説明

画像形成装置

【課題】実際の使用状況に応じて定着部の寿命、つまり、交換時期を適切に診断して利用効率を高めることができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】トナー像が担持された記録材を加熱定着する回転体及び前記回転体と圧接してニップ部を形成する加圧回転体を備えた定着部と、前記回転体及び加圧回転体を駆動するモータ24の起動時の突入電流を検出する電流検出部10と、前記電流検出部10により検出される突入電流の程度に基づいて前記定着部の交換時期を診断し、交換時期に到達したと診断すると、その後の印刷を禁止する寿命診断部5を備えて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー像が担持された記録材を加熱定着する回転体と、この回転体に圧接してニップ部を形成する加圧回転体を備えた定着部の寿命を適正に診断し得る画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を採用したプリンタ、複写機及び複合機等に設けられた定着器の寿命到来を診断し、その交換を促す装置が各種提案されている。
例えば、特許文献1に示す画像形成装置は、定着器を構成する定着ローラと、この定着ローラに当接してクリーニングするクリーニングウェブと、このクリーニングウェブの略終端部を検出する終端部センサーと、画像形成部や定着ユニットを制御するコントローラ等を備えて構成されている。
【0003】
このコントローラは、終端部センサーからクリーニングウェブの略終端を検出する信号が送出されてきたとき、前記定着器の寿命を予告する信号を発生して表示器に表示させるとともに画像形成枚数をカウントし、このカウント値が所定の枚数になったときに初めて定着器の寿命と判断する。
これにより、ユーザーは予告表示があった後、交換可能な定着器を用意できるまでの時間的余裕が生じ、利便性が高められる。
【0004】
また、特許文献2に示す画像形成装置は、定着装置の交換に関してユーザビリティの向上を図ることを目的としている。
この画像形成装置は、プリンタに適用されたもので、現像装置による可視画像を記録媒体に転写する転写ローラや可視画像を未定着画像として担持した記録媒体に定着処理する定着装置等を備えている。
【0005】
そして、このプリンタの動作を制御するCPUが、定着装置の交換時期を判定する手段を兼ねる構成になっている。
このCPUは、ヒータ電源回路からヒータへの通電の継続時間を積算した後、得られた積算時間と定着装置交換時期の指標たる基準時間との比較結果に基づいて定着装置の交換時期を判定し、その判定結果を外部装置に出力するようになっている。
【0006】
このように、CPUが定着装置の履歴に基づいて交換時期を判定すると、その判定結果を外部装置によりチェック可能となるので、ユーザーやサービスマンが定着装置の寿命が尽きる前に交換時期を知ることができ、定着装置の交換に関するユーザビリティが向上するというものである。
【0007】
【特許文献1】特開平8―095438
【特許文献2】特開平11−305579
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献1に記載された画像形成装置は、不揮発メモリに記憶した枚数が所定枚数に到達したときに定着器の交換時期と判定し、定着器自体の使用状態等により変動する劣化度合を基準に交換時期を判断するものではない。
よって、定着器がまだ本来の寿命到来まで使用可能な場合でも、一定の画像形成枚数になれば画像形成が禁止されるので、新しい定着器に交換する必要があり、定着器の利用効率を高めることができない。
【0009】
また、上記特許文献2の画像形成装置は、交換時期判定手段であるCPUが、基準時間との比較結果により定着装置の交換時期を判定するので、やはり、定着装置の本来の寿命到来に関係なく新しい定着装置と交換する必要がある。
この結果、単に印刷累積枚数の到来で定着器の交換時期を判定していた上記特許文献1の画像形成装置と同じく、定着装置の本来の寿命が不明な故に、ヒータへの通電積算時間が基準時間に達した時点で交換時期が到来したと判定するので、定着装置の利用効率を高められず、ランニングコストを低減できないという欠点があった。
