説明

画像形成装置

【課題】 感光体ドラム抵抗値低下を補償する、改良された画像形成装置を提供する。
【解決手段】 経時により抵抗値の低下する複数の感光体ドラムと、1対1に対応する複数の、トナーコンテナと転写ローラユニットと、各転写ローラユニットに転写電圧を与える複数の閉回路に並列接続されている1の定電圧源と、を含んでおり、前記各閉回路は、転写ローラユニットに直列に接続されている抵抗値調節回路を備え、前記トナーコンテナは、それぞれ、収納部に着脱可能に収納されており、抵抗値調節回路は、ラチェットギア機構と、可変抵抗部と、を備えており、前記ラチェットギア機構は、トナーコンテナの交換に応じて動作し、前記可変定後部は、前記ラチェットギア機構の動作に応じて、抵抗値をステップ状に増加して、転写ローラユニットに印加される電圧を低くすることによって、前記各感光体ドラムの抵抗値の低下を補償して転写電流を均一にする、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の感光体ドラムを用いる、例えばタンデム式のカラープリンタ、カラー複写機等の電子写真式の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の感光体ドラムを用いる電子写真式の画像形成装置では、まず、帯電器によって帯電されている1つめの感光体ドラム表面に、出力画像のレーザ光を照射して静電潜像を形成する。現像器は、静電潜像に、ある色のトナーを付着させてトナー像を形成する。トナー像は、感光体ドラムに1対1に設けられている転写ローラによって複写紙又は中間転写ベルトに転写される。前記転写ローラには、トナーと逆極性の電圧が印加される。前記トナー像の形成と転写とは、感光体ドラムの数だけ繰り返し行なわれる。
【0003】
従来、定電圧源は、1つの転写ローラに対して1つ設けられていた。装置の小型化を図るには、並列回路を用いて前記電源を1つにすることが考えられる。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、定電圧源を1つにした場合であって、環境・耐久変動によるトナー濃度の変化を検出し、結果に基づいてスイッチの切り換えによって環境依存性を有する抵抗素子(回路ではない)を付加することによって一次転写電圧を低下させるカラー画像形成装置が、記載されている。
【0005】
また、下記特許文献2には、1つの定電圧源に、複数の転写手段の間に可変抵抗を介在させた直列回路を形成し、該回路に流れる電流値を検出し、検出した電流値に基づいて、各転写ローラの抵抗値の変化を補償するように各可変抵抗値を調節し、各転写ローラに印加される転写電圧を一定にする画像形成装置が、記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−337816号公報
【特許文献2】特開2003−57917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記感光体ドラムの表面の抵抗値は、実働時間の増加に伴って低下し、感光体ドラム毎に異なる値になることが知られている。前記特許文献1、2記載の装置は、このような感光体ドラム毎の抵抗値の変化に対処することができない。
【0008】
本発明は、複数の感光体ドラムと、これに対応する複数の転写ローラと、1つの定電圧源と、を備えている画像形成装置において、長期間、安定した画像形成を行なうことのできる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の画像形成装置は、使用時間に応じて抵抗値の低下する複数の感光体ドラムと、前記複数の感光体ドラムに1対1に対応する複数のトナーコンテナと複数の転写ローラユニットと、各転写ローラユニットに転写電圧を与える複数の閉回路に並列接続されている1の定電圧源と、を含んでいる画像形成装置であって、前記各閉回路は、転写ローラユニットに直列に接続されている抵抗値調節回路を備え、前記トナーコンテナは、それぞれ、画像形成装置の収納部に着脱可能に収納されており、抵抗値調節回路は、ラチェットギア機構と、可変抵抗部と、を備えており、前記ラチェットギア機構は、トナーコンテナの交換に応じて動作する機構であり、前記可変抵抗部は、前記ラチェットギア機構の動作に応じて、抵抗値をステップ状に増加して、転写ローラユニットに印加される電圧を低くすることによって、前記各感光体ドラムの抵抗値の低下を補償して転写電流を均一にする、ことを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の画