説明

画像形成装置

【課題】省電力化を図り、且つデータの書換え回数を増やすことなく装置各部の性能や寿命を保証するために必要となるデータの精度を維持できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】メイン制御部は、スリープモードへの切り替えの通知を受けるまで(♯3でNO)、バックアップ処理を一定周期で実施し(♯1でYES、♯2)、前記通知を受けるとバックアップ予定データをサブ制御部に送信する(♯3でYES、♯4)。サブ制御部はスリープモードへの切り替えの検出後に前記データを受信すると(♯11,♯12でYES)、該データを保存し(♯13)、その後通常モードへの切り替えを検出すると(♯14でYES)、該データをメイン制御部に送信する(♯15)。メイン制御部は起動後に(♯6でYES)、前記データを受信すると(♯7でYES)、該データをバックアップ予定データとして記憶する(♯8)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に画像を形成する画像形成装置の技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、感光体ドラムと、この感光体ドラムの表面を帯電させる帯電ローラを備えた帯電機構と、前記感光体ドラムの表面にトナーを供給する現像部と、前記感光体ドラムの表面に付着するトナーを除去するクリーニング部とを有する電子写真方式を用いた複写機やファクシミリ等の画像形成装置が知られている。
【0003】
この種の画像形成装置における省電力化の技術として、当該画像形成装置の各部に対して電力を供給する通常モードの他に、前記各部のうち一部に対してのみ電力を供給する所謂スリープモード(省電力モード)を設け、画像形成装置に対する操作が所定時間何もなされなかった場合や、前記スリープモードに切り替える指示が画像形成装置に入力された場合に、画像形成装置のモードを前記通常モードからスリープモードに切り替える技術が広く採用されている。
【0004】
また、例えば下記特許文献1には、更なる省電力化を目的として、装置各部を制御するメイン制御部とは別に、該メイン制御部より低速のCPUと小容量のメモリとを備えるサブ制御部を搭載し、省電力モードでは、前記メイン制御部を停止して、サブ制御部のみを動作させる技術が提案されている。
【0005】
ところで、電子写真方式の画像形成装置においては、装置各部の性能や寿命を保証するために、例えば現像剤の消費量や印刷枚数の累計などのデータを記憶する必要があるが、このようなデータを記憶する記憶素子として、電気的にデータの書換えが可能なフラッシュメモリが採用される場合がある。
【0006】
この記憶素子は、耐衝撃性が高く、小型・低消費電力であるという利点を有する反面、データの書換え動作に伴う性能劣化が生じるという性質を有しており、データの書換え回数が制限されている。そのため、データをリアルタイムで更新的に記憶するのが理想的であるが、前述の点を考慮して、フラッシュメモリにデータを記憶させるバックアップ処理を、前記書換え回数の上限を考慮した時間間隔で周期的に実施することが多い。
【0007】
さらに、このようにバックアップ処理を周期的に実施する構成においては、通常、前記フラッシュメモリとは別に揮発性の記憶素子が設けられ、バックアップ処理を実施するタイミング(以下、バックアップタイミングという)になるまで、バックアップ処理対象のデータをその揮発性の記憶素子に一時的に保持し、バックアップタイミングになると、該記憶素子に保持しておいたデータをフラッシュメモリに格納するという処理が行われる。
【特許文献1】特開平08−101609号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような構成にあっては次のような改善すべき点がある。
【0009】
すなわち、バックアップタイミングになる前に、画像形成装置のモードが通常モードからスリープモードに切り替えられた場合、直近のバックアップタイミングからこのモード切替タイミングまでの期間に生じたデータについては、フラッシュメモリへのバックアップ処理が行われず、また、このデータは揮発性の記憶素子に記憶されているため、通常モードからスリープモードへのモード切替が行われ、該揮発性の記憶素子への電力供給が遮断されると、この記憶素子に格納しているデータが消失することとなる。
【0010】
その結果、現像剤の消費量や印刷枚数の累計などについて最新のデータを画像形成装置に保持しておくことができず、正確な装置各部の性能や寿命を保証することができなくなる。
