説明

画像形成装置

【課題】ファン等とされる気流発生手段動作時の騒音と気流手段停止時の排気、排熱を両立することのできる画像形成装置を提供する。
【解決手段】経路に発熱部を含み、その両端が装置外部に開口したエアフロー経路と、エアフロー経路の入口から出口に向けた気流を発生させる気流発生手段と、を有する画像形成装置において、エアフロー経路の発熱部の上流及び下流にケミカルエミッションを除去するフィルタ部材を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱部からのエアーを装置外に排出するエアフロー経路を有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、本体内の発熱部の熱を機外に排出するためのエアフロー経路を有する画像形成装置は公知である。また、このエアフロー経路の排気部にフィルタを設け、臭い、オゾン等、画像形成装置からの排出物の低減を行うことも公知である。
【0003】
近年においては、オフィス環境の快適性への要求の高まり等からこれらの排出物の低減への要求はますます高いものとなってきている。
【0004】
一方で、このような排気に伴うファン等、気流発生手段の騒音は、上記オフィス環境の快適性の観点からは低減が望まれる。
【0005】
この騒音の課題に対し、特許文献1においては、排気の吹き出し口を画像形成装置下面に設けることで、装置外に漏れ出る気流発生手段の騒音を低減している。
【0006】
また、特許文献2においては、排気のエアフロー経路内に発熱部である熱定着装置の熱気による加熱を受ける部分を設けると共に、排気口をこの熱定着装置の熱気を受ける部分より上方、吸気口を該熱気を受ける部分よりも下方に設けた画像形成装置を提案している。
【0007】
このように構成することで、気流発生手段を停止した場合も熱定着装置からの熱気による自然対流を利用して排気口からの排気を行えるようにし、気流発生手段の稼動を最小限にすることで騒音の低減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−271272号公報
【特許文献2】特許第2626031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、これら従来技術においては、以下のような課題を有する。
【0010】
特許文献1の画像形成装置においては、気流発生手段が稼動しているときには機内の排気を低騒音に効率的に実現できる。しかし、気流発生手段を停止すると発熱部近傍のエアーは自然対流で機内に広がり易く、熱によるトナーの固着等の問題を起こし易い。また、自然対流で機内に広がったエアーは、画像形成装置の隙間から機外に漏れて、臭い等によりオフィスの快適性を損なう可能性があった。
【0011】
また、特許文献2の画像形成装置においては、気流発生手段停止時の排気は自然対流で確保されるが、排気口が画像形成装置の比較的高い場所にあるため、気流発生手段稼動時の騒音が耳に付き易く、やはりオフィスの快適性を損なうことになる。
【0012】
そこで、本発明の目的は、ファン等とされる気流発生手段動作時の騒音と気流手段停止時の排気、排熱を両立することのできる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的は本発明に係る画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明は、経路に発熱部を含み、その両端が装置外部に開口したエアフロー経路と、前記エアフロー経路の入口から出口に向けた気流を発生させる気流発生手段と、を有する画像形成装置において、
前記エアフロー経路の前記発熱部の上流及び下流にケミカルエミッションを除去するフィルタ部材を設けたこと特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、エアフロー経路の発熱部の上下流にケミカルエミッションを除去するフィルタ部材を設ける。これにより、気流発生手段を停止した場合、発熱部の余熱による熱対流で排気が行われる際に、臭い等の漏れのない良好なオフィス環境を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一実施例の概略構成断面図である。
【図2】本発明に係る画像形成装置の左後視図である。
【図3】本発明に係る画像形成装置の外装カバー内部の様子を表す図である。
【図4】本発明に係る画像形成装置の後下視図である。
【図5】本発明に係る画像形成装置に用いられる排気用フィルタユニットの概略図である。
【図6】本発明に係る画像形成装置に用いられる排気用フィルタユニットの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0017】
実施例1
図1に、本発明に係る画像形成装置の一実施例の概略構成を示す。本実施例にて、画像形成装置100は、電子写真方式の複写機とされる。
【0018】
本実施例にて、画像形成装置100は、原稿台ガラス101を有し、この原稿台ガラス101の上に原稿Oを画像面を下向きにして所定の載置基準に従って載置し、その上から原稿圧着板102を被せてセットする。コピースタートキーが押されると、移動光学系を含む画像光電読取装置(リーダ部)103が動作して原稿台ガラス101上の原稿Oの下向き画像面の画像情報が光電読取処理される。原稿台ガラス101上に原稿自動送り装置(ADF、RDF)を搭載して原稿を原稿台ガラス101上に自動送りさせることもできる。
【0019】
