説明

画像形成装置

【課題】画像形成媒体に対する画像形成の生産効率を向上することのできる技術を提供する。
【解決手段】用紙の搬送方向と直交する用紙幅方向の最大印刷可能範囲に対して画像形成可能な複数のノズル10aが形成されたラインヘッド部11を備えるプリンター3において、最大印刷可能範囲よりも狭い幅の用紙に画像形成する場合に、用紙に対して画像を形成するためのノズル群を備えるヘッド10の温度を測定する温度センサー13と、ヘッド10の温度が停止基準温度以上であるか否かを判定する温度判定部4bと、温度が停止基準温度以上である場合に、用紙に対して画像を形成するためのノズル群を変更して、用紙に対して画像を形成させる印刷制御部4aとを有するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成媒体の搬送方向と直交する媒体幅方向の最大印刷可能範囲に対して画像形成可能な複数のノズルが形成されたラインヘッド部を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、産業用途向けのプリンターにおいては、印刷速度に対する要求が高く、ヘッドを画像形成媒体(例えば、用紙)の幅方向に移動させて印刷させるようなコンシューマープリンターでは、その印刷速度に対する要求を満たすことができない。そこで、用紙の幅方向の一列全体の範囲に対してインクを吐出させることのできるラインヘッド部を備え、ヘッドの移動を伴わずに用紙の幅方向の印刷が可能なラインインクジェットプリンターが採用されるようになっている。
【0003】
ラインインクジェットプリンターにおいては、ラインヘッド部を複数の小型のヘッドにより構成する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−103598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、特許文献1に開示された技術によると、用紙に対して画像を形成する場合には、用紙を常に用紙幅方向の同じ位置を搬送させつつ、ラインヘッド部により用紙上に画像を形成させるようにしている。
【0006】
このため、例えば、画像の高濃度な部分の印字を行う特定のヘッド及びその駆動回路のみに発熱が偏ってしまう虞がある。プリンターにおいては、ヘッドが或る温度を超えてしまうと正常な動作を保証することができなくなるため、印刷動作を一時停止して、ヘッドの温度が低下することを待って、再び印刷を行うようにすることが行なわれる。このため、画像形成の生産効率が低下してしまう問題がある。
【0007】
一方、ヘッドの放熱効率を向上することにより、プリンターの稼働時間を延長して生産効率を向上することが可能であるが、装置コストが増加するとともに、装置サイズが増大するという問題がある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、画像形成媒体に対する画像形成の生産効率を向上することのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的達成のため、本発明の第1の観点に係る画像形成装置は、画像形成媒体の搬送方向と直交する媒体幅方向の最大印刷可能範囲に対して画像形成可能な複数のノズルが形成されたラインヘッド部を備える画像形成装置において、最大印刷可能範囲よりも狭い幅の狭幅画像形成媒体に画像を形成させる場合に、狭幅画像形成媒体に対して画像を形成するためのノズル群の温度を測定する温度測定手段と、ノズル群の温度が所定の第1基準温度以上であるか否かを判定する第1温度判定手段と、温度が第1基準温度以上である場合に、狭幅画像形成媒体に対して画像を形成するためのノズル群を変更して、狭幅画像形成媒体に対して画像を形成させる画像形成制御手段とを有する。
【0010】
係る画像形成装置によると、ノズル群の温度が第1基準温度上になった場合に、画像を形成するためのノズル群を変更して画像を形成させるので、同じノズル群により継続して画像を形成させる場合に比して、ノズルの温度が上昇する割合を抑制することができるので、画像形成装置の動作可能な時間の割合を向上することができ、画像形成の生産効率を向上することができる。
【0011】
