説明

画像形成装置

【課題】 現像剤中の劣化したトナーを減らすことができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】 像保持体と、像保持体の表面を帯電させる帯電器と、潜像形成部と、現像器とを備え、帯電器が、像保持体の表面のうち、予め決められた端部を除いた本体部を帯電させるものであり、現像器が、像保持体に面した現像領域へと搬送する現像ロールと、トナー供給口よりも下流側で現像剤を表面に保持する搬送体と、搬送体とは電位差を有する、この電位差で、搬送体によって搬送中の現像剤から上記トナーを吸着する吸着体とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置に組み込まれる現像装置には、収容槽内を現像ロールに隣接した第1収容室と、この第1収容室に隣接した第2収容室とに仕切って、これら第1収容室および第2収容室の相互間で現像剤を撹拌しながら移動させるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−204105号公報 (第5図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、現像剤中の劣化したトナーを減らすことができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に係る画像形成装置は、
表面に像が形成されてこの像を保持する像保持体と、
上記像保持体の表面を帯電させる帯電器と、
上記帯電器により帯電された上記像保持体の表面を露光することでこの表面に静電的な潜像を形成する潜像形成部と、
上記像保持体表面に形成された潜像にトナーを付着させてトナー像を形成する、このトナーを含んだ現像剤を内部に収容した現像器とを備え、
上記帯電器が、上記像保持体の表面のうち、予め決められた端部を除いた本体部を帯電させるものであり、
上記現像器が、
上記像保持体に隣り合った、表面に上記現像剤を保持して回転することでこの現像剤を、この像保持体に面した、上記端部に面した部分も含む現像領域へと搬送する現像ロールと、
上記現像ロールに隣り合いこの現像ロールの回転軸に沿って延びた、内部に上記現像剤を収容してこの現像剤をこの現像ロールに供給する、収容した現像剤を攪拌しつつこの回転軸に沿って、上記端部から遠い方からこの端部に近づく方へと向かう第1方向に搬送する第1収容部と、
上記第1収容部に隣接しこの第1収容部に並んで延びた、両端に、この第1収容部との間で現像剤が移動する移動口が設けられた、内部に上記現像剤を収容しトナーが供給されてこの現像剤とこのトナーを攪拌して混合しつつ上記第1方向とは逆の第2方向に搬送する第2収容部と、
トナー供給口を通じて上記第2収容部へトナーを供給するトナー供給部と
上記第2方向への搬送における上記トナー供給口よりも下流側で上記第2収容部から現像剤を得、この現像剤を表面に保持して搬送した後、上記第2収容部に戻す搬送体と、
上記搬送体に隣り合った、この搬送体とは電位差を有する、この電位差で、この搬送体によって搬送中の現像剤から上記トナーを吸着する吸着体とを備えたものであることを特徴とする。
【0005】
請求項2に係る画像形成装置は、上記端部が、上記現像ロールと上記本体部との間に生じている電界の向きと同じ向きの電界をこの現像ロールとこの端部との間に生じさせる電位差であって、この現像ロールとこの本体部との間の電位差よりも大きな電位差をこの現像ロールとの間に有するものであることを特徴とする。
【0006】
請求項3に係る画像形成装置は、上記搬送体および上記吸着体は、それら搬送体と吸着体との間に上記現像ロールと上記本体部との間の電位差よりも小さい電位差が生じるとともに、この搬送体に対するこの吸着体の相対電位の極性が、この現像ロールに対するこの本体部の相対電位の極性と同極性となる電位が付与されたものであることを特徴とする。
【0007】
請求項4に係る画像形成装置は、上記搬送体および上記吸着体は、この搬送体に対するこの吸着体の相対電位の極性が、この現像ロールに対するこの本体部の相対電位の極性とは逆極性となる電位が付与されたものであることを特徴とする。
【0008】
請求項5に係る画像形成装置は、上記搬送体と上記吸着体との間に電位差を付与する電位差付与部であって、それら搬送体および吸着体の間に上記現像ロールと上記本体部との間の電位差よりも小さい電位差が生じるとともに、この搬送体に対するこの吸着体の相対電位の極性が、この現像ロールに対するこの本体部の相対電位の極性と同極性となる電位差、および、この搬送体に対するこの吸着体の相対電位の極性が、この現像ロールに対するこの本体部の相対電位の極性とは逆極性となる電位差とを切り換えて付与する電位差付与部を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項6に係る画像形成装置は、上記搬送体が、ロール状の外形を有し、周面に上記現像剤を保持して回転することでこの現像剤を吸着体に面した領域へと搬送するものであり、
上記吸着体が、ロール状の外形を有し、回転しながら周面に、上記領域に搬送された現像剤から上記トナーを吸着するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る画像形成装置によれば、現像剤中の劣化したトナーを減らすことができる。
【0011】
請求項2に係る画像形成装置によれば、劣化トナーのうちの過帯電トナーが除去される。
【0012】
請求項3に係る画像形成装置によれば、劣化トナーのうちの低帯電トナーが除去される。
【0013】
請求項4に係る画像形成装置によれば、劣化トナーのうちの逆極トナーが除去される。
【0014】
請求項5に係る画像形成装置によれば、劣化トナーのうちの低帯電トナーと逆極トナーとのそれぞれが除去される電位状態を確実かつ簡易に得ることができる。
【0015】
請求項6に係る画像形成装置によれば、現像剤中の劣化したトナーを簡易な構成で減らすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0017】
図1は、プリンタの概略構成図である。
【0018】
図1に示すプリンタ1は、感光体10と、この感光体10の表面に電荷を付与する帯電ロール11と、外部から送信されてきた画像データに基づいたレーザ光を生成するレーザ露光器12と、トナーを含む現像剤を収容する現像器13と、記録用紙を収容する用紙カセット16と、用紙カセット16から記録用紙を引き出して搬送する用紙搬送装置17と、トナー像を、矢印B方向に搬送されてきた記録用紙上に転写する転写ロール14と、記録用紙上のトナー像を加熱および加圧することでその記録用紙上にトナー像を定着させる定着器15と、感光体10の表面をクリーニングするクリーニング装置20とを有している。現像器13は、感光体10に対向して回転しながら、現像剤を感光体10との間の領域に搬送する現像ロール133を有している。現像器13には、新しいトナーを供給するトナー供給部130が設けられている。また、クリーニング装置20は、クリーニング部材21を感光体10に接触させて感光体10の表面をクリーニングする。尚、現像器13に収容されている現像剤には、トナーの他に、このトナーとの摩擦によりトナーを摩擦帯電させる電荷付与粒子であり磁性粒子でもある磁性キャリアが含まれている。
【0019】
このプリンタ1は、本発明の画像形成装置の一実施形態である。また、感光体10が、表面に像が形成されてこの像を保持する像保持体の一例であり、帯電ロール11が、像保持体の表面を帯電させる帯電器の一例である。レーザ露光器12が、帯電器により帯電された像保持体の表面を露光することで該表面に静電的な潜像を形成する潜像形成部の一例である。また、現像器13が本発明にいう現像器の一例であり、トナー供給部130が本発明にいうトナー供給部の一例である。また、現像ロール133が本発明にいう現像ロールの一例である。
【0020】
ここで、このプリンタ1における画像形成の動作の流れを簡単に説明する。
【0021】
図1に示すプリンタ1では、矢印A方向に回転する感光体10の表面に、帯電ロール11により電荷が付与され、電荷が付与された感光体10の表面に、外部から送信されてきた画像データに基づいたレーザ光がレーザ露光器12により照射されることで感光体10の表面には静電的な潜像が形成される。メカニズムについては後述するが、現像器13に収容されている現像剤は現像ロール133の表面に供給され、現像ロール133と感光体10との間の領域に運ばれ、運ばれた現像剤中のトナーが潜像上に付着することにより、感光体10の表面の静電的な潜像は現像される。この現像により得られたトナー像が、矢印B方向に搬送されてきた記録用紙上に転写ロール14により転写され、トナー像を加熱および加圧する定着器15により記録用紙上のトナー像が溶融されて記録用紙上に定着される。その後、感光体10の、トナー像の転写を終えた部分に残留する残留物が、矢印Aの向きの回転おける転写ロール14よりも下流側で帯電ロール11よりも上流側、かつ感光体10の回転中心に沿った全幅にわたって先端が接触したクリーニング部材21により除去され、除去された残留物は残留物収容箱22に収容される。尚、このプリンタ1は、モノクロ画像専用機であるが、本発明は、カラー画像機に適用されてもよい。
