説明

画像形成装置

【課題】 新品の現像装置の初期における現像剤供給部材の周期濃度抜けの発生を抑制し、かつ初期からプリント開始までの待ち時間を短縮した画像形成装置を提供する。
【解決手段】 制御部13は現像装置4が新品であることを認識したときに、トナー量計算部32により検出された第一検出値と、該第一検出値が検出された後、モータ12により供給ローラ24の駆動を開始して現像剤容器21内のトナー量が低減した後にトナー量計算部32により検出された第二検出値とにおいて、メモリ35に記憶された基準値Sと、第一検出値と、第二検出値との関係が、基準値S≦|第一検出値−第二検出値|となったときに、モータ12による供給ローラ24の駆動を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも現像剤担持体と現像剤供給部材とを備えた現像装置における現像剤量を検出する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、非磁性一成分現像剤を用いた一般的な現像装置では、現像剤容器、現像ローラ、供給ローラ、現像ブレード等を有して構成されている。現像剤容器は、トナーを収容し、現像ローラはトナーを感光体に搬送する。供給ローラは、現像ローラにトナーを供給する。現像ブレードは現像ローラに供給されたトナーを現像ローラ上に均一にコートする。また、現像装置に含まれる現像室は、現像ローラ、供給ローラ、現像ブレードにて構成されている。
【0003】
供給ローラは、通常、上記トナーを現像ローラに供給する役割の他に、現像ローラ上のコートの現像履歴を消失させる等の役割も持たせている。そのため、トナーを十分含ませることが出来、且つ現像後の現像ローラ上のコートを掻き取る動作を同時に行うことが出来る安価な材料としてウレタン素材のスポンジが広く用いられており、現像ローラに所定の侵入量をもって当接されている。
【0004】
供給ローラは現像ローラに当接することで当接部にて変形する。供給ローラは、この変形により回転によって当接部から開放される部分(吸い込み部)が生じる。吸い込み部ではスポンジを形成するセルがつぶれた状態から急激に広がるため、供給ローラ内に空気の流入が生じる。この空気の流入により周囲のトナーを同時に供給ローラに取り込むのである。
【0005】
一方、当接部に突入する部分(吐き出し部)では、逆に、開いたセルが急激につぶされるため、セル内に含まれていたトナーが吐き出されて対向する現像ローラ上に供給される。また、セル内のトナーを吐き出した後、当接部に侵入し、セルを形成するスポンジの骨格にて現像ローラ上のコート残を掻きとって現像履歴を消失させる。
【0006】
供給ローラは、自身の回転により以上説明したサイクルを繰り返している。このとき、現像ローラ上のトナーが現像されず再び供給ローラに接すると、一旦、現像ローラに供給したトナーを再度掻きとって供給ローラに回収することになる。そのため、一旦含まれたトナーはそのまま確保され、新たに吸い込み部で取り入れたトナーがそのまま足されて含まれることになり、回転を続けると飽和状態に至るまで供給ローラ内のトナーは増加していく。
【0007】
一方、供給ローラ内に含んだトナー量を計測する様々な手段が提案されている。特許文献1では供給ローラに交流バイアスを印加し、現像ローラの芯金上に誘起した電圧からトナー量を検出する方法が提案されている。
【0008】
更には、非磁性一成分トナーを用いた現像装置におけるトナー量検出方法としては、トナーの光反射・光透過を検知する光学式のトナー量検知方法が提案され、実用化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−9036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の現像装置は、出荷時点において、トナーをトナーシールにて現像容器内に封入しており、ユーザが現像装置を使用開始する際に、トナーシールを切ることでトナーが現像室に流入する。
【0011】
しかしながら、トナーシールを切った直後に画出しを行うと供給ローラにトナーがほとんど含まれていない状態であることから、画像白抜けが発生した。画像白抜けを防止するために供給ローラをある程度回転させてトナーを供給ローラに含ませたのち画出しを行うと供給ローラ周期の濃度抜けが高印字画像にて発生することがあった。
【0012】