上記画像形成装置において、ラインヘッド部は、狭幅画像形成媒体に対して画像を形成させる候補となるノズル群のグループを複数備え、画像形成制御手段は、狭幅画像形成媒体に対して画像を形成させるグループを代えることにより、狭幅画像形成媒体に対して画像を形成するためのノズル群を変更するようにしてもよい。係る画像形成装置によると、画像形成を行うノズル群をグループ単位で変更することができる。
【0012】
また、上記画像形成装置において、複数のノズルは、同一のノズルが複数のグループに属しないようにグループ分けされていてもよい。係る画像形成装置によると、同一のノズルが複数のグループに属しないので、グループを変更することにより、画像形成に利用するノズルが、連続して使用されることがなく、ノズルの温度の上昇を適切に抑制することができる。
【0013】
また、上記画像形成装置において、幅狭画像形成媒体に対して画像を形成するためのノズル群の位置に応じて、狭幅画像形成媒体の媒体幅方向の搬送位置を変更する搬送位置変更手段を更に有するようにしてもよい。係る画像形成装置によると、搬送位置変更手段により、狭幅画像形成媒体の媒体幅方向の搬送位置を変更することができるので、画像を形成するためのノズルにより、狭幅画像形成媒体に適切に画像を形成することができる。
【0014】
また、上記画像形成装置において、狭幅画像形成媒体を収容し、狭幅画像形成媒体の媒体幅方向の搬送位置が異なる複数の媒体収容部を有し、画像形成制御手段は、幅狭画像形成媒体に対して画像を形成するためのノズル群の位置に対応する搬送方向の搬送位置に搬送可能な媒体収容部から狭幅画像形成媒体を給紙させるようにしてもよい。係る画像形成装置によると、狭幅画像形成媒体を適切な搬送位置に搬送することができる。
【0015】
また、上記画像形成装置において、画像形成制御手段は、画像の形成を行うノズル群が、狭幅画像形成媒体の媒体幅方向の搬送位置に対応するように、ラインヘッド部を媒体幅方向に移動させるようにしてもよい。係る画像形成装置によると、狭幅画像形成媒体の媒体幅方向の搬送位置に対応するように、ラインヘッド部を媒体幅方向に移動させるので、狭幅画像形成媒体に適切に画像を形成することができる。
【0016】
また、上記画像形成装置において、温度測定手段は、狭幅画像形成媒体に対して画像の形成を行うノズル群の媒体幅方向の複数の領域の温度を測定し、少なくともいずれか1つの前記領域の温度が、第1基準温度をよりも低い第2基準温度以上であるか否かを判定する第2温度判定手段を更に備え、画像形成制御手段は、少なくともいずれか一つの領域の温度が、第2基準温度以上であると判定された場合に、画像を所定角度回転させた回転画像に対応する回転画像データに基づいて、回転画像を狭幅画像形成媒体に形成させるようにしてもよい。係る画像形成装置によると、画像形成を行うノズル群の複数の領域の少なくともいずれか1つが、第2基準温度以上である場合に、画像を所定角度回転させた回転画像に対応する回転画像データにより回転画像を形成するようにしているので、ノズル群における各領域の温度を均一化するように作用させることができる。これにより、ノズル群の温度上昇傾向を抑制することができ、画像の生産効率を向上することができる。
【0017】
また、上記画像形成装置において、少なくともいずれか1つの領域の温度が第2基準温度以上であると判定された場合に、画像を所定角度回転させた回転画像に対応する回転画像データにより画像を形成することにより、第2基準温度以上の領域のノズルの温度上昇を低減させることができるか否かを判定する回転効果判定手段を更に備え、画像形成制御手段は、第2基準温度以下の領域のノズルの温度上昇を低減させることができると判定した場合に、画像を回転させた回転画像に対応する回転画像データに基づいて、回転画像を狭幅画像形成媒体に形成させるようにしてもよい。係る画像形成装置によると、画像を回転させて印刷させることにより、ノズル群の温度上昇を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係るプリンターのラインヘッド部周辺の一部構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る画像形成システムの機能構成図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る画像の印刷ポジション及び印刷状況を説明する図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る回転判定テーブルの一例の構成図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る印刷処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0020】
