説明

画像形成装置

【課題】新しいセンサを設けることなく、正確に画像形成ユニットの誤挿入を検知する。
【解決手段】電源が投入されたら、各色に対応する感光ドラム34に対してテスト用のトナー像が形成される。テスト用のトナー像が搬送ベルト32に転写されると、そのときにトナーを介してフィードバックされた電流値および電圧値が検出される。検出された電流値および電圧値から転写負荷抵抗Rが算出される。転写時の転写負荷抵抗が定期的に算出され、そのうちの最大値が各色同士で比較され、その値の大小関係から画像形成ユニットの配置が割り出される。配置が割り出されたら、正規の配置と比較する。正規の配置とは違う配置であると判断されたら、誤挿入が生じたと判断してエラーを報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の感光体を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から電子写真技術を応用したカラー電子写真プリンタ(以下、レーザプリンタと呼称する)がある。たとえば現像された画像を用紙に直接転写する直接転写方式のレーザプリンタにおける画像形成動作は以下のようにして行われる。レーザプリンタは、4つの感光ドラムと、各感光ドラムの周囲に帯電器、露光器、現像器、転写器などを有し、用紙の搬送方向において転写器の下流側に定着器などを備えている。また、現像器は4つの感光ドラムに対してそれぞれ異なる色のトナー(ブラック、イエロー、シアン、マゼンタ)が入ったカートリッジを備えている。なお、カートリッジは感光ドラムに対して着脱可能に設けられており、トナーが減少してきたらカートリッジを取り出し、新品のものと交換することでトナーの補給を可能としている。
【0003】
まず、感光ドラムの表面が帯電器によって均一に帯電される。つづいて露光器から照射される光線によって感光ドラムの表面に静電潜像が形成される。その後、静電潜像が現像器から供給されるトナーでトナー像として現像され、現像されたトナー像は、転写器を構成する搬送ベルトに載ってタイミングを合わせて搬送されてくる用紙に対し、搬送ベルトと感光体の間を通過する際に転写され、定着器にて重ね合わせ画像が用紙に定着されて排紙される。
【0004】
上記のような構成において、カートリッジの挿入位置はあらかじめ決まっており、仮にブラックとイエローの配置を間違えて装着すると、印字結果は本来ブラックで印刷されるべき箇所がイエローで印刷されてしまう。このように、カートリッジの挿入位置を間違えると、印字結果に悪影響が生じてしまうので、カートリッジの誤挿入を検出する機構が必要となる。
【0005】
誤挿入を検出する機構として、搬送ベルトに各色のトナーを吐出し、センサによってトナーの色を検出して誤挿入を検知する技術が知られている。すなわち、まず各感光ドラムにトナー像を形成し、形成されたトナー像を搬送ベルトに転写する。転写位置の下流には、搬送ベルトの表面に対向して搬送ベルト上のトナー像を検出するセンサが設けられている。センサは光学的手段によって搬送ベルト上のトナー像の色を検出し、その検出結果に基づいて正しい位置に各色のカートリッジが装着されているかを判断することが提案されている(たとえば、特許文献1)。
【特許文献1】特開平10−171199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の技術ではトナー像が搬送ベルト上に形成され、センサの位置まで搬送されるまではカートリッジの誤挿入が行われたか否かが判断できない。また、各色ごとに転写を行うために最適な転写電流および転写電圧の値は異なるので、誤挿入が行われると転写電流が不足し、トナー像が正しく搬送ベルト上に形成されない可能性があり、その結果センサが検出エラーを起こす恐れがある。
【0007】
以上の問題に鑑み、本発明では高精度に画像形成ユニットの誤挿入が検出可能な画像形成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、請求項1記載の発明に係る画像形成装置は、トナー収容室を有し、各色ごとに本体部に対して着脱可能な複数の画像形成ユニットと、前記各色の画像形成ユニットに対応して設けられた複数の感光体と、トナーを各前記感光体に形成された静電潜像を現像する現像手段と、前記現像手段によって各前記感光体上に現像された各色のトナー像を被転写体に転写する転写手段とを備え、各色ごとに前記画像形成ユニットの挿入位置が予め定められた画像形成装置において、前記現像手段によって各前記感光体に前記各色のテスト用のトナー像が形成され、前記転写手段によって前記各色のテスト用のトナー像が前記被転写体に転写されるよう制御する制御手段と、前記制御手段によって前記被転写体に転写される前記各色のテスト用のトナー像の電気的特性を検出する検出手段と、前記検出手段から検出された各前記電気的特性に基づき、前記本体部に挿入された前記画像形成ユニットの前記挿入位置の正誤を判断する判断手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
また、請求項2記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記検出手段は、前記制御手段によって転写電圧が印加された結果フィードバックされる電流値または電圧値から前記電気的特性を検出することを特徴とする。
【0010】
また、請求項3記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記判断手段は、前記検出手段から検出された各前記テスト用のトナー像の前記電気的特性の大小関係と、前記本体部の正しい位置に各前記画像形成ユニットが挿入された場合の各前記電気的特性の大小関係を比較して各前記画像形成ユニットの前記挿入位置の正誤を判断することを特徴とする。
【0011】
また、請求項4記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記制御手段は、前記現像手段に対し、前記テスト用のトナー像を形成する際に、各前記感光体と前記被転写体との相対移動方向には前記所定長さで、かつ前記所定長さの領域では各前記感光体表面上の前記被転写体との接触領域の全域に前記各色のテスト用のトナー像を現像させることを特徴とする。
【0012】
また、請求項5記載の発明は、請求項1から4いずれかに記載の発明において、前記制御手段は、前記テスト用のトナー像を形成する際に、各前記現像手段から各前記感光体に前記トナーを供給させるときの電圧値を、最も高い抵抗値をもつ前記トナーを前記感光体に現像させる場合の電圧値と同等あるいはそれより大きくなるよう制御することを特徴とする。
