画像形成装置
【課題】現像部にトナーのみを搬送し、現像する方式の画像形成装置において、プロセス速度がより高速化しても、現像部において現像状態がより平衡状態に近い状態で現像を終了させることができ、種々の部材等が変化してもより安定した画像濃度を得ることができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】現像部でのトナー飛翔電流値を検知し、印加した所定の高周波現像バイアスとの位相のズレを最小化するように現像バイアス条件を定める。
【解決手段】現像部でのトナー飛翔電流値を検知し、印加した所定の高周波現像バイアスとの位相のズレを最小化するように現像バイアス条件を定める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を用いた画像形成装置に関する。特に、表面に静電潜像を形成する像担持体と、それに対向して配置され、表面に帯電したトナーを担持搬送し、像担持体上の静電潜像を該トナーで現像するトナー担持体を有する現像装置とを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスでは、感光体(像担持体)上の静電潜像を可視化する方式として、現像部に2成分の現像剤を搬送し、現像する2成分現像方式(現像ローラ(現像剤担持体)はトナーとキャリアを含む現像剤を現像部へ搬送し、トナーで現像する)と、トナーのみを搬送する1成分現像方式(現像ローラ(トナー担持体)はトナー1成分のみを現像部へ搬送し、現像する)が知られている。
【0003】
2成分現像方式では、トナーの荷電がキャリアとの接触・摩擦によるため、速やかに安定した荷電が得られる一方、システム速度を高速化すると、現像部に搬送されたキャリアが感光体に飛翔・付着しやすくなり、画像のノイズになる問題がある。
【0004】
1成分現像方式では、現像部にはキャリアが搬送されず、トナーのみを飛翔させて現像するため、感光体上へのキャリア付着による画像ノイズがない。しかし、その一方で、トナーは主に電荷注入やブレードなどの部材との摩擦により帯電するため、帯電性が不安定になる問題がある。
【0005】
また2成分の現像剤を用いてキャリアによるトナー帯電の安定性を確保しながら、現像ローラ(トナー担持体)上には現像剤担持体からトナーのみを供給し、現像部では1成分で現像するハイブリッド現像方式も開発されている。
【0006】
しかしながら、ハイブリッド現像方式も含めて、トナーのみを飛翔させて現像する1成分現像方式では、プロセス速度が高速化すると現像性が低下し、また種々のパラメータの変動により安定した画像濃度を得るのが困難になる。
【0007】
例えば、システム速度が遅い場合と比較して、感光体と現像ローラ間の距離(Ds)、現像ローラ上トナーの搬送量や帯電量などが変わると、現像特性が大きく変化する。これは、感光体表面電位と、現像ローラ表面電位が等しい状態(現像の平衡状態)になり現像が終了するのではなく、プロセス速度が高速化すると現像の平衡状態に達する前に潜像が現像ニップを通過してしまい、現像が平衡状態に至らないためである。
【0008】
したがって、種々の部材の特性が変化しても、安定した画像濃度を得るためには、現像部での現像状態がより平衡状態に近い状態で終了できるように、現像条件を設定する必要がある。
【0009】
より安定した画像濃度を得るために、現像状態を検知して現像条件等に反映する技術が開発されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0010】
特許文献1では、現像部でのトナー飛翔電流を検知する技術が開示されている。また特許文献2には、現像部において、トナー電流のみを検知できる、トナー電流検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平7−175282号公報
【特許文献2】特開2006−145504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
既述したように、プロセス速度が高速化すると、現像部におけるトナーの飛翔(往復)回数が減少し、現像性が低下する。
【0013】
特に、トナーのみによる1成分現像方式では、静電潜像を担持する感光体上の表面電位と現像ローラの表面電位が電位的に等しい状態(現像の平衡状態)に至る前に静電潜像が現像部を通過してしまうと、駆動時の部材の変動や、現像剤の搬送量・荷電量といった特性の変化に対して、安定した画像濃度が得られにくくなる。
【0014】
高速プロセスで現像性を低下させないためには、より高周波領域の現像バイアスの印加が望ましいが、一方では現像部での現像状態が平衡状態に到達しにくくなる。安定した画像濃度を得るためには、現像部での現像状態がより平衡状態に近い状態で終了できるように、現像条件を設定する必要がある。
【0015】
しかしながら、特許文献1に記載の、現像部でのトナー飛翔電流を検知する技術を用いても、トナーの飛翔電流値だけからは現像が平衡状態に対してどういう状況であるか判定することができず、現像バイアス条件への反映には不十分である。また、高速プロセスにおいてより高周波数領域の現像バイアスを印加したときの問題についても考慮されておらず、トナーの飛翔電流値から現像の平衡状態について判断することができない。
【0016】
また、特許文献2には、現像部において、トナー電流のみを検知できる、トナー電流検出装置が開示されているが、やはりトナー電流の測定のみでは、現像が平衡状態に対してどういう状況であるか判定することができず、現像バイアス条件への反映には不十分である。
【0017】
本発明は、上記の技術的課題に鑑みてなされたものである。
【0018】
本発明の目的は、現像部にトナーのみを搬送し、現像する方式の画像形成装置において、プロセス速度がより高速化しても、現像部において現像がより平衡状態に近い状態で終了させることができ、種々の部材等が変化してもより安定した画像濃度を得ることができる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有するものである。
【0020】
1.表面に形成された静電潜像を担持する像担持体と、
表面に帯電したトナーを担持搬送し、対向して配置された前記像担持体上の静電潜像を該トナーで現像するトナー担持体を有する現像装置と、
前記トナー担持体に、前記像担持体と対向する現像部においてトナーを飛翔させ、現像するための現像バイアス電圧を印加する現像バイアス電源と、
前記現像バイアス電源による現像バイアス電圧の印加条件である現像バイアス条件を設定する現像バイアス制御手段と、
前記現像部におけるトナー飛翔によるトナー電流値を検知するトナー電流検知手段と、を有し、
前記現像バイアス電源による現像バイアス電圧は、所定の高周波を有する交番電圧であり、
前記現像バイアス制御手段は、
前記現像バイアス電圧と、前記トナー電流検知手段により検知されたトナー電流値との位相ズレが最小となるように前記現像バイアス条件を制御する
ことを特徴とする画像形成装置。
【0021】
2.前記現像バイアス条件は、所定の高周波を有する交番電圧の直流成分Vdc、ピーク間電圧Vpp、そしてデューティ比の少なくとも1つである
ことを特徴とする前記1に記載の画像形成装置。
【0022】
3.前記現像バイアス電源による現像バイアス電圧は、前記所定の高周波を有する交番電圧にパルス状の電圧を付加したものであり、
前記現像バイアス条件は、前記パルス状の電圧の波形、パルス時間、そしてパルスの電位差の少なくとも1つを含む
ことを特徴とする前記1に記載の画像形成装置。
【0023】
4.前記現像装置は、
表面に前記トナーとキャリアとを含む現像剤を担持搬送し、対向して配置された前記トナー担持体に前記現像剤中の前記トナーを供給する現像剤担持体を有する
ことを特徴とする前記1から3の何れか1項に記載の画像形成装置。
【0024】
5.前記現像装置は、複数の前記トナー担持体を有し、
前記現像バイアス制御手段は、
複数の前記トナー担持体を一括して、またはそれぞれのトナー担持体毎に、
前記現像バイアス電圧と、前記トナー電流検知手段により検知されたトナー電流値との位相ズレが最小となるように前記現像バイアス条件を制御する
ことを特徴とする前記1から4の何れか1項に記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る画像形成装置によれば、現像部にトナーのみを搬送し、現像する方式において、現像部でのトナー飛翔電流値を検知し、印加した所定の高周波現像バイアスとの位相のズレを最小化するように現像バイアス条件を定める。
【0026】
これにより、プロセス速度がより高速化しても、現像部において現像状態がより平衡状態に近い状態で現像を終了させることができ、種々の部材等が変動してもより安定した画像濃度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る画像形成装置の概略構成例1を示す構成図である。
【図2】本発明に係る画像形成装置の概略構成例2を示す構成図である。
【図3】本発明に係る画像形成装置の概略構成例3を示す構成図である。
【図4】本発明に係る画像形成装置の概略構成例4を示す構成図である。
【図5】現像バイアス電圧と現像トナーの飛翔に伴う電流値の関係の例を示す概略図である。
【図6】現像バイアス電圧と現像トナーの飛翔に伴う電流値の位相ズレの算出方法例1の概略説明図である。
【図7】現像バイアス電圧と現像トナーの飛翔に伴う電流値の位相ズレの算出方法例2の概略説明図である。
【図8】現像バイアス電圧と現像トナーの飛翔に伴う電流値の位相ズレの算出方法例3の概略説明図である。
【図9】現像バイアス電圧と現像トナーの飛翔に伴う電流値の位相ズレの算出方法例4の概略説明図である。
【図10】現像バイアス電圧と現像トナーの飛翔に伴う電流値の位相ズレの算出方法例5の概略説明図である。
【図11】検出した位相のズレを現像バイアス条件にフィードバック制御する概略手順例1を示すフローチャートである。
【図12】検出した位相のズレを現像バイアス条件にフィードバック制御する概略手順例2を示すフローチャートである。
【図13】キッカーパルスを付加した現像バイアス電圧の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る画像形成装置の実施形態について図1から図13を用いて説明する。
【0029】
(画像形成装置の構成)
図1から図4は、本発明に係る画像形成装置の概略構成例1から4を、それぞれ示す構成図である。図1から図4を用いて本実施形態の画像形成装置の構成例1から4を説明する。但し、構成例1から4の違いは、それぞれ現像装置の構成が異なるものである。
【0030】
<構成例1>
図1は概略構成例1を示す構成図である。
【0031】
