説明

画像形成装置

【課題】 感光体を回転駆動するモーターの速度変動に起因する画像不良の抑制を図った画像形成装置を提供すること。
【解決手段】 画像形成装置100では,各色の感光体ドラム21Y,21M,21C,21Kと,中間転写ベルト101と,1次転写ローラー111と,2次転写ローラー115とを1つのモーターMで回転駆動している。モーター電流測定部360は,モーターMに流れる電流を一定のサンプリング周期ごとに測定し,その測定値をモーター制御部350に送信する。露光量調整部340は,モーターMに流れる電流値の変化量ΔIが予め定めた電流閾値IA以上である場合に,露光装置30が感光体ドラム21を露光する露光量の駆動源速度変動濃度補正を行い,モーターMに流れる電流値の変化量ΔIが予め定めた電流閾値IA未満である場合に,露光装置30が感光体ドラム21を露光する駆動源速度変動濃度補正を行わない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,画像形成装置に関する。さらに詳細には,形成される画像の濃度ムラの抑制を図った画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では一般に,感光体ドラムに静電潜像を形成して現像し,現像したトナー像をシートに転写した後シートにトナー像を定着する。これにより,シート上に好適に画像形成が行われる。
【0003】
このように形成される出力画像には,種々の原因で濃度ムラが生じることがある。例えば,感光体感度ムラや,露光装置による露光ムラや,転写ムラである。各工程において生じた上記のムラは,最終的に出力画像の濃度ムラとなって表れる。そこで,出力画像に生じる濃度ムラの発生を抑制する技術が開発されてきている。
【0004】
特許文献1には,画像の濃度および主走査方向の位置の組み合わせに応じて主走査方向の露光位置に対応した露光補正量を決定する露光補正量決定部と,その露光補正量に基づいて補正を行う露光量制御部とを有する画像形成装置が開示されている(特許文献1の請求項1参照)。この画像形成装置は,画像の濃度が濃い場合と薄い場合とで異なる,主走査方向に現れる濃度ムラの濃度分布の違いに応じて露光量の補正を行うものである。これにより,特許文献1の図8に示すような主走査方向の濃度ムラの発生を抑制することができるとしている(特許文献1の段落[0007]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−131961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで,画像形成装置のうちには,1個のモーターが各色の感光体ドラムの他,転写ローラー等の転写部材をも回転駆動させるものがある。この種の画像形成装置では,その1個のモーターに負荷がかかると,そのモーターから駆動を受けるすべての各部に影響が現れる。例えば,転写ローラーのニップ部に厚紙が突入すると,転写ローラーに高い負荷がかかる。これにより,モーターにかかる負荷は増大する。すると,モーターの回転速度は一時的に減少する。それにつれて,このモーターから駆動を受ける各色の感光体ドラムの回転速度も一時的に変化する。その回転速度の一時的な変化をしている期間内に感光体ドラムに形成される静電潜像は歪む。したがって,最終的に出力される画像に濃度ムラが生じることがある。
【0007】
しかし,特許文献1に記載の画像形成装置では,このような突発的な外乱に起因する画質の低下を抑制することは困難である。特許文献1に記載の画像形成装置は,画像の濃度および主走査方向の位置の組み合わせに応じて補正量を決定するものだからである。また,特許文献1に記載の画像形成装置は,主走査方向に現れる画像の濃度ムラを抑制するものである。したがって,副走査方向に現れる画像の濃度ムラを抑制することは困難である。したがって,モーターの回転速度の変化に起因する画質の低下を防止することは困難である。もちろん,特許文献1以外の技術であっても,上記の画質の低下を防止することは困難である。突発的な外乱を想定するとともに副走査方向に現れる濃度ムラを抑制することが必要であるからである。
【0008】
本発明は,前述した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,感光体を回転駆動するモーターの速度変動に起因する画像不良の抑制を図った画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題の解決を目的としてなされた本発明の画像形成装置は,感光体に静電潜像を書き込みその静電潜像を現像してトナー像を形成するとともに,形成されたトナー像をシートに転写する画像形成部と,画像形成部での転写に供するシートの搬送経路上に設けられた搬送ローラー対と,感光体と搬送ローラー対とを駆動する,予め設定した設定回転速度で回転するように制御されている駆動源と,少なくとも画像の濃度を補正する画像制御部と,画像制御部による画像の濃度の補正に用いられる補正値を決定する補正値決定部とを有するものである。また,画像制御部は,形成しようとする画像について感光体で静電潜像の書き込みを行っている間に搬送ローラー対のニップ部に,シートの先頭が突入した後もしくはシートの後端が抜けた後の駆動源の回転速度(変動回転速度)と設定回転速度との差が予め定めた程度以上である場合に,駆動源の変動回転速度が設定回転速度からはずれてから設定回転速度に収束するまでの回転速度変動期間内に画像形成する画像の濃度を補正する駆動源速度変動濃度補正を行うとともに,駆動源の変動回転速度と設定回転速度との差が予め定めた程度未満である場合に,回転速度変動期間内に駆動源速度変動濃度補正を行わないものである。そして,補正値決定部は,画像制御部が回転速度変動期間内に駆動源速度変動濃度補正を行う場合に,変動回転速度が設定回転速度より速いときに画像の濃度を濃く補正する補正値を決定するとともに,変動回転速度が設定回転速度より遅いときに画像の濃度を薄く補正する補正値を決定するものである。かかる画像形成装置は,駆動源に速度変動が生じても,画像の濃度が薄くなる箇所の画像の濃度を濃くするとともに,画像の濃度が濃くなる箇所の画像の濃度を薄くすることができる。これにより,駆動源に高い負荷がかかっても,画像形成する画像に濃度ムラが発生することを抑制することができる。