【0022】
本実施形態のプリンタ1では、定着器15での発熱を抑えるため、低温での定着が可能な低温定着トナーが採用されている。この低温定着トナーの詳細については後述する。
【0023】
図2は、図1に示す現像器のレーザ露光器側からの透視図である。
【0024】
図2には、現像ロール133と、現像剤を収容する現像剤収容槽132と、現像剤収容槽132の内部で現像剤を撹拌搬送する撹拌搬送部材131とを備えた現像器13が示されている。
【0025】
現像剤収容槽132は、内部が、現像ロール133に並行して延びた壁1321によって、現像ロール133と隣り合った第1収容室132aとこの第1収容室132aと隣り合った第2収容室132bとに分けられている。第1収容室132aは、現像ロール133に隣り合い、現像ロール133の回転軸に沿って延びている。
【0026】
これら第1収容室132aおよび第2収容室132bそれぞれには、撹拌搬送部材131が1つずつ配備されており、これら撹拌搬送部材131は、具体的には、螺旋状のフィンが棒の周囲に備えられた構造を有している。第1収容室132aおよび第2収容室132bそれぞれに配備された撹拌搬送部材131が互いに逆向きに回転することで、現像剤収容槽132に収容されている現像剤は撹拌されながら壁1321の周囲を反時計回り、すなわち図2中に示される矢印の向きに循環する。現像剤収容槽132の内部では、撹拌搬送部材131によってトナーと磁性キャリアとが撹拌されることでトナーがマイナス帯電し、磁性キャリアはプラス帯電する。このため、マイナス帯電したトナーは磁性キャリアに静電的に付着する。これにより、現像剤収容槽132の内部では、トナーと磁性キャリアが渾然一体となっている。現像剤は第1収容室132aから現像ロール133に供給される。ここで、第1収容室132aおよびその内部の撹拌搬送部材131が本発明にいう第1収容部の一例に相当し、第2収容室132bおよびその内部の撹拌搬送部材131が本発明にいう第2収容部の一例に相当する。
【0027】
また、図2には、現像剤収容槽132には、新しいトナーを供給するためのトナー供給口132cが示されている。
【0028】
また、図2には、帯電ロール11が、感光体10の、図2における左側の端部を除いて帯電させるものであることが示されている。このため、このプリンタ1では、感光体10上に示される点線の右側の部分である通常使用領域101でのみ画像形成用のトナー像が形成される。
【0029】
一方、詳しくは後述する、感光体10上に示される点線の左側の部分である劣化トナー吸着領域102では、帯電ロール11による帯電は行われないが、現像剤収容槽132の内部に収容されている現像剤から現像ロール133を介して劣化トナーを吸着する。劣化トナー吸着領域102には用紙も搬送されてこない。ここで、通常使用領域101が本発明にいう本体部の一例であり、劣化トナー吸着領域102が本発明にいう端部の一例である。
【0030】
現像剤は、第1収容室132a内では、現像ロール133の回転軸に沿って、感光体10のうちの劣化トナー吸着領域102から遠い方から、この劣化トナー吸着領域102に近づく方へと向かう方向に搬送される。また、現像剤は、壁1321の両端に設けられた移動口を経て第1収容室132aと第2収容室132bの間を移動し、第2収容室132bでは、第1収容室132a内とは逆方向に搬送される。
【0031】
また、図2には、詳しくは後述するが、現像剤収容槽132に収容される現像剤の中から劣化したトナーを除去するために搬送ロール134および吸着ロール135が備えられている様子が示されている。ここで、搬送ロール134が本発明にいう搬送体の一例に相当し、吸着ロール135が本発明にいう吸着体の一例に相当する。搬送ロール134および吸着ロール135は、ともにロール状の外形を有している。
【0032】
搬送ロール134は、一部が現像剤収容槽132から外へ露出した状態で、現像剤収容槽132に収容された現像剤を表面に保持しながら回転する。これによって搬送ロール134は、第2収容室132bから現像剤を得、現像剤を表面に保持して搬送した後、第2収容室132bに戻す。また、吸着ロール135は、この搬送ロール134の、現像剤収容槽132から外へ露出した部分に対向して配備され、搬送ロール134が保持している現像剤から劣化したトナーを回転しながら吸着する。これら搬送ロール134および吸着ロール135は、現像剤が搬送される方向における、トナー供給口132cよりも下流側に配備されているが、この理由については後述する。
【0033】
また、図2に示される搬送ロール134は、現像剤収容槽132の一部に設けられた開口132d(図3(b)参照)からその表面が一部露出する様に現像剤収容槽132にその回転軸が保持されている。
【0034】
図2に示されているように、搬送ロール134と対向して配備されている吸着ロール135は、現像剤収容槽132に対し着脱自在なトナー回収箱136で周囲が覆われていると共に、吸着ロール135の回転軸はトナー回収箱136に保持されている。
【0035】
現像剤収容槽132内の劣化トナーは、現像ロール133の劣化トナー吸着領域102に対向する部分、および搬送ロール134のいずれかを経由して除去されることとなる。以下、劣化トナーの吸着メカニズムについて説明する。
【0036】
図3は、図2に示す現像器の断面図である。
【0037】
図3のパート(a)には、図2に示す現像器のA−A断面を矢印に見た場合が示されており、現像剤収容槽132の第2収容室132bに新たなトナーを供給するために設けられているトナー供給口132cが示されている。また、図3のパート(b)には、図2に示す現像器のB−B断面を矢印に見た場合が示されている。
【0038】
図3のパート(a)に示すトナー供給口132cを通じて、トナー供給部130(図1参照)によって新たなトナーが第2収容室132bに供給されると、このトナーが加わった現像剤は第2収容室132b内を撹拌搬送部材131によって撹拌されながら搬送され、図3のパート(b)に示す現像ロール133が設けられた第1収容室132aに到達する。
【0039】
図3に示す現像ロール133は、矢印C方向に回転する円筒部材1331と、この円筒部材1331の内部に、この円筒部材1331とは独立に固定された永久磁石ロール1332とを有している。この永久磁石ロール1332は、円筒部材1331の周回方向に複数の磁極が配列されたもので、現像剤の吸着および解放を規定する磁力分布を有している。
【0040】
円筒部材1331の周面は、一部が現像剤収容槽132の内部に入り込み、その他は現像剤収容槽132の外に存在している。したがって、円筒部材1331が回転すると、円筒部材1331の周面各部は所定の回転速度で現像剤収容槽132の内部を通過する。そして、円筒部材1331の内部に備えられた永久磁石ロール1332の磁力分布により、現像剤収容槽132の内部を通過中の周面部分に現像剤が供給される。円筒部材1331は、この供給された現像剤を、感光体10との間に形成された現像領域1301a,1302aへ搬送する。
【0041】
図3のパート(b)に示される、感光体10のうちの通常使用領域101は、帯電ロール11により表面全体が−720Vに一旦帯電され、レーザ露光器12により露光され静電的な潜像が形成された部分は約−300Vとなる。一方、現像器13の現像ロール133は−600Vに帯電される。現像ロール133に保持された磁性キャリアに電気的に付着し、感光体10のうちの通常使用領域101と現像ロール133との間の第1領域1302aに搬送されたトナーは、現像剤収容槽132内でマイナス極性に帯電されていることから、感光体10の静電的な潜像部分から現像ロール133へ向かう向きの電界(電位差は300V)により、磁性キャリアとの間の静電引力に打ち勝って静電的な潜像側に付着しトナー像が形成される。このとき磁性キャリアは、現像ロール133の円筒部材1331の表面に磁力により吸着された状態で現像ロール133上に残り、現像剤収容槽132へと回収される。
【0042】