図1の画像形成装置は、以下の構成要素を含んでいる。すなわち、感光体(像担持体)1、現像ローラ(トナー担持体)20、トナー層規制部材21a、トナー搬送ローラ22a、トナー搬送部材24a、トナー25a、トナー攪拌・搬送槽26a、補給トナー27、トナー補給部28、現像バイアス電源30、トナー搬送ローラのバイアス電源31、トナー電流検知手段32、現像バイアス制御手段33、感光体上のトナー濃度検知手段34、転写手段4、クリーニング手段5、帯電手段6、露光手段7、記録媒体8が図1に示されている。
【0032】
感光体1は静電潜像担持体であり、帯電手段6により一定の表面電位(Vo)が与えられる。その後、露光手段7により、デジタル画像処理部(不図示)からの画像信号に応じて変調されたレーザーが照射され、静電潜像が形成される。
【0033】
感光体と一定のギャップをもって配置された現像ローラ20上のトナーが現像バイアス電圧の印加によって感光体1方向へ移動することで、感光体1の静電潜像はトナー像として可視化される。
【0034】
その後、このトナー像は、転写手段4により記録媒体8に転写された後、図示しない定着装置で定着される。感光体1は、転写手段4通過後、クリーニング手段5によりクリーニングされ、再び、帯電手段6に搬送される。
【0035】
図1では、感光体1から直接、記録媒体8にトナー像が転写されているが、中間転写体に一旦転写された後、他の色のトナー像を重ねて、記録媒体8に転写される形態でも差し支えない。
【0036】
現像装置2では、トナー搬送部材24aにより、トナー補給部28から補給されたトナー25aがトナー搬送ローラ22aへ搬送される。トナー搬送ローラ22a上のトナー25aは、トナー層規制部材21bにより規制される。トナー搬送ローラ22aは現像ローラ20に接触して配置されている。
【0037】
各ローラには、バイアス電源30、31によりバイアス電圧が印加され、トナー搬送ローラ22a上のトナーは現像ローラ20へと供給される。また、現像後、現像ローラ20上のトナーはトナー搬送ローラ22aにより回収される。
【0038】
現像ローラ20には、プロセス速度に応じた所定の高周波を有する交番電圧が現像バイアス電圧として現像バイアス電源30により印加される。現像ローラ20上に搬送されたトナーは、印加された現像バイアス電圧による電界で飛翔(往復移動)し、感光体1上の静電潜像を可視化する。
【0039】
このトナーの飛翔を介して、感光体1と現像ローラ20間にはトナー電流(交番電流)が流れる。この電流値の変化はトナー電流検知手段32により検知される。
【0040】
濃度検知手段34及びトナー電流検知手段32からの結果に基づいて、目的の画像濃度を出し、かつ現像がより平衡状態に近い状態になるよう、現像バイアス制御手段33により適切な現像バイアスが印加されるように現像バイアス条件が制御される。但し、濃度検知手段34は、必ずしも制御に用いなくてもよい。
【0041】
現像バイアス条件の制御についての詳細は後述する。
【0042】
<構成例2>
図2は概略構成例2を示す構成図である。
【0043】
図2の画像形成装置は、構成例1と同様の構成要素を含んでいる。異なるのは以下のものである。すなわち、現像装置2として、現像ローラ(トナー担持体)20、現像剤規制部材21b、現像剤搬送ローラ22b、磁性体ローラ23(22bと23を合わせて現像剤担持体22と称する)、現像剤搬送部材24b、現像剤25b、現像剤攪拌・搬送槽26bを有している。
【0044】
その他の補給トナー27、トナー補給部28、現像バイアス電源30、現像剤担持体のバイアス電源31、トナー電流検知手段32、現像バイアス制御手段33、感光体上のトナー濃度検知手段34、そして感光体(像担持体)1、転写手段4、クリーニング手段5、帯電手段6、露光手段7、記録媒体8が、図1同様に示されている。
【0045】
構成例2の画像形成装置が構成例1と異なる点を説明する。
【0046】
図2の現像装置2は、1成分現像方式と2成分現像方式を組み合わせた、所謂ハイブリッド現像装置である。トナーとキャリアを磁気ブラシ状に担持・回転させ、この磁気ブラシローラ(現像剤担持体)上から現像ローラ(トナー担持体)上へ、DCあるいはDCにACを重畳したバイアスを印加することでトナーのみを供給し、トナーを担持した現像ローラと静電潜像(感光体)とを対抗させ、潜像を可視化する。
【0047】
図2中の22bは現像剤搬送ローラ、23は磁性体ローラである。以下、現像剤搬送ローラ22bと磁性体ローラ23をあわせてマグネットローラ(現像剤担持体22)と呼ぶ。
【0048】
ハイブリッド現像方式では、1成分現像方式と2成分現像方式のそれぞれのメリットが活かされる。
【0049】
まず、現像剤担持体へトナーを補給・搬送する部分では、キャリアを用いることで、電界で飛翔させるために安定した荷電量をトナーに与えることができる。また、現像部においては、1成分現像であることから、2成分現像のデメリットであるキャリア付着を回避できる。
【0050】
以上の点から、システム速度を高速化しても、キャリア付着などのノイズが少なく、安定した画像濃度を得ることができる。
【0051】
画像形成の動作は、構成例1と同様である。現像に関わる動作についてのみ説明する。
【0052】
図2の現像装置2では、現像剤攪拌・搬送部材24bにより、トナー補給部28から補給されたトナーが現像剤25b中でキャリアと混ぜられて帯電し、キャリアとともに現像剤担持体22へ搬送される。
【0053】
現像剤担持体22上の現像剤25bは、現像剤規制部材21bにより規制される。現像剤担持体22と現像ローラ(トナー担持体)20は、一定のギャップを持って配置されている。
【0054】
各々のローラに、バイアス電源30、31によりバイアス電圧が印加され、現像剤担持体22上の2成分現像剤のうちトナーのみが現像ローラ20へ供給される。
【0055】
現像ローラ20には、プロセス速度に応じた所定の高周波を有する交番電圧が現像バイアス電圧として現像バイアス電源30により印加される。現像ローラ20上に搬送されたトナーは、印加された現像バイアス電圧による電界で飛翔(往復移動)し、感光体1上の静電潜像を可視化する。
【0056】
このトナーの飛翔を介して、感光体1と現像ローラ20間にはトナー電流(交番電流)が流れる。この電流値の変化をトナー電流検知手段32が検知する。
【0057】
構成例1と同様に、濃度検知手段34及びトナー電流検知手段32からの結果に基づいて、目的の画像濃度を出し、かつ現像がより平衡状態に近い状態になるよう、現像バイアス制御手段33により適切な現像バイアスが印加されるように現像バイアス条件が制御される。なお、濃度検知手段34は、必ずしも制御に用いなくてもよい。
【0058】
現像バイアス条件の制御についての詳細は後述する。
【0059】
<構成例3>
図3は概略構成例3を示す構成図である。
【0060】
図3の画像形成装置は、構成例1と同様の構成要素を含んでいる。異なるのは、現像ローラ(トナー担持体)20を2本有している点のみである。
【0061】
2本のトナー担持体は、図に示すように何れもが像担持体1、及び現像剤担持体22の両方と、それぞれ対向するように配置され、それぞれが構成例1と同様の機能動作を行う。従って説明は省略する。
【0062】
<構成例4>
図4は概略構成例4を示す構成図である。
【0063】
図4の画像形成装置は、構成例2と同様に、現像装置2としてハイブリッド現像装置を備えており、構成例2と同様の構成要素を含んでいる。異なるのは、現像ローラ(トナー担持体)20を2本有している点のみである。
【0064】
2本のトナー担持体は、図に示すように何れもが像担持体1、及び現像剤担持体22の両方と、それぞれ対向するように配置され、それぞれが構成例2と同様の機能動作を行う。従って説明は省略する。
【0065】
以上、本実施形態に係る画像形成装置の概略構成例1から4を述べてきたが、構成例1及び3が1成分現像方式であり、構成例2及び4がハイブリッド現像方式である。構成例1及び2は単数の現像ローラ(トナー担持体)を備え、構成例3及び4は複数の現像ローラ(トナー担持体)を備えている。
【0066】
何れも現像ローラ(トナー担持体)上ではトナーのみが搬送され、像担持体上の潜像の現像に供される。
【0067】
以下の実施形態の説明では、構成例2の単数の現像ローラ(トナー担持体)を備えたハイブリッド現像方式の画像形成装置を想定する。もちろん他の構成例においても同様の説明が適用できる。
【0068】
(現像剤について)
ハイブリッド現像用として、トナーとキャリアを含む任意の2成分現像剤を使用することができる。
【0069】
トナーとしては、負帯電のトナーを用いた。もちろん、正帯電するトナーでもかまわない。トナーを製造するにあたっては、一般に使用されている公知の方法で製造することができる。例えば、粉砕法、乳化重合法、懸濁重合法等を用いて製造することができる。
【0070】
キャリアとしては、特に限定されず、一般に使用されている公知のキャリアを使用することができる。バインダー型キャリアやコート型キャリアなどが使用できる。キャリア粒径としてはこれに限定されるものではないが、15〜100μmが好ましい。なお、現像剤中のトナー比率は8質量%とした。
【0071】
(現像部の設定条件)
本実施形態に係る画像形成装置では、現像装置2の備えるトナー担持体20と像担持体1との対向部(現像部)におけるトナー電流を検知し、トナー担持体20に印加する現像バイアス電圧の設定制御に反映している。それらの設定制御に関わる構成要素と設定条件について述べる。
【0072】
像担持体1としては、有機感光体を用いているが、これに限らない。アモルファス感光体等でもかまわない。
【0073】
トナー担持体20としては表面にアルマイト処理を施したアルミローラを用いた。
【0074】
また、像担持体1上に形成された静電潜像の背景部電位は−600V、画像部電位は−50Vに設定した。
【0075】
トナー担持体20には、振幅がPeak to Peakの電圧Vppで2.0kV、DC成分Vdcが−500V、Duty比50%、周波数5000Hzの矩形波の現像バイアス電圧を現像バイアス電源30により印加した。
【0076】
トナー担持体20と像担持体1の対向部の最近接部での距離(Dsとする)は250μmである。
【0077】
(トナー電流と現像バイアス条件)
上記条件で、トナー担持体20(現像バイアス電圧Vdc−500V)と像担持体1(画像部電位−50V〜0V)の対向部(現像部)で生ずるトナーの飛翔電流値をトナー電流検知手段32により、トナー電流として測定した。
【0078】
現像部では、現像バイアス電圧による交番電界により、トナーの飛翔(往復運動)が生じる。トナー電流値は、そのときトナー担持体20と像担持体1の間を流れる電流の変化をトナー電流検知手段32により測定したものである。
【0079】
トナー担持体20に印加されている現像バイアス電圧と像担持体1の表面電位(ほぼ0V)との差が正負交代するにつれ、トナーの往復移動が生じ、トナー電流値の正負も交代する。
【0080】
図5は、現像バイアス電圧と現像トナーの飛翔に伴う電流値の関係の例を示す概略図である。L1は、現像バイアス電圧(左側縦目盛り参照)を示し、L2はトナー電流値(右側縦目盛り参照)を示す。横軸は時間である。
