説明

画像形成装置

【課題】像担持体から転写残トナーを回収し保持するトナー回収保持手段を有する画像形成装置にて、像担持体のクリーニング不良に起因する画像不良の発生や、記録材へのトナー汚れの付着を抑制することができる像形成装置を提供する。
【解決手段】トナー回収保持手段から像担持体へのトナー吐き出し工程において、トナー回収保持手段の像担持体の移動方向において上流側に位置する2次転写ローラによって付与された中間転写ベルト表面上の電位の極性とは逆極性となるようにトナー回収保持手段に対して、印加するバイアスの極性の切り替え動作を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザプリンタ、複写機、ファクシミリ等の電子写真記録方式を利用する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、プリンタ、複写機、ファクシミリなどの画像形成装置におけるカラー化が進み、カラー画像を形成する装置として、中間転写方式の画像形成装置が知られている。中間転写方式の画像形成装置では、中間転写体から記録材にトナー像を転写した後に、中間転写体上にトナーが残留する。この中間転写体上に残留したトナー(2次転写残トナー)は、中間転写体クリーニング手段により中間転写体上から除去され回収される。
【0003】
特許文献1には、その他の中間転写体クリーニング手段として、中間転写体上の2次転写残トナーをトナーの正規の帯電極性とは逆極性に帯電させるトナー帯電手段を設けることが提案されている。この場合、2次転写残トナーは、トナーの正規の帯電極性とは逆極性に帯電されることで、その直後の画像形成部の1次転写ニップ部において中間転写体から感光体に転写されることで回収される。
【0004】
又、特許文献2には、その他の中間転写体クリーニング手段として、次のようなものが提案されている。即ち、2次転写残トナーを一時的に回収する回収部材を設け、回収部材上に回収された2次転写残トナーを、再度、中間転写体に吐き出す。そして、この吐き出したトナーを、その直後の画像形成部の感光体クリーニング手段により除去、回収する。
【0005】
又、特許文献3では、中間転写体上の2次転写残トナーに所定の電荷を付与するトナー帯電手段を有するインライン方式の画像形成装置において、次のような提案がなされている。即ち、インライン方式の画像形成装置では、特定の画像形成部の回収トナー容器に2次転写残トナーが多く回収されることから、その画像形成部のカートリッジのみ交換頻度が上昇し、不経済となることがある。このため、2次転写残トナーが多く回収される画像形成部のカートリッジのみ回収トナー容器の容量を大きくする。
【0006】
また、中間転写体上の2次転写残トナーを回収し保持する、特許文献2に示す構成と、中間転写体上の2次転写残トナーをトナーの正規の帯電極性とは逆極性に帯電させる、特許文献1に示す構成と、を組み合わせることができる。このようなインライン方式の画像形成装置においても、特定の画像形成部の回収トナー容器に2次転写残トナーが多く入ることを抑制できる。
【0007】
図6に、中間転写体として中間転写ベルト120と、中間転写体クリーニング手段としてのベルトクリーニング装置130とを有した画像形成装置の要部概略断面を示す。ベルトクリーニング装置130は、2次転写残トナーを回収し保持する構成と、2次転写残トナーを帯電させる構成とを併せて備えている。図示の画像形成装置は、中間転写ベルト120の表面の移動方向に沿って第1、第2、第3、第4の画像形成部101a、101b、101c、101dを有している。
【0008】
ベルトクリーニング装置130は、2次転写残トナーを回収し保持するトナー回収保持手段としての導電性ブラシ131と、2次転写残トナーを帯電させるトナー帯電手段としてのトナー帯電ローラ132と、を有する。
【0009】
導電性ブラシ131は、2次転写残トナーの一部を回収し保持する。導電性ブラシ131によって回収し保持したトナーは、画像形成動作後に行われる準備動作である後回転動作中などの所定のタイミングで中間転写ベルト120に吐き出す。そして、中間転写ベルト120上に吐き出したトナーは、例えば、第2の画像形成部101bや第3の画像形成部101cの回収トナー容器に選択的に回収する。このように選択的に回収する方法としては、例えば、第1の画像形成部101aなどの、中間転写ベルト120上に吐き出したトナーを回収させたくない画像形成部の1次転写ニップ部Nの1次転写ローラ105を感光体102から離間させる方法がある。別法として、中間転写ベルト120上に吐き出したトナーを回収させたくない画像形成部において、その吐き出したトナーが中間転写ベルト120から感光体102に転写されないような極性の電圧を1次転写ローラ105に印加する方法がある。中間転写ベルト120上に吐き出したトナーが感光体102に転写されないような極性の電圧は、中間転写ベルト120上に吐き出したトナーとは逆極性(例えば、トナーの正規の帯電極性とは逆極性)の電圧である。
【0010】
導電性ブラシ131にて2次転写残トナーの一部を回収し保持することで、トナー帯電ローラ132を画像形成動作中に通過するトナーの量を減少させることができることから、トナー帯電ローラ132へのトナーの付着量を大幅に減少させることができる。その結果、トナー帯電ローラ132によるトナーの帯電が安定して行えることから、より良好なクリーニング性能を確保することができる。
【0011】
又、トナー帯電ローラ132は、導電性ブラシ131にて回収されなかった2次転写残トナーを、例えば、トナーの正規の帯電極性とは逆極性に帯電させる。即ち、トナー帯電ローラ132を通過した後の2次転写残トナーは、トナーの正規の帯電極性とは逆極性に帯電されている。従って、そのトナーは、その直後の第1の画像形成部101aの1次転写ニップ部Nにおいて、中間転写ベルト120から感光体102に転写され、第1の画像形成部101aの回収トナー容器に回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第3267507号公報
【特許文献2】特開平09−197750号公報
【特許文献3】特開2004−21134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述のような、2次転写残トナーを回収し保持する構成を設けた従来の画像形成装置では、次のような問題があることが分かった。
【0014】
導電性ブラシ131から中間転写ベルト120上に吐き出されたトナーが飛散する場合がある。トナーが大量に飛散すると、ベルトクリーニング装置130や画像形成装置の内部がトナーで汚れる。その結果、ベルトクリーニング装置の汚れの一部が再び導電性ブラシ131に付着し、導電性ブラシ131の回収性能、保持性能を損ねることによるクリーニング不良が生じる場合がある。また、トナー帯電部材として、例えばトナー帯電ローラを併せ持つ上述のような構成においては、ベルトクリーニング装置130の汚れの一部がトナー帯電ローラ132に付着する。それによって、トナー帯電ローラ132の帯電性能を損ねることによるクリーニング不良が発生する場合がある。さらに、導電性ブラシ131から保持しきれないトナーが記録材に落下することや記録材搬送路の汚れに伴う記録材へのトナー汚れなどが生じる場合がある。