ここで、プリンタ1では、画像密度の低い画像形成が長く続き、新たなトナーの供給があまり行われない状況においては、既存のトナーと磁性キャリアとの度重なる混合により、トナー表面に付着しているシリカ等の外添剤がトナー表面に埋没してトナーの帯電性が劣化し、本来であれば狭いトナーの帯電量分布が広くなる。特に、上述した低温定着トナーの場合には、その劣化が顕著である。例えば、劣化したトナーには、現像剤収容槽132の内部を撹拌搬送され続ける間に、過帯電となったトナーも含まれる。過帯電トナーは、磁性キャリアとの静電的な結びつきが強すぎ、現像ロール133と、感光体10のうちの通常使用領域101との間における電界の強さでは、通常使用領域101の潜像側に付着し難く、その多くが、第1収容室132aにおける、現像ロール133のうち通常使用領域101に対向する部分よりも下流側に抜けてくる。また、低画像密度の画像形成が連続して行われた後に高画像密度の画像形成が行われるとき、新たなトナーがトナー供給口132cを通じて大量に現像剤収容槽132の第2収容室132bに供給される。その結果、現像剤収容槽132の内部の過帯電トナーが有する電荷は、新たに供給されてきたトナーに急速に奪い取られ、現像剤収容槽132の内部では、新たに供給されてきたトナーに電荷を取られた上に、劣化のために磁性キャリアとの摩擦によっても帯電量の上昇が鈍い低帯電トナーや電荷を取られたことで逆極化した逆極トナーと、帯電が充分な新たなトナーとが混在した状態が生じる。この混在した状態が放置されると、現像ロール133上に低帯電トナーおよび逆極トナーが保持されることとなる。そして、帯電量が不足しているために磁性キャリアとの静電的な結びつきが弱くなった低帯電トナーが、磁性キャリアから離れても静電的な潜像に付着せずクラウドとなり、また、逆極性に転じた逆極トナーは、感光体10の表面に形成された静電的な潜像が形成された部分以外の部分である背景領域に付着してカブリとなる。
【0043】
そこで、本実施形態のプリンタ1では、感光体10の劣化トナー吸着領域102で劣化トナーを吸着しクリーニング装置20で回収するとともに、搬送ロール134および吸着ロール135を用いて劣化トナーをトナー回収箱136に回収することにより、現像剤収容槽132から劣化トナーを除去する。
【0044】
より詳細には、プリンタ1では、現像剤収容槽132の内部を撹拌搬送される現像剤の流れにおいて新たなトナーが供給されるトナー供給口132cの手前で、現像ロール133および劣化トナー吸着領域102によって劣化トナーのうち過帯電トナーの除去が行われる。さらに、現像剤の流れにおいて新たなトナーが供給されるトナー供給口132cよりも下流側で、搬送ロール134および吸着ロール135によって、劣化トナーのうち、低帯電トナーおよび逆極トナーの除去が行われる。
【0045】
まず、現像ロール133と劣化トナー吸着領域102とにより、現像剤収容槽132に収容されている現像剤の中から劣化トナーを除去するメカニズムについて説明する。
【0046】
図3のパート(a)には、トナー供給口132cを有する現像剤収容槽132と、感光体10の劣化トナー吸着領域102とが示されており、現像ロール133は、回転する円筒部材1331と、内部の永久磁石ロール1332とを備えている。搬送ロール134の、回転する円筒部材1331は、内部の永久磁石ロール1332の磁力分布により、現像剤収容槽内を通過中に現像剤が供給され、この供給された現像剤を、感光体10の劣化トナー吸着領域102との間に形成された第2領域1301aへ搬送する。
【0047】
また、図3のパート(a)には、感光体10の劣化トナー吸着領域102の周囲に転写ロール14が備えられていない様子が示されている。
【0048】
感光体10の劣化トナー吸着領域102は、帯電ロール11による帯電が行われず、表面電位は0Vである。
【0049】
図4は、現像ロール、搬送ロール、および吸着ロールへの電圧印加の様子を示す図である。
【0050】
図4には、現像ロール133に−600Vのマイナス電源33が接続されている様子が示されている。この場合、現像ロール133と劣化トナー吸着領域102との間に、現像ロール133と通常使用領域101との間の電界の向きと同じ向きの電界が生じる。また、現像ロール133と劣化トナー吸着領域102との間の電位差が、現像ロール133と通常使用領域101との間の電位差よりも大きい。
【0051】
より詳細には、感光体10の通常使用領域101の静電的な潜像(−300V)と現像ロール133(−600V)との間の電界(電位差は300V)よりも、感光体10の劣化トナー吸着領域102の表面(0V)と現像ロール133(−600V)との間の電界(電位差は600V)の方が強く、現像剤収容槽132に収容されている現像剤中の過帯電トナーは、磁性キャリアとの間の静電引力に打ち勝って感光体10の劣化トナー吸着領域102に付着する。その後、劣化トナー吸着領域102に付着した過帯電トナーは、劣化トナー吸着領域102に対向する転写ロール14が配備されていないことで転写は行われないまま、クリーニング装置20のクリーニング部材21によって感光体10から刮ぎ落とされて残留物収容箱22に収容される。
【0052】
以上説明したように、現像剤収容槽132の内部を搬送される現像剤の搬送方向における新たなトナーの供給地点であるトナー供給口132cの手前で劣化トナーである過帯電トナーが現像剤から除去される。したがって、トナー供給口132cから新たに供給されるトナーが混合された際に、低帯電トナーや逆極トナーが生じることが抑えられる。
【0053】
次に、搬送ロール134と吸着ロール135とにより、現像剤収容槽132に収容されている現像剤の中から劣化トナーを除去するメカニズムについて、再び図3も参照して説明する。
【0054】
図3のパート(b)には、現像剤収容槽132の第2収容室132b側に設けられた開口132dから一部が露出した搬送ロール134と、この搬送ロール134に隣り合った吸着ロール135とが示されている。また、ここには、吸着ロール135で吸着した劣化トナーをトナー回収箱136の端部1361で掻き落としている様子が示されている。
【0055】
搬送ロール134は、現像ロール133と同様、矢印D方向に回転する円筒部材1341と、この円筒部材1341の内部に、この円筒部材1341とは独立に固定された、円筒部材1341の周回方向に複数の磁極が配列され、現像剤の吸着および解放を規定する所定の磁力分布を有する永久磁石ロール1342とを有している。また、吸着ロール135は、アルミまたはステンレスの円筒状の部材である。
【0056】
図4には、搬送ロール134が、搬送ロール134に印加する電圧を制御する電圧制御器34に繋がれ、吸着ロール135が地絡されている様子が示されている。
【0057】
搬送ロール134は、現像ロール133と同じように電圧が印加されていると共に、現像ロール133が現像剤を保持するのと同じメカニズムで現像剤を保持して吸着ロール135との間の領域に搬送する。地絡されている吸着ロール135は、電圧制御器34から搬送ロール134に印加される電圧の極性によって、搬送ロール134が搬送する現像剤中の劣化トナーである低帯電トナーもしくは逆極トナーを選択的に吸着する。
【0058】
電圧制御器34は、搬送ロール134に−100Vの電圧を印加するマイナス電源341と、+200Vの電圧を印加するプラス電源342とを有している。
【0059】
図4には、電圧制御器34のマイナス電源341の端子Aに搬送ロール134が接続されている様子が示されている。搬送ロール134には、−100Vの電圧が印加され、吸着ロール135は地絡されている。この場合、吸着ロール135は、搬送ロール134との間に、現像ロール133と感光体10(通常使用領域101)との間の電位差よりも小さい電位差を有するとともに、搬送ロール134に対する相対電位として、現像ロール133に対する通常使用領域101の相対電位の極性と同極性の電位を有する。
【0060】
より詳細には、搬送ロール134には、−100Vの電圧が印加されることから、地絡されている吸着ロール135との間では吸着ロール135から搬送ロール134に向かう向きで、かつ、感光体10の表面の静電的な潜像と現像ロール133の間に発生する電界(電位差は300V)よりも弱い電界(電位差は100V)が発生する。これにより、電荷量は少ないもののマイナス極性である低帯電トナーは吸着ロール135に向かうこととなる。
【0061】
吸着ロール135と搬送ロール134の間に、感光体10の通常使用領域101の表面の静電的な潜像と現像ロール133の間に発生する電界よりも弱い電界を発生させると、低帯電トナーは、搬送ロール134の表面に磁気的に保持されている磁性キャリアとの静電的な結びつきが弱く、電界が弱くても磁性キャリアから引き離せることから、吸着ロール135で現像剤中の低帯電トナーを吸着することができる。尚、吸着ロール135と搬送ロール134の間の電界強さが、通常使用領域101の表面の静電的な潜像と現像ロール133の間の電界強さ並に強いと、劣化していないトナーをも吸着してしまうので、現像剤中から低帯電トナーを選択的に吸着するために、吸着ロール135と搬送ロール134の間の電界は、感光体10の表面の静電的な潜像と現像ロール133の間に発生する電界よりも弱い電界となっている。
【0062】
一方、図示は省略するが、電圧制御器34のプラス電源342の端子Bに搬送ロール134が接続されている場合、搬送ロール134には、+200Vの電圧が印加される。この場合、吸着ロール135は、搬送ロール134に対する相対電位として、現像ロール133に対する通常使用領域101の相対電位の極性とは逆極性の電位を有する。この電位状態が、本発明にいう第2の電位状態の一例に相当する。