まず、本発明の一実施形態に係る画像形成システムにおける画像形成装置の一例としてのプリンターについて説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係るプリンターのラインヘッド部周辺の一部構成図である。
【0022】
プリンター3には、図示しない用紙カセットから供給される紙、OHPシート、布等の用紙(画像形成媒体)を搬送するベルト12が備えられている。ベルト12は、図示しないモーターにより駆動される。ベルト12は、用紙に印字(印刷、画像形成ともいう)を行う際には、用紙を搬送方向(用紙搬送方向X)、すなわち、上流側(図1左側)から下流側(図1右側)に略一定の速度で搬送する。
【0023】
プリンター3においては、複数のサイズの用紙に印刷を行うことができるようになっている。本実施形態では、プリンター3においては、図1に示すように幅W(最大印刷可能範囲の幅)までの種々のサイズの用紙の印刷が可能である。
【0024】
また、プリンター3には、最大印刷可能範囲の全体を印刷可能なように複数のノズル10aが設けられたラインヘッド部11が設けられている。ラインヘッド部11は、複数のノズル10aが形成されたヘッド10を有する。
【0025】
ヘッド10は、インクを噴射する複数のノズル10aが、用紙が搬送される側(図1下方側)に向けて設けられている。本実施形態では、ヘッド10には、例えば、用紙搬送方向Xに垂直な用紙幅方向Yに複数個(例えば、180個)のノズル10aが並んだノズル列が形成され、このノズル列が用紙搬送方向Xに複数列(例えば、8列)並んで形成されている。プリンター3は、例えば、4色のインクにより印刷を行うものであり、イエロー、マゼンタ、シアン、黒の各色にそれぞれ2本のノズル列が割り当てられ、同一の色のノズル列は、用紙幅方向Yにおける各ノズルの位置が所定量(例えば、ノズル列におけるノズルピッチの半分)ずれるように配置されている。ヘッド10においては、各ノズル10aに対応するように、供給される駆動信号に応じて伸縮する図示しない圧電振動子が設けられている。ヘッド10は、印刷用の画像データに基づいて、駆動信号の圧電振動子への供給を制御することにより、圧電振動子の伸縮を制御して、ノズル10aからのインクの噴射を制御できるようになっている。
【0026】
ラインヘッド部11は、複数のヘッド10が用紙幅方向Yに対して、千鳥状(互い違い)に並ぶように構成されている。ラインヘッド部11における上流側に配置された複数のヘッド10は、所定の間隔をあけて用紙幅方向Yに沿って配列されている。ラインヘッド部11における下流側に配置された複数のヘッド10のそれぞれは、最大印刷可能幅Wにおいて上流側のヘッド10によって印刷できない部分(例えば、各ヘッド10の間)の印刷を補うように配置されている。このように、複数のヘッド10を配置することによって、用紙幅方向の最大印刷可能幅Wの全体に亘って所定の解像度(例えば、360dpi)によりインクを噴射できるようになっている。
【0027】
また、各ヘッド10には、各ヘッド10におけるノズル10aの温度を測定する温度測定手段の一例としての温度センサー13が設けられている。例えば、温度センサー13は、サーミスターによって構成されている。
【0028】
図2は、本発明の一実施形態に係る画像形成システムの機能構成図である。
【0029】
画像形成システム1は、PC(Personal Computer)2と、プリンター3とを有する。
【0030】
PC2は、例えば、CPU、ROM、RAM等を備え、各種処理を実行する。PC2は、プリンター3で利用する印刷用の画像データ(印刷データ、ビットマップデータ、ドットパターンデータともいう)を生成する。印刷データには、プリンター3における複数のノズルのそれぞれにより吐出するドットに対応する階調値のデータ(階調データ)が含まれる。また、PC2は、印刷データをプリンター3に送信する。
【0031】