像形成装置は、請求項1記載の画像形成装置であって、前記可変抵抗部が、ラチェットギア機構の動作に応じて回動するカムと、押圧板と、該押圧板によって加圧変形される抵抗部と、を備えており、前記抵抗部が、加圧変形させることによって抵抗値の小さくなる感圧導電性の弾性体であり、抵抗の変化する2つの点が、前記各閉回路内で転写ローラユニットに直列接続されており、前記カムが、回動する毎に、前記押圧板が抵抗部に加える力を少なくするようになっている、ことを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の画像形成装置は、請求項1記載の画像形成装置であって、前記ラチェットギア機構が、トナーコンテナの交換に応じて回転する回転軸を有しており、前記可変抵抗部が、回転することによって抵抗値を変える回動部を有しており、前記回転軸と回動部とが連結されており、可変抵抗部は、前記回転軸の回転に応じて抵抗値が高くなる、ことを特徴とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の画像形成装置では、各感光体ドラムの使用時間に応じて生じる、トナーユニットを取換える毎に、抵抗値調節回路の値がステップ状に高くなり、使用時間の増加に応じて生じる感光体ドラムの抵抗値の低下をステップ状に補償し、個々の転写電流が略均一となるように構成されている。当該構成を採用したことによって、1つの定電圧源を用いる場合であっても、安定した転写電流を供給することができる。これによって、全ての感光体ドラムを一度に交換せずとも、長期間、安定した画像形成を行なうことができる。
【0013】
請求項2、3記載の画像形成装置では、請求項1記載の画像形成装置において、簡単な構成で、各感光体ドラムに安定した転写電流を供給できる。これによって、全ての感光体ドラムを一度に交換せずとも、長期間、安定した画像形成を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】画像形成装置の断面図である。
【図2】定電圧供給回路の構成図である。
【図3】第1実施形態における抵抗値調節回路の主にラチェット機構の構成を示す図である。
【図4】第1実施形態における抵抗値調節回路の主に可変抵抗部の構成を示す図である。
【図5】使用時間に対する感光体ドラムの抵抗値の減少と、抵抗値調節回路の抵抗値の増加と、を示すグラフである。
【図6】第2実施形態における抵抗値調節回路の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、電子写真式のデジタルカラー画像形成装置1の断面図である。該装置1は、4つの感光体ドラム21a、21b、21c、21dに、それぞれ異なる色(C、M、Y、Bk)のトナー像を形成し、形成されたトナー像を一方向に移動する中間転写体8に順次一次転写するタンデム式のものである。
【0016】
帯電・露光器1a、1b、1c、1dは、感光体ドラム21a、21b、21c、21d表面を帯電し、出力画像のレーザ光を照射して静電潜像を形成する。現像器3a、3b、3c、3dは、トナーユコンテナ4a、4b、4c、4dからそれぞれシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックのトナー供給を受け、静電潜像に、各色のトナーを付着させてトナー像を形成する。感光体ドラム21a、21b、21c、21dに1対1に設けられている1次転写ローラユニット6a、6b、6c、6dは、転写ローラによって、中間転写ベルト8にトナー像を転写する。前記転写ローラには、ユニットに入力される転写電圧に応じて、トナーと逆極性の電圧が印加される。前記トナー像の形成と転写とは、感光体ドラムの数だけ繰り返し行なわれる。
【0017】
中間転写ベルト8に各色のトナー像を転写することで形成されたフルカラー画像は、2次転写ローラユニット9の転写ローラによって、給紙カセット10から搬送路11を通って供給されてきた複写紙に転写される。複写紙は、定着処理された後に、排紙トレイ12に排出される。
【0018】
図2は、定電圧供給回路の構成図である。該回路は、1つの定電圧源100と、該定電圧源100に並列接続されており、転写ローラユニット6a、6b、6c、6dへと等しい転写電圧を供給する4つの閉回路C1、C2、C3、C4と、で構成されている。4つの閉回路C1、C2、C3、C4は、定電圧源100に並列接続されている。各閉回路C1、C2、C3、C4は、回路内で、1次転写ローラユニット6a、6b、6c、6dに直列に接続されている抵抗値調節回路50a、50b、50c、50dを備えている。
