説明

画像形成装置

【課題】 印刷可能な温度範囲内の温度に到達するまでのウォームアップ時間を短くすることができ、ヒータ、スイッチング素子やローラなどの各部品の長寿命化が実現できるような画像形成装置の提供を目的とする。
【解決手段】 本発明の画像形成装置は、定着部を移動するために駆動する駆動手段の駆動と熱源の通電とを制御する制御部と、温度検出素子の温度と定着部の温度を設定する温度設定部の設定した温度とを比較する比較部と、前記温度検出素子の温度勾配を判断する温度勾配判断部とを備え、前記制御部は、前記駆動手段により前記定着部を駆動し且つ前記熱源に通電して前記定着部を加熱する際、前記比較部が前記温度検出素子の温度は前記温度設定部の設定した温度より低いと判定し、且つ前記勾配判断部が前記温度勾配は所定値以下であると判断した場合、前記熱源の通電量を通常の通電量である第1の通電量から第2の通電量に変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は現像剤像を加熱して記録媒体に定着する定着装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に画像形成装置は、印刷要求があった場合、トレイ等に設置されている紙などの記録媒体を給紙し、感光ドラム上に静電潜像を形成して、現像剤であるトナーを用いて感光ドラム上に静電潜像からトナー像を形成して媒体に転写を行い、定着ユニットを用いて媒体にトナーを定着させる。この中の定着制御においては、印刷媒体毎に目標温度を設定し、定着ローラ表面温度を監視し、目標温度と現在の温度差からヒータの通電時間(以下ヒータOnDuty)を制御している。
【0003】
従来の画像形成装置の一例としては、定着ローラ表面温度と目標温度の差によって、ヒータOnDutyを切り替えてウォームアップ時間を短くし、オーバーシュート及び温度リップルを小さくし、印刷可能温度範囲への到達を迅速に行うものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開平9−258601号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながらオーバーシュートを抑えようとして設定しているヒータOnDuty値であると、印刷可能な温度範囲内の温度に到達するまでのウォームアップに長時間を要し、また、ウォームアップ時間をより短くするためにはヒータOnDutyを高める必要があるが、単にヒータOnDutyを最大にし続けると、ヒータの寿命およびヒータのスイッチング素子の寿命が短くなる等の問題がある。
【0006】
そこで、本発明は上述の技術的な課題に鑑み、印刷可能な温度範囲内の温度に到達するまでのウォームアップ時間を短くすることができ、ヒータ、スイッチング素子やローラなどの各部品の長寿命化が実現できるような画像形成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の技術的な課題を解決するため、本発明の画像形成装置は、現像剤像が転写された記録媒体に、前記現像剤像を加熱して定着する定着装置を備えた画像形成装置において、前記定着装置は、通電により発熱し、通電量により発熱量が変化する熱源と、移動可能に設けられ、前記熱源により加熱される定着部と、前記定着部の温度を検出する温度検出素子とを備え、前記画像形成装置は、前記定着部の温度を設定する温度設定部と、前記定着部を移動するために駆動する駆動手段と、前記駆動手段の駆動と前記熱源の通電とを制御する制御部と、前記温度検出素子の温度と前記温度設定部の設定した温度とを比較する比較部と、前記温度検出素子の温度勾配を判断する温度勾配判断部とを備え、前記制御部は、前記駆動手段により前記定着部を駆動し且つ前記熱源に通電して前記定着部を加熱する際、前記比較部が前記温度検出素子の温度は前記温度設定部の設定した温度より低いと判定し、且つ前記勾配判断部が前記温度勾配は所定値以下であると判断した場合、前記熱源の通電量を通常の通電量である第1の通電量から第2の通電量に変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の画像形成装置によれば、比較部が温度検出素子の温度は温度設定部の設定した温度より低いと判定し、且つ勾配判断部が温度勾配は所定値以下であると判断した場合、熱源の通電量を通常の通電量である第1の通電量から第2の通電量に変更する。このため定着器のウォームアップ時間の短縮に加え、熱源のオン、オフを制御する部品の長寿命化を図ることができる。更に、定着器のウォームアップ時間を短縮できることから、定着ローラや加圧ローラなどの定着部の熱負荷が減少し、定着部の各部品の長寿命化も図れることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