プリンター3は、全体管理部4と、ヘッド制御部5と、搬送位置変更手段の一例としての給紙制御部6と、紙搬送制御部7と、排紙制御部8と、温度計測部9とを有する。
【0032】
ヘッド制御部5は、印刷データをヘッド10に送信し、ヘッド10による画像形成を制御する。給紙制御部6は、用紙を収容する図示しない媒体収容部の一例としての用紙カセットから用紙を取り出し、ベルト12上の上流側において、用紙幅方向の所定の位置に用紙を供給する。本実施形態では、給紙制御部6は、用紙カセットを用紙幅方向に移動させることにより、印刷を行う1以上のヘッド10のポジションに対応する用紙幅方向の位置に用紙を供給する。
【0033】
図3は、本発明の一実施形態に係る画像の印刷ポジション及び印刷状況を説明する図である。
【0034】
本実施形態においては、例えば、最大印刷可能範囲の幅よりも狭い幅の用紙(狭幅画像形成媒体)を印刷する場合には、図3に示すように、ラインヘッド部11の一部のヘッド10(例えば、用紙幅方向に連続する4つのヘッド10のグループ)によって印刷するようにしている。本実施形態では、各ヘッド10が複数のグループに属しないようにグループ分けしており、4つのヘッド10のグループを3つ備えている。ここで、各グループがそれぞれ印刷を担当する領域をポジションという。
【0035】
したがって、4つのヘッド10のグループで印刷できる幅の用紙については、給紙制御部6は、印刷を担当するグループによって、用紙をいずれかのポジションに対応する位置に用紙を供給する。
【0036】
図2の説明に戻り、紙搬送制御部7は、給紙制御部6によりベルト12の上流側に供給された用紙を、ベルト12を駆動することにより搬送する。排紙制御部8は、ベルト12の下流側において、ベルト12により搬送された用紙を所定の用紙排出トレイに排出する。
【0037】
温度計測部9は、各ヘッド10の温度センサー13からの温度の情報を取得し、全体管理部4に通知する。
【0038】
全体管理部4は、プリンター3における全体の処理を統括して管理する。全体管理部4は、画像形成制御手段の一例としての印刷制御部4aと、第1温度判定手段及び第2温度判定手段の一例としての温度判定部4bと、回転効果判定手段の一例としての回転判定部4cとを有する。
【0039】
温度判定部4bは、温度計測部9から取得した各ヘッド10の温度の情報に基づいて、用紙の印刷に現在利用している複数のヘッド10(ノズル群)の内のいずれか1つのヘッド10の温度が、プリンター3の印刷動作を停止させる基準となる停止基準温度(第1基準温度)以上であるか否かを判定する。
【0040】
また、温度判定部4bは、印刷に現在利用している複数のヘッド10の温度の情報に基づいて、少なくともいずれか1つのヘッド10の温度が画像を回転させて印刷させる基準となる温度(回転基準温度:第2基準温度)以上であるか否かを判定する。ここで、回転基準温度は、停止基準温度よりも低い温度であり、例えば、停止基準温度の70パーセントの温度である。
【0041】
回転判定部4cは、印刷に現在利用している複数のヘッド10の内の少なくともいずれか1つのヘッド10の温度が回転基準温度以上である場合に、画像を所定角度(例えば180度)回転させた画像を用紙に形成させることにより、回転基準温度以上のヘッド10のノズルの温度上昇を低減させることができるか否かを判定する。
【0042】
本実施形態では、回転判定部4cは、回転基準温度以上のヘッド10のノズルの温度上昇を低減させることができるか否かを、回転判定テーブルを用いて判定している。
【0043】
図4は、本発明の一実施形態に係る回転判定テーブルの一例の構成図である。
【0044】
図4は、4つの領域a〜d(例えば、4つのヘッド10)のノズルによって印刷される画像における回転が有効であるか否かを管理する回転判定テーブルを示している。
【0045】
