説明

画像形成装置

【課題】トナーを担持するトナー担持体に複数の電極を有し、各電極間に時間的に変化する電界を形成してトナーをクラウド化させる構成の直接記録方式で画像を形成するときに、ベタ画像における縞状の画像ムラが生じる。
【解決手段】帯電したトナーTを担持して所定の移動方向に移動し、表面に移動方向に所定の間隔で設けられた複数の電極111を有するトナー担持体1を有し、トナー担持体1の各電極111に電圧印加手段6からトナーTを吸引する方向と反発する方向の電圧である時間によって電位が変化するバイアス電圧Vsが印加されて、トナー担持体1上でトナーTをクラウド化し、トナー担持体1の順方向における移動速度は記録媒体手段3の順方向における移動速度よりも速く設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、特に、トナー担持体から飛翔させたトナーを開閉制御されるトナー通過開口(トナー通過穴、開口部などともいう。)を介して記録媒体手段に飛翔付着させて画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の画像形成装置として、トナージェット、ダイレクトトーニング、トナープロジェクションなどと称される、トナー(記録材)によって記録媒体(中間転写媒体を含む)上に画像を直接記録する方式のものが知られている。なお、本願において、「トナー」とは、トナー、画像形成粒子、微粒子、記録材(剤)などと称されるものを含み、記録媒体に画像を付与できるものの総称である。
【0003】
例えば、特許文献1には、トナーホッパから供給されたトナーに、固定ブレード又は回転ローラとの摩擦帯電によって帯電電荷を与え、回転搬送した後、制御部材に印加する制御パルスと回転ローラとの間の電界でトナーの飛翔を制御するものが記載されている。
【特許文献1】特開昭63−136058号公報
【0004】
ここでは、帯電電荷を有するトナーが回転ローラ表面に静電的に付着しており、そのトナーを制御パルスで剥離する必要がある。回転ローラと制御部材は数100μm以上のギャップを有するため、剥離のために印加する制御パルスは必然的に500V以上の高い電圧を必要とし、画素に対応した数が必要な制御用のドライバコストは非常に高価になってしまう問題、さらに、回転ローラに付着しているトナーを剥離して飛翔させるため応答性が悪く時間遅れの問題もある。
【0005】
特許文献2、特許文献3には、回転する現像剤支持体と制御手段の間に交番バイアスを印加しながら現像剤通過の制御電極に制御パルスを印加するものが記載されている。
【特許文献2】特許第2933930号公報
【特許文献3】特公平2−52260号公報
【0006】
この構成は、上記特許文献1に記載の装置のような応答性の問題は軽減されるものの、トナーの飛翔領域全体に一様な交番電界を印加して、現像剤が現像剤支持体に付着している時間と飛翔状態を繰り返すようにしている。そのため、現像剤支持体に付着している現像剤を剥離するために強い交番バイアスを印加する必要があり、剥離したトナーは勢いよく制御手段側へ飛翔して多くの現像剤が制御手段の電極に付着すること避けられず、信頼性に大きい問題がある。さらに、現像剤支持体と制御手段は前記と同様のギャップを有するため両者の間に印加している電圧値は500V以上と高く、この電界に対して現像剤を通過または阻止させる電界を形成する制御パルスは同様に高い電圧値を必要とするためドライバコストの問題は解決できていない。
【0007】
一方、特許文献4には、現像剤担持体に複数の電極を有し、この電極間に時間的に変化する電界を形成してトナーを制御電極側へ飛翔させる構成が記載されている。
【特許文献4】特開昭59−181370号公報
【0008】
ここでは、制御電極近傍に飛翔して浮遊するトナーの通過を制御するため、前記特許文献1ないし3の装置の制御電圧が高くなる欠点は解決されている。
【0009】
特許文献5には、上記特許文献4と同様に、現像剤担持体に複数の電極を有し、この電極間に時間的に変化する電界を形成してトナー飛翔させる構成であり、トナーの通過を制御する制御電極が、それまで記録媒体側に設置されていたものをトナーの供給側面に設置することが記載されている。
【特許文献5】特開平02−226261号公報
【0010】
この構成では、従前の装置では400V必要であった制御電圧が100Vにできること、および制御電極が設けてある印字ヘッドに付着するトナーを除去した場合、トナー供給源に戻すことが可能であることが記載されている。
【0011】
特許文献6には、回転円筒スリーブでトナーを供給し、印写面電位とスリーブ間の均一電界でアパーチャを通過させる静電力を与える構成であり、アパーチャを囲む制御電極と印写面側に対になった偏向電極を設け、印刷の主走査方向のドット密度を上げることが記載されている。
【特許文献6】特表2001−505146号公報
【0012】
ここでは、トナーの通過を制御する制御電極の間にガード電極を設け、制御電界間の相互作用を防止することが記載されている。
【0013】
特許文献7には、トナー供給ローラでトナーを供給し、開口部保持部材のトナー供給ローラ側にトナーの飛翔を制御する制御電極とトナーの飛翔経路を偏向させる偏向電極とを配置したものが記載されている。
【特許文献7】特開平11−301014号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献1に記載されているようなトナーホッパから供給されたトナーを固定ブレードまたは回転ローラとの摩擦帯電によってトナーに帯電電荷を与え回転搬送した後、制御部材に印加する制御パルスと回転ローラとの間の電界でトナーの飛翔を制御するもの一般的な構成にあっては、帯電電荷を有するトナーが回転ローラ表面に静電的に付着しており、そのトナーを制御パルスで剥離する必要があるが、回転ローラと制御部材は数100μm以上のギャップを有するため、剥離のために印加する制御パルスは必然的に500V以上の高い電圧を必要とし、画素に対応した数が必要な制御用のドライバコストが非常に高価になるだけでなく、回転ローラに付着しているトナーを剥離して飛翔させるために応答性が悪く、時間遅れが生じるという課題がある。
【0015】
特許文献2、3に記載されている回転する現像剤支持体と制御手段の間に交番バイアスを印加しながら現像剤通過の制御電極に制御パルスを印加する構成にあっては、特許文献1に記載の構成の応答性の問題は軽減されるものの、トナーの飛翔領域全体に一様な交番電界を印加しながら、現像剤が現像剤支持体に付着している状態と飛翔状態を繰り返すので、現像剤支持体に付着している現像剤を剥離するために強い交番バイアスを印加する必要があり、剥離したトナーは勢いよく制御手段側へ飛翔して多くの現像剤が制御手段の電極に付着することが避けられず、信頼性に大きい問題がある。さらに、現像剤支持体と制御手段は前記引用文献1と同様のギャップを有するため、両者の間に印加している電圧値は500V以上と高く、この電界に対して現像剤を通過または阻止させる電界を形成する制御パルスは同様に高い電圧値を必要とするためドライバコストの問題は解決できないという課題がある。
【0016】
特許文献4に記載されているように現像剤担持体に複数の電極を有し、この電極間に時間的に変化する電界を形成してトナーを制御電極側へ飛翔させる構成にあっては、制御電極近傍に飛翔して浮遊するトナーの通過を制御するため、制御電圧の低電圧化は可能になるが、時間の経過に伴って制御電極にトナー付着が発生するという課題は残っている。
【0017】
特許文献5に記載されているように現像剤担持体に複数の電極を有し、この電極間に時間的に変化する電界を形成してトナー飛翔させ、トナーの通過を制御する制御電極をトナーの供給側面に設置した構成にあっては、特許文献4と同様に、制御電圧の低電圧化を測れ、また制御電極が設けてある印字ヘッドに付着するトナーを除去した場合トナー供給源に戻すことが可能であるが、制御電極にトナーが付着することによる画質低下、信頼性低下の問題がある。
【0018】
特許文献6には記載されているように回転円筒スリーブでトナーを供給し、印写面電位とスリーブ間の均一電界でアパーチャを通過させる静電力を与え、アパーチャを囲む制御電極と印写面側に対になった偏向電極を設け、トナーの通過を制御する制御電極の間にガード電極を設けた構成にあっても、制御電極手段へのトナー付着の問題は残っている。
【0019】
特許文献7に記載されているように飛翔制御電極の外側にガード電極なるものを備え、飛翔制御電極以外の部分にトナーが付着することを防止する構成にあっても、制御電極にトナーが付着し、画像品質を著しく低下させてしまう問題が残っている。
【0020】
上述したように、トナーを担持するトナー担持体に複数の電極を有し、各電極間に時間的に変化する電界を形成してトナーをクラウド化させる構成を採用した場合、本発明者らの実験によると、面積の大きなベタ画像(全ての領域をトナーで埋めた画像)を形成するとき、ベタ画像に縞状の画像ムラが発生するという課題があることが判明した。