[第1の実施形態]
本発明の好適な実施形態を図面を参照しながら説明する。図1は本実施形態にかかる画像形成装置の構成を説明する図である。
【0010】
本実施形態の画像形成装置は、電子写真プロセスを用いた印刷装置の例であり、当該画像形成装置の印刷装置本体1には、印刷する前の記録媒体2を収納する記録媒体カセット3が設けられ、印刷され排出された記録媒体4は印刷装置本体1の上面に設けられた排出部に積層されている。印刷装置本体1内には、電子写真プロセスユニット11、12、13、14が設けられており、例えばカラー印刷装置の場合は、プロセスの色毎に分けられていて、11はシアン、12はマゼンタ、13はイエロー、14はブラックの電子写真プロセスユニットである。
【0011】
本体内には、記録媒体2を搬送するための転写ベルトユニット25が設けられており、転写ベルト20と、転写ローラ21、22、23、24を内蔵していて、電子写真プロセスユニット11、12、13、14と各電子写真プロセスユニットに対向した位置に設けられた転写ローラ21、22、23、24の間を転写ベルト20に吸着されて、記録媒体2が搬送される。この記録媒体2が各電子写真プロセスユニットに対向した位置を通過しているときに、記録媒体2にトナー像などに代表される現像剤像が転写される。
【0012】
転写ベルトユニット25の下流側には、定着ユニット30が設けられており、定着ユニット30は、定着ローラ45と加圧ローラ46を内蔵し、これらは互いに圧接して設けられている。さらに、定着ローラ45には熱源として発熱体であるハロゲンランプが設けられている。なお、定着ユニット30は印刷装置本体1から取り外し可能である。定着ユニット30に搭載されている定着ローラ45の表面の温度を計測するための温度検出素子31が、定着ローラ45の上端部に設けられ、この温度検出素子31はサーミスタに代表される素子により構成される。
【0013】
また、記録媒体カセット3から記録媒体2を引き出すためのピックアップローラ40が記録媒体カセット3に臨んで配設され、ピックアップローラ40から延長される記録媒体2の搬送路に第1のレジストローラ対41、42が互いに圧接するように設けられている。また、第2のレジストローラ対43、44も記録媒体2の搬送路に互いに圧接して設けられている。排出ローラ47、48は定着が完了した記録媒体2を排出するように、互いに圧接して本体上部の排出口に臨んで設けられている。記録媒体2の搬送路には、記録媒体2の通過を認識するためのメカセンサ50、51、52が配設され、記録媒体2が通過する毎に作動する。なお、図中矢印60〜66は記録媒体2の搬送経路を順に示す。
【0014】
図2乃至図4に第1の実施形態の要部である定着器及びその周辺の構成を示す。図2に示すように、定着ユニット30の内部には、ハロゲンランプに代表されるようなヒータ49が内蔵された定着ローラ45及び定着ローラ45に圧接された加圧ローラ46の各々の表面が回転移動可能に配設されており、定着ローラ45と加圧ローラ46は記録媒体2が図において矢印で示した搬送方向に搬送されるように回転する。ここに記載した定着ローラ45、加圧ローラ46はどちらも、もしくはどちらか一方がヒータが内蔵された無端形状ベルトでもよい。また温度検出素子31は定着ローラ45の近傍に設置されている。
【0015】
ところで、温度検出素子31は、本実施形態においては、図3で示された位置に設置されていて、定着ローラ45における記録媒体2の通過する領域(通紙領域)の間、すなわち、画像形成装置が印刷可能な記録媒体2の最小用紙幅(例えば、A6サイズ_105mm)の範囲内に設置されており、詳しくは定着ローラ45における記録媒体2の通過する領域の幅方向のほぼ中間点に配置されている。この温度検出素子31は定着ローラ45の表面の温度を検出する目的で設置されている。なお、本実施形態では、温度検出素子31を単数としているが、正確な温度測定のために複数の温度検出素子をローラの軸方向に並べて配置したり、異なる測定特性を有する複数の温度検出素子を配置するような構成としても良い。
