説明

画像形成装置

【課題】駆動ローラの回転量を検知するエンコーダと実際の搬送ベルトによって搬送される用紙の移動量との間には部品精度の積み上げ誤差、駆動ローラの偏心、振れ、搬送ベルトの厚みの変動が介在して用紙の送り量が変化する。
【解決手段】送り補正量演算部412は、搬送ローラ32の偏心及び搬送ベルト31の厚み変動を検出する変位変動検出器241からの検出信号に基づいて、搬送ローラ32の偏心及び搬送ベルト31の厚み変動に応じた搬送ベルト31の移動量の補正量を演算し、この補正量を速度・位置プロファイル格納部406に与えることで速度・位置プロファイルが補正されて比較演算部405に与えられ、目標移動量が補正される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、特に搬送ベルトを用いて媒体を搬送する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プリンタ、ファックス、コピア、プロッタ、或いはこれらの内の複数の機能を複合した画像形成装置としては、例えば、記録液(液体)の液滴を吐出する液体吐出ヘッドで構成した記録ヘッドを含む液体吐出装置を用いて、媒体(以下、「用紙」ともいうが材質を限定するものではなく、また、被記録媒体、記録媒体、転写材、記録紙、シート材なども同義で使用する。)を搬送しながら、液体としての記録液(以下、インクともいう。)を用紙に付着させて画像形成(記録、印刷、印写、印字も同義語で用いる。)を行なうものがある。
【0003】
ここで、「画像形成装置」とは、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置、電子写真方式その他の方式によって媒体に画像を形成する装置を意味する。また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与することをも意味する。また、「液体」とは、記録液、インクに限るものではなく、吐出されるときに流体となるものであれば特に限定されるものではない。
【0004】
このよう液体吐出方式の画像形成装置において、用紙を高い平面性で搬送するために、搬送ベルトに用紙を静電吸着して搬送するものが知られているが、最近では、インクの耐光性、経時劣化性の改善を改善するために染料系から顔料系に変わり、しかも、粘度の高粘度化が進んでいる結果、インクの高粘度化により記録紙への滲みが激減するものの、逆に、インク滴の着弾位置ズレが生じた場合、白スジ、黒スジ、バンディングなどが目立ち易くなり、特に、用紙送りの停止位置精度を高めなければならなくなっている。
【0005】
従来、特許文献1に記載されているように、駆動伝達回転体を介して制御対象回転体に伝達される回転駆動力を発生する回転駆動源の回転軸の回転角変位又は回転角速度を検出し、該検出結果に基づいて該回転駆動源を制御することにより、該制御対象回転体の回転を制御する回転駆動制御方法であって、駆動条件が互いに異なる2種類以上の制御パターンで該回転駆動源を制御し、各制御パターンによる制御時に、該制御対象回転体が既定回転角を回転するときの回転時間を計測し、各回転時間の計測結果に基づいて該制御対象回転体の1回転周期の回転速度変動の振幅及び位相を求め、該回転速度変動の振幅及び位相に基づいて該回転駆動源を制御することが知られている。
【特許文献1】特開2005−094987号公報
【0006】
また、特許文献2に記載されているように、無端状のベルトが掛け渡された複数の支持回転体のうち回転駆動力が伝達される駆動支持回転体の回転を制御することにより、該ベルトの駆動を制御するベルト駆動制御方法であって、上記複数の支持回転体のうち上記回転駆動力の伝達に寄与しない従動支持回転体の回転角変位又は回転角速度を検出し、該従動支持回転体の回転角変位又は回転角速度の検出結果から、上記ベルトの周方向の周期的な厚さ変動に対応した周波数を有する該回転角変位又は該回転角速度の交流成分を抽出し、該交流成分の振幅及び位相に基づいて、上記駆動支持回転体の回転を制御するものが知られている。