【0063】
より詳細には、地絡されている吸着ロール135との間では搬送ロール134から吸着ロール135に向かう向きの電界が発生する。これにより、電荷が移動した後、劣化していたために極性がプラス側に転じてしまった逆極トナーは吸着ロール135に向かうこととなる。尚、電圧制御器34におけるマイナス電源341とプラス電源342との間の切換および各電源における印加電圧値は、図示は省略するが、プリンタ1内のトナーの飛散による汚染度を検出する光学センサの検出結果と、画像背景部の汚れを検出する光学センサによる検出結果との比較の結果に応じて自動制御されている。ここで、電圧制御器34は、本発明にいう電位差を切り換えて付与する電位差付与部の一例に相当する。
【0064】
このようにして、現像剤が搬送される方向におけるトナー供給口132cよりも下流側で新たに供給されたトナーによって、劣化しているために電荷が移動して低帯電となったトナーが現像剤から除去される。また、搬送ロール134と吸着ロール135の間の電界の向きを感光体10の表面の静電的な潜像と現像ロール133の間の電界の向きとは逆向きにすることで、劣化しているために電荷が移動して逆極化した逆極トナーが現像剤から除去される。これによって、上述したクラウドやカブリが抑えられる。
【0065】
以上説明したように、現像剤収容槽132の内部を撹拌搬送される現像剤の流れにおいて新たなトナーが供給されるトナー供給口132cの手前で過帯電トナーが除去されることによって、トナー供給口132cから新たにトナーが供給された後に、低帯電トナーや逆極トナーが生じることが抑えられ、さらに、トナー供給口132cよりも下流側で、搬送ロール134および吸着ロール135によって、低帯電トナーおよび逆極トナーが除去されることによって、発生した低帯電トナーおよび逆極トナーも除去される。このように、2箇所で異なる状態の劣化トナーを除去することにより、クラウドやカブリの原因となる劣化トナーの除去能力が相乗的に高まる。このため、本実施形態のように劣化し易い低温定着トナーが採用された場合であっても、低帯電トナーや逆極トナーの発生が十分に抑制される。
【0066】
次に、本発明の第2実施形態のプリンタについて説明する。
【0067】
第2実施形態のプリンタと第1実施形態のプリンタとの相違点は、第1実施形態では現像器13における搬送ロール134に電圧制御器34が接続され吸着ロール135が地絡されているのに対し、第2実施形態では、搬送ロールが地絡され、吸着ロール135が電圧制御器に接続されている点である。以下、この相違点について説明する。
【0068】
図5は、第2実施形態のプリンタにおける現像器に備えられている現像ロール、搬送ロール、および吸着ロールへの電圧印加の様子を示す図である。
【0069】
図5には、吸着ロール135が、吸着ロール135に印加する電圧を制御する電圧制御器35に繋がれ、搬送ロール134が地絡されている様子が示されている。
【0070】
また、図5には、電圧制御器35のマイナス電源351の端子Aに吸着ロール135が接続されている様子が示されている。この場合、吸着ロール135は、搬送ロール134に対する相対電位として、現像ロール133に対する通常使用領域101の相対電位の極性とは逆極性の電位を有する。より詳細には、吸着ロール135には、−200Vの電圧が印加されることから、地絡されている搬送ロール134との間では搬送ロール134から吸着ロール135に向かう向きの電界が発生する。これにより、電荷が移動した後、劣化していたために極性がプラス側に転じてしまった逆極トナーは吸着ロール135に向かうこととなる。
【0071】
一方、図示は省略するが、電圧制御器35のプラス電源352の端子Bに吸着ロール135が接続されている場合、吸着ロール135は、搬送ロール134との間に、現像ロール133と、感光体10の通常使用領域101との間の電位差(電位差は300V)よりも小さい電位差(電位差は100V)を有するとともに、搬送ロール134に対する相対電位として、現像ロール133に対する通常使用領域101の相対電位の極性と同極性の電位を有する。より詳細には、吸着ロール135には、+100Vの電圧が印加されることから、地絡されている搬送ロール134との間では吸着ロール135から搬送ロール134に向かう向きで、かつ、感光体10の通常使用領域101の表面の静電的な潜像と現像ロール133の間に発生する電界(電位差は300V)よりも弱い電界(電位差は100V)が発生する。これにより、電荷量は少ないもののマイナス極性である低帯電トナーは吸着ロール135に向かうこととなる。
【0072】
以上説明したように、第2実施形態のプリンタでも、現像剤が搬送される方向におけるトナー供給口132cよりも下流側で新たに供給されたトナーによって、劣化しているために電荷が移動して低帯電となったトナーが現像剤から除去される。また、搬送ロール134と吸着ロール135の間の電界の向きを感光体10の通常使用領域101の表面の静電的な潜像と現像ロール133の間の電界の向きとは逆向きにすることで、劣化しているために電荷が移動して逆極化した逆極トナーが現像剤から除去される。
【0073】
なお、上述した説明では、画像形成装置の実施形態としてプリンタの例を示したが、本発明にいう画像形成装置はプリンタに限られず、例えば、複写機やファクシミリであってもよい。
【0074】
また、上述した実施形態では、本発明にいう像保持体としてロール状の感光体の例を示したが、本発明にいう像保持体はこれに限られず、例えばベルト状の部材であってもよい。
【0075】
また、上述した実施形態では、本発明にいう帯電器の例として、帯電ロールを示したが、本発明にいう帯電器はこれに限られず、例えば、コロトロンやスコロトロンといったコロナ放電器であってもよい。
【0076】
また、上述した実施形態では、本発明にいう搬送体の例としてロール状の外形を有し回転する搬送ロール134の例を示したが、本発明にいう搬送体はロール状のものに限られず、例えばベルト状のものであってもよい。
【0077】
また、上述した実施形態では、本発明にいう吸着体の例としてロール状の外形を有し回転する吸着ロール135を示したが、本発明にいう吸着体はロール状のものに限られず、例えばベルト状のものであってもよい。
【0078】
また、上述した実施形態では、本発明にいう電位差付与部として極性の異なる電位差の切り換えが自在な電圧制御器の例を示したが、本発明にいう電位差付与部はこれに限られず、例えば、電位差による相対電位の極性は固定とするものであってもよい。
【0079】
また、上述した実施形態では、本発明にいう搬送体および吸着体に付与される電位として、特定の電位の値を例示したが、本発明にいう電位は例示した値に限られず、例示とは異なる値であってもよく、あるいは、環境条件やトナーの状態に応じて変化するものであってもよい。
【0080】
また、上述した実施形態では、現像ロール133と画像非形成部102とによって、過帯電トナーを除去し、搬送ロール134と吸着ロール135とによって、低帯電トナーおよび逆極トナーを除去する例を説明したが、除去するトナーの種類の分担は、例えば、相対的な電位状態を反対に設定することによって、逆にすることも可能である。但し、各種類劣化トナーについて考えられる分布からは、実施形態に示した分担が好ましい。
【0081】
また、上述した実施形態では、本発明にいう像保持体表面の潜像に付着させるトナーの例として、低温定着トナーを示したが、本発明にいうトナーは低温定着トナーに限られず、従来公知のトナーであってもよい。
【0082】
ここで、上述した低温定着トナーの製造方法について説明する。ここでは、一例として40℃における損失弾性率が約4×10[Pa]、トナー中の結晶性樹脂の比率が5%、トナーの形状係数が約115のトナーの製造方法について説明する。
−結晶性ポリエステル樹脂−
ここで、「結晶性ポリエステル樹脂」とは、示差走査結量測定(DSC)において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを有するものを指す。なお、ここで、静電荷現像用トナーに用いられる『結晶性』とは、示差走査熱量測定(DSC)において、DSC曲線が明確な吸熱ピークを有することを指し、具体的には、昇温速度10℃/minで測定した際の吸熱ピークが発生し、その後前記DSC曲線のベースラインに戻ることを意味する。
【0083】
結晶性ポリエステル樹脂としては、具体的には、適度な融解温度を有し炭素数6以上のアルキル基を有する脂肪族系の結晶性ポリエステル樹脂がより好ましい。炭素数6以上のアルキル基を有するポリエステル樹脂は、多価カルボン酸または多価アルコールに炭素数6以上のアルキル基を有する重合性単量体を用いることで得ることができ、例えば、ドデセニルコハク酸などを用いることができるが、これに限るものではない。
