説明

画像形成装置

【課題】現像装置の駆動が停止してから次の駆動が開始されるまでの停止時間が長くなることがあっても、その停止後に最初に開始される現像装置の現像動作を伴う画像形成動作においてカブリ、濃度上昇等の不具合が発生することを防止することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】感光体、現像装置及び転写装置を少なくとも備えた作像装置と、前記現像装置の停止時間に関する情報を検出する時間検出手段と、前記作像装置が設置される筐体の内部に設置されて湿度を測定する湿度測定手段と、前記時間検出手段で検出される停止時間に関する情報と前記湿度測定手段で測定される湿度に関する情報とに基づいて、前記現像装置が停止した後に最初の現像動作を開始する前に、当該現像装置における現像剤供給部材を平常時の回転速度よりも遅い速度で回転させる制御を行う制御手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
感光体に乾式の現像剤で現像される現像剤像を形成し、それを最終的に記録媒体に転写して画像を形成するプリンタ、複写機、ファクシミリ等の画像形成装置においては、1つの画像形成動作が終了してから次の画像形成動作が開始されるまでの休止時間が長くなるほど、その休止後に開始される画像形成動作において白地背景部に現像剤が付着してしまうカブリが発生したり、あるいは、画像の濃度が高めになる等の不具合が発生することがある。この不具合は、休止されているときの湿度が比較的高い環境にあったほど顕著に発生する傾向にある。
【0003】
これに対し、従来においても、以下に示すように休止時間に応じて必要な制御を行う画像形成装置が提案されている。
【0004】
例えば、装置を長期停止した後に画像形成を行う場合、最初の画像形成前の所定時間の間、現像装置の現像剤担持体を画像形成時の通常速度よりも速く回転させる像形成装置が知られている(特許文献1)。
【0005】
また、運転実績の検出結果に基づいて像担持体に対する現像ローラの周速比を設定する画像形成装置が知られている(特許文献2)。この周速比は、例えば現像ローラの回転速度のみを可変にすることで設定することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−98734号公報
【特許文献2】特開2005−140917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、現像装置の駆動が停止してから次の駆動が開始されるまでの停止時間が長くなることがあっても、その停止後に最初に開始される現像装置の現像動作を伴う画像形成動作においてカブリ、濃度上昇等の不具合が発生することを防止することができる画像形成装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明(A1)の画像形成装置は、
回転するとともに静電潜像が形成される感光体と、前記感光体上の静電潜像を、回転するとともに現像用電圧が印加される現像剤供給部材にて供給する現像剤により現像して現像剤像にする現像装置と、前記現像剤像を記録媒体に転写する転写装置とを少なくとも備えた作像装置と、
前記現像装置の停止時間に関する情報を検出する時間検出手段と、
前記作像装置が設置される筐体の内部に設置されて湿度を測定する湿度測定手段と、
前記時間検出手段で検出される停止時間に関する情報と前記湿度測定手段で測定される湿度に関する情報とに基づいて、前記現像装置が停止した後に最初の現像動作を開始する前に、当該現像装置における現像剤供給部材を平常時の回転速度よりも遅い速度で回転させる制御を行う制御手段と、
を有するものである。
【0009】
この発明(A2)の画像形成装置は、上記発明A1の画像形成装置において、前記制御手段が、前記現像剤供給部材を前記遅い速度で回転させる駆動時間を、前記時間検出手段で検出される停止時間に関する情報と前記湿度測定手段で測定される湿度に関する情報とに基づいて設定し、その設定した駆動時間だけ当該現像剤供給部材を遅い速度で回転させるものである。
【発明の効果】
【0010】
上記発明A1の画像形成装置によれば、その発明の構成を有しない場合に比べて、現像装置の駆動が停止してから次の駆動が開始されるまでの停止時間が長くなることがあっても、その停止後に最初に開始される現像装置の現像動作を伴う画像形成動作においてカブリ、濃度上昇等の不具合が発生することを防止することができる。
【0011】