【0010】
本発明の目的は、上述の問題に鑑み、実際の使用状況に応じて定着部の寿命、つまり、交換時期を適切に診断して利用効率を高めることができる画像形成装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するため、本発明による画像形成装置の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、トナー像が担持された記録材を加熱定着する回転体及び前記回転体と圧接してニップ部を形成する加圧回転体を備えた定着部と、前記回転体及び加圧回転体を駆動するモータの起動時の突入電流を検出する電流検出部と、前記電流検出部により検出される突入電流の程度に基づいて前記定着部の交換時期を診断し、交換時期に到達したと診断すると、その後の印刷を禁止する寿命診断部を備えて構成されている点にある。
【0012】
前記寿命診断部は、トナー像が担持された記録材を加熱定着する回転体及び前記回転体を駆動させるモータの起動時に、電流検出部により検出される突入電流の程度に基づいて定着部の交換時期を診断する。即ち、回転体の表面の劣化や駆動機構の摩耗等が進行すると、起動時のトルクが著しく増大する傾向があり、この点に着目して本来の寿命に至ったと判断するのである。
【0013】
従って、定着部の本来の寿命が到来するまでの間は、使用を継続することができるので、予め設定された制限枚数以上に印刷することも可能となり、定着部の利用効率が高められる。
また、定着部が交換時期に到達したと診断されると、その後の印刷を禁止するので、定着部の周辺機器を保護することができる。
【0014】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、前記寿命診断部は、前記定着部を通過した記録材の累積枚数を計数し、累積枚数が所定の制限枚数に達すると、前記定着部の交換時期が近づいた旨のメッセージを出力するように構成されている点にある。
【0015】
前記寿命診断部は、累積枚数が所定の制限枚数に達したときに、前記定着部の交換時期が近づいた旨のメッセージを出力するので、このメッセージに基づきユーザーやサービスマンが交換部品等を準備することができる。
【0016】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第二の特徴構成に加えて、前記寿命診断部は、前記寿命診断部により診断された交換時期までに印刷された累積枚数に基づいて、前記定着部の交換後の前記制限枚数を補正するように構成されている点にある。
【0017】
前記定着部の実際の交換時期に基づいて印刷制限枚数を補正するので、定着部の使用状況に応じた適切なタイミングでメッセージを出力できるようになる。
【0018】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第一から三の何れかの特徴構成に加えて、前記電流検出部は、前記モータへ電力を供給するDC電源ラインに並列接続された抵抗分圧回路により構成され、前記抵抗分圧回路により前記突入電流が電流/電圧変換された分圧が寿命診断部に入力されるように構成されている点にある。
【0019】
前記電流検出部が、モータへ電力を供給するDC電源ラインに抵抗分圧回路を並列接続する簡単な構成なので、部品点数を少なくすることができ、電流検出部を含む回路の設計及び製作が容易になる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明した通り、本発明によれば、実際の使用状況に応じて定着部の寿命、つまり、交換時期を適切に診断して利用効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明の画像形成装置が組み込まれた画像形成装置の一例であるカラープリンタについて説明する。
【0022】
図1に示すように、電子写真方式を採用したカラープリンタ1は、マンマシンインターフェースであり、液晶画面やプリント条件等を入力する操作キー等が配置された操作部11と、ネットワークを介してパーソナルコンピュータ等から入力された画像データに基づいてトナー像を形成する画像形成部12と、用紙収容部14から搬送された用紙に画像形成部12が形成したトナー像を転写する転写部13と、転写部13により転写されたトナー像を用紙に溶融定着する定着装置である定着部2等と、これらを制御して所定の画像形成プロセスを実行する制御部4と、この制御部4等に必要な電力を供給する電源部3を備えている。