この発生位置は、供給ローラが現像ローラとトナーシールを切る直前まで当接していた位置であった。この位置は、供給ローラが出荷時から使用開始までの長期間、現像ローラと当接していた位置であり、供給ローラのスポンジ部が現像ローラよりも柔らかいために当接位置にて凹み状に変形していた。
【0013】
また、高印字画像で発生し易い理由としては、この凹み部とそれ以外の部分でトナー供給性に差があり、現像にて消費されるトナー量が多いために、その差が現れ易いと考えられる。そこで、供給ローラ周期濃度抜けを抑制すべく供給ローラ内のトナー量が飽和するまで回転させたところ供給ローラ周期濃度抜けは発生しなくなった。
【0014】
しかしながら、供給ローラを長時間回転させることになり、その間、ユーザをプリント開始まで待たさなければならなかった。
【0015】
本発明の目的は、上記課題に鑑み、新品の現像装置の初期における現像剤供給部材の周期濃度抜けの発生を抑制し、かつ初期からプリント開始までの待ち時間を短縮した画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的を達成するための本発明に係る画像形成装置の代表的な構成は、現像剤を収容する現像剤容器と、前記現像剤容器内に設けられ、導電性支持体の外周に現像剤を含有し得る連続気泡体層を設けた現像剤供給部材と、静電潜像が形成される像担持体に対向して配置されると共に、前記現像剤供給部材に圧接するよう配置され、導電性支持体を有する現像剤担持体と、を有する現像装置と、前記現像剤供給部材を駆動する駆動手段と、前記現像装置が新品であることを識別する新品識別手段と、前記現像剤供給部材の前記導電性支持体と前記現像剤担持体の前記導電性支持体との間の静電容量に関する検出値を検出する検出手段と、前記新品識別手段によって前記現像装置が新品であることを認識したときに前記検出手段により検出された第一検出値と、前記第一検出値が検出された後、前記駆動手段により前記現像剤供給部材の駆動を開始してから前記検出手段により検出された第二検出値と、の比較に基づいて前記駆動手段による前記現像剤供給部材の駆動を停止する制御手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
上記構成によれば、新品の現像装置の初期における現像剤供給部材内の現像剤量を管理することで、現像剤供給部材の周期濃度抜けの発生を抑制しつつ画像形成動作開始までの現像剤供給部材の回転時間の短縮化を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る画像形成装置の構成を示す断面説明図である。
【図2】現像装置の構成を示す断面説明図である。
【図3】現像剤量検出手段の構成を示すブロック図である。
【図4】現像剤容器内の現像剤量と、現像剤供給部材内の現像剤量との関係を示す図である。
【図5】現像剤供給部材の導電性支持体と現像剤担持体の導電性支持体との間の静電容量と、現像剤供給部材内の現像剤量との関係を示す図である。
【図6】現像装置の放置日数と、現像剤供給部材の凹み量との関係を示す図である。
【図7】現像剤供給部材の導電性支持体と現像剤担持体の導電性支持体との間の静電容量と、画像品質との関係を示す図である。
【図8】現像剤供給部材の回転数を制御するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下図面を参照して、本発明に係る画像形成装置の好適な実施の形態について説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置や各構成部品の回転速度などは、本発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。したがって、本発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
【0020】
図1は本発明に係る画像形成装置10の概略断面図である。先ず、図1に示す画像形成手段による画像形成動作について説明する。図1において、静電潜像が形成される像担持体としての感光ドラム1は図1の矢印方向に回転する。感光ドラム1は、帯電手段となる帯電ローラ2によって一様に帯電される。その後、露光手段であるレーザ光学装置3からのレーザ光により露光され、その表面に静電潜像が形成される。
【0021】
