説明

画像形成装置

【課題】複数の駆動パルスで所要の液滴を形成する場合に第1の駆動パルスによる滴速度のばらつきが小さくとも、ヘッドの共振周波数のばらつきによって第2の駆動パルスで吐出する液滴の滴速度のばらつきが大きくなることがある。
【解決手段】m個の各圧力発生手段C1〜Cmについて、1つの圧力発生手段C毎に並列に接続された通電特性の異なる複数のアナログスイッチ710−1〜710−nを有し、駆動パルスを圧力発生手段Cに印加するときに、1つの駆動パルス内で複数のアナログスイッチ710のオン/オフを選択制御して、当該駆動パルスを構成する波形要素の特性を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関し、特に液滴を吐出する記録ヘッドを備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置としてインクジェット記録装置などが知られている。この液体吐出記録方式の画像形成装置は、記録ヘッドからインク滴を、搬送される用紙に対して吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する。)を行なうものであり、記録ヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型画像形成装置がある。
【0003】
なお、本願において、「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体にインクを着弾させて画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。また、「インク」とは、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体、樹脂などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用いる。また、「用紙」とは、材質を紙に限定するものではなく、上述したOHPシート、布なども含み、インク滴が付着されるものの意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含むものの総称として用いる。また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を三次元的に造形して形成された像も含まれる。
【0004】
このような画像形成装置において、例えば1駆動周期内でそれぞれ液滴を吐出させる複数の駆動パルス(吐出パルス)を時系列的に生成して共通駆動波形として出力し、例えば相対的に大きなドットを形成するときには2以上の駆動パルスを選択して複数の液滴を吐出させることで、複数の液滴を飛翔中に合体させて着弾させることによって、複数の滴サイズのドットを形成し、また、共通駆動波形中に滴吐出を伴わないでヘッドを駆動する非吐出パルスを含ませ、同様に非吐出パルスを選択することで微駆動を行なうことで安定した滴吐出を行なうようにすることが知られている。
【0005】
ところで、例えば圧力発生手段として圧電素子を使用する圧電型ヘッドにおいては、各圧電素子の変位特性(印加電圧に対する変位量)にばらつきがあり、この変位特性のばらつきは吐出する液滴の滴速度や滴体積(滴量)のばらつきとなって画像品質の低下を招くことになる。
【0006】
そこで、従来、複数の圧電素子をそれぞれ個別に駆動する(駆動パルスを印加する)スイッチング素子と、各圧電素子への充電状態を当該圧電素子の特性に応じて設定することで、当該圧電素子に印加される駆動パルス(電圧波形)を揃えるようにしたものがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−170588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、例えば共通駆動波形を構成する複数の駆動パルスから例えば第1、第2の駆動パルスを選択して2つの液滴を吐出させて飛翔中に合体させることで所要の滴サイズの液滴とするような場合、第1の駆動パルスで吐出する液滴のノズル間における滴速度のばらつきが小さくとも、ヘッドの共振周波数のばらつきによって第2の駆動パルスで吐出する液滴の滴速度のばらつきが大きくなることがある。
【0009】
このような場合、上述した特許文献1に開示の構成にあっては、それぞれのノズルで使用するスイッチ素子は、駆動中は固定されているので、第2の駆動パルスのみを変更することができず、滴吐出特性のばらつきを低減できないという課題がある。
【0010】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、滴吐出特性のばらつきを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、
液滴を吐出する複数のノズルと、各ノズルが連通する複数の液室と、各液室内の液体を加圧する圧力を発生する複数の圧力発生手段とを有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドから液滴を吐出させる複数の駆動パルスを含む駆動波形を生成出力する駆動波形生成手段と、
前記駆動波形生成手段からの駆動波形に含まれる1又は2以上の駆動パルスを画像データに応じて選択して前記記録ヘッドの複数の圧力発生手段に印加させる選択手段と、を備え、