【0013】
また、請求項6記載の発明は、請求項1から5いずれかに記載の発明において、前記制御手段は、前記テスト用のトナー像を形成する際に、各前記感光体と前記被転写体との相対移動方向に所定長さの前記トナー像を形成し、前記検出手段は、前記各色のテスト用のトナー像が転写される間、前記所定長さの方向において、各色ごとに複数回にわたって前記電気的特性を検出し、前記判断手段は各色ごとに複数回にわたって検出された前記電気的特性のうちのピーク値同士を使用して前記正誤を判断することを特徴とする。
【0014】
また、請求項7記載の発明は、請求項1から5いずれかに記載の発明において、前記制御手段は、前記現像手段に対し、前記テスト用のトナー像を形成する際に、各前記感光体と前記被転写体との相対移動方向に前記所定長さの前記トナー像を形成させるよう制御し、前記検出手段は、各前記感光体に現像された前記各色のテスト用のトナー像における前記所定長さの方向の中央部が転写されるときの前記電気的特性を検出することを特徴とする。
【0015】
また、請求項8記載の発明は、請求項1から7いずれかに記載の発明において、前記制御手段は、前記転写手段に対し、各前記感光体上の前記各色のテスト用のトナー像を前記被転写体に転写されない値の前記転写電圧を印加するよう制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明によれば、各位置に挿入された画像形成ユニットから供給されたトナーにもとづいてテスト用のトナー像が形成され、転写時において各色のテスト用のトナー像固有の電気的特性が検出される。従って、画像形成ユニットが本体内の正しくない位置に挿入されても、光学センサを用いて転写されたトナー像の色を検出した場合のように、検出エラーが生じる可能性は低い。そのため、高精度に画像形成ユニットの誤挿入を判断可能である。
【0017】
また、請求項2記載の発明によれば、請求項1に記載の効果に加え、転写時に制御回路にフィードバックされる電流値または電圧値から電気的特性が検出されるので、新たにセンサなどを設けなくても画像形成ユニットの誤挿入がおきたかが判断できる。
【0018】
また、請求項3記載の発明によれば、請求項1または2に記載の効果に加え、色によって異なるトナー像の電気的特性の大小関係をみてトナーの色を判別することによって、正規の位置に画像形成ユニットが挿入されたかを判断することができる。
【0019】
また、請求項4記載の発明によれば、請求項2に記載の効果に加え、各現像手段に対し、感光体と被転写体との相対移動方向には所定長さで、かつ所定長さの領域では各感光体表面上の被転写体との接触領域の全域に各色のテスト用のトナー像を現像させることで、誤挿入の検出において転写電流が必ず転写全域にわたるトナーを介して流れることになる。したがって、仮にテスト用のトナー像が部分的に形成された場合には、転写電流がトナー像を介して流れる部分とトナーを介さずに流れる部分とが生じて正確に電気的特性を検出することが出来ないが、これによれば誤挿入検出に対する信頼性を高めることができる。
【0020】
また、請求項5記載の発明によれば、請求項1から4いずれかに記載の効果に加え、各色事に抵抗値の異なるトナーを有する画像形成ユニットが間違って挿入されても感光体に現像されるトナーが不足することはないので、誤挿入検出に対する信頼性を高めることができる。
【0021】
また、請求項6記載の発明によれば、請求項1から5いずれかに記載の効果に加え、感光体と被転写体との相対移動方向に所定長さに形成するトナー像においてその長さ方向に複数回にわたって電気的特性を検出したうちのピーク値を使用して判断するので、誤挿入検出に対する信頼性を高めることができる。
【0022】
また、請求項7記載の発明によれば、請求項1から5いずれかに記載の効果に加え、各感光体と被転写体との相対移動方向に所定長さのトナー像が形成され、その中で最も信頼性が高い中央部分の電気的特性を検出することで、誤挿入検知の信頼性を高めることが可能である。
【0023】
また、請求項8記載の発明によれば、請求項1から7いずれかに記載の効果に加え、画像形成ユニットの誤挿入検出処理において、テスト用のトナー像が被転写体に転写されないように制御するので、被転写体が汚れない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(実施例1)
[レーザプリンタの全体構成]
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1は、本実施形態の画像形成装置としてのレーザプリンタ2の概略構成を示す側断面図である。なお、以下の説明においては、図1のように上下前後方向を、紙面と直交方向に左右方向を定義する。
【0025】
レーザプリンタ2は、本発明の本体部の一例としての本体ケーシング3を備えており、この本体ケーシング3の下部には、用紙Pが積載される供給トレイ4が設けられている。供給トレイ4の底部には、バネ6の付勢により用紙Pの前端側を持ち上げるように傾動可能な用紙押圧板8が設けられている。また、供給トレイ4の前端上方には、ピックアップローラ10と、バネ(図示せず)の付勢によりピックアップローラ10に圧接する分離パッド12とが設けられている。さらにピックアップローラ10の斜め前上方には一対の紙粉取りローラ14が設けられ、その上方に一対のレジストローラ16が設けられている。
【0026】
供給トレイ4の最上位にある用紙Pは、用紙押圧板8によってピックアップローラ10に押し付けられ、ピックアップローラ10の回転によって、ピックアップローラ10と分離パッド12との間に挟まれたときに1枚ごとに分離される。そして、用紙Pは、紙粉取りローラ14により表面に付着する紙粉が除去された後、レジストローラ16に送られる。レジストローラ16は、用紙Pの斜行補正を行った後、その用紙Pを画像形成部18のベルトユニット20上へ送り出す。
【0027】
画像形成部18は、ベルトユニット20、スキャナ部24、プロセス部26、定着部28などを備えている。
【0028】
ベルトユニット20は、前後一対のベルト支持ローラ30間に、本発明の被転写体の一例としての、ポリカーボネート等からなる搬送ベルト32を張架した構成となっている。そして、後側のベルト支持ローラ30が回転駆動されることにより、搬送ベルト32が図示反時計周り方向に循環移動し、搬送ベルト32上面に載せられた用紙Pが後方へ搬送される。
