説明

画像形成装置

【課題】 スペース効率を高めるため加熱定着装置と排出部の間が短い経路であっても、カールが少なく積載性が優れ、装置品位のよい小型で低コストな画像形成装置を提供することである。
【解決手段】 発熱部を有する加熱体と、この加熱体と加熱ニップ部を形成する加圧ローラとを有し、未定着画像を保持したシートを前記加熱ニップ部に通過搬送させ、前記シート上の未定着画像を永久画像として定着させる加熱定着部と、この加熱定着部の略上方に位置し装置本体を覆う外装部材とを有する画像形成装置において、
加熱定着部の上方に位置し開口部を有する外装部材と、その開口部を覆う可動外装部材を有し、可動外装部材が開閉可能で、加熱体が加熱時には開動作を行い、非加熱時には閉動作を行うことを特徴とする画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒータを有する加熱体と、加熱体と加熱ニップ部を形成する加圧ローラとを有し、未定着画像を保持したシートを前記加熱ニップ部に通過搬送させ、前記シート上の未定着画像を永久画像として定着させる加熱定着部と、この加熱定着部の略上方に位置し装置本体を覆う外装部材とを有する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年益々、画像形成装置に対し、小型低コストの要望が高まってきている。画像形成装置本体内のスペース効率を高め小型化を図ると同時に部品点数を減らしコストを削減した画像形成装置が考案されてきている。
【0003】
従来、小型低コストの画像形成装置において、スペース効率を高めるため加熱定着装置をシート排出部の近傍に配置し、排出部までのローラ対をなくし、搬送ガイドを小型化して、低コスト化を実施してきた。
【0004】
結果として、外装部材と内部機構部品との距離は小さくなり、加熱定着装置の熱は外部へ放出され難くなり、機内は温度上昇しやすくなってきている。
【0005】
シート上に形成した未定着画像を定着する方法としては、近年では省エネルギーの観点から、熱伝導効率が高く、温度の立ち上がりも速いフィルム加熱方式の加熱定着装置が広く用いられている。
【0006】
このフィルム加熱方式の加熱定着装置は、ヒータに耐熱性のフィルム(フィルム)を加圧ローラで圧接密着させて摺動搬送させ、フィルムを挟んでヒータと加圧ローラとで形成される圧接ニップ部に未定着画像を担持したシートを導入してフィルムと一緒に搬送させることでフィルムを介して付与されるヒータからの熱と圧接ニップ部の加圧力によって未定着画像をシート上に永久画像として定着させる。
【0007】
このようなフィルム加熱方式の加熱手段は、たとえば、複写機、レーザービームプリンタ、ファクシミリ、マイクロフィルムリーダプリンタ、画像表示(ディスプレイ)装置、記録機等の画像形成装置において、電子写真、静電記録、磁気記録等の適宜の画像形成プロセス手段により加熱溶融性の樹脂等よりなるトナーを用いてシート(転写材シート、エレクトロファックスシート、静電記録シート、印刷紙など)の面に間接(転写)方式もしくは直接方式で形成した目的の画像情報に対応した未定着のトナー画像を永久個着画像として加熱定着処理する画像定着装置に用いられている。
【0008】
低熱容量で昇温の速い加熱体としては、耐熱性、絶縁性、良熱伝導性のセラッミク材基板と該基板に印刷、焼成等の手段で形成具備させた通電発熱部としての発熱抵抗部を基本構成体とし、発熱抵抗部に電力を供給して発熱させる、全体に低熱容量で昇温の速いセラミックヒータが用いられている。
【0009】
このフィルム加熱方式の加熱定着装置の構成としては、フィルムを回転可能にガイドする支持部材にルーズに勘合させ、加圧ローラを駆動することでフィルムを加圧ローラに対し従動回転させる方式(加圧ローラ駆動方式)が、フィルムのテンション管理や片寄り制御をしなくて済み、小型化、低コスト化が可能なため、採用されることが多い。
【0010】
図4は加圧ローラ駆動方式のフィルム加熱定着装置を用いた加熱定着部と該加熱定着部の下流直後にシート排出部を配置した画像形成装置の部分概略構成図である。
【0011】