樹脂の製造に用いる多価カルボン酸類としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、1,5−ナフタルレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸等の芳香族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸、p−(ヒドロキシエトキシ)安息香酸等の芳香族オキシカルボン酸、コハク酸、アルキルコハク酸、アルケニルコハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ダイマー酸、トリマー酸、水添ダイマー酸、シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキセンジカルボン酸等の不飽和脂肪族及び脂環族ジカルボン酸等を、また多価カルボン酸としては他にトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等の三価以上の多価カルボン酸等を用いることができる。
【0084】
樹脂の製造に用いる多価アルコール類としては脂肪族多価アルコール類、脂環族多価アルコール類、芳香族多価アルコール類等を例示できる。脂肪族多価アルコール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジメチロールヘプタン、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ε−カプロラクトン等のラクトン類を開環重合して得られるラクトン系ポリエステルポリオール等の脂肪族ジオール類、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエルスリトール等のトリオール及びテトラオール類等を例示できる。
【0085】
脂環族多価アルコール類としては1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物及びプロピレンオキサイド付加物、トリシクロデカンジオール、トリシクロデカンジメタノール、ダイマージオール、水添ダイマージオール等を例示できる。
【0086】
芳香族多価アルコール類としてはパラキシレングリコール、メタキシレングリコール、オルトキシレングリコール、1,4−フェニレングリコール、1,4−フェニレングリコールのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物及びプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0087】
樹脂末端の極性基を封鎖し、トナー帯電特性の環境安定性を改善する目的において単官能単量体がポリエステル樹脂に導入される場合がある。単官能単量体としては、安息香酸、クロロ安息香酸、ブロモ安息香酸、パラヒドロキシ安息香酸、スルホ安息香酸モノアンモニウム塩、スルホ安息香酸モノナトリウム塩、シクロヘキシルアミノカルボニル安息香酸、n−ドデシルアミノカルボニル安息香酸、ターシャルブチル安息香酸、ナフタレンカルボン酸、4−メチル安息香酸、3−メチル安息香酸、サリチル酸、チオサリチル酸、フェニル酢酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、オクタンカルボン酸、ラウリル酸、ステアリル酸、及びこれらの低級アルキルエステル、等のモノカルボン酸類、あるいは脂肪族アルコール、芳香族アルコール、脂環族アルコール等のモノアルコールを用いることができる。
【0088】
結晶性ポリエステル樹脂の製造方法としては、特に制限はなく、酸成分とアルコール成分とを反応させる一般的なポリエステル重合法で製造することができ、例えば、直接重縮合、エステル交換法等が挙げられ、モノマーの種類によって使い分けて製造する。
【0089】
結晶性ポリエステル樹脂の製造は、重合温度180〜230℃の間で行うことができ、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合時に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる。モノマーが反応温度下で溶解又は相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させても良い。重縮合反応においては、溶解補助溶剤を留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪いモノマーが存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪いモノマーと、そのモノマーと重縮合予定の酸又はアルコールとを縮合させておいてから主成分と共に重縮合させると良い。
【0090】
結晶性樹脂の製造時に使用可能な触媒としては、一般的なものを用いることができる。
【0091】
結晶性ポリエステル樹脂の融解温度としては、好ましくは50〜100℃であり、より好ましくは60〜100℃である。前記融解温度が50℃より低いとトナーの保存性や、定着後のトナー画像の保存性が問題となる場合がある一方、100℃より高いと従来のトナーに比べて十分な低温定着が得られない場合がある。
【0092】
また、結晶性ポリエステル樹脂には、複数の融解ピークを示す場合があるが、ここでは、最大のピークをもって融解温度とする。
【0093】
更に、樹脂融点の測定には、例えばパーキンエルマー社製のDSC−7を用いることができる。この装置の検出部の温度補正はインジウムと亜鉛との融点を用い樹脂のガラス転移点の測定も同様に測定することができる。
【0094】
このトナーに使用される結晶性ポリエステル樹脂は、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法による分子量測定で、重量平均分子量(Mw)が8,000〜35,000であり、好ましくが10,000〜25,000である。重量平均分子量が8,000未満では、非結晶性ポリエステル樹脂や離型剤との相溶が進行し、可塑を発生させる場合がある。また、35,000を超えるとトナー溶融時の粘度が上昇し、定着性や画像光沢性を損なうことがある。ここで、樹脂の分子量は、THF可溶物を、東ソー製GPC・HLC−9120、東ソー製カラム「TSKgel SuperHM−M」(15cm)を使用し、THF溶媒で測定し、単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して分子量を算出したものである。後述する非結晶性ポリエステル樹脂の測定でも同様に測定した。
【0095】
このトナーは、結晶性ポリエステル樹脂のASTM D3418−8に準拠して測定される融点(mp)が50〜100℃が好ましく用いられる。融点が50℃未満では、トナーの熱保安性が低下し、100℃を超えるとトナー定着時の画像光沢度が低下する。
【0096】
結晶性ポリエステル樹脂の酸価(樹脂1gを中和するに必要なKOHのmg数)を5〜50mgKOH/gに制御する。該酸価が5mgKOH/g未満では、結晶性樹脂粒子同士が凝集体を形成し、離型剤との構造体の形成が困難となるばかりでなく、結晶性樹脂粒子がトナー中に独立に存在、或いは大きく成長しトナー表面に露出することがあり、トナーの流動性、帯電性の観点から好ましくない。また、該酸価が50mgKOH/gを超えるとトナー中への内包が困難となる場合がある。
−非結晶ポリエステル樹脂−
非晶性ポリエステル樹脂としては、上述した多価カルボン酸類と多価アルコール類のうち炭素数6以上のアルキル基を有さないものの縮重合により得られるものである。
【0097】
非結晶性樹脂は、上記多価アルコールと多価カルボン酸を常法に従って縮合反応させることによって製造することができる。例えば、上記多価アルコールと多価カルボン酸、必要に応じて触媒を入れ、温度計、撹拌器、流下式コンデンサを備えた反応容器に配合し、不活性ガス(窒素ガス等)の存在下、150〜250℃で加熱し、副生する低分子化合物を連続的に反応系外に除去し、所定の酸価に達した時点で反応を停止させ、冷却し、目的とする反応物を取得することによって製造することができる。
【0098】
このトナーに用いられる非結晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、ASTM
D3418−8に準拠して求めた場合に50℃以上であることが必須であり、さらには55℃以上、またさらには60℃以上、65℃未満であることが好ましい。ガラス転移温度が50℃未満の場合には、取扱い中あるいは保存中に凝集する傾向がみられ、保存安定性に問題を生ずる場合がある。また、65℃以上の場合は、定着性を低下させる場合があり、好ましくない。
【0099】