【特許文献2】特許第3677606号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、液体吐出方式の画像形成装置において、搬送ベルトを用いる場合、駆動ローラと従動ローラとの間に搬送バルトを掛け回し、駆動ローラに設けたエンコーダの出力信号に応じて搬送ベルトの停止位置制御を行っている。
【0008】
この場合、駆動ローラの回転量を検知するエンコーダと実際の搬送ベルトによって搬送される用紙の移動量との間には、駆動ローラや搬送ベルトの部品精度の積み上げ誤差、駆動ローラの偏心、振れ、温度などによる駆動ローラの径の変動、温度などによる搬送ベルトの厚みの変動が介在するために、所定の制御量で駆動ローラを駆動制御しても用紙の送り量が変化することがある。
【0009】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、搬送ベルトの送り精度を高めた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、少なくとも駆動ローラと従動ローラとの間に掛け回され、画像が形成される媒体を搬送する搬送ベルトと、駆動ローラの偏心及び搬送ベルトの厚みの変動を検出する検出手段と、この検出手段の検出結果に基づいて駆動ローラの回転を制御する制御手段とを備えている構成とした。
【0011】
ここで、検出手段は駆動ローラに対向する位置で検出を行う構成とできる。また、検出手段は搬送ベルトの幅方向に複数配置されている構成とできる。また、駆動ローラにはエンコーダホイールが設けられ、このエンコーダホイールには1周の基準となるマークが設けられている構成とできる。また、搬送ベルトには1周の基準となるマークが設けられている構成とできる。また、搬送ベルトの周長と駆動ローラの周長の比が整数である構成とできる。
【0012】
また、検出手段は従動ローラの回転に基づいて駆動ローラの偏心及び搬送ベルトの厚みの変動を検出する構成とできる。この場合、検出手段は従動ローラの回転に応じて1周で整数個出力されるパルスをカウントして駆動ローラの偏心及び搬送ベルトの厚みの変動を検出する構成とできる。また、検出手段は従動ローラの回転に応じて出力されるパルスを基準として駆動ローラに設けられたロータリエンコーダからの出力をカウントして駆動ローラの偏心及び搬送ベルトの厚みの変動を検出する構成とできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る画像形成装置によれば、少なくとも駆動ローラと従動ローラとの間に掛け回された搬送ベルトと、駆動ローラの偏心及び搬送ベルトの厚みの変動を検出する検出手段と、この検出手段の検出結果に基づいて駆動ローラの回転を制御する制御手段とを備えている構成としたので、駆動ローラの偏心や搬送ベルトの厚み変動による媒体送り量の変動を低減することができて、高精度に媒体を送ることができ、高画質画像を形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。本発明に係る画像形成装置の一例の概要について図1ないし図4を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置の全体構成を示す概略構成図、図2は同装置の画像形成部及び副走査搬送部の平面説明図、図3は同じく側面説明図、図4は同じく搬送ベルトの平面説明図である。
【0015】
この画像形成装置は、装置本体1の内部(筺体内)に、用紙を搬送しながら画像を形成するための画像形成部(手段)2及び用紙を搬送するための副走査搬送部(手段)3等を有し、装置本体1の底部に設けた給紙カセットを含む給紙部(手段)4から用紙5を1枚ずつ給紙して、副走査搬送部3によって用紙5を画像形成部2に対向する位置で搬送しながら、画像形成部2によって用紙5に液滴を吐出して所要の画像を形成(記録)した後、片面印刷の場合には排紙搬送部(手段)7を通じて装置本体1の上面に形成した排紙トレイ8上に用紙5を排紙する。
【0016】