【0081】
なおこの測定は、現像部にトナーを介在させた状態で、トナー担持体20と像担持体1とを静止して行った。もちろん、通常の現像時のように回転させて測定しても差し支えない。
【0082】
現像バイアス電圧L1の高周波の正負交代にともない、トナー電流値L2も正負交代し、高周波の交流波形となっている。図5でトナー電流値が正の領域では、トナーが像担持体1からトナー担持体20へと移動しており、トナー電流値が負の領域では、トナーがトナー担持体20から像担持体1へと移動している。
【0083】
図5では、正負のトナー電流を合わせると差し引きして負の電流が流れていることになり、トナーは結局トナー担持体20から像担持体1へと移動する(潜像を現像する)ことになる。
【0084】
図5のように像担持体1の表面電位が画像部(ほぼ0V)ではなく背景画像部(−600V)であったなら、正負のトナー電流は差し引きして同等、あるいはむしろ正の電流が流れていることになり、トナーは像担持体1側へは移動しない。
【0085】
(現像部でのトナー飛翔電流と平衡状態)
ここで重要な点は、図5に示すように、印加した現像バイアス電圧L1と、トナー飛翔によるトナー電流値L2に、位相のズレが見られることである。すなわち、現像バイアス電圧L1の変化に対してトナー電流値L2の変化に遅れが見られる。
【0086】
この位相のズレは、システム速度の向上に対して、トナーの飛翔性を向上させるために現像バイアス電圧の周波数を高めたときに出現する。
【0087】
通常の現像時には、像担持体1の画像部が現像部に突入してから脱出するまでに、現像が進行し(画像部に負帯電のトナーが付着し)、先述したように突入時にはトナー電流は正負差し引き負(未平衡状態、現像進行中)であったものが、脱出時には正負ほぼ同等(平衡状態)に近くなり、現像は飽和状態となる。
【0088】
システム速度の向上に応じて、上記平衡状態に速く到達させるために現像バイアス電圧の周波数を高めても、それに対するレスポンスが付いていかないことから上記位相のズレが生ずる。
【0089】
この位相のズレの大きさを調べることで、現像がどれだけ速く平衡状態に至るか、すなわち現像部を通過する短時間に現像が飽和状態になるかどうかを判別することができる。
【0090】
つまり、印加した現像バイアス電圧と、トナー飛翔によるトナー電流値の位相のズレが小さいときは、現像がより速く平衡状態に近づける状態にあり、印加したバイアスに対してロスがなく、忠実にトナーが移動していることを示唆する。しかし、検知されるトナー電流値が現像バイアス電圧の位相に対して遅れるようになると、現像が平衡状態に達するのも遅れる。
【0091】
現像の平衡状態とは、像担持体からトナー担持体上に飛翔する(回収)トナー量と、トナー担持体から像担持体へ飛翔する(現像)トナー量が等しくなっている状態である。この状態においては、静電コントラストが十分に埋められているため、現像・回収の位相が切り替わっても、トナー担持体側から像担持体側へのトナーの飛翔量と、像担持体側からトナー担持体側へのトナーの飛翔量が等しく、常に一定量のトナーが像担持体上に残る。このような平衡状態にあるときは、現像特性は安定しており、種々のノイズに対しても安定した画像濃度を得ることができる。
【0092】
(現像バイアス電圧とトナー電流値との位相ズレ)
本実施形態に係る画像形成装置では、現像部での現像が速やかに平衡状態に到達し、システム速度が速くなっても安定した画像濃度が得られるように、以下の機能を有する。
【0093】
(1)現像バイアス電源30により、像担持体1と対向する現像部においてトナーを飛翔させ、現像するための所定の高周波を有する現像バイアス電圧をトナー担持体20に印加し、
(2)トナー電流検知手段32により、現像部におけるトナー飛翔によるトナー電流値を検知し、
(3)現像バイアス制御手段33により、現像バイアス電圧と、トナー電流検知手段32により検知されたトナー電流値との位相ズレが最小となるように現像バイアス条件を設定制御する。
【0094】
但し、現像バイアス条件とは、現像バイアス電源30の印加する現像バイアス電圧の設定であり、所定の高周波を有する交番電圧の直流成分Vdc、ピーク間電圧Vpp、そしてデューティ比の少なくとも1つであることが好ましい。
【0095】
位相のズレの大きさ(を示す特性値)を調べて、位相ズレが最小となるように現像バイアス条件を設定制御する概略手順例については、後述する。
【0096】
以下にまず、現像バイアス電圧とトナー電流値との位相ズレの大きさを示す特性値の定義について、位相のズレを検知し、算出する方法の例1から例5を、図6から図10を用いて説明する。
【0097】
以下の説明においては、位相のズレを示す特性値を定義するのに、トナー電流値が正となるトナー回収側領域(トナー担持体側へトナー移動する領域)を用いた。もちろん、トナー電流値が負となるトナー現像側領域(像担持体側へトナー移動する領域)を用いてもかまわない。
【0098】
なお、像担持体表面電位は画像部電位として0Vと設定したが、背景部電位に近い所定の電位を設定してもかまわない。
【0099】
問題となるのは相対的な位相のズレの大小関係を代表する特性値を得ることであり、上記の条件設定は任意で同様の効果(平衡状態に達する速さとの相関関係)を表すことができる。
【0100】
<位相ズレの算出方法例1>
図6は、現像バイアス電圧とトナー電流値の位相のズレの算出方法例1の概略説明図である。L1は、現像バイアス電圧(左側縦目盛り参照)を示し、L2はトナー電流値(右側縦目盛り参照)を示す。横軸は時間である。
【0101】
この算出方法例1は、位相のズレを示す特性値を(グラフの)トナー回収領域(上述したように現像領域でもよい)の面積から検出する方法である。
【0102】
図6に示すように、像担持体1側からトナー担持体20側へトナーが回収される方向に現像バイアス電圧が切り替わるポイントをa点とし、3〜10μsecごとに検出されるトナー電流値の正の領域(トナー回収側)の面積(積分値)を半分にする点をb点と定義する。
【0103】
a点以後、トナーの飛翔に伴うトナー電流値が正で検出されてからb点までの面積をS1、b点からトナーの飛翔に伴うトナー電流値が負として検出される直前までの面積をS2とすると、S1=S2である。
【0104】
このa点とb点の時間差を位相ズレを示す特性値とする。
【0105】
なおここでは、トナー回収時(像担持体1からトナー担持体20へトナーが飛翔する区間)の電流値の積分値を基準にしているが、現像側(トナー担持体20から像担持体1へトナーが飛翔する区間)の電流値の積分値でも差し支えない。
【0106】
また、図5から図10においては、現像時に印加する現像バイアス電圧として矩形波の電圧を用いているが、ステップ波形状、ブランクパルス形状、台形形状など、異なる形状の波形でもかまわない。
【0107】
Vpp、Vdc、デューティ比などの種々の現像バイアス条件を変えて、a点とb点の差(位相ズレを示す特性値)が最も小さくなる現像バイアス条件を探し、設定するよう制御すると、より平衡に近い現像状態に速やかに導かれ、より安定した現像特性が得られるようになる。
【0108】
従って、この位相のズレを最小化することで、種々の変動(Ds、トナー搬送量、トナー帯電量)に対して安定した画像濃度を出すことができる現像バイアス条件を設定することができる。
【0109】
<位相ズレの算出方法例2>
図7は、現像バイアス電圧とトナー電流値の位相のズレの算出方法例2の概略説明図である。L1は、現像バイアス電圧(左側縦目盛り参照)を示し、L2はトナー電流値(右側縦目盛り参照)を示す。横軸は時間である。
【0110】
この算出方法例2は、位相のズレを示す特性値をトナー回収領域(現像領域でもよい)のピークから検知する方法である。
【0111】
図7に示すように、像担持体1側からトナー担持体20側へトナーが回収される方向に現像バイアス電圧が切り替わるポイントをa点とし、その後、トナー電流値を3〜10μsecごとにI(1)、I(2)・・・とサンプリングしていく。
【0112】
このときのトナー電流値I(n)が、
I(n)<I(n+1) かつ I(n+1)>I(n+2)
の条件を満たすときに、I(n+1)のポイントをトナー電流値のピーク(b点)として認識する。
【0113】
このa点とb点の時間差を位相ズレを示す特性値とする。
【0114】
この、a点とb点の差(位相ズレを示す特性値)が最小値になるように、現像バイアス条件(Vpp、Vdc、デューティ比など)をフィードバック制御する。この方法により、現像はより平衡に近い現像状態に速やかに導かれ、より安定した現像特性が得られるようになる。
【0115】
また、b点と、トナー担持体20側から像担持体1側へトナーが現像される方向に現像バイアス電圧が切り替わるポイント(a’点)とb点の差が最大になるように、現像バイアス条件をフィードバック制御する方法でもかまわない。
【0116】
<位相ズレの算出方法例3>
図8は、現像バイアス電圧とトナー電流値の位相のズレの算出方法例3の概略説明図である。L1は、現像バイアス電圧(左側縦目盛り参照)を示し、L2はトナー電流値(右側縦目盛り参照)を示す。横軸は時間である。
【0117】
この算出方法例3は、位相のズレを示す特性値をトナー電流値の正負の切り替わりポイントから検知する方法である。
【0118】
図8に示すように、像担持体1側からトナー担持体20側へトナーが回収される方向に現像バイアス電圧が切り替わるポイントをa点とし、その後、トナー電流値を3〜10μsecごとにI(1)、I(2)・・・とサンプリングしていく。
【0119】
このとき、電流値I(n)が
I(n)>0 かつ I(n+1)<0
の条件を満たすときの時間(例えばI(n)の時間とI(n+1)の時間の中央値)をトナー電流値の正負の切り替わりポイント(b点)として認識する。
【0120】
このa点とb点の時間差を位相ズレを示す特性値とする。
【0121】
この、a点とb点の差(位相ズレを示す特性値)が最小値になるように、現像バイアス条件(Vpp、Vdc、デューティ比など)をフィードバック制御する。この方法により、現像はより平衡に近い現像状態に速やかに導かれ、より安定した現像特性が得られるようになる。
【0122】
<位相ズレの算出方法例4>
図9は、現像バイアス電圧とトナー電流値の位相のズレの算出方法例4の概略説明図である。L1は、現像バイアス電圧(左側縦目盛り参照)を示し、L2はトナー電流値(右側縦目盛り参照)を示す。横軸は時間である。
【0123】
この算出方法例4は、位相のズレを示す特性値をトナー回収領域(現像領域でもよい)の検出電流値の積分値から推定する方法(1)である。
【0124】
図9に示すように、像担持体1側からトナー担持体20側へトナーが回収される方向に現像バイアス電圧が切り替わるポイントをa点とし、その後、正の値で検出されるトナー電流値を3〜10μsecごとにI(1)、I(2)・・・とサンプリングしていく。
【0125】