図4においては、回転判定テーブルの各行が各領域(ここでは、ヘッド10)における温度を示し、回転基準温度に到達している場合には、”×”で示し、回転基準温度に到達していない場合には、”○”により示している。そして、回転判定テーブルの各列が各領域の温度の組み合わせと、その温度の組み合わせ時における、画像の回転が有効である(すなわち、回転基準温度以上のヘッド10のノズルの温度上昇を低減させることができる)か、又は無効であるかを示している。例えば、回転判定テーブルの左から1列目は、領域aが回転基準温度に到達し、領域b〜dが回転基準温度に到達していないことを示しており、この時には、画像を所定角度(ここでは、180度)だけ回転させることにより、回転基準温度に到達した領域aに、温度上昇傾向が低い画像部分(領域dにより形成されていた画像部分)を形成させるようにすることができるので、画像の回転が有効であることを示している。なお、180度回転させる場合には、領域a、領域b、領域c、領域dが形成していた画像部分は、それぞれ領域d、領域c、領域b、領域aが形成することとなる。
【0046】
図2の説明に戻り、印刷制御部4aは、PC2から印刷データを受信し、全体管理部4内のメモリーに格納する。
【0047】
また、印刷制御部4aは、印刷データに基づいて、当該印刷データの画像を所定角度(例えば、180度)回転させた画像(回転画像)の印刷データ(回転画像データ)を生成し、全体管理部4内のメモリーに格納する。
【0048】
また、印刷制御部4aは、印刷に現在利用している複数のヘッド10の内の少なくともいずれか1つのヘッド10の温度が回転基準温度以上である場合であって、画像を所定角度(例えば180度)回転させた画像を用紙に形成させることにより、回転基準温度以上のヘッド10のノズルの温度上昇を低減させることができる場合に、回転画像データに基づいて、ヘッド制御部5により画像を形成させる。このように回転画像データに基づいて画像を形成させると、例えば、図3に示すように、通常時の画像の印刷時における高濃度部分を担当するヘッド10と、回転時の画像の印刷時における高濃度部分を担当するヘッド10とを異ならせることができる。このため、ヘッド10のグループにおけるヘッド10の温度上昇を均一化でき、グループのノズル群における温度上昇傾向を抑制して、画像の生産効率を向上することができる。
【0049】
印刷制御部4aは、印刷対象の用紙が最大印刷可能範囲の幅よりも狭い幅の用紙(狭幅画像形成媒体)である場合であって、印刷に現在利用している複数のヘッド10の内の少なくともいずれか1つのヘッド10の温度が停止基準温度以上である場合には、用紙に画像を形成させるヘッド10のグループを他のグループに変更する。すなわち、印刷制御部4aは、印刷データを他のグループに属するヘッド(ヘッド群)に対して送信する。このように、印刷制御部4aは、画像を形成させるヘッドのグループを他のグループに変更するので、例えば、図3に示すように、ポジションAのヘッド10のグループからポジションBのヘッド10のグループに変更することにより、ポジションAのグループのヘッド10の冷却を可能にしつつ、ポジションAのグループのヘッド10による印刷時に熱の影響をほとんど受けていないポジションBのヘッド10のグループにより同一の画像の印刷を継続して行うことができ、生産効率が向上する。
【0050】
次に、プリンターによる印刷処理を説明する。
【0051】
図5は、本発明の一実施形態に係る印刷処理のフローチャートである。
【0052】
この処理は、プリンター3の全体管理部4がPC2から印刷データを受信して、全体管理部4の内部のメモリーに格納するとともに、当該印刷データの画像を回転させた画像に対応する印刷データをメモリーに格納した後に開始される。なお、印刷する対象の用紙は、最大印刷可能範囲の幅よりも狭い幅の用紙(例えば、4つのヘッド10で印刷可能な用紙)であるものとする。また、同一の画像を複数枚印刷する場合を例をあげて説明する。
【0053】
まず、印刷制御部4aは、全体管理部4のメモリーに記憶させる複数のパラメータを初期化する(ステップS1)。すなわち、印刷制御部4aは、現在の印刷を担当するヘッド10のグループ(ヘッドグループ)のポジションを示す現ポジションパラメーターに初期値(例えば、ポジションA)を格納させ、直前の印刷を担当していたヘッドグループのポジションを示す旧ポジションパラメーターに初期値(例えば、ポジションA)を格納させ、画像の回転をしたか否かを示す回転フラグに初期値、すなわち、回転していないことを示す未回転を格納させる。
【0054】
次いで、温度計測部9が現在のポジションの各ヘッド10の温度センサー13からの温度を取得する(ステップS2)。
【0055】
印刷制御部4aは、回転フラグが回転済みであるか否かを判定し(ステップS3)、回転済みである場合(ステップS3:YES)には、既に、画像を回転させて印刷させているので、ステップS7にステップを進める。