また、この画像形成装置は、画像形成部2で形成する画像データ(印刷データ)の入力系として、装置本体1の上部で排紙トレイ8の上方には画像を読み取るための画像読取部(スキャナ部)11を備えている。この画像読取部11は、照明光源13とミラー14とを含む走査光学系15と、ミラー16、17を含む走査光学系18とが移動して、コンタクトガラス12上に載置された原稿の画像の読み取りを行い、走査された原稿画像がレンズ19の後方に配置した画像読み取り素子20で画像信号として読み込まれ、読み込まれた画像信号はデジタル化され画像処理され、画像処理した印刷データを印刷することができる。
【0017】
ここで、この画像形成装置の画像形成部2は、図2にも示すように、ガイドロッド21及び図示しないガイドレールでキャリッジ23を片持ちで主走査方向に移動可能に保持し、主走査モータ27で駆動プーリ28Aと従動プーリ28B間に架け渡したタイミングベルト29を介して主走査方向に移動走査する。
【0018】
そして、このキャリッジ23上に、それぞれの色の液滴を吐出する液滴吐出ヘッドからなる記録ヘッド24を搭載し、キャリッジ23を主走査方向に移動させ、副走査搬送部3によって用紙5を用紙搬送方向(副走査方向)に送りながら記録ヘッド24から液滴を吐出させて画像形成を行なうシャトル型としている。なお、ライン型ヘッドを用いることもできる。
【0019】
記録ヘッド24は、それぞれブラック(K)インクを吐出する2個の液滴吐出ヘッド24k1、24k2と、シアン(C)インク、マゼンタ(M)インク、イエロー(Y)インクを吐出するそれぞれ1個の液滴吐出ヘッド24c、24m、24yの計5個の液滴吐出ヘッド(以下、色を区別しないときは「記録ヘッド24」という。)で構成され、キャリッジ23に搭載した各サブタンク25からそれぞれ各色のインクが供給される。
【0020】
一方、図1に示すように、装置本体1の前面からカートリッジ装着部に、ブラック(Bk)インク、シアン(C)インク、マゼンタ(M)インク、イエロー(Y)インクをそれぞれ収容した記録液カートリッジである各色のインクカートリッジ26を着脱自在に装着でき、各色のインクカートリッジ26から各色のサブタンク25にインクを供給する。なお、ブラックインクは1つのインクカートリッジ26から2つのサブタンク25に供給する構成としている。
【0021】
なお、記録ヘッド24としては、インク流路内(圧力発生室)のインクを加圧する圧力発生手段(アクチュエータ手段)として圧電素子を用いてインク流路の壁面を形成する振動板を変形させてインク流路内容積を変化させてインク滴を吐出させるいわゆるピエゾ型のもの、或いは、発熱抵抗体を用いてインク流路内でインクを加熱して気泡を発生させることによる圧力でインク滴を吐出させるいわゆるサーマル型のもの、インク流路の壁面を形成する振動板と電極とを対向配置し、振動板と電極との間に発生させる静電力によって振動板を変形させることで、インク流路内容積を変化させてインク滴を吐出させる静電型のものなどを用いることができる。
【0022】
また、キャリッジ23の走査方向一方側の非印字領域には、図2に示すように、記録ヘッド24のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復装置121を配置している。この維持回復装置121は、5個の記録ヘッド24の各ノズル面をキャピングするための吸引用及び保湿用を兼ねたキャップ122aと、保湿用キャップ122122b〜122eと、記録ヘッド24のノズル面をワイピングするためのワイパーブレード124と、記録(画像形成)に寄与しない液滴の吐出(空吐出)を行なうための空吐出受け部材125などを備えている。
【0023】
さらに、キャリッジ23の走査方向他方側の非印字領域には、図2に示すように、5個の記録ヘッド24から記録(画像形成)に寄与しない液滴の吐出(空吐出)を行なうための空吐出受け部材126を備えている。この空吐出受け部材126には、記録ヘッド24に対応して5個の開口127a〜127e(区別しないときは「開口127」という。)を形成している。
【0024】