【0016】
図4は本実施形態の画像形成装置の制御系を示すブロック図であり、制御部106は周辺装置とデータの入出力を図るための外部インタフェース111と、バスを介して接続されるCPU107、ROM108、メモリ109、タイマ110を内蔵している。制御部106に対しては、温度検出部115、ヒータ制御部112、モータ駆動制御部113、操作パネル制御部117が接続されている。ROM108は不揮発性の記憶素子であり、定着温度を制御する制御値等が格納されている。温度制御部115は接続コネクタ130を介して温度検知素子31の出力を入力し、ヒータ制御部112は低圧電源131及び接続コネクタ130を介してヒータ49のオン、オフを制御する。
【0017】
また、ヒータ制御部112は、温度検知素子31が出力したデータに基づき温度勾配を計算する温度勾配判断部140と、温度勾配判断部140からの値で、温度が飽和したことを判断する温度飽和判断部141を有している。モータ駆動制御部113はモータ機構114の駆動を制御している。モータ機構114は、搬送路に設けられた各ローラ等の駆動のための動力を発生させる装置である。また、操作パネル制御部117は操作パネルll8の情報を制御し、さらに、LCDに代表される表示部119を制御している。表示部119には、LEDに代表される発光部品を実装していても良い。なお、これら温度検出部115、ヒータ制御部112、モータ駆動制御部113、操作パネル制御部117は、前述のCPU107やその他のマイクロプロセッサなどの処理装置の一部に形成することもでき、所定のソフトウエアを実行させて動作させても良い。
【0018】
低圧電源131は、図5に示すように、交流電源150からの交流電圧を整流用のブリッジ152で受ける構造を有しており、トランス156を介して直流電圧を制御部106に供給する構造を有すると共に、制御部106からの出力信号に応じて動作するスイッチング回路部151を有している。スイッチング回路部151は、スイッチング素子として機能するそれぞれ発光ダイオード155、フォトサイリスタ154、3極双方向サイリスタ153を有しており、制御部106からの信号に応じて発光ダイオード155がオンになると、発光ダイオード155とフォトカプラーを構成するフォトサイリスタ154も導通して3極双方向サイリスタ153のゲート電圧から3極双方向サイリスタ153がオン状態となり、ヒータ49に交流電流が流れることになる。
【0019】
次に、図6のフローチャートと、図7の定着ローラの温度波形と各信号の出力を示す図により、本実施形態の画像形成装置の動作を説明する。図7は、モータの駆動信号、定着ローラの状態、装置の状態、ヒータ制御の状態を示す。
【0020】
印刷の実行に際しては、ホストコンピュータから印刷データを受信したり、装置の電源をオンにしたり、省電力モードからの復帰により、画像形成装置は準備状態に入ることになる(S100)。引き続き、画像形成装置は定着制御でトナーを定着させて記録媒体2を印刷するための目標温度Tmと、目標温度に到達させるためのヒータOnDuty(例えばK1)値をROM108に格納されている制御値から呼び出し、セットし、ヒータ制御部ll2によって定着ローラ45の表面温度が目標温度Tmに近づくように制御する(S101)。図7では、時刻tで定着制御が開始し、ヒータの温度制御に基づいて定着ローラの表面温度が上昇し出すことになる。
【0021】
次に定着ローラ45の温度勾配をチェックし定着ローラ45に記録媒体2が巻き付いていないか巻き付き検知を行う(S102)。巻き付いていると判断されると巻き付きを検知した場合の制御へと移行し、先ず、定着モータを停止させてヒータ制御を強制OFF状態にして、定着ローラ45の温度上昇を防ぐ(S103)。また、この時、巻き付き状態についてのパネル表示を行う。もしステップS102で記録媒体2の巻き付き無と判断されると、ヒータOnDuty値をK1とする第1のウォームアップモードでモータの駆動を開始する(S104)。モータの駆動開始(図7の時刻t)の後から定着ローラ45の表面温度が、印刷可能温度範囲に到達したかの温度判定を実施し(S105)、到達した場合は印刷制御によってヒータOnDuty(例えばK3)値をセットし(S106)、印刷が開始される。