【0015】
本発明の目的は、像担持体から転写残トナーを回収し保持するトナー回収保持手段を有する画像形成装置おいて、像担持体のクリーニング不良に起因する画像不良の発生や、記録材へのトナー汚れの付着を抑制することのできる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的は本発明に係る画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明は、
トナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体の表面に接触する第1の接触部材と、
前記第1の接触部材にバイアスを印加する第1のバイアス印加手段と、
前記像担持体の移動方向に対して前記第1の接触部材の下流側に位置し、前記像担持体の表面に接触する第2の接触部材と、
前記第2の接触部材にバイアスを印加する第2のバイアス印加手段と、
を有し、前記第2の接触部材に対して前記第2のバイアス印加手段が印加するバイアスの極性を切り替えることによって前記第2の接触部材に付着したトナーを前記像担持体に転写する吐き出し工程を有する画像形成装置において、
前記第1のバイアス印加手段が印加するバイアスの極性の切り替え動作により前記第1の接触部材によって形成された電位を有する前記像担持体の表面に対して、前記第2のバイアス印加手段が、前記像担持体の表面上の電位の極性とは逆極性となるバイアスを前記第2の接触部材に印加することで、前記第2の接触部材からのトナー吐き出し工程を行うことを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、像担持体から転写残トナーを回収し保持するトナー回収保持手段を有する構成における像担持体のクリーニング不良に起因する画像不良の発生や、記録材へのトナー汚れの付着を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一実施例の概略断面図である。
【図2】図1の画像形成装置にて用いられるベルトクリーニング装置の近傍の模式図である。
【図3】実施例1の吐き出し工程における導電性ブラシに印加する電圧の切り替え動作の一例を説明する図である。
【図4】中間転写ベルトの電気抵抗値の違いによる中間転写ベルト表面の電位の減衰を説明する図である。
【図5】実施例2の吐き出し工程における導電性ブラシに印加する電圧の切り替え動作の一例を説明する図である。
【図6】従来の画像形成装置におけるベルトクリーニング機構の一例を説明するための画像形成装置の要部概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して説明する。本実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、及びそれらの相対配置などは、本発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、本発明の範囲を以下の実施例に限定するものではない。
【0020】
実施例1
(1)画像形成装置
図1を参照して、本発明に係る画像形成装置の一実施例の全体構成について説明する。図1は、本実施例の画像形成装置10の概略断面を示す。本実施例の画像形成装置10は、電子写真方式を利用したインライン方式、中間転写方式のフルカラープリンタである。
【0021】
本実施例にて、画像形成装置10は、複数の画像形成手段として、第1、第2、第3、第4の画像形成部(画像形成ユニット)1a、1b、1c、1dを有する。第1、第2、第3、第4の画像形成部1a、1b、1c、1dはそれぞれ、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の画像を形成するためのものである。これらの4個の画像形成部1a、1b、1c、1dは、一定の間隔をおいて1列に配置されている。
【0022】
尚、本実施例では、第1〜第4の画像形成部1a〜1dの構成は、使用するトナーの色が異なることを除いて実質的に同じである。従って、以下、特に区別を要しない場合は、いずれかの色用に設けられた要素であることを示すために図中符号に与えた添え字a、b、c、dは省略して、総括的に説明する。
【0023】
画像形成部1には、電子写真プロセス手段によりトナー像が形成される第1の像担持体としてのドラム型の電子写真感光体(以下、「感光体ドラム」という。)2が設置されている。感光体ドラム2の周囲には、電子写真プロセス手段を構成する、帯電手段としての帯電ローラ3、現像手段としての現像装置4、1次転写手段としての1次転写ローラ5、感光体クリーニング手段(像担持体クリーニング手段)としてのドラムクリーニング装置6が設置されている。又、帯電ローラ3と現像装置4との間の図中上方には、露光手段(画像書き込み手段)としての露光装置(レーザスキャナ装置)7が設置されている。
【0024】
又、各画像形成部1a〜1dの感光体ドラム2a〜2dの全てに対向するように、第2の像担持体としての無端ベルト状の中間転写体である中間転写ベルト20が配置されている。中間転写ベルト20は、複数の支持部材としての駆動ローラ21、支持ローラ22、2次転写対向ローラ23に掛け回されて、矢印方向に回動している。中間転写ベルト20の内周面側において、各画像形成部1a〜1dの各感光体ドラム2a〜2dに対応して1次転写ローラ5a〜5dが配置されている。又、中間転写ベルト20の外周面側において、2次転写対向ローラ23に対向する位置には、2次転写手段としての2次転写ローラ24が配置されている。
【0025】
感光体ドラム2は、本実施例では、負帯電性のOPC(有機光導電体)感光体であり、アルミニウムのドラム基体上に感光層を有している。感光体ドラム2は、駆動装置(図示せず)によって図示矢印R1方向(時計方向)に所定の周速度(表面移動速度)で回転駆動される。本実施例では、この感光体ドラム2の周速度が、画像形成装置10のプロセススピード(PS)に相当する。
【0026】
帯電ローラ3は、感光体ドラム2に所定の圧接力で接触しており、帯電電圧印加手段としての帯電バイアス電源(図示せず)から所定の帯電バイアスが印加され、感光体ドラム2の表面を所定の電位に均一に帯電させる。本実施例では、感光体ドラム2は、帯電ローラ3により負極性に帯電させられる。
【0027】
露光装置7は、感光体ドラム2の表面を露光することにより、帯電ローラ3で帯電された感光体ドラム2の表面に画像情報に応じた静電潜像(静電像)を形成する。即ち、露光装置7において、ホストコンピュータ(図示せず)から入力される画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調されたレーザ光がレーザ出力部から出力され、このレーザ光が反射ミラーを介して感光体ドラム2の表面に照射される。
【0028】