副走査搬送部3は、図3にも示すように、下方から給紙された用紙5を略90度搬送方向を転換させて画像形成部2に対向させて搬送するための、駆動ローラである搬送ローラ32とテンションローラである従動ローラ33間に架け渡した無端状の搬送ベルト31と、この搬送ベルト31の表面を帯電させるためにACバイアス供給部から交番電圧である高電圧が印加される帯電手段である帯電ローラ34と、搬送ベルト31を画像形成部2の対向する領域でガイドするプラテンガイド部材35と、用紙5を搬送ローラ32に対向する位置で搬送ベルト31に押し付ける2個の押さえコロ(加圧コロ)36と、画像形成部2によって画像が形成された用紙5の上面側を押えるガイド板37と、画像が形成された用紙5を搬送ベルト31から分離するための分離爪38、搬送ベルト31を搬送ローラ32側に押し付ける加圧コロ39などとを備えている。
【0025】
この副走査搬送部3の搬送ベルト31は、DCブラシレスモータを用いた副走査モータ131によって、タイミングベルト132及びタイミングローラ133を介して搬送ローラ32が回転されることで、図2の用紙搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。
【0026】
また、従動ローラ33と帯電ローラ34との間に、搬送ベルト31の表面に付着した紙粉等を除去するための図示しないクリーニング手段(ここではマイラを用いている。)と、搬送ベルト31表面の電荷を除去するための除電ブラシ136とを備えている。
【0027】
さらに、搬送ローラ32の軸32aには高分解能のエンコーダホイール(コードホール)137を取り付け、このエンコーダホイール137に形成したスリット137aを検出する透過型フォトセンサからなるエンコーダセンサ138を設けて、これらのエンコーダホイール137とエンコーダセンサ138によってロータリエンコーダを構成している。
【0028】
そして、ガイド部材35は、搬送ベルト31に接触する側をメッシュ構造にして、その中に、搬送ローラ32の温度を検出するサーミスタなどからなる温度センサ(検出手段)234を配置している。具体的には、これらの搬送モータ、従動モータ、搬送ベルト31、ガイド部材35などは搬送ベルトユニット100としてユニット化し、この搬送ベルトユニット100内に搬送ローラ32の温度を検出する温度センサ234を配置する。なお、温度センサ234としては接触型温度センサを用いることもできる。
【0029】
ここで、搬送ローラ32の構成について図5及び図6をも参照して説明する。なお、図5は同搬送ローラ32の断面説明図、図6は同搬送ローラの側面説明図である。
この搬送ローラ32は、アルミ中空管である三ツ矢管32Aの外周面にゴム層32Bをコーティングで形成したものである。そして、搬送ローラ32の両側の軸32a(長い側を32a1で、短い側を23a2としている。)は、搬送ローラ32とは異なる材料、例えば、SUS材(あるいはSUS材にメッキを施して)から形成している。
【0030】
このように、搬送ローラをアルミ中空管の表面にゴム層を形成した構成とすることで、ゴム層の環境温度に対する追従性を向上することができる。つまり、ゴム層が厚いと外気の温度変化に対しゴムの温度変化に遅れが生じ、しかも、内部まで均一温度になるのに長時間を有する。そこで、熱伝導率の高いアルミ中空管を使用してゴム層を薄くすることによって、ゴム層の温度変化を環境温度の変化に追従させることができる。
【0031】
また、搬送ローラをアルミ中空管の表面にゴム層を形成した構成とすることにより、附属効果として、搬送ローラの捩れ剛性、曲げ剛性が高くなり、重量が軽くなる。更に、ゴム層が薄い(例えば2mm〜4mm程度でよい。)ことで、加工精度が高くなり、搬送時のゴム層の変形を低減することができる。
【0032】
さらに、搬送ローラの両端の軸の材質として異種材料を使用することにより、軸材料のコストダウン、搬送ローラの低コスト化を図れる。軸の材質としてSUM材にメッキを施すことで、軸材料としてのコストが安く、搬送ローラのコストダウンを図れる。また、単なるSUS材とすることで、アルミ三ツ矢管に圧入した後での加工ができ、搬送ローラ軸の振れ精度を高めることができる。
【0033】