【0011】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、省電力化を図り、且つデータの書換え回数を増やすことなく装置各部の性能や寿命を保証するために必要となるデータの精度を維持することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、記録媒体に画像を形成する画像形成部と、前記画像形成部を含む当該画像形成装置の各部の動作を制御するメイン制御部と、前記メイン制御部より回路規模が小さいサブ制御部と、当該画像形成装置の各部に対して電力を供給する通常モードと、前記メイン制御部及び前記サブ制御部のうち前記メイン制御部のみを含む当該画像形成装置の各部に対する電力供給を遮断する省電力モードとを択一的に切り替えるモード切替部と、不揮発性を有し、経時的に又は前記各部の動作に応じて変化するデータを記憶するための第1の記憶部とを備え、前記メイン制御部は、前記データを前記第1の記憶部に記憶するバックアップ処理を繰り返し行うバックアップ処理部と、揮発性を有し、前記バックアップ処理部によるバックアップ処理のタイミングになるまでの間、前記データをバックアップ予定データとして一時的に記憶する第2の記憶部と、前記モード切替部により前記省電力モードに切り替えられる直前に、前記第2の記憶部に記憶されているバックアップ予定データを前記サブ制御部に送信するバックアップ予定データ送信部とを備え、前記サブ制御部は、前記バックアップ予定データ送信部により送信されてきたバックアップ予定データを受信するバックアップ予定データ受信部と、前記バックアップ予定データ受信部により受信されたバックアップ予定データを記憶する第3の記憶部と、前記モード切替部によるモードの切替えを検出するモード検出部と、前記モード検出部により前記通常モードへの切り替えが検出されると、前記第3の記憶部に記憶されているバックアップ予定データを前記メイン制御部に送信するバックアップ予定データ送信部とを備え、前記メイン制御部は、前記サブ制御部のバックアップ予定データ送信部から送信されたバックアップ予定データを受信するバックアップ予定データ受信部を有し、前記第2の記憶部は、前記メイン制御部のバックアップ予定データ受信部により受信されたバックアップ予定データを記憶し、前記バックアップ処理部は、バックアップ処理のタイミングになると、前記メイン制御部のバックアップ予定データ受信部により受信され前記第2の記憶部に記憶されたバックアップ予定データのバックアップ処理を実行する画像形成装置である。
【0013】
この発明によれば、モード切替部により通常モードに設定されている期間、前記バックアップ処理部によるバックアップ処理のタイミングになるまでの間は、経時的に又は前記各部の動作に応じて変化するデータがバックアップ予定データとしてメイン制御部の第2の記憶部に一時的に記憶され、バックアップ処理のタイミングになると、第2の記憶部に記憶されているバックアップ予定データが第1の記憶部に記憶される。この動作が繰り返し実施される。
【0014】
このような構成において、モード切替部により前記省電力モードに切り替えられる際には、その切り替え直前に、前記第2の記憶部に記憶されているバックアップ予定データがバックアップ予定データ送信部により前記サブ制御部に送信される。
【0015】
サブ制御部において、バックアップ予定データ送信部により送信されてきたバックアップ予定データがバックアップ予定データ受信部により受信されると、この受信されたバックアップ予定データが第3の記憶部に記憶される。
【0016】
そして、前記モード検出部により前記通常モードへの切り替えが検出されると、バックアップ予定データ送信部により、前記第3の記憶部に記憶されているバックアップ予定データが前記メイン制御部に送信される。
【0017】
メイン制御部において、バックアップ予定データ受信部により、前記サブ制御部のバックアップ予定データ送信部から送信されてきたバックアップ予定データが受信され、第2の記憶部により、この受信されたバックアップ予定データが記憶される。そして、バックアップ処理のタイミングになると、バックアップ処理部により、そのバックアップ予定データのバックアップ処理が実行される。
【0018】
このように、本発明によれば、省電力モードに移行する前に、電力の供給が遮断されるメイン制御部から、電力の供給が引き続き行われるサブ制御部にバックアップ予定データを移管し、通常モードに移行すると、該データをサブ制御部からメイン制御部に返還してバックアップ処理に供するようにしたので、画像形成装置のモードが通常モードから省電力モードに切り替えられた場合であっても、最新のデータを画像形成装置に保持させることができる。
【0019】