以下に図4を参照して、この加圧ローラ駆動方式のフィルム加熱定着装置について概要を説明する。本例加熱手段は特開平4ー44075〜44083、2049080〜2049084号公報等に開示の、耐熱フィルムとして円筒状フィルムを使用し、該フィルムを加圧手段としての加圧ローラで回転駆動する、加圧ローラ駆動方式、テンションフリータイプ(フィルムに張力を与えないでフィルムを駆動させるもの)の装置である。
【0012】
14は図面に垂直方向を長手とする横長の細板状の発熱体(以下、ヒータと記す)である。
【0013】
10は横断面略半円形の横長樋型のフィルムガイド兼用ヒータ支持体であり、このヒータ支持体10の下面中央部に支持体長手に沿ってヒータ14を耐熱性接着剤等で固定支持させてある。ヒータ支持体10は横断面略半円形の外形でフィルム10の内周をルーズに外嵌させてある。
【0014】
90は円筒状(エンドレスベルト状)、薄膜の耐熱性フィルム(以下定着フィルムまたはフィルムと記す)であり、ヒータ14を支持させたヒータ支持体10にルーズに外嵌させてある。
【0015】
15はヒータ支持体10の両端部にそれぞれ配設したフィルム端部を受け止めてフィルム90の寄り移動を規制するフランジ部材である。
【0016】
8は加圧手段でフランジ部材15を付勢することによりヒータ支持体10を付勢している。
【0017】
11は加圧部材としての弾性加圧ローラであり、ヒータ支持体10のヒータ14の下面とフィルム90を挟ませてローラ弾性に抗して所定の当接圧をもって互いに圧接させることで所要幅の加熱部としての加熱ニップ部Nを形成させてある。
【0018】
加熱ニップ部Nは、画像形成装置上部に位置し、略鉛直方向を向いている。
【0019】
加圧ローラ11は不図示の駆動手段により矢示の反時計方向に回転駆動される。この加圧ローラ11の回転によるローラ11の外面とフィルム90の外面との加熱ニップ部Nにおける圧接摩擦力でフィルム90に回転力が作用して、フィルム90が、その内面がヒータ14の下面に接触摺動しつつ、ヒータ支持体10の外周を矢示の時計方向に従動回転する。ヒータ支持体10はこの回転するフィルム90のガイドを兼ねる。
【0020】
ヒータ14としては一般に、セラミック基板と、基板面に印刷、焼成して具備させた発熱抵抗体を基本構成体とする低熱容量のセラミックヒータが用いられている。
【0021】
加圧ローラ11の回転によりフィルム90が回転され、またヒータ14が通電により発熱して所定の温度に温調されている状態において、加熱ニップ部Nのフィルム90と加圧ローラ11との間に、未定着トナー画像Tを形成担持させた被加熱材としてのシートPのトナー画像面が導入ガイド部材80を通じてフィルム90側にして導入し、フィルム90と一緒に加熱ニップ部Nを移動させることで、加熱ニップ部NにおいてシートPがフィルム90を介してヒータ14で加熱されて未定着トナー画像Tの軟化、溶融定着がなされる。加熱ニップ部Nを通ったシートPはフィルム90面から分離されて搬送される。
【0022】
60は定着後のシートを積載する排紙トレイである。
【0023】
加熱後のシートPは搬送ガイド40を通じて、排出ローラ41と排出コロ51とで形成される排出搬送ニップにて挟持搬送し、排紙トレイ60へ排出される。
【0024】
30はフランジ部材15、加圧ローラ11、保持部材50、搬送ガイド40が配設されるフレームである。
【0025】
100は加熱定着装置の上方に配置された上部外装部材である。上部外装部材100には開口穴100aが形成されていて、自然対流により放出するために熱源である加熱ニップ部Nの略上方に位置する。近年小型化した画像形成装置では、コストを抑える為に、ファンモータ装置による強制冷却を行わずに自然対流による冷却をしている例が多くなっている。
【0026】
紙に含まれている水分は、溶融定着の際に、水蒸気となって放出される。
【0027】
加熱ニップ部Nを紙が通過した際、トナー画像T側表面の水分は瞬間的に蒸発する。
【0028】
加熱ニップ部Nを紙が通過した後、残っている紙の水分と熱は、紙の裏面より放出され、搬送ガイド40の排気孔40aを通り、上部に位置する上部外装100の排気孔100aを通り、機外に放出される。
【0029】
ここで、定着後排紙された紙が丸まってしまうカールという現象について説明する。
【0030】