この静電潜像を、後述する非磁性一成分接触現像装置(以下、単に「現像装置」という)4によって現像し、トナー画像として可視化する。可視化された感光ドラム1上のトナー画像は、転写手段となる転写ローラ5によって記録材6に転写される。転写されずに感光ドラム1上に残存した転写残トナーは、クリーニング手段となるクリーニングブレード7により掻き取られ、廃トナー容器8に収容される。クリーニングされた感光ドラム1は帯電ローラ2による帯電処理が施され、再び画像形成プロセスに供される。
【0022】
一方、トナー画像を転写された記録材6は、定着手段となる定着装置9によって永久定着された後、機外に排出され、印刷プロセスが完了する。
【0023】
図2により、現像装置4について更に詳細に説明する。図2において、現像装置4は画像形成装置10に対して着脱可能な構成となっており、現像剤となるトナー11を収容する現像剤容器21を有する。更に、現像剤容器21内(現像剤容器内)に設けられる現像室23への入り口付近には、導電性支持体となる芯金24aの外周にトナー11を含有し得る連続気泡体層を設けた現像剤供給部材となる供給ローラ24が設けられている。供給ローラ24は駆動手段となるモータ12により回転駆動され、モータ12は制御手段となる制御部13により駆動/停止が制御される。
【0024】
供給ローラ24は現像剤担持体となる現像ローラ25にトナー11を供給する。現像ローラ25は感光ドラム1に対向して配置されると共に、供給ローラ24に所定の侵入量をもって当接部を形成するように(圧接するように)配置される。現像ローラ25の内部には、導電性支持体となる芯金25aが設けられている。
【0025】
現像剤容器21内には非磁性一成分トナー(以下、単に「トナー」という)11が充填されており、該トナー11は供給ローラ24が配置される現像室23に対して図2の上方に堆積されている。現像剤容器21と現像室23との間には図示しないトナーシールが備えられており、新品の現像装置4においてユーザがトナーシールを切るまでは、トナー11は現像剤容器21内の現像室23よりも上方に封止されている。トナーシールには図示しないタブが付いており、該タブは現像装置4の外に露出している。このタブを現像装置4の外側から引っ張ることでトナーシールが引かれ、現像剤容器21内のトナー11が自重により現像室23内に流入する。
【0026】
また、トナーシールのタブがある状態では画像形成装置10の図示しないメカ部材と干渉し、現像装置4が取り付けられない構成となっている。
【0027】
現像室23には、現像ローラ25、供給ローラ24、規制ブレード27、漏れ防止シール26が設けられている。現像ローラ25は、感光ドラム1に接触し、一定方向に回転して、その外周部にコートされたトナー11を感光ドラム1に供給する。供給ローラ24は、現像ローラ25に当接して回転し、トナー11を供給する。規制ブレード27は、一端部が現像ローラ25に摺擦し、該現像ローラ25上に供給されたトナー11を薄層にコーティングする。漏れ防止シール26は、現像ローラ25の下方の現像室23の隙間を覆いトナー11の漏れを防止する。
【0028】
また、本実施形態におけるトナー11は、非磁性一成分現像剤の負極性のトナー11を用いている。
【0029】
本実施形態における現像ローラ25は、外径直径が12mmであり、外径直径が6mmの芯金25aの周囲にシリコーンゴムを基層とし、アクリル・ウレタン系ゴムを表面にコートした構成である。現像ローラ25の体積抵抗は10Ω〜1012Ω程度である。
【0030】
本実施形態における供給ローラ24は、外径直径が5mmの芯金24a上に連続気泡体からなるウレタンスポンジ層を設けた外径直径が13mmのウレタンスポンジローラである。ウレタンスポンジ層の体積抵抗は10Ω〜1012Ω程度である。供給ローラ24は、モータ12により現像ローラ25と同一方向(カウンタ方向)に回転駆動され該現像ローラ25へのトナー11の供給及び現像後の現像ローラ25上のトナー11の剥ぎ取りを行う。
【0031】
本実施形態において、芯金25aと芯金24aとの間の離間距離は5.55mmである。現像ローラ25の表面に対して供給ローラ24のウレタンスポンジ層を1.2mm侵入させている。供給ローラ24は248.2mm/secの周速度で回転している。
【0032】