所定のポイント(例えば、トナーが現像される方向に現像バイアス電圧が切り替わるポイントa’点)までのトナー電流値の積分値(S1)を算出する。
【0126】
この積分値(S1)を位相のズレの逆(小ささ)を示す特性値として、S1が最大となるように、現像バイアス条件(Vpp、Vdc、デューティ比など)をフィードバック制御する。この方法により、現像はより平衡に近い現像状態に速やかに導かれ、より安定した現像特性が得られるようになる。
【0127】
<位相ズレの算出方法例5>
図10は、現像バイアス電圧とトナー電流値の位相のズレの算出方法例5の概略説明図である。L1は、現像バイアス電圧(左側縦目盛り参照)を示し、L2はトナー電流値(右側縦目盛り参照)を示す。横軸は時間である。
【0128】
この算出方法例5は、位相のズレを示す特性値をトナー回収領域(現像領域でもよい)の検出電流値の積分値から推定する方法(2)である。
【0129】
図10に示すように、トナー担持体20側から像担持体1側へトナーが現像される方向に現像バイアス電圧が切り替わるポイント(a’点)から、その後、なお正の値で検出されるトナー電流値を3〜10μsecごとにI(1)、I(2)・・・とサンプリングしていく。
【0130】
トナー電流値が負に切り替わるポイント(b点)までのトナー電流値の積分値(S2)を算出する。
【0131】
この積分値(S2)を位相のズレを示す特性値として、S2が最小となるように、現像バイアス条件(Vpp、Vdc、デューティ比など)をフィードバック制御する。この方法により、現像はより平衡に近い現像状態に速やかに導かれ、より安定した現像特性が得られるようになる。
【0132】
(現像バイアス条件設定処理)
上述したような位相のズレの検出方法により、
(1)現像バイアス電源30により印加された高周波現像バイアス電圧の現像バイアス条件(Vpp、Vdc、デューティ比など)と、
(2)トナー電流検知手段32により検知されたトナー電流値の変化から、
(3)現像バイアス制御手段33により位相のズレを示す特性値を検出し、位相のズレを示す特性値を最小とするように現像バイアス条件(Vpp、Vdc、デューティ比など)を設定制御する。
【0133】
この具体的な処理手順の例を以下に述べる。なお、位相のズレを示す特性値を位相のズレと称する。
【0134】
<手順例1>
図11は、検出した位相のズレを現像バイアス条件にフィードバック制御する概略手順例1を示すフローチャートである。図11を用いて、現像バイアス条件設定処理の手順例を説明する。
【0135】
設定制御を開始すると、まずステップS11で、現像部のトナー飛翔による電流値(トナー電流値)を検出する。
【0136】
詳細には、現像バイアス電源30により、現状の現像バイアス条件でトナーを担持するトナー担持体20に所定の高周波現像バイアス電圧を印加し、トナー電流検知手段32により、高周波現像バイアス電圧に対応する像担持体1との間のトナー電流の変化を検知する。
【0137】
次いで、ステップS12では、現像バイアス制御手段33により、印加した現像バイアス電圧と検出したトナー電流値との位相のズレを計算する。
【0138】
位相のズレの計算は、既述した位相ズレの検出方法などに従って行う。
【0139】
ステップS13では、現像バイアス制御手段33により、位相のズレが最小化されているかどうかを判定する。
【0140】
判定基準は最小条件を求める公知の手法を用いればよい。例えば予めデータを取っておき所定の値以下になれば最小と見なす、あるいは条件の変化方向を定めておき、条件変化による値の減少が見られなくなれば最小と見なす等々、任意の判定基準を設定することができる。
【0141】
ステップS13で位相のズレが最小化されていると判定した場合(ステップS13;Yes)、ステップS14を実行する。すなわち、現像バイアス条件を現状の条件で決定し、現像バイアス条件設定制御の処理は終了する。
【0142】
ステップS13で位相のズレがまだ最小化されていないと判定した場合(ステップS13;No)、ステップS15を実行する。すなわち、現像バイアス制御手段33により、現像バイアス条件を現状の条件から所定の方向に変更する。
【0143】
現像バイアス条件を変更した上で、最初のステップS11から上記処理手順を繰り返す。ステップS13でYes判定が出て、現像バイアス条件設定制御の処理が終了するまで、ステップS11からステップS15のループは繰り返される。
【0144】
以上で手順例1の説明を終わる。
【0145】
<手順例2>
図12は、検出した位相のズレを現像バイアス条件にフィードバック制御する概略手順例2を示すフローチャートである。図12を用いて、キッカーパルスを付加した現像バイアス条件設定処理の手順例2を説明する。
【0146】
手順例2は、手順例1と、設定制御する現像バイアス条件としてキッカーパルスを付加した点が異なる。図13にキッカーパルスKを付加した現像バイアス電圧の例を示す。
【0147】
手順例1では、現像バイアス条件としてVpp、Vdc、デューティ比の少なくとも1つを指定したが、さらにその現像バイアス電圧、すなわち所定の高周波を有する交番電圧にパルス状の電圧(キッカーパルス)を付加することも好ましい。
【0148】
その場合、現像バイアス条件は、パルス状の電圧(キッカーパルス)の波形、パルス時間、そしてパルスの電位差の少なくとも1つを含むことが望ましい。位相のズレをより顕著に検出することが期待できる。
【0149】
以下に、キッカーパルスを付加した場合の現像バイアス条件設定処理の手順として、手順例2を説明する。
【0150】
設定制御を開始すると、まずステップS21で、現像部のトナー飛翔による電流値(トナー電流値)を検出する。
【0151】
詳細には、現像バイアス電源30により、既に設定済みの現像バイアス条件(Vpp、Vdc、デューティ比など)に初期条件として設定したキッカーパルスを付加して、トナーを担持するトナー担持体20に所定の高周波現像バイアス電圧を印加する。そしてトナー電流検知手段32により、キッカーパルスを付加した高周波現像バイアス電圧に対応する像担持体1との間のトナー電流の変化を検知する。
【0152】
次いで、ステップS22では、現像バイアス制御手段33により、印加した現像バイアス電圧と検出したトナー電流値との位相のズレを計算する。
【0153】
位相のズレの計算は、既述した位相ズレの検出方法などに従って行う。
【0154】
ステップS23では、現像バイアス制御手段33により、位相のズレが最小化されているかどうかを判定する。
【0155】
判定基準は手順例1の場合と同様、最小条件を求める公知の手法を用いればよい。
【0156】
ステップS23で位相のズレが最小化されていると判定した場合(ステップS23;Yes)、ステップS24を実行する。すなわち、キッカーパルスを付加した現像バイアス条件を現状の条件で決定し、現像バイアス条件設定制御の処理は終了する。
【0157】
ステップS23で位相のズレがまだ最小化されていないと判定した場合(ステップS23;No)、ステップS25を実行する。すなわち、現像バイアス制御手段33により、現像バイアス条件のうちキッカーパルスの条件を現状の条件から所定の方向に変更する。
【0158】
現像バイアス条件のうちキッカーパルスの条件を変更した上で、最初のステップS21から上記処理手順を繰り返す。ステップS23でYes判定が出て、現像バイアス条件(キッカーパルスの条件)設定制御の処理が終了するまで、ステップS21からステップS25のループは繰り返される。
【0159】
以上で手順例2の説明を終わる。
【0160】
上述したように、本実施形態に係る画像形成装置によれば、現像部にトナーのみを搬送し、現像する方式において、現像部でのトナー飛翔電流値を検知し、印加した所定の高周波現像バイアスとの位相のズレを最小化するように現像バイアス条件を定める。
【0161】
これにより、プロセス速度がより高速化しても、現像部において現像状態がより平衡状態に近い状態で現像を終了させることができ、種々の部材等が変動してもより安定した画像濃度を得ることができる。
【0162】
なお、上述の実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0163】
1 感光体(像担持体)
2 現像装置
4 転写手段
5 クリーニング手段
6 帯電手段
7 露光手段
8 記録媒体
20 現像ローラ(トナー担持体)
21 トナー層(又は現像剤)規制部材
22a トナー搬送ローラ
22b 現像剤搬送ローラ(23と合わせて現像剤担持体)
23 磁性体ローラ
24 トナー(又は現像剤)搬送部材
25 トナー(又は現像剤)
26 トナー(又は現像剤)攪拌・搬送槽
30 現像バイアス電源
31 トナー搬送ローラ(又は現像剤担持体)のバイアス電源
32 トナー電流検知手段
33 現像バイアス制御手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を用いた画像形成装置に関する。特に、表面に静電潜像を形成する像担持体と、それに対向して配置され、表面に帯電したトナーを担持搬送し、像担持体上の静電潜像を該トナーで現像するトナー担持体を有する現像装置とを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスでは、感光体(像担持体)上の静電潜像を可視化する方式として、現像部に2成分の現像剤を搬送し、現像する2成分現像方式(現像ローラ(現像剤担持体)はトナーとキャリアを含む現像剤を現像部へ搬送し、トナーで現像する)と、トナーのみを搬送する1成分現像方式(現像ローラ(トナー担持体)はトナー1成分のみを現像部へ搬送し、現像する)が知られている。
【0003】
2成分現像方式では、トナーの荷電がキャリアとの接触・摩擦によるため、速やかに安定した荷電が得られる一方、システム速度を高速化すると、現像部に搬送されたキャリアが感光体に飛翔・付着しやすくなり、画像のノイズになる問題がある。
【0004】
1成分現像方式では、現像部にはキャリアが搬送されず、トナーのみを飛翔させて現像するため、感光体上へのキャリア付着による画像ノイズがない。しかし、その一方で、トナーは主に電荷注入やブレードなどの部材との摩擦により帯電するため、帯電性が不安定になる問題がある。
【0005】
また2成分の現像剤を用いてキャリアによるトナー帯電の安定性を確保しながら、現像ローラ(トナー担持体)上には現像剤担持体からトナーのみを供給し、現像部では1成分で現像するハイブリッド現像方式も開発されている。
【0006】
しかしながら、ハイブリッド現像方式も含めて、トナーのみを飛翔させて現像する1成分現像方式では、プロセス速度が高速化すると現像性が低下し、また種々のパラメータの変動により安定した画像濃度を得るのが困難になる。
【0007】
例えば、システム速度が遅い場合と比較して、感光体と現像ローラ間の距離(Ds)、現像ローラ上トナーの搬送量や帯電量などが変わると、現像特性が大きく変化する。これは、感光体表面電位と、現像ローラ表面電位が等しい状態(現像の平衡状態)になり現像が終了するのではなく、プロセス速度が高速化すると現像の平衡状態に達する前に潜像が現像ニップを通過してしまい、現像が平衡状態に至らないためである。