現像装置4は、本実施例では、現像方式として接触現像方式を用いる。現像装置4は、現像剤担持体としての現像ローラ8(8a、8b、8c、8d)を有する。現像ローラ上に薄層状に担持されたトナーは、駆動手段(図示せず)により現像ローラ8が回転駆動されることで、感光体ドラム2との対向部(現像部)に搬送される。そして、現像ローラ8に現像電圧印加手段としての現像バイアス電源から現像バイアスが印加されることにより、感光体ドラム2上に形成された静電潜像は、現像部において、トナー像として現像される。本実施例では、静電潜像は、反転現像方式で現像される。即ち、感光体ドラム2の帯電極性と同極性に帯電したトナーを、一様に帯電させられた後の感光体ドラム2上の、露光により電荷が減衰した部分(露光部)に付着させることによって、感光体ドラム2上の静電潜像をトナー像として現像する。本実施例では、トナーの正規の帯電極性は負極性であり、トナー像を形成するトナーは主として負極性の電荷を持っている。
【0029】
各現像装置4a、4b、4c、4dには、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナーが収納されている。フルカラー画像形成モードでは、4個の現像装置4の全ての現像ローラ8が感光体ドラム2に当接する。そして、モノカラー(単色)画像形成モードでは、画像を形成する画像形成部以外の現像装置4の現像ローラ8は感光体ドラム2から離間するように構成されている。これは、現像ローラ8とトナーの劣化、消耗を防止するためである。
【0030】
本実施例では、トナー像を担持する第2の像担持体としての中間転写ベルト20として、PEN(ポリエチレンナフタレート)樹脂を用いた。中間転写ベルト20の表面抵抗率は5.0×1011Ω/□であり、体積抵抗率は8.0×1011Ωcmである。
【0031】
その他、中間転写ベルト20としては、PVdF(弗化ビニリデン樹脂)、ETFE(四弗化エチレン−エチレン共重合樹脂)、ポリイミド、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリカーボネートなどの樹脂を無端ベルト状に構成したものを用いることができる。或いは、中間転写ベルト20としては、例えばEPDMなどのゴム基層の上に、例えばウレタンゴムにPTFEなど弗素樹脂を分散したものを被覆して無端ベルト状に構成したものを用いることができる。
【0032】
中間転写ベルト20は、駆動ローラ21が図示矢印R2方向(反時計方向)に回転駆動されることによって、図示矢印R3方向(反時計方向)に、感光体ドラム2の周速度と略等速、即ち、所定プロセススピード(PS)にて周回移動(回転)する。
【0033】
1次転写ローラ5は、例えばスポンジゴムなどの弾性部材で構成される。又、1次転写ローラ5は、中間転写ベルト20を介して感光体ドラム2に当接し、中間転写ベルト20と感光体ドラム2との接触部に1次転写ニップ部(1次転写部)Nを形成する。そして、1次転写ローラ5は、中間転写ベルト20の移動に従動して回転する。
【0034】
1次転写ローラ5には、1次転写電圧印加手段としての1次転写バイアス電源40が接続されており、この1次転写バイアス電源40から1次転写ローラ5に1次転写バイアスが印加される。感光体ドラム2上に形成されたトナー像は、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の1次転写バイアスが印加された1次転写ローラ5により、回転している中間転写ベルト20上に転写(1次転写)される。
【0035】
中間転写ベルト20に対する第1の接触部材としての2次転写ローラ24は、例えば、スポンジゴムなどの弾性部材で構成される。本実施例では2次転写ローラ24として、直径6mmのニッケルメッキ鋼棒上に、NBRヒドリンゴムを肉厚6mmで被覆したものを用いた。2次転写ローラ24の電気抵抗値は、2次転写ローラ24をアルミシリンダ上に、9.8Nの力で押圧し、50mm/secで回転させた状態で1000Vを印加した場合において3.0×107Ωである。2次転写ローラ24は、中間転写ベルト20を介して2次転写対向ローラ23と当接して、2次転写ローラ24と中間転写ベルト20との接触部に2次転写ニップ部(2次転写部)Mを形成する。そして、2次転写ローラ24は、中間転写ベルト20、若しくは、中間転写ベルト20及び記録材Pの移動に従動して回転する。2次転写ローラ24には、2次転写バイアス印加手段(第1のバイアス印加手段)としての2次転写バイアス電源44が接続されており、この2次転写バイアス電源から2次転写ローラ24に2次転写バイアスが印加される。2次転写バイアス電源は正負の極性のバイアスを選択し印加することができる。
【0036】
中間転写ベルト20上に形成されたトナー像は、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の2次転写バイアスが印加された2次転写ローラ24により、2次転写ニップ部Mに搬送されてきた記録材P上に転写(2次転写)される。
【0037】
中間転写ベルト20の外側で、2次転写対向ローラ23の近傍には、中間転写体クリーニング手段(像担持体クリーニング手段)としてのベルトクリーニング装置30が設置されている。ベルトクリーニング装置30の構成、動作の詳細については後述する。
【0038】
2次転写ニップ部Mよりも記録材Pの搬送方向において上流側には、記録材供給手段を構成するレジストローラ13が設置されている。
【0039】
又、2次転写ニップ部Mよりも記録材Pの搬送方向において下流側には、定着手段としての定着装置12が設置されている。定着装置12は、熱源を備えた定着ローラ12Aと、定着ローラ12Aに圧接する加圧ローラ12Bと、を有する。
【0040】
次に、本実施例の画像形成装置10による画像形成動作について、フルカラー画像形成モードを例として説明する。
【0041】
先ず、各画像形成部1a〜1dの感光体ドラム2a〜2d上に、各色のトナー像が電子写真プロセスによってそれぞれ形成される。
【0042】
即ち、画像形成動作開始信号が発せられると、所定のプロセススピード(PS)で回転駆動される各感光体ドラム2a〜2dは、それぞれ帯電ローラ3a〜3dによって一様に帯電される。
【0043】
そして、各露光装置7a〜7dは、入力される色分解されたカラー画像信号を、レーザ出力部にて光信号にそれぞれ変換する。そして、各露光装置7a〜7dは、変換された光信号であるレーザ光により、一様に帯電した各感光体ドラム2a〜2d上をそれぞれ走査露光して、各感光体ドラム2a〜2d上に静電潜像を形成する。
【0044】
そして、第1の画像形成部1aでは、感光ドラム2a上に形成された静電潜像は、イエロー色のトナーが感光体ドラム2aの表面の電位に応じて静電吸着させられることで、トナー像として現像される。このとき、現像装置4aの現像ローラ8aには、感光体ドラム2aの帯電極性(本実施例では負極性)と同極性の現像バイアスが印加される。
【0045】