また、本実施形態においては、画像形成中は現像ローラ25及び供給ローラ24に対して現像バイアス電源34によりそれぞれ−300Vの直流電圧を印加してトナー11を感光ドラム1上に現像する。非画像形成時には供給ローラ24の芯金24aに対して交流電圧印加手段となるバイアス電源36からトナー量検知用バイアス(交流電圧)を印加する。トナー量検知用バイアスとしては、周波数が50kHz、ピークトゥピーク電圧Vppが200Vの交流バイアスを用いており、トナー量検知時は現像ローラ25と供給ローラ24ともに直流バイアスは0Vとしている。
【0033】
次に、図2及び図3を用いて本実施形態におけるトナー量検出方法について述べる。
【0034】
トナー量検出は、供給ローラ24、現像ローラ25、検出器30、積分器31、現像剤量検出手段となるトナー量計算部32を用いる。更に、現像剤量比較手段となるトナー量比較部50、トナー量検知用のバイアス電源36、現像バイアス電源34及び現像装置4に備えられたメモリ35を用いて行う。図3は供給ローラ24の芯金24aと、現像ローラ25の芯金25aとの間の静電容量をコンデンサC1で表わし、更に、検出器30、積分器31の等価回路を示す。
【0035】
図2に示すメモリ35内には、現像装置4が新品であることを識別する新品識別手段となる新品識別スイッチが備えられており、該新品識別スイッチがONかOFFかによって現像装置4が新品か否かが判断可能になっている。更に、メモリ35は供給ローラ24が所定のトナー量(現像剤量)を含んだ状態に対応する静電容量の基準値S(閾値)を記憶する現像剤情報記憶手段を兼ねる。
【0036】
ここで、基準値Sは供給ローラ24のトナー充填前後で変化する供給ローラ24の芯金24aと、現像ローラ25の芯金25aとの間の静電容量値の増分と比較するための基準静電容量の参照値である。尚、本実施形態では、基準値Sとして静電容量を採用した場合について説明するが、他に、供給ローラ24の芯金24aと、現像ローラ25の芯金25aとの間のインピーダンスや電圧値を比較参照する基準値Sとして利用することも出来る。
【0037】
トナー量検知用のバイアス電源36により交流電圧が供給ローラ24の芯金24aに印加される。供給ローラ24と現像ローラ25との芯金24a,25a間は、図3に示す等価回路においてコンデンサC1で表される。
【0038】
バイアス電源36により供給ローラ24の芯金24aに交流電圧を印加した際に現像ローラ25の芯金25aに誘起する交流電圧を計測する交流電圧計測手段となる検出器30は、抵抗RとダイオードDから成る。そして、コンデンサC1の出力は抵抗Rの電圧として取り出され、ダイオードDで半波整流される。
【0039】
ダイオードDで半波整流された電圧は、コンデンサC2で示される積分器31により積分されて直流電圧化される。この直流電圧を検出値とする。
【0040】
バイアス電源36により供給ローラ24の芯金24aに交流電圧を印加する。そして、検出器30によって計測される現像ローラ25の芯金25aに誘起される電圧に基づいて、現像剤容器21内のトナー11の残量を検出する現像剤量検出手段となるトナー量計算部32でトナー量を算出する。
【0041】
本実施形態では、積分器31により積分されて得られた直流電圧値から静電容量を導いてトナー量に換算している。図2に示すように、本実施形態では、現像剤容器21内のトナー量が多くなるほど供給ローラ24の表面にかかるトナーの重量が重くなるため、供給ローラ24内に飽和するトナー量も多くなる。図4に本実施形態の現像装置4における現像剤容器21内のトナー量と、供給ローラ24のスポンジ内部の飽和したトナー量との推移を示す。図4に示すように、現像剤容器21内のトナー量が増加するにつれて供給ローラ24のスポンジ内部の飽和したトナー量も多くなっていることが分かる。
【0042】
また、現像装置4が新品である場合には、トナー量計算部32にて供給ローラ24のトナー充填する前後で増加した供給ローラ24の芯金24aと、現像ローラ25の芯金25aとの間の静電容量の増加分ΔXの計算も行う。この静電容量の増加分ΔXは、図2に示すトナー量比較部50によりメモリ35に記憶された供給ローラ24の芯金24aと、現像ローラ25の芯金25aとの間の静電容量の増加分ΔXの予め設定された基準値Sと比較を行う。
【0043】
図5に供給ローラ24のスポンジ内に含有されるトナー量に対する供給ローラ24の芯金24aと、現像ローラ25の芯金25aとの間の静電容量の推移を示す。静電容量はNF社製LCRメータZM2354にて測定した。図5から分かるように、供給ローラ24のスポンジ内のトナー量と、供給ローラ24の芯金24aと、現像ローラ25の芯金25aとの間の静電容量とは線形関係にある。つまり、供給ローラ24の芯金24aと、現像ローラ25の芯金25aとの間の静電容量を測定するということは、供給ローラ24のスポンジ内に存在するトナー量を観測していることになる。