この用紙カールには、定着ニップで加熱された紙が冷却されるまでの間に、ニップ形状およびニップ通過後に搬送・支持される紙パスの形状によってつけられる搬送方向につくカールと、定着ニップで加熱された紙が水分を失い、紙の繊維が収縮することで発生する紙の繊維に直交する方向のカールがある。前者の搬送方向につくカールについては、温度変化による影響が少ない為、排出部にカールを補正する為のコロを追加することなどにより除去することが可能である。しかしながら、後者の紙の繊維に直交する方向のカールについては、機内の温度変化とともに紙の温度が変わるので、本体を起動してから機内の温度が上昇してくると、排紙時の水分量が変わり、カール量が変化する。
【0031】
特に紙への加熱部(ここでは加熱ニップ部N)から排紙部までの搬送経路の短い小型製品においては、搬送路での紙の水分量のコントロールが難しく、高温の紙が排紙トレイ上に排出されてしまうと、排紙トレイ上で乾燥し、カールが発生してしまう。そのため加熱部通過後の搬送路で紙の水分量をコントロールしつつ温度を下げて置かないといけない。
【特許文献1】特開平4−44075号公報
【特許文献2】特開平4−44076号公報
【特許文献3】特開平4−44077号公報
【特許文献4】特開平4−44078号公報
【特許文献5】特開平4−44079号公報
【特許文献6】特開平4−44080号公報
【特許文献7】特開平4−44081号公報
【特許文献8】特開平4−44082号公報
【特許文献9】特開平4−44083号公報
【特許文献10】特開平4−204980号公報
【特許文献11】特開平4−204981号公報
【特許文献12】特開平4−204982号公報
【特許文献13】特開平4−204983号公報
【特許文献14】特開平4−204984号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
近年益々、小型低コストの画像形成装置において、スペース効率を高めるため加熱定着装置やシート排出部を外装の近傍に設置し、排出部までのローラ対をなくし、加熱定着装置と排紙部の間を搬送ガイドだけでつなぐことで、装置全体を小型化して、低コスト化を実施してきた。
【0033】
上記従来例においては、図4に示す様に、機内の温度にかかわらず、一定の開口量であるために、機内の温度上昇に応じて排出される紙のカール量が変化する。
【0034】
そのため、排紙部に排出した紙が積載されていったときに、紙の整列性が悪い、ときには、あとから排出されてきた紙が以前に排出されている紙を押し出してしまうなどの問題が発生する。
【0035】
紙の繊維に直交する方向のカールについては、排紙搬送中で紙の温度が下がる過程での紙の乾燥の仕方を均一した方が良いので、搬送路の長さはある程度長いほうがカールをコントロールしやすいのだが、現在では小型化により定着ニップ部と排紙部の長さは短くなっている。この短い搬送路で、紙の乾燥の仕方を均一にする為には、機内の内部温度上昇にともなって可変して排熱することが必要である。
【0036】
本発明の目的は、スペース効率を高めるため加熱定着装置と排出部の間が短い経路であっても、カールが少なく積載性が優れ、装置品位のよい小型で低コストな画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0037】
上記目的を達成する為に本発明にあっては、
(1) ヒータを有する加熱体と、加熱体と加熱ニップ部を形成する加圧ローラとを有し、未定着画像を保持したシートを前記加熱ニップ部に通過搬送させ、前記シート上の未定着画像を永久画像として定着させる加熱定着部と、この加熱定着部の略上方に位置し装置本体を覆う外装部材とを有する画像形成装置において、
加熱定着部の上方に位置する外装部材に可動外装部材を有し、可動外装部材が開閉可能で、装置稼動時には全閉状態から全開状態まで機内の温度上昇変化量に伴い開動作を行い、装置停止時には自然冷却により閉動作を行うことを特徴とする。
【0038】
したがって、機内の内部温度上昇にともなって可変して排熱することができ、小型本体などの定着ニップ部と排紙部の長さが短い搬送路であっても、排紙搬送中で紙の温度が下がる過程での紙の乾燥の仕方を均一にすることができ、カール量を少なくかつ一定にすることができ、排紙整列性が良くなる。装置の断面面積は変わらず、小型化を維持しながら実施できた。