感光体ドラム2a上のイエロー色のトナー像は、1次転写ニップ部Naにおいてトナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)の1次転写バイアスが印加された1次転写ローラ5aにより、回転している中間転写ベルト20上に1次転写される。イエローのトナー像が転写された中間転写ベルト20は、第2の画像形成部1b側に移動する。
【0046】
第2の画像形成部1bにおいても、第1の画像形成部1aと同様にして、感光体ドラム2b上にマゼンタ色のトナー像が形成される。そして、このマゼンタ色のトナー像が、1次転写ニップ部Nbにおいて中間転写ベルト20上のイエロー色のトナー像の上に重ね合わせて1次転写される。
【0047】
第3、第4の画像形成部1c、1dにおいても同様にして、中間転写ベルト20上に重畳して1次転写されたイエロー、マゼンタの各色のトナー像の上に、1次転写ニップ部Nc、Ndにおいてシアン、ブラックの各色のトナー像が順次重ね合わせて1次転写される。
【0048】
こうして、中間転写ベルト20上に、各色のトナー像が各1次転写ニップ部Na〜Ndにおいて順次重ね合わせて1次転写された、複数色のトナー像から成る多重トナー像が形成される。
【0049】
中間転写ベルト20上のトナー像の先端が2次転写ニップ部Mに移動するタイミングに合わせて、レジストローラ13により記録材Pが2次転写ニップ部Mに搬送される。そして、2次転写ニップ部Mにおいて、トナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)の2次転写バイアスが印加された2次転写ローラ24により、中間転写ベルト20上の多重トナー像が記録材Pに一括して2次転写される。
【0050】
その後、トナー像が転写された記録材Pは、定着装置12に搬送される。トナー像を担持した記録材Pは、定着装置12内に設置された定着ローラ12Aと加圧ローラ12Bとの間の定着ニップ部で加熱及び加圧される。これにより、記録材Pの表面にトナー像が熱定着(溶融定着)され、記録材P上にフルカラー画像(或いは多色画像)が形成される。その後、記録材Pが画像形成装置10の外部に排出されて、一連の画像形成動作が終了する。
【0051】
1次転写工程後に感光体ドラム2上に残留しているトナー(1次転写残トナー)は、ドラムクリーニング装置6によって感光体ドラム2上から除去されて回収される。ドラムクリーニング装置6は、クリーニング部材としての弾性体で形成された板状部材であるクリーニングブレード61と、クリーニングブレード61によって感光体ドラム2上から掻き取られたトナーを収納する回収トナー容器62と、を有する。
【0052】
又、2次転写工程後に中間転写ベルト20上に残ったトナー(2次転写残トナー)は、以下詳しく説明するようにして、ベルトクリーニング装置30によって中間転写ベルト20上から除去され回収される。
【0053】
(2)ベルトクリーニング機構
本実施例において、ベルトクリーニング装置30は、2次転写残トナーを回収し保持するトナー回収保持手段としての導電性ブラシ31と、2次転写残トナーを帯電させるトナー帯電手段としてのトナー帯電ローラ32と、を有する。
【0054】
中間転写ベルト20に対する第2の接触部材であるブラシ状部材の導電性ブラシ31は、2次転写ニップ部Mよりも中間転写ベルト20の表面の移動方向(回転方向)において下流側、1次転写ニップ部Naよりも上流側に位置する。さらに、導電性ブラシ31は、2次転写残トナーの一部を回収し保持する。
【0055】
本実施例では、導電性ブラシ31は、材料はナイロンであり、繊度は7デシテックス、パイル長さは5mm、ブラシ幅は5mm、電気抵抗値は1.0×106Ωに設定されている。導電性ブラシ31には、クリーニングバイアス印加手段(第2のバイアス印加手段)としての回収保持用電源41が接続されている。そして、導電性ブラシ31には、回収保持用電源41から所定の直流電圧が印加される。印加される電圧は、導電性ブラシ31の材料や画像形成装置10が使用される環境(温度、湿度)などによって異なる。
【0056】
2次転写工程前の中間転写ベルト20上のトナーは、感光体ドラム2の表面の帯電電荷と同極性の負極性で、且つ、電荷の分布のばらつきが小さい状態で帯電している。一方、2次転写工程後の中間転写ベルト20上の2次転写残トナーは、電荷の分布がブロードになった上に、トナーの正規の帯電極性とは逆極性である正極性側にピークが移動した分布を形成する。この結果、2次転写残トナーは、負極性に帯電したもの、殆ど帯電されていないもの、及び正極性に帯電したもの、が混在した状態となっている。
【0057】
ここで、画像形成動作中の中間転写ベルト20のクリーニング動作時に、導電性ブラシ31に正極性の電圧を印加することで、上述のような帯電状態の2次転写残トナーのうち、負極性に帯電したトナーを導電性ブラシ31に回収できる。これにより、画像形成動作中にトナー帯電ローラ32を通過するトナーの量を減少させることができる。又、導電性ブラシ31に正極性の電圧を印加することで、負極性のトナーを回収することに加え、導電性ブラシ31と2次転写残トナーとの間で放電を起こしてトナーを正極性側に帯電させる作用がある。そのため、導電性ブラシ31に回収されなかった2次転写残トナーの中には、負極性のトナーはほとんど存在しない。
【0058】
トナー帯電ローラ32を通過するトナーの量を抑え、又負極性のトナーを取り除くことにより、後述のようにトナーを帯電させるために正極性の電圧が印加されるトナー帯電ローラ32の表面へのトナーの付着を大幅に減少させることができる。その結果、トナー帯電ローラ32によるトナーの帯電が安定して行えるため、より良好なクリーニング性能を確保することができる。
【0059】
尚、トナー回収保持手段としては、本実施例のような固定配置されるブラシ状部材のほか、固定配置される発泡スポンジ状部材(例えばウレタンゴムやNBRヒドリンゴムにて形成されたもの)や、回転可能なファーブラシローラを用いてもよい。更には、回転可能な発泡スポンジローラなどを用いてもよい。
【0060】
ローラ状部材であるトナー帯電ローラ32は、導電性ブラシ31よりも中間転写ベルト20の表面の移動方向(回転方向)において下流側に位置している。そして、導電性ブラシ31にて回収されなかった2次転写残トナーを正極性の所望の電荷量に帯電させる役割を持っている。
【0061】
本実施例では、トナー帯電ローラ32としては、直径6mmのニッケルメッキ鋼棒上に、EPDMゴムにカーボンが分散されたソリッド弾性体を肉厚5mmで被覆したものを用いた。トナー帯電ローラ32の電気抵抗値は、トナー帯電ローラ32をアルミシリンダ上に、9.8Nの力で押圧し、50mm/secで回転させた状態で500Vを印加した場合において5.0×107Ωである。トナー帯電ローラ32には、トナー帯電用電源42が接続されている。そして、トナー帯電ローラ32には、トナー帯電用電源42から所定の直流電圧が印加される。印加される電圧は、トナー帯電ローラ32の材料や画像形成装置10が使用される環境(温度、湿度)などによって異なる。
【0062】