【0044】
次に、供給ローラ24周期の濃度抜けにおける発生メカニズムについて説明する。
【0045】
供給ローラ24周期の濃度抜けの発生時においては、前述したように、供給ローラ24のスポンジ部が現像ローラ25よりも柔らかい。このために当接位置にて凹み状に変形した凹み部の現像ローラ25へのトナー供給性が該凹み部以外の他の部位よりも劣るため濃度が白く抜ける画像となって現れる。
【0046】
ただし、画出し前の供給ローラ24の回転時間を長くすると白抜け現象が良化する傾向があることから該凹み部で常に濃度抜けが発生するわけではない。つまり、供給ローラ24に充分の濃度が得られるトナーが含まれた後に画出しを行えば、該凹み部における濃度が濃くなり供給ローラ24周期の濃度抜けが見え難くなるものと考えられる。
【0047】
また、供給ローラ24のスポンジ部の凹み部は、現像ローラ25との当接によって生ずるため、その凹み量と放置日数との関係を調査した。放置は温度が23℃、湿度が50%の環境にて行った。凹み量と放置日数との関係結果を図6に示す。
【0048】
尚、供給ローラ24のスポンジ部の凹み量の測定は、全自動ローラ測定器(東京電子工業株式会社製 RSV−860PC−S)にて供給ローラ24の直径を測定し、凹み部にあたる直径の最小値と、直径の最大値との差を求めて凹み量としている。最大値を取ったのは、凹み部の極近傍に当たる部分が凹みの歪みによる影響でスポンジが押し出されて、その部分が盛り上がる傾向があり、最大値となる場合が多いためである。
【0049】
図6の結果から、供給ローラ24のスポンジ部の凹み量は放置開始から急激に増加するものの約220μm程度で飽和することが分かった。
【0050】
次に、図7を用いて、供給ローラ24のスポンジ部の凹み量と、供給ローラ24の回転時間及び回転数と、供給ローラ24の芯金24aと、現像ローラ25の芯金25aとの間の静電容量と、画像濃度と、画像品質との関係について述べる。
【0051】
発明者らは、凹み部が異なる二種類の供給ローラ24を用意し、これらを回転させてトナー11を含ませ、供給ローラ24周期の濃度抜けの画像品質レベルと、供給ローラ24の芯金24aと、現像ローラ25の芯金25aとの間の静電容量との関係を調べた。
【0052】
供給ローラ24は、図7に示すように、凹み量が約70μmのものと、最大凹み量としての約220μmのものを用いた。
【0053】
トナー11の含まれていない上記二種類の供給ローラ24を現像装置4に組み込む。そして、供給ローラ24の使用開始からの回転数と、供給ローラ24の芯金24aと、現像ローラ25の芯金25aとの間の静電容量、供給ローラ24周期の濃度抜けの発生レベルとの関係を調べた。
【0054】
実験環境としては、温度が23℃、湿度が50%で行った。また、画像としてベタ黒画像を出力し、供給ローラ24周期の濃度抜けに対して、「×(視認性大)」、「△(視認性軽微)」、「○(視認性極軽微:実使用上問題ないレベル)」、「◎(発生なし)」の3段階で評価した。
【0055】
また、供給ローラ24のスポンジ部の凹み部のベタ濃度を測定した。濃度はマクベス濃度計(Macbeth社製)を用いて測定した。尚、現像剤容器21には、予め40gのトナー11を充填した。
【0056】
また、トナー11が含まれていない状態で、この2本の供給ローラ24について、該供給ローラ24の芯金24aにバイアス電源36によりトナー残検用バイアスの交流電圧を印加する。そして、該供給ローラ24の芯金24aと、現像ローラ25の芯金25aとの間の静電容量を凹み部以外のところで測定する。その結果、図7に示すように、何れの供給ローラ24も11.48pFであった。
【0057】
その後、現像装置4のトナーシールを切り、供給ローラ24を回転させながらトナー11を充填し、同様に、該供給ローラ24の芯金24aと、現像ローラ25の芯金25aとの間の静電容量を凹み部と凹み部以外のところで測定した。静電容量の測定結果と画像品質との関係を図7にまとめた。
【0058】
図7に示すように、トナー11が供給ローラ24に充填され、該供給ローラ24の芯金24aと、現像ローラ25の芯金25aとの間の静電容量が上がるにつれて供給ローラ24周期の濃度抜けが良化することが分かる。