また、前記各部に対して電力を供給する通常モードの他に、前記メイン制御部及び前記サブ制御部のうち前記メイン制御部のみを含む当該画像形成装置の各部に対する電力供給を遮断する省電力モードを備えたので、画像形成装置の省電力化を図ることができる。
【0020】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成装置において、前記第1の記憶部としてフラッシュメモリを採用したものである。
【0021】
データの書換え回数が所定値に制限されているフラッシュメモリを前記第1の記憶部として採用する場合に、特に請求項1に記載の発明が有効なものとなる。
【0022】
経時的に又は前記各部の動作に応じて変化する前記データとしては、請求項3に記載の発明のように、前記画像形成部によって画像が形成された用紙の累積枚数や、請求項4に記載の発明のように、前記現像部の駆動時間の累積値、或いは、請求項5に記載の発明のように、現像剤の消費量の累積値が想定される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、バックアップタイミングになる前に、画像形成装置のモードが通常モードから省電力モードに切り替えられた場合であっても、最新のデータを画像形成装置に保持させることができ、前記第1の記憶部に対する書換え回数を増やすことなく装置各部の性能や寿命に関するデータの精度を維持することができる。また、前記サブ制御部及び省電力モードを備えたことにより省電力化を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係る画像形成装置の一実施形態である複合機を図面に基づいて説明する。図1は、複合機の内部構成を示す側面図である。複合機1は、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能及びファクシミリ機能等の機能を兼ね備えたものであり、本体部2と、本体部2の左方に配設されたスタックトレイ3と、本体部2の上部に配設された原稿読取部4と、原稿読取部4の上方に配設された原稿給送部5とを有している。
【0025】
原稿読取部4は、CCD(Charge Coupled Device)センサ及び露光ランプ等からなるスキャナ部13と、ガラス等の透明部材により構成された原稿台14及び原稿読取スリット15とを備える。スキャナ部13は、図略の駆動部によって移動可能に構成され、原稿台14に載置された原稿を読み取るときは、原稿台14に対向する位置で原稿面に沿って移動され、原稿画像を走査しつつ取得した画像データをメイン制御部35(図2参照)へ出力する。また、原稿給送部5により給送された原稿を読み取るときは、原稿読取スリット15と対向する位置に移動され、原稿読取スリット15を介して原稿給送部5による原稿の搬送動作と同期して原稿の画像を取得し、その画像データをメイン制御部35へ出力する。
【0026】
原稿給送部5は、原稿を載置するための原稿載置部16と、画像読み取り済みの原稿を排出するための原稿排出部17と、原稿載置部16に載置された原稿を1枚ずつ繰り出して原稿読取スリット15に対向する位置へ搬送し、原稿排出部17へ排出するための給紙ローラや搬送ローラ(図示せず)等からなる原稿搬送機構18を備える。原稿搬送機構18は、さらに原稿を表裏反転させて原稿読取スリット15と対向する位置へ再搬送する用紙反転機構(図示せず)を備え、原稿の両面の画像を、原稿読取スリット15を介してスキャナ部13から読取可能にしている。
【0027】
また、原稿給送部5は、その前面側が上方に移動可能となるように本体部2に対して回動自在に設けられている。原稿給送部5の前面側を上方に移動させて原稿台14の上面を開放することにより、原稿台14の上面に読み取り原稿、例えば見開き状態にされた書籍等を操作者が載置できるようになっている。
【0028】
本体部2は、複数の給紙カセット19と、給紙カセット19から記録紙を1枚ずつ繰り出して画像形成部21へ搬送する給紙ローラ20と、給紙カセット19から搬送されてきた記録紙に画像を形成する画像形成部21とを備える。
【0029】
画像形成部21は、図略の帯電ローラにより周面が一様に帯電された感光体ドラム22と、スキャナ部13で取得された画像データに基づきレーザ光等を出力して前記感光体ドラム22の周面を露光する光学ユニット23と、感光体ドラム22上にトナー像を形成する現像部24と、感光体ドラム22上のトナー像を記録紙に転写する転写部25と、トナー像が転写された記録紙を加熱してトナー像を記録紙に定着させる一対のローラ26,27からなる定着装置28と、画像形成部21内の用紙搬送路中に設けられ、記録紙をスタックトレイ3又は排出トレイ29まで搬送する搬送ローラ対30,31等とを備える。