前記選択手段は、各圧力発生手段について、1つの圧力発生手段毎に並列に接続された通電特性の異なる複数のスイッチング素子を有し、
前記複数のスイッチング素子のオン/オフの選択を制御する手段を備え、
前記制御する手段は、前記駆動パルスを前記圧力発生手段に印加するときに、1つの駆動パルス内で前記複数のスイッチング素子のオン/オフを選択制御して、当該駆動パルスを構成する波形要素の特性を変化させる
構成とした。
【0012】
ここで、前記制御する手段は、各ノズル毎に、前記複数のスイッチング素子の内のオン状態にするスイッチング素子を選択する構成とできる。
【0013】
また、前記制御する手段は、吐出させる液滴のサイズに応じて、前記複数のスイッチング素子の内のオン状態にするスイッチング素子を選択する構成とできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る画像形成装置によれば、選択手段は、各圧力発生手段について、1つの圧力発生手段毎に並列に接続された通電特性の異なる複数のスイッチング素子を有し、複数のスイッチング素子のオン/オフの選択を制御する手段を備え、制御する手段は、駆動パルスを圧力発生手段に印加するときに、1つの駆動パルス内で複数のスイッチング素子のオン/オフを選択制御して、当該駆動パルスを構成する波形要素の特性を変化させる構成としたので、駆動パルスを構成する波形要素自体の特性を変化させることができて、滴吐出特性のばらつきを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る画像形成装置の機構部を説明する側面説明図である。
【図2】同機構部の要部平面説明図である。
【図3】同画像形成装置の記録ヘッドを構成する液体吐出ヘッドの一例を示す液室長手方向の断面説明図である。
【図4】同液体吐出ヘッドの膨張行程の説明に供する断面説明図である。
【図5】同じく液体吐出ヘッドの収縮行程の説明に供する断面説明図である。
【図6】同画像形成装置の制御部の概要を示すブロック説明図である。
【図7】同制御部の印刷制御部及びヘッドドライバの一例を示す説明図である。
【図8】同印刷制御部及びヘッドドライバによる作用説明に供する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る画像形成装置の一例について図1及び図2を参照して説明する。なお、図1は同画像形成装置の全体構成を説明する側面説明図、図2は同装置の要部平面説明図である。
この画像形成装置はシリアル型インクジェット記録装置であり、装置本体1の左右の側板21A、21Bに横架したガイド部材である主従のガイドロッド31、32でキャリッジ33を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによってタイミングベルトを介して図2で矢示方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査する。
【0017】
このキャリッジ33には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド34a、34b(区別しないときは「記録ヘッド34」という。)を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0018】
記録ヘッド34は、それぞれ2つのノズル列を有し、記録ヘッド34aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を、記録ヘッド34bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、それぞれ吐出する。なお、記録ヘッド34としては、1つのノズル面に複数のノズルを並べた各色のノズル列を備えるものなどを用いることもできる。
【0019】
また、キャリッジ33には、記録ヘッド34のノズル列に対応して各色のインクを供給するための第2インク供給部としてのヘッドタンク35a、35b(区別しないときは「ヘッドタンク35」という。)を搭載している。このヘッドタンク35には、カートリッジ装填部4に着脱自在に装着される各色のインクカートリッジ(メインタンク)10y、10m、10c、10kから、供給ポンプユニット24によって各色の供給チューブ36を介して、各色の記録液が補充供給される。
【0020】
一方、給紙トレイ2の用紙積載部(圧板)41上に積載した用紙42を給紙するための給紙部として、用紙積載部41から用紙42を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)43及び給紙コロ43に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド44を備え、この分離パッド44は給紙コロ43側に付勢されている。
【0021】
そして、この給紙部から給紙された用紙42を記録ヘッド34の下方側に送り込むために、用紙42を案内するガイド部材45と、カウンタローラ46と、搬送ガイド部材47と、先端加圧コロ49を有する押さえ部材48とを備えるとともに、給送された用紙42を静電吸着して記録ヘッド34に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト51を備えている。