【0029】
また、搬送ベルト32の内側には、後述するプロセス部26の各感光ドラム34Bk,34Y,34M,34Cと搬送ベルト32を挟んで対向する位置にそれぞれ転写ローラ36が設けられている。転写ローラ36は、金属製のローラ軸を導電性のゴム材で被覆することにより構成されている。また、転写ローラ36は感光ドラム34に対して付勢されており、搬送ベルト32上に搬送される用紙Pを感光ドラム34との間に挟み付ける。即ち、転写ローラ36と感光ドラム34との間隔が用紙Pの厚みに応じて変化するように構成されている。
【0030】
スキャナ部24は、レーザ発光部(図示せず)から出射されたレーザ光Lを、各色毎の感光ドラム34の表面に走査する。
【0031】
プロセス部26は、フレーム38と、このフレーム38に装着される4色に対応した本発明に画像形成ユニットの一例としての複数の現像カートリッジ40(40Bk,40Y,40M,40C)とを備える。具体的には、フレーム38は、前後方向に並んだ4つのカートリッジ装着部42(42Bk,42Y,42M,42C)を有する。
【0032】
各カートリッジ装着部42は、上方に開口した凹所として形成され、この凹所内に各現像カートリッジ40Bk,40Y,40M,40Cを装着できるようになっている。また、カートリッジ装着部42Bkには現像カートリッジ40Bk、カートリッジ装着部42Mには現像カートリッジ40M、カートリッジ装着部42Yには現像カートリッジ40Y、カートリッジ装着部42Cには現像カートリッジ40Cというように、各色ごとに各現像カートリッジ40の挿入位置が決まっている。
【0033】
また、各カートリッジ装着部42の底部には、上記複数の現像カートリッジ40Bk,40Y,40M,40Cに対応して設けられ、表面が正帯電性の感光層によって覆われた、本発明の感光体の一例としての感光ドラム34(34Bk,34Y,34M,34C)と、スコロトロン型の帯電器44とが設けられている。
【0034】
なお、フレーム38は、本体ケーシング3の前面に設けられたフロントカバー46を開放することにより前方に引き出し可能になっており、このフレーム38を引き出した状態で現像カートリッジ40の交換等を行う。
【0035】
各現像カートリッジ40Bk,40Y,40M,40Cは、箱状の内側上部に本発明のトナー収容室48を備え、その下側に供給ローラ50、現像ローラ52(52Bk,52Y,52M,52C)および層厚規制ブレード54を備えている。各トナー収容室48には、本発明のトナーの一例としての、各色の正帯電性の非磁性1成分のトナー(ブラック,イエロー,マゼンタ,シアン)がそれぞれ収容される。
【0036】
供給ローラ50は、金属製のローラ軸を導電性の発泡材料で被覆することにより構成されており、現像ローラ52は、金属製のローラ軸を導電性のゴム材料で被覆することにより構成されている。トナー収容室48から放出されたトナーは、供給ローラ50の回転により現像ローラ52Bk,52Y,52M,52Cに供給され、供給ローラ50と現像ローラ52との間で正に摩擦帯電される。さらに、現像ローラ52上に供給されたトナーは、現像ローラ52の回転に伴って、層厚規制ブレード54と現像ローラ52との間に進入し、ここでさらに十分に摩擦帯電されて、一定厚さの薄層として現像ローラ52上に担持される。
【0037】
感光ドラム34は、接地された金属製のドラム本体を備え、その表層をポリカーボネート等からなる正帯電性の感光層で被覆することにより構成されている。
【0038】
帯電器44は、スコロトロン型のものであって、感光ドラム34と所定間隔を隔てて対向配置された放電ワイヤ56と、放電ワイヤ56と感光ドラム34との間に設けられ、放電ワイヤ56から感光ドラム34への放電量を制御するためのグリッド58とを備えている。この帯電器44では、放電ワイヤ56に高電圧を印加して、放電ワイヤ56をコロナ放電させ、放電ワイヤ56からグリッド58に流れる電流を一定にする、すなわちグリッド電圧を一定にすることにより、感光ドラム34の表面を一様に正極性に帯電させることができる。
【0039】
感光ドラム34、現像ローラ52及び転写ローラ36は、搬送ベルト32の上面と平行で、かつ互いに平行な中心軸線を有し、それぞれ各中心軸線のまわりに回転される。それらのローラ34,36,52及び搬送ベルト32の前記中心軸線方向の大きさは、互いにほぼ同じ寸法に設定されている。なお、現像ローラ52及び転写ローラ36は、後述するメインモータ80とそこから当該現像ローラに動力を伝達する伝達機構、現像電圧を印加する高電圧印加回路82、及びそれらを制御するCPU66、ROM68、RAM70とともに本発明の現像手段を構成する。転写ローラ36は、後述するメインモータ80とそこから当該現像ローラに動力を伝達する伝達機構、転写電圧を印加する高電圧印加回路82、及びそれらを制御するCPU66、ROM68、RAM70とともに本発明の転写手段を構成する。
【0040】
画像形成時には、感光ドラム34が図示時計回り方向に回転駆動され、それに伴って感光ドラム34の表面が帯電器44により一様に正帯電される。そして、その正帯電された部分がスキャナ部24からのレーザ光Lの高速走査により露光されて、感光ドラム34の表面に用紙Pに形成すべき画像に対応した静電潜像が形成される。以後、レーザ光Lが感光体上を走査する方向を主走査方向とする。また、感光ドラムの回転方向において主走査方向と直交する方向を副走査方向とする。
【0041】
次いで、現像ローラ52の回転により、現像ローラ52上に担持され正帯電されているトナーが、感光ドラム34に対向して接触するときに、感光ドラム34の表面上に形成されている静電潜像に供給される。これにより、感光ドラム34の静電潜像は、可視像化され、感光ドラム34の表面には、露光部分にのみトナーが付着したトナー像が担持される。
【0042】
その後、各感光ドラム34の表面上に担持されたトナー像は、搬送ベルト32によって搬送される用紙Pが、感光ドラム34と転写ローラ36との間の各転写位置を通る間に、転写ローラ36に印加される負極性の転写電圧によって、用紙Pに順次転写される。こうしてトナー像が転写された用紙Pは、次いで定着器28に搬送される。
【0043】
定着器28は、熱源を有する加熱ローラ60と、用紙Pを加熱ローラ60側へ押圧する加圧ローラ62とを備えており、用紙P上に転写されたトナー像を紙面に熱定着させる。そして、定着器28により熱定着された用紙Pは、上方へ搬送され、本体ケーシング3の上面に設けられた排出トレイ64上に排出される。
[レーザプリンタのハード構成]