【0021】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、トナーを担持するトナー担持体に複数の電極を有し、各電極間に時間的に変化する電界を形成してトナーをクラウド化させる構成の直接記録方式で画像を形成するときに、ベタ画像における縞状の画像ムラを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記の課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、
帯電したトナーを担持して所定の移動方向に移動し、表面に移動方向に所定の間隔で設けられた複数の電極を有するトナー担持体と、
前記トナー担持体の複数の電極に対して前記トナーを吸引する方向と反発する方向の電圧を交互に印加するクラウド化手段と、
前記トナーが付着させられる記録媒体手段と、
前記トナー担持体と前記記録媒体手段との間に配置された複数のトナー通過開口を有するトナー制御手段と、
前記記録媒体手段側に電圧を印加する対向電極手段と、
前記トナー制御手段に設けられ、前記トナー担持体からの前記トナーの飛翔を制御する第1の電極と、
前記トナー制御手段の前記トナー担持体に対向する面であって、前記第1の電極から離れた位置に設けられた第2の電極と、
前記対向電極手段と前記トナー担持体間の電位差をV1、前記対向電極手段と前記トナー担持体間の距離をL1、前記第2の電極と前記対向電極手段間の電位差をV2、前記第2の電極から前記第1の電極を経て前記対向電極手段に至る間の距離をL2とするとき、
V1/L1<V2/L2
の関係が成り立つ電圧を、前記トナー担持体、前記第1の電極、前記第2の電極及び前記対向電極手段にそれぞれ印加する電圧印加手段と、を備え、
前記記録媒体手段の移動方向を順方向としたとき、前記トナー担持体の順方向における移動速度と前記記録媒体手段の順方向における移動速度とが異なる
構成とした。
【0023】
ここで、前記トナー担持体の順方向における移動速度が前記記録媒体手段の順方向における移動速度よりも速い構成とできる。
【0024】
また、前記トナー担持体の電極に印加する電圧をVs、前記対向電極手段に印加する電圧をVp、前記トナー制御手段の第1の電極に印加する電圧をVc、前記トナー制御手段の第2の電極に印加する電圧をVgとしたとき、前記トナーが前記トナー通過開口を通過可能にするときには、前記トナーの帯電極性と逆極性であって、大きい順に、Vp>Vc>Vs>Vg、の関係が成り立つ構成とできる。
【0025】
この場合、前記トナーが前記トナー通過開口を通過することを阻止するときには、Vc<Vg、の関係の電圧を前記第1の電極及び前記第2の電極に印加する構成とできる。
【0026】
また、前記トナーの電位をVtとしたとき、Vs>Vt>Vg、の関係が成り立つ構成とできる。
【0027】
本発明に係る画像形成装置は、
帯電したトナーを担持して所定の移動方向に移動し、表面に移動方向に所定の間隔で設けられた複数の電極を有するトナー担持体と、
前記トナー担持体の複数の電極に対して前記トナーを吸引する方向と反発する方向の電圧を交互に印加するクラウド化手段と、
前記トナーが付着させられる記録媒体手段と、
前記トナー担持体と前記記録媒体手段との間に配置された複数のトナー通過開口を有するトナー制御手段と、
前記記録媒体手段側に電圧を印加する対向電極手段と、
前記トナー制御手段に設けられ、前記トナー担持体からの前記トナーの飛翔を制御する電極と、
前記トナー制御手段の前記電極に対して選択的に飛翔用電圧を印加し、前記トナー担持体から前記トナー制御手段のトナー通過開口を通じて前記記録媒体手段側へトナーを移動させる制御手段と、を備え、
前記記録媒体手段の移動方向を順方向としたとき、前記トナー担持体の順方向における移動速度と前記記録媒体手段の順方向における移動速度とが異なる
構成とした。
【0028】
ここで、前記トナー担持体の順方向における移動速度が前記記録媒体手段の順方向における移動速度よりも速い構成とできる。
【0029】
また、前記トナー担持体の電極に印加する電圧をVs、前記対向電極手段に印加する電圧をVp、前記トナー制御手段の電極に印加する電圧をVcとしたとき、前記トナーが前記トナー通過開口を通過可能にするときには、前記トナーの帯電極性と逆極性であって、大きい順に、Vp>Vc>Vs、の関係が成り立つ構成とできる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る画像形成装置によれば、記録媒体手段の移動方向を順方向としたとき、トナー担持体の順方向における移動速度と記録媒体手段の順方向における移動速度とが異なる構成としたので、トナーを担持するトナー担持体に複数の電極を有し、各電極間に時間的に変化する電界を形成してトナーをクラウド化させる構成の直接記録方式で画像を形成するときに、ベタ画像における縞状の画像ムラを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。本発明の第1実施形態について図1の模式的構成図を参照して説明する。
この実施形態においては、トナーTを担持するローラ状のトナー担持体1と、トナーTが付着させられる記録媒体手段(記録部材)3と、トナー担持体1に対向し、記録媒体手段3に電圧を印加する対向電極手段(背面電極)5と、トナー担持体1と記録媒体手段3(対向電極手段5)との間に配置された複数のトナー通過開口であるトナー通過穴41を有するトナー制御手段4とを備えている。
【0032】
トナー担持体1は、矢示方向に回転(移動)し、表面にトナーTを搬送する方向(移動方向:ここでは周方向)に所定の間隔(ピッチ)Pで、トナーTを搬送する方向と直交する方向(ここでは軸方向)に沿って形成された複数の電極111を有し、このトナー担持体1の各電極111には、電圧印加手段6からトナーTを吸引する方向と反発する方向の電圧である時間によって電位が変化するバイアス電圧Vsが印加される。これにより、トナー担持体1上でトナーTをクラウド化するクラウド化手段を構成している。
【0033】
例えば、0.5KHz〜7KHzの周波数のパルス状バイアス電圧Vsが印加され、各電極111、111の間隔はファインピッチに設けられているため、電極111、111間で強い電界が形成される。そのため、トナーTの帯電極性に対して反発する電位にある電極111表面からトナーTは勢いよく飛翔し、飛翔したトナーTは吸引する極性の電位が印加されている電極111に引き寄せられ、パルスが切り替わることでパルス周波数に応じた上下方向の飛翔を繰り返し、トナーTがクラウド化された状態になる。なお、パルスの周波数が高い領域では、上方高くに飛翔したトナーTは、飛翔している間にパルスが切り替わり、電極111表面に戻る前に再び上方に飛翔する場合もある。
【0034】
このとき、隣接する電極111相互の間でトナーTを吸引する方向と反発する方向を交互に繰り返す関係の電圧を印加する2相の電極間ピッチP(又は、n本毎の各電極111にn相の位相電圧を印加するn相の電極間ピッチ)に対し、トナー担持体1表面とトナー制御手段4のトナー担持体1側面(トナー担持体1側の表面の意味)の間の距離dが大きくなる関係(p<d)でトナー担持体101とトナー制御手段4とを配置している。
【0035】
つまり、p>dの関係ではトナー担持体1の電極111表面に形成される飛翔電界がトナー制御手段4のトナー担持体1側表面のON/OFF電界と干渉を起こし、トナー制御手段4のループ電界が乱れるためである。そのため、制御電極42表面へのトナー付着の発生が起きやすくなる。p<dの条件においては、制御電極42へトナーが付着することを確実に防止でき、連続したドットを印写しても濃度が変化することなく、良好な画像が得られる。
【0036】
トナー制御手段4は、トナーTが通過可能なトナー通過穴(開口)41が複数設けられ、このトナー制御手段4のトナー供給側面(トナー担持体1側の面)のトナー通過開口41周辺にはリング状に第1の電極である制御電極42が設けられ、更にトナー通過穴41に対し制御電極42の外側に絶縁領域を介して、つまり制御電極42から離れた位置に複数のトナー通過穴41に共通の第2の電極である共通電極43が設けられている。
【0037】
このトナー制御手段4の制御電極42には電圧印加手段である制御パルス発生手段7から例えば図2に示すような制御パルスVcが印加される。この場合、トナー通過穴41をトナーTが通過可能な状態(ON状態)にするときには制御電極42に電圧Vc-onが印加され、トナーTが通過不可能な状態(OFF状態)にするときには制御電極42に電圧Vc-offが印加される。また、共通電極43には電圧印加手段である電源手段8から電圧Vgが印加される。トナー制御手段4の制御電極42は、トナー通過穴41周囲だけでも動作が可能であるが、トナー通過穴41の内壁面又はトナー通過穴41の内壁面とトナー担持体1側の周囲の両方に設けたものであってもよい。
【0038】
記録媒体手段3の背面には対向電極手段としての背面電極5が配置され、トナー制御手段4を通過したトナーTを記録媒体手段3に付着させるため、電圧印加手段であるバイアス電源手段9からのバイアス電圧Vpが印加される。この記録媒体手段3は、この上に一度画像を形成し、その後紙に転写する中間転写記録媒体、あるいは、記録紙であってもよい。この記録媒体手段3に対するバイアス電圧Vpの印加は、例えば記録媒体手段3の背面側(トナー担持体1と反対側面)に背面電極5を配置し、この背面電極5上面に記録媒体手段3を通過させる構成、あるいは、中間転写記録媒体であれば内部に対向電極手段を埋め込んだ構成又は中間転写記録媒体の背面に背面電極5を配置した構成とすることができる。