給紙部4は、装置本体1の前面側から抜き差し可能で、多数枚の用紙5を積載して収納する給紙カセット41と、給紙カセット41内の用紙5を1枚ずつ分離して送り出すための給紙コロ42及びフリクションパッド43と、給紙された用紙5をレジストするレジストローラ44を備えている。また、この給紙部4は、多数枚の用紙5を積載して収容するための手差しトレイ46及び手差しトレイ46から1枚ずつ用紙5を給紙するための手差しコロ47と、装置本体1の下側にオプションで装着される給紙カセットや後述する両面ユニット10から給紙される用紙5を搬送するための搬送コロ48を備えている。給紙コロ42、レジストローラ44、手差しコロ47、搬送コロ48などの副走査搬送部3へ用紙5を給送するための部材は図示しない電磁クラッチを介してHB型ステッピングモータからなる給紙モータ(駆動手段)49によって回転駆動される。
【0034】
排紙搬送部7は、副走査搬送部3の分離爪38で分離された用紙5を搬送する3個の搬送ローラ71a、71b、71c(区別しないときは「搬送ローラ71」という。)及びこれに対向する拍車72a、72b、72c(同じく「拍車72」という。)と、排紙ローラ71及び拍車72間で搬送される用紙5をガイドする下ガイド部73及び上ガイド部74と、下ガイド部73及び上ガイド部74の間から送り出される用紙5を、第1の搬送経路である反転排紙経路81を通じて反転してフェイスダウンで排紙トレイ8へ送り出すための反転ローラ対77及び反転排紙ローラ対78とを備えている。
【0035】
そして、この画像形成装置においては、図3に示すように、搬送ローラ32の偏心及び搬送ベルト31の厚みを検出する検出手段として、搬送ベルト31が巻き付けられた搬送ローラ32の垂直方向に搬送ベルト31に変位変動を検出する変位変動検出器241を設けている。搬送ローラの偏心及び搬送ベルトの厚みを検出する検出手段を搬送ローラに対向する位置に配置することで、搬送ローラの偏心及び搬送ベルトの厚みを同時に検出することができる。
【0036】
この変位変動検出器241として、接触式センサを用いれば搬送ベルト31の表面に付着する紙粉、汚れなどの影響を受けないで確実に検出できる。接触式センサとしては、ダイヤルゲージと同じ原理のものを用いればよい。また、変位変動検出器241として、光学センサなどの接触式センサを用いれば搬送ベルト31にキズがつくおそれを防止できる。また、変位変動検出器241は搬送ベルト31の幅方向(周回方向に直交する方向であり、この例では主走査方向でもある。)に複数個(この例では3個)配置している。このように、搬送ベルトの幅方向に複数個の検出手段を配置することによって主走査位置での変動を最小限に抑えた制御を行うことができるようになる。
【0037】
なお、搬送ローラの偏心及び搬送ベルトの厚みを検出する検出手段を、このように画像形成装置本体1内に配置することで、搬送ローラや搬送ベルトの経時的な変化や環境の変化に対応することができる。これに代えて、搬送ローラの偏心及び搬送ベルトの厚みを検出する検出手段を必要なときに画像形成装置本体に設置及び取り外し可能な構成とする、つまり、治具化することにより、装置本体のコストダウンを図ることもできる。
【0038】
また、図3に示すように、搬送ローラ32の回転に応じて回転するエンコーダホイール137には1周の基準となるマーク(基準マーク)242を設け、基準マーク242を検出する1周基準マークセンサ243を設けている。さらに、図4に示すように、搬送ベルト31には1周の基準となるマーク(基準マーク)244を設け、この基準マーク244を検出する1周基準マークセンサ245を設けている。なお、基準マーク242、244は、センサ243、245として透過型フォトセンサを用いる場合にはスリットあるいは孔であり、反射型フォトセンサを用いる場合には反射部材である。
【0039】
このように、エンコーダホイール(コードホイール)に1周の基準になるマークを設けることによって搬送ローラの基準位置を容易に決定することができ制御が容易になる。また、搬送ベルトに1周の基準になるマークを設けることによって搬送ベルトの基準位置を容易に決定することができ制御が容易になる。
【0040】
ここで、搬送ベルト31の周長及び搬送ローラ32の周長は、両周長の比が整数になるように設定している。これにより、搬送ベルト31の1周期分の変動量を検出、記憶することで、リアルタイムでの測定の必要がなくなり、事前に送り量を決定でき、制御システムの簡易化(フィードフォワード制御化)も可能になり、コストダウンを図れる。.