上記発明A2の画像形成装置では、その発明の構成を有しない場合に比べて、現像剤供給部材の不要な回転を抑えたうえで上記発明A1による効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施の形態1(2)に係る画像形成装置の概要を示す説明図である。
【図2】図1の画像形成装置における主な制御系の構成を示す説明図である。
【図3】現像ロールの駆動に関する制御内容を示すフローチャートである。
【図4】評価試験の結果を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明を実施するための形態(以下、単に「実施の形態」という)について添付の図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は実施の形態に係る画像形成装置1の概要を示し、図2はその画像形成装置1の主要部を示している。
【0015】
この実施の形態に係る画像形成装置1は、支持部材、外装カバー等で構成される筐体10の内部空間に、感光体21に現像剤としてのトナーで構成されるトナー像を形成して記録用紙9に転写する作像装置20と、作像装置20に供給すべき所要の記録用紙9を収容して搬送する給紙装置30と、記録用紙9に転写されたトナー像を定着する定着装置40、画像形成装置を構成する各構成部分の動作などについて総括的に制御する制御装置5と等が設置されている。
【0016】
作像装置20は、公知の電子写真方式を利用したものであり、回転するように配置されるドラム形態の感光体21と、その感光体21の周囲に配置される帯電装置22、露光装置23、現像装置24、転写装置25、清掃装置26等で構成されている。
【0017】
感光体21は、回転自在に支持されるとともに接地された導電性の円筒状の基材の円筒周面に、光導電層等を形成したものである。感光体21は、図示しない回転駆動装置の動力により所要の方向(矢印Aで示す方向)に所要の速度で回転駆動する。清掃装置26は、感光体21の転写後の周面に接触する弾性板等の清掃部材と、その清掃部材で除去するトナー等の付着物を回収する回収容器等を設置したものである。
【0018】
帯電装置22は、感光体21の周面の回転軸方向における像形成有効領域を所要の電圧に帯電させるものである。帯電装置22としては、例えば、感光体21の少なくとも像形成有効領域に接触して回転するように配置された帯電ロールに、図示しない電源から帯電用電圧を印加するものである。帯電ロール22aとしては、例えば、導電性の芯材に、導電剤を混合したゴム等の材料で構成される弾性層を形成したものが使用される。帯電用電圧としては、直流の電圧又は直流に交流が重畳された電圧が印加される。
【0019】
露光装置23は、画像形成装置1に入力される画像情報に応じた光を感光体21に対して照射して静電潜像を形成するものである。露光装置23としては、例えば、半導体レーザとポリゴンミラー等の光学部品を用いて構成される走査型露光装置や、発光ダイオードと光学部品等を用いて構成される非走査型露光装置が使用される。
【0020】
現像装置24は、現像方式に適応する所要の極性に帯電された現像剤(トナー)を感光体21と対向する現像領域に供給して静電潜像を現像するものである。現像装置24としては、例えば、非磁性トナーと磁性キャリアを含む二成分現像剤を用いて接触式の反転現像を行う二成分現像装置が使用される。
【0021】
二成分現像装置24においては、その装置本体24aの現像剤収容部に二成分現像剤が収容されており、その現像剤収容部内で回転するように設置された現像剤攪拌搬送部材24bにより、その二成分現像剤におけるトナーがキャリアと攪拌されながら摩擦帯電されてマイナスの極性に帯電させられる。また、二成分現像装置24は、その装置本体24aの開口部に、所要の磁極が内部空間に固定配置された状態で回転する円筒状の現像ロール24cが設置されており、その現像ロール24cにより、現像剤収容部内にあるトナーとキャリアの一部が磁力により穂立ち状の磁気ブラシを形成しながら保持されるとともに層規制部材24dとの隙間を通過して所要の高さ(厚さ)に規制された状態で、感光体21と対向する現像領域まで搬送される。
【0022】
現像ロール24cは、モータを含む回転駆動装置28から伝達される動力により所要の方向(例えば感光体と対向する位置で同じ方向に移動することになる方向)に回転するとともに、感光体21との間に図示しない現像用電源部から現像用電圧(現像バイアス)が印加される。現像ロール24cの回転動力は、現像剤攪拌搬送部材24bにも伝達される仕組みになっている。現像用電圧としては、直流成分に交流成分を重畳させた電圧が印加される。
【0023】