また、このトナーに用いられる非結晶性樹脂の軟化点は、60〜90℃の範囲であることが好ましい。樹脂の軟化温度を60℃未満に抑えたトナーにおいては、取扱い中あるいは保存中に凝集する傾向がみられ、特に長時間の保存において、流動性が大きく悪化する場合がある。軟化点が90℃を超える場合には定着性に支障をきたす場合がある。また定着ロールを高温に加熱する必要が生じるために、定着ロールの材質、ならびに複写される基材の材質が制限される。
【0100】
このトナーに使用される非晶性ポリエステル樹脂は、テトラヒドロフラン(THF)
可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法による分子量測定で、重量平均分子量(Mw)が20,000〜50,000であり、好ましくは25,000〜50,000である。重量平均分子量が25,000未満では、トナーの熱保管性が低下するばかりでなく、定着された画像の強度が低下する。また、50,000を超えると定着性が悪化し、画像光沢も低下する。
【0101】
非結晶性ポリエステル樹脂の酸価を10〜50mgKOH/gが好ましい。該酸価が10mgKOH/g未満では、トナー製造時の凝集体の粒度成長が早くなるため、出来上がるトナーの粒度分布が拡大するという不具合が生じる場合がある。また、該酸価が50mgKOH/gを超えると、結晶性樹脂、離型剤との酸価の差が大きくなるため、結晶性樹脂、離型剤との凝集だけが進む場合があり、定着性がトナー粒子間で変化してしまうという不具合がある。
【0102】
このトナーは、結晶性樹脂と非結晶性樹脂の重量比率が5/95〜40/60であり、非晶性樹脂の割合が60%未満では、良好な定着特性は得られるものの、定着像中の相分離構造が不均一となり、定着画像の強度、特に引っかき強度が低下し、傷がつきやすくなるといった問題を呈することがある。一方、95%を超える場合では、結晶性樹脂由来のシャープメルト性が得られず、可塑が発生することがあり、良好な低温定着性を確保しつつ、耐トナーブロッキング性、画像保存性を保つことができなくなる場合がある。
【0103】
結晶性樹脂及び非結晶性の樹脂粒子分散液の作成については、樹脂の酸価の調整やイオン性界面活性剤などを用いて乳化分散することにより、調製することが可能である。
【0104】
また、その他の方法で作製した樹脂の場合は油性で水への溶解度の比較的低い溶剤に溶解するものであれば樹脂をそれらの溶剤に解かして水中にイオン性の界面活性剤や高分子電解質と共にホモジナイザーなどの分散機により水中に粒子分散し、その後加熱又は減圧して溶剤を蒸散することにより、樹脂粒子分散液を作製することができる。また、樹脂に界面活性剤を加え、ホモジナイザーなどの分散機により水中にて乳化分散する方法や転相乳化法などにより、樹脂粒子分散液を調製してもよい。
【0105】
このようにして得られた樹脂粒子分散液の粒子径は、例えばレーザー回析式粒度分布測定装置(LA−700堀場製作所製)で測定することができる。
−離型剤−
このトナーに用いられる離型剤の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、加熱により軟化点を示すシリコーン類;オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド類;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス;ミツロウ等の動物系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物・石油ワックス、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル等の高脂肪酸と高級アルコールとのエステルワックス類;ステアリン酸ブチル、オレイン酸プロピル、モノステアリン酸グリセリド、ジステアリン酸グリセリド、ペンタエリスリトールテトラベヘネート等の高級脂肪酸と単価又は多価低級アルコールとのエステルワックス類;ジエチレングリコールモノステアレート、ジプロピレングリコールジステアレート、ジステアリン酸ジグリセリド、テトラステアリン酸トリグリセリド等の高級脂肪酸と多価アルコール多量体とからなるエステルワックス類;ソルビタンモノステアレート等のソルビタン高級脂肪酸エステルワックス類;コレステリルステアレート等のコレステロール高級脂肪酸エステルワックス類などを挙げることができる。本実施の形態において、これらの離型剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、本実施の形態においては、これらの中で融点が40℃〜120℃の物が用いられるが、最近の省エネルギー対応としての低温定着性の要求に対応する為には、特に50℃〜100℃が好ましく、より好ましくは50〜80℃が良い。
【0106】
これらの離型剤の添加量としては、トナー全量に対して、0.5〜30重量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは1〜20重量%の範囲、さらに好ましくは5〜15重量%の範囲である。添加量が0.5重量%未満であると離型剤添加の効果がなく、30重量%を超えると、帯電性に影響が現れやすくなったり、現像器内部においてトナーが破壊されやすくなり、離型剤のキャリアへのスペント化が生じ、帯電が低下しやすくなる等の影響が現れる場合がある。

−着色剤−
着色剤は、通常トナー中に効果的な量、例えばトナーの約1〜約15重量%、望ましくは約3〜約10重量%存在する。このトナーの製法で使用する、着色剤としては特に限定されず、公知の着色剤を使用することができ、目的に応じて適宜選択することができる。顔料を1種単独で用いてもよいし、同系統の顔料を2種以上混合して用いてもよい。また異系統の顔料を2種以上混合して用いてもよい。前記着色剤としては、具体的には、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック;ベンガラ、アニリンブラック、紺青、酸化チタン、磁性粉等の無機顔料;ファストイエロー、モノアゾイエロー、ジスアゾイエロー、ピラゾロンレッド、キレートレッド、ブリリアントカーミン(3B、6B等)、パラブラウン等のアゾ顔料;銅フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン顔料;フラバントロンイエロー、ジブロモアントロンオレンジ、ペリレンレッド、キナクリドンレッド、ジオキサジンバイオレット等の縮合多環系顔料;等が挙げられる。
【0107】
また、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、デュポンオイルレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオキサレート、パラブラウンなどの種々の顔料;アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジゴ系、チオインジゴ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアゾール系、キサンテン系などの各種染料;などが挙げられる。これらの着色剤に透明度を低下させない程度にカーボンブラック等の黒色顔料、染料を混合してもよい。また、分散染料、油溶性染料等も挙げられる。
【0108】
着色剤分散や前記離型剤分散に於ける分散媒体は、水系が好ましく、水、純水、イオン交換水が用いられる。分散剤としては界面活性剤が用いられる。このトナーに用いられる着色剤分散液の作製は、例えばボールミル、サンドミル、アトライター等のメディア式分散機、ナノマイザー、マイクロフルイダイザー、アルティマイザー、ゴーリン等の高圧型分散機、などの公知の分散方法を用いて、記述したような粒径、含有量を満たすことができるのであれば、いかなる方法・条件により作製されるものであってもよい。
<その他の成分>
このトナーに用いられ得るその他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、無機粒子、有機粒子、帯電制御剤、離型剤等の公知の各種添加剤等が挙げられる。
【0109】
上記無機粒子は、一般にトナーの流動性を向上させる目的で使用される。該無機粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、塩化セリウム、ベンガラ、酸化クロム、酸化セリウム、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等の粒子が挙げられる。これらの中でも、シリカ粒子が好ましく、疎水化処理されたシリカ粒子が特に好ましい。
【0110】
無機粒子の平均1次粒子径(数平均粒子径)としては、1〜1000nmの範囲が好ましく、その添加量(外添)としては、トナー100重量部に対して、0.01〜20重量部の範囲が好ましい。
【0111】