【0008】
したがって、種々の部材の特性が変化しても、安定した画像濃度を得るためには、現像部での現像状態がより平衡状態に近い状態で終了できるように、現像条件を設定する必要がある。
【0009】
より安定した画像濃度を得るために、現像状態を検知して現像条件等に反映する技術が開発されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0010】
特許文献1では、現像部でのトナー飛翔電流を検知する技術が開示されている。また特許文献2には、現像部において、トナー電流のみを検知できる、トナー電流検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平7−175282号公報
【特許文献2】特開2006−145504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
既述したように、プロセス速度が高速化すると、現像部におけるトナーの飛翔(往復)回数が減少し、現像性が低下する。
【0013】
特に、トナーのみによる1成分現像方式では、静電潜像を担持する感光体上の表面電位と現像ローラの表面電位が電位的に等しい状態(現像の平衡状態)に至る前に静電潜像が現像部を通過してしまうと、駆動時の部材の変動や、現像剤の搬送量・荷電量といった特性の変化に対して、安定した画像濃度が得られにくくなる。
【0014】
高速プロセスで現像性を低下させないためには、より高周波領域の現像バイアスの印加が望ましいが、一方では現像部での現像状態が平衡状態に到達しにくくなる。安定した画像濃度を得るためには、現像部での現像状態がより平衡状態に近い状態で終了できるように、現像条件を設定する必要がある。
【0015】
しかしながら、特許文献1に記載の、現像部でのトナー飛翔電流を検知する技術を用いても、トナーの飛翔電流値だけからは現像が平衡状態に対してどういう状況であるか判定することができず、現像バイアス条件への反映には不十分である。また、高速プロセスにおいてより高周波数領域の現像バイアスを印加したときの問題についても考慮されておらず、トナーの飛翔電流値から現像の平衡状態について判断することができない。
【0016】
また、特許文献2には、現像部において、トナー電流のみを検知できる、トナー電流検出装置が開示されているが、やはりトナー電流の測定のみでは、現像が平衡状態に対してどういう状況であるか判定することができず、現像バイアス条件への反映には不十分である。
【0017】
本発明は、上記の技術的課題に鑑みてなされたものである。
【0018】
本発明の目的は、現像部にトナーのみを搬送し、現像する方式の画像形成装置において、プロセス速度がより高速化しても、現像部において現像がより平衡状態に近い状態で終了させることができ、種々の部材等が変化してもより安定した画像濃度を得ることができる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有するものである。
【0020】
1.表面に形成された静電潜像を担持する像担持体と、
表面に帯電したトナーを担持搬送し、対向して配置された前記像担持体上の静電潜像を該トナーで現像するトナー担持体を有する現像装置と、
前記トナー担持体に、前記像担持体と対向する現像部においてトナーを飛翔させ、現像するための現像バイアス電圧を印加する現像バイアス電源と、
前記現像バイアス電源による現像バイアス電圧の印加条件である現像バイアス条件を設定する現像バイアス制御手段と、
前記現像部におけるトナー飛翔によるトナー電流値を検知するトナー電流検知手段と、を有し、
前記現像バイアス電源による現像バイアス電圧は、所定の高周波を有する交番電圧であり、
前記現像バイアス制御手段は、
前記現像バイアス電圧と、前記トナー電流検知手段により検知されたトナー電流値との位相ズレが最小となるように前記現像バイアス条件を制御する
ことを特徴とする画像形成装置。
【0021】
2.前記現像バイアス条件は、所定の高周波を有する交番電圧の直流成分Vdc、ピーク間電圧Vpp、そしてデューティ比の少なくとも1つである
ことを特徴とする前記1に記載の画像形成装置。
【0022】
3.前記現像バイアス電源による現像バイアス電圧は、前記所定の高周波を有する交番電圧にパルス状の電圧を付加したものであり、
前記現像バイアス条件は、前記パルス状の電圧の波形、パルス時間、そしてパルスの電位差の少なくとも1つを含む
ことを特徴とする前記1に記載の画像形成装置。
【0023】
4.前記現像装置は、
表面に前記トナーとキャリアとを含む現像剤を担持搬送し、対向して配置された前記トナー担持体に前記現像剤中の前記トナーを供給する現像剤担持体を有する
ことを特徴とする前記1から3の何れか1項に記載の画像形成装置。
【0024】
5.前記現像装置は、複数の前記トナー担持体を有し、
前記現像バイアス制御手段は、
複数の前記トナー担持体を一括して、またはそれぞれのトナー担持体毎に、
前記現像バイアス電圧と、前記トナー電流検知手段により検知されたトナー電流値との位相ズレが最小となるように前記現像バイアス条件を制御する
ことを特徴とする前記1から4の何れか1項に記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る画像形成装置によれば、現像部にトナーのみを搬送し、現像する方式において、現像部でのトナー飛翔電流値を検知し、印加した所定の高周波現像バイアスとの位相のズレを最小化するように現像バイアス条件を定める。
【0026】
これにより、プロセス速度がより高速化しても、現像部において現像状態がより平衡状態に近い状態で現像を終了させることができ、種々の部材等が変動してもより安定した画像濃度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る画像形成装置の概略構成例1を示す構成図である。
【図2】本発明に係る画像形成装置の概略構成例2を示す構成図である。
【図3】本発明に係る画像形成装置の概略構成例3を示す構成図である。
【図4】本発明に係る画像形成装置の概略構成例4を示す構成図である。
【図5】現像バイアス電圧と現像トナーの飛翔に伴う電流値の関係の例を示す概略図である。
【図6】現像バイアス電圧と現像トナーの飛翔に伴う電流値の位相ズレの算出方法例1の概略説明図である。
【図7】現像バイアス電圧と現像トナーの飛翔に伴う電流値の位相ズレの算出方法例2の概略説明図である。
【図8】現像バイアス電圧と現像トナーの飛翔に伴う電流値の位相ズレの算出方法例3の概略説明図である。
【図9】現像バイアス電圧と現像トナーの飛翔に伴う電流値の位相ズレの算出方法例4の概略説明図である。
【図10】現像バイアス電圧と現像トナーの飛翔に伴う電流値の位相ズレの算出方法例5の概略説明図である。
【図11】検出した位相のズレを現像バイアス条件にフィードバック制御する概略手順例1を示すフローチャートである。
【図12】検出した位相のズレを現像バイアス条件にフィードバック制御する概略手順例2を示すフローチャートである。
【図13】キッカーパルスを付加した現像バイアス電圧の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る画像形成装置の実施形態について図1から図13を用いて説明する。
【0029】
(画像形成装置の構成)
図1から図4は、本発明に係る画像形成装置の概略構成例1から4を、それぞれ示す構成図である。図1から図4を用いて本実施形態の画像形成装置の構成例1から4を説明する。但し、構成例1から4の違いは、それぞれ現像装置の構成が異なるものである。
【0030】
<構成例1>
図1は概略構成例1を示す構成図である。
【0031】
図1の画像形成装置は、以下の構成要素を含んでいる。すなわち、感光体(像担持体)1、現像ローラ(トナー担持体)20、トナー層規制部材21a、トナー搬送ローラ22a、トナー搬送部材24a、トナー25a、トナー攪拌・搬送槽26a、補給トナー27、トナー補給部28、現像バイアス電源30、トナー搬送ローラのバイアス電源31、トナー電流検知手段32、現像バイアス制御手段33、感光体上のトナー濃度検知手段34、転写手段4、クリーニング手段5、帯電手段6、露光手段7、記録媒体8が図1に示されている。
【0032】
感光体1は静電潜像担持体であり、帯電手段6により一定の表面電位(Vo)が与えられる。その後、露光手段7により、デジタル画像処理部(不図示)からの画像信号に応じて変調されたレーザーが照射され、静電潜像が形成される。
【0033】
感光体と一定のギャップをもって配置された現像ローラ20上のトナーが現像バイアス電圧の印加によって感光体1方向へ移動することで、感光体1の静電潜像はトナー像として可視化される。
【0034】
その後、このトナー像は、転写手段4により記録媒体8に転写された後、図示しない定着装置で定着される。感光体1は、転写手段4通過後、クリーニング手段5によりクリーニングされ、再び、帯電手段6に搬送される。
【0035】
図1では、感光体1から直接、記録媒体8にトナー像が転写されているが、中間転写体に一旦転写された後、他の色のトナー像を重ねて、記録媒体8に転写される形態でも差し支えない。
【0036】
現像装置2では、トナー搬送部材24aにより、トナー補給部28から補給されたトナー25aがトナー搬送ローラ22aへ搬送される。トナー搬送ローラ22a上のトナー25aは、トナー層規制部材21bにより規制される。トナー搬送ローラ22aは現像ローラ20に接触して配置されている。
【0037】
各ローラには、バイアス電源30、31によりバイアス電圧が印加され、トナー搬送ローラ22a上のトナーは現像ローラ20へと供給される。また、現像後、現像ローラ20上のトナーはトナー搬送ローラ22aにより回収される。
【0038】
現像ローラ20には、プロセス速度に応じた所定の高周波を有する交番電圧が現像バイアス電圧として現像バイアス電源30により印加される。現像ローラ20上に搬送されたトナーは、印加された現像バイアス電圧による電界で飛翔(往復移動)し、感光体1上の静電潜像を可視化する。
【0039】
このトナーの飛翔を介して、感光体1と現像ローラ20間にはトナー電流(交番電流)が流れる。この電流値の変化はトナー電流検知手段32により検知される。
【0040】
濃度検知手段34及びトナー電流検知手段32からの結果に基づいて、目的の画像濃度を出し、かつ現像がより平衡状態に近い状態になるよう、現像バイアス制御手段33により適切な現像バイアスが印加されるように現像バイアス条件が制御される。但し、濃度検知手段34は、必ずしも制御に用いなくてもよい。
【0041】
現像バイアス条件の制御についての詳細は後述する。
【0042】
<構成例2>
図2は概略構成例2を示す構成図である。
【0043】