【0023】
画像形成部12は、マゼンダ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)、ブラック(K)のトナー色毎に設けられた感光体ユニットと、各感光体ユニットの感光体表面を一様に帯電する帯電装置と、入力された画像データに基づきレーザビームを走査して感光体表面を露光し静電潜像を形成する露光ユニットと、形成された静電潜像をトナー像として顕像化する現像装置等を備えている。
【0024】
転写部13は、画像形成部12の各感光体ユニットで形成された複数色のトナー像を重畳して担持する中間転写ベルト132と、中間転写ベルト132を回転支持する支持ローラ131と、中間転写ベルト132に担持されたトナー像を用紙収容部14から搬送された用紙に転写する転写ローラ133と、中間転写ベルト132の残留トナーを除去するブレード134等を備えている。
【0025】
定着部2は、内挿したヒータ21の熱により被加熱媒体である用紙を加熱する定着ローラ20と、定着ローラ20に圧接されて定着ローラ20と共に用紙を挟持搬送する加圧ローラ22を備えている。定着ローラ20は、定着モータ24により回転駆動されるようになっている。
【0026】
図2に示すように、定着モータ24は、制御部4からの制御信号を受けるドライバ25によって回転が制御される。この定着モータ24のシャフトには、ギャ26が固設されており、定着ローラ20側のギャ27と噛合している。これにより、定着モータ24が回転駆動したとき、ギャ26,27が連動して定着ローラ20が回転するようになっている。
【0027】
また、この定着ローラ20は、ギャ27側の一端部から他端部まで軸心方向に沿って中空部が形成されており、この中空部内にヒータ21が収納されている。このヒータ21は、一方の接続端が電源部3に接続される一方、他方の接続端がトライアック8を介して電源部3に接続されている。このトライアック8には、制御部4からの制御信号が導かれており、ON指令信号に応じてヒータ21を点灯動作させる一方、OFF指令信号により点灯動作を停止させる。
【0028】
さらに、この定着ローラ20の一端部には、サーミスタThが接触配置されている。このサーミスタThは、定着ローラ20の温度を検出するもので、出力が制御部4に接続されている。この制御部4は、サーミスタThの検出温度に基づいてヒータ21を制御し、定着ローラ20を目標温度に制御するようになっている。
【0029】
図3に示すように、電源部3は、商用電源ラインから入力された交流電圧を降圧し、降圧した交流電圧を直流電圧Vdc2にAC/DC変換して制御部4に供給する電源回路303を備えている。また、この電源部3は、図示省略しているが、商用電源ラインの入力側に設けられたノイズフィルタと、電源スイッチとを備えている。この電源スイッチの後段には、前記ヒータ21へ給電する給電ラインが分岐接続されている。
【0030】
電源回路303は、商用電源から入力されたAC100Vの交流電圧が一次側に入力され、降圧した交流電圧AC26Vと交流電圧AC12Vを二次側から出力する電源トランスT30と、交流電圧AC26VをAC/DC変換して直流電圧DC24V(=Vdc1)を出力する第一直流電圧出力部31と、交流電圧AC12VをAC/DC変換して直流電圧DC5V(=Vdc2)を出力する第二直流電圧出力部35等が基板に配置されている。
【0031】
第一直流電圧出力部31は、整流器32により交流電圧AC26Vを全波整流し、平滑用コンデンサC33で平滑化し、DCレギュレータ34でDC/DC変換して直流電圧DC24Vを出力するように構成されている。
【0032】
第二直流電圧出力部35は、整流器36により交流電圧AC12Vを全波整流し、平滑用コンデンサC37で平滑化し、DCレギュレータ38でDC/DC変換して直流電圧DC5Vを出力するように構成されている。そして、このDCレギュレータ38の出力端子に、制御部4が接続されている。
【0033】