【0041】
次に、この画像形成装置の制御部の概要について図7のブロック図を参照して説明する。
この制御部300は、CPU301と、CPU301が実行するプログラム、その他の固定データを格納するROM302と、画像データ等を一時格納するRAM303と、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための不揮発性メモリ(NVRAM)304と、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行なう画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC305とを含む、この装置全体の制御を司る主制御部310を備えている。
【0042】
また、この制御部300は、ホスト側と主制御部310との間に介在して、データ、信号の送受を行なうための外部I/F311と、記録ヘッド24を駆動制御するためのヘッドドライバを含む印刷制御部312と、キャリッジ23を移動走査する主走査モータ27を駆動するための主走査駆動部313と、副走査モータ131を駆動するための副走査駆動部314と、給紙モータ49を駆動するための給紙駆動部315と、排紙搬送部7の各ローラを駆動する排紙モータ79を駆動するための排紙駆動部316と、維持回復機構121を駆動する維持回復モータ129を駆動するための回復系駆動部318と、帯電ベルト34にACバイアスを供給するACバイアス供給部319、画像読取部11を制御するスキャナ制御部320などとを備えている。
【0043】
また、主制御部に310は、搬送ローラ32の温度を検出する温度センサ234の検出信号、変位変動検出器241の検出信号、1周基準マークセンサ243、245などの各種センサの検出信号を入力する。また、主制御部310は、装置本体1に設けたテンキー、プリントスタートキーなどの各種キー及び各種表示器を含む操作/表示部327との間で必要なキー入力の取り込み、表示情報の出力を行なう。
【0044】
さらに、この主制御部310は、キャリッジ23の移動量及び移動速度を検出するためのリニアエンコーダ401からの出力信号が入力され、このリニアエンコーダ401からの出力信号に基づいて主走査駆動部313を介して主走査モータ27を駆動制御することによってキャリッジ23の移動制御を行なう。
【0045】
また、搬送ベルト31の移動量及び移動速度を検出するための前述したコードホイール(エンコーダホイール)137とフォトセンサ(エンコーダセンサ)138によって構成されるロータリエンコーダ402からの出力信号が入力され、このロータリエンコーダ402からの出力信号に基づいて副走査駆動部314を介して副走査モータ131を駆動制御することによって搬送ローラ32を介して搬送ベルト31の移動制御を行なう。このとき、主制御部310は、本発明に係る制御手段を兼ねており、変位変動検出器241の検出信号や基準マークセンサ243、245の検出信号に基づいて搬送ローラ32の駆動制御を行うようにしている。
【0046】
このように構成した画像形成装置における画像形成動作について簡単に説明すると、ACバイアス供給部319から帯電ローラ34に交番電圧である正負極の矩形波の高電圧を印加することによって、帯電ローラ34は搬送ベルト31の絶縁層(表層)に当接しているので、搬送ベルト31の表層には、正と負の電荷が搬送ベルト31の搬送方向に対して交互に帯状に印加され、搬送ベルト31上に所定の帯電幅で帯電が行われて不平等電界が生成される。
【0047】
そこで、給紙部4から用紙5が給紙されて搬送ローラ32と押えコロ36との間の、正負極の電荷が形成されることによって不平等電界が発生している搬送ベルト31上へと送り込まれると、用紙5は電界の向きにならって瞬時に分極し、静電吸着力で搬送ベルト31上に吸着され、搬送ベルト31の移動に伴って搬送される。
【0048】
そして、この搬送ベルト31で用紙5を間歇的に搬送しながら、用紙5上に印刷データに応じて記録ヘッド24から記録液の液滴を吐出して画像を形成(印刷)し、画像形成が行なわれた用紙5の先端側を分離爪38で搬送ベルト31から分離して排紙搬送部7によって搬送して排紙トレイ8に排紙する。
【0049】
そこで、この画像形成装置における副走査モータの駆動制御について図8をも参照して説明する。なお、図8は主制御部310における副走査の駆動制御に係わる部分を機能的に説明するブロック説明図である。
まず、搬送ローラ32の軸32aに設けたコードホイール137とエンコーダセンサ138で構成されるロータリエンコーダ402の出力信号(出力パルス)は、エンコーダ信号処理部403に与えられ、このエンコーダ信号処理部403で速度及び位置情報に変換される。そして、得られた速度及び位置情報をASICなどでも構成できる信号処理合成部404にて合成処理した後、比較演算部405に与える。
【0050】