【0022】
本実施形態では、ステップ105で印刷可能温度範囲に到達しておらず、温度勾配判断部140で計算される温度勾配が所定の値(例えばTs1)以下であり、かつ経過時間判定によって与えられる所定時聞(例えばMt1)を経過した場合(S107)、温度飽和判断部141は温度が飽和したと判定し、定着ローラ101に与える熱量を増加させるために、ヒータ制御を第2のウォームアップモードに変更し、ヒータOnDuty(例えばK2)を変更する(S108)。図7ではこのウオーミングアップのセットを時刻tで開始している。ここで、K2は、K1よりもヒータOnDutyが高い設定となる。その後、温度判定で印刷可能温度範囲に到達していると判断されると(S109)、印刷制御によってヒータOnDuty値を例えばK3にセットし、印刷が開始される(S110)。図7では、この印刷制御を時刻tで開始している。ステップS109で印刷可能温度範囲に到達しない時間が、経過時間判定によって与えられる所定時間(例えばMt2)を経過した場合(S111)、ヒータ温度エラーによってヒータ制御を強制OFFにし、モータ制御を停止し、パネル表示部に温度エラーを表示する(S112)。なお、ヒータ制御におけるKl、K2、K3は、事前に実験等により、予め最適値を算出しておくことが好ましい。
【0023】
以上の過程をおこなうことで、定着ローラ45の表面温度を印刷可能温度範囲まで安全に到達させることができる。また、各部品すなわちヒータ49、定着ローラ45、加圧ローラ46、スイッチング素子である発光ダイオード155、フォトサイリスタ154、3極双方向サイリスタ153などの長寿命化を図る場合、ヒータOnDutyを下げる必要があるが、上記過程によりヒータOnDutyの低下に伴う印刷可能温度範囲未到達を判断し、必要時のみヒータOnDutyを高める構成としたことで、各部品の長寿命化が実現できる。
【0024】
本実施形態によれば、必要時のみヒータOnDutyを高める構成としたため、ウォームアップ時間の短縮に加え、ヒータ49のオン、オフを制御するスイッチング素子の長寿命化が図れ、ヒータ寿命を延ばすことができる。更に、ウォームアップ時間の短縮により、定着ローラ45や加圧ローラ46の熱負荷が減少し、ローラの長寿命化も図れる。
【0025】
[第2の実施形態]
本実施形態の画像形成装置は、先の実施形態の画像形成装置と比べてヒータ制御部の構造を除いてほぼ同様の構造を有しており、簡単のため、重複する説明は省略する。図8、図9、図10を参照しながら、第2の実施形態の要部の構成を示す。図8に示すように、定着ユニットの内部には、ハロゲンランプに代表されるようなヒータ204が内蔵された定着ローラ201及び定着ローラ201に圧接された加圧ローラ205の各々の表面が回転移動可能に配設されており、定着ローラ201と加圧ローラ205は記録媒体216が図において矢印で示した搬送方向に搬送されるように回転する。ここに記載した定着ローラ201、加圧ローラ205はどちらも、もしくはどちらか一方がヒータが内蔵された無端形状ベルトでもよい。また所定の温度検出素子202は定着ローラ201の近傍に設置されている。
【0026】
温度検出素子202は、図9で示された位置に設置されていて、定着ローラ201における記録媒体216の通過する領域(通紙領域)の間、つまり、画像形成装置が印刷可能な記録媒体216の最小用紙幅(例:A6サイズ_105mm)の範囲内に設置されており、詳しくは定着ローラ45における記録媒体216の通過する領域の幅方向のほぼ中間点に配置されている。温度検出素子202は定着ローラ201の表面の温度を検出する目的で設置設定されている。
【0027】
図10は本実施形態の画像形成装置の制御系を示すブロック図であり、制御部206は周辺装置とデータの入出力を図るための外部インタフェース211、データ等を処理するためのCPU207、ROM208、メモリ209、タイマ210を内蔵しており、この制御部206に対して、温度検出部213、ヒータ制御部212、モータ駆動制御部213、操作パネル制御部217が接続されている。ROM208は不揮発性の記憶部品であり、定着温度を制御するための制御値等が格納されている。