転写装置25は、感光体21に形成されるトナー像を最終的に記録用紙9に転写させるものである。転写装置25としては、感光体21の回転軸方向における少なくとも帯電された領域に接触して回転するように配置された転写ロールに、図示しない電源から転写用電圧を印加するものである。転写ロール25aとしては、例えば、導電性の芯材にゴム等の材料で構成される弾性層を形成したものが使用される。転写用電圧としては、現像剤の帯電極性と逆極性の電圧が印加される。この実施の形態では、現像剤の帯電極性がマイナス極性であるので、転写用電圧としてプラス極性の直流の電圧が印加される。
【0024】
給紙装置30は、筐体10に対して引出し自在に取り付けられ、所望のサイズ、種類等の記録用紙9を積載した状態で収容する用紙収容体31と、用紙収容体31から記録用紙9を1枚ずつ送り出す送出装置32とで主に構成されている。給紙装置30の用紙収容体31から送出装置32で送り出された記録用紙9は、給紙装置30の送出装置32と作像装置20の転写位置との間に設置される複数の搬送ロール対33a,33b,…、搬送ガイド材等で構成される給紙用の用紙搬送路38を通して、作像装置20における感光体21と転写装置25との間の転写位置まで搬送される。
【0025】
定着装置40は、筐体41の内部に、矢印で示す方向に回転駆動するとともに表面温度が加熱手段により所要の温度に加熱して保持されるロール形態、ベルト形態等の加熱回転体42と、この加熱回転体42の回転軸方向にほぼ沿うように所要の圧力で接触して従動回転するロール形態、ベルト形態等の加圧回転体43等を設置して構成されている。
【0026】
制御装置5は、演算処理装置、記憶素子、制御回路、外部記憶装置、入出力装置等で構成されており、その記憶素子又は外部記憶装置に記憶されている制御プログラムに従って画像形成装置1の各構成部品の動作についてそれぞれ制御する。
【0027】
この画像形成装置1による基本的な画像の形成は、次のようにして行われる。
【0028】
画像形成(プリント)の要求を受けると、まず作像装置20において、矢印Aで示す方向に回転する感光体21の像形成有効領域として使用される周面が帯電装置22により所要の電位(帯電電位)に帯電された後、その帯電された感光体21の周面に露光装置23から画像情報(信号)に基づく光LBが照射され、これにより感光体21の周面に電位差のある静電潜像が形成される。この実施の形態における帯電電位は、前記したようにマイナス極性に帯電されるトナーを用いた反転現像を行う関係から、マイナス極性の電位である。また、静電潜像は、露光された部分の電荷が所要量だけ消失されたマイナス極性の電位(潜像電位)で形成される。
【0029】
続いて、作像装置20では、感光体21に形成された静電潜像が、現像装置24の現像ロール24cから供給されるマイナス極性に帯電されたトナーにより(反転)現像されてトナー像が形成される。このときの現像は、現像ロール24c上に磁気ブラシを形成して保持される現像剤(トナー)が、感光体21の周面に接触するとともに、現像ロール21cに印加される現像バイアスにより現像ロール24cと感光体21の間に形成される現像電界による静電引力を受けることで、感光体21の静電潜像の部分に転移して静電的に付着することで行われる。しかる後、そのトナー像は、給紙装置30から感光体21と転写装置25との間の転写位置に搬送して供給される記録用紙9に対して転写装置25により静電的に転写される。転写後の感光体21は、その周面に残留するトナー等の不要な付着物が清掃装置26により除去される。
【0030】
作像装置20においてトナー像が転写された記録用紙9は、感光体21の周面から剥離された後に定着装置40にむけて搬送される。定着装置40では、トナー像が転写された用紙9が加熱回転体42と加圧回転体43の間の接触部に導入され、その接触部を通過する際に加熱及び加圧される。これにより、トナー像のトナーが溶融して固着することで用紙9に定着される。
【0031】
定着が終了した後の記録用紙9は、定着装置40から排出された後、筐体10の一部(この例では上部)に形成される排紙収容部12等に搬送される。定着装置40から排出される用紙9は、複数の用紙搬送ロール対34a,34b、搬送ガイド部材等で構成される排出用の用紙搬送路を通して排紙収容部12等にまで搬送される。以上の工程により、用紙9(の片面)に対して画像が形成される。
【0032】
そして、この画像形成装置1では、作像装置20の現像装置24における現像ロール24cの駆動について以下の制御を行うように構成されている。
【0033】