【0056】
一方、回転フラグが回転済みでない、すなわち、未回転の場合(ステップS3:NO)には、温度判定部4bは、現ポジションの中に、回転基準温度に到達している領域(本実施形態では、ヘッド10)があるか否かを判定する(ステップS4)。
【0057】
この結果、回転基準温度に到達している領域がない場合(ステップS4:NO)には、画像の回転を判定する必要がないので、印刷制御部4aは、ステップS7にステップを進める。
【0058】
一方、回転基準温度に到達している領域がある場合(ステップS4:YES)には、回転判定部4cは、画像を所定角度(例えば180度)回転させた画像を用紙に形成させることにより、回転基準温度以上の領域(ヘッド10)のノズルの温度上昇を低減させることができるか否か、すなわち、画像の回転が有効であるか否かを、回転判定テーブルを用いて判定する(ステップS5)。
【0059】
この結果、画像の回転が有効でない場合(ステップS5:NO)には、回転をする必要がないので、印刷制御部4aは、ステップS7にステップを進める。
【0060】
一方、画像の回転が有効である場合(ステップS5:YES)には、印刷制御部4aが回転画像データを用いて印刷を行うことを決定するとともに、回転フラグに回転したことを示す回転済を格納し(ステップS6)、ステップS7にステップを進める。
【0061】
ステップS7においては、温度判定部4bが、現ポジションの中に、停止基準温度に到達している領域(ヘッド10)があるか否かを判定する。
【0062】
この結果、停止基準温度に到達している領域がない場合(ステップS7:NO)には、同一のヘッドグループによる印刷を継続しても温度に関して問題がないことを意味しているので、印刷制御部4aは、旧ポジションパラメーターに現ポジションパラメーターの値を格納し(ステップS8)、現ポジションパラメーターのヘッドグループにより、1ページの画像の印刷を実行させ(ステップS9)、予定枚数の印刷が終了したか否かを判定する(ステップS10)。この結果、予定した枚数の印刷が終了した場合には、印刷制御部4aは、印刷処理を終了する一方、予定した枚数の印刷が終了していない場合には、ステップS2のステップを進める。
【0063】
一方、停止基準温度に到達している領域がある場合(ステップS7:YES)には、同一のヘッドグループによる印刷を継続するには、ヘッド10の温度が高いことを意味しているので、印刷制御部4aは、現ポジションを次の順番のポジションに変更し、すなわち、印刷を行うヘッドグループを変更し、現ポジションパラメーターに次のポジションを格納し、回転フラグに未回転を設定する(ステップS11)。
【0064】
次いで、印刷制御部4aは、現ポジションパラメーターと、旧ポジションパラメーターとが同じであるか否かを判定する(ステップS12)。この結果、現ポジションパラメーターと、旧ポジションパラメーターとが同じでない場合(ステップS12:NO)には、更に他のポジションのヘッドグループによって印刷を継続できる可能性があることを意味しているので、印刷制御部4aは、ステップS2にステップを進ませ、後続する処理を実行させる。これにより、現ポジションのヘッドグループの各ヘッド10の温度が停止基準温度未満である場合には、当該ヘッドグループにより印刷が継続されることとなる。
【0065】
一方、現ポジションパラメーターと、旧ポジションパラメーターとが同じ場合(ステップS12:YES)には、全てのポジションのヘッドグループにおいて、いずれかのヘッド10が停止基準温度に到達していることを示しているので、印刷制御部4aは、印刷を一時休止させて、ヘッド10の温度が低下するのを待ち(ステップS13)、その後、ステップS1からの処理を再開して、後続の印刷を行う。
【0066】
上記実施形態によると、印刷を行なっているヘッドグループのいずれか1つのヘッド10の温度が回転基準温度に到達した場合には、回転が有効であれば、画像を回転させた回転画像に対応する印刷データにより印刷を継続させることができ、生産効率を向上することができる。また、印刷を行なっているヘッドグループのいずれか1つのヘッドの温度が停止基準温度に到達した場合に、他のヘッドグループにより印刷を継続させることができ、生産効率を向上することができる。