【0039】
次に、トナー制御手段4の具体的構成の一例について図4を参照して説明する。
この例は、絶縁基板(基材)45のトナー供給側(トナー担持体11側)面に、トナー通過穴41を囲む形で10〜100μm幅のリング状の制御電極42を設け、この制御電極42から20〜50μmの間隔を置いて、つまり、絶縁基材45で形成される絶縁領域を介して、制御電極42と同一面に、複数のトナー通過穴41に共通のバイアス電圧Vgを印加する共通電極43を設けた構成である。
【0040】
トナー通過穴41は、形成するドット径のサイズで決定するが直径φ30μm〜φ150μmである。制御電極42は個々にトナーTの通過をON、OFF制御するためのドライバ回路(制御パルス発生手段:駆動回路)に接続するためのリードパターン42aが接続され、また共通電極43は共通のリードパターン43aに接続されている。また、絶縁基板45の印写面側(記録媒体手段3側の面)はトナー通過穴41が開口した状態である。
【0041】
このように、トナー制御手段の共通電極は、制御電極の外側を、絶縁領域を介してリング状に囲む形状である構成とすることで、記録媒体手段側のバイアス電位と制御電極外側の共通電極間に形成する電気力を各トナー通過穴独立の電気力線として形成できるため、マルチ駆動(複数のノズル通過穴からトナーを飛翔させる駆動)のときの相互干渉(他のトナー通過穴の状態を受けること)が発生しない。
【0042】
また、トナー制御手段の制御電極と共通電極を同一面上形成することで、一回の製造プロセスで同時に形成でき、精度よく低コストに電極を作ることができる。
【0043】
また、トナー制御手段4の具体的構成の他の例について図4を参照して説明する。
この例は、絶縁基板(基材)45のトナー供給側(トナー担持体11側)面に、トナー通過穴41を囲む形で10〜100μm幅のリング状の制御電極42を設け、この制御電極42から20〜50μmの絶縁領域の間隔を置いて複数のトナー通過穴41に共通のバイアス電圧Vgを印加する共通電極43が空いたスペース全体を覆うようにベタ状に設けられた構成としている。
【0044】
このように、トナー制御手段の共通電極は、制御電極の外側に絶縁領域を介してベタ状に設けられている構成、つまり、共通電極を制御電極の外側領域全体にわたり形成することで、記録媒体手段側のバイアス電位の電界をシールドすることができ、かつ制御電極へのトナー付着低減、およびトナーの利用効率向上を図れる。
【0045】
このようなトナー制御手段4の具体的製造方法は、基材45である絶縁性部材として、コスト、製造プロセスの観点から樹脂フィルム、例えば、ポリイミド、PET、PEN、PES等で、厚さは30μm〜100μmのものを使用し、まずフィルム面に0.2μm〜1μmのAl蒸着膜を形成する。次に、フォトリソ工程で、フォトレジストをスピンナで塗布後、プリベーク、マスク露光を行ない、現像した後、フォトレジストの加熱硬化を進めた後、Alエッチング液によるAlのパタンニングを行う。フィルムの裏面にも電極パターンが必要な場合は上記と同様に可能であるが、穴加工用のマスクとして使用するパターンを裏面に形成してもよい。トナー通過穴41となる貫通穴の形成は、パターン形成後プレスによる機械的な加工、または裏面に形成したパターンを利用したエキシマレーザー加工、またはスパッタエッチング加工等のドライエッチング加工によれば、位置ずれの無い高精度な穴加工が可能である。
【0046】
次に、トナー担持体1の一例について図5を参照して説明する。なお、図5(a)はトナー担持体を展開した状態で示す模式的平面説明図、図5(b)は同じく模式的断面説明図である。
この例は、トナー担持体表面に複数の電極を設け、1本おきの2組を共通にした2相用電極を備え、180°位相の異なる2相パルス(図6参照)を印加して、隣接電極同士で吸引と反発を繰り返す2相電界を形成するトナー担持体の例である。
【0047】
このトナー担持体1は、絶縁性基板101Aの表面上に複数の電極111としてA相用電極111Aと、B相用電極111Bとを設け、その上に表面保護層101Bを設けたものである。櫛歯状の電極111A、111Bは、トナーの搬送方向と直交する方向に微細なピッチに並行に設け、両サイドには共通のバスライン111Aa、111Baで外部の図示しない2相パルス発生回路(電圧印加手段6)にそれぞれ接続されている。
【0048】
電極111A、111Bに印加するパルス電圧は、周波数が0.5KHz〜7KHz、DC電圧をバイアスに含むパルス電圧であるが、その波高値は±60〜±300V等、電極幅、電極間隔に応じたパルス電圧を印加する。この2相電界の場合は、隣接同士の電界方向の切り替わりに応じてトナーの反発飛翔と吸引飛翔を繰り返し、トナーは相互の電極間を往復移動する。そして、トナー担持体1全体は、トナーを搬送する方向に回転移動するものである。
【0049】
このように、トナー担持体表面のトナーを飛翔させてクラウド化する手段が、トナー担持体表面にトナーの搬送方向と直交する方向に長く延びて所定の間隔で配設された複数の電極を有し、各電極に印加する電圧は隣接電極相互の間でトナーを吸引する方向と反発する方向を交互に繰り返す関係の電圧を印加し、トナー担持体が回転移動することでトナーの搬送とクラウド化を行う構成とすることで、トナー担持体表面のトナーの搬送に関して、トナーの帯電品質に左右されない安定なトナーの搬送が可能となり、装置全体としても信頼性の高い画像形成装置を実現できる。
【0050】
次に、トナー担持体の他の例について図7を参照して説明する。なお、図7(a)はトナー担持体を展開した状態で示す模式的平面説明図、図7(b)は同じく模式的断面説明図である。
この例は、3相進行波電界を形成するトナー担持体の例である。絶縁性基材101A上にA相、B相の電極111A、111B、その上層に絶縁層101Cを形成した後C相電極111Cを形成し、このC相電極111Cの上に表面保護層101Bを設けている。
【0051】
各ABC3相の電極111A,111B、111Cは、トナーの搬送方向と直交する方向に微細なピッチに並行に設け、両サイドには共通のバスライン111Aa,111Ba、111Caで外部の図示しない3相パルス発生回路にそれぞれ接続されている。
【0052】
この3相進行波電界を用いる場合は、図8に示すように、1周期で120°位相がシフトしたパルス電圧を順次印加することで、トナー担持体101表面にはパルスの切り替わりに伴って電界も順次シフトする進行波電界が発生し、電界が切り替わる方向に帯電トナーは上方への飛翔を繰り返すと同時に搬送されるため、基本的にトナー担持体101は回転しないで静止したままで良い。
【0053】
このように、トナー担持体表面のトナーを飛翔させてクラウド化する手段が、トナー担持体表面にトナーの搬送方向と直交する方向に長く延びて所定の間隔で配設された複数の電極を有し、n本毎の各電極にn相の位相電圧を印加して電極相互の間で進行波電界を形成することでトナーの搬送とクラウド化を行う構成とすることで、トナー担持体表面のトナーの搬送に関して、トナー搬送を行う部分が回転駆動を必要としないため、平面的なベルト形状も可能となり、レイアウトの自由度から装置全体の小形化、低コスト化が可能となる。
【0054】
また、長期間の使用に際し、電極表面にはトナーの外添剤等微細な粒子が堆積する場合は、画像形成の時間以外に行うクリーニングモードのシーケンスによって、トナー担持体101表面をクリーニングすることで搬送の信頼性が確保できる。クリーニングは、クリーニングモードの時のみトナー担持体1表面に接する構成で、回転ブラシ、ブレート、吸引スリット等でクリーニングを行う。電極111A,111B、111Cに印加するパルス電圧は、前記と同様に、周波数が0.5KHz〜7KHz、DC電圧をバイアスに含むパルス電圧であるが、その波高値は±60〜±300V等、電極幅、電極間隔に応じたパルスを印加する。
【0055】
これらのトナー担持体1の具体的構成において、ベース基板である絶縁性基板101Aは、例えば、樹脂或いはセラミックス等の絶縁性材料からなるもの、或いは、アルミなどの導電性材料からなる基材にSiO等の絶縁膜を成膜したもの、ポリイミドフィルムなどのフレキシブルに変形可能な材料からなるものなどを用いることができる。また、電極111は、ベース基板上にAl、Ni−Cr等の導電性材料を0.1〜1μm厚さで成膜し、フォトリソ技術等を用いて所要の電極形状にパターン化して形成、または銅箔を積層、メッキ等で形成した後フォトリソでパターン化してもよい。
【0056】
表面保護層101Bとしては、例えば、SiO、TiO、TiN、Taなどを厚さ0.5〜2μmで蒸着成膜して形成、またはポリカーボネート、ポリイミド、メチルメタアクリレート等の有機材料を2〜10μm厚に薄膜印刷塗布して加熱硬化したものでもよい。
【0057】
このように構成したトナー担持体においては、駆動回路(電圧印加手段6)から飛翔用のパルスを印加して飛翔電界を形成することで、トナー担持体上の帯電したトナーは反発力及び/又は吸引力を受けて上下方向への飛翔、進行波方向への搬送が行われる。
