説明

画像形成装置

【課題】従来LEDヘッドの主走査幅誤差による主走査倍率の補正方法が提案されているが、あまり実用的なものはなく補正範囲は限定されたり、ドットを間引き/補間などで画像を形成するため出力した画像によっては不都合な現象(縦すじ、干渉、色味違いなど)が生じることがあったが、これらとは別の方法、構成で主走査倍率を補正できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】電子写真方式による画像形成装置で、像担持体上に光を照射して潜像を形成する露光装置がLEDアレイからなるLEDヘッドで、これを主走査方向に可動に支持し、主走査方向に往復動作をさせながら画像形成を行う。LEDヘッドは、往復動作の周期の1/2以下の時間で1ラインの露光を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を用いたレーザプリンタやデジタル複写機等の画像形成装置に用いられる、像担持体に潜像を形成する露光装置に関し、詳しくは、露光装置の主走査倍率の補正に関する。
【背景技術】
【0002】
LEDヘッドを用いた画像形成装置は、デジタル複写装置やプリンタ等の画像形成装置として広く知られている。例えば特許文献1では、LEDヘッドを移動させて画像形成することにより濃度むらを改善する画像形成装置が開示されている。また特許文献2には、LEDヘッドの主走査幅に対応させてLEDヘッドを感光体に対して傾ける調整を行なうことによって主走査倍率を補正する構成の画像形成装置が開示されている。さらに特許文献3には、LEDヘッドの主走査幅に対応させて内部クロックを可変とし、画像データから間引き/補間により点灯信号を作ることで主走査倍率を補正する構成の画像形成装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の従来技術においては、LEDヘッドの主走査幅誤差による主走査倍率の補正方法が示されているが、LEDヘッドが、例えばA4サイズ(210mm幅)に対して、±0.3mm程度の誤差を持っている場合、特許文献2に開示されている方法では0.3mmを補正するためにLEDヘッドを約11mm傾ける必要があり、あまり実用的ではなく補正範囲は限定される。また特許文献3に開示されている方法では、ドットを間引き/補間などで画像を形成するため出力した画像によっては不都合な現象(縦すじ、干渉、色味違いなど)が生じることがあった。
【0004】
そこで本発明においては、それらとは別の方法、構成で主走査倍率を補正できる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の画像装置のうち請求項1に係るものは、電子写真方式による画像形成装置であって、像担持体上に光を照射して潜像を形成する露光装置がLEDアレイからなるLEDヘッドであり、該LEDヘッドを主走査方向に可動に支持し、駆動手段により前記主走査方向に往復動作をさせながら画像形成を行うことを特徴とする。
【0006】
同請求項2に係るものは、請求項1に記載の画像形成装置において、前記LEDヘッドが、前記往復動作の周期の1/2以下の時間で1ラインの露光を行うことを特徴とする。
【0007】
同請求項3に係るものは、請求項1または2に記載の画像形成装置において、前記駆動手段が、前記LEDヘッドを駆動するための偏心カムを備えることを特徴とする。
【0008】
同請求項4に係るものは、請求項3に記載の画像形成装置において、前記偏心カムが円形カムであることを特徴とする。
【0009】
同請求項5に係るものは、請求項3に記載の画像形成装置において、前記偏心カムが非円形カムであることを特徴とする。
【0010】
同請求項6に係るものは請求項5に記載の画像形成装置において、前記非円形カムの形状が、反転する部分を除いた一定の範囲で前記LEDヘッドが略一定した移動速度が得られる形状であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、LEDヘッドの主走査倍率の補正が可能であり、良好な画像を出力できる画像形成装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】画像形成装置の概念的断面図
【図2】LEDヘッドの断面図
【図3】本発明の実施例1を示す概念図
【図4】本発明の実施例2を示す概念図
【図5】本発明の実施例における補正例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、像担持体上に光を照射して潜像を形成する露光装置がLEDアレイからなるLEDヘッドである電子写真方式を用いている画像形成装置において、LEDヘッドを主走査方向に可動に支持し、外部駆動装置によって主走査方向に往復動作をさせながら画像形成を行い、LEDヘッドの主走査倍率の補正を可能とするものである。
【0014】
また本発明は、前記のLEDヘッドの往復動作の周期の1/2以下の時間で1ラインの露光を行い、LEDヘッドの主走査倍率をより細かく補正が可能とするものである。
【実施例】
【0015】
<画像形成装置の概略説明>
図1は、本発明の適用対象となる画像形成装置の一例を示す概念的断面図である。図示の画像形成装置101は、複数の感光体102を備え、各感光体102には、回転方向の順に帯電装置103、露光装置104、現像装置105、転写装置106、クリーニング装置(不図示)がそれぞれ配設されている。
【0016】