図2の画像形成装置は、構成例1と同様の構成要素を含んでいる。異なるのは以下のものである。すなわち、現像装置2として、現像ローラ(トナー担持体)20、現像剤規制部材21b、現像剤搬送ローラ22b、磁性体ローラ23(22bと23を合わせて現像剤担持体22と称する)、現像剤搬送部材24b、現像剤25b、現像剤攪拌・搬送槽26bを有している。
【0044】
その他の補給トナー27、トナー補給部28、現像バイアス電源30、現像剤担持体のバイアス電源31、トナー電流検知手段32、現像バイアス制御手段33、感光体上のトナー濃度検知手段34、そして感光体(像担持体)1、転写手段4、クリーニング手段5、帯電手段6、露光手段7、記録媒体8が、図1同様に示されている。
【0045】
構成例2の画像形成装置が構成例1と異なる点を説明する。
【0046】
図2の現像装置2は、1成分現像方式と2成分現像方式を組み合わせた、所謂ハイブリッド現像装置である。トナーとキャリアを磁気ブラシ状に担持・回転させ、この磁気ブラシローラ(現像剤担持体)上から現像ローラ(トナー担持体)上へ、DCあるいはDCにACを重畳したバイアスを印加することでトナーのみを供給し、トナーを担持した現像ローラと静電潜像(感光体)とを対抗させ、潜像を可視化する。
【0047】
図2中の22bは現像剤搬送ローラ、23は磁性体ローラである。以下、現像剤搬送ローラ22bと磁性体ローラ23をあわせてマグネットローラ(現像剤担持体22)と呼ぶ。
【0048】
ハイブリッド現像方式では、1成分現像方式と2成分現像方式のそれぞれのメリットが活かされる。
【0049】
まず、現像剤担持体へトナーを補給・搬送する部分では、キャリアを用いることで、電界で飛翔させるために安定した荷電量をトナーに与えることができる。また、現像部においては、1成分現像であることから、2成分現像のデメリットであるキャリア付着を回避できる。
【0050】
以上の点から、システム速度を高速化しても、キャリア付着などのノイズが少なく、安定した画像濃度を得ることができる。
【0051】
画像形成の動作は、構成例1と同様である。現像に関わる動作についてのみ説明する。
【0052】
図2の現像装置2では、現像剤攪拌・搬送部材24bにより、トナー補給部28から補給されたトナーが現像剤25b中でキャリアと混ぜられて帯電し、キャリアとともに現像剤担持体22へ搬送される。
【0053】
現像剤担持体22上の現像剤25bは、現像剤規制部材21bにより規制される。現像剤担持体22と現像ローラ(トナー担持体)20は、一定のギャップを持って配置されている。
【0054】
各々のローラに、バイアス電源30、31によりバイアス電圧が印加され、現像剤担持体22上の2成分現像剤のうちトナーのみが現像ローラ20へ供給される。
【0055】
現像ローラ20には、プロセス速度に応じた所定の高周波を有する交番電圧が現像バイアス電圧として現像バイアス電源30により印加される。現像ローラ20上に搬送されたトナーは、印加された現像バイアス電圧による電界で飛翔(往復移動)し、感光体1上の静電潜像を可視化する。
【0056】
このトナーの飛翔を介して、感光体1と現像ローラ20間にはトナー電流(交番電流)が流れる。この電流値の変化をトナー電流検知手段32が検知する。
【0057】
構成例1と同様に、濃度検知手段34及びトナー電流検知手段32からの結果に基づいて、目的の画像濃度を出し、かつ現像がより平衡状態に近い状態になるよう、現像バイアス制御手段33により適切な現像バイアスが印加されるように現像バイアス条件が制御される。なお、濃度検知手段34は、必ずしも制御に用いなくてもよい。
【0058】
現像バイアス条件の制御についての詳細は後述する。
【0059】
<構成例3>
図3は概略構成例3を示す構成図である。
【0060】
図3の画像形成装置は、構成例1と同様の構成要素を含んでいる。異なるのは、現像ローラ(トナー担持体)20を2本有している点のみである。
【0061】
2本のトナー担持体は、図に示すように何れもが像担持体1、及び現像剤担持体22の両方と、それぞれ対向するように配置され、それぞれが構成例1と同様の機能動作を行う。従って説明は省略する。
【0062】
<構成例4>
図4は概略構成例4を示す構成図である。
【0063】
図4の画像形成装置は、構成例2と同様に、現像装置2としてハイブリッド現像装置を備えており、構成例2と同様の構成要素を含んでいる。異なるのは、現像ローラ(トナー担持体)20を2本有している点のみである。
【0064】
2本のトナー担持体は、図に示すように何れもが像担持体1、及び現像剤担持体22の両方と、それぞれ対向するように配置され、それぞれが構成例2と同様の機能動作を行う。従って説明は省略する。
【0065】
以上、本実施形態に係る画像形成装置の概略構成例1から4を述べてきたが、構成例1及び3が1成分現像方式であり、構成例2及び4がハイブリッド現像方式である。構成例1及び2は単数の現像ローラ(トナー担持体)を備え、構成例3及び4は複数の現像ローラ(トナー担持体)を備えている。
【0066】
何れも現像ローラ(トナー担持体)上ではトナーのみが搬送され、像担持体上の潜像の現像に供される。
【0067】
以下の実施形態の説明では、構成例2の単数の現像ローラ(トナー担持体)を備えたハイブリッド現像方式の画像形成装置を想定する。もちろん他の構成例においても同様の説明が適用できる。
【0068】
(現像剤について)
ハイブリッド現像用として、トナーとキャリアを含む任意の2成分現像剤を使用することができる。
【0069】
トナーとしては、負帯電のトナーを用いた。もちろん、正帯電するトナーでもかまわない。トナーを製造するにあたっては、一般に使用されている公知の方法で製造することができる。例えば、粉砕法、乳化重合法、懸濁重合法等を用いて製造することができる。
【0070】
キャリアとしては、特に限定されず、一般に使用されている公知のキャリアを使用することができる。バインダー型キャリアやコート型キャリアなどが使用できる。キャリア粒径としてはこれに限定されるものではないが、15〜100μmが好ましい。なお、現像剤中のトナー比率は8質量%とした。
【0071】
(現像部の設定条件)
本実施形態に係る画像形成装置では、現像装置2の備えるトナー担持体20と像担持体1との対向部(現像部)におけるトナー電流を検知し、トナー担持体20に印加する現像バイアス電圧の設定制御に反映している。それらの設定制御に関わる構成要素と設定条件について述べる。
【0072】
像担持体1としては、有機感光体を用いているが、これに限らない。アモルファス感光体等でもかまわない。
【0073】
トナー担持体20としては表面にアルマイト処理を施したアルミローラを用いた。
【0074】
また、像担持体1上に形成された静電潜像の背景部電位は−600V、画像部電位は−50Vに設定した。
【0075】
トナー担持体20には、振幅がPeak to Peakの電圧Vppで2.0kV、DC成分Vdcが−500V、Duty比50%、周波数5000Hzの矩形波の現像バイアス電圧を現像バイアス電源30により印加した。
【0076】
トナー担持体20と像担持体1の対向部の最近接部での距離(Dsとする)は250μmである。
【0077】
(トナー電流と現像バイアス条件)
上記条件で、トナー担持体20(現像バイアス電圧Vdc−500V)と像担持体1(画像部電位−50V〜0V)の対向部(現像部)で生ずるトナーの飛翔電流値をトナー電流検知手段32により、トナー電流として測定した。
【0078】
現像部では、現像バイアス電圧による交番電界により、トナーの飛翔(往復運動)が生じる。トナー電流値は、そのときトナー担持体20と像担持体1の間を流れる電流の変化をトナー電流検知手段32により測定したものである。
【0079】
トナー担持体20に印加されている現像バイアス電圧と像担持体1の表面電位(ほぼ0V)との差が正負交代するにつれ、トナーの往復移動が生じ、トナー電流値の正負も交代する。
【0080】
図5は、現像バイアス電圧と現像トナーの飛翔に伴う電流値の関係の例を示す概略図である。L1は、現像バイアス電圧(左側縦目盛り参照)を示し、L2はトナー電流値(右側縦目盛り参照)を示す。横軸は時間である。
【0081】
なおこの測定は、現像部にトナーを介在させた状態で、トナー担持体20と像担持体1とを静止して行った。もちろん、通常の現像時のように回転させて測定しても差し支えない。
【0082】
現像バイアス電圧L1の高周波の正負交代にともない、トナー電流値L2も正負交代し、高周波の交流波形となっている。図5でトナー電流値が正の領域では、トナーが像担持体1からトナー担持体20へと移動しており、トナー電流値が負の領域では、トナーがトナー担持体20から像担持体1へと移動している。
【0083】
図5では、正負のトナー電流を合わせると差し引きして負の電流が流れていることになり、トナーは結局トナー担持体20から像担持体1へと移動する(潜像を現像する)ことになる。
【0084】
図5のように像担持体1の表面電位が画像部(ほぼ0V)ではなく背景画像部(−600V)であったなら、正負のトナー電流は差し引きして同等、あるいはむしろ正の電流が流れていることになり、トナーは像担持体1側へは移動しない。
【0085】
(現像部でのトナー飛翔電流と平衡状態)
ここで重要な点は、図5に示すように、印加した現像バイアス電圧L1と、トナー飛翔によるトナー電流値L2に、位相のズレが見られることである。すなわち、現像バイアス電圧L1の変化に対してトナー電流値L2の変化に遅れが見られる。
【0086】
この位相のズレは、システム速度の向上に対して、トナーの飛翔性を向上させるために現像バイアス電圧の周波数を高めたときに出現する。
【0087】
通常の現像時には、像担持体1の画像部が現像部に突入してから脱出するまでに、現像が進行し(画像部に負帯電のトナーが付着し)、先述したように突入時にはトナー電流は正負差し引き負(未平衡状態、現像進行中)であったものが、脱出時には正負ほぼ同等(平衡状態)に近くなり、現像は飽和状態となる。
【0088】
システム速度の向上に応じて、上記平衡状態に速く到達させるために現像バイアス電圧の周波数を高めても、それに対するレスポンスが付いていかないことから上記位相のズレが生ずる。
【0089】
この位相のズレの大きさを調べることで、現像がどれだけ速く平衡状態に至るか、すなわち現像部を通過する短時間に現像が飽和状態になるかどうかを判別することができる。
【0090】
つまり、印加した現像バイアス電圧と、トナー飛翔によるトナー電流値の位相のズレが小さいときは、現像がより速く平衡状態に近づける状態にあり、印加したバイアスに対してロスがなく、忠実にトナーが移動していることを示唆する。しかし、検知されるトナー電流値が現像バイアス電圧の位相に対して遅れるようになると、現像が平衡状態に達するのも遅れる。
【0091】