【0059】
尚、図7に示すように、供給ローラ24のスポンジ部の凹み部では、該供給ローラ24の芯金24aと、現像ローラ25の芯金25aとの間の静電容量が上昇し、トナー量が増加しても該凹み部以外との静電容量の差分はほぼ同じである。この理由としては、供給ローラ24のスポンジ部の凹み部が現像ローラ25との当接部に来た時に該供給ローラ24の芯金24aが現像ローラ25の芯金25aに近づくためであると考えられる。供給ローラ24と現像ローラ25との芯金24a,25a間が供給ローラ24のスポンジ部の凹み部において近づくため、該供給ローラ24の芯金24aと、現像ローラ25の芯金25aとの間の静電容量が大きくなるのである。
【0060】
更に、供給ローラ24のスポンジ部の凹み量が異なっていても凹み部の濃度(光学濃度)が1.35程度あれば、供給ローラ24周期の濃度抜けは「〇」レベルになることが分かる。これは、この程度の濃度に達したところでの供給ローラ24のスポンジ部の凹み部と該凹み部以外との濃度差が小さくなっていることと、濃度が濃くなると濃度差が数値としてあっても全体として濃いために濃度差が目で捉え難くなるためと思われる。尚、図7に示すように、本実験における濃度が1.35に達するときの供給ローラ24の芯金24aと、現像ローラ25の芯金25aとの間の静電容量の値は、供給ローラ24のスポンジ部の凹み量が220μm品にて12.92pFである。
【0061】
また、図7に示すように、供給ローラ24のスポンジ部の凹み量が70μm品の方が、該供給ローラ24の回転数が少ないところで「○」レベルに達する。これは、供給ローラ24のスポンジ部の凹み量が小さい方が現像ローラ25へのトナー供給性が良いためである。
【0062】
また、供給ローラ24の回転数が240回転以上においては、該供給ローラ24の回転数の増加に対して、該供給ローラ24の芯金24aと、現像ローラ25の芯金25aとの間の静電容量はほぼ変わらない状態となっている。そして、供給ローラ24内のトナー量が飽和したと考えられる。この結果から、トナー量が飽和に至らなくても、供給ローラ24周期の濃度抜けが問題ないレベルに達しているのが分かる。
【0063】
次に、本実施形態の画像形成装置10における供給ローラ24周期の濃度抜けを抑制し、画出し開始前の供給ローラ24の回転数を減少させる方法について述べる。
【0064】
前述した実験結果から、現像装置4のトナーシールを切った後、画出し開始までの供給ローラ24の回転時間において、供給ローラ24周期の濃度抜けが「○」レベルに至る。そのためには、図7に示すように、供給ローラ24のスポンジ部の凹み量が220μm品であれば、該供給ローラ24のスポンジ部の凹み部の濃度が1.35になるまで供給ローラ24の回転を行えば良い。
【0065】
上述したように、供給ローラ24のスポンジ部の凹み量は約220μmで飽和する。したがって、供給ローラ24のスポンジ部の凹み量が220μm品の凹み部の濃度が1.35に達するまで供給ローラ24の回転を行えば、供給ローラ24周期の濃度抜けを充分抑制可能となる。
【0066】
図7に示す実験結果から、供給ローラ24のスポンジ部の凹み量が220μm品の濃度が1.35に達するまでには、供給ローラ24の回転数は26回転を要する。
【0067】
図7に示すように、供給ローラ24のスポンジ部の凹み量が220μm品で、該供給ローラ24の回転開始前(図7の回転数が0)に該供給ローラ24のスポンジ部の凹み部で静電容量を測定した。そのときの該供給ローラ24の芯金24aと、現像ローラ25の芯金25aとの間の静電容量が11.73pFである。
【0068】
また、該供給ローラ24が26回転した際の該供給ローラ24のスポンジ部の凹み部で静電容量を測定した。そのときの該供給ローラ24の芯金24aと、現像ローラ25の芯金25aとの間の静電容量が12.92pFである。
【0069】
このとき、供給ローラ24の回転開始前と、該供給ローラ24が26回転した際の該供給ローラ24の芯金24aと、現像ローラ25の芯金25aとの間の静電容量の増加分ΔXとしては、以下の数1式に示す通りである。
【0070】
[数1]
ΔX=12.92pF−11.73pF=1.19pF
【0071】
したがって、供給ローラ24の回転開始前からの該供給ローラ24の芯金24aと、現像ローラ25の芯金25aとの間の静電容量の増加分ΔXとしては、1.19pF変化したところで供給ローラ24の回転を停止すれば良い。
【0072】