次に、本発明を適用したレーザプリンタ2のハード構成について、図面を用いて説明する。図2は、レーザプリンタ2のハード構成を示すブロック図である。図3は、高電圧印加回路82に含まれる転写電圧印加回路86のハード構成を示すブロック図である。
図2に示すように、レーザプリンタ2は、CPU66、ROM68、RAM70、NVRAM(不揮発性メモリ)72、などからなる制御回路75を備えており、これにLANI/F74、操作部76、表示部78、既述の画像形成部18などが接続されている。
【0044】
ROM68には、後述する誤挿入検出処理など、このレーザプリンタ2の各種の動作を実行するためのプログラムが記憶されている。CPU66は、ROM68から読み出したプログラムに従って、その処理結果をRAM70またはNVRAM72に記憶させながら、各部の制御を行う。制御回路75は、後述するPWM信号の出力回路、A/D変換回路などをASICとして備えている。LANI/F74は、通信回線(図示せず)を介して外部のコンピュータ等に接続されており、そのコンピュータ等から送信される印刷指令や印刷データ等を受信することができる。
【0045】
操作部76は、複数のボタンを備えており、ユーザにより各種の入力操作が可能となっている。表示部78は、液晶ディスプレイやランプ等を備えており、各種の設定画面や動作状態等を表示することが可能である。画像形成部18はメインモータ80、高電圧印加回路82、並びにスキャナ部24及び定着部28のための駆動部などを含む。メインモータ80は、制御回路75の制御によって駆動され、既述の供給ローラ50、レジストローラ16、ベルト支持ローラ30、転写ローラ36、現像ローラ52、感光ドラム34、加熱ローラ60等を同期的に回転させる。
【0046】
高電圧印加回路82は、画像形成時においてはCPU66の定電流制御によって、各色に対応する現像ローラ52Bk,52Y,52M,52Cに印加される現像電圧、転写ローラ36に印加される転写電圧、帯電器44の帯電ワイヤ56に印加される帯電電圧及びグリッド58に印加されるグリッド電圧など、各部に高電圧を印加する。
【0047】
図3に示すように、転写電圧印加回路86は、高電圧印加回路82における転写電圧を生成するためのものであり、PWM信号平滑回路88、トランスドライブ回路90、昇圧・平滑整流回路92などを備えており、各転写ローラ36に対応して計4組備えられている。PWM信号平滑回路88は、制御回路75のPWMポート94AからPWM(Pulse Width Modulation)信号S1を受けて、これを平滑してトランスドライブ回路90に与える。トランスドライブ回路90は、受けたPWM信号S1に基づき、昇圧・平滑整流回路92の1次側巻線96Aに発振電流を流す。
【0048】
昇圧・平滑整流回路92は、トランス98、ダイオード100、平滑コンデンサ102などを備えている。トランス98は、1次側巻線96A、2次側巻線96B、及び補助巻線96Cを備えている。2次側巻線96Bの一端は、ダイオード100、抵抗104を介して、この転写電圧印加回路86の出力端106に接続され、この出力端106は転写ローラ36のローラ軸に接続されている。また、平滑コンデンサ102と抵抗108とがそれぞれ2次側巻線96Bに並列に接続されている。
【0049】
さらに、出力端106は抵抗110,112を介してグランドに接続されており、抵抗110,112の接続点が制御回路75のA/Dポート94Bに接続されている。また、2次側巻線96Bの他端(ダイオード100と逆側の端部)は、抵抗116を介してグランドに接地され、さらに制御回路75のA/Dポート94Cに接続されている。
【0050】
このような構成により、1次側巻線96Aの発振電流は、昇圧・平滑整流回路92において、昇圧及び整流され、転写ローラ36のローラ軸に転写電圧Vcとして印加される。このとき、転写ローラ36に印加される転写電圧Vcに応じた検出信号P1がのA/Dポート94Bにフィードバックされ、また、転写ローラ36に流れる電流i1に応じた検出信号P2がA/Dポート94Cにフィードバックされる。
[現像カートリッジの誤挿入検出処理]
次に、現像カートリッジ40Bk,40Y,40M,40Cが本体ケーシング3のカートリッジ装着部42Bk,42Y,42M,42Cにおける正規の挿入位置に挿入されたか否かを検出する誤挿入検出処理について、図面を用いて説明する。図4は、CPU66がROM68に記憶されたプログラムに基づいて行う各色の現像カートリッジ40Bk,40Y,40M,40Cの誤挿入検出処理に関するフローチャートである。図5は、各色の現像カートリッジ40Bk,40Y,40M,40Cが正規の位置に挿入された場合、および誤挿入された場合の現像カートリッジ40Bk,40Y,40M,40Cの挿入位置と、転写時に算出される本発明の電気的特性の一例としての転写負荷抵抗の大小関係を示した概念図である。
【0051】
図4に示す現像カートリッジ40Bk,40Y,40M,40Cの誤挿入検出処理は、レーザプリンタ2の電源が投入された場合に行われる。また、電源投入後において、4つの現像カートリッジ40Bk,40Y,40M,40Cのうちいずれかが新品に交換され、フロントカバー46が閉められたことを検出して誤挿入検出処置が行われるようにしてもよい。
【0052】
S1にて各色のテスト用のトナー像が搬送ベルト32に転写されるときに転写ローラ36に印加される転写電圧および電流の値から転写時に検出される抵抗値である転写負荷抵抗の値が検出される。具体的な制御方法はサブルーチンとして図6を用いて後述する。
【0053】
次に、S2にてS1で検出された各色のテスト用のトナー像の転写に対応して検出された転写負荷抵抗の値から、各色に対応する現像カートリッジ40Bk,40Y,40M,40Cの、4つのカートリッジ装着部42における挿入位置が判別される。トナーのもつ抵抗値は、色ごとに異なる。そのため、転写時に検出される各色のテスト用のトナー像の転写負荷抵抗の値に対し、大小関係をつけることが可能である。
【0054】
図5に示すように、4つの現像カートリッジ40Bk,40Y,40M,40Cの正規の挿入位置は、左側からシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの順であるとする。また、この挿入位置でそれぞれの感光ドラム34Bk,34Y,34M,34Cから搬送ベルト32にテスト用のトナー像が転写されたときの転写負荷抵抗の大小関係は、イエローが最も小さく、次にマゼンタ、シアン、ブラックの順に大きくなっていく。この大小関係に基づき、一番小さい転写負荷抵抗の値が検出されたカートリッジ装着部42にはイエローのトナーを有する現像カートリッジ40Yが挿入されていることが判別される。以下、同様にして各色の現像カートリッジ40Bk,40Y,40M,40Cのカートリッジ装着部42における挿入位置が判別される。