【0030】
また、記録紙の両面に画像を形成する場合は、画像形成部21で記録紙の一方の面に画像を形成した後、この記録紙を排出トレイ29側の搬送ローラ対30にニップされた状態とする。この状態で搬送ローラ対30を反転させて記録紙をスイッチバックさせ、記録紙を用紙搬送路32に送って画像形成部21の上流域に再度搬送し、画像形成部21により他方の面に画像を形成した後、記録紙をスタックトレイ3又は排出トレイ29に排出する。
【0031】
複合機1のフロント部には、操作部6が設けられている。この操作部6には、ユーザが印刷実行指示を入力するためのスタートキー7と、印刷部数等を入力するためのテンキー8と、各種複写動作の操作ガイド情報等を表示し、これら各種設定入力用にタッチパネル機能を有する液晶ディスプレイ等からなる表示部9と、表示部9で設定された設定内容等をリセットするリセットキー10と、実行中の印刷(画像形成)動作を停止させるためのストップキー11と、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能及びファクシミリ機能を切り換えるための機能切換キー12が備えられている。
【0032】
次に、複合機1の電気的な構成について説明する。図2は、複合機1の電気的な構成を示すブロック図である。図2に示すように、複合機1は、原稿読取部4、画像形成部21、記憶部33、メイン制御部35、コントローラ36、サブ制御部37及び操作部6を備えて構成されている。
【0033】
前記原稿読取部4、記憶部33、メイン制御部35、操作部6及びコントローラ36によって、取り込んだ画像データを予め指定されたIPアドレスへ送信するネットワークスキャナ機能が実現される。また、前記原稿読取部4、画像形成部21、記憶部33、メイン制御部35、操作部6及びコントローラ36によって、ファクシミリ機能が実現される。さらに、前記画像形成部21、メイン制御部35、操作部6、コントローラ36及び図略のパラレルI/F部によって、プリンタ機能が実現される。また、前記原稿読取部4、画像形成部21、メイン制御部35及び操作部6によって、コピー機能が実現される。
【0034】
操作部6は、図1に示す操作部6に相当するものであり、使用者がコピー機能、プリンタ機能、ファクシミリ機能及びスキャナ機能等に関する操作を行うために使用され、使用者による操作命令(コマンド)等をメイン制御部35に与えるものである。操作部6は、タッチパネル等を有する表示部9や、前述のスタートキー7やテンキー8等を含む操作キー部を含む。この操作キー部は、使用者によるコピー実行開始指令、あるいはファクシミリ送信開始指令といった種々の指示入力を行うために用いられる。
【0035】
原稿読取部4は、図1に示す原稿読取部4に相当するものであり、原稿の画像を光学的に取得して画像データを生成するものである。
【0036】
画像形成部21は、前述の画像形成部21に相当するものであり、原稿読取部4によって読み取られた原稿の画像データ、コントローラ36を介して外部のパーソナルコンピュータ等から受信した画像データ、及びコントローラ36を介して外部のファクシミリ装置から受信したファックスデータ等の画像データに対する画像を所定の記録紙に印刷(形成)するものである。
【0037】
記憶部33は、原稿読取部4の読取動作により得られた画像データやネットワークを介して送信されてきた画像データ、後述するメイン制御部35により処理された画像データ、ファクシミリ通信を行う時の短縮釦登録の相手先名称やファクシミリ番号、ネットワークスキャナとして使用される際の送信相手先のIPアドレス等を記憶するものである。
【0038】
また、本実施形態では、記憶部33は、フラッシュメモリから成り、その記憶領域に格納されるデータとして、後述するバックアップ予定データが含まれる。フラッシュメモリは、記憶内容(データ)の書き換えが可能な不揮発性のROM(Read Only Memory)の一例であり、書き換え回数の制限を有する記憶部(メモリ)である。記憶部33は、前記第1の記憶部の一例である。
【0039】
メイン制御部35及びサブ制御部37は、それぞれ、図略のCPU(Central Processing Unit:中央演算処理部)に、そのCPUの動作を規定するプログラムを格納するROM(Read Only Memory)やデータを一時的に保管する機能や作業領域としての機能を有するRAM(Random Access Memory)、並びに一時的にデータを保管するRAM等の記憶部などの周辺装置を有して構成されている。
【0040】