【0022】
この搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト51の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。この帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置されている。この搬送ベルト51は、図示しない副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ52が回転駆動されることによって図2のベルト搬送方向に周回移動する。
【0023】
さらに、記録ヘッド34で記録された用紙42を排紙するための排紙部として、搬送ベルト51から用紙42を分離するための分離爪61と、排紙ローラ62及び排紙コロである拍車63とを備え、排紙ローラ62の下方に排紙トレイ3を備えている。
【0024】
また、装置本体1の背面部には両面ユニット71が着脱自在に装着されている。この両面ユニット71は搬送ベルト51の逆方向回転で戻される用紙42を取り込んで反転させて再度カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に給紙する。また、この両面ユニット71の上面は手差しトレイ72としている。
【0025】
さらに、キャリッジ33の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド34のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構81を配置している。この維持回復機構81には、記録ヘッド34の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)82a、82b(区別しないときは「キャップ82」という。)と、ノズル面をワイピングするためのワイパ部材(ワイパブレード)83と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け84と、キャリッジ33をロックするキャリッジロック87などとを備えている。また、このヘッドの維持回復機構81の下方側には維持回復動作によって生じる廃液を収容するための廃液タンク100が装置本体に対して交換可能に装着される。
【0026】
また、キャリッジ33の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け88を配置し、この空吐出受け88には記録ヘッド34のノズル列方向に沿った開口部89などを備えている。
【0027】
このように構成したこの画像形成装置においては、給紙トレイ2から用紙42が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙42はガイド45で案内され、搬送ベルト51とカウンタローラ46との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド37で案内されて先端加圧コロ49で搬送ベルト51に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0028】
このとき、帯電ローラ56に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように電圧が印加され、搬送ベルト51が交番する帯電電圧パターンで帯電され、この帯電した搬送ベルト51上に用紙42が給送されると、用紙42が搬送ベルト51に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙42が副走査方向に搬送される。
【0029】
そこで、キャリッジ33を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド34を駆動することにより、停止している用紙42にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙42を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙42を排紙トレイ3に排紙する。
【0030】
そして、記録ヘッド34のノズルの維持回復を行うときには、キャリッジ33をホーム位置である維持回復機構81に対向する位置に移動して、キャップ部材82によるキャッピングを行ってノズルからの吸引を行うノズル吸引、画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出動作などの維持回復動作を行うことにより、安定した液滴吐出による画像形成を行うことができる。
【0031】
次に、記録ヘッド34を構成している液体吐出ヘッドの一例について図3を参照して説明する。なお、図3は同ヘッドの液室長手方向に沿う断面説明図である。
この液体吐出ヘッド100は、流路板101と、振動板部材102と、ノズル板103とを接合して、液滴を吐出するノズル104が連通する液室106、液室106に液体を供給する流体抵抗部107、液体導入部108がそれぞれ形成され、後述するフレーム部材117に形成した共通液室110から振動板部材102に形成されたフィルタ109を介して液体(インク)が液体導入部108に導入され、液体導入部108から流体抵抗部107を介して液室106にインクが供給される。