すなわち、この画像形成装置1では、図1、図2等に示すように、現像装置24の停止時間に関する情報を検出する時間検出カウンタ52と、作像装置20が設置される筐体10の内部に設置されて湿度を測定する湿度センサ54が設けられている。また、画像形成装置1は、制御装置5により、時間検出カウンタ52及び湿度センサ54の結果に応じて、現像装置24が停止した後に最初の現像動作を開始する前に、現像装置24における現像ロール24aの駆動に関する制御内容を選定し、その選定した制御内容で現像ロール24cを駆動させるように構成されている。
【0034】
時間検出カウンタ52は、画像形成装置1の主電源スイッチ56がOFFされたときの時刻とそれがONされたときの時刻を記憶しておき、その主電源スイッチ56がONされたときに先のOFF時刻からの経過時間を算出し、その経過時間を現像装置24の停止時間に関する情報として検出するものである。また、このカウンタ52では、温度センサ54で測定して得られる相対湿度が所定の設定値以上になると、その湿度が所定の値以上になっている間の経過時間を計測し、その経過時間を現像装置24の停止時間に関する1つの情報として検出するように設定されている。このカウンタ52で検出された各経過時間は、主電源スイッチ56が次にOFF操作されるまで記憶保持される。
【0035】
湿度センサ54は、筐体10の内部のうち例えば現像装置24の下方側の位置に設置され、その設置位置における相対湿度を測定するものである。この湿度センサ54は、主電源スイッチ56がONされているときの相対湿度を測定している。そして、温度センサ54で測定して得られる相対湿度が湿度に関する情報として記憶保持される。
【0036】
制御装置5は、時間検出カウンタ52及び湿度センサ54の測定結果(停止時間および湿度に関する情報)を入手するように接続されているとともに、現像装置24の現像ロール24cの回転駆動装置28に必要な制御信号(情報)を送信するように接続されている。そして、制御装置5は、時間検出タイムカウンタ52及び湿度センサ54の結果に応じて現像装置24が停止した後に最初の現像動作を開始する前の現像ロール24cの回転駆動について図3に示す内容の制御を行う。このときの制御内容(プログラム及びデータ)は、制御装置5における記憶素子又は外部記憶装置に格納されている。
【0037】
以下、制御装置5の現像ロールの回転駆動に関する制御動作について説明する。
【0038】
まず、制御装置5では、図3に示すように、画像形成装置1に対してプリント要求があると、時間検出カウンタ52で検出された現像装置24の停止時間Tsに関する情報と湿度センサ54で測定された湿度Hsに関する情報の読み出しが行われ(ステップ:S10〜S11)、そのときの現像装置24の停止時間Tsに関する情報が予め設定される停止時間に関する設定値(閾値)Tx以上であり、かつ、その湿度Hsに関する情報が予め設定される湿度に関する設定値Hx以上であるか否かが判断される(S12)。この判断に使用される湿度Hsに関する情報は、その湿度Hsが所定の設定値(Hx)以上になった結果が時間検出カウンタ52に通知されて、その後の経過時間が湿度Hsに関する情報さらには現像装置の停止時間に関する情報に置き換えられる。
【0039】
ここで、停止時間Tsは、画像形成装置1による最後のプリント動作が終了して主電源スイッチ56がOFF状態にされてから次に主電源スイッチ56がON状態にされるまでの期間の経過時間に相当する。湿度Hsは、その停止時間Tsが終了した後の湿度の変動を知るものとなる。また、停止時間に関する設定値Txは、例えば10時間に設定される。湿度に関する設定値Hxは、例えば70%に設定される。
【0040】
このとき、制御装置5は、停止時間Tsが設定値Ts以上でない又は湿度Hsが設定値Hx以上でない又はその双方であると判断した場合には、画像形成装置1ひいては現像装置24が少なくとも長い間休止して放置されたものでないとみなし、現像ロール24cの駆動について平常の駆動制御を行うモードに設定する(S18)。
【0041】
この場合、現像装置24における現像ロール24cは、回転駆動装置28からの回転動力により平常時の回転速度で駆動し始める(S19)。ちなみに、平常駆動制御は、現像ロール24cを平常時の回転速度S1で回転駆動させる動作を行うように制御することである。また、平常時の回転速度は、作像装置20による作像動作(特にその現像工程)が行われるときに適用される速度である。
【0042】