【0028】
温度検出部215は接続コネクタ230を介して温度検知素子202の出力を入力し、ヒータ制御部212は低圧電源231、接続コネクタ230を介してヒータのオン、オフを制御する。また、ヒータ制御部212には温度検知素子202の出力された温度勾配を計算する温度勾配判断部240と温度勾配判断部240の値で、温度が飽和したことを判断する温度飽和判断部241を有し、温度飽和判断部241にて温度が飽和したと判断された場合、ヒータ制御の再起動を行うヒータ制御再起動判断部242を有する。
【0029】
モータ駆動制御部213はモータ機構214の駆動を制御している。モータ機構214は、搬送路に設けられた各ローラ等の駆動のための動力を発生させる装置である。また、操作パネル制御部217は操作パネル2l8の情報を制御し、さらに、LCDに代表される表示部219を制御している。表示部219には、LEDに代表される発光部品を実装していても良い。なお、これら温度検出部215、ヒータ制御部212、モータ駆動制御部213、操作パネル制御部217は、前述のCPU207やその他のマイクロプロセッサなどの処理装置の一部に形成することもでき、所定のソフトウエアを実行させて動作させても良い。
【0030】
また、図11に示すように、低圧電源231は、交流電源250からの交流電圧を整流用のブリッジ252で受ける構造を有しており、トランス256を介して直流電圧を制御部206に供給する構造を有すると共に、制御部206からの出力信号に応じて動作するスイッチング回路部251を有している。スイッチング回路部251は、スイッチング素子として機能するそれぞれ発光ダイオード255、フォトサイリスタ254、3極双方向サイリスタ253を有しており、制御部206からの信号に応じて発光ダイオード255がオンになると、発光ダイオード255とフォトカプラーを構成するフォトサイリスタ254も導通して3極双方向サイリスタ253のゲート電圧から3極双方向サイリスタ253がオン状態となり、ヒータ204に交流電流が流れることになる。
【0031】
次に、図12のフローチャートと、図13の定着ローラの温度波形と各信号の出力を示す図により、本実施形態の画像形成装置の動作を説明する。図13は、モータの駆動信号、定着ローラの状態、装置の状態、ヒータ制御の状態を示す。
【0032】
印刷の実行に際しては、ホストコンピュータから印刷データを受信したり、装置の電源をオンにしたり、省電力モードからの復帰により、画像形成装置は準備状態に入ることになる(S200)。引き続き、画像形成装置は定着制御でトナーを定着させて記録媒体216を印刷するための目標温度Tmと、目標温度に到達させるためのヒータOnDuty(例えばK1)値をROM208に格納されている制御値から呼び出し、セットし、ヒータ制御部2l2によって定着ローラ201の表面温度が目標温度Tmに近づくように制御する(S201)。図13では、時刻t10で定着制御が開始し、ヒータの温度制御に基づいて定着ローラの表面温度が上昇し出すことになる。
【0033】
次に定着ローラ201の温度勾配をチェックし定着ローラ201に記録媒体216が巻き付いていないか巻き付き検知を行う(S202)。巻き付いていると判断されると巻き付きを検知した場合の制御へと移行し、先ず、定着モータを停止させてヒータ制御を強制OFF状態にして、定着ローラ204の温度上昇を防ぐ(S203)。また、この時、巻き付き状態についてのパネル表示を行う。もしステップS202で記録媒体の巻き付き無と判断されると、ヒータOnDuty値をK1とする第1のウォームアップモードでモータの駆動を開始する(S204)。モータの駆動開始(図13の時刻t11)の後から定着ローラ201の表面温度が、印刷可能温度範囲に到達したかの温度判定を実施し(S205)、到達した場合は印刷制御によってヒータOnDuty(例えばK3)値をセットし(S206)、印刷が開始される。
【0034】