画像形成中の中間転写ベルト20のクリーニング動作時に、トナー帯電ローラ32に正極性の電圧を印加することで、中間転写ベルト20上のトナーを一様に正極性に帯電させることができる。トナー帯電ローラ32によって正極性に帯電させられたトナーは、第1の画像形成部1aの1次転写ニップ部Naへと進む。そして、ここで第1の画像形成部1aの1次転写ローラ5aに印加される正極性の1次転写バイアスの作用により、中間転写ベルト20から第1の画像形成部1aの感光体ドラム2aに転写される。この感光体ドラム2aに転写されたトナーは、その後、第1の画像形成部1aのドラムクリーニング装置6aにより回収される。
【0063】
本実施例では、導電性ブラシ31とトナー帯電ローラ32は共に、中間転写ベルト20を介して2次転写対向ローラ23に対向して設置されている。本実施例では、導電性ブラシ31とトナー帯電ローラ32はそれぞれ、中間転写ベルト20に接触しており、2次転写対向ローラ23に向けて所定の圧力で押圧されている。導電性ブラシ31とトナー帯電ローラ32に対して新たに対向ローラ(対向部材)を設けることなく2次転写対向ローラ23を利用することにより、コストアップや装置の大型化を避けることができる。又、仮に導電性ブラシ31とトナー帯電ローラ32のそれぞれに対して対向ローラを別途設けた場合には、各対向ローラと中間転写ベルト20との分離部分でトナーが飛散し易くなる。これに対し、本実施例のように導電性ブラシ31とトナー帯電ローラ32に対する対向ローラを共通化することにより、トナーの飛散を低減することができるというメリットがある。
【0064】
(3)吐き出し工程
次に、導電性ブラシ31に回収され保持された2次転写残トナーを中間転写ベルト20に転写する工程、即ち、吐き出し工程について説明する。
【0065】
導電性ブラシ31にて回収したトナーが蓄積していき、所定の量に達すると、それ以上のトナーの回収、保持ができなくなり、クリーニング性能が低下する。そこで、所定のタイミングで、導電性ブラシ31に保持しているトナーを、再度、中間転写ベルト20に転写して感光体クリーニング手段に回収する工程、即ち、吐き出し工程を行う。これにより、導電性ブラシ31に蓄積したトナーの量を減少させて、クリーニング性能の低下を抑制する。
【0066】
本実施例における吐き出し工程では、回収保持用電源(第2のバイアス印加手段)41から導電性ブラシ31に、負極性の直流電圧V1nと、正極性の直流電圧V1pと、を交互に印加することにより導電性ブラシ31に回収、保持しているトナーを中間転写ベルト20上に戻す。導電性ブラシ31に負極性の直流電圧V1nを印加すると、導電性ブラシ31に保持されていた負極性のトナーが中間転写ベルト20に吐き出される。
【0067】
ところで、導電性ブラシ31に保持されているトナーの大部分は負極性に帯電しているが、放電によって正極性になったトナーも僅かではあるが保持されている。そこで、正極性の直流電圧V1pを導電性ブラシ31に印加することで、この正極性に帯電したトナーが中間転写ベルト20に吐き出される。
【0068】
本実施例では、V1n=−800V、V1p=+800Vである。
【0069】
又、画像形成装置10の使用に伴い、トナー帯電ローラ32に2次転写残トナーの一部が付着し、トナー帯電ローラ32の表面がトナーで汚れてくる。トナー帯電ローラ32の表面がトナーで汚れると、トナー帯電ローラ32による2次転写残トナーの帯電が不安定になり、2次転写残トナーの電荷量が不安定になることから、クリーニング性能が低下する。従って、それを抑制するために、本実施例では、吐き出し工程において、導電性ブラシ31から中間転写ベルト20にトナーを転写する動作と同様の動作を、第3の接触部材であるトナー帯電ローラ32に対しても実施する。
【0070】
即ち、本実施例では、吐き出し工程において、トナー帯電用電源(第3のバイアス印加手段)42からトナー帯電ローラ32に、負極性の直流電圧V2nと、正極性の直流電圧V2pと、を交互に印加する。これによって、トナー帯電ローラ32の表面に付着したトナーの除去を行う。
【0071】
本実施例では、V2n=−800V、V2p=+800Vである。
【0072】
本実施例では、2次転写バイアス電源44、回収保持用電源41及びトナー帯電用電源42はそれぞれ、第1の極性の電圧を出力する第1の電圧出力部(高圧回路)を有している。更に、第1の極性とは逆極性である第2の極性の電圧を出力する第2の電圧出力部(高圧回路)を有している。又、2次転写バイアス電源44、回収保持用電源41及びトナー帯電用電源42はそれぞれ、第1の電圧出力部からの電圧を出力するか、第2の電圧出力部から電圧を出力するか、又は電圧出力をOFF(停止)するかを選択的に切り替える切替手段を有する。切替手段は更に、出力電圧値を変更できるようになっていてもよい。
【0073】
本実施例にて、2次転写バイアス電源44、回収保持用電源41及びトナー帯電用電源42の出力電圧値、出力電圧の極性切替えなどの制御は、画像形成装置10の動作を統括的に制御する制御部が備える制御手段としてのCPU50(図1)によって行われる。CPU50は、それに内蔵しているか又は接続されている記憶手段に記憶されたプログラム、データに従って画像形成装置10の動作をシーケンス制御する。特に、本実施例に関連して2次転写バイアス電源44、回収保持用電源41、トナー帯電用電源42からの電圧出力を制御する。
【0074】
吐き出し工程は、後回転時、ジャム(記録材Pがその搬送経路中で詰まること)発生後の処理動作時など、画像形成をしていないタイミング(非画像形成時)で行う。本実施例では、吐き出し工程で中間転写ベルト20に吐き出されたトナーは、第2の画像形成部1bや第3の画像形成部1cの回収トナー容器62b、62cに選択的に回収する。このように選択的に回収する方法として、本実施例では、第1の画像形成部1aなどの、中間転写ベルト20上に吐き出したトナーを回収させたくない画像形成部の1次転写ニップ部Nの1次転写ローラ5を感光体ドラム2から離間させる方法を用いた。吐き出し工程で中間転写ベルト20に吐き出されたトナーを回収する回収トナー容器62を選択する。これにより、インライン方式の画像形成装置において、4つの画像形成部1の中で、特定の回収トナー容器62に2次転写残トナーが多く入ることを抑制することができる。
【0075】
ところで、前述のように、トナー回収保持手段を有する従来の画像形成装置では、次のような問題が発生することがある。即ち、トナー回収保持手段から吐き出されたトナーがトナー回収保持手段などに静電気的に引き寄せられ、飛散する場合がある。トナーが大量に飛散すると、ベルトクリーニング装置30や画像形成装置の内部がトナーで汚れる。その結果、ベルトクリーニング装置30の汚れの一部が再び導電性ブラシ31に付着し、導電性ブラシ31のトナー回収性能や、トナー保持性能を損ねることによるクリーニング不良が生じる場合がある。また、トナー回収保持手段に加えて、トナー帯電部材として、例えばトナー帯電ローラ32を併せ持つ上述のような構成においては、ベルトクリーニング装置30の汚れの一部がトナー帯電ローラ32に付着する。そのため、トナー帯電ローラ32の帯電性能を損ねることによるクリーニング不良が発生する場合がある。さらに、トナー帯電部材の有無に関わらず、記録材にトナー汚れが付着すること、より詳細には、導電性ブラシ31から保持しきれないトナーが記録材に落下することや、記録材搬送路の汚れに伴う記録材へのトナー汚れなどが生じる場合がある。