【0019】
各抵抗値調節回路50a、50b、50c、50dの構成は同じである。以下、抵抗値調節回路50aを例にとり、その構成を説明する。抵抗値調節回路50aは、トナーコンテナ4aの収容部近傍に設けられている。対応する感光体ドラム21aの使用時間の増加に、略比例してトナーコンテナ4aのトナーは消費される。抵抗値調節回路50aは、トナーコンテナの交換毎に、抵抗値をステップ状に高くして、感光体ドラム21aの使用時間の増加に伴う抵抗値の低下を補償する。
【0020】
前記抵抗値調節回路50aは、ラチェットギア機構51と、可変抵抗部56と、を備えている。図3は、抵抗値調節回路50aの主にラチェットギア機構51の構成を示している。ラチェットギア機構51は、トナーコンテナ4aの収納部の下に設けられており、レバー52と、ラチェットギア53と、を備えている。ラチェットギア53の回転軸54は、後述する可変抵抗部56のカム55に連結されている。レバー52は、トナーコンテナ4aを収納部から取り外すことで、図3(a)から(b)に示すように上昇し、次のトナーコンテナを収納部に収納することによって、図3(c)に示すように押し下げられて、ラチェットギア53を動かす。ラチェットギア53は、動作する毎に、カム55を、それぞれ予め定めた角度だけ回転させる。ここの回転により、トナーコンテナのトナーが全て消費されるまでにおける装置の使用時間の統計量に基づき、実験的に確認された使用時間による感光体ドラムの抵抗値の低下量に応じて、抵抗値がステップ状に増加するように設定する。
【0021】
図4は、抵抗値調節回路50aの主に可変抵抗部56の構成を示している。可変抵抗部は、前記ラチェットギア機構51の動作に応じて抵抗値をステップ状に増加して、転写ローラユニット6aに印加される電圧を低くすることによって、感光体ドラム21aの抵抗値の低下を補償して転写電流を均一にするように働く。
【0022】
図4(a)は、初期設定時の状態を示す。図4(b)は、トナーコンテナ4aの第1回目の交換後の状態を示す。図4(c)は、トナーコンテナ4aの第2回目の交換後の状態を示す。可変定後部は、本体57内に、前記ラチェットギア53の回転軸54に連結されているカム55と、該カム55によって下方に押し下げられる押圧板58と、該押圧板58によって加圧変形される抵抗部59と、を備えている。
【0023】
前記抵抗部59は、加圧して変形させることによって、加圧方向の抵抗値の小さくなる感圧導電性の弾性体であり、抵抗の変化する2つの作用点が、前記並列回路C1に直列接続されている。なお、前記特性を有している感圧導電性の弾性体は、例えば、イナバゴム株式会社のイナストマー(登録商標)が挙げられる。
【0024】
図5は、使用時間に対する感光体ドラム21aの抵抗値の減少(矢印210で示すグラフ)と、抵抗値調節回路50aの抵抗値のステップ状の増加(矢印500で示すグラフ)と、を概念的に示すグラフである。あるカラー画像形成装置を用いて、初期状態の感光体ドラムと10万枚印刷した状態の感光体ドラムをそれぞれ装着して一次転写電流と転写電圧の関係を測定した実験では、電流−電圧の関係から、10万枚印刷した状態の感光体ドラムは抵抗値がかなり低下していると予測された。更なる実験から、10万枚印刷した状態の感光体ドラムに25MΩ程度の抵抗を加えた場合に初期状態の感光体ドラムの一次転写の電流−電圧特性が略等しくなることがわかた。他の知見とも合わせて、感光体ドラムの抵抗値は使用時間に応じてほぼ比例して低下していることが予測される。そこで、抵抗値のステップ状の増加量は、例えば、トナーコンテナの次の交換時に予想される感光体ドラム21aの抵抗値(以下、第1抵抗値という)、第1抵抗値と前回の交換時に予想された抵抗値(以下、第2抵抗値という)との中間値、又は、第1抵抗値よりも予め定めた値だけ多くの値、を基準値として考えて前回の交換時から基準値への抵抗値の低下を補償して転写電流を均一にする値に設定する。該構成を採用することによって、全ての感光体ドラムを一度に交換せずとも、画像形成装置の長期にわたる安定した動作を実現することができる。
【0025】
図6は、第2実施形態における抵抗値調節回路70aの構成を示す図である。抵抗値調節回路70aは、前記抵抗値調節回路50aに代替するものである。第2実施形態では、抵抗値調節回路70aと同じ構成の抵抗値調節回路70b、70c、70dが設けられる。以下の説明において、抵抗値調節回路50aのものと同じ構成物には、同じ参照番号を付して重複した説明を省く。
【0026】