帯電手段103は、ローラ状に形成された導電性ローラで、このローラに帯電バイアス電圧が電源装置から供給され、感光体102表面を一様に帯電させる。露光装置104は、それぞれの感光体102にひとつずつ配置され、画像データに基づいて、点灯/消灯するLED光を感光体102表面に照射し、感光体上に静電潜像を形成する。現像装置105は、感光体上に形成された静電潜像を現像剤(トナー)にて顕像化する。また転写装置106は、感光体上の顕像を感光体から転写する。クリーニング装置は、転写後に感光体102上に残留する現像剤を除去する。
【0017】
転写紙は、給紙手段107の給紙ローラ107aにより1枚ずつ分離されてレジストローラ107bに搬送され、更に上記の転写装置106に搬送される。
【0018】
図1は複数の感光体102上の画像を転写装置106に搬送された転写紙に順次転写することによって転写紙上で複数の画像を重ね合わせてカラー画像を得る画像形成装置の例であるが、画像を転写された転写紙は定着手段108に搬送され、トナー像を加熱・加圧定着され、上部の排紙ローラ109に搬送されて装置外部に排紙される。
【0019】
なおこの種の画像形成装置では、複数の感光体102を画像形成装置本体内に配置する際、等間隔に略一列に並べるのが一般的な構成である。
【0020】
現在、カラー画像形成のために、4つの色(黒(K)マゼンタ(M)シアン(C)イエロー(Y))を用いたプロセスが一般的であるが、最近ではカラー画像の色再現の向上のために更に多くの色を用いる画像形成プロセスも現われている。
【0021】
<作像装置とLEDヘッドの説明>
図2により作像装置とLEDヘッドについて説明する。
LEDヘッド1は所望の画素数(画像幅×画素密度)のLED素子2とその駆動回路3とLED素子2で発光した光を集光するレンズ4を持つデバイスであり、各LED素子2を画像信号に応じて発光させ、感光体上に潜像を形成する露光装置104である。
【0022】
レンズ4は、発光光量を効率よく確保するために開口数が大きく焦点距離が短い。そのため、LEDヘッド1を感光体102に近接(例えば感光体102から数mmの距離)させて設置しなければならない。具体的には複数のレンズ4を配列したものをひとつのレンズアレイとして筐体5に組み込んでいる。筐体5にはLEDヘッド1の実装時の位置決めに関する部品もしくは形状(穴、突起、平面など)が付いている。このLEDヘッド1に対して、電源や画像データに合わせた画像信号を供給するためのハーネスが結合される。
【0023】
図2にはレンズ4の上下にLED素子2で発光した光が感光体へ至る様子を模式的に描いている。
【0024】
<実施例1>
図3を参照して本発明の実施例1を説明する。
本実施例では、LEDヘッド1の主走査幅の誤差を次のように補正する。例として画素密度を600dpi、画像幅を210mmとする。このとき必要画素数は210/25.4・600=4960.6より4961ドットとする。実際のLEDヘッド1は画像幅より少し余裕を持って作られるので、例えば213±0.3mmなどとなり、210mmを下回ることはない。主走査倍率はLEDヘッド1のある区間の4961ドットの距離と210mmとの比率で算出される。主走査幅を4961ドットの距離で定義すると210±0.3mmなどとなり、210mmを下回ることもある。
【0025】
このようなLEDヘッド1を感光体102に対して位置決めする。LEDヘッド1の両端部に長穴11、感光体側に位置決めピン12を設け、両者を嵌合して主走査方向(矢印A)に移動可能に支持する(図3(A)参照)。LEDヘッド駆動装置21によりLEDヘッド1を主走査方向に往復移動させる。
【0026】
図3(B)の(a)、(b)は往復移動の最左点(a)と最右点(b)の状態を示している。最左点と最右点を移動する周期Tの1/2の間に、像担持体である感光体102に対して1ライン分の露光を行なう。駆動装置21はモータにより回転駆動される円板22にリンク23が付けられ、リンク23の他端をLEDヘッド1の筐体5に取付けている。円板が回転することでLEDヘッド1が図の左右方向(矢印B)に往復移動する。リンク23と反対側の端部では弾性部材24をLEDヘッドに接触し、押圧力を加えている。
【0027】
<実施例2>
図4を参照して本発明の実施例2を説明する。
本実施例では、LEDヘッド駆動装置21に偏心カムを用いている。図4(A)は円形カム31を、図5(B)は非円形カム32を用いた例である。いずれの構成でも、カム31、32を矢印C方向に回転させることにより、それに接触するLEDヘッド1を図の左右方向(矢印D方向)に往復移動させるが、カム31、32の形状の違いでLEDヘッド1の移動速度を変化させることができることがわかる。すなわち、円形のカム31は形状が簡単であるが移動速度は正弦波状に変化する。非円形のカム32は円形カム31に比べて形状はやや複雑であるが移動速度を略一定にすることができる。図5(A)はカム31の、図5(B)はカム32を用いた場合のLEDヘッド1の移動状態をグラフで簡単に示した図である。なお非円形カム32の形状は、図示の例では卵形あるいは楕円形とでもいうべき形状としてあるが、本発明で使用可能な非円形カムとしてはこの例の形状のものには限定されない。
【0028】
<補正の説明>