現像の平衡状態とは、像担持体からトナー担持体上に飛翔する(回収)トナー量と、トナー担持体から像担持体へ飛翔する(現像)トナー量が等しくなっている状態である。この状態においては、静電コントラストが十分に埋められているため、現像・回収の位相が切り替わっても、トナー担持体側から像担持体側へのトナーの飛翔量と、像担持体側からトナー担持体側へのトナーの飛翔量が等しく、常に一定量のトナーが像担持体上に残る。このような平衡状態にあるときは、現像特性は安定しており、種々のノイズに対しても安定した画像濃度を得ることができる。
【0092】
(現像バイアス電圧とトナー電流値との位相ズレ)
本実施形態に係る画像形成装置では、現像部での現像が速やかに平衡状態に到達し、システム速度が速くなっても安定した画像濃度が得られるように、以下の機能を有する。
【0093】
(1)現像バイアス電源30により、像担持体1と対向する現像部においてトナーを飛翔させ、現像するための所定の高周波を有する現像バイアス電圧をトナー担持体20に印加し、
(2)トナー電流検知手段32により、現像部におけるトナー飛翔によるトナー電流値を検知し、
(3)現像バイアス制御手段33により、現像バイアス電圧と、トナー電流検知手段32により検知されたトナー電流値との位相ズレが最小となるように現像バイアス条件を設定制御する。
【0094】
但し、現像バイアス条件とは、現像バイアス電源30の印加する現像バイアス電圧の設定であり、所定の高周波を有する交番電圧の直流成分Vdc、ピーク間電圧Vpp、そしてデューティ比の少なくとも1つであることが好ましい。
【0095】
位相のズレの大きさ(を示す特性値)を調べて、位相ズレが最小となるように現像バイアス条件を設定制御する概略手順例については、後述する。
【0096】
以下にまず、現像バイアス電圧とトナー電流値との位相ズレの大きさを示す特性値の定義について、位相のズレを検知し、算出する方法の例1から例5を、図6から図10を用いて説明する。
【0097】
以下の説明においては、位相のズレを示す特性値を定義するのに、トナー電流値が正となるトナー回収側領域(トナー担持体側へトナー移動する領域)を用いた。もちろん、トナー電流値が負となるトナー現像側領域(像担持体側へトナー移動する領域)を用いてもかまわない。
【0098】
なお、像担持体表面電位は画像部電位として0Vと設定したが、背景部電位に近い所定の電位を設定してもかまわない。
【0099】
問題となるのは相対的な位相のズレの大小関係を代表する特性値を得ることであり、上記の条件設定は任意で同様の効果(平衡状態に達する速さとの相関関係)を表すことができる。
【0100】
<位相ズレの算出方法例1>
図6は、現像バイアス電圧とトナー電流値の位相のズレの算出方法例1の概略説明図である。L1は、現像バイアス電圧(左側縦目盛り参照)を示し、L2はトナー電流値(右側縦目盛り参照)を示す。横軸は時間である。
【0101】
この算出方法例1は、位相のズレを示す特性値を(グラフの)トナー回収領域(上述したように現像領域でもよい)の面積から検出する方法である。
【0102】
図6に示すように、像担持体1側からトナー担持体20側へトナーが回収される方向に現像バイアス電圧が切り替わるポイントをa点とし、3〜10μsecごとに検出されるトナー電流値の正の領域(トナー回収側)の面積(積分値)を半分にする点をb点と定義する。
【0103】
a点以後、トナーの飛翔に伴うトナー電流値が正で検出されてからb点までの面積をS1、b点からトナーの飛翔に伴うトナー電流値が負として検出される直前までの面積をS2とすると、S1=S2である。
【0104】
このa点とb点の時間差を位相ズレを示す特性値とする。
【0105】
なおここでは、トナー回収時(像担持体1からトナー担持体20へトナーが飛翔する区間)の電流値の積分値を基準にしているが、現像側(トナー担持体20から像担持体1へトナーが飛翔する区間)の電流値の積分値でも差し支えない。
【0106】
また、図5から図10においては、現像時に印加する現像バイアス電圧として矩形波の電圧を用いているが、ステップ波形状、ブランクパルス形状、台形形状など、異なる形状の波形でもかまわない。
【0107】
Vpp、Vdc、デューティ比などの種々の現像バイアス条件を変えて、a点とb点の差(位相ズレを示す特性値)が最も小さくなる現像バイアス条件を探し、設定するよう制御すると、より平衡に近い現像状態に速やかに導かれ、より安定した現像特性が得られるようになる。
【0108】
従って、この位相のズレを最小化することで、種々の変動(Ds、トナー搬送量、トナー帯電量)に対して安定した画像濃度を出すことができる現像バイアス条件を設定することができる。
【0109】
<位相ズレの算出方法例2>
図7は、現像バイアス電圧とトナー電流値の位相のズレの算出方法例2の概略説明図である。L1は、現像バイアス電圧(左側縦目盛り参照)を示し、L2はトナー電流値(右側縦目盛り参照)を示す。横軸は時間である。
【0110】
この算出方法例2は、位相のズレを示す特性値をトナー回収領域(現像領域でもよい)のピークから検知する方法である。
【0111】
図7に示すように、像担持体1側からトナー担持体20側へトナーが回収される方向に現像バイアス電圧が切り替わるポイントをa点とし、その後、トナー電流値を3〜10μsecごとにI(1)、I(2)・・・とサンプリングしていく。
【0112】
このときのトナー電流値I(n)が、
I(n)<I(n+1) かつ I(n+1)>I(n+2)
の条件を満たすときに、I(n+1)のポイントをトナー電流値のピーク(b点)として認識する。
【0113】
このa点とb点の時間差を位相ズレを示す特性値とする。
【0114】
この、a点とb点の差(位相ズレを示す特性値)が最小値になるように、現像バイアス条件(Vpp、Vdc、デューティ比など)をフィードバック制御する。この方法により、現像はより平衡に近い現像状態に速やかに導かれ、より安定した現像特性が得られるようになる。
【0115】
また、b点と、トナー担持体20側から像担持体1側へトナーが現像される方向に現像バイアス電圧が切り替わるポイント(a’点)とb点の差が最大になるように、現像バイアス条件をフィードバック制御する方法でもかまわない。
【0116】
<位相ズレの算出方法例3>
図8は、現像バイアス電圧とトナー電流値の位相のズレの算出方法例3の概略説明図である。L1は、現像バイアス電圧(左側縦目盛り参照)を示し、L2はトナー電流値(右側縦目盛り参照)を示す。横軸は時間である。
【0117】
この算出方法例3は、位相のズレを示す特性値をトナー電流値の正負の切り替わりポイントから検知する方法である。
【0118】
図8に示すように、像担持体1側からトナー担持体20側へトナーが回収される方向に現像バイアス電圧が切り替わるポイントをa点とし、その後、トナー電流値を3〜10μsecごとにI(1)、I(2)・・・とサンプリングしていく。
【0119】
このとき、電流値I(n)が
I(n)>0 かつ I(n+1)<0
の条件を満たすときの時間(例えばI(n)の時間とI(n+1)の時間の中央値)をトナー電流値の正負の切り替わりポイント(b点)として認識する。
【0120】
このa点とb点の時間差を位相ズレを示す特性値とする。
【0121】
この、a点とb点の差(位相ズレを示す特性値)が最小値になるように、現像バイアス条件(Vpp、Vdc、デューティ比など)をフィードバック制御する。この方法により、現像はより平衡に近い現像状態に速やかに導かれ、より安定した現像特性が得られるようになる。
【0122】
<位相ズレの算出方法例4>
図9は、現像バイアス電圧とトナー電流値の位相のズレの算出方法例4の概略説明図である。L1は、現像バイアス電圧(左側縦目盛り参照)を示し、L2はトナー電流値(右側縦目盛り参照)を示す。横軸は時間である。
【0123】
この算出方法例4は、位相のズレを示す特性値をトナー回収領域(現像領域でもよい)の検出電流値の積分値から推定する方法(1)である。
【0124】
図9に示すように、像担持体1側からトナー担持体20側へトナーが回収される方向に現像バイアス電圧が切り替わるポイントをa点とし、その後、正の値で検出されるトナー電流値を3〜10μsecごとにI(1)、I(2)・・・とサンプリングしていく。
【0125】
所定のポイント(例えば、トナーが現像される方向に現像バイアス電圧が切り替わるポイントa’点)までのトナー電流値の積分値(S1)を算出する。
【0126】
この積分値(S1)を位相のズレの逆(小ささ)を示す特性値として、S1が最大となるように、現像バイアス条件(Vpp、Vdc、デューティ比など)をフィードバック制御する。この方法により、現像はより平衡に近い現像状態に速やかに導かれ、より安定した現像特性が得られるようになる。
【0127】
<位相ズレの算出方法例5>
図10は、現像バイアス電圧とトナー電流値の位相のズレの算出方法例5の概略説明図である。L1は、現像バイアス電圧(左側縦目盛り参照)を示し、L2はトナー電流値(右側縦目盛り参照)を示す。横軸は時間である。
【0128】
この算出方法例5は、位相のズレを示す特性値をトナー回収領域(現像領域でもよい)の検出電流値の積分値から推定する方法(2)である。
【0129】
図10に示すように、トナー担持体20側から像担持体1側へトナーが現像される方向に現像バイアス電圧が切り替わるポイント(a’点)から、その後、なお正の値で検出されるトナー電流値を3〜10μsecごとにI(1)、I(2)・・・とサンプリングしていく。
【0130】
トナー電流値が負に切り替わるポイント(b点)までのトナー電流値の積分値(S2)を算出する。
【0131】
この積分値(S2)を位相のズレを示す特性値として、S2が最小となるように、現像バイアス条件(Vpp、Vdc、デューティ比など)をフィードバック制御する。この方法により、現像はより平衡に近い現像状態に速やかに導かれ、より安定した現像特性が得られるようになる。
【0132】
(現像バイアス条件設定処理)
上述したような位相のズレの検出方法により、
(1)現像バイアス電源30により印加された高周波現像バイアス電圧の現像バイアス条件(Vpp、Vdc、デューティ比など)と、
(2)トナー電流検知手段32により検知されたトナー電流値の変化から、
(3)現像バイアス制御手段33により位相のズレを示す特性値を検出し、位相のズレを示す特性値を最小とするように現像バイアス条件(Vpp、Vdc、デューティ比など)を設定制御する。
【0133】
この具体的な処理手順の例を以下に述べる。なお、位相のズレを示す特性値を位相のズレと称する。
【0134】
<手順例1>
図11は、検出した位相のズレを現像バイアス条件にフィードバック制御する概略手順例1を示すフローチャートである。図11を用いて、現像バイアス条件設定処理の手順例を説明する。
【0135】
設定制御を開始すると、まずステップS11で、現像部のトナー飛翔による電流値(トナー電流値)を検出する。
【0136】
詳細には、現像バイアス電源30により、現状の現像バイアス条件でトナーを担持するトナー担持体20に所定の高周波現像バイアス電圧を印加し、トナー電流検知手段32により、高周波現像バイアス電圧に対応する像担持体1との間のトナー電流の変化を検知する。
【0137】
