる。それは、前述の定着液塗布量制御手段によって実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の第1の実施形態である画像形成装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図2】図1に示す画像形成装置1の要部の構成を拡大して示す断面図である。
【図3】図1に示す画像形成装置1の要部の構成を拡大して示す断面図である。
【図4】定着液塗布手段の構成を概略的に示す正面図である。
【図5】本発明の実施の第2形態である画像形成装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図6】図5に示す画像形成装置の要部の構成を拡大して示す断面図である。
【図7】本発明の実施の第3形態である画像形成装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図8】本発明の実施の第4形態である画像形成装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図9】本発明の実施の第5形態である画像形成装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図10】粘着力Aを測定する粘着力測定装置の概略を示す部分断面図である。
【図11】粘着力A測定用試料の構成を概略的に示す断面図である。
【図12】JIS Z−0237に規定される180度引き剥がし法の概略を示す断面図である。
【図13】粘着力Bを測定する粘着力測定装置の概略を示す部分断面図である。
【図14】粘着力B測定用試料の構成を概略的に示す断面図である。
【図15】トナー像への定着液塗布後の経過時間と粘着力との関係を示すグラフである。
【図16】トナー像への定着液塗布後の経過時間と粘着力との関係を示すグラフである。
【図17】トナー像への定着液塗布後の経過時間と粘着力との関係を示すグラフである。
【図18】トナー像への定着液塗布後の経過時間と粘着力との関係を示すグラフである。
【図19】トナー像への定着液塗布後の経過時間と粘着力との関係を示すグラフである。
【図20】トナー像への定着液塗布後の経過時間と粘着力との関係を示すグラフである。
【0080】
【図21】トナー像への定着液塗布後の経過時間と粘着力との関係を示すグラフである。
【図22】トナー像への定着液塗布後の経過時間と粘着力との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0081】
1,50,52,61,63,65 画像形成装置
2 トナー像形成手段
3,3a,3b,3c 中間転写手段
4,51 定着液塗布手段
5,5a 転写定着手段
6 記録媒体供給手段
7 スキャナ部
8 記録媒体
9 CCDセンサ
10y,10m,10c,10b 作像ユニット
16,16y,16m,16c,16b トナー
21 中間転写ベルト
25,26,27 支持ローラ
30 転写定着ローラ
31 加熱手段
32 定着液
33 定着液槽
38 空気流制御部材
42 記録媒体カセット
44a,44b レジストローラ
52 温度検知手段
53 定着液溜
54 塗布ローラ
64 中間転写ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を形成するトナー像形成手段と、
トナー像形成手段により形成されるトナー像を表面に担持して回転駆動するトナー像担持体を含むトナー像担持手段と、
トナー像担持体上のトナー像を記録媒体上に転写する転写手段と、
トナー像担持体上のトナー像にトナーを軟化させる作用を有する定着液を塗布する定着液塗布手段とを含み、
トナー像担持体上で定着液を塗布されたトナー像を記録媒体に転写するに際し、トナーとトナー像担持体との粘着力A(N/25mm)が、トナーと記録媒体との粘着力B(N/25mm)よりも小さくなるように、定着液塗布手段と転写手段とが配置されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
定着液塗布手段をトナー像担持体に沿って移動可能に支持する移動手段と、
移動手段による定着液塗布手段の移動位置を制御する移動制御手段とをさらに含むことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
トナー像担持体の回転駆動方向における転写手段よりも上流側に、トナー像担持体上のトナー像を加熱する加熱手段および/またはトナー像担持体上のトナー像を加圧する加圧手段をさらに含むことを特徴とする請求項1または2記載の画像形成装置。
【請求項4】
トナー像担持体は、
フッ素樹脂含有層を表面に有する無端ベルト状部材であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項5】
トナー像担持体は、
弾性層を含む無端ベルト状部材であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【請求項6】
定着液塗布手段によるトナー像への定着液塗布量を制御する定着液塗布量制御手段をさらに含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2007−304356(P2007−304356A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−133112(P2006−133112)
【出願日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】