【0067】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上述した実施の形態に限られず、他の様々な態様に適用可能である。
【0068】
例えば、上記実施形態では、各ポジションのヘッドグループにおいては、同一のヘッドが異なるグループに属しないようにしていたが、一部のヘッドが複数のポジションのヘッドグループに含まれるようにしてもよく、要は、各ヘッドグループにおいて、少なくとも一部のヘッドが異なっていればよい。また、上記実施形態では、ヘッド単位に、グループ分けしていたが、本発明はこれに限られず、ヘッドとは関係なく、各ノズルをグループ分けするようにしてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、給紙制御部6は、用紙カセットの用紙幅方向の位置を移動させることにより用紙の用紙幅方向の搬送位置を変えるようにしていたが、本発明はこれに限られず、例えば、用紙幅方向の用紙の供給位置が異なる複数の用紙カセット(媒体収容部)を備え、給紙制御部6が印刷を実行するポジションに応じて、用紙を供給する用紙カセットを切り替えるようにしてもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、プリンター3が自動的に用紙の用紙幅方向の位置を切り替えるようにしていたが、本発明はこれに限られず、例えば、印刷するポジションを変更する際に、一時的にプリンター3の動作を停止させ、ユーザーに用紙の用紙幅方向の搬送位置を手動で切り替えさせるようにしてもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、用紙の用紙幅方向の搬送位置を切り替えるようにしていたが、本発明はこれに限られず、例えば、ラインヘッド部11を用紙幅方向に移動可能にし、用紙幅方向の用紙の搬送位置に、印刷を行うヘッド10(ヘッド群)が位置するようにラインヘッド部11を用紙幅方向に移動させるようにしてもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、同一の画像を複数枚印刷する場合を例に説明したが、本発明はこれに限られず、異なる画像を複数枚印刷するようにしてもよく、この場合であっても、同様な効果が得られる。
【0073】
また、上記実施形態では、回転が有効である場合には、回転画像に対応する印刷データにより印刷させるようにしていたが、本発明はこれに限られず、例えば、印刷すべき残りの枚数が所定枚数より少ない場合には、そのままの印刷データで印刷させ、所定数以上の場合には回転画像に対応する印刷データにより印刷させるようにしてもよい。このようにすると、温度上昇による印刷停止をしなくても済む範囲において、印刷された用紙の画像の向きを適切に統一しておくことができる。
【0074】
また、上記実施形態では、画像を回転させた画像に対応する印刷データをプリンター3が生成するようにしていたが、PC2が画像を回転させた画像に対応する印刷データを生成し、プリンター3に送信するようにしてもよい。また、上記実施形態では、予め回転画像データを用意しておくようにしていたが、本発明はこれに限られず、画像の回転が有効であると判定した後に、回転画像データを用意するようにしてもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、画像を180度回転させた回転画像データを用いるようにしていたが、本発明はこれに限られず、回転角度はこれに限られず、例えば、90度、270度回転させた回転画像データを用いるようにしてもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、画像を回転させるか否かを判断するようにしていたが、本発明はこれに限られず、画像を回転させるか否かを判断しないようにしてもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、ラインヘッド部を複数のヘッドにより構成するようにしていたが、本発明はこれに限られず、ラインヘッド部を単一のヘッドにより構成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 画像形成システム、2 PC、3 プリンター、4 全体管理部、4a 印刷制御部、4b 温度判定部、4c 回転判定部、5 ヘッド制御部、6 給紙制御部、7 紙搬送制御部、8 排紙制御部、9 温度計測部、10 ヘッド、10a ノズル、11 ラインヘッド部、12 ベルト、13 温度センサー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成媒体の搬送方向と直交する媒体幅方向の最大印刷可能範囲に対して画像形成可能な複数のノズルが形成されたラインヘッド部を備える画像形成装置において、