有機粒子は、一般にクリーニング性や転写性、時には帯電性を向上させる目的で使用される。前記有機粒子としては、例えば、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリスチレン−アクリル共重合体等の粒子が挙げられる。
【0112】
帯電制御剤は、一般に帯電性を向上させる目的で使用される。帯電制御剤としては、例えば、サリチル酸金属塩、含金属アゾ化合物、ニグロシンや4級アンモニウム塩等が挙げられる。
<トナーの特性>
このトナーの体積平均粒子径は、1〜12μmが好ましく、3〜9μmがより好ましく、3〜8μmがより好ましい。また、本実施の形態のトナーの数平均粒子径は、1〜10μmが好ましく、2〜8μmがより好ましい。粒子径が小さすぎると製造性が不安定になり、帯電性が不十分になり、現像性が低下することがあり、大きすぎると画像の解像性が低下する。
[現像剤]
次に、静電潜像現像用現像剤(以下「現像剤」ともいう)について説明する。
【0113】
現像剤は、上記のトナーを含有する以外は特に制限はなく、目的に応じて適宜の成分組成をとることができる。この現像剤は、前記トナーを、単独で用いると一成分系の現像剤となり、また、トナーとキャリアとを組み合わせて用いると二成分系の現像剤となる。
【0114】
キャリアとしては、特に制限はなく、それ自体公知のキャリアが挙げられ、例えば、特開昭62−39879号公報、特開昭56−11461号公報等に記載された樹脂被覆キャリア等の公知のキャリアが挙げられる。
【0115】
キャリアの具体例としては、以下の樹脂被覆キャリアが挙げられる。該キャリアの核体粒子としては、通常の鉄粉、フェライト、マグネタイト造型物などが挙げられ、その体積平均粒径は、30〜200μm程度の範囲である。
【0116】
また、樹脂被覆キャリアの被覆樹脂としては、例えば、スチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のα−メチレン脂肪酸モノカルボン酸類;ジメチルアミノエチルメタクリレート等の含窒素アクリル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類;2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等のビニルピリジン類;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロぺニルケトン等のビニルケトン類;エチレン、プロピレン等のオレフィン類;弗化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン等のビニル系フッ素含有モノマー;などの単独重合体、又は2種類以上のモノマーからなる共重合体、さらに、メチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン等を含むシリコーン樹脂類、ビスフェノール、グリコール等を含有するポリエステル類、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で用いてもよいし、あるいは2種以上併用してもよい。被覆樹脂の被覆量としては、前記核体粒子100重量部に対して0.1〜10重量部程度の範囲が好ましく、0.5〜3.0重量部の範囲がより好ましい。
【0117】
キャリアの製造には、加熱型ニーダー、加熱型ヘンシェルミキサー、UMミキサーなどを使用することができ、前記被覆樹脂の量によっては、加熱型流動転動床、加熱型キルンなどを使用することができる。
【0118】
また、この現像剤においては、トナーとキャリアとの混合比としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
実施例
以下、実施例によりこのトナーをさらに具体的に説明する。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」はすべて「質量部」を意味する。
(損失弾性率の測定方法)
損失弾性率の測定方法は角周波数が6.28rad/sec、歪量0.1%、40℃で測定したものである。
損失弾性率は、正弦波振動法により測定した動的粘弾性から求めており、動的粘弾性の測定にはレオメトリックサイエンティフィック社製ARES測定装置を用いた。動的粘弾性の測定は、錠剤に成形したトナーを、8mm径のパラレルプレートにセットし、ノーマルフォースを0とした後に6.28rad/secの振動周波数で正弦波振動を与えて実施した。測定は30℃から開始し、50℃まで継続した。測定時間インターバルは30秒
、昇温は1℃/minとし、歪量を0.1%にし、複素弾性率及び正接損失を求めた。
(トナーの形状係数)
形状係数は以下の式により求めた。
形状係数=((最大径/2)×π)×100/投影面積
ここに、最大径とは、トナー粒子の平面上への投影像を2本の平行線ではさんだとき、その平行線の間隔が最大となる粒子の幅をいう。
また、投影面積とは、トナー粒子の平面上への投影像の面積をいう。
この形状係数は、走査型電子顕微鏡により2000倍にトナー粒子を拡大した写真を撮影し、ついでこの写真に基づいて「SCANNING IMAGE ANALYZER」(日本電子社製)を使用して写真画像の解析を行うことにより測定した。
この際、100個のトナー粒子を使用してこのトナーの形状係数を上記算出式にて測定したものである。
(粒度および粒度分布測定方法)
このトナーの粒度および粒度分布測定について述べる。測定する粒子が2μm以上の場合、測定装置としてはコールターマルチサイザーII型(ベックマンーコールター社製)を用い、電解液はISOTON―II(ベックマンーコールター社製)を使用した。
【0119】
測定法としては分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの5%水溶液2ml中に測定試料を0.5〜50mg加える。これを前記電解液100〜150ml中に添加した。
【0120】
試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1分間分散処理を行い、アパーチャー径として100μmアパーチャーを用いて2〜60μmの粒子の粒度分布を測定して体積平均分布、個数平均分布を求めた。測定する粒子数は50000であった。
【0121】
またこのトナーの粒度は以下の方法により求めた。測定された粒度分布を分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、粒度の小さいほうから体積累積分布を描き、累積50%となる体積平均粒径をD50と定義する。用いたトナーの体積平均粒径は該D50である。
【0122】
なおキャリアの平均粒径は電子顕微鏡(FE―SEM)による写真を撮影し、100個の粒子について個々の最大径、最少径を測定し、その和を2で割ったものを個々の粒子の粒径とした。キャリアの平均粒径は個々の個々の粒子の粒径の平均である。なお樹脂被覆を行う前のコアについての平均粒径も同様の方法で測定した。
−結晶性ポリエステル樹脂の調整−
三口フラスコにデカン酸ジメチル100質量部、1,9−ノナンジオール75.0質量部、ジブチルすずオキサイド0.08質量部を窒素雰囲気下で、180℃、8時間反応させる。反応中、生成された水は系外へ除去した。その後、徐々に減圧しながら、230℃まで温度をあげて、7時間反応させた後、冷却し、結晶性ポリエステル樹脂を得た。この結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、17000であった。
−非結晶性ポリエステル樹脂の作製−
三口フラスコにテレフタル酸ジメチル82質量部、イソフタル酸ジメチル82質量部、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物79質量部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物257質量部、ジブチルすずオキサイド0.23質量部を窒素雰囲気下で、180℃、3時間反応させる。反応中、生成された水は系外へ除去した。その後、徐々に減圧しながら、240℃まで温度をあげて、2時間反応させた後、冷却し、非結晶性樹脂を得た。この非結晶性樹脂の重量分子量は、16500であった。
−結晶性ポリエステル/非結晶性ポリエステル混合樹脂分散液の作製−
三口フラスコに、上記の結晶性ポリエステル樹脂を5質量部、上記の非晶性ポリエステル樹脂を95質量部、メチルエチルケトン50質量部、イソプロピルアルコール15質量部を加えて攪拌させながら、60℃に加熱して、樹脂を溶解させた後、10%アンモニア水溶液25質量部を加える。さらにイオン交換水400質量部を徐々に加えて、転相乳化を行った後、脱溶媒した後、固形分濃度を25%に調整し、結晶性ポリエステル/非結晶性ポリエステル混合樹脂分散液を得た。
−離型剤分散液の調製−