次いで、ステップS12では、現像バイアス制御手段33により、印加した現像バイアス電圧と検出したトナー電流値との位相のズレを計算する。
【0138】
位相のズレの計算は、既述した位相ズレの検出方法などに従って行う。
【0139】
ステップS13では、現像バイアス制御手段33により、位相のズレが最小化されているかどうかを判定する。
【0140】
判定基準は最小条件を求める公知の手法を用いればよい。例えば予めデータを取っておき所定の値以下になれば最小と見なす、あるいは条件の変化方向を定めておき、条件変化による値の減少が見られなくなれば最小と見なす等々、任意の判定基準を設定することができる。
【0141】
ステップS13で位相のズレが最小化されていると判定した場合(ステップS13;Yes)、ステップS14を実行する。すなわち、現像バイアス条件を現状の条件で決定し、現像バイアス条件設定制御の処理は終了する。
【0142】
ステップS13で位相のズレがまだ最小化されていないと判定した場合(ステップS13;No)、ステップS15を実行する。すなわち、現像バイアス制御手段33により、現像バイアス条件を現状の条件から所定の方向に変更する。
【0143】
現像バイアス条件を変更した上で、最初のステップS11から上記処理手順を繰り返す。ステップS13でYes判定が出て、現像バイアス条件設定制御の処理が終了するまで、ステップS11からステップS15のループは繰り返される。
【0144】
以上で手順例1の説明を終わる。
【0145】
<手順例2>
図12は、検出した位相のズレを現像バイアス条件にフィードバック制御する概略手順例2を示すフローチャートである。図12を用いて、キッカーパルスを付加した現像バイアス条件設定処理の手順例2を説明する。
【0146】
手順例2は、手順例1と、設定制御する現像バイアス条件としてキッカーパルスを付加した点が異なる。図13にキッカーパルスKを付加した現像バイアス電圧の例を示す。
【0147】
手順例1では、現像バイアス条件としてVpp、Vdc、デューティ比の少なくとも1つを指定したが、さらにその現像バイアス電圧、すなわち所定の高周波を有する交番電圧にパルス状の電圧(キッカーパルス)を付加することも好ましい。
【0148】
その場合、現像バイアス条件は、パルス状の電圧(キッカーパルス)の波形、パルス時間、そしてパルスの電位差の少なくとも1つを含むことが望ましい。位相のズレをより顕著に検出することが期待できる。
【0149】
以下に、キッカーパルスを付加した場合の現像バイアス条件設定処理の手順として、手順例2を説明する。
【0150】
設定制御を開始すると、まずステップS21で、現像部のトナー飛翔による電流値(トナー電流値)を検出する。
【0151】
詳細には、現像バイアス電源30により、既に設定済みの現像バイアス条件(Vpp、Vdc、デューティ比など)に初期条件として設定したキッカーパルスを付加して、トナーを担持するトナー担持体20に所定の高周波現像バイアス電圧を印加する。そしてトナー電流検知手段32により、キッカーパルスを付加した高周波現像バイアス電圧に対応する像担持体1との間のトナー電流の変化を検知する。
【0152】
次いで、ステップS22では、現像バイアス制御手段33により、印加した現像バイアス電圧と検出したトナー電流値との位相のズレを計算する。
【0153】
位相のズレの計算は、既述した位相ズレの検出方法などに従って行う。
【0154】
ステップS23では、現像バイアス制御手段33により、位相のズレが最小化されているかどうかを判定する。
【0155】
判定基準は手順例1の場合と同様、最小条件を求める公知の手法を用いればよい。
【0156】
ステップS23で位相のズレが最小化されていると判定した場合(ステップS23;Yes)、ステップS24を実行する。すなわち、キッカーパルスを付加した現像バイアス条件を現状の条件で決定し、現像バイアス条件設定制御の処理は終了する。
【0157】
ステップS23で位相のズレがまだ最小化されていないと判定した場合(ステップS23;No)、ステップS25を実行する。すなわち、現像バイアス制御手段33により、現像バイアス条件のうちキッカーパルスの条件を現状の条件から所定の方向に変更する。
【0158】
現像バイアス条件のうちキッカーパルスの条件を変更した上で、最初のステップS21から上記処理手順を繰り返す。ステップS23でYes判定が出て、現像バイアス条件(キッカーパルスの条件)設定制御の処理が終了するまで、ステップS21からステップS25のループは繰り返される。
【0159】
以上で手順例2の説明を終わる。
【0160】
上述したように、本実施形態に係る画像形成装置によれば、現像部にトナーのみを搬送し、現像する方式において、現像部でのトナー飛翔電流値を検知し、印加した所定の高周波現像バイアスとの位相のズレを最小化するように現像バイアス条件を定める。
【0161】
これにより、プロセス速度がより高速化しても、現像部において現像状態がより平衡状態に近い状態で現像を終了させることができ、種々の部材等が変動してもより安定した画像濃度を得ることができる。
【0162】
なお、上述の実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0163】
1 感光体(像担持体)
2 現像装置
4 転写手段
5 クリーニング手段
6 帯電手段
7 露光手段
8 記録媒体
20 現像ローラ(トナー担持体)
21 トナー層(又は現像剤)規制部材
22a トナー搬送ローラ
22b 現像剤搬送ローラ(23と合わせて現像剤担持体)
23 磁性体ローラ
24 トナー(又は現像剤)搬送部材
25 トナー(又は現像剤)
26 トナー(又は現像剤)攪拌・搬送槽
30 現像バイアス電源
31 トナー搬送ローラ(又は現像剤担持体)のバイアス電源
32 トナー電流検知手段
33 現像バイアス制御手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に形成された静電潜像を担持する像担持体と、
表面に帯電したトナーを担持搬送し、対向して配置された前記像担持体上の静電潜像を該トナーで現像するトナー担持体を有する現像装置と、
前記トナー担持体に、前記像担持体と対向する現像部においてトナーを飛翔させ、現像するための現像バイアス電圧を印加する現像バイアス電源と、
前記現像バイアス電源による現像バイアス電圧の印加条件である現像バイアス条件を設定する現像バイアス制御手段と、
前記現像部におけるトナー飛翔によるトナー電流値を検知するトナー電流検知手段と、を有し、
前記現像バイアス電源による現像バイアス電圧は、所定の高周波を有する交番電圧であり、
前記現像バイアス制御手段は、
前記現像バイアス電圧と、前記トナー電流検知手段により検知されたトナー電流値との位相ズレが最小となるように前記現像バイアス条件を制御する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記現像バイアス条件は、所定の高周波を有する交番電圧の直流成分Vdc、ピーク間電圧Vpp、そしてデューティ比の少なくとも1つである
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記現像バイアス電源による現像バイアス電圧は、前記所定の高周波を有する交番電圧にパルス状の電圧を付加したものであり、
前記現像バイアス条件は、前記パルス状の電圧の波形、パルス時間、そしてパルスの電位差の少なくとも1つを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記現像装置は、
表面に前記トナーとキャリアとを含む現像剤を担持搬送し、対向して配置された前記トナー担持体に前記現像剤中の前記トナーを供給する現像剤担持体を有する
ことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記現像装置は、複数の前記トナー担持体を有し、
前記現像バイアス制御手段は、
複数の前記トナー担持体を一括して、またはそれぞれのトナー担持体毎に、
前記現像バイアス電圧と、前記トナー電流検知手段により検知されたトナー電流値との位相ズレが最小となるように前記現像バイアス条件を制御する
ことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項1】
表面に形成された静電潜像を担持する像担持体と、
表面に帯電したトナーを担持搬送し、対向して配置された前記像担持体上の静電潜像を該トナーで現像するトナー担持体を有する現像装置と、
前記トナー担持体に、前記像担持体と対向する現像部においてトナーを飛翔させ、現像するための現像バイアス電圧を印加する現像バイアス電源と、
前記現像バイアス電源による現像バイアス電圧の印加条件である現像バイアス条件を設定する現像バイアス制御手段と、
前記現像部におけるトナー飛翔によるトナー電流値を検知するトナー電流検知手段と、を有し、
前記現像バイアス電源による現像バイアス電圧は、所定の高周波を有する交番電圧であり、
前記現像バイアス制御手段は、
前記現像バイアス電圧と、前記トナー電流検知手段により検知されたトナー電流値との位相ズレが最小となるように前記現像バイアス条件を制御する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記現像バイアス条件は、所定の高周波を有する交番電圧の直流成分Vdc、ピーク間電圧Vpp、そしてデューティ比の少なくとも1つである
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記現像バイアス電源による現像バイアス電圧は、前記所定の高周波を有する交番電圧にパルス状の電圧を付加したものであり、
前記現像バイアス条件は、前記パルス状の電圧の波形、パルス時間、そしてパルスの電位差の少なくとも1つを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記現像装置は、
表面に前記トナーとキャリアとを含む現像剤を担持搬送し、対向して配置された前記トナー担持体に前記現像剤中の前記トナーを供給する現像剤担持体を有する
ことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記現像装置は、複数の前記トナー担持体を有し、
前記現像バイアス制御手段は、
複数の前記トナー担持体を一括して、またはそれぞれのトナー担持体毎に、
前記現像バイアス電圧と、前記トナー電流検知手段により検知されたトナー電流値との位相ズレが最小となるように前記現像バイアス条件を制御する
ことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−154263(P2011−154263A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16625(P2010−16625)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]