【0055】
次に、S3にてS2で判別された4つの現像カートリッジ40Bk,40Y,40M,40Cが、正規の現像カートリッジの配列と正しいか否かが判断される。具体的には、以下のようにして行う。4つの現像カートリッジ40Bk,40Y,40M,40Cが挿入され、S2において転写負荷抵抗の大小関係が判別されたとする。そして、正規の挿入位置に4つの現像カートリッジ40Bk,40Y,40M,40Cが挿入された場合の転写負荷抵抗の大小関係と比較し、正規の挿入位置の場合と同じ順番であるかを判断する。なお、正規の挿入位置の場合における転写負荷抵抗の配置パターンは、あらかじめROM68などに記憶させる。
【0056】
仮に、図5の下に示すように、左から2番目のカートリッジ装着部42Mから、3番目に大きい転写負荷抵抗が検出され、左から3番目のカートリッジ装着部42Yから、2番目に大きい転写負荷抵抗が検出されている。したがって、左から2番目と3番目のカートリッジ装着部42M,42Yにおいて、誤挿入が起こったと判断される。
【0057】
S3において図5の上に示すように、正規の現像カートリッジ配列と同じ配列であると判断された場合(S3:YES)は、そのまま処理を終了する。正規の現像カートリッジ配列と同じ配列でないと判断された場合、すなわち現像カートリッジ42の誤挿入が検出された場合(S3:NO)は、S4に進んでユーザに誤挿入が起こっている旨を報知する。具体的には、表示部78にエラーを表示するなど、種々の方法が可能である。
【0058】
なお、上記のようにROM68に記憶された正規の配列パターンと、挿入された現像カートリッジの配列とを比較するのではなく、ROM68などに配列位置とその各位置で使用される正規のトナーの転写負荷抵抗の値とをテーブル状に記憶し、実際に挿入された現像カートリッジ内のトナーによる転写負荷抵抗の値を、その現像カートリッジの位置に対応する正規の転写負荷抵抗の値と比較するように構成しても差し支えない。これを各カートリッジごとに行い、すべての検出値が正規の値の許容範囲内にあれば、正しい現像カートリッジ配列と判断し、1つでも許容範囲外にあれば、誤挿入が起こっていると判断する。
[転写負荷抵抗の検出処理]
次に、S1における転写負荷抵抗Rtの検出処理について説明する。図6は、図4のフローチャートのサブルーチンとしての転写負荷抵抗Rtの検出処理に関するフローチャートである。図7(A)は、誤挿入検出処理においてテスト用のトナー像が搬送ベルト32に転写されるときの、感光ドラム34上のテスト用のトナー像の位置(a)〜(e)を示した感光ドラム34の周囲の側面図である。
【0059】
図7(B)は、図7(A)に対応して検出される抵抗値Rを示したグラフである。
【0060】
図6のS101に示すように、転写負荷抵抗Rtを検出するにあたって、転写電圧印加回路86が4つの転写ローラ36に対して転写電圧を印加するよう定電流制御にて起動される。このとき、各色に対応する感光ドラム34Bk,34Y,34M,34Cは時計回りに回転している。また、搬送ベルト32はベルト支持ローラ30が回転駆動することにより反時計回りに移動している。
【0061】
次に、S102にて感光ドラム34、転写ベルト32及び転写ローラ36のもつ抵抗値Roが算出される。このステップにおいては、図7(A)(a)に示すように、S101においてはテスト用のトナー像が形成されていない。したがって、この段階で転写電圧を印加すると、A/Dポート94BおよびA/Dポート94Bには、転写ローラ36から搬送ベルト32を介して感光ドラム34に流れた電流および電圧に応じた信号がフィードバックされることになる。このフィードバックされた信号を検出することで、電流値、電圧値が得られる。検出された電流値、電圧値をもとに算出された抵抗値Rが、抵抗値RoとしてRAM70に記憶される。抵抗値Roは、各色の感光ドラム34ごとに行われる。
【0062】
なお、このときの抵抗値Roは、テスト用のトナー像が転写されていないため、図7(b)以降に示すようにテスト用のトナー像が転写位置に至るまではほぼ一定の値が検出される。また、値の信頼性向上のため、抵抗値Roは定期的に検出される。例えば10回など、予め定められた回数分の抵抗値Roを算出し、平均化した値が真の抵抗値Roとされる。
【0063】
次に、S103においてS102で検出された感光ドラム34などのもつ抵抗値Roをもとに転写の突入閾値を設定する。突入閾値とは、各色に対応する感光ドラム34Bk,34Y,34M,34Cの表面に形成されているテスト用のトナー像が各転写位置に到達したと判断される閾値としての抵抗値である。ここでは、突入閾値は、各抵抗値Roにマージンとして10MΩを加算した値とする。また、突入閾値は、上記のように検出された電流値、電圧値をもとに算出するのではなく、あらかじめ実験などによって色毎に固有の値として決定されていても良い。
【0064】
次に、テスト用のトナー像の形成が行われる。具体的には、まず各色に対応して設けられた、時計回りに回転する感光ドラム34Bk,34Y,34M,34Cの表面に対しスキャナユニット24からレーザ光Lの露光が行われ、静電潜像が形成される(S104a)。
【0065】
このときの感光ドラム34の表面における主走査方向の露光領域は、転写時において感光ドラム34が搬送ベルト32に対して接触する領域全てである。感光ドラム34と搬送ベルト32の相対移動方向である副走査方向の露光領域については、任意の長さを取りうるが、転写時に搬送ベルト32と感光ドラム34の間のニップ幅全域にテスト用のトナー像が形成されるだけの長さがあればよい。つまり、誤挿入検出のプログラムにおいて、感光ドラム34の表面に形成する静電潜像は、感光ドラム34の中心軸線と平行で回転方向に所定長さをもつ帯状である。
【0066】
各色に対応する感光ドラム34の表面に形成された静電潜像が各色に対応する現像ローラ52Bk,52Y,52M,52Cと対向する位置に到達すると、高電圧印加回路82によって現像電圧が印加される。各色に対応する現像ローラ52Bk,52Y,52M,52Cに担持された各色のトナーは静電潜像側に供給され、テスト用のトナー像が現像される(S104b)。
【0067】