そこで、本実施形態においては、供給ローラ24の回転開始前からの該供給ローラ24の芯金24aと、現像ローラ25の芯金25aとの間の静電容量の増加分ΔXの基準値Sとして、メモリ35に、1.19pFを記憶させておく。そして、供給ローラ24がトナーを含むことで増加した該供給ローラ24の芯金24aと、現像ローラ25の芯金25aとの間の静電容量の増加分ΔXを比較し、供給ローラ24の回転停止の制御を行う。
【0073】
以下、現像装置4が新品であることを検知し、供給ローラ24のトナー充填工程を開始して終了(供給ローラ24が回転を開始して停止するまで)し、画像形成装置10がプリント待機状態になるまでの動作を、図8に示すフローチャートを用いて説明する。
【0074】
図8のステップS201において、画像形成装置10本体の電源をON、もしくは、現像装置4の交換ドアを閉じてステップS202に進む。
【0075】
前記ステップS202において、メモリ35内の新品識別スイッチがON(新品)である場合、ステップS203に進み、新品識別スイッチがOFF(新品ではない)である場合、ステップS211に進む。
【0076】
前記ステップS203において、バイアス電源36により交流電圧からなるトナー量検知バイアスを供給ローラ24の芯金24aに印加する。そして、トナー充填開始前の供給ローラ24と現像ローラ25とのそれぞれの芯金24a,25a間の静電容量値Aを測定して、ステップS204に進む。
【0077】
前記ステップS204において、静電容量値Aをトナー量比較部50に記憶して、ステップS205に進む。
【0078】
前記ステップS205において、メモリ35に格納されている基準値Sを読み出し、トナー量比較部50に記憶して、ステップS206に進む。
【0079】
前記ステップS206において、供給ローラ24の回転を開始する。
【0080】
次にステップS207において、供給ローラ24の回転開始と同時にバイアス電源36により交流電圧からなるトナー量検知バイアスを供給ローラ24の芯金24aに印加する。そして、該供給ローラ24の一周回転時間に当たる0.165秒ごとに静電容量値Bを測定し、ステップS208に進む。
【0081】
前記ステップS208において、トナー量計算部32にて、静電容量値Aと静電容量値Bとの差となる静電容量の増加分ΔXを計算し、ステップS209に進む。
【0082】
前記ステップS209において、静電容量の増加分ΔXをトナー量比較部50に記憶して、ステップS210に進む。
【0083】
前記ステップS210において、トナー量比較部50にて、静電容量の増加分ΔXと、基準値Sとを比較する。静電容量の増加分ΔXが基準値S以上であれば、ステップS211に進む。静電容量の増加分ΔXが基準値S未満であれば、前記ステップS207に戻り、0.165秒後に測定された新たな静電容量値Bと、静電容量値Aとの差となる静電容量の増加分ΔXを測定する。
【0084】
前記ステップS211において、供給ローラ24の回転を停止し、バイアス電源36によるトナー量検知バイアスの印加をOFFして、ステップS212に進む。
【0085】
前記ステップS212において、プリント動作が開始されるまで待機する。
【0086】
即ち、制御部13は、メモリ35内の新品識別スイッチがONであることにより現像装置4が新品であることを認識する。そして、現像装置4が新品である場合に、トナー量計算部32により第一検出値(静電容量値A)が検出される。
【0087】
そして、該第一検出値(静電容量値A)が検出された後、モータ12により供給ローラ24の駆動を開始して現像剤容器21内のトナー量が低減した後にトナー量計算部32により第二検出値(静電容量値B)が検出される。
【0088】
そして、メモリ35に記憶された基準値Sと、第一検出値(静電容量値A)と、第二検出値(静電容量値B)との関係を演算する。そして、その関係が、基準値S≦|第一検出値(静電容量値A)−第二検出値(静電容量値B)|となったことを受けて、モータ12による供給ローラ24の駆動を停止する。
【0089】
尚、本実施形態では、第一検出値(静電容量値A)、第二検出値(静電容量値B)、第一検出値(静電容量値A)と第二検出値(静電容量値B)との差(静電容量の増加分ΔX)が静電容量である場合の一例について説明した。しかし、静電容量の代わりに、静電容量に関する検出値として、インピーダンスや電圧値等に置き換えて検出、演算することも出来る。また、本実施例では第一検出値と第二検出値との差分を基準値Sと比較したが、これに限るものではなく、例えば第一検出値と第二検出値との比を別の基準値と比較しても良い。すなわち、第一検出値と第二検出値との比較に基づいて、供給ローラ24の駆動を停止すれば良い。