・パラフィンワックス(日本精蝋(株)性:HNP9,融点77℃):60質量部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株):ネオゲンRK):4質量部
・イオン交換水:200質量部
以上の成分を混合した溶液を120℃に加熱して、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザー(ゴーリン社)で分散処理し、体積平均粒径が250nmである離型剤を分散させてなる離型剤分散液を調製した。なお、この分散液の離型剤濃度が20質量%となるように水分量を調整した。
−着色剤分散液の調製−
・シアン顔料(銅フタロシアニンB15:3、大日精化社製):50質量部
・非イオン性界面活性剤ノニポール400(花王社製):5質量部
・イオン交換水:200質量部
以上の成分を混合溶解し、高圧衝撃式分散機アルティマイザー((株)スギノマシン製、HJP30006)を用いて約1時間分散し、水分量を調整して、着色剤粒子分散液(1)を得た。
−トナー母粒子の製造−
・上記の結晶性ポリエステル/非結晶性ポリエステル混合樹脂分散液:720質量部
・上記の着色剤分散液:50質量部
・上記の離型剤分散液:70質量部
・カチオン界面活性剤・(花王(株)製:サニゾールB50):1.5質量部
以上の成分を丸型ステンレス製フラスコ中に収容し、0.1規定の硫酸を添加してpHを3.8に調整した後、凝集剤としてポリ塩化アルミニウムの濃度が10重量%の硝酸水溶液30質量部を添加した。
【0123】
その後にホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて30℃において分散した後、加熱用オイルバス中で40℃まで加熱した。得られたコア凝集粒子の体積平均粒径を測定すると、5.2μmであった。
【0124】
この凝集粒子分散液を40℃で30分間保持した後、このコア凝集粒子が形成された分散液中に、非結晶性樹脂分散液を緩やかに160質量部追加し1時間保持した。得られた付着樹脂凝集粒子の体積平均粒径は6.2μmであった。0.1規定の硝酸を添加してpHを7.0に調整した後、攪拌を継続しながら95℃まで加熱し、5時間保持した。
【0125】
その後、20℃/minの速度で20℃まで冷却し、これをろ過し、イオン交換水で洗浄した後、真空乾燥機を用いて乾燥させることによりトナー母粒子を得た。得られたトナー母粒子の体積平均粒径は6.1μmであった。
−キャリヤの製造−
・フェライト粒子(体積平均粒径:50μm):100質量部
・トルエン:14質量部
・スチレン−メチルメタクリレート共重合体(成分比:スチレン/メチルメタクリレート=90/10、重量平均分子量Mw=80000):2質量部
・カーボンブラック(R330:キャボット社製):0.2質量部
まず、フェライト粒子を除く上記成分を10分間スターラーで撹拌させて、分散した被覆液を調製し、次に、この被覆液とフェライト粒子とを真空脱気型ニーダーに入れて、60℃において30分撹拌した後、さらに加温しながら減圧して脱気し、乾燥させることによりキャリアを得た。
−現像剤の作製−
上記のトナー母粒子について、外添剤として市販のヒュームドシリカRX50(日本アエロジル製)をおのおののトナー母粒子100質量部に対して1.2質量部添加し、ヘンシェルミキサーで混合して静電荷像現像用トナーを得た。ついで、このトナー8質量部と上記キャリア100質量部とを混合して二成分現像剤を調整した。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】プリンタの概略構成図である。
【図2】図1に示す現像器の上面からの透視図である。
【図3】図2に示す現像器の断面図である。
【図4】現像ロール、搬送ロール、および吸着ロールへの電圧印加の様子を示す図である。
【図5】第2実施形態のプリンタの現像器に備えられている現像ロール、搬送ロール、および吸着ロールへの電圧印加の様子を示す図である。
【符号の説明】
【0127】
1 プリンタ
10 感光体
11 帯電ロール
12 レーザ露光器
13 現像器
131 撹拌搬送部材
132 現像剤収容槽
133 現像ロール
134 搬送ロール
135 吸着ロール
136 トナー回収箱
34 電圧制御器
341 マイナス電源
342 プラス電源
14 転写ロール
15 定着器
16 用紙カセット
17 用紙搬送装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に像が形成されて該像を保持する像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電させる帯電器と、
前記帯電器により帯電された前記像保持体の表面を露光することで該表面に静電的な潜像を形成する潜像形成部と、
前記像保持体表面に形成された潜像にトナーを付着させてトナー像を形成する、該トナーを含んだ現像剤を内部に収容した現像器とを備え、
前記帯電器が、前記像保持体の表面のうち、予め決められた端部を除いた本体部を帯電させるものであり、
前記現像器が、
前記像保持体に隣り合った、表面に前記現像剤を保持して回転することで該現像剤を、該像保持体に面した、前記端部に面した部分も含む現像領域へと搬送する現像ロールと、
前記現像ロールに隣り合い該現像ロールの回転軸に沿って延びた、内部に前記現像剤を収容して該現像剤を該現像ロールに供給する、収容した現像剤を攪拌しつつ該回転軸に沿って、前記端部から遠い方から該端部に近づく方へと向かう第1方向に搬送する第1収容部と、
前記第1収容部に隣接し該第1収容部に並んで延びた、両端に、該第1収容部との間で現像剤が移動する移動口が設けられた、内部に前記現像剤を収容しトナーが供給されて該現像剤と該トナーを攪拌して混合しつつ前記第1方向とは逆の第2方向に搬送する第2収容部と、
トナー供給口を通じて前記第2収容部へトナーを供給するトナー供給部と
前記第2方向への搬送における前記トナー供給口よりも下流側で前記第2収容部から現像剤を得、該現像剤を表面に保持して搬送した後、前記第2収容部に戻す搬送体と、
前記搬送体に隣り合った、該搬送体とは電位差を有する、この電位差で、該搬送体によって搬送中の現像剤から前記トナーを吸着する吸着体とを備えたものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記端部が、前記現像ロールと前記本体部との間に生じている電界の向きと同じ向きの電界を該現像ロールと該端部との間に生じさせる電位差であって、該現像ロールと該本体部との間の電位差よりも大きな電位差を該現像ロールとの間に有するものであることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記搬送体および前記吸着体は、それら搬送体と吸着体との間に前記現像ロールと前記本体部との間の電位差よりも小さい電位差が生じるとともに、該搬送体に対する該吸着体の相対電位の極性が、該現像ロールに対する該本体部の相対電位の極性と同極性となる電位が付与されたものであることを特徴とする請求項1または2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記搬送体および前記吸着体は、該搬送体に対する該吸着体の相対電位の極性が、該現像ロールに対する該本体部の相対電位の極性とは逆極性となる電位が付与されたものであることを特徴とする請求項1または2記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記搬送体と前記吸着体との間に電位差を付与する電位差付与部であって、それら搬送体および吸着体の間に前記現像ロールと前記本体部との間の電位差よりも小さい電位差が生じるとともに、該搬送体に対する該吸着体の相対電位の極性が、該現像ロールに対する該本体部の相対電位の極性と同極性となる電位差、および、該搬送体に対する該吸着体の相対電位の極性が、該現像ロールに対する該本体部の相対電位の極性とは逆極性となる電位差とを切り換えて付与する電位差付与部を備えたことを特徴とする請求項1から4いずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記搬送体が、ロール状の外形を有し、周面に前記現像剤を保持して回転することで該現像剤を吸着体に面した領域へと搬送するものであり、
前記吸着体が、ロール状の外形を有し、回転しながら周面に、前記領域に搬送された現像剤から前記トナーを吸着するものであることを特徴とする請求項1から5いずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−151955(P2010−151955A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−327969(P2008−327969)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】