【0032】
流路板1は、シリコン基板を異方性エッチングして、液室106、流体抵抗部107、液体導入部108などの開口部や溝部をそれぞれ形成している。振動板部材2は各液室106、流体抵抗部107、液体導入部108などの壁面を形成する壁面部材であるとともに、フィルタ部109を形成する部材である。
【0033】
そして、振動板部材2の液室6と反対側の面に液室6のインクを加圧してノズル104から液滴を吐出させるエネルギーを発生する駆動素子(アクチュエータ手段、圧力発生手段)としての柱状の電気機械変換素子である積層型圧電部材112が接合されている。この圧電部材112の一端部はベース部材113に接合され、また、圧電部材112には駆動波形を伝達するFPC115が接続されている。これらによって、圧電アクチュエータ111を構成している。
【0034】
このように構成した液体吐出ヘッド100においては、例えば、図4に示すように、圧電部材112に印加する電圧を基準電位Veから下げることによって圧電部材112が収縮し、振動板部材102が変形して液室106の容積が膨張することで、液室106内にインクが流入し、その後、図5に示すように、圧電部材112に印加する電圧を上げて圧電部材112を積層方向に伸長させ、振動板部材102をノズル104方向に変形させて液室106の容積を収縮させることにより、液室106内のインクが加圧され、ノズル104から液滴301が吐出される。
【0035】
そして、圧電部材112に印加する電圧を基準電位に戻すことによって振動板部材102が初期位置に復元し、液室106が膨張して負圧が発生するので、このとき、共通液室110から液室106内にインクが充填される。そこで、ノズル104のメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次の液滴吐出のための動作に移行する。
【0036】
次に、この画像形成装置の制御部の概要について図6を参照して説明する。なお、図6は同制御部のブロック説明図である。
この制御部500は、この装置全体の制御を司るCPU511と、CPU511が実行するプログラムなどの固定データを格納するROM502と、画像データ等を一時格納するRAM503と、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための書き換え可能な不揮発性メモリ504と、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC505とを備えている。
【0037】
また、記録ヘッド34を駆動制御するためのデータ転送手段、駆動信号発生手段を含む印刷制御部508と、キャリッジ33側に設けた記録ヘッド34を駆動するためのヘッドドライバ(ドライバIC)509と、キャリッジ33を移動走査する主走査モータ554、搬送ベルト51を周回移動させる副走査モータ555、維持回復機構81のキャップ82やワイパ部材83の移動などを行なう維持回復モータ556を駆動するためのモータ駆動部510と、帯電ローラ56にACバイアスを供給するACバイアス供給部511などを備えている。
【0038】
また、この制御部500には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行うための操作パネル514が接続されている。
【0039】
この制御部500は、ホスト側とのデータ、信号の送受を行うためのI/F506を持っていて、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読み取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などのホスト600側から、ケーブル或いはネットワークを介してI/F506で受信する。
【0040】
そして、制御部500のCPU501は、I/F506に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC505にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行い、この画像データを印刷制御部508からヘッドドライバ509に転送する。なお、画像を出力するためドットパターンデータの生成はホスト600側のプリンタドライバ601で行なうことも、制御部500で行なうこともできる。
【0041】
印刷制御部508は、上述した画像データをシリアルデータで転送するとともに、この画像データの転送及び転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、制御信号などをヘッドドライバ509に出力する以外にも、ROMに格納されている駆動パルスのパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び電圧増幅器、電流増幅器等で構成される駆動波形生成部を含み、1の駆動パルス或いは複数の駆動パルスで構成される駆動信号(以下「駆動パルス」という。)をヘッドドライバ509に対して出力する。
【0042】