画像形成装置100は、画像形成部を構成する像担持体としての回転ドラム型の電子写真感光体(以下、「感光ドラム」という。)104を備えており、感光ドラム104は、矢印の時計方向に所定の周速度にて回転駆動される。感光ドラム104は、その回転過程で、帯電装置105により所定の極性・電位の一様な帯電処理を受ける。次いで、感光ドラム104は、その一様帯電面に対して画像書き込み装置106による像露光Lを受けることで一様帯電面の露光明部の電位が減衰して感光ドラム104面に露光パターンに対応した静電潜像が形成される。画像書き込み装置106は、本例の場合はレーザースキャナであり、不図示のコントローラからの指令により、上記の光電読取装置103で光電読取した原稿画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調されたレーザー光Lを出力する。レーザー光Lは、回転する感光ドラム104の一様帯電面を走査露光して原稿画像情報に対応した静電潜像を形成する。
【0020】
次いで、その静電潜像が現像装置107によりトナー画像として現像される。トナー像は、転写帯電装置108の位置において、給紙機構部側から感光ドラム104と転写帯電装置108との対向部である転写部Tに所定の制御タイミングにて給送された記録材Sに感光ドラム104面側から静電転写される。
【0021】
給紙機構部は、本実施例の画像形成装置の場合は、第一〜第四のカセット給紙部109〜112、MPトレー(マルチ・パーパス・トレー)113、及び反転再給紙部114からなる。記録材Sは、これら給紙部からレジストローラ115を介して転写部Tに選択的に給送される。レジストローラ115は、転写部Tに対して記録材Sを所定のタイミングで給送する。
【0022】
転写部Tで感光ドラム104面側からトナー画像の転写を受けた記録材Sは、感光ドラム104面から分離され、定着装置116へ搬送されて未定着トナー画像の定着処理を受け、排紙ローラ117により装置外部の排紙トレー118上に排紙される。
【0023】
一方、記録材分離後の感光ドラム104面は、クリーニング装置119により転写残りトナー等の付着汚染物の除去を受けて清掃されて繰り返して作像に供される。
【0024】
両面コピーモードの場合は、定着装置116を出た第一面コピー済みの記録材Sが反転再給紙部114に導入されて転写部Tに反転再給送されることで記録材Sの第二面に対するトナー画像の転写がなされる。その後、再び定着装置116を通って両面コピーとして排紙ローラ117により装置外部の排紙トレー118上に排紙される。
【0025】
図2は、本実施例の画像形成装置100の左後視図、図3は、画像形成装置100から外装カバーを外した様子を示す図である。
【0026】
図2において、外装カバーは、後カバー50、左カバー51、天板52にて構成される。前カバー、右カバー等は図示していない。また、画像形成装置100は、図3に示すように、通常は外装カバーに覆われている前側板54、後側板55を有し、これら側板54、55の間に、画像形成装置100の画像形成部(不図示)や定着装置116を含むエンジン部分を配置し、囲包して支持している。
【0027】
後カバー50と後側板55の間には排気ダクト56が配置されており、後側板55の穴(不図示)から定着上カバーダクト68を介して、発熱部である定着装置116の周辺のエアーを吸引している。排気ダクト56は、後カバー50を装着すると後側板55の穴から図4に示す本体下面の底板58に設けられたエアフロー経路の出口としての排気開口57まで略密閉されている。そして、気流発生手段である、図3に示す排気ファン59の作用によりエアーを底板58とキャスタ60の接地部の間の空間に排気するように構成されている。
【0028】
排気ファン59の上方にはフィルタユニット61が設けられており、定着装置116周辺から排出されるケミカルエミッション、即ち、臭い物質などの排気物質を含んだエアーから、これらケミカルエミッションである排気物質を除去するようになっている。
【0029】
フィルタユニット61は、図2に示す後子カバー62を外すと、図5に示すようなユニットとして画像形成装置100から取り外すことが可能である。フィルタケース63の内部には、図6の断面図に示すような2種類のフィルタ部材64、65が装着されている。図6において、フィルタ部材64は、2枚の不織布の間に活性炭の粒を担持したプリーツ状の脱臭フィルタであり、フィルタ部材65は、アルミのハニカム基材に二酸化マンガン触媒をコートしたオゾンフィルタである。これらのフィルタ部材64、65は必要に応じてそれぞれ交換可能となっている。
【0030】
また、図2に示すように、天板52にはエアフロー経路の入口としての開口67が設けられており、図3に示すように、定着上カバーダクト68と吸気ダクト69を介して連結されている。吸気ダクト69の開口67近傍には、図3に示すように、第2のフィルタ部材(上流側フィルタ部材)71が設けられている。第2のフィルタ部材71は、本体排気用の脱臭フィルタ(下流側フィルタ部材)64と同様の不織布に活性炭粒を担持させた脱臭フィルタであり、脱臭フィルタ64よりは厚さの薄い、気流抵抗の少ないものが用いられている。即ち、本実施例では、発熱部である定着装置116の上流側フィルタ部材71の気流抵抗が下流側イフィルタ部材64の気流抵抗より小さくされる。
【0031】
続いて、これらのエアフロー経路の働きについて説明する。
【0032】