【0058】
次に、トナー担持体1の電極111に対する電圧の平均電位Vs、対向電極手段(背面電極)5に印加するバイアス電圧Vp、トナー制御手段4の制御電極42に印加する制御パルス電圧Vc、共通電極43に印加する電圧Vgについて説明する。
【0059】
トナー担持体101の電極111には平均電位Vsのパルス状バイアス電圧(電位が時間的に変動する電位)を印加する。この場合、バイアス電圧の波高値は電極ピッチ、使用するトナー等に応じて設定する。例えば、±60〜±300Vpp(ppはピーク−ピーク)の範囲内で設定することが好ましく、ここでは、±150Vpp、DC電圧成分0Vの電圧を印加している。したがって、トナー制御手段4に対するトナー担持体側101側のDCバイアスとしては、平均電位Vsであり、ここでは、Vs=0Vとなる。なお、トナー担持体1とトナー制御手段4の間隔dは0.3mmとしている。
【0060】
また、この例では、トナー制御手段4のトナー通過穴41の直径φ100μm、リング状の制御電極42の穴中心方向の幅は30μm、制御電極42は共通電極43の間隔は50μmである。
【0061】
このトナー制御手段4の共通電極43へのバイアスVgはDC−125Vであり、トナー担持体101へのバイアス電位Vsとの関係はトナーTを常にトナー担持体101側へ向ける方向のバイアスであるため、この共通電極43面へのトナー付着はない。
【0062】
そして、トナー制御手段4の制御電極42には、トナーTがトナー通過穴41を通過可能な状態(ON状態)にする場合、制御パルス電圧Vc-onは+50V、トナーTを通過させる時以外の阻止状態の(通過不可能な状態にする)場合の電圧Vc-offは−125Vとしている。記録媒体手段3の対向電極手段5へのバイアス電圧Vpはトナー制御手段4と対向電極手段5との間隔にもよるが、例えば+200〜+1500VのDC電圧を印加すればよい。ここでは、トナー制御手段4と対向電極手段5との間隔0.3mmとしてDC+300Vを印加し、マイナス帯電トナーを対向電極手段5側に引き寄せる電位勾配としている。
【0063】
各電極111、42,43、5に印加する電位の関係を以上のように設定することで、マイナスに帯電したトナーがトナー通過穴41を通過可能な状態にする場合においては、最もプラス側に電位が高い対向電極手段5から出る電気力線のうち、トナー制御手段4のトナー通過穴41を通る電気力線の多くが、トナー通過穴41を通過した後、一番電位の低い共通電極43に入ることになる。このとき、近接した距離にあるトナー制御手段4の制御電極42と共通電極43にも175Vの電位があるため、その間にも強い電気力線が生じる。
【0064】
そのため、図9に示すように、トナーTがトナー通過穴41を通過可能な状態(ON状態)にしたときには、対向電極手段5からトナー通過穴41を通る電気力線10は、制御電極42に入ること無く(制御電極42を迂回して)、−125Vと最も電位の低い共通電極43に多くが入るため、ループ状に拡がった形状となる。つまり、対向電極手段5とトナー制御手段4の共通電極43との間に制御電極42を迂回してループ状に電気力線10が形成される。
【0065】
したがって、トナー担持体101上でクラウド状態にあるマイナス帯電トナーTがこの電気力線10に沿ってトナー通過穴41を通過し、記録媒体手段3の表面に多くのトナーTが移動することができる。
【0066】
このとき制御電極42には+50Vが印加され、トナー担持体101の0Vとの関係は、トナーTを制御電極42へ吸着する関係にあるため、本来であればこの+50Vが印加されている間に制御電極42表面にトナーが付着するはずであるが、図9から分かるように、+50Vが印加されている制御電極42上方を対向電極手段5からトナー通過穴41を通って共通電極43に入る電気力線10が覆っているため、制御電極41へトナーTが付着することが防止される。
【0067】
一方、トナーTがトナー通過穴41を通過不可能な阻止状態(OFF状態)にした場合、制御電極42には−125Vが印加され、共通電極43に対する電位と同じ電位であり、トナー担持体101の電位0Vとの関係は、トナーTをトナー担持体101側に反発する関係であり、トナー制御手段4へのトナーTの付着はないし、図10に示すように対向電極手段5からの電気力がトナー通過穴41を通り抜ける電気力線もないため、トナーTがトナー通過穴41を通過することもなく、地汚れ画像は発生しない。なお、阻止状態(OFF状態)の制御電極42への印加電圧は共通電極43の電位と同じ電位である必要はなく、よりマイナス側の電位であってもトナーTの通過を阻止する(OFF状態にする)ことはできる。
【0068】
つまり、この実施形態においても、対向電極手段5とトナー担持体101間の電位差をV1、対向電極手段5とトナー担持体101間の距離をL1、共通電極(第2の電極)43と対向電極手段5間の電位差をV2、共通電極(第2の電極)43から制御電極(第1の電極)42を経て対向電極手段5に至る間の距離をL2とするとき、V1/L1<V2/L2、の関係が成り立つ電圧を、トナー担持体101、制御電極41、共通電極43及び対向電極手段5にそれぞれ印加する。
【0069】
なお、実験によると、電位差V1、V2と距離L1、L2の関係が、V1/L1>V2/L2(比較例1)では、図11に示すようにトナー担持体1に入る電気力線が形成されてループ状電気力線は形成されず、制御電極42にはトナーが付着した。また、V1/L1=V2/L2(比較例2)では、図12に示すようにトナー担持体1に入る電気力線とある程度共通電極43側に向かおうとする電気力線が形成されるものの、ループ状電気力線は形成されず、制御電極42にはトナーが付着した。
【0070】
このように、トナーを担持するトナー担持体と、トナーをトナー担持体上で飛翔させ、クラウド化する手段と、トナーが付着させられる記録媒体手段と、記録媒体手段に電圧を印加する対向電極手段と、トナー担持体と記録媒体手段との間に配置された複数のトナー通過穴を有するトナー制御手段と、を備え、トナー制御手段は、トナー担持体側表面に、トナー通過穴の周囲及び穴内壁の少なくともいずれかにトナーの通過を制御する制御電極が設けられ、この制御電極の外側に複数のトナー通過穴に共通の共通電極が設けられ、トナー制御手段のトナー通過穴をトナー担持体のトナーが記録媒体手段に向かって通過可能な状態にするとき、記録媒体手段側とトナー制御手段の共通電極との間に制御電極を迂回してループ状に電気力線が形成されることにより、トナーを吸引する電位が印加される制御電極表面やその周囲へのトナー付着を大幅に低減でき、トナーの通過のオン/オフの制御を安定して行うことができるとともに、記録媒体手段側のバイアス電位と制御電極外側の共通電極間に形成される電気力線はトナー担持体側ではトナー通過穴の径より大きく広がり、クラウド化されたトナーを広範囲に捕獲して印写面側に向けて飛翔させることが可能となってトナーの利用効率が上がり、印刷濃度の確保、印刷速度の向上を図れる。
【0071】
また、各電極に印加する電位の関係として、トナー担持体1の電極111のDCバイアスとして−50V、パルスの波高値を+150V〜−150Vとして、±150Vpp−50VDCを印加すると、平均電位Vsは−50Vとなる。そして、トナー制御手段4の制御電極42のトナー通過ON時の電位Vc-onが0V、トナー通過OFF時の電位Vc-offが−175Vであっても、上述した例と等価である。この場合、制御電極42に印加する電圧Vcが0〜−175Vの一極性電圧のON、OFFであるため、ドライバ回路の構成が簡単になりコスト的にも有利である。
【0072】
このように、上述したトナー通過ON時に各電極に対して印加する電位の関係を、次のように設定することで、対向電極手段とトナー制御手段の共通電極との間に制御電極を迂回してループ状に電気力線を形成することができる。
【0073】
つまり、トナー担持体1の電極111に対し時間的に変動する平均電位Vsの電位を印加し、トナー制御手段4の制御電極42に対しトナーがトナー通過穴41を通過可能な状態にするときに電圧Vc-onを、トナーがトナー通過穴41を通過不可能な状態にするときに電圧Vc-offを印加し、トナー制御手段4を通過したトナーを記録媒体手段3に導いてトナーを付着させるために対向電極手段5にバイアス電圧Vpを印加するとき、
トナーがトナー通過穴41を通過可能な状態にするときの各電位の関係は、
Vp>Vc-on>Vs>Vg
とし、トナーが負帯電トナーの場合はバイアス電圧Vpがプラス電位側に高くなる関係、正帯電トナーの場合はバイアス電圧Vpがマイナス電位側に高くなる設定とする。
【0074】
また、この場合、トナーがトナー通過穴41を通過不可能な状態にするときの各電位の関係は、
Vs>Vg であり、且つ、Vs>Vc-off
であって、トナーが負帯電トナーの場合は平均電位Vsがプラス電位側に高くなる関係、正帯電トナーの場合は平均電位Vsがマイナス電位側に高くなる設定とすることが好ましい。
【0075】