ヘッドドライバ509は、シリアルに入力される記録ヘッド34の1行分に相当する画像データに基づいて印刷制御部508から与えられる駆動波形を構成する駆動パルスを選択して記録ヘッド34の液滴を吐出させるエネルギーを発生する圧力発生手段としての圧電部材112に対して印加することで記録ヘッド34を駆動する。このとき、駆動波形を構成するパルスの一部又は全部或いはパルスを形成する波形用要素の全部又は一部を選択することによって、例えば、大滴、中滴、小滴など、大きさの異なるドットを打ち分けることができる。
【0043】
I/O部513は、装置に装着されている各種のセンサ群515からの情報を取得し、プリンタの制御に必要な情報を抽出し、印刷制御部508やモータ制御部510、ACバイアス供給部511の制御に使用する。センサ群515は、用紙の位置を検出するための光学センサや、機内の温度を監視するためのサーミスタ、帯電ベルトの電圧を監視するセンサ、カバーの開閉を検出するためのインターロックスイッチなどがあり、I/O部513は様々のセンサ情報を処理することができる。
【0044】
次に、印刷制御部508及びヘッドドライバ509の一例について図7のブロック説明図を参照して説明する。
印刷制御部508は、画像形成時に1印刷周期(1駆動周期)内に複数の駆動パルス(駆動信号)で構成される駆動波形(共通駆動波形)を生成して出力する駆動波形生成部701と、印刷画像に応じた2ビットの画像データ(階調信号0、1)と、クロック信号、ラッチ信号(LAT)などを出力するデータ転送部702と、後述する1つの圧力発生手段に対する複数のスイッチング素子(アナログスイッチ)を選択する選択信号を出力するスイッチング素子選択部703とを備えている。
【0045】
ヘッドドライバ509は、記録ヘッド34のn個の圧電素子112(以下「圧力発生手段C1〜Cm」とし、区別しないときは「圧力発生手段C」という。以下でも同様とする。)の個別電極にそれぞれn個のスイッチング素子としての通電特性の異なるアナログスイッチ710―1〜710−nを並列に接続している。
【0046】
そして、データ転送部702からの転送クロック(シフトクロック)及びシリアル画像データ(階調データ:2ビット/1チャンネル(1ノズル)を入力するn個のシフトレジスタ711−1〜711−nを有している。各シフトレジスタ711−1〜711−nは、アナログスイッチ710−1〜710−nにそれぞれ対応する。
【0047】
このシフトレジスタ711−1〜711−nの各レジスト値はそれぞれアンド回路712−1〜712nの一方に入力している。このアンド回路712−n〜712−nの他方には、スイッチング素子選択部703からのn個の選択信号SWON1〜SWONnがそれぞれ入力される。
【0048】
そして、1つの圧力発生手段Cについて、n個のアンド回路アンド回路712−1〜712nの出力値がノット回路713を介してアナログスイッチ710−1〜710−nに与えられる。
【0049】
ここで、アナログスイッチ710はアンド回路712の出力が「1」のとき、すなわち、シフトレジスタ711の出力が「1」で、選択信号SWONが「1」のときに、オン状態になり、共通駆動波形Pvを通過させて圧力発生手段Cに印加させる。
【0050】
なお、本実施形態においては、ヘッドドライバ509が選択手段を構成し、データ転送部702及びスイッチング素子選択部703と、シフトレジスタ711−2ないし711−n及びアンド回路712によって、1つの圧力発生手段に対して並列接続された複数のスイッチング素子であるアナログスイッチ710のオン/オフの選択を制御する手段を構成している。
【0051】
このように構成した実施形態の動作について図8のタイミングチャートを参照して説明する。なお、説明を容易にするため、上記の「n」は「3」とする。
まず、共通駆動波形生成部701からは同図(j)に示すように第1駆動パルスP1と第2駆動パルスP2を含む駆動波形Pvが出力されて、ヘッドドライバ509のアナログスイッチ710に与えられる。第1駆動パルスP1、第2駆動パルスP2は、基準電位Veから立ち下がる立ち下がり波形要素aと、立ち下がり波形要素aで立ち下がった電位に保持する保持波形要素bと、保持波形要素bで保持された電位から基準電位Veまで立ち上る立ち上がり波形要素cとで構成される。
【0052】
一方、データ転送部702からは同図(a)ないし(f)に示すようにシフトレジスタ711にクロック信号CLK1〜CLK3によってそれぞれデータDATA1〜DATA3を転送する。
【0053】
ここで、スイッチング素子選択部703は、駆動波形Pv全体の範囲に「1」(ON状態)になる選択信号SWON1を出力する。これにより、シフトレジスタ711のレジスト値が「1」になっているときには、アナログスイッチ710−1を介して第1駆動パルスP1及び第2駆動パルスP2のいずれか又は両方が印加されることになる。
【0054】
また、スイッチング素子選択部703は、第2駆動パルスP2の立ち上がり波形要素cの区間で選択信号SWON2を「1」にする。これにより、シフトレジスタ711のレジスト値が「1」になっているときには、第2駆動パルスP2の立ち上がり波形要素cはアナログスイッチ710−1及び710−2を介して印加されることになる。
【0055】
このとき、アナログスイッチ710−1及び710−2の並列回路のオン抵抗は、両者の合成抵抗となるので、アナログスイッチ710のオン抵抗と圧力発生手段C(圧電素子)の容量分による時定数が減少し、圧力発生手段Cに印加される電圧波形は、同図(g)に破線で示すように、立ち上がり部分が急峻になる(アナログスイッチ710−1のみがオンしたときに比べて)。このように、圧力発生手段Cの印加電圧波形の立ち上がりが急峻になると、吐出される滴速度は速くなる。