前記DCレギュレータ34の出力端子には、カバースイッチ9を介して電流検出部10が接続されている。また、この電流検出部10の接続端には、定着モータ24、各感光体ユニットのドラム用モータ及び転写部13の転写モータといった複数の回転駆動部が接続されている。
【0034】
定着モータ24は、トランジスタ回路からなるドライバ25に接続されている。このドライバ25には、制御部4からの制御信号が導かれており、ON指令信号に応じて、定着モータ24にDCレギュレータ34の出力電圧を供給させて回転駆動させる。一方、OFF指令信号により、供給電圧を遮断して定着モータ24を停止させるようになっている。
【0035】
カバースイッチ9は、プリンタ1の本体前面に装着されたドアカバーと本体との間に取り付けられている。このカバースイッチ9は、ドアカバーが閉じられたときにON動作し、DCレギュレータ34の直流電圧DC24Vを定着モータ24等の回転駆動部や電流検出部10に供給する一方、ドアカバーが開けられたときにOFF動作して供給電圧を遮断する。
【0036】
電流検出部10は、前記ドアカバーの開閉検知と定着モータ24の突入電流検出を兼ねるもので、抵抗R1とR2との抵抗分圧回路により構成されている。この電流検出部10は、カバースイッチ9の出力端と接地側との間に並列接続され、抵抗R1とR2との分圧点が制御部4のA/Dポートに接続されている。
【0037】
これにより、DCレギュレータ34からカバースイッチ9を介して定着モータ24側に直流電圧Vdc1が供給されると、電流検出部10による分圧値が制御部4に入力する。よって、この分圧値を制御部4でチェックすることにより、ドアカバーの開閉状態の検知及び定着モータ24の寿命診断が可能になる。
【0038】
この制御部4は、CPUとCPUにより実行される動作プログラムを格納したROMとCPUの作業領域としてのRAM(メモリ)と入出力回路等を備えたマイクロコンピュータであり、その周辺回路を設けた基板により構成されている。
【0039】
この制御部4は、ネットワークを介して入力する指令信号や操作部11からの指令に応じたモードに移行して回路各部の動作を制御する。画像形成モードでは、前記定着モータ24、各感光体ドラム用モータ及び転写モータといった複数の駆動部を所定のタイミングで駆動させて、印刷紙に印刷させる。
また、この制御部4は、電流検出部10からの検出信号に基づいて定着部2の寿命診断及びドアカバーの開閉状態検知を行う構成となっている。
【0040】
即ち、電流検出部10の検出信号は、抵抗R1とR2との抵抗分圧値であり、この分圧値がA/Dポートに入力すると、ディジタル変換されたデータを制御部4がチェックする。また、この制御部4は、並列接続の抵抗値と入力分圧値とから電流値を算出して、定着モータ24の突入電流並びに負荷電流のディジタルデータをチェックし、前記寿命診断や開閉状態検知するようになっている。
【0041】
この制御部4は、電流検出部10により検出される負荷電流の変化からドアカバーの開閉状態を検知し、ドアカバーが開けられたと検知したとき、ドアカバーの開状態及び危険注意のサインを操作部11の液晶画面に表示させる。また、制御部4は、ドアカバーの開放時にカバースイッチ9がOFF動作して、DCレギュレータ34の供給電圧を遮断するに伴い、前記各種駆動部の動作停止制御を実行する。
【0042】
さらに、この制御部4は、電流検出部10により検出される突入電流の程度に基づいて定着部2の交換時期を診断し、交換時期に到達したと診断すると、その後の印刷を禁止して操作部11の液晶画面に交換時期の到来を表示させる動作制御を行う。
このような定着部2の寿命診断及びドアカバーの開閉状態検知においては、制御部4に予め閾値(S,S1)を設定して判断基準としている(図5参照)。
【0043】
本実施例のプリンタ1を含む画像形成装置は、通常、画像形成動作時に定着モータ24を最初に回転駆動させるので、この定着モータ24の突入電流が電流検出部10により検出されて制御部4に入力する。
この突入電流は、1/100秒単位の瞬間的な変化であり、この突入電流に応じた入力電圧が制御部4でチェックされる。
ここで、制御部4は、突入電流のレベルを閾値(S)と比較すると共に、入力電圧を閾値(S1)と比較し、各閾値(S,S1)に達するか否かによって異常の有無を判断する。