そして、メイン制御部35は、操作部6等で受け付けられた指示情報や、複合機1の各所に設けられているセンサからの検出信号に応じて、該複合機1全体の制御を行う。また、サブ制御部37は、メイン制御部35に比して回路規模が小さく、メイン制御部35との間で通信可能に構成されている。サブ制御部37は、主に、後述するスリープモードに設定されているときにも必要な処理を実行するものである。
【0041】
コントローラ36は、当該複合機1と外部機器との間のインターフェースとして機能するとともに、原稿読取部4、画像形成部21、メイン制御部35、サブ制御部37及び操作部6等の当該複合機1の各部への電力供給のオンオフを切り替える機能を有する。
【0042】
すなわち、本実施形態の複合機1は、外部機器から当該複合機1に画像データが入力されたり、操作部6により画像形成指示などが行われたりすると速やかに動作が実行可能なスタンバイ状態となるように、当該複合機1の各部に予め定められた電力が供給される通常モードの他に、スリープモードが設けられている。スリープモードは、例えば操作部6に設けられているスリープモード設定ボタン61(図2参照)が操作された場合や、当該複合機1に対して所定時間何も操作されなかった場合等に通常モードから切り替えられるモードであり、前記通常モードのときに比して電力が供給される対象の数が少なく、当該複合機1の各部のうち一部に対してのみ電力が供給されるモードである。コントローラ36は、スリープモードでは、サブ制御部37及び操作部6への電力供給を継続し、メイン制御部35や画像形成部21など図2の破線で囲まれた領域に属する各部への電力供給を遮断する。コントローラ36は、前記モード切替部としての機能を有する。
【0043】
次に、本実施形態の特徴部分について説明する。
【0044】
例えば、印刷枚数や現像部24による現像時間(駆動時間)、或いは現像剤の消費量などのデータは、経時的に又は複合機1の各部の動作に応じて変化するデータであり、このようなデータは、装置各部の性能や寿命を保証するために重要なものである。本実施形態の複合機1は、これらのデータをメイン制御部35で一時的に保持し、後述するバックアップタイミングになると、前記データをフラッシュメモリから成る記憶部33に記憶させるバックアップ処理を実施する。また、複合機1は、このバックアップ処理を繰り返し(ここでは一定の周期で)実施する。
【0045】
すなわち、図3に示すように、複合機1は、主電源がオンされている間、一定の時間間隔を有する時刻T1,T2,T3,T4,T5,T6,・・・にバックアップ処理を実施する。以下、前記時刻T1,T2,・・・をバックアップタイミングという。また、前記各バックアップタイミングでバックアップ処理が実施されるまで(バックアップタイミングになるまで)、前記データは、メイン制御部35内の揮発性メモリ(後述するメイン側記憶部352)にバックアップ予定データとして一時的に格納(保持)される。
【0046】
例えば、バックアップタイミングT1からバックアップタイミングT2までの期間に着目すると、複合機1は、該期間において新たに生じたデータや変化したデータをメイン制御部35内の揮発性メモリ(後述するメイン側記憶部352)にバックアップ予定データとして一時的に格納する。そして、複合機1は、バックアップタイミングT2になると、前記期間にメイン制御部35内の揮発性メモリに格納したデータを、フラッシュメモリから成る記憶部33に記憶させる。
【0047】
また、同様に、バックアップタイミングT2からバックアップタイミングT3までの期間においては、複合機1は、該期間において新たに生じたデータや変化したデータをメイン制御部35内の揮発性メモリにバックアップ予定データとして一時的に格納し、バックアップタイミングT3になると、その期間にメイン制御部35内の揮発性メモリに格納したデータをフラッシュメモリから成る記憶部33に記憶させる。
【0048】
ここで、バックアップタイミングになる前のタイミング、例えば図3に示すように、バックアップタイミングT6になる前のタイミングTxに、複合機1の電力供給モードが通常モードからスリープモードに切り替えられる場合を想定する。
【0049】
このとき、本実施形態の複合機1は一定の周期でバックアップ処理を実施するため、バックアップタイミングT5から前記タイミングTxまでの期間に生じたバックアップ予定データDxについては、前記記憶部33へのバックアップ処理が行われない。
【0050】
また、バックアップ予定データを一時的に格納しているメイン側記憶部352は、前述したように揮発性のメモリから成るから、複合機1の電力供給モードが通常モードからスリープモードに切り替えられることにより、メイン制御部35への電力供給が遮断されると、該メイン側記憶部352に格納しているバックアップ予定データが消失する。したがって、このままでは最新のデータを前記記憶部33で保持できなくなる。