【0056】
そこで、例えば各ノズルからの滴吐出特性ばらつきを低減できるよう、シフトレジスタ711に転送するデータを決定することにより、ノズル間での滴速度ばらつきを低減し、印刷品質を向上させることができる。例えば、アナログスイッチ710−2をオンしないで吐出したときの滴速度を測定し、滴速度が遅いノズル群と速いノズル群とにグループ化し、滴速度が遅いノズル群に対応するデータのみ「1」となるデータを転送する。
【0057】
このように、選択手段は、各圧力発生手段について、1つの圧力発生手段毎に並列に接続された通電特性の異なる複数のスイッチング素子を有し、複数のスイッチング素子のオン/オフの選択を制御する手段を備え、制御する手段は、駆動パルスを圧力発生手段に印加するときに、1つの駆動パルス内で複数のスイッチング素子のオン/オフを選択制御して、当該駆動パルスを構成する波形要素の特性を変化させる構成としたので、駆動パルスを構成する波形要素自体の特性を変化させることができて、滴吐出特性のばらつきを低減できる。
【0058】
なお、上記実施形態においては、シフトレジスタ711の出力とスイッチング素子選択部703からの選択信号SWONのAND条件で直接アナログスイッチ710をオン/オフ制御しているため、滴吐出中(選択信号SWONが「1」のとき)はシフトレジスタ711へのデータ転送ができないが、シフトレジスタ711の出力にバッファを追加し、ダブルバッファ構成とすることによって、滴吐出中でも次のサイクルのデータをシフトレジスタ711に転送することができる。
【0059】
また、上記実施形態では、各々のノズルは2つの駆動パルスで吐出するか、または吐出しないか(吐出、非吐出の2値)をシフトレジスタ711のデータ1ビットで選択しているが、前述したように、ノズル毎のデータに2ビット以上を使用し、そのデータに対応して駆動波形の使用する部分を選択する構成とすることにより3値以上(大滴、中滴、小滴、非吐出の4値等)の選択が可能である。このとき各々のノズルで、吐出する液滴に応じて並列に接続されているアナログスイッチのオン/オフのタイミングを選択する構成とすることもできる。
【0060】
さらに、各々のノズルで使用するアナログスイッチ、オン/オフの選択制御ないし選択タイミングのデータは、予めヘッド特性検査等により決定しておき、記録ヘッドに実装した不揮発性メモリ、たとえばEEPORMに格納保持し、制御部にてこの不揮発性メモリの内容を読み込み、そのデータをもとに各々のノズルで使用するアナログスイッチ、およびオン/オフの選択制御ないし選択タイミングを決定し、滴吐出を行わせることができる。
【0061】
なお、本発明に係る画像形成装置は、シリアル型画像形成装置に限らず、ライン形画像形成装置でも適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
33 キャリッジ
34、34a、34b 記録ヘッド(液体吐出ヘッド)
500 制御部
508 印刷制御部
701 駆動波形生成部
702 データ転送部
703 スイッチング素子選択部
711−1〜711−n アナログスイッチ(スイッチング素子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出する複数のノズルと、各ノズルが連通する複数の液室と、各液室内の液体を加圧する圧力を発生する複数の圧力発生手段とを有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドから液滴を吐出させる複数の駆動パルスを含む駆動波形を生成出力する駆動波形生成手段と、
前記駆動波形生成手段からの駆動波形に含まれる1又は2以上の駆動パルスを画像データに応じて選択して前記記録ヘッドの複数の圧力発生手段に印加させる選択手段と、を備え、
前記選択手段は、各圧力発生手段について、1つの圧力発生手段毎に並列に接続された通電特性の異なる複数のスイッチング素子を有し、
前記複数のスイッチング素子のオン/オフの選択を制御する手段を備え、
前記制御する手段は、前記駆動パルスを前記圧力発生手段に印加するときに、1つの駆動パルス内で前記複数のスイッチング素子のオン/オフを選択制御して、当該駆動パルスを構成する波形要素の特性を変化させる
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御する手段は、各ノズル毎に、前記複数のスイッチング素子の内のオン状態にするスイッチング素子を選択することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御する手段は、吐出させる液滴のサイズに応じて、前記複数のスイッチング素子の内のオン状態にするスイッチング素子を選択することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−192718(P2012−192718A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60342(P2011−60342)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】