本実施形態では、ステップ205で印刷可能温度範囲に到達しておらず、ステップS207で、温度勾配判断部240で計算される温度勾配が所定の値(例えばTs1)以下であり、かつ経過時間判定によって与えられる所定時聞(例えばMt1)を経過した場合(Yes)、次にステップS208に進む。ステップS207でNoの場合、ステップ205に戻り、再度、印刷可能温度範囲に到達したか否かが判断される。ステップS208では、温度飽和判断部241は温度が飽和したと判定して、ヒータ制御再起動判断部242が必要なヒータ制御について再起動を行う。すなわち、ヒータ制御再起動判断部242はヒータ204に対するヒータ制御再起動要求を行い、ヒータ204に対する制御を再起動させ、さらにモータ駆動制御部213からの信号によりモータ制御を停止する。図13ではこのヒータ制御の再起動を時刻t12で開始している。
【0035】
これにより定着ローラ201から加圧ローラ205への伝熱による熱移動を抑制させることができ、従って、定着ローラ201のローラ表面温度を比較的に速い速度で上昇させることができる。なお、モータ制御の停止時間は、定着ローラ201やヒータ204の特性によって最適な値を求めておくことが好ましい。ローラ表面温度上昇後、定着制御を再開させ(図13の時刻t13)、この定着動作よりヒータ制御を第1のウォームアップの状態にし、また、モータ制御を停止の状態から駆動の状態に遷移させる(ステップS209)。その後、温度判定で印刷可能温度範囲に到達していると判断されると(ステップS210)、印刷制御によってヒータOnDuty(例えばK3)をセットし(ステップS211)、所定の印刷が開始される。図13では、この印刷制御を時刻t14で開始している。ステップS210で印刷可能温度範囲に到達しない時間が、ステップS212経過時間判定によって与えられる所定時間(例えばMt2)を経過した場合(ステップS212)、ヒータ温度エラーによってヒータ制御を強制OFFにし、モータ制御を停止し、パネル表示部に温度エラーを表示する(ステップS213)。なお、ヒータ制御におけるKl、K2、K3は、事前に実験等により、予め最適値を算出しておくことが好ましい。
【0036】
以上の過程をおこなうことで、定着ローラ45の表面温度を印刷可能温度範囲まで安全に到達させることができる。また、各部品すなわちヒータ204、定着ローラ201、加圧ローラ205、スイッチング素子である発光ダイオード255、フォトサイリスタ254、3極双方向サイリスタ253などの長寿命化を図る場合、ヒータOnDutyを下げる必要があるが、上記過程によりヒータOnDutyの低下に伴う印刷可能温度範囲未到達を判断し、未到達と判断されるとヒータ204への通電制御及び定着ローラ201の回転駆勧を行わないことで、定着ローラの温度を迅速に高めることができる。
【0037】
本実施形態によれば、ヒータOnDutyの低下に伴う印刷可能温度範囲未到達を判断し、未到達と判断されるとヒータへの通電制御及び定着ローラ201の回転駆動を行わずにないことで、定着ローラの温度を迅速に高めることができるため、ヒータOnDuty低下によるヒータ寿命を延ばすことができると共に、ヒータ204のオン、オフを制御するフォトカプラーなどのスイッチング素子の寿命も長寿命化が図れ、更にウォームアップ時間を短縮できるため、定着ローラ201や加圧ローラ205の熱負荷が減少し、ローラの長寿命化を図ることも可能である。
【0038】
上述の各実施形態では、画像形成装置としてプリンタを用いた例について説明したが、本発明の画像形成装置は、MFPやファクシミリ、複写機などであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1の実施形態の画像形成装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】前記第1の実施形態の画像形成装置の定着ローラとその周辺についての模式的な斜視図である。
【図3】前記第1の実施形態の画像形成装置の温度検知部とその周辺についての模式的な平面図である。
【図4】前記第1の実施形態の画像形成装置の制御系を示すブロック図である。
【図5】前記第1の実施形態の画像形成装置の低圧電源とその周辺の回路図である。
【図6】前記第1の実施形態の画像形成装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図7】前記第1の実施形態の画像形成装置の動作を説明するためのタイムチャートである。