各電極111、42、43、5に対する電位の関係を上述した関係に設定することにより、記録媒体手段側のバイアス電位とトナー担持体の電位間に直接形成される電気力線が低減され、記録媒体手段側のバイアス電位と制御電極外側の共通電極間に電気力を形成することができ、これにより、トナーを吸引する電位が印加される制御電極へのトナー付着を大幅に低減できて、制御電位が安定する。また、記録媒体手段側のバイアス電位と制御電極外側の共通電極間に形成される電気力線は、トナー供給側ではトナー通過穴の径より大きく広がるため、クラウド化されたトナーを広範囲に捕獲して印写面側に向けて飛翔させることが可能となり、トナーの利用効率が上がり、印刷濃度の確保、印刷速度の向上を図ることができる。さらに、トナー制御手段の共通電極はトナーを常に反発する関係の電位にあるため、トナーの付着が発生することがなく、共通電極の電位を一定に保つことが可能となり信頼性の高い画像形成装置を実現できる。
【0076】
さらに、高速印刷のためにトナー担持体1表面のトナー量が多くなった場合、また帯電電荷量が大きいトナーを使用して印刷を行う場合は、トナーが有する電荷によるトナー電位を無視できなくなり、各電極に印加する電位決定に考慮が必要となる。
【0077】
具体的に説明すると、トナー担持体1表面の供給トナー量m/Amg/cmに対するトナー電位の変化は図13に示すようになる。ここでは、トナーはマイナスに帯電したトナーの例であり、トナー担持体1表面の単位面積当たりのトナー量が増加するに従って、制御電極42側からみた表面電位はマイナス電位に上昇する。そして、供給したトナーがトナー担持体1表面に単に付着したままの電位Voに対して、トナー担持体101表面の電極に電圧を印加してトナーが電極11相互の電気力線に沿って上下の飛翔を繰り返すクラウド状態の電位Vtは大きく上昇する。これは、トナーがトナー担持体1表面より上方の空間にある方が、個々のトナーの周囲に対する結合静電容量が小さくなり、その結果電位が上昇するためである。
【0078】
このクラウド状態のトナー電位Vtの測定は、トナー担持体1表面の各電極111にパルス電圧を印加しながら、供給したトナーをクラウド状態にしてその上方に表面電位計を設定することで、容易に測定することができる。具体的には、クラウド化を起こすパルスを印加して、後述する一成分、または二成分ローラからトナーを供給しながらトナー担持体1を回転、又は進行波パルスでトナーを搬送し、トナー制御手段4が設定される位置にてトナー担持体101表面から2mm程度上方に表面電位計を設置して測定する。図11の結果は、帯電電荷量が−15〜−25μC/gのトナー供給した場合のVo、そのトナーを飛翔高さが表面近傍から200μmの範囲でクラウド状態にした場合のトナー電位Vtの場合の例である。
【0079】
この図13に示す各供給トナー量においてトナー制御手段4によりトナーの通過のON/OFF制御を行って印刷を行った結果、トナー制御手段4の電極42、43表面に付着したトナー量を評価した結果を図14に示している。この図14の結果において、供給トナー量が少ない領域は電極42、43へのトナー付着はないが、供給トナー量が増加して0.9mg/cmはトナー電位Vtが−80Vとなり、制御電極42へのトナー付着が起き始める。
【0080】
これは、等価的にトナー担持体1の電位がマイナス側に電位上昇してトナー制御手段4の共通電極42との電位差が小さくなった結果、対向電極手段5から出てトナー通過穴42を通る電気力線のうち、トナー担持体1に直接入る電気力線が増加し、共通電極43へ入るループ状の電気力線が減ったためである。すなわち、ループ状の電気力線が少なくなると、飛翔エネルギーの高いトナーがループ状の電気力線に乗って印写面の方向に飛翔することなく、ON電圧が印加されている制御電極42まで飛翔するためである。
【0081】
さらに、供給トナー量が増加して1.2mg/cm超えると、トナー電位Vtは−120V以上の値となる。この領域では、トナー制御手段4の共通電極43のバイアス電位Vg(−125V)との電位差がなくなり、飛翔エネルギーを有するトナーが共通電極43まで到達し始めてトナー付着が起きた結果である。また、制御電極42へのトナー付着量も増えてくる。
【0082】
これらのトナー付着は、定期的な電極クリーニングの頻度を上げることで、使用できないことはないが、画質低下が発生する。トナー付着が発生しない条件であれば、連続印刷においても画像濃度が低下することなく、信頼性の高い画像記録装置が可能となる。
【0083】
そこで、トナー量が多い場合、また帯電電荷量が大きいトナーを使用して画像を形成する場合は、各電極に対する電位を、次の条件で設定することで、電極へのトナー付着回避、トナー利用効率の向上で画像濃度が低下することなく高速印刷が可能になる。
【0084】
すなわち、電荷を有するトナーがトナー担持体1表面から飛翔してクラウド状態にある制御電極42側からみたトナー電位をVtとしたとき、トナーの通過をONさせる場合の各電位の関係は、
Vp>Vc-on>(Vs+Vt)>Vg
と、負帯電トナーの場合はVpがプラス電位側に高くなる関係、正帯電トナーの場合はVpがマイナス電位側に高くなる設定とする。
【0085】
また、トナーの通過をOFFさせる場合の各電位の関係は、
(Vs+Vt)>Vg であり、且つ、(Vs+Vt)>Vc-off
と、負帯電トナーの場合は(Vs+Vt)がプラス電位側に高くなる関係、正帯電トナーの場合は(Vs+Vt)がマイナス電位側に高くなる関係に設定する。
【0086】
各電極111、42、43、5に対する電位を上記のように設定する、つまり、トナー供給側の電位として、トナー担持体表面のトナーが飛翔することによる電位も考慮して各電極電位を適正に設定することで、印刷速度が速い供給トナー量が多い場合、またトナーの帯電電荷量が大きい場合においても、制御電極などへのトナー付着の低減、トナー利用効率の向上を図れ、高濃度、高速印刷の画像形成装置を実現することができる。
【0087】
また、前述したように、トナー担持体は、表面側に所定の間隔で配設された複数の電極を有し、隣接電極相互の間でトナーを吸引する方向と反発する方向を交互に繰り返す関係の電圧が印加され、電極に印加する2相の電極間ピッチP(又はn本毎の各電極にn相の位相電圧を印加するときのn相の電極間ピッチ)に対して、トナー担持体表面とトナー制御手段のトナー担持体側面の間の距離dが大きい構成とする。
【0088】
これにより、記録媒体手段側の印写バイアスからトナー制御手段の共通電極に向けて形成されるループ状電気力線を強いものとし、クラウド化されたトナーを印写面に向けてより多く飛翔させることができ、高速、高品質のドット形成が可能となる。
【0089】
次に、記録媒体手段3の移動速度とトナー担持体1の移動速度との関係について説明する。
トナー担持体1について、繰り返しになるが説明すると、例えば図15及び図16に示すように、電極幅40μm、電極間距離40μmとして、トナー搬送方向で奇数番目の電極111Aに図17のA相を、偶数番目の電極111Bに同じくB相を印加するものとする。A相の電極111Aは、図16で左側から給電部材が出ており、B相の電極111Bは同じく右側から給電部材が出ており、A相とB相で櫛歯状の電極構成となっている。トナー担持体1の端部は外部から電圧を供給できるようにしている。このような、トナー担持体1は、例えば、軸となるステンレスなどの金属ローラに樹脂をコーティング又は樹脂ローラに金属ローラを圧入し、その樹脂ローラの表面に櫛歯状に電極を形成し、更に絶縁層でコーティングすることで形成することができる。
【0090】
ここで、通常プリントタイミングにおいて印加する電圧であるA相とB相は、図17に示すように、矩形波であり、A相とB相の電圧は位相がπだけずれて印加される。この位相差によって、A相とB相間には常にVppだけの電位差が生じている。この電位差によって電極111A、111B間に電界が発生し,この電界に応じてトナーTが電極111A,111B間をホッピングしクラウド状態となる。
【0091】
この電位差Vppは100V〜1000Vである。電位差Vppが100Vより小さくなると、電極間の電界が小さくなってしまい、トナーがホッピングしなくなってしまう。また、電位差Vppが1000Vより大きくなると、経時的に電極間でリークが発生するおそれがあり、リークが発生するとそれ以降は電極間に電界が発生しなくなって、トナーがホッピングしなくなる。
【0092】
また、通常プリントタイミングにおける周波数2fは0.1kHz〜10kHzである。0.1kHzより小さくすると、トナーのホッピングが現像速度に追いつかなくなり、10kHzより大きくすると、トナーが電圧の切り替わりに追従できなくなってしまう。電圧の中心値は,画像部電位と非画像部電位の間で現像条件によって変動させている。なお、印加する電圧波形を矩形波とすることで、電圧の切り替わりが瞬時に起き、トナーのホッピングには適しているが,サイン波でも三角波でも良い。
【0093】
このようなトナー担持体1を使用してトナーTのクラウドを発生させ、画像形成を行ったところ、例えば大きなベタ画像を形成した際に、ベタ画像に縞状のムラが発生してしまうことが判明した。
【0094】
本発明者らによるこの画像ムラの現象についての解析の結果、次のことが判明した。つまり、先ず、図16に示すようなトナー担持体1に対して、トナーTを表面に担持させ、電極111A、111BにそれぞれA相、B相の電圧を印加することでトナーのクラウドを発生させると、図18に示すように、電極111Aに印加したA相と電極111Bに印加したB相により、トナー担持体1上には、破線で示したような電界(電気力線)11が形成される。トナー担持体1上のトナーTは、この電界に沿って電極111Aと111Bとの間をホッピングする。そのため、トナー担持体1のクラウド状トナーは、図18に示す電界に沿って、密度の濃い部分と薄い部分のムラを形成しやすくなる。