【0039】
(2) 可動外装部材を開閉動作を行う手段として、バイメタルなど温度変化により可逆的に形状が変わる材料を使用したヒンジ部材を有することを特徴とする。
【0040】
したがって、特別な制御装置を要せず機内の内部温度上昇にともなって可変して可動外装部材の開閉動作をすることが低コストでできる。
【0041】
(3) 可動外装部材101を可動させる構成として、図示しない温度センサと、図示しない制御装置と、カム部材300を配設したことを特徴とする。
【0042】
したがって、機内の内部温度上昇にともなって可変して排熱することができ、小型本体などの定着ニップ部と排紙部の長さが短い搬送路であっても、排紙搬送中で紙の温度が下がる過程での紙の乾燥の仕方を均一にすることができ、カール量を少なくかつ一定にすることができ、排紙整列性が良くなる。
【0043】
(4) ヒータを有する加熱体と、加熱体と加熱ニップ部を形成する加圧ローラとを有し、未定着画像を保持したシートを前記加熱ニップ部に通過搬送させ、前記シート上の未定着画像を永久画像として定着させる加熱定着部と、この加熱定着部の略上方に位置し装置本体を覆う外装部材とを有する画像形成装置において、
加熱定着部の上方に位置する外装部材に可動外装部材を有し、可動外装部材が開閉可能で、装置の機内温度を検知する温度センサと、検知した温度によりカム部材によって必要量の開動作を行い、装置無稼動時には閉状態となるようなカム形状をしていることを特徴とする。
【0044】
したがって、特別な制御装置を要せず機内の内部温度上昇にともなって可変して可動外装部材の開閉動作をすることができる。
【発明の効果】
【0045】
以上説明したように本発明によれば、スペース効率を高めるため加熱定着装置と排出部の間が短い経路であっても、機内の内部温度上昇にともなって可変して排熱することができ、小型本体などの定着ニップ部と排紙部の長さが短い搬送路であっても、排紙搬送中で紙の温度が下がる過程での紙の乾燥の仕方を均一にすることができ、カール量を少なくかつ一定にすることができ、排紙整列性が良く、装置品位のよい小型で低コストな画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がないかぎりは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0047】
(第1の実施例)
(1)画像形成装置例
図1は小型化した画像形成装置例の概略構成図である。本例の画像形成装置は電子写真プロセス利用のレーザービームプリンタである。
【0048】
1は第一の像担持体としての回転ドラム型電気写真感光体(以下、ドラムと記す)である。このドラム1は回転過程でその表面が一次帯電器2により一様に帯電処理される。
【0049】
次いで、その回転ドラム1の帯電処理面にレーザースキャナー3から出力される、目的の画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調されたレーザービーム1による走査露光がなされることで、回転ドラム1面に目的の画像情報に対応した静電潛像が形成される。
【0050】
次いでその静電潛像が現像器4によりネガトナーTで反転現像(レーザー露光部にトナーが付着)されて顕像化される。
【0051】
一方給紙カセット20内から給紙ローラ21によりシートとしてのシートPが一枚分離給送され、レジストローラ対22を経由してドラム1と転写ローラ5との圧接ニップ部である転写部に所定のタイミングで搬送導入されることで、転写材Pの面に対して回転ドラム1面側のトナー画像が順次転写される。
【0052】
転写部を通過した転写紙Pは回転ドラム1の面から分離され、次の(2)項で説明する加熱装置としての画像定着装置7へ搬送導入されて転写トナー画像の定着処理を受けて、排出手段でプリントとして排紙トレイ60へ排出される。
【0053】
転写紙分離後の回転ドラム1の面はクリーニング器23により転写残りトナー等の付着残留汚染物の除去を受けて清掃されて繰り返して作業に供される。
【0054】
本例のプリンタはドラム1、一次帯電器2、現像器4、クリーニング器23の4つのプロセス機器を一括してプリンタ本体内に着脱、交換自在のプロセスカートリッジ24として構成してある。
【0055】