【図8】本発明の第2の実施形態の画像形成装置の定着ローラとその周辺についての模式的な斜視図である。
【図9】前記第2の実施形態の画像形成装置の温度検知部とその周辺についての模式的な平面図である。
【図10】前記第2の実施形態の画像形成装置の制御系を示すブロック図である。
【図11】前記第2の実施形態の画像形成装置の低圧電源とその周辺の回路図である。
【図12】前記第2の実施形態の画像形成装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図13】前記第2の実施形態の画像形成装置の動作を説明するためのタイムチャートである。
【符号の説明】
【0040】
1 画像形成装置
2 記録媒体
3 記録媒体カセット
4 記録媒体
11〜14 電子写真プロセスユニット
20 転写ベルト
21〜24 転写ローラ
25 転写ベルトユニット
30 定着ユニット
31 温度検出素子
40 ピックアップローラ
41、42 第1のレジストローラ対
43、44 第2のレジストローラ対
45、201 定着ローラ
46 205 加圧ローラ
47、48 排出ローラ
49、204 ヒータ
50、51、52 メカセンサ
106、206 制御部
107、207 CPU
108、208 ROM
109、209 メモリ
110 210 タイマ
111、211 外部インタフェース
112 212 ヒータ制御部
113 213 モータ駆動制御部
114、214 モータ機構
115、215 温度検出部
117、217 操作パネル制御部
118、218 操作パネル
119、219 表示部
130、230 接続コネクタ
131、231 低圧電源
140、240 温度勾配判断部
141、241 温度飽和判断部
242 ヒータ制御再起動判断部
150、250 交流電源
151、251 スイッチング回路部
152、252 ブリッジ
153、253 3極双方向サイリスタ
154、254 フォトサイリスタ
155、255 発光ダイオード
156、256 トランス
216 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤像が転写された記録媒体に、前記現像剤像を加熱して定着する定着装置を備えた画像形成装置において、
前記定着装置は、
通電により発熱し、通電量により発熱量が変化する熱源と、
移動可能に設けられ、前記熱源により加熱される定着部と、
前記定着部の温度を検出する温度検出素子と
を備え、
前記画像形成装置は、
前記定着部の温度を設定する温度設定部と、
前記定着部を移動するために駆動する駆動手段と、
前記駆動手段の駆動と前記熱源の通電とを制御する制御部と、
前記温度検出素子の温度と前記温度設定部の設定した温度とを比較する比較部と、
前記温度検出素子の温度勾配を判断する温度勾配判断部とを備え、
前記制御部は、
前記駆動手段により前記定着部を駆動し且つ前記熱源に通電して前記定着部を加熱する際、前記比較部が前記温度検出素子の温度は前記温度設定部の設定した温度より低いと判定し、且つ前記勾配判断部が前記温度勾配は所定値以下であると判断した場合、前記熱源の通電量を通常の通電量である第1の通電量から第2の通電量に変更することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記画像形成装置は、時間をカウントする計時手段を更に備え、前記比較部及び前記勾配部判断部の判断を、前記計時手段が所定の時間をカウントした時に行うことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第2の通電量は、前記第1の通電量よりも多いことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第2の通電量は、前記第1の通電量よりも少なくし、更に、前記駆動手段の駆動を停止することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−32767(P2010−32767A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−194722(P2008−194722)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】