【0076】
本実施例の主要な目的は、像担持体から転写残トナーを回収し保持するトナー回収保持手段を有する構成において中間転写ベルト20のクリーニング不良に起因する画像不良の発生や記録材Pへのトナー汚れの付着を抑制することである。
【0077】
そこで、本実施例では、導電性ブラシ31を有する中間転写方式の画像形成装置10における、導電性ブラシ31から中間転写ベルト20へのトナーの吐き出し工程において、次のような設定を用いる。
【0078】
即ち、2次転写ローラ24に正極性の直流電圧V3pと、負極性の直流電圧V3nとを、交互に印加する。これによって中間転写ベルト20上をそれぞれ正極性、負極性に帯電させる。この中間転写ベルト20表面上に形成された正極性、負極性のそれぞれの極性の電位に一致させて、導電性ブラシ31に、中間転写ベルト20表面上の電位の極性とは逆極性の直流電圧を印加する。
【0079】
つまり、中間転写ベルト20上で、2次転写ローラ24によって正極性の電位が形成された領域では、導電性ブラシ31に負極性の直流電圧V1nを印加する。一方、中間転写ベルト上で、2次転写ローラ24によって負極性の電位が形成された領域では、導電性ブラシ31に正極性の直流電圧V1pを印加する。
【0080】
本実施例では、V3p=+1500V、V3n=−1500Vである。
【0081】
以下、図2及び図3を参照して、吐き出し工程における中間転写ベルト20表面上の電位の極性に対して、導電性ブラシ31に印加する電圧を切り替えるタイミングについて説明する。
【0082】
図2に、本実施例における2次転写部位及び導電性ブラシ31の近傍の模式図を示す。図中のQ1は、導電性ブラシ31の中間転写ベルト20への接触部位の中間転写ベルト20の移動方向における下流側の端部を示す。また、Q2は、2次転写ローラ24の軸中心と2次転写対向ローラ23の軸中心とを結ぶ直線と中間転写ベルト20の表面との交点を示している。又、図中PSは、プロセススピード(中間転写ベルト20の表面の移動速度)を示す。
【0083】
2次転写ローラ24への印加電圧によって、中間転写ベルト20の表面で正極性に帯電された領域は、電荷が徐々に減衰しながらも、正極性を維持した状態で導電性ブラシ31との当接部位へ移動する。正極性に帯電した中間転写ベルト20の領域が導電性ブラシ31の下流端Q1に達したタイミングで導電性ブラシ31に負極性のバイアスを印加する。これにより、中間転写ベルト20上の正極性に帯電された領域へ、導電性ブラシ31から、負極性に帯電したトナーが吐き出される。吐き出された負極性のトナーは、中間転写ベルト20の表面に付与された正極性の電荷に引き寄せられる力を受ける。
【0084】
一方、2次転写ローラ24への印加電圧によって、中間転写ベルト20の表面で負極性に帯電された領域には、上と同様のタイミングで、導電性ブラシ31から、導電性ブラシ31に印加した正極性の電圧により、正極性に帯電したトナーが吐き出される。吐き出された正極性のトナーは、中間転写ベルト20の表面に付与された負極性の電荷に引き寄せられる力を受ける。これにより、導電性ブラシ31から中間転写ベルト20に吐き出されたトナーは中間転写ベルト20上に保持されるためトナーが飛散することを抑制できる。
【0085】
さらに、上述のように、導電性ブラシ31を2次転写対向ローラ23に対向して設置することで、2次転写ローラ24の作用位置Q2から導電性ブラシ31と中間転写ベルト20の接触する領域までの中間転写ベルト20表面に沿った距離を短くすることができる。これにより、導電性ブラシ31に到達するまでに、2次転写ローラ24で付与した電荷が減衰する程度を小さくできるため、吐き出されたトナーを引き寄せる力がより強い状態を維持することができ、吐き出されたトナーの飛散をより軽減することができる。
【0086】
図4に中間転写ベルト20の電気抵抗値の違いによる中間転写ベルト20表面上での電位の減衰の様子を示す。
【0087】
上記のように、導電性ブラシ31との接触部において中間転写ベルト20上に付与された電荷を維持するという観点からは、中間転写ベルトの電気抵抗値は高いほど望ましく、また、Q2から導電性ブラシ31までの距離は短いほど望ましい。しかしながら、過度に電気抵抗値の高い中間転写ベルトを使用した場合では、新たに中間転写ベルトの除電部材を設けない限り、過度に中間転写ベルトがチャージアップする。そのため、1次転写性が損なわれることや、2次転写残トナーの感光体ドラムへの回収性が損なわれることが危惧される。さらに、Q2から導電性ブラシ31までの距離が短すぎる場合、2次転写ローラ24と導電性ブラシ31が電気的に干渉する(片方から他方へ電流逃げが生じる)ことにより、2次転写性や残トナーの導電性ブラシ31への回収性が損なわれる恐れがある。上記のことを考慮すると、中間転写ベルト20の電気抵抗値は、体積抵抗率で1010Ωcmから1012Ωcm程度が望ましい。加えて、本実施例においては、上記のことを考慮し、Q2から導電性ブラシ31と中間転写ベルト20の接触する領域の中間転写ベルト20移動方向で上流側の端までの中間転写ベルト20表面に沿った距離を20mmとしている。
【0088】
尚、導電性ブラシ31の吐き出し工程中においては、トナー帯電ローラ32には、上述のトナー帯電ローラ32からのトナー吐き出し工程で印加する電圧V2n、V2pを導電性ブラシ31への直流電圧印加と同時に、同一周期、同極性で印加している。本実施例にて、導電性ブラシ31からの吐き出し工程における、導電性ブラシ31、トナー帯電ローラ32、及び2次転写ローラ24へ印加するバイアスの極性の切り替え間隔t1は400msecである。
【0089】
導電性ブラシ31からの吐き出し工程の終了後に、トナー帯電ローラ32に付着したトナーの吐き出し工程を行う。トナー帯電ローラ32からの吐き出し工程では、V2pとV2nの直流電圧をトナー帯電ローラ32の回転周期より長い間隔で切り替えて印加する。
【0090】
尚、トナー帯電ローラ32からのトナー吐き出し工程中においては、導電性ブラシ31には、V1p、V1nの直流電圧をトナー帯電ローラ32への直流電圧印加と同時に、略同一周期、同極性で切り替えて印加している。本実施例にて、トナー帯電ローラ32の吐き出し工程における、導電性ブラシ31、及びトナー帯電ローラ32への印加するバイアスの切り替え間隔は600msecである。
【0091】
電圧の極性の切り替え動作は、導電性ブラシ31からのトナー吐き出し工程中に10回行い、帯電ローラ32からのトナー吐き出し工程中に3回行う。
【0092】
尚、印刷の生産性向上のためには、印加電圧の極性切り替え動作を少なくし、吐き出し工程を可能な限り短縮することが望ましい。
【0093】
(4)本実施例の画像出力実験結果
次に、本実施例の画像形成装置10を用いた場合の画像出力実験の結果について説明する。
【0094】