【0051】
そこで、本実施形態の複合機1においては、サブ制御部37はスリープモードでも電力が供給されてデータが消失しないから、スリープモードに移行する際に、バックアップ予定データをサブ制御部37に一時的に保持させ、通常モードに復帰したときに、サブ制御部37からメイン制御部35に該データを返還して、記憶部33へのバックアップ処理に供することで、複合機1に最新のデータを保持させるようにしている。
【0052】
このような機能を達成するべく、コントローラ36は、モード切替部361を機能的に有し、メイン制御部35は、バックアップ処理部351と、メイン側記憶部352と、メイン側通信部353と、印刷枚数計測部354と、現像時間計測部355と、現像剤消費量検出部356とを機能的に有し、サブ制御部37は、モード検出部371と、サブ側通信部372と、サブ側記憶部373とを機能的に有する。
【0053】
モード切替部361は、当該複合機1の電力供給モードを前記通常モードとスリープモードとの間で切り替えるものである。すなわち、モード切替部361は、操作部6に備えられたスリープモード設定ボタン61(図2参照)が操作されたときや、操作部6に対して所定時間何も操作がなされなかったときに、当該複合機1の電力供給モードを通常モードからスリープモードに切り替える一方、スリープモードの設定中に原稿給送部5の回動操作や操作部6に対して何らかの操作が行われたり、例えばパーソナルコンピュータやファクシミリ装置等の外部機器から画像データが送信されてきたりすると、当該複合機1の電力供給モードをスリープモードから通常モードに切り替える。
【0054】
なお、モード切替部361は、当該複合機1の電力供給モードをスリープモードから通常モードに切り替える際には、前もって、その電力供給モードの切り替えを行う通知をメイン制御部35に出力し、メイン制御部35から切り替えの了承を受けると、電力供給モードの切り替えを実施する。
【0055】
印刷枚数計測部354は、画像形成部21により画像が形成された用紙の累積枚数を計測するものであり、現像時間計測部355は、現像部24による現像時間(現像部24の駆動時間)の累積値を計測するものであり、現像剤消費量検出部356は、現像剤(トナー)の消費量の累積値を検出するものである。印刷枚数計測部354、現像時間計測部355及び現像剤消費量検出部356による計測値は、メイン側記憶部352に記憶される。
【0056】
バックアップ処理部351は、前記印刷枚数計測部354、現像時間計測部355及び現像剤消費量検出部356による計測動作又は検出動作により得られたデータを含む各種データの記憶部33への定期的な記録処理や更新処理(バックアップ処理)を実施するものである。バックアップ処理部351によるバックアップ処理の実行周期は、フラッシュメモリから成る記憶部33の書換え回数の制限(上限値)を考慮した周期に設定されている。
【0057】
メイン側記憶部352は、揮発性のメモリから成り、前記バックアップタイミングになるまでの間、前記各種データをバックアップ予定データとして一時的に記憶しておくものである。なお、前述したように、メイン側記憶部352は、揮発性のメモリから成るため、当該メイン制御部35への電力供給が遮断されると、該記憶部352に格納されているデータは消える。メイン側記憶部352は、前記第2の記憶部に相当する。
【0058】
メイン側通信部353は、サブ制御部37のサブ側通信部372との間で、バックアップ予定データの送受信を行うものであり、コントローラ36からスリープモードへの切り替えの通知がくると、前記メイン側記憶部352に格納されているバックアップ予定データをサブ制御部37(サブ側通信部372)に送信する。
【0059】
サブ側通信部372は、メイン制御部35のメイン側通信部353との間で、バックアップ予定データの送受信を実行するものであり、メイン制御部35のメイン側通信部353からバックアップ予定データが送信されてくると、該バックアップデータを受信する。
【0060】
モード検出部371は、メイン制御部35に供給されている電源電圧が印加される電力端子の電圧を所定の周期で監視することにより複合機1の現在の電力供給モードを検出するものである。すなわち、前記電力端子の電圧が予め定められた閾値より大きいときには、メイン制御部35に電力供給が行われており、当該複合機1の電力供給モードが通常モードに設定されているものと検出する一方、前記電力端子の電圧が予め定められた閾値以下のときには、メイン制御部35に電力供給が遮断されており、当該複合機1の電力供給モードがスリープモードに設定されているものと検出する。