通常の画像形成時において各現像ローラ52Bk,52Y,52M,52Cに印加する現像電圧の値は、正規の挿入位置で現像カートリッジが挿入された場合にトナーが良好に現像されるよう、各色のトナーのもつ抵抗値に合わせて決められている。つまり、各カートリッジ装着部42Bk,42Y,42M,42Cに、正規に配置されるべき各色のトナーに対応した現像電圧の出力端が設けられ、そこに挿入された現像カートリッジの各現像ローラがその現像電圧の出力端に接続されるようになっている。
【0068】
一方、現像カートリッジ40Bk,40Y,40M,40Cは正規の位置に挿入されていない可能性がある。誤挿入が起きた場合は、各色のトナーに対して適正でない現像電圧が印加されるので、正常にテスト用のトナー像が現像されない。これは誤挿入検出の精度を低下させる原因になる。
【0069】
この問題を解決するために、S104における現像電圧の値は、4色のトナーのうち、最も高い抵抗値を持つトナーが感光ドラム34に現像されるときの現像電圧と同等か、またはそれ以上の現像電圧を4つの現像出力端に対して印加する。このようにすることで、仮に誤挿入が生じた場合であっても、4色のトナーに対して現像に十分な現像電圧が印加される。なお、トナーが感光ドラム34に現像されるときの現像電圧は、ある程度マージンを持たせてもよい。
【0070】
したがって、各色に対応する現像ローラ52Bk,52Y,52M,52Cに担持されたトナーが十分に感光ドラム34に移動せず、テスト用のトナー像の厚さや長さにムラができることが防止されるので、各色ごとのテスト用のトナー像が転写される際にも安定してトナー像が形成され、そのトナー像の転写負荷抵抗の値を安定して算出することができる。
【0071】
さらに、テスト用のトナー像は主走査方向に対し感光ドラム34と搬送ベルト32が接触する全領域に帯状に形成されているので、転写電圧印加時に転写ローラ36から感光ドラム34に直接的に電流が流れることは無い。そのため、転写時に検出される電流値および電圧値は、必ずトナーの影響を受けており、検出された値の信頼性が向上する。
【0072】
次に、S105に進み、算出された抵抗値Rが突入閾値を超えたか否かを判断する。抵抗値Rが突入閾値を超えたということは、図7(b)に示すように、テスト用のトナー像のうち、少なくともその端部が転写位置に到達したということを意味している。
【0073】
まだ、抵抗値Rが突入閾値を超えない場合(S105:NO)、制御回路75内のタイマーが起動され(S115)、そのタイマーによるカウントが所定値を超えるまで(S116:NO)、抵抗値Rが突入閾値を超えたか否かの判断(S105)が繰り返される。もし、突入閾値を超えることなくカウントが所定値(感光ドラム34上のテスト用のトナー像が転写位置に達するカウント値)を超えた場合(S116:YES)、テスト用のトナー像が正常に形成されていない可能性があるので、表示部78でエラー報知(S117)をして終了する。
抵抗値Rが突入閾値を超えた場合(S105:YES)、制御回路75内のタイマーが起動される(S106)。このとき、この時点での抵抗値Rが最大値RmaxとしてRAM70に記憶される(S107)。
【0074】
この後、S102と同様に転写電圧印加回路86によって転写電圧が印加されることによって、転写ローラ36から搬送ベルト32および転写されようとするテスト用のトナー像を介して各色に対応する感光ドラム34Bk,34Y,34M,34Cに流れた電流および電圧がそれぞれ検出される。この転写の過程で検出されるA/Dポート94BおよびA/Dポート94Bにフィードバックされる電流および電圧に相当する信号に基づき、各色ごとに抵抗値R(以下、これを「転写負荷抵抗の値Rt」と称する)が算出される(S108)。そして、転写負荷抵抗Rtの値が、RAM70に記憶された転写負荷抵抗Rtの最大値Rmaxと比較され(S109)、テスト用のトナー像が転写位置の入り始めた時期では抵抗値Rが徐々に大きくなっていくから、上記転写負荷抵抗Rtの値が最大値RmaxとしてRAM70に記憶される。(S110)。
【0075】
S108,S109,S110の動作は、タイマーによるカウントが一定値(感光ドラム34上のテスト用のトナー像が転写位置を通過するカウント値)を超えるまで(S111:NO)、定期的に繰り返される。その間、検出された転写負荷抵抗RtがRAM70に記憶された最大値Rmaxよりも大きければ(S109:YES)最大値Rmaxが更新され(S110)、算出された転写負荷抵抗RtがRAM70に記憶された最大値Rmaxよりも小さい場合は、Rmaxの更新が行われない。
【0076】
テスト用のトナー像が転写位置を完全に通過するまでの時間が経過したとき(S111:YES)、その時点でRAM70に記憶された転写負荷抵抗Rtの最大値であったRmaxが、図4の誤挿入検出処理で使用される抵抗値である。
【0077】
以上の処理のように、テスト用のトナー像が転写される際に印加される転写電圧に基づいて得られたトナーの抵抗値の大小関係から4つの現像カートリッジ40Bk,40Y,40M,40Cの挿入位置が判別され、それが正規の挿入位置と正しいか否かを判断することが可能となる。これによって、専用のセンサを新しく設けることなく現像カートリッジ40の誤挿入が検出される。
【0078】
なお、本実施例においては転写が行われる際にトナーの持つ抵抗値を算出することで誤挿入が検出されたが、変形例として、4つの転写ローラ36に印加された電流や電圧のフィードバック値を本発明におけるテスト用のトナー像の電気的特性として誤挿入を検出するようにしてもよい。
【0079】
転写電流のフィードバック値に基づいて誤挿入を検出する場合は、転写電圧印加回路86が発生させるPWM信号を固定させる。そして、転写時に検出された転写電流のフィードバック値に基づいて4つの現像カートリッジ40Bk,40Y,40M,40Cが挿入された位置を判別し、実施例と同様の処理を行うことで現像カートリッジの誤挿入が検出される。
【0080】
転写電圧のフィードバック値に基づいて誤挿入を検出する場合は、転写電圧を定電流制御で起動させ、転写時に検出された転写電圧のフィードバック値に基づいて誤挿入を判断すればよい。
(実施例2)
[テスト用のトナー像の中央部における転写負荷抵抗の検出]
この実施例では、テスト用のトナー像の副走査方向の中央部において転写負荷抵抗Rtを検出するようにしており、画像形成装置の画像形成に関する構成及び動作は実施例1と同じなので、ここでは割愛する。また、実施例1と同じ部分については同じ符号を用いて説明する。図8は、テスト用のトナー像のもつ抵抗値の検出処理のフローチャートである。このフローチャートにおける処理は、図4のS1のサブルーチンにおける処理に相当する。