一方、制御装置5は、ステップS12において停止時間Tsが設定値Ts以上でありかつ湿度Hsが設定値Hx以上であると判断した場合には、画像形成装置1ひいては現像装置24が比較的長い期間休止した状態におかれ、しかも、比較的高い湿度環境下におかれたものとみなし、現像ロール24cの駆動について低速の駆動制御を行うモードに設定する(S13)。低速駆動制御は、その停止後の最初のプリント動作(現像装置24の現像動作を含む)が開始される前に、現像ロール24cを平常時の回転速度S1よりも遅い回転速度S2(<S1)で回転駆動させる動作を行うように制御することである。
【0043】
ここで、遅い回転速度S2は、現像剤の攪拌による帯電性能(状況)の回復具合や、次のプリント動作が開始されるまでの待機時間の長短等を考慮して設定することができ、例えば、平常時の回転速度S1に対して0.4〜0.8倍の範囲内で設定される。この低速の回転速度S2が平常時の回転速度S1の0.4倍(上記下限値)よりも小さい場合には、例えば、現像剤の攪拌時間が必要以上に長くなることや、次のプリント動作が開始されるまでの待機時間が長くなりすぎる等の問題がある。回転速度の調整は、例えば、回転駆動装置28におけるモータの駆動速度を調整するか、あるいは、モータの動力を伝達する機構に伝達速度を調整する機能がある場合にはその伝達機構の伝達速度調整機能を調整することで行われる。
【0044】
またこの場合、制御装置5は、湿度センサ54で測定された湿度Hsが現像ロールの駆動時間Tを決定する判断基準とするために予め設定される設定値Hy以上であるか否かを判断し(S14)、その湿度Hsが設定値Hyよりも小さいときには駆動時間Tとして第1の駆動時間T1を設定し(S15)、その湿度Hsが設定値Hy以上であるときには駆動時間Tとして第1の駆動時間T1よりも長い第2の駆動時間T2(>T1)を設定する(S16)。
【0045】
上記設定値Hyは、現像ロールの駆動時間Tを調整する必要があるか否かの判断を行うときの判断基準として設定されるものであり、低速駆動制御の要否を判定する際に使用する前記した設定値Hxよりも大きい値に設定される(Hy>Hx)。これは、湿度が高い環境下で現像装置24が停止して休止されているほどその現像装置24が有するトナーの帯電特性(量)の低下が大きくなり、その停止後に開始する最初のプリント動作(現像動作を含む)でカブリや濃度変化等の不具合が発生しやすくなるため、より高い湿度であったときには現像ロールをより多く駆動させることが必要になるからである。この実施の形態では、設定値Hyを85%に設定した。
【0046】
また、駆動時間の基準となる第1の駆動時間T1は、例えば30秒〜1分に設定される。この駆動時間T1がその下限値よりも少ない場合には、後述する現像ロールの低速駆動による効果が十分に得られない等の不具合がある。反対に駆動時間T1がその上限値よりも多い場合には、休止後の最初のプリント動作が開始されるまでの待機時間が必要以上に長くなってしまう不具合がある。その他にも、現像剤を必要以上に長い間攪拌させることになって現像剤の不測の劣化が発生するおそれがある等の不具合がある。なお、この現像剤の不測の劣化は、現像ロールを平常時の回転速度よりも速い速度(高速)で回転させた場合にも同様に発生するおそれがある。このため、現像ロール24aの空回転は、平常時の回転速度よりも遅い速度で回転させ、その回転時間も必要最少限に設定することがよい。この実施の形態では、設定値T1を1分に設定した。さらに、第2の駆動時間T2は、駆動時間Tを調整する必要があるときに設定されるものであり、例えば、第1の駆動時間T1に対して2〜3倍となる大きい値に設定される。この実施の形態では、設定値T2を2分に設定した。
【0047】
この駆動時間Tの設定後に、現像ロール24cが回転駆動装置28から伝達される動力により低速S2で所定の時間(T1又はT2)だけ回転駆動させられる(S16〜S17
又はS22〜S23)。また、この現像ロールの低速回転が所定の時間だけ実行された後には、そのいずれの場合には平常駆動制御に設定されるように変更される(S18)。
【0048】
以上の平常駆動制御による現像ロールの回転駆動が行われた後又は低速駆動制御に当初から設定されたときは、現像ロール24cが回転駆動装置28から伝達される動力により平常時の回転速度S1で回転し始め(S19)、しかる後、休止停止後に要求された最初のプリント動作が実行される(S20)。
【0049】
この休止後の最初のプリント動作においては、背景部へのトナーの付着によるカブリや感光体へのトナーの過剰な付着による濃度上昇が発生することが抑制される。また、このような効果は、現像剤のトナーが筐体10内で飛散したり、感光体21の周面が回転する現像ロール24cに担持された現像剤の接触通過により磨耗する等の二次障害が誘発することもなく得られる。
【0050】
これは、次の理由によるものと推測される。
【0051】