【0095】
ここで、トナー担持体1と記録媒体手段3とを等速で移動させた場合の状態を図19に示している。なお、図19の矢印1y、3yは、トナー担持体1と記録媒体手段3の移動方向及び移動速度の大きさを示し、この図19に示す矢印の方向(図で右方向)を順方向とする。このような場合、トナー担持体1上のクラウドのムラと等速で記録媒体手段3が移動するため、連続したベタ画像などを形成するときに、クラウドの密度が濃いタイミングでは制御電界によるトナーの移動量が多く、クラウドの密度が薄いタイミングでは制御電界によるトナーの移動量が少なくなり、クラウドの密度ムラに対応してベタに濃淡のムラが発生してしまうことが判明した。
【0096】
このような画像ムラを発生する原因であるクラウド密度のムラについては、電極111Aと電極111Bとの間隔を狭くすることで改善傾向にあることが分かっているが、電極111A、111Bの幅をあまりに小さくすると、使用中に断線するなど電極品質の維持管理の点で課題があることやエッチング等による基板製造工程における品質精度の点で、あまり小さくできないという不都合がある。なお、現在の技術における主流は幅が20〜40μm程度が一般的である。また、電極111A、111Bの配置間隔を狭くすることは、電極111A、111Bの絶縁性を損なうことになるため、電極111A、111B間で電圧リークによる損傷を生じさせないためには、配置間隔を狭くすることにも限界がある。これらの事情により、電極111Aと電極111Bとに電圧を印加して、トナークラウドを発生させる構成において、密度のムラは、完全になくすことはできない課題である。
【0097】
なお、一般的によく用いられる現像方式である1成分現像方式では、規制ブレードによる付着トナー粒子の薄膜化によって、粒子担持体上にトナーを均一に配置するため、このような現像課題は生じない。また、同じく一般的によく用いられる2成分現像方式では、キャリアと呼ばれるトナーを表面に付着させて運ぶ媒体が穂のような形態をなすため、一見、同様なトナーの担持ムラのようなものがあるが、実際に現像する段階においては、トナーの移動先の部材にキャリアとトナーの穂が接触する際に、穂が少々寝た状態で使用するため、トナーの担持ムラという課題が生じにくい。
【0098】
つまり、トナーのクラウドムラによる画像ムラの発生は、電極を配置するトナー担持体の構成及びトナークラウド発生方法に独特の課題であるといえる。
【0099】
そこで、本発明に係る画像形成装置においては、トナー担持体1の順方向における移動速度と記録媒体手段3の順方向における移動速度とを異ならせている。この構成の異なる例について図20及び図21を参照して説明する。
【0100】
図20に示す第1例では、トナー担持体1の順方向における移動速度を記録媒体手段3の順方向における移動速度よりも速い速度に設定している。このように、トナー担持体1の移動速度を記録媒体手段3の移動速度に対して相対的に速くすることで、単位時間当たりに記録媒体手段3から見た見かけ上のクラウド密度のムラが小さくなり、画像ムラが低減する。
【0101】
図21に示す第2例では、トナー担持体1の移動速度を記録媒体手段3の移動速度に対してマイナス方向(逆方向)に設定している。このように、トナー担持体1の移動方向を記録媒体手段3の移動方向に対して逆方向にして、トナー担持体1の順方向における移動速度と記録媒体手段3の順方向における移動速度とを異ならせることにより、単位時間当たりに記録媒体手段3から見た見かけ上のクラウド密度のムラが小さくなり、画像ムラが低減する。
【0102】
この第2例の構成では、トナー担持体1の回転方向(トナー搬送方向)を記録媒体手段3の移動方向と逆方向にするだけでよく、第1例の構成と同じ作用効果をトナー担持体1の絶対速度が小さい状態で達成することができ、部材(部品)の長寿命化を図れる。
【0103】
ここで、制御電極42に印加するバイアスVcのパルス幅(時間)は、記録媒体手段3の移動速度と画像の解像度により決定される。例えば、記録媒体手段3が100mm/secで移動している場合に600dpiの解像度で画像を形成するとき、制御電極42に印加するバイアスの最大パルス幅は、
(25.4÷600)÷100=0.0004233[sec]
となる。即ち、約0.42msecである。このように記録媒体手段20の移動速度と解像度により決まる、制御電極42に印加する最大パルス幅をまとめたものを図22に示している。
【0104】
また、図23に示すようにトナー担持体1の電極111Aと電極111Bの距離をxとすると、本発明におけるトナー担持体1の速度は、図22に示したパルス幅(時間)で距離x以上移動するように設定することが好ましい。例えば、電極111Aと電極111Bの距離が0.080mm(80μm)で、記録媒体手段3が100mm/secで移動している場合に600dpiの解像度で画像を形成するときには、
0.080÷0.0004233=188.99 [mm/sec]
となる。したがって、トナー担持体1の移動速度は、約189mm/secよりも速くすると良い。
【0105】
このようにすることで、クラウド状トナーの山状部分(トナー密度高)と谷状部分(トナー密度低)がパルス時間内にトナー制御手段4のトナー通過穴41を通過するために、パルス時間内に山状部分だけ若しくは谷状部分だけ通過する場合に比べて、画像のムラを生じにくくすることができる。
【0106】
次に、トナー制御手段4をFPCで形成した場合のFPC上のトナー通過穴41の配列例との関係について図24を参照して説明する。
この例では、図24(a)に示すトナー制御手段4としてのFPC4Aに、同図(b)に示すようにトナーTが通過するトナー通過穴41を8列の千鳥配列で形成している。トナー通過穴41は、同図で左から順に、1列目、2列目・・・8列目とする。記録媒体手段3は同図で左から右方向に移動する。
【0107】
このように、記録媒体手段3の移動方向に対して複数列にトナー通過穴41を配置した構成において、トナー担持体1と記録媒体手段3の速度が同じ場合、トナー担持体1から記録媒体手段3へのトナー飛翔量が多い場合には、トナー通過穴41の1列目から順にトナー担持体1上のトナーが消費されていくため、1列目のトナー通過穴41と8列目のトナー通過穴41でトナーの供給量が変化してしまうことになる。このような現象を避けるためにも、本発明のように、トナー担持体1を記録媒体手段3よりも速く移動させることが有効である。
【0108】
なお、例えば、トナー担持体1の移動速度を記録媒体手段3の移動速度よりも遅くすることによっても画像ムラを低減することは可能である。ただし、画像ムラの発生頻度(例えば全ベタ画像を形成した際に、ベタ画像に含まれる画像ムラ(スジ状)の本数)が減るだけで、画像ムラ自体を防止する効果はトナー担持体1の移動速度を記録媒体手段3の移動速度よりも速くする第1例に比べて小さい。また、トナー担持体1から記録媒体手段3へのトナー移動速度が速い場合、図24に示すトナー通過穴の配列において、記録媒体手段3の移動方向に対して上流側のトナー通過穴と下流側のトナー通過穴でトナー担持体1上の粒子密度が異なってしまう場合がある。
【0109】
また、上記実施形態においては、トナー制御手段に第1の電極(制御電極)と第2の電極(共通電極)とを有する構成で説明しているが、図25に示すように、トナー制御手段にトナー通過穴41と制御電極42だけを有している構成の画像形成装置にも同様に適用することができる。
【0110】
また、トナーは、正帯電トナー及び負帯電トナーのいずれを用いる画像形成装置でも本発明を適用することができる。さらに、トナー担持体、トナー制御手段、対向電極手段などの形状もローラ形状、プレート形状、基板形状など特に限定されるものではない。
【0111】
次に、本発明の第2実施形態について図26を参照して説明する。なお、図26は同実施形態に係る画像形成装置の模式的構成図である。
この画像形成装置は、前述した第1実施形態のユニットを4個設けてイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色分のトナーのクラウド化とトナー制御手段によるON/OFF制御を行ってカラー画像を形成する画像形成装置の例である。
【0112】
つまり、この画像形成装置は、記録媒体手段である中間転写記録体103に沿って、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色分のトナーを供給する4個のトナー供給ユニット100y、101m、101c、101k(色を区別しないときは「トナー供給ユニット100」という。以下同様。)を配置し、各トナー供給ユニット100と中間転写記録体103との間に、それぞれ前記第1実施形態と同様なトナー制御手段4を配置している。
【0113】