【0081】
まず、S1001にて、図6の場合と同様に、転写電圧が4つの転写ローラ36に対して印加される。次に、S1002にて、テスト用の画像に基づいてスキャナ部24がレーザ発光部からレーザ光Lを発生させ、回転している4つの感光ドラム34に露光を行う。そしてS1003にて、タイマーを起動させる。
【0082】
次に、S1004に進み、現像ローラ52から各色に対応する感光ドラム34Bk,34Y,34M,34Cに対してそれぞれトナーが供給され、テスト用のトナー像が現像される。このステップにおける現像動作は実施例1におけるテスト用のトナー像の現像動作と同じである。
【0083】
次に、S1005に進み、S1003で起動させたタイマーのカウントが一定値を超えたか否かが判断される。本実施例における一定時間とは、露光が開始されてからテスト用のトナー像の副走査方向のほぼ中央部が転写位置に到達するまでの時間を意味する。つまり、テスト用のトナー像の副走査方向のほぼ中央部が転写位置に到達したとき、実施例1と同様に、制御回路75にフィードバックされた電流値および電圧値から、転写負荷抵抗Rtが算出される。テスト用のトナー像は、実施例1と同様に副走査方向に所定幅をもっており、図7(B)に示したように、副走査方向両端のトナー不均一領域を避けたほぼ中央部は、算出される転写付加抵抗Rtが最も信頼性が高い。また、ここでは、その中央部近傍において短時間間隔で転写負荷抵抗Rtが複数回算出され、それぞれRAM70に記憶される。
【0084】
次に、S1007に進み、S1006において算出された複数の転写負荷抵抗Rtに対してノイズキャンセル処理が成される。ノイズキャンセル処理とは、複数の転写負荷抵抗Rtのうち、信頼性の低い最大値と最小値を除き、残された値で平均値を算出することである。この処理によって、平均値の算出結果に対する信頼性が向上する。ここで得られた結果が、トナーの持つ抵抗値として評価される。
【0085】
以上の処理によって算出された転写負荷抵抗値Rtにもとづき、実施例1と同様の方法で4つの現像カートリッジ40Bk,40Y,40M,40Cの誤挿入が検出される。この処理方法によれば、誤挿入検出において転写電圧が印加される機会がテスト用のトナーの副走査方向の中央部が転写される場合に限られるので、実施例1よりも節電することが可能である。また、何度も転写電圧を付加しなくても良いので、搬送ベルト32が傷みにくい。もちろん、上記の処理は転写電流や転写電圧に基づいて誤挿入を検出する場合においても、適用が可能である。
【0086】
なお、前記両実施例において、S106,S1003のタイマー起動は、誤挿入検出処理が開始されてから任意の時点で行っても良い。両実施例のタイマー起動時点を入れ替えることもできる。
[請求項に記載の構成と実施例との対応関係]
実施例の制御回路75において、図6、図8の、感光ローラにテスト用のトナー像を形成し、そのトナー像を転写する処理を実行する部分は、請求項1の制御手段を構成する。
【0087】
実施例の制御回路75における図4のS2の処理を実行する部分と、図3の転写電圧及び電流をフィードバックする部分は、請求項1の検出手段を構成する。
【0088】
実施例の制御回路75において図4のS2,S4の処理を実行する部分は、請求項1の判断手段を構成する。
[その他の変形例]
本発明は、実施例以外の実施形態であっても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。以下にその例を示す。
(1)実施例に記載のレーザプリンタは、いわゆる直接転写方式のレーザプリンタに備えられた搬送ベルトにテスト用のトナー画像が転写されたが、中間転写方式のレーザプリンタに備えられた中間転写ベルトにテスト用のトナー画像が転写されるようにしてもよい。また、レーザプリンタに限らず、LEDプリンタであっても良い。もちろん、トナーの色の数は4色以上であっても良い。
(2)実施例中では、現像カートリッジの誤挿入が検出されたが、本発明の画像形成ユニットのその他の例として、画像形成ユニットは感光ドラムが設けられたプロセスカートリッジであっても良い。また、現像ローラなどを備えないトナーが収容されたカートリッジであっても良い。つまり、少なくとも各色のトナーを収容する部材がレーザプリンタの本体に対して着脱される構成であれば、本発明の適用が可能である。
(3)実施例中では、テスト用のトナー像は搬送ベルト32に転写されていた。しかし、本来は転写時に転写ローラ36からトナーを介して感光ドラム34Bk,34Y,34M,34Cに流れる電流値および電圧値が検出されれば十分であり、必ずしも搬送ベルトにテスト用のトナー像が転写される必要はない。
【0089】
そこで、テスト用のトナー像が搬送ベルト32に転写されない程度の転写電圧で現像カートリッジ40Bk,40Y,40M,40Cの誤挿入が検出されるようにしてもよい。転写電圧の値は、予め実験にてテスト用のトナー像が転写されなかったときの値をROM68に記憶させておけばよい。テスト用のトナー像が搬送ベルトに転写されること無く現像カートリッジ40Bk,40Y,40M,40Cの誤挿入が検出されれば、搬送ベルト32が汚れることがない。
【0090】
誤挿入検出後に感光ドラム34Bk,34Y,34M,34Cに残されたテスト用のトナー像は、転写されずに感光ドラム34に残留したトナーを保持する保持ローラが回収するようにすれば良い。保持ローラは、感光ドラム34の表面に接触し、感光ドラム34の回転方向における転写位置の下流側かつ帯電器よりも上流側に設けておけば誤挿入が検出されてから即座にテスト用のトナー像が回収される。
(4)さらに、搬送ベルト32の汚れを防止するという観点で言えば、誤挿入検出時において形成されるテスト用のトナー像が用紙Pに転写されるように制御してもよい。すなわち、誤挿入検出処理が開始されたら、供給トレイ4から用紙Pが1枚給送され、転写位置まで送られる。そして、給送された用紙Pに対してテスト用のトナー像が転写される際に上述した処理にて転写負荷抵抗を検出することで、その値を元に現像カートリッジ40Bk,40Y,40M,40Cの挿入位置の正誤が判断される。このようにすれば、テスト用のトナー像が搬送ベルト32に直接転写されることがないので、搬送ベルト32が汚れない。なお、この場合は用紙Pが被転写体に相当する。