すなわち、画像形成装置1実際には現像装置24が比較的長い期間でかつ高湿の環境で停止した状態で放置されたことにより現像装置24に収容されている現像剤のトナーが吸湿した状態となり、その帯電量が所要の帯電量よりも低下した状態になっても、その長い停止後の最初のプリント動作ひいては現像動作が開始される前に低速駆動制御が実行されることにより、現像装置24の現像ロール24cが低速S2で所定の時間だけ駆動され、その結果、現像装置24に収容されているトナーがプリント動作(現像動作を含む)の開始前にキャリアに接触して摩擦帯電される機会が確保されて帯電特性(量)が所要のレベルまで回復する。
【0052】
また、低速駆動制御の実行時には、現像ロール24cが平常時の回転速度S1よりも低速の速度S2で回転することにより、長期で高質の環境下での停止期間により帯電量が低下して現像ロール24c等から離脱しやすい状態にあるトナーが離脱してしまう現象が抑制される。しかも、現像ロール24cが低速の速度S2で回転することにより、現像ロール24cに磁気ブラシを形成した状態で担持されている現像剤が感光体21の周面に接触して通過する際に、回転速度が抑えられる分、その感光体21に接触するときの現像剤の勢いが弱くなり、またその接触する全体の時間も短くなる。
【0053】
<評価試験>
以下、実施の形態における低速駆動制御に関して行った評価試験について説明する。
【0054】
評価試験は、現像装置24が停止した後の放置(停止)時間が1時間、10時間、20時間及び30時間になった後に、白紙領域を含むテストチャートに基づくテストプリントをその各放置時間後にそれぞれ実行し、その各テストプリントで得られた用紙9上のトナーかぶりの状態について調べた。この放置とテストプリントは、温度25℃、相対湿度75%という環境と、温度28℃、相対湿度85%という環境とに分けて行った。
【0055】
現像剤としては、非磁性トナー(平均粒径:6.5μm)と磁性キャリア(平均粒径:35μm)を含む二成分現像剤を使用した、テストプリントは、プロセス速度(感光体の回転速度)を103mm/秒に設定して行った。現像ロール24aの平常駆動制御時における回転速度が380mm/秒であるところ、低速駆動制御時における回転速度を180mm/秒とした。低速駆動制御時の低速駆動時間は30秒に設定した。
【0056】
得られた結果は、以下の基準で評価した。結果を図4(a)に示す。
グレード1:かぶりトナーがない。
グレード2:かぶりトナーの存在がルーペで確認される。
グレード3:かぶりトナーの存在が目視で薄っすらと確認される。
グレード4:かぶりトナーの存在が目視で確認される。
グレード5:かぶりトナーの存在が目視で多く確認される。
グレード6:かぶりトナーの存在が目視で非常に多く確認される。
【0057】
また比較のため、各放置後に低速駆動制御を行わずに同じ条件でテストプリントを行ったときのトナーかぶりの状態について調べた。その結果について同じ基準で評価したものを図4(b)に示す。
【0058】
[他の実施の形態]
前記した実施の形態においては、現像装置の停止時間に関する情報として、主電源スイッチ56のOFF操作から次のON操作までの経過時間を適用する場合について例示したが、その情報としては、現像装置24における現像剤が比較的長期間にわたって放置される状態を知る得る時間であれば採用することが可能である。
【0059】
その例としては、例えば、定着装置の停止、現像動作の停止、感光体の回転の停止、帯電動作の停止、転写動作の停止、用紙の排出時間等の時点から、次の定着装置の動作の開始、現像動作の開始、感光体の回転の開始、帯電動作の開始、転写動作の開始、画像形成動作の指示受け等の時点まの経過時間が挙げられる。この他にも、作像装置20による作像動作を含むプリント動作が終了してから所定の時間が経過した後に定着装置40の加熱状態を下げる等により電力消費を低減するモード(いわゆる省エネモード、スリープモードなど)に移行する画像形成装置にあっては、そのモードの経過時間を停止時間に関する情報として適用することができる。また、主電源スイッチがON操作されてから最初に開始されるプリント動作までの経過時間を停止時間に関する情報として適用することもできる。
【0060】
また、実施の形態に係る画像形成装置1においては、主電源スイッチ56がOFF時のときにも、湿度センサ54が動作するように設定し、次に主電源スイッチ56がON操作されるまでの間における湿度を所要の時間ごとに測定し、その平均値を湿度に関する情報として利用するように構成してもよい。このように構成した場合は、実際に現像装置が長い時間停止しているときの実際の湿度環境を知り、より適確な制御(低速駆動制御)を行うことが可能になる。なお、その一方で、実施の形態における湿度に関する情報の例のように、主電源スイットON時における湿度が所要の設定値以上であるときを検出し、そのときの経過時間を湿度に関する情報に置き換えた場合には、次に開始する現像動作に近い時間帯での現像剤の帯電状況に応じた適確な制御(低速駆動制御)の切り替えを行うことが可能になる。