【0061】
サブ側記憶部373は、前記サブ側通信部372により受信されたバックアップ予定データとして一時的に記憶しておくものである。サブ側記憶部373は、前記第3の記憶部に相当する。
【0062】
前記サブ側通信部372は、前記モード検出部371により複合機1の電力供給モードがスリープモードから通常モードに切り替えられたことが検出されると、前記サブ側記憶部373に一時的に格納されているバックアップ予定データをメイン制御部35(サブ側通信部372)に送信する。前記メイン側通信部353は、コントローラ36により通常モードに切り替えられた後に、サブ制御部37からバックアップ予定データが送信されてくると、該データを受信する。
【0063】
図4は、モード切替に伴ってメイン制御部35とサブ制御部37との間で行われる処理を示すフローチャートである。なお、複合機1の主電源は予めオンされているものとする。
【0064】
図4に示すように、メイン制御部35のバックアップ処理部351は、バックアップタイミングになると(ステップ♯1でYES)、バックアップ処理を実施する(ステップ♯2)。バックアップ処理部351は、コントローラ36からスリープモードへの切り替え(移行)の通知がくるまで(ステップ♯3でNO)、ステップ♯1,♯2の処理を繰り返し実施する。
【0065】
次に、メイン制御部35のメイン側通信部353は、コントローラ36からスリープモードへの切り替え(移行)の通知がくると(ステップ♯3でYES)、バックアップ予定データをサブ制御部37に送信し(ステップ♯4)、コントローラ36にスリープモードへの移行を了承した旨を通知する(ステップ♯5)。
【0066】
一方、サブ制御部37のモード検出部371は、コントローラ36により当該複合機1の電力供給モードが通常モードからスリープモードに切り替えられたことを、メイン制御部35における前記電力端子の電圧変化により検出すると(ステップ♯11でYES)、サブ側通信部372は、メイン制御部35からバックアップ予定データを受信するまで待機する(ステップ♯12でNO)。
【0067】
そして、サブ側通信部372は、メイン制御部35からバックアップ予定データを受信すると(ステップ♯12でYES)、サブ側記憶部373は、該バックアップ予定データを保存(記憶)する(ステップ♯13)。
【0068】
その後、モード検出部371は、複合機1の電力供給モードがスリープモードから通常モードに切り替わったか否かを判断し(ステップ♯14)、前記電力供給モードの切り替わりを検出していないときには(ステップ♯14でNO)、該電力供給モードの切り替わりを検出するまで待機する一方、前記電力供給モードの切り替わりを検出すると(ステップ♯14でYES)、サブ側通信部372は、サブ側記憶部373に一時的に記憶しておいたバックアップ予定データをメイン制御部35に送信する(ステップ♯15)。
【0069】
メイン制御部35は、コントローラ36により電力供給の遮断が解除されることにより起動すると(ステップ♯6でYES)、メイン側通信部353は、前記バックアップ予定データをサブ制御部37から受信するまで待機する(ステップ♯7でNO)。そして、メイン側通信部353は、前記バックアップ予定データをサブ制御部37から受信すると(ステップ♯7でYES)、メイン側記憶部352は、この受信したバックアップ予定データを記憶し(ステップ♯8)、ステップ♯1の処理を実行する。なお、サブ制御部37から受信したバックアップ予定データは、該バックアップ予定データの受信後初めて実施されるバックアップ処理でバックアップされる予定のものとなる。
【0070】
以上のように、本実施形態では、スリープモードに移行する際に、バックアップ予定データをサブ制御部37に一時的に保持させ、通常モードに復帰したときに、サブ制御部37からメイン制御部35に返還して、フラッシュメモリから成る記憶部33へのバックアップ処理に供するようにしたので、複合機1に最新のデータを保持させることができ、その結果、前記記憶部33の書換え回数を増やすことなく装置各部の性能や寿命に関するデータの精度を維持することができる。
【0071】
また、本実施形態では、前記サブ制御部37と前記スリープモードとを備えたので、複合機1の省電力化を図ることができる。
【0072】
なお、本件は、前記実施形態に代えて、又は前記実施形態に加えて次のような変形形態も採用可能である。
【0073】
[1]前記実施形態では、サブ制御部37は、メイン制御部35の電力端子の電圧変化によりモードの切替を検出するようにしたが、この形態に限らず、通常モードからスリープモードに移行するときに、メイン制御部35からサブ制御部37にその旨の通知が行われるようにしてもよい。また、これとは別に、モード切替部361のモード信号を監視することでモードを検出するようにしてもよい。