【0044】
電流検出部10からの入力電圧が閾値(S1)よりも高いときは、カバースイッチ9がON動作状態であって、ドアカバーが閉じられていると判断する。


一方、入力電圧が閾値(S1)よりも低いときは、カバースイッチ9がOFF動作状態にあり、ドアカバーが開けられていると判断する。
このときは、制御部4が定着モータ24を含む駆動部を停止させて、ユーザーが不意に内部へ手を入れて駆動部分に触れる危険を回避し、さらに、ドアカバーの開放状態を警告表示させる。
【0045】
また、突入電流が閾値(S)よりも多いときは、定着部2が未だ寿命に至っていない状態にあり、閾値(S)に達したときに異常な突入電流による電圧降下の発生で、寿命が到来したと判断する。
この際は、制御部4が印刷を禁止して操作部11の液晶画面に交換時期の到来を表示させ、ユーザーやサービスマンに定着部2の交換を促す。
【0046】
ところで、定着部2の寿命は、定着ローラ20の劣化度合と定着モータ24の負荷トルクの大きさに関係している。定着ローラ20は、印刷枚数が増すに伴って表面の荒れが進み、劣化が進行する。
定着ローラ20の表面が劣化すると、この定着ローラ20と加圧ローラ22との摩擦抵抗が大きくなることから、ギヤ等の駆動系部品に負担がかかり、定着モータ24の回転時における負荷トルクが大となる。
【0047】
図4(a)に示すように、定着モータ24の負荷トルクが大になると、ある時点で定着部2の寿命が到来する。
この寿命診断は、普及型のプリンタ1の場合、印刷紙の耐刷枚数(累積枚数)が8万枚から10万枚に達したときを目安とするのが一般的である。
本実施例においては、制御部4が定着モータ24の負荷トルクが異常に大きいとき、突入電流が瞬時に増加する変化を判断し、定着部2の劣化による寿命診断を行うようになっている。
【0048】
図4(b)に示すように、降下電圧、つまり電流検出部10の出力電圧のレベル低下に伴って定着部2の劣化度合が進んでいることを示す関係から、この降下電圧を検知することにより、劣化度合を知ることができる。
また、この劣化度合は、前述のように負荷電流の異常な増加を判断することにより、定着モータ24の負荷トルクが大きく変化して、寿命が到来している状態を診断できる。
【0049】
しかしながら、定着モータ24は、画像形成動作に応じて負荷電流も増減するので、回転駆動時における負荷電流の増加が定着ローラ20の劣化に起因するか否かは判別し難い。
そこで、図4(c)に示すように、定着モータ24の起動時における突入電流の変化を検知することにより、定着部2の劣化度合を適切に判断することが可能である。
【0050】
図5に示すように、定着モータ24の突入電流は、定着部2の使用開始当初、実線(A)のような特性を示すが、定着ローラ20の劣化が進むと鎖線(A1)のように大きく変化する。
この突入電流が大きくなると、DCレギュレータ34の出力電圧が降下するので、電流検出部10を介して制御部4に入力する分圧値も変化する。この制御部4は、定着モータ24の起動時における瞬間的な入力分圧値を判断することにより、定着ローラ20の劣化度合ならびに定着部2の寿命を診断する。
【0051】
この定着部2の具体的な寿命診断に際しては、前述のように、その診断基準となる閾値(S)を設定してあり、このレベルに鎖線(A1)で示す突入電流が達したか否かを判別することにより、定着部2の寿命診断を行う。
即ち、突入電流(A1)に応じて降下電圧も鎖線(V1)のように変化するので、突入電流検出側の閾値(S)に対応する閾値(S)に達したか否かを判別することによっても、定着部2の寿命診断が行うことができる。
【0052】
但し、DCレギュレータ34からの出力電圧の低下には、他の原因も考えられるので、この閾値(S)はテスト結果に基づく経験則によって設定している。
電流検出部10の前段には、前記カバースイッチが設けられており、ドアカバーの開閉に応じてカバースイッチ9がON/OFFすると、DCレギュレータ34からの直流電圧Vdc1が大きく変動する。
これに伴い、電流検出部10への入力電圧も変動するので、制御部4に入力する分圧値も変化する。
【0053】