トナー供給ユニット100は、第1実施形態と同様に、トナーをクラウド化させるために電圧を印加する複数の電極111を並べて配置した矢示方向に回転するトナー担持体1と、このトナー担持体1にトナーを補給する回転するトナー補給ローラ113と、トナー担持体101上のトナー量を規制するブレード114を備えている。
【0114】
このトナー供給ユニット100では、トナー補給ローラ113からトナー担持体1にトナーが補給されるとともに、トナー補給ローラ113上のトナーとトナー担持体1との摩擦によってトナーの摩擦帯電が行われる。また、トナー補給ローラ113の下流側のブレード114は、トナー担持体1表面のトナー量を薄層で一定量にするとともに、トナー帯電量の安定化も図っている。
【0115】
また、中間転写記録体103は、2つのローラ132、133との間に掛け回されて矢示方向に周回移動する。この中間転写記録体103の背面(内側)には各トナー供給ユニット100に対応して対向電極手段(記録媒体手段側電極)である背面電極5が配置されている。また、転写後の中間転写記録体103上の残トナーを除去するクリーニングユニット135が備えられる。
【0116】
ここで、前述した第1実施形態で説明したようにトナー供給ユニット100のトナー担持体1の移動速度は中間転写記録体103の移動速度よりも速い速度に設定しているが、トナー供給ユニット100のトナー担持体1の移動方向を中間転写記録体103の移動方向と逆方向にすることもできる。
【0117】
そして、トナー供給ユニット100で供給されるトナーが、トナー制御手段4によって画像に応じてON/OFF制御されることで中間転写記録体103上に飛翔され、中間転写記録体103上にカラーのトナー画像が形成される。
【0118】
一方、下方に記録紙150を収容する給紙部105が配置され、給紙部105から記録紙150がピックアップローラ(給紙ローラ)106で給紙されて、中間転写記録体103を掛け回したローラ132に対向して配置した転写ローラ107で中間転写記録体103上のトナー画像が転写され、定着ユニット108でトナーが記録紙150上に溶融定着されて排紙される。
【0119】
なお、ここでは図示していないが、記録紙150の裏面側の転写ローラ107に+バイアスが印加されることで中間転写記録体103から記録紙150面へのトナー画像の転写が行われる。また、上述したように中間転写記録体103はクリーニングユニット135で残トナーがクリーニングされて、次の画像形成が行われる。
【0120】
このように、この画像形成装置は、中間転写記録体に4色画像を形成した後、給紙部から供給される記録紙に転写を行う中間転写記録方式である。この中間転写記録方式の場合は、印写面(トナーが着弾する面、画像形成面ともいう。)とトナー制御手段との間隔を一定に保つ精度確保が容易であり、トナー飛翔速度が低い条件で高画質化を図ることができる。また、平滑で体積抵抗率の調整によって電荷が蓄積しない、電位変動のない印写面が得られ、クラウド化したトナーの通過のON/OFFで直接印刷する画像形成装置は電位に対する感度が高く、印写面バイアス電位の変動に対して画質変動が発生しやすいが、この構成であれば信頼性の高い、高画質のカラー画像を得ることができる。
【0121】
次に、本発明の第3実施形態について図27を参照して説明する。なお、図27は同実施形態に係る画像形成装置の模式的構成図である。
この画像形成装置は、記録媒体手段を記録紙として、記録紙上に直接画像を形成する例である。つまり、ここでは、給紙部105から供給される記録紙150を紙搬送ベルト161に静電的に吸着してトナー供給ユニット100の領域を通過させ、トナー制御手段4の画像に応じたON/OFF制御によって記録紙150上に直接カラー画像を形成する。
【0122】
なお、紙搬送ベルト161は、ポリイミド等から形成され、2つのローラ162、163に掛け回されて矢示方向に周回移動し、図示しない帯電ローラなどの帯電手段によって帯電されることで記録紙150を静電的に吸着保持して搬送する。なお、給紙部105から記録紙150を紙搬送ベルト161に導くためのガイド164、レジストローラ165なども配置されている。
【0123】
また、ここでは、トナー供給ユニット100のトナー担持体1の移動方向を紙搬送ベルト161による記録紙150の移動方向と逆方向としているが、トナー担持体1の移動方向を紙搬送ベルト161による記録紙150の移動方向とを同じ方向として、トナー供給ユニット100のトナー担持体1の移動速度を記録紙150の移動速度よりも速い速度に設定することもできる。
【0124】
この構成では、トナー通過を制御するトナー制御手段4と通過後のトナーを記録紙150に導くためのバイアスを印加する対向電極手段5の間にポリイミド等の紙搬送ベルト161及び記録紙150があるため、トナー制御手段4と対向電極手段5の間隔を非常に狭く設定することが難しいが、他方、記録紙150上に直接カラー画像を形成し、転写プロセスがないため、転写によるトナー散りで画質低下することがなくなる。
【0125】
また、前記第2実施形態の構成のようなベルトクリーニング機構を必要としないこと等もあり、小型、低コストの画像形成装置の実現に有利である。トナーをクラウド化する本構成では、印写面バイアスを低い設定にしてトナーを導くことも可能であるため、紙面へのトナーの着弾スピードも低く設定でき、トナーの散りが起きない高画質の画像形成装置を得ることができる。
【0126】
次に、第2、第3実施形態に係る画像形成装置におけるトナー供給ユニット100の具体的な構成の一例について図28を参照して説明する。
このトナー供給ユニット100は、磁性キャリアと非磁性トナーから成る二成分記録剤を用いる例である。記録剤収容部201は2つの室201A、201Bに分けられており、トナー供給ユニット100内の両端部の記録剤通路(図示せず)によって繋がっている。記録剤収容部201には二成分記録剤が収容されており、各室201A、201Bにある攪拌搬送スクリュー202A、202Bによって攪拌されながら記録剤収容部201内を搬送されている。
【0127】
記録剤収容部201の室201Aにはトナー補給口203が配置されており、図示しないトナー収容部からトナー補給口203を通って、記録剤収容部201内に補給される。記録剤収容部201には記録剤の透磁率を検知する図示しないトナー濃度センサが設置されており、記録剤の濃度を検知している。記録剤収容部201のトナー濃度が減少すると、トナー補給口203から記録剤収容部201内にトナーが補給される。
【0128】
そして、攪拌搬送スクリュー202Bと対向する位置には、トナー補給ローラとしてのマグブラシローラ204が配置されている。マグブラシローラ204の内部には固定された磁石が配置されおり、マグブラシローラ204の回転と磁力によって、記録剤収容部201内の記録剤はマグブラシローラ204表面に汲み上げられる。記録剤の汲み上げ位置よりマグブラシローラ204の回転方向上流において、マグブラシローラ204と対向する位置に記録剤層規制部材205が設けられている。
【0129】
汲み上げ位置で汲み上げたれた記録剤は記録剤層規制部材205によって一定量の記録剤層厚に規制される。記録剤層規制部材205を通った記録剤はマグブラシローラ204の回転に伴って、トナー担持体1と対向する位置まで搬送される。マグブラシローラ204には、第1電圧印加手段211によって供給バイアスが印加されている。
【0130】
トナー担持体1には、第2電圧印加手段212によって所要のパルス状電圧が電極111に印加されている。マグブラシローラ204と対向する位置においては、第1、第2電圧印加手段211、212によってトナー担持体1とマグブラシローラ204との間に電界が生じている。その電界からの静電気力を受け、トナーはキャリアから分離し、トナー担持体1表面に移動する。トナー担持体1表面に達したトナーは、第2電圧印加手段212から電極111に印加された電圧が形成する電界によってクラウド化し、トナー担持体1の回転、またはトナー担持体1の電極111による進行波電界によって搬送される。
【0131】
そして、トナー制御手段4と対向する位置まで搬送されたトナーは、制御電極42のトナー通過ON/OFFの制御電界により選択的に記録媒体手段側に飛翔されて、トナーのドット印写が制御される。
【0132】
次に、同じく第2、第3実施形態に係る画像形成装置におけるトナー供給ユニット100の具体的な構成の他の例について図29を参照して説明する。
このトナー供給ユニット100は、非磁性トナーから成る一成分記録剤を用いる例である。トナーは記録剤収容部201に収容されており、帯電ローラ220によってトナーはトナー補給ローラ113と摩擦帯電を行い、静電気力によってトナー補給ローラ113上に汲み上げられる。トナー補給ローラ113上のトナーは記録剤層規制部材114によって薄層とされ、トナー補給ローラ113の回転に伴ってトナー担持体1と対向する位置に搬送される。
【0133】
このとき、トナー補給ローラ113には、第1電圧印加手段221によって供給バイアスが印加されている。トナー担持体101には、第2電圧印加手段222によって電極111に電圧が印加されている。したがって、トナー担持体1と対向する位置においては、第1、第2電圧印加手段221、222によってトナー担持体1とトナー補給ローラ113との間に電界が生じ、その電界からの静電気力を受け、トナーはトナー補給ローラ113から分離し、トナー担持体1表面に移動する。