(2)加熱定着装置7
図2、図3は加熱定着装置7部の拡大模型図である。
【0056】
本例装置7は前述図4の加熱装置と同様にテンションフリータイプのフィルム加熱方式の加熱手段とシート排出手段を有しており、図4の装置と共通する構成部材部分には共通の符号を付して再度の説明を省略する。
【0057】
加熱体としてのヒータ14はセラミックヒータであり、耐熱性、絶縁性、高熱伝導性のアルミナ基板上に、たとえばスクリーン印刷で形成されたTaSiO2、AgPd、TA2N、RuO2、ニクロム等の薄膜発熱抵抗部を有し、フィルム90の内面に対向する面には耐熱ガラス等のオーバーコートが施されている。
【0058】
耐熱性フィルムであるフィルム90は、耐熱性、トナー離型性、強靱性を有する単層フィルム、あるいは所望の表面処理やラミネート処理をした複合層フィルムである。本実施例におけるフィルム90はポリイミド(PI)フィルムであり、耐熱処理した50umのZno単層フィルム、あるいは4フッ化エチレン(PTFE)で離型性付与処理した複合層フィルムである。
【0059】
フランジ部材15は、ヒータ支持体10の両端部にそれぞれ配設したフィルム端部を受け止めてフィルム90の寄り移動を規制している。フランジ部材15のフィルムの回転を規制している長手位置はシート搬送領域の外側に位置している。
【0060】
加熱ニップ部Nはフィルム90を挟んでヒータ14と加圧ローラ11とが所定の加圧力(たとえばA4幅で総圧10〜20kg)をもって圧接状態にある。
【0061】
加熱ニップ部Nは、画像形成装置上部に位置し、略鉛直方向を向いている。
【0062】
加圧ローラ11が不指示の装置本体駆動系から加圧ローラギアへ矢印の反時計方向に回転駆動されることで、円筒状のフィルム90は加圧ローラ11の表面摩擦力で加熱ニップ部Nにおいてその内面がヒータ14の表面(下面)に密着して摺動しながら回転する。
【0063】
フィルム90が回転駆動され、ヒータ14が発熱抵抗部への通電により所定の温度(たとえば150deg以上)に昇温した状態において、加熱ニップ部Nを形成する。
【0064】
被加熱材としての、未定着トナー画像Tを担持したシートPが導入ガイド部材80を通って加熱ニップ部Nに導入される。加熱ニップ部Nにおいて導入されたシートPはヒータ14の熱をフィルム90の外面に密着してフィルム90を介して受ける。その熱によりシートP上のトナー画像Tが軟化溶融して定着する。
【0065】
溶融定着の際に、紙に含まれている水分は、加熱され水蒸気Sとなって放出される。
【0066】
加熱ニップ部Nを紙が通過した際、トナー画像T側表面の水分は瞬間的に蒸発する。
【0067】
加熱ニップ部Nを紙が通過した後、残っている紙の水分と熱は、紙の裏面より放出され、搬送ガイド40の排気孔40aを通り、略上部に位置する上部外装100の排気孔を通り、機外に放出される。
【0068】
小型製品においては、紙への加熱部(ここでは加熱ニップ部N)から排紙部までの搬送経路が短いので、定着後の搬送路での紙の水分量のコントロールが難しく、高温の紙が排紙トレイ上に排出されてしまうと、排紙トレイ上で乾燥し、カールが発生してしまう。カールをおさえるためには加熱部通過後の搬送路で紙の水分量をうまくコントロールしつつ温度を下げて置かないといけない。
【0069】
51は排出ローラ41と排出搬送ニップ部を形成する排出コロである。52は排出コロバネで、排出コロ51を排出ローラ41に所定の圧力で付勢している。
【0070】
40は加熱ニップ部Nと、排出ローラ41と排出コロ51とで形成される排出搬送ニップをつなぐ搬送ガイドで、搬送ガイド形状は屈曲率を大きくし、シートの進行方向を急激に変えている。
【0071】
50はコロ51を保持する保持部材である。
【0072】
60は排出ローラニップを通過後のシートを積載する排紙トレイである。
【0073】
101は可動外装部材で、加熱ニップ部の略上部に配置された上部外装部材100の開口部を塞ぐように配置されている。可動外装部材101は、略上下方向に可動可能である。
【0074】
102はヒンジ部材で、一方を101の可動外装部材に固定し、他の一方を上部外装部材100や、装置本体の他の部分に固定してある。
【0075】
ここでは102のヒンジ部材として、U型をしたバイメタルを使用した例を説明する。