例えば、ドアカバーが閉じられているときは、カバースイッチ9がONとなっており、直流電圧Vdc1が電流検出部10にそのまま印加されるが、ドアカバーが開けられると、カバースイッチ9がOFFとなるので、降下電圧が鎖線(V1)のように大きく変化し、電流検出部10からの分圧値が0Vまで低下する。
すると、制御部4への入力値が閾値(S)よりも低くなって、定着ローラ20が劣化していない状態であっても、寿命が到来したと診断されることになる。
【0054】
そこで、この診断ミスを回避するために、前記の如くドアカバーが開けられたか否かを判別するための閾値(S1)を設定し、定着ローラ20の劣化診断時の閾値(S)と区別可能にしている。
本実施形態では、ドアカバーが閉じられているときの入力値が3.0Vであるのに対し、2.5V以下をドアカバーの開けられた判断レベル(S1)とし、この2.5Vと3.0Vとの中間を劣化診断時の閾値(S)としている。これにより、種々の原因に基づく電圧変動による寿命診断ミスを回避することができる。
【0055】
以下、本実施例のカラープリンタに係る定着器の寿命診断動作について、図6及び図7に示すフローチャートを用いて説明する。
ユーザーによりカラープリンタ1の電源がONにされると(SA1)、制御部4が起動される。この制御部4は、まず初期化の設定処理を行う(SA2)。
【0056】
つぎに、制御部4は、ドライバ25を介して定着モータ24を起動させる(SA3)。
そして、電流検出部10の出力信号を検出し(SA4)、定着モータ24の起動時における突入電流が異常値か否かを判別する(SA5)。
ここで、突入電流が図5に示す閾値(S)よりも多いときは、異常電流が検出されたとして図7に示すステップSA16に進み、定着部2が寿命に達していると判断する。そして、プリント動作を停止して操作部11の液晶画面にエラーを表示させ(SA17)、定着部2の寿命診断及びプリント動作を終了する。
【0057】
一方、突入電流が異常なレベルでなければ、ヒータ21をONにして目標温度になるよう加熱動作を制御する(SA6)。この時点では、定着モータ24がプリント待機モードにある。
続いて、印刷時の画像濃度を調整するために、現像バイアス電圧を調整する、所謂キャリブレーション処理を行う(SA7)。
この後、プリントが可能か否かを判別し(SA8)、未だプリントが可能でなければ、ステップSA6に戻り、ヒータ21の加熱制御を続行する。
【0058】
一方、プリントが可能であれば、ネットワークを介してプリントリクエストが入力されたか否かを判別する(SA9)。ここで、プリントリクエストがあれば、制御部4が定着モータ24を起動させて(SA10)、プリント動作に入る。
【0059】
これに伴い、制御部4は、定着モータ24の起動時における電流を検出する(SA11)。このときも、制御部4に入力する検出信号を予め設定された閾値(S)と比較し、検出電流が閾値(S)よりも多いか否かを判別する(SA12)。
【0060】
この際、突入電流が閾値(S)よりも多いときは、異常電流が検出されたとしてステップSA16に進み、定着部2が寿命に達していると判断する。そして、プリント動作を停止して操作部11の液晶画面にエラーを表示させ(SA17)、定着部2の寿命診断及びプリント動作を終了する。
【0061】
一方、検出電流が閾値(S)よりも少なければ、定着モータ24が劣化しておらず、定着部2が寿命に達していないと判断し(SA13)、プリント動作を制御する(SA14)。これにより、画像形成動作に伴って、印刷紙に印刷がなされる。
この後、プリントが終了したか否かを判別し(SA15)、プリントが終わった時点で、一連の動作を終了する。
【0062】
以上のように、本実施例の制御部4は、定着モータ24の起動時に電流検出部10で検出される突入電流の程度に基づいて定着部2の交換時期を診断する。
よって、定着部2の交換時期の診断がくだされない間は、使用を継続することができるので、予め設定された制限枚数以上に印刷することも可能となり、定着部2の利用効率が高められる。
また、交換時期到来の診断をくだした場合は、その後の印刷を禁止するので、定着部2の構成部品であるギヤ等の駆動系を保護することができる。
【0063】