【0074】
[2]前記バックアップ予定データを最終的に格納する記憶部は、前記フラッシュメモリに限定されず、書換え回数が限定された不揮発性のメモリであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一実施形態である複合機の内部構成を示す側面図である。
【図2】複合機の電気的な構成を示すブロック図である。
【図3】複合機の特徴部分の説明図である。
【図4】前記モード切替に伴ってメイン制御部とサブ制御部との間で行われる処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0076】
1 複合機
4 原稿読取部
21 画像形成部
35 メイン制御部
351 バックアップ処理部
352 メイン側記憶部
353 メイン側通信部
354 印刷枚数計測部
355 現像時間計測部
356 現像剤消費量検出部
36 コントローラ
361 モード切替部
37 サブ制御部
371 モード検出部
372 サブ側通信部
373 サブ側記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部を含む当該画像形成装置の各部の動作を制御するメイン制御部と、
前記メイン制御部より回路規模が小さいサブ制御部と、
当該画像形成装置の各部に対して電力を供給する通常モードと、前記メイン制御部及び前記サブ制御部のうち前記メイン制御部のみを含む当該画像形成装置の各部に対する電力供給を遮断する省電力モードとを択一的に切り替えるモード切替部と、
不揮発性を有し、経時的に又は前記各部の動作に応じて変化するデータを記憶するための第1の記憶部と
を備え、
前記メイン制御部は、
前記データを前記第1の記憶部に記憶するバックアップ処理を繰り返し行うバックアップ処理部と、
揮発性を有し、前記バックアップ処理部によるバックアップ処理のタイミングになるまでの間、前記データをバックアップ予定データとして一時的に記憶する第2の記憶部と、
前記モード切替部により前記省電力モードに切り替えられる直前に、前記第2の記憶部に記憶されているバックアップ予定データを前記サブ制御部に送信するバックアップ予定データ送信部と
を備え、
前記サブ制御部は、
前記バックアップ予定データ送信部により送信されてきたバックアップ予定データを受信するバックアップ予定データ受信部と、
前記バックアップ予定データ受信部により受信されたバックアップ予定データを記憶する第3の記憶部と、
前記モード切替部によるモードの切替えを検出するモード検出部と、
前記モード検出部により前記通常モードへの切り替えが検出されると、前記第3の記憶部に記憶されているバックアップ予定データを前記メイン制御部に送信するバックアップ予定データ送信部と
を備え、
前記メイン制御部は、
前記サブ制御部のバックアップ予定データ送信部から送信されたバックアップ予定データを受信するバックアップ予定データ受信部
を有し、
前記第2の記憶部は、前記メイン制御部のバックアップ予定データ受信部により受信されたバックアップ予定データを記憶し、
前記バックアップ処理部は、バックアップ処理のタイミングになると、前記メイン制御部のバックアップ予定データ受信部により受信され前記第2の記憶部に記憶されたバックアップ予定データのバックアップ処理を実行する画像形成装置。
【請求項2】
前記第1の記憶部は、フラッシュメモリである請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記記録媒体は用紙であり、
前記データは、前記画像形成部によって画像が形成された用紙の累積枚数である請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
像担持体に形成された静電潜像を、現像剤を用いて現像化する現像部を有し、
前記データは、前記現像部の駆動時間の累積値である請求項1ないし3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記データは、現像剤の消費量の累積値である請求項1ないし4のいずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−265434(P2009−265434A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−116185(P2008−116185)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】