(5)また、誤挿入検出の過程で搬送ベルト32に転写された各色のテスト用のトナー像によって、色ずれが検知できるようにしてもよい。具体的には、まず搬送ベルト32の搬送面に対向して光学式のセンサを設ける。そして、搬送ベルト32から搬送されてきたテスト用のトナー像を光学的な手段によって検出し、各色のトナー像の検出されたタイミングが予め決められたタイミングで検出されるか判断する。
【0091】
もし、各色の検出されるタイミングが予め決められたタイミングと相違する場合は、露光タイミングや搬送ベルト32の搬送速度などが補正される。このようにすれば、誤挿入検出後に必要なくなったテスト用のトナー像を有効活用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】レーザプリンタ2の概略構成を示す側断面図である。
【図2】レーザプリンタ2のハード構成を示すブロック図である。
【図3】高電圧印加回路82に含まれる転写電圧印加回路86のハード構成を示すブロック図である。
【図4】各色の現像カートリッジ40Bk,40Y,40M,40Cの誤挿入検出処理に関するフローチャートである。
【図5】各色の現像カートリッジ40Bk,40Y,40M,40Cが正規の位置に挿入された場合、および誤挿入された場合の現像カートリッジ40Bk,40Y,40M,40Cの挿入位置と、転写時に算出される転写負荷抵抗の大小関係を示した概念図である。
【図6】図4のフローチャートのサブルーチンとしての転写負荷抵抗Rtの検出処理に関するフローチャートである。
【図7】(A)は、誤挿入検出処理においてテスト用のトナー像が搬送ベルト32に転写されるときの、感光ドラム34上のテスト用のトナー像の位置(a)〜(e)を示した感光ドラム34の周囲の側面図である。(B)は、図7(A)に対応して検出される抵抗値Rを示したグラフである。
【図8】転写時におけるテスト用のトナー像のもつ抵抗値の検出処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0093】
2 レーザプリンタ
18 画像形成部
24 スキャナ部
32 搬送ベルト
34 感光ドラム
36 転写ローラ
40 現像カートリッジ
42 カートリッジ装着部
52 現像ローラ
66 CPU
68 ROM
70 RAM
82 高電圧印加回路
86 転写電圧印加回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー収容室を有し、各色ごとに本体部に対して着脱可能な複数の画像形成ユニットと、前記各色の画像形成ユニットに対応して設けられた複数の感光体と、トナーを各前記感光体に形成された静電潜像を現像する現像手段と、前記現像手段によって各前記感光体上に現像された各色のトナー像を被転写体に転写する転写手段とを備え、各色ごとに前記画像形成ユニットの挿入位置が予め定められた画像形成装置において、
前記現像手段によって各前記感光体に前記各色のテスト用のトナー像が形成され、前記転写手段によって前記各色のテスト用のトナー像が前記被転写体に転写されるよう制御する制御手段と、
前記制御手段によって前記被転写体に転写される前記各色のテスト用のトナー像の電気的特性を検出する検出手段と、
前記検出手段から検出された各前記電気的特性に基づき、前記本体部に挿入された前記画像形成ユニットの前記挿入位置の正誤を判断する判断手段と
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記検出手段は、前記制御手段によって転写電圧が印加された結果フィードバックされる電流値または電圧値から前記電気的特性を検出することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記判断手段は、前記検出手段から検出された各前記テスト用のトナー像の前記電気的特性の大小関係と、前記本体部の正しい位置に各前記画像形成ユニットが挿入された場合の各前記電気的特性の大小関係を比較して各前記画像形成ユニットの前記挿入位置の正誤を判断することを特徴とする請求項1または2いずれかに記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記現像手段に対し、前記テスト用のトナー像を形成する際に、各前記感光体と前記被転写体との相対移動方向には所定長さで、かつ前記所定長さの領域では各前記感光体表面上の前記被転写体との接触領域の全域に前記各色のテスト用のトナー像を現像させることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記テスト用のトナー像を形成する際に、前記現像手段から各前記感光体に前記トナーを供給させるときの電圧値を、最も高い抵抗値をもつ前記トナーを前記感光体に現像させる場合の電圧値と同等あるいはそれより大きくなるよう制御することを特徴とする請求項1から4いずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記テスト用のトナー像を形成する際に、各前記感光体と前記被転写体との相対移動方向に所定長さの前記トナー像を形成し、前記検出手段は、前記各色のテスト用のトナー像が転写される間、前記所定長さの方向において、各色ごとに複数回にわたって前記電気的特性を検出し、前記判断手段は各色ごとに複数回にわたって検出された前記電気的特性のうちのピーク値同士を使用して前記正誤を判断することを特徴とする請求項1から5いずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記現像手段に対し、前記テスト用のトナー像を形成する際に、各前記感光体と前記被転写体との相対移動方向に前記所定長さの前記トナー像を形成させるよう制御し、前記検出手段は、各前記感光体に現像された前記各色のテスト用のトナー像における前記所定長さの方向の中央部が転写されるときの前記電気的特性を検出することを特徴とする請求項1から5いずれかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記転写手段に対し、各前記感光体上の前記各色のテスト用のトナー像を前記被転写体に転写されない値の前記転写電圧を印加するよう制御することを特徴とする請求項1から7いずれかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−26414(P2010−26414A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−190594(P2008−190594)
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】