前述のように画像形成動作が開始されると、画像形成部や定着装置116を有するエンジン部の内部にはオゾンや定着熱起因の臭い物質が生成される。これら排気物質を含んだエアーはファン59の作用で排気ダクト56に吸引され、画像形成装置の隙間等から外部に漏れるのが防止されると共にエンジン内部も所定以下の排気物質濃度に保たれる。排気ダクト59に吸引された排気物質は、フィルタユニット61により除去され排気開口57からは臭い等のないオフィス環境に好適なエアーが排気される。また、気流発生手段であるファン59は、ユーザから離れた本体下部に装着され、また、近傍の開口57もユーザが存在しない下方を向いているため、その騒音はオフィス環境に好適なレベルに低減されている。
【0033】
一方、画像形成動作が終了すると、画像形成装置100は、次の画像形成動作が始まるまで待機状態になる。その際にはファン59は停止され、画像形成装置100は、騒音の発生しないオフィス環境に好適な状態となる。このときにも定着装置116は余熱をもっているため、臭い物質等が発生し続けているが、これらの臭い物質を含むエアーは、自然対流により吸気ダクト69を介して脱臭フィルタ71を通過後、開口67より排出される。
【0034】
自然対流によってエアフロー経路内に発生するエアーは流速が遅い為、薄い脱臭フィルタ71でも十分におい物質を除去することができる。
【0035】
以上示したように、本実施例において、エアフロー経路の両端は、装置外部に開口している。開口67から開口57に至るエアフロー経路においては、ファン57動作時とファン停止時でエアフローの流れが逆になるような構成となっており、騒音の少ない好適な状態で臭い物質等の排気物質のフィルタ除去を行うことができる。また、上方開口67に設けた脱臭フィルタ71の気流抵抗を小さくすることができ、エアフロー経路全体として低圧損な効率の良いものとし、さらに好適なオフィス環境を実現することができる。
【0036】
つまり、本発明によれば、ファン等気流手段動作時の騒音と気流手段停止時の排気、排熱を両立することができる。
【0037】
即ち、定着装置等発熱部におけるエアーを排気するエアフロー経路において、気流発生手段による排気を画像形成装置下方に行い、エアフロー経路の吸気口を上方に設ける。気流発生手段停止時はこの吸気口に自然対流でエアーが流れ、排気が行われる。吸気口、排気口双方にもケミカルエミッション除去フィルタを設けることで、常時においの無い好適な排気が実現できる。
【0038】
更に言えば、本発明によれば、エアフロー経路の発熱部の上下流にケミカルエミッションを除去するフィルタ部材を設ける。これにより、気流発生手段を停止した場合、発熱部の余熱による熱対流で排気が行われる際に、臭い等の漏れのない良好なオフィス環境を実現することができる。
【0039】
また、気流発生手段を作動させて排気を行うときには装置下方のエアフロー経路出口から効率的に低騒音に排気を行うことができる。画像形成装置待機時等、気流発生手段を停止したい場合には、発熱部の余熱による熱対流により装置上方のエアフロー経路入口から排気が行われる。この為、画像形成装置の稼動時も待機時も騒音や臭い漏れ等のない、良好なオフィス環境を実現することができる。
【0040】
また、気流発生手段を停止した場合の熱対流による上方開口部へのエアフローは、気流発生手段を作動させたときのエアフローよりも流速は緩やかなものとなる。このため、上方排気時のエアーがフィルタ部材に接触する時間は、気流発生手段による下方排気時よりも長くなるため、排出物質のフィルタ部材による除去率は相対的に高くなり、上方に配設されたフィルタ部材については目を粗くしたり、厚さを薄くしたりし、気流抵抗を小さくしても十分な除去性能を確保できる。
【0041】
従って、発熱部上流側のフィルタ部材の気流抵抗を下流側のフィルタ部材の気流抵抗よりも小さくすることで、トータルとしての流路抵抗の少ないエアフロー経路を形成することができ、気流発生手段に多大なパワーを掛けることなく、臭い等の漏れのない良好なオフィス環境を簡易に実現することができる。
【符号の説明】
【0042】
50 後カバー
51 左カバー
52 天板
54 前側板
55 後側板
56 排気ダクト
57 排気開口
58 底板
59 排気ファン(気流発生手段)
61 排気フィルタユニット
64 脱臭フィルタ(フィルタ部材)
65 オゾンフィルタ(フィルタ部材)
66 排紙口
67 開口
68 定着上カバーダクト
69 吸気ダクト
71 第2脱臭フィルタ(フィルタ部材)
100 画像形成装置
116 定着装置(発熱部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経路に発熱部を含み、その両端が装置外部に開口したエアフロー経路と、前記エアフロー経路の入口から出口に向けた気流を発生させる気流発生手段と、を有する画像形成装置において、
前記エアフロー経路の前記発熱部の上流及び下流にケミカルエミッションを除去するフィルタ部材を設けたこと特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記エアフロー経路の入口が前記発熱部の上方に配置され、前記エアフロー経路の出口が前記発熱部の下方に配置されることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
上記発熱部の上流側フィルタ部材の気流抵抗が下流側フィルタ部材の気流抵抗よりも小さいことを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−204534(P2010−204534A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−51958(P2009−51958)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】