【0061】
また、主電源スイッチ56がON時には、その後に画像形成動作が開始されることが想定されるので、実際にその最初の画像形成動作が開始されない時間帯においても、予め低速駆動制御を少なくとも1回実行するように設定することも可能である。この場合には、実際にその最初の画像形成動作が指示された後に(低速駆動制御を行うことなく)直ちに画像形成動作を開始することが可能になることもある。
【0062】
また、かりに湿度センサ54による測定ができない状況が発生した場合に、その後における停止時間の設定値Txや湿度の設定値Hxを変更した制御動作を実行するように構成することも可能である。すなわち、その停止時間の設定値Txや湿度の設定値Hxを初期の値よりも緩い値(低い値)に一時的に変更して判断工程を実行する。これにより、例えば湿度が測定できない時期に、実際に湿度の急激な上昇があった場合におけるかぶり等の不具合の発生が突然発生する等のリスクを低減することができる。
【0063】
さらに、実施の形態では、現像装置24として二成分現像装置を適用した場合について例示したが、現像装置24としては、トナー成分で構成されるいわゆる一成分現像剤を用いる一成分現像装置(磁性の一成分現像剤を使用する方式のものに限る)を適用することも可能である。一成分現像装置の場合における一成分現像剤の帯電は、主として現像ロールとその現像ロールに加圧下で接触した状態で固定配置される接触部材との間を通過する際に摩擦帯電されることで行われる。
【0064】
この他、実施の形態では、作像装置20として感光体21に形成するトナー像を記録用紙9に直接転写する方式のものを例示したが、作像装置20は中間転写方式を採用したものであっても構わない。また、画像形成装置1は、色の異なる現像剤を収容する複数の現像装置を用いて形成する複数色のトナー像で構成される多色の画像(カラー画像)を形成するものであってもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 …画像形成装置
5 …制御装置(制御手段の一部)
9 …記録用紙(記録媒体)
10…筐体
20…作像装置
21…感光体
24…現像装置
24c…現像ロール(現像剤供給部材)
25…転写装置
52…時間検出カウンタ(時間検出手段)
54…湿度センサ(湿度測定手段)
56…主電源スイッチ(時間検出手段の一部)
Ts…停止時間
Hs…湿度
S1…平常時の回転速度
S2…低速(平常時の回転速度よりも遅い速度)
T,T1,T2…駆動時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転するとともに静電潜像が形成される感光体と、前記感光体上の静電潜像を、回転するとともに現像用電圧が印加される現像剤供給部材にて供給する現像剤により現像して現像剤像にする現像装置と、前記現像剤像を記録媒体に転写する転写装置とを少なくとも備えた作像装置と、
前記現像装置の停止時間に関する情報を検出する時間検出手段と、
前記作像装置が設置される筐体の内部に設置されて湿度を測定する湿度測定手段と、
前記時間検出手段で検出される停止時間に関する情報と前記湿度測定手段で測定される湿度に関する情報とに基づいて、前記現像装置が停止した後に最初の現像動作を開始する前に、当該現像装置における現像剤供給部材を平常時の回転速度よりも遅い速度で回転させる制御を行う制御手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記現像剤供給部材を前記遅い速度で回転させる駆動時間を、前記時間検出手段で検出される停止時間に関する情報と前記湿度測定手段で測定される湿度に関する情報とに基づいて設定し、その設定した駆動時間だけ当該現像剤供給部材を遅い速度で回転させる請求項1に記載の画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−224347(P2010−224347A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−73287(P2009−73287)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】