【0076】
バイメタルとは、熱膨張率が異なる2種類の金属の板をお互い剥がれないように貼り合わせたもので、温度が変化すると熱膨張率の小さな金属のほうに曲がる。ここで、102aは熱膨張率の低い金属で102bは熱膨張率の高い金属である。
【0077】
転写ニップからスムースにシートを導入するために、加熱ニップ部Nはシートを略鉛直上方向に搬送させ、排出後のシートの整列性を維持するために、シート排出部は略水平方向に排出させ、加熱定着部とシート排出部との間を、搬送ガイド40の形状は屈曲率を大きくし、シートの進行方向を急激に変え、排紙トレイ60に加熱定着後すぐに排出させる構成で、小型で低コストの画像形成装置を実現している。
【0078】
図2は装置稼動し始めの状態で、シートPが加熱ニップ部Nと排出搬送ニップ部とで搬送しているときの拡大模型図である。
【0079】
図3は装置が稼動状態でしばらく時間が経った状態で、シートPが加熱ニップ部Nと排出搬送ニップ部とで搬送しているときの拡大模型図である。
【0080】
ここでは、ダクトファンなど機内を冷却することを目的とした装置がついていない場合について説明する。そのため、機内の熱や水蒸気は自然対流により上部に上がってくることを前提に説明する。
【0081】
装置を可動させ、連続通紙を続けると40aより水蒸気や熱が自然対流により上がってくることによりヒンジ部材102が暖められると、102の熱膨張率の高い102b側が伸びることにより熱膨張率の低い102a側に引っ張られU型形状の開口部が広がる。
【0082】
したがって、このヒンジ部材に固定されている可動外装部材がU型形状の開口部が広がる方向に可動し、可動外装部材101と上部外装部材100との隙間を作り、温度上昇量に伴ない開口面積が広がっていき、機内の熱の放熱能力も可変して増えていく。
【0083】
そのため、装置が稼動し始めたときの紙のカール量と、稼動状態でしばらく時間が経った状態でのカール量の差を少なくでき、短い搬送経路であっても排紙整列性が良い。
【0084】
ここで、図示しないストッパなどを設けて、可動外装部材が最大に広がった時の開口面積を規制してもよい
ここではヒンジ部材102に、U型をしたバイメタルを例にとり説明したが、張り合わせた2種類の材質が膨張率の異なるプラスチックでも同じ効果を得られる。
【0085】
また、可動外装部材は別部材であるので、色を変えるなどの外装デザインのバリエーションが広がった。
【0086】
また、必要時に上部外装部材を開ける構成なので、ルーバーなどで常に穴を上に向けている構成にくらべて、ごみ、塵埃などの異物が機内に入りにくくなった。
【0087】
以上のことから、スペース効率を高めるため加熱定着装置を外装の近傍にしても、機内の内部温度上昇にともなって可変して排熱することができ、小型本体などの定着ニップ部と排紙部の長さが短い搬送路であっても、排紙搬送中で紙の乾燥の仕方をコントロールしながら紙の温度が下げることができ、カール量を少なくかつ一定にすることができ、排紙整列性が良く、装置品位のよい小型で低コストな画像形成装置を提供することができた。
【0088】
(実施の形態2)
図5は、第2の実施の形態に係る加熱定着装置7部の拡大模型図である。
【0089】
本実施例においては、可動外装部材101を可動させる構成として、図示しない温度センサと、図示しない制御装置と、カム部材300を配設した点が実施例1とは異なっている。
【0090】
図5の符号については、図2、図3の実施例1と同様である。
【0091】
300はカム部材で、可動外装部材101に接続されている。カム300が回転することで、可動外装部材101を上下方に自在に移動させることができる。
【0092】
実施例1でバイメタルなどの形状記憶部材を用いて可動外装部材101を開閉動作させていたのに対し、図示しない温度センサと温度センサにより検知した温度データをもとにカムに動力を伝え制御する制御機構と、適切にカム300を用いてタイミングコントロールできるカム機構によって可動させるため、可動外装部材101を自在に開閉できるのが実施例1と違っている。
【0093】
図5の図5aは装置稼動時にカム300の動作によって、可動外装部品101が下方に移動して、閉じている状態を示した拡大模型図である。