なお、前記制御部4の寿命診断動作に加えて、メモリに予め印刷制限枚数を記憶しておいた後、プリントカウンタの印刷枚数をチェックすることにより、定着部2を通過した印刷紙の累積枚数を計数し、累積枚数が所定の制限枚数に達すると、定着部2の交換時期が近づいた旨のメッセージを液晶画面に出力する構成としてもよい。
これにより、このメッセージを視認するユーザーやサービスマンに対し交換部品等を準備させることができる。
【0064】
また、前記メモリに定着部2の寿命が診断された交換時期までに印刷された累積枚数を記憶しておき、制御部4がこの累積枚数に基づいて定着部2の交換後の制限枚数を補正する構成としてもよい。
【0065】
例えば、10万枚がカラープリンタ1の定着部2の標準交換枚数である場合、ある設置場所の実際の交換時期が9万枚と診断されたときは、制御部4がその約1000枚前を印刷制限枚数と補正して液晶画面にメッセージを出力する。
このように、定着部2の実際の交換時期に基づいて印刷制限枚数を補正し、定着部2の使用状況に応じた適切なタイミングでメッセージを出力すると、ユーザーやサービスマンが事前に交換時期を認識して対処することができる。
【0066】
なお、上述の実施形態では、本発明を画像形成装置の一例であるカラープリンタ1に適用した場合について説明したが、画像形成装置としてはプリンタ機能、ファクシミリ機能、複写機能といった複数の機能を備えた所謂複合機や、単一の機能を備えたファクシミリや複写機等であって、定着ローラまたは定着フィルムにより構成される定着部を備えた本発明の画像形成装置に広く適用することができる。
【0067】
また、上述した実施形態は何れも本発明の一実施例に過ぎず、当該記載により本発明の範囲が限定されるものではなく、各部の具体的構成は本発明による作用効果を奏する範囲において適宜変更設計することができることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】カラープリンタの機能ブロック図
【図2】定着部の説明図
【図3】電源部及び電流検出部の電気回路の説明図
【図4】(a)は負荷トルクと定着部の劣化との関係を示すグラフ、(b)は降下電圧と定着部の劣化度合の関係を示すグラフ、(c)はモータ突入電流と定着部の劣化度合の関係を示すグラフ
【図5】モータ突入電流及び降下電圧の変化を示すグラフ
【図6】定着部の寿命診断動作を説明するフローチャート
【図7】図6に連続するフローチャート
【符号の説明】
【0069】
2:定着部
5:寿命診断部(制御部)
10:電流検出部
24:モータ(定着モータ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像が担持された記録材を加熱定着する回転体及び前記回転体と圧接してニップ部を形成する加圧回転体を備えた定着部と、前記回転体及び加圧回転体を駆動するモータの起動時の突入電流を検出する電流検出部と、前記電流検出部により検出される突入電流の程度に基づいて前記定着部の交換時期を診断し、交換時期に到達したと診断すると、その後の印刷を禁止する寿命診断部を備えている画像形成装置。
【請求項2】
前記寿命診断部は、前記定着部を通過した記録材の累積枚数を計数し、累積枚数が所定の制限枚数に達すると、前記定着部の交換時期が近づいた旨のメッセージを出力する請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記寿命診断部は、前記寿命診断部により診断された交換時期までに印刷された累積枚数に基づいて、前記定着部の交換後の前記制限枚数を補正する請求項2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記電流検出部は、前記モータへ電力を供給するDC電源ラインに並列接続された抵抗分圧回路により構成され、前記抵抗分圧回路により前記突入電流が電流/電圧変換された分圧が寿命診断部に入力される請求項1から3の何れかに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−97033(P2010−97033A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−268360(P2008−268360)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】