一方、この比較演算部405には速度・位置プロファイル格納部406に格納されている速度・位置プロファイルの情報が与えられており、比較演算部405はこれらの信号処理合成部404から与えられる速度及び位置情報(の合成情報)と速度・位置プロファイル格納部406に格納されている速度・位置プロファイルの情報とを比較して、目標位置と現在位置との偏差を演算する。
【0051】
そして、この比較演算部405で得られた偏差に基づいてPID制御演算部407はPID演算を行ってPWM信号を生成する。つまり、PID制御演算部407は、比較演算部405からの偏差に対してPID(比例、積分、微分)制御を行って制御値を演算する。ここでは、副走査モータ131をPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)制御で駆動するものとして、PID制御演算部407は偏差に対してPID制御を行ってPWMのデューティ比を求め、このPWMのデューティ比をモータドライバ(副走査駆動部)314に与えてPWM制御で副走査モータ131を駆動させることにより、搬送ベルト31を目標とする速度で目標とする移動量だけ移動させて目標とする位置に駆動するようにしている。
【0052】
一方、伸び補正量演算部411は、温度センサ234からの検出信号に基づいて搬送ローラ32の温度変化に伴う径の変動量に基づいて搬送ベルト31の移動量の補正量を演算し、この補正量を速度・位置プロファイル格納部406に与える。速度・位置プロファイル格納部406は、伸び補正量演算部411から与えられる補正量に応じて速度・位置プロファイルを補正して比較演算部405に与える。
【0053】
また、送り補正量演算部412は、変位変動検出器241からの検出信号に基づいて搬送ローラ32の偏心及び搬送ベルト31の厚み変動に基づいて搬送ベルト31の移動量の補正量を演算し、この補正量を速度・位置プロファイル格納部406に与える。速度・位置プロファイル格納部406は、送り補正量演算部412から与えられる補正量に応じて速度・位置プロファイルを補正して比較演算部405に与える。
【0054】
したがって、搬送ローラ32の偏心及び搬送ベルト31の厚み変動に基づいて補正された速度・位置プロファイルによる目標移動量が比較演算部405に与えられて偏差が演算され、PID制御演算部407に与えられるので、搬送ローラ32の偏心及び搬送ベルト31の厚み変動に応じて補正された移動量で搬送ベルト31が移動されるので、正確な用紙の送り制御を行なうことができ、滴着弾位置ズレを低減することができる。
【0055】
次に、本発明の第2実施形態について図9及び図10を参照して説明する。なお、図9は同実施形態の画像形成装置の副走査搬送部の説明図、図10は同画像形成装置の制御部の概要を示すブロック説明図、図11は同制御部の主制御部310における副走査の駆動制御に係わる部分を機能的に説明するブロック説明図である。
【0056】
ここでは、従動ローラ33の軸にエンコーダホイール(コードホイール)及びエンコーダホイールのスリットを検出するエンコーダセンサからなる従動軸検出器251を設け、この従動軸検出器251の検出信号を主制御部310に入力している。
【0057】
なお、従動軸検出器251は従動ローラ33の1周期で整数パルスをカウントすることが好ましい。また、従動ローラ33の径と搬送ローラ32の径とは、両者の径の比が整数比になるように設定することが好ましい。このように構成することで、搬送ローラ32の偏心及び搬送ベルト31の厚み変動の検出が簡単になる。
【0058】
そして、図11に示すように、送り補正量演算部422は、従動軸検出器251の出力信号と搬送ローラ32側のロータリエンコーダ402の出力信号に基づいて搬送ローラ32の偏心及び搬送ベルト31の厚み変動に応じた送り量の補正量を演算して、速度・位置プロファイル格納部406に与える。つまり、送り補正量演算部422は、従動軸検出器251の検出値を基準タイミングとして搬送ローラ32の回転に応じたロータリエンコーダ402の出力信号をカウントすることによって搬送ローラ32の偏心及び搬送ベルト31の厚み変動を検出し、この検出結果に応じた補正量を演算する。
【0059】
速度・位置プロファイル格納部406は、送り補正量演算部422から与えられる補正量に応じて速度・位置プロファイルを補正して比較演算部405に与える。
【0060】
したがって、搬送ローラ32の偏心及び搬送ベルト31の厚み変動に基づいて補正された速度・位置プロファイルによる目標移動量が比較演算部405に与えられて偏差が演算され、PID制御演算部407に与えられるので、搬送ローラ32の偏心及び搬送ベルト31の厚み変動に応じて補正された移動量で搬送ベルト31が移動されるので、正確な用紙の送り制御を行なうことができ、滴着弾位置ズレを低減することができる。
【0061】