【0134】
前記の例と同様に、トナー担持体1表面に達したトナーは、第2電圧印加手段222から電極111に印加された電圧が形成する電界によってクラウド化し、トナー担持体1の回転、またはトナー担持体1の電極111による進行波電界によって搬送される。
【0135】
そして、トナー制御手段4と対向する位置まで搬送されたトナーは、制御電極42のトナー通過ON/OFFの制御電界により選択的に記録媒体手段側に飛翔されて、トナーのドット印写が制御される。
【0136】
なお、これらの各トナー供給ユニット100において、印写に寄与しなかったトナーはトナー担持体1によってさらに搬送され、図示しない回収手段によってトナー担持体1表面から回収される。回収されたトナーは再び記録剤収容部201に戻され、トナー供給ユニット100内を循環する。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】本発明の第1実施形態の一例を示す模式的構成図である。
【図2】同じく制御電極に印加する制御パルスの一例を示す説明図である。
【図3】(a)はトナー制御手段の一例を示す印写面側の説明図、(b)は同じくトナー供給側面の説明図である。
【図4】(a)はトナー制御手段の他の例を示す印写面側の説明図、(b)は同じくトナー供給側面の説明図である。
【図5】(a)はトナー担持体の一例を展開した状態で示す模式的平面説明図、(b)は同じく模式的断面説明図である。
【図6】同トナー担持体の電極に印加するパルス状電圧の一例を示す説明図である。
【図7】(a)はトナー担持体の他の例を展開した状態で示す模式的平面説明図、(b)は同じく模式的断面説明図である
【図8】同トナー担持体の電極に印加するパルス状電圧の一例を示す説明図である。
【図9】トナー制御手段がトナー通過可能状態時の二次元断面電界強度分布のシミュレーション結果に基づくトナー通過穴を通過する電気力線を示す説明図である。
【図10】同じくトナー通過不可能状態時の電気力線を示す説明図である。
【図11】比較例1の場合の図8と同様な電気力線を示す説明図である。
【図12】比較例2の場合の図8と同様な電気力線を示す説明図である。
【図13】供給トナー量とトナー電位の関係の一例を示す説明図である。
【図14】供給トナー量とトナー制御手段へのトナー付着の関係の説明に供する説明図である。
【図15】トナー担持体と記録媒体手段の移動速度の関係の説明に供するトナー担持体の模式的説明図である。
【図16】同じくトナー担持体を展開した状態で示す模式的説明図である。
【図17】同じくトナー担持体の電極に印加する電圧波形の説明図である。
【図18】同じくトナー担持体上のトナーのクラウド化と電気力線の関係を説明する模式的説明図である。
【図19】同じくトナー担持体上のトナーのクラウドのムラによる画像ムラの発生の説明に供する模式的説明図である。
【図20】同じくトナー担持体と記録媒体手段の移動速度を異ならせる第1例の説明に供する模式的説明図である。
【図21】同じくトナー担持体と記録媒体手段の移動速度を異ならせる第2例の説明に供する模式的説明図である。
【図22】制御電極に印加する電圧パルスの最大パルス幅と記録媒体手段の移動速度及び画像解像度の関係の一例を示す説明図である。
【図23】トナー担持体の電極間距離の説明に供する説明図である。
【図24】トナー制御手段のFPCで構成した場合のトナー通過穴の配置例とトナー担持体の移動速度との説明に供する説明図である。
【図25】本発明の第1実施形態の他の例を示す構成図である。
【図26】本発明の第2実施形態に係る画像形成装置を示す模式的説明図である。
【図27】本発明の第3実施形態に係る画像形成装置を示す模式的説明図である。
【図28】トナー供給ユニットの一例を示す模式的説明図である。
【図29】トナー供給ユニットの他の例を示す模式的説明図である。
【符号の説明】
【0138】
1…トナー担持体
3…記録媒体手段
4…トナー制御手段
5…対向電極手段
41…トナー通過穴
42…制御電極
43…共通電極
100…トナー供給ユニット
103…中間転写記録体
104…トナー制御手段
111…電極
150…記録紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電したトナーを担持して所定の移動方向に移動し、表面に移動方向に所定の間隔で設けられた複数の電極を有するトナー担持体と、
前記トナー担持体の複数の電極に対して前記トナーを吸引する方向と反発する方向の電圧を交互に印加するクラウド化手段と、
前記トナーが付着させられる記録媒体手段と、
前記トナー担持体と前記記録媒体手段との間に配置された複数のトナー通過開口を有するトナー制御手段と、
前記記録媒体手段側に電圧を印加する対向電極手段と、
前記トナー制御手段に設けられ、前記トナー担持体からの前記トナーの飛翔を制御する第1の電極と、
前記トナー制御手段の前記トナー担持体に対向する面であって、前記第1の電極から離れた位置に設けられた第2の電極と、
前記対向電極手段と前記トナー担持体間の電位差をV1、前記対向電極手段と前記トナー担持体間の距離をL1、前記第2の電極と前記対向電極手段間の電位差をV2、前記第2の電極から前記第1の電極を経て前記対向電極手段に至る間の距離をL2とするとき、
V1/L1<V2/L2
の関係が成り立つ電圧を、前記トナー担持体、前記第1の電極、前記第2の電極及び前記対向電極手段にそれぞれ印加する電圧印加手段と、を備え、
前記記録媒体手段の移動方向を順方向としたとき、前記トナー担持体の順方向における移動速度と前記記録媒体手段の順方向における移動速度とが異なる
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、前記トナー担持体の順方向における移動速度が前記記録媒体手段の順方向における移動速度よりも速いことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像形成装置において、前記トナー担持体の電極に印加する電圧をVs、前記対向電極手段に印加する電圧をVp、前記トナー制御手段の第1の電極に印加する電圧をVc、前記トナー制御手段の第2の電極に印加する電圧をVgとしたとき、前記トナーが前記トナー通過開口を通過可能にするときには、前記トナーの帯電極性と逆極性であって、大きい順に、Vp>Vc>Vs>Vg、の関係が成り立つことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像形成装置において、前記トナーが前記トナー通過開口を通過することを阻止するときには、Vc<Vg、の関係の電圧を前記第1の電極及び前記第2の電極に印加することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像形成装置において、前記トナーの電位をVtとしたとき、Vs>Vt>Vg、の関係が成り立つことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
帯電したトナーを担持して所定の移動方向に移動し、表面に移動方向に所定の間隔で設けられた複数の電極を有するトナー担持体と、
前記トナー担持体の複数の電極に対して前記トナーを吸引する方向と反発する方向の電圧を交互に印加するクラウド化手段と、
前記トナーが付着させられる記録媒体手段と、
前記トナー担持体と前記記録媒体手段との間に配置された複数のトナー通過開口を有するトナー制御手段と、
前記記録媒体手段側に電圧を印加する対向電極手段と、
前記トナー制御手段に設けられ、前記トナー担持体からの前記トナーの飛翔を制御する電極と、
前記トナー制御手段の前記電極に対して選択的に飛翔用電圧を印加し、前記トナー担持体から前記トナー制御手段のトナー通過開口を通じて前記記録媒体手段側へトナーを移動させる制御手段と、を備え、
前記記録媒体手段の移動方向を順方向としたとき、前記トナー担持体の順方向における移動速度と前記記録媒体手段の順方向における移動速度とが異なる
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項6に記載の画像形成装置において、前記トナー担持体の順方向における移動速度が前記記録媒体手段の順方向における移動速度よりも速いことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の画像形成装置において、前記トナー担持体の電極に印加する電圧をVs、前記対向電極手段に印加する電圧をVp、前記トナー制御手段の電極に印加する電圧をVcとしたとき、前記トナーが前記トナー通過開口を通過可能にするときには、前記トナーの帯電極性と逆極性であって、大きい順に、Vp>Vc>Vs、の関係が成り立つことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2010−58345(P2010−58345A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−225171(P2008−225171)
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】