耐久実験として、記録材PにCLCカラーレーザーコピア用紙(Canon販売、商品名)を用い、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の各色の画像比率25%の画像を、2枚連続画像形成を繰り返すことにより10万枚形成した。画像形成モードとしては普通紙モードを用い、プロセススピード(PS)は100mm/sec、スループットは1分間に18枚であった。耐久実験中に、吐き出し工程は、2枚の連続画像形成が終了する毎に行った。
【0095】
又、上記耐久実験の開始時、及び耐久実験中の画像形成枚数5千枚おきに、評価画像のサンプリングを行った。サンプリングする評価画像としては、記録材PにCLCカラーレーザーコピア用紙(Canon販売、商品名)を用い、次のものを出力した。即ち、ベタ画像(最大濃度レベル画像)、ハーフトーン画像、文字細線画像を、それぞれC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)、R(レッド)、B(ブルー)、G(グリーン)の各色にて2枚ずつ出力した。
【0096】
サンプリングした評価画像について、(1)クリーニング不良、(2)記録材Pへのトナー汚れ付着という2つの画像不良について評価を行った。具体的にはクリーニン不良は、サンプリングした評価画像に中間転写ベルト20の1周分前の画像が発生するかを観察することで評価した。記録材Pへのトナー汚れは、サンプリングした評価画像にベルトクリーニング装置30周辺の汚れトナーによるトナー汚れを観察することで評価した。ランク付けの基準としては、画像不良が発生しない場合を○、発生する場合を×とした。
【0097】
尚、実験を行った雰囲気環境は、温度23℃、湿度50%のNN環境下である。
【0098】
評価結果を表1に示す。
【0099】
【表1】

【0100】
本実施例では、クリーニング不良は、4万5千枚まで発生せず、5万枚から僅かに確認できる程度に発生した。一方、記録材Pへのトナー汚れ付着は、4万5千枚から発生した。
【0101】
(5)比較例の画像出力実験結果
次に、上記本実施例の画像形成装置10の比較対象として比較例の画像出力実験の結果について説明する。
【0102】
比較例の画像形成装置は、上記本実施例の実験に用いたものと同じ基本構成を有するが、吐き出し工程において、2次転写ローラ24への印加電圧の極性の切り替えを行わずに、グランド電位とした。
【0103】
評価結果を表2に示す。
【0104】
【表2】

【0105】
比較例では、クリーニング不良は、4万枚までは発生しなかったものの、4万5千枚以降から僅かに確認できる程度に発生し、耐久実験の進行と共に悪化していくことが確認された。一方、記録材Pへのトナー汚れ付着は、4万枚から確認できる画像不良が発生し、耐久実験の進行と共に悪化することが確認された。
【0106】
(6)まとめ
以上、本実施例では、導電性ブラシ31を有する中間転写方式の画像形成装置10における、導電性ブラシ31から中間転写ベルト20へのトナーの吐き出し工程において、次のような設定を用いる。即ち、2次転写ローラ24に印加する電圧の極性の切り替えにより、中間転写ベルト20表面上に形成され電位に一致させて、導電性ブラシ31に中間転写ベルト20表面上の電位の極性と、逆極性の電圧を印加して、導電性ブラシ31からの吐き出し動作を行う。これにより、中間転写ベルト20のクリーニング不良に起因する画像不良の発生や記録材Pへのトナー汚れの付着を抑制することができる。このように、本発明によれば、像担持体から転写残トナーを回収し保持するトナー回収保持手段を有する構成における像担持体のクリーニング性能を向上することができる。
【0107】
実施例2
次に、本発明に係る他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、図1、図2を参照して説明した実施例1のものと同じである。従って、実施例1で説明した画像形成装置に関する説明を援用し、ここでの再度の詳しい説明は省略する。
【0108】
本実施例では、導電性ブラシ31の吐き出し工程における、導電性ブラシ31へ印加する直流電圧V1p、V1nを、それぞれ、吐き出し工程中で変化させる。即ち、実施例1のトナー吐き出し工程と同様である第1の吐き出し工程に加えて、第1の吐き出し工程とは異なる直流電圧を導電性ブラシ31へ印加して、第2の吐き出し工程を行う。
【0109】
より詳しく説明すれば、図5に示すように、吐き出し工程における電圧極性の切り替えのうち、最初の10回の電圧V1p、V1nの切り替えは実施例1同様に、V1p=+800V、V1n=−800Vとする。そして、11回目以降から最後の14回目までの印加電圧V4p、V4nはそれぞれ、V4p=+400V、V4n=−400Vとする。
【0110】
このように、計14回の電圧切り替え動作を導電性ブラシ31からのトナー吐き出し工程において行う。
【0111】
第2の吐き出し工程と比較して、高電圧を印加する第1の吐き出し工程では、導電性ブラシ31に回収保持されたトナーに対してより強い静電気力が作用するため、トナーの吐き出し効率が高い。
【0112】
しかしながら、一方で、高電圧を印加するために、不要な放電により、吐き出そうとするトナーの極性反転を引き起こしてしまう場合がある。そのため、第1の吐き出し工程における最後の電圧切り替え動作によって極性が反転してしまったトナーは、導電性ブラシ31に引き寄せられる力を受けるため、導電性ブラシ31から吐き出すことが難しくなってしまう。
【0113】
一方、比較的低電圧を印加する第二の吐き出し工程では、吐き出そうとするトナーに対して、不要な放電を比較的少なくすることができる。これによりトナーの極性反転を軽減できるため、第1の吐き出し工程において、極性の反転により吐き出し切れなかったトナーを中間転写ベルト20上に吐き出すことができる。
【0114】
以上により、上述の第1、第2吐き出し工程より構成される本実施例の吐き出し工程は、吐き出されたトナーの飛散を抑制し、かつ、実施例1における吐き出し工程に比較して、効率よく導電性ブラシ31からのトナー吐き出しができる。
【0115】
尚、実施例1と同じ画像形成装置において、本実施例に示した導電性ブラシ31への印加電圧の制御を適用した結果、実施例1と同様に、トナー吐き出し工程において吐き出されたトナーの飛散を抑制する効果が確認された。
【0116】
以上、本実施例では、導電性ブラシ31を有する中間転写方式の画像形成装置10における、導電性ブラシ31から中間転写ベルト20へのトナーの吐き出し工程において、次のような設定を用いる。
【0117】
即ち、2次転写ローラ24に印加する電圧の極性の切り替えにより、中間転写ベルト20表面上に形成された電位に一致させて、導電性ブラシ31に、中間転写ベルト20上の表面電位の極性とは、逆極性の電圧を印加する。この導電性ブラシ31からの吐き出し工程において、比較的高電圧を印加する第1の吐き出し工程と、比較的低電圧を印加する第2の吐き出し工程を行う。これにより、中間転写ベルト20のクリーニング不良に起因する画像不良の発生や記録材Pへのトナー汚れの付着を抑制することができる。
【0118】
その他の実施例
本発明を具体的な実施例に即して説明したが、本発明は、上述した各実施例の形態に限定されるものではない。
【0119】