【0094】
カム300が回転することで、可動外装部品101が下方に移動している。可動外装部品101によって上部外装部材100の開口部を塞いでいる。
【0095】
図5の図5bは装置停止時にカム300の動作によって、可動外装部品101が上方に移動して、開いている状態を示した拡大模型図である。
【0096】
カム300が回転することで、可動外装部品101が上方に移動している。可動外装部品101が上に動くことによって上部外装部材100の開口部が開放している。
【0097】
したがって、可動外装部材101によって装置停止時には可動外装部材101は開いて、稼動時に生じた内部の熱や水蒸気を機外に排出できるので、装置の故障等は起こらない。
【0098】
したがって、可動外装部材101によって装置稼動時には可動外装部材101は閉じていて、内部機構部品の稼動音及び、シートPの搬送よって起こる衝突音や摺擦音による騒音は外に漏れることはない。
【0099】
以上のことから、タイミングコントロールできるカム機構によって可動外装部材101を可動させるため、可動外装部材101を自在に開閉できる。このことにより、脱熱や蒸気放出を自在実施可能となり、一度の印字枚数が多い小型な画像形成装置にも適用できた。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】第1の実施の形態である画像形成装置の概略図。
【図2】第1の実施の形態である加熱定着装置部分の拡大模型図。
【図3】第1の実施の形態である加熱定着装置部分の拡大模型図。
【図4】従来の画像形成装置の加熱定着装置部分の拡大模型図。
【図5】第2の実施の形態である加熱定着装置部分の拡大模型図。
【符号の説明】
【0101】
1 感光体ドラム
2 一次帯電器
3 レーザースキャナー
4 現像器
7 加熱定着装置
8 加圧手段
80 入口ガイド部材
90 フィルム(耐熱性フィルム)
10 ヒータ支持体
11 加圧ローラ
14 ヒータ(発熱体)
15 フランジ部材
30 フレーム
40 搬送ガイド
41 排出ローラ
50 保持部材
51 排出コロ
52 排出コロバネ
60 排紙トレイ
100 上部外装部材
101 可動外装部材
102 ヒンジ部材
300 カム部材
400 ハスバギア
N 加熱ニップ部
P シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱部を有する加熱体と、この加熱体と加熱ニップ部を形成する加圧ローラとを有し、未定着画像を保持したシートを前記加熱ニップ部に通過搬送させ、前記シート上の未定着画像を永久画像として定着させる加熱定着部と、この加熱定着部の略上方に位置し装置本体を覆う外装部材とを有する画像形成装置において、
加熱定着部の上方に位置し開口部を有する外装部材と、その開口部を覆う可動外装部材を有し、可動外装部材が開閉可能で、加熱体が加熱時には開動作を行い、非加熱時には閉動作を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
可動外装部材を開閉動作させる手段として、温度変化により可逆的に形状が変わる材料を使用したヒンジ部材を有することを特徴とする請求項1の画像形成装置。
【請求項3】
可動外装部材を可動させる構成として、温度センサと、制御装置と、カム部材を配設したことを特徴とする請求項1の画像形成装置。
【請求項4】
発熱部を有する加熱体と、この加熱体と加熱ニップ部を形成する加圧ローラとを有し、未定着画像を保持したシートを前記加熱ニップ部に通過搬送させ、前記シート上の未定着画像を永久画像として定着させる加熱定着部と、この加熱定着部の略上方に位置し装置本体を覆う外装部材とを有する画像形成装置において、
加熱定着部の上方に位置し開口部を有する外装部材と、その開口部を覆う外装部材を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−145521(P2008−145521A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−329612(P2006−329612)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】