図5で、○○・・・で示したものがLED素子2である。左端のLED素子2から順に右の素子へと点灯制御するものとする。図3(B、C)や図4に示したように、LEDヘッド1が左にある状態と右にある状態があり、例えばLEDヘッド1の主走査幅が規定値より短い場合は、図でLEDヘッド1の左端位置が外側(より左側)にあるPの状態からLEDヘッド1の右端位置が外側(より右側)にある図中Qで示す位置での状態までの半周期E(図5(A))を選んで画像を形成する。これにより実際のLEDヘッド1の露光幅を広げた範囲での露光が可能となる。逆に規定値より長い場合は、図でLEDヘッド1の位置が内側にある半周期の位置Fを選んで画像を形成する。これにより実際のLEDヘッド1の露光幅を狭めた範囲での露光が可能となる。
【0029】
図5(B)では、非円形カム32の形状が反転する部分を除いたSからTの範囲Gで略一定した移動速度が得られる。LEDヘッド1の主走査幅の誤差はそれぞれ異なるので、誤差の大きさに合わせて周期Tの1/2以下の時間で露光を完了することで主走査幅を適宜補正することができる。
【0030】
それぞれのLED素子2の点灯時間は像担持体である感光体102に必要な露光エネルギから決められる上下限があるので、それを逸脱しない時間で点灯する。1ラインの点灯時間が周期Tの1/4である場合でも、それぞれのLED素子2の点灯時間は周期Tの1/2の場合と同じで、全LED素子2を順次点灯させる周波数が速くなるだけである。
【0031】
この方式で補正を行うためにLED素子2の点灯に関しては、左端から右端へまたはその逆に順に点灯する必要がある。つまり1ラインをいくつかに分割して、その分割単位同士で同時に点灯させることはできない。1ラインを分割することなく順次点灯させるが、必ずしもLED素子2の一つずつである必要はなく、複数のLED素子2をまとめてひとつのブロックとして、ブロック単位で順次点灯するのでもよい。その際、ブロック数が少なくなるほどブロック間で画像ドットに隙間または重なりが生じるので適宜ブロック数を設定する。
【0032】
画素密度d[dpi]、画素数n、画像幅L[mm]、線速v[mm/s]、主走査幅誤差e[mm]、往復移動振幅a[mm]、画素点灯時間t[s]とすると、
式1:周期T=1/(v/25.4×d)
式2:1ライン点灯時間=2(π/2−(cos−1((e/2)/a)))/π×T/2
式3:点灯周波数(順次点灯周波数)f=画素数/1ライン点灯時間=(L/25.4×d)/2(π/2−(cos−1((e/2)/a)))/π×T/2
が成立する。
【0033】
主走査幅誤差eが小さくなると、式3より1ライン点灯時間も短くなり、ある時点で画素点灯時間を下回ってしまうことになることがわかるが、その場合は往復移動振幅aも同様に小さくすることで1ライン点灯時間を延ばすことが可能である。
【0034】
また、画素点灯時間tと1ライン点灯時間は次式4の関係を満たすように設定する必要がある。
式4:1ライン点灯時間=t+(n−1)/f
【0035】
なお以上では主走査倍率の補正方法について述べたが、主走査倍率の補正を必要としない使用者に対しては、上述のような補正動作を行なわないで画像形成することを選択することが可能である。
【符号の説明】
【0036】
1:LEDヘッド
2:LED素子
3:LED駆動基板
4:レンズ(アレイ)
5:筐体
11:長穴
12:位置決めピン
21:駆動装置
22:回転円板
23:リンク
24:弾性部材
31:円形カム
32:非円形カム
101:画像形成装置
102:感光体
103:帯電装置
104:露光装置
105:現像装置
106:転写装置
107:給紙装置
108:定着装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0037】
【特許文献1】特開2005−153361号公報
【特許文献2】特開2006−082522号公報
【特許文献3】特開2007−098772号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真方式による画像形成装置であって、
像担持体上に光を照射して潜像を形成する露光装置がLEDアレイからなるLEDヘッドであり、
該LEDヘッドを主走査方向に可動に支持し、
駆動手段により前記主走査方向に往復動作をさせながら画像形成を行う
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記LEDヘッドが、前記往復動作の周期の1/2以下の時間で1ラインの露光を行う
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像形成装置において、
前記駆動手段が、前記LEDヘッドを駆動するための偏心カムを備える
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像形成装置において、
前記偏心カムが円形カムである
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項3に記載の画像形成装置において、
前記偏心カムが非円形カムである
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像形成装置において、
前記非円形カムの形状が、反転する部分を除いた一定の範囲で前記LEDヘッドが略一定した移動速度が得られる形状である
ことを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−194620(P2011−194620A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61558(P2010−61558)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】