例えば、上述の実施例では、本発明を、タンデム型の中間転写方式のカラー画像形成装置に適用した実施例について説明した。しかし、本発明は、当業者には周知のその他の基本構成を有する画像形成装置にも適用し得るものであり、上記実施例と同様の効果を得ることができる。
【0120】
その他の画像形成装置の基本構成としては、4サイクル型の中間転写方式などが挙げられる。4サイクル型の画像形成装置は、一つの第1の像担持体に対して複数個(典型的には4個)の現像手段を有し、その像担持体上に複数の現像手段により形成したトナー像を第2の像担持体である中間転写体に転写するものである。
【0121】
又、上述の実施例1、2では、ベルトクリーニング機構として、積極的に2次転写残トナーを回収し保持するトナー回収保持手段と2次転写残トナーをトナーの正規の帯電極性とは逆極性に帯電させるトナー帯電手段(トナー帯電ローラ)を合わせて有している。この構成において、本発明の特徴である吐き出し工程を適用した。
【0122】
しかしながら、上述の各実施例における吐き出し工程は、上記の構成以外のベルトクリーニング機構にも適用し得るものである。一例としては、ベルトクリーニング機構として、トナー帯電ローラのみを有する構成が挙げられる。具体的には、既に上で述べたように正負のそれぞれの極性を持つトナーが混在した2次転写残トナーを、トナー帯電ローラにおいてトナーの正規の帯電極性とは逆極性に帯電しようとした場合、残トナーの一部がトナー帯電ローラに付着してしまう。この結果、トナー帯電ローラの帯電性能が低下することにより、クリーニング不良を引き起こす場合がある。これの抑制のために行うトナー帯電ローラからの吐き出し工程においても、本発明を適用することができ、吐き出されたトナーの飛散を軽減することが出来る。
【0123】
中間転写ベルト上に吐き出されたトナーの回収方法についても、上述した各実施例の形態に限定されるものではない。
【0124】
つまり、上述の実施例1、2では、中間転写ベルトに吐き出されたトナーを選択的に特定の画像形成部の回収トナー容器に回収する方法として、回収させたくない画像形成部では1次転写ニップ部において1次転写ローラを感光体ドラムから離間させた。しかし、選択的に特定の画像形成部の回収トナー容器にトナーを回収することは、回収させたくない画像形成部の1次転写ローラに印加するバイアスを選択したり、感光体ドラムの電位を選択したりする方法によっても達成でき、同様の効果が得られる。即ち、回収させたくない画像形成部では、1次転写ニップ部において中間転写ベルトから感光体ドラムにトナーが転写されないようなバイアスを1次転写ローラに印加する。又、回収させたくない画像形成部では、帯電バイアスの設定や露光の有無によって、感光体ドラムの電位を、中間転写ベルトから感光体ドラムにトナーが転写されないように設定する。
【0125】
又、上述の実施例1、2では、像担持体として、中間転写ベルトを例に挙げて説明した。
【0126】
しかしながら、本発明は、中間転写ベルトをクリーニングするベルトクリーニング手段でなく、例えば像担持体としての感光体ドラムをクリーニングする感光体クリーニング手段において、トナー回収保持手段を用いる場合にも適用し得るものである。
【符号の説明】
【0127】
1 画像形成部
2 感光体ドラム(第1の像担持体)
6 感光体クリーニング装置(像担持体クリーニング手段)
10 画像形成装置
20 中間転写ベルト(第2の像担持体)
23 2次転写対向ローラ
24 2次転写ローラ(2次転写手段、第1の接触部材)
30 ベルトクリーニング装置(像担持体クリーニング手段)
31 導電性ブラシ(トナー回収保持手段、第2の接触部材)
32 トナー帯電ローラ(トナー帯電手段)
41 回収保持用電源(第2のバイアス印加手段)
42 トナー帯電用電源(第3のバイアス印加手段)
44 2次転写バイアス電源(第1のバイアス印加手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像を担持する像担持体と、
前記像担持体の表面に接触する第1の接触部材と、
前記第1の接触部材にバイアスを印加する第1のバイアス印加手段と、
前記像担持体の移動方向に対して前記第1の接触部材の下流側に位置し、前記像担持体の表面に接触する第2の接触部材と、
前記第2の接触部材にバイアスを印加する第2のバイアス印加手段と、
を有し、前記第2の接触部材に対して前記第2のバイアス印加手段が印加するバイアスの極性を切り替えることによって前記第2の接触部材に付着したトナーを前記像担持体に転写する吐き出し工程を有する画像形成装置において、
前記第1のバイアス印加手段が印加するバイアスの極性の切り替え動作により前記第1の接触部材によって形成された電位を有する前記像担持体の表面に対して、前記第2のバイアス印加手段が、前記像担持体の表面上の電位の極性とは逆極性となるバイアスを前記第2の接触部材に印加することで、前記第2の接触部材からのトナー吐き出し工程を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記トナー吐き出し工程は、前記第2のバイアス印加手段から第1の電圧が印加される第1の吐き出し工程と、前記第2のバイアス印加手段から前記第1の電圧より低い第2の電圧が印加される第2の吐き出し工程とを有することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1の接触部材が、前記像担持体上のトナー像を記録材に転写する転写手段であることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第2の接触部材が、前記像担持体上のトナーをクリーニングする像担持体クリーニング手段であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記像担持体の移動方向にて前記第2の接触部材の下流側に第3の接触部材が配置され、
前記第3の接触部材には、前記第1のバイアス印加手段が印加するバイアスの極性の切り替え動作により前記第1の接触部材が形成した電位を有する前記像担持体の表面に対して、前記第3のバイアス印加手段が、前記像担持体の表面上の電位の極性とは逆極性となるバイアスを印加することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記像担持体は、電子写真感光体であり、電子写真プロセス手段によりトナー像が形成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記像担持体は、電子写真プロセス手段により電子写真感光体に形成されたトナー像が転写される中間転写体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−133581(P2011−133581A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291504(P2009−291504)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】