なお、上記実施形態においては、本発明をマルチファンクション(MFP)の画像形成装置に適用した例で説明したが、プリンタやファクシミリ装置などの他の画像形成装置にも同様に適用することができる。また、インク以外の記録液を使用する画像形成装置、画像形成に液体を使用しない、例えば電子写真方式の画像形成装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置の全体構成を示す概略構成図である。
【図2】同装置の画像形成部及び副走査搬送部の平面説明図である。
【図3】同じく側面説明図である。
【図4】同じく搬送ベルトの平面説明図である。
【図5】同装置の搬送ローラの断面説明図である。
【図6】同じく側面説明図である。
【図7】同じく制御部の概要を説明するブロック図である。
【図8】同制御部における副走査モータの駆動制御に係わる部分を機能的に説明するブロック説明図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る画像形成装置の副走査搬送部の側面説明図である。
【図10】同装置の制御部の概要を説明するブロック図である。
【図11】同制御部における副走査モータの駆動制御に係わる部分を機能的に説明するブロック説明図である。
【符号の説明】
【0063】
1…装置本体
2…画像形成部
3…副走査搬送部
4…給紙部
5…用紙(被記録媒体)
7…排紙搬送部
8…排紙トレイ
11…画像読取部
23…キャリッジ
24…記録ヘッド
31…搬送ベルト
32…搬送ローラ(駆動ローラ)
33…従動ローラ(テンションローラ)
41…給紙コロ
44…レジストローラ
49…給紙モータ
131…副走査モータ
241…変位変動検出器(検出手段)
242…基準マーク
243…基準マークセンサ
244…基準マーク
245…基準マークセンサ
251…従動軸検出器
402…ロータリエンコーダ
411…伸び補正量演算部
412…送り補正量演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも駆動ローラと従動ローラとの間に掛け回され、画像が形成される媒体を搬送する搬送ベルトと、
前記駆動ローラの偏心及び前記搬送ベルトの厚みの変動を検出する検出手段と、
この検出手段の検出結果に基づいて前記駆動ローラの回転を制御する制御手段と
を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、前記検出手段は前記駆動ローラに対向する位置で検出を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像形成装置において、前記検出手段は前記搬送ベルトの幅方向に複数配置されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成装置において、前記駆動ローラにはエンコーダホイールが設けられ、このエンコーダホイールには1周の基準となるマークが設けられていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の画像形成装置において、前記搬送ベルトには1周の基準となるマークが設けられていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の画像形成装置において、前記搬送ベルトの周長と前記駆動ローラの周長の比が整数であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1に記載の画像形成装置において、前記検出手段は前記従動ローラの回転に基づいて前記駆動ローラの偏心及び前記搬送ベルトの厚みの変動を検出することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項7に記載の画像形成装置において、前記検出手段は前記従動ローラの回転に応じて1周で整数個出力されるパルスをカウントして前記駆動ローラの偏心及び前記搬送ベルトの厚みの変動を検出することを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の画像形成装置において、前記検出手段は前記従動ローラの回転に応じて出力されるパルスを基準として前記駆動ローラに設けられたロータリエンコーダからの出力をカウントして前記駆動ローラの偏心及び前記搬送ベルトの厚みの変動を検出することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−44767(P2008−44767A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−224044(P2006−224044)
【出願日】平成18年8月21日(2006.8.21)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】