図6(a)は、使用初期の状態を示す。図6(b)は、トナーコンテナ4aを交換したときの状態を示す。抵抗値調節回路70aは、ラチェットギア機構51と、可変抵抗部71と、で構成されている。ラチェットギア機構51は、レバー52と、ラチェットギア53と、を備えている。可変抵抗部71は、回転することによって抵抗値を増加する回転部72を備えており、その間の抵抗値の変化する2つの接続端子が、前記並列回路C1に直列接続されている。回転軸54と回転部72とは、連結手段であるベルト73によって連結されている。
【0027】
前記構成を採用することによって、抵抗値調節回路70aは、感光体ドラム21aの総回転数の増加に応じて、ステップ状に高抵抗となり、回路C1内で直列に接続される転写ローラユニット6aに印加する電圧を低くする。抵抗値調節回路70aの抵抗値の増加率の設定については、前記抵抗値調節回路50aと同様である。
【0028】
なお、回転軸54と回転部72と、の直径を変えることで、細かな抵抗値の増加量設定が可能になる。また、回転軸54と回転部72との周りに、連結手段として歯を設け、歯車同士を連結しても良い。さらには、ラチェットギア53と可変抵抗部71とを向き合うように置き、連結手段として連結棒又は連結部品を用いて回転軸54と回転部72とを同軸接続しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の画像形成装置は、タンデム式に限らず、実働時間に応じて抵抗値の低下する複数の感光体ドラムと、前記感光体ドラムに1対1に対応する複数の転写ローラユニットと、感光体ドラム表面に付着しているトナー像を転写するための電圧を各転写ローラユニットに与えるように並列接続回路で構成されている1の定電圧源と、を含んでいるデジタルカラープリンター又は複写機等の、画像形成装置に用いることができる。
【符号の説明】
【0030】
1 画像形成装置
2a〜2d 感光体ドラムユニット
3a〜3d 現像器
6a〜6d 1次転写ローラユニット
8 中間転写ベルト
9 2次転写ローラユニット
10 給紙カセット
11 搬送路
12 排紙トレイ
51 ラチェットギア機構
52 レバー
53 ラチェットギア
54 回転軸
56、71 可変抵抗部
50a〜50d 抵抗値調節回路
70a〜70d 抵抗値調節回路の変形例
72 回動部
73 ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用時間に応じて抵抗値の低下する複数の感光体ドラムと、前記複数の感光体ドラムに1対1に対応する複数のトナーコンテナと複数の転写ローラユニットと、各転写ローラユニットに転写電圧を与える複数の閉回路に並列接続されている1の定電圧源と、を含んでいる画像形成装置であって、
前記各閉回路は、転写ローラユニットに直列に接続されている抵抗値調節回路を備え、
前記トナーコンテナは、それぞれ、画像形成装置の収納部に着脱可能に収納されており、
抵抗値調節回路は、ラチェットギア機構と、可変抵抗部と、を備えており、
前記ラチェットギア機構は、トナーコンテナの交換に応じて動作する機構であり、
前記可変定後部は、前記ラチェットギア機構の動作に応じて、抵抗値をステップ状に増加して、転写ローラユニットに印加される電圧を低くすることによって、前記各感光体ドラムの抵抗値の低下を補償して転写電流を均一にする、
ことを特徴とする、画像形成装置。
【請求項2】
前記可変抵抗部が、ラチェットギア機構の動作に応じて回動するカムと、押圧板と、該押圧板によって加圧変形される抵抗部と、を備えており、
前記抵抗部が、加圧変形させることによって抵抗値の小さくなる感圧導電性の弾性体であり、抵抗の変化する2つの点が、前記各閉回路内で転写ローラユニットに直列接続されており、
前記カムが、回動する毎に、前記押圧板が抵抗部に加える力を少なくするようになっている、
ことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記ラチェットギア機構が、トナーコンテナの交換に応じて回転する回転軸を有しており、前記可変抵抗部が、回転することによって抵抗値を変える回動部を有しており、前記回転軸と回動部とが連結されており、可変抵抗部は、前記回転軸の回転に応じて抵抗値が高くなる、
ことを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−215702(P2012−215702A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81013(P2011−81013)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】