前記最大印刷可能範囲よりも狭い幅の狭幅画像形成媒体に画像を形成させる場合に、前記狭幅画像形成媒体に対して画像を形成するためのノズル群の温度を測定する温度測定手段と、
前記ノズル群の前記温度が所定の第1基準温度以上であるか否かを判定する第1温度判定手段と、
前記温度が前記第1基準温度以上である場合に、前記狭幅画像形成媒体に対して画像を形成するためのノズル群を変更して、前記狭幅画像形成媒体に対して画像を形成させる画像形成制御手段と
を有する画像形成装置。
【請求項2】
前記ラインヘッド部は、前記狭幅画像形成媒体に対して画像を形成させる候補となるノズル群のグループを複数備え、
前記画像形成制御手段は、前記狭幅画像形成媒体に対して画像を形成させる前記グループを代えることにより、前記狭幅画像形成媒体に対して画像を形成するためのノズル群を変更する
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】

前記複数のノズルは、同一のノズルが複数のグループに属しないようにグループ分けされている
請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記幅狭画像形成媒体に対して画像を形成するためのノズル群の位置に応じて、前記狭幅画像形成媒体の媒体幅方向の搬送位置を変更する搬送位置変更手段を更に有する
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記狭幅画像形成媒体を収容し、前記狭幅画像形成媒体の媒体幅方向の搬送位置が異なる複数の媒体収容部を有し、
前記画像形成制御手段は、前記ノズル群の位置に対応する搬送方向の搬送位置に搬送可能な媒体収容部から前記狭幅画像形成媒体を給紙させる
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記画像形成制御手段は、前記幅狭画像形成媒体に対して画像を形成するためのノズル群が、前記狭幅画像形成媒体の媒体幅方向の搬送位置に対応するように、前記ラインヘッド部を前記媒体幅方向に移動させる
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記温度測定手段は、前記狭幅画像形成媒体に対して画像の形成を行うノズル群の媒体幅方向の複数の領域の温度を測定し、
少なくともいずれか1つの前記領域の温度が、前記第1基準温度をよりも低い第2基準温度以上であるか否かを判定する第2温度判定手段を更に備え、
前記画像形成制御手段は、少なくともいずれか一つの前記領域の温度が、前記第2基準温度以上であると判定された場合に、前記画像を所定角度回転させた回転画像を前記狭幅画像形成媒体に形成させる
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
少なくともいずれか1つの前記領域の温度が前記第2基準温度以上であると判定された場合に、前記画像を所定角度回転させた回転画像に対応する前記回転画像データにより画像を形成させることにより、前記第2基準温度以上の領域のノズルの温度上昇を低減させることができるか否かを判定する回転効果判定手段を更に備え、
前記画像形成制御手段は、前記第2基準温度以下の領域のノズルの温度上昇を低減させることができると判定した場合に、前記画像を回転させた回転画像を前記狭幅画像形成媒体に形成させる
請求項7に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−221591(P2010−221591A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−72644(P2009−72644)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】