【0090】
図7に示す供給ローラ24のスポンジ部の凹み量が70μmと220μmの供給ローラ24を使って、図8で示すフローチャートに従って画像形成装置10を動作させる。すると、凹み量70μmの供給ローラ24と、凹み量220μmの供給ローラ24とは共に26回転で停止した。その直後にべた画像の出力を行ったところ、供給ローラ24周期の濃度抜けのレベルは、凹み量70μm品で発生なし。凹み量220μm品は「○」レベルであった。
【0091】
よって、図7に示して前述したように、供給ローラ24の回転数の増加に対して、該供給ローラ24の芯金24aと、現像ローラ25の芯金25aとの間の静電容量がほぼ変わらない状態となる。そして、供給ローラ24内のトナー量が飽和する該供給ローラ24の回転数が240回転よりも充分少ない回転数で、且つ供給ローラ24周期の濃度抜けを抑制した画像を得ることが出来た。
【0092】
従来は、トナー11の含み量が安定する(供給ローラ24の芯金24aと、現像ローラ25の芯金25aとの間の静電容量が安定する)ところまで供給ローラ24を回転させていた。このためプリント開始までに長時間を要した。本実施形態では、供給ローラ24の回転によりトナー11を該供給ローラ24内に含んでいる過程の中でも画像上問題のない状態を実現出来た。したがって、供給ローラ24に含んだトナー量を供給ローラ24の芯金24aと、現像ローラ25の芯金25aとの間の静電容量により検出することでプリント開始までの時間を短縮することが出来た。
【0093】
以上説明したように、供給ローラ24のトナー充填前後において、供給ローラ24の芯金24aと、現像ローラ25の芯金25aとの間の静電容量を比較して、その結果に基いて供給ローラ24の駆動を停止する。これにより供給ローラ24周期の濃度抜けを抑制出来、且つ新品の現像装置4を使用する時の供給ローラ24の回転時間も短くすることが可能になる。
【符号の説明】
【0094】
4 …現像装置
12 …モータ(駆動手段)
13 …制御部(制御手段)
21 …現像剤容器
24 …供給ローラ(現像剤供給部材)
32 …トナー量計算部(現像剤量検出手段)
35 …メモリ(新品識別手段;現像剤情報記憶手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤を収容する現像剤容器と、
前記現像剤容器内に設けられ、導電性支持体の外周に現像剤を含有し得る連続気泡体層を設けた現像剤供給部材と、
静電潜像が形成される像担持体に対向して配置されると共に、前記現像剤供給部材に圧接するよう配置され、導電性支持体を有する現像剤担持体と、
を有する現像装置と、
前記現像剤供給部材を駆動する駆動手段と、
前記現像装置が新品であることを識別する新品識別手段と、
前記現像剤供給部材の前記導電性支持体と前記現像剤担持体の前記導電性支持体との間の静電容量に関する検出値を検出する検出手段と、
前記新品識別手段によって前記現像装置が新品であることを認識したときに前記検出手段により検出された第一検出値と、前記第一検出値が検出された後、前記駆動手段により前記現像剤供給部材の駆動を開始してから前記検出手段により検出された第二検出値と、の比較に基づいて前記駆動手段による前記現像剤供給部材の駆動を停止する制御手段と、
を有する画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
基準値≦|第一検出値−第二検出値|
となったことを受けて前記駆動手段による前記現像剤供給部材の駆動を停止することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記静電容量に関する検出値は、静電容量、インピーダンス、電圧値のうちの何れかであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−114102(P2013−114102A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261210(P2011−261210)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】