【0010】
上記に記載の画像形成装置において,駆動源に流れる電流値を測定する駆動源電流値測定部を有し,画像制御部は,駆動源電流値測定部により測定された電流値の変化量が,予め定めた電流閾値以上である場合に,駆動源の変動回転速度と設定回転速度との差が予め定めた程度以上であると判断するとともに,駆動源電流値測定部により測定された電流値の変化量が,予め定めた電流閾値未満である場合に,駆動源の変動回転速度と設定回転速度との差が予め定めた程度未満であると判断するものであるとよい。駆動源の回転速度の変化量を,回転速度を制御されている駆動源に流れる電流値を測定することにより,判断することができるからである。
【0011】
上記に記載の画像形成装置において,駆動源のトルクを測定する駆動源トルク測定部を有し,画像制御部は,駆動源トルク測定部により測定されたトルクの変化量が,予め定めたトルク閾値以上である場合に,駆動源の変動回転速度と設定回転速度との差が予め定めた程度以上であると判断するとともに,駆動源トルク測定部により測定されたトルクの変化量が,予め定めたトルク閾値未満である場合に,駆動源の変動回転速度と設定回転速度との差が予め定めた程度未満であると判断するものであってもよい。駆動源の回転速度の変化量を,駆動源のトルク変動量により,判断することができるからである。
【0012】
上記に記載の画像形成装置において,補正値決定部は,感光体に露光する露光量を補正する露光量補正値を決定する露光量補正値決定部であるとともに,回転速度変動期間内に駆動源速度変動濃度補正を行う場合に,変動回転速度が設定回転速度より速いときに感光体の露光量の値を大きいものとする補正値を決定するとともに,変動回転速度が設定回転速度より遅いときに感光体の露光量の値を小さいものとする補正値を決定するものであるとよい。そして,画像制御部は,感光体を露光する露光量について補正済みの値を用いるものであるとよい。駆動源の突入後回転速度と設定回転速度との差が大きい場合に,露光量を補正することにより,画像形成する画像に濃度ムラが発生することを抑制することができるからである。
【0013】
上記に記載の画像形成装置において,補正値決定部は,感光体上に担持されているトナー像をシートに転写する転写電圧を補正する転写電圧補正値を決定する転写電圧補正値決定部であるとともに,回転速度変動期間内に駆動源速度変動濃度補正を行う場合に,変動回転速度が設定回転速度より速いときに転写電圧の値を大きいものとする補正値を決定するとともに,変動回転速度が設定回転速度より遅いときに転写電圧の値を小さいものとする補正値を決定するものであるとよい。そして,画像制御部は,感光体上のトナー像を転写する転写電圧について補正済みの値を設定するものであるとよい。駆動源の突入後回転速度と設定回転速度との差が大きい場合に,転写電圧を補正することにより,画像形成する画像に濃度ムラが発生することを抑制することができるからである。
【0014】
上記に記載の画像形成装置において,駆動源電流値測定部により検出された電流値の変化の程度が大きいほど値が小さく,駆動源電流値測定部により検出された電流値の変化の程度が小さいほど値が大きい露光量補正値が格納されている露光量補正値表記憶部を有し,補正値決定部は,露光量補正値表記億部に記憶されている露光量補正値表から読み出した露光量補正値を補正値として採用するものであるとよい。露光量補正値表を用いることにより,露光量補正値の決定に時間がそれほどかからないからである。
【0015】
上記に記載の画像形成装置において,シートの搬送経路における搬送ローラー対より上流の位置に設けられた,シートの厚みを検出するシート厚検出部と,シートの厚みと,その厚みのシートをニップ部に突入したときに設定すべき露光量の時間変化パターンとを対応させた露光量補正値表を記憶する露光量補正値記憶部とを有し,補正値決定部は,シート厚検出部から検出されたシートの厚みと,露光量補正値記憶部に記憶されている露光量補正値表とから,補正値を決定するものであるとよい。シート厚検出部によるシートの厚みを検出することにより,露光量補正値を決定することができるからである。
【0016】
上記に記載の画像形成装置において,同一サイズであって厚みの異なるシートを給紙するための複数のシート給紙部と,複数のシート給紙部のそれぞれと,そのシート給紙部から供給されるシートがニップ部に突入したときに設定すべき露光量の時間変化パターンとを対応させた露光量補正値表を記憶する露光量補正値記憶部とを有し,補正値決定部は,画像形成に供するシートを給紙するシート給紙部と,露光量補正値記憶部に記憶されている露光量補正値表とから,補正値を決定するものであるとよい。いずれのシート給紙部からシートを供給するかにより,露光量補正値を決定するため,画像の濃度の補正をより早く行うことができるからである。
【0017】
上記に記載の画像形成装置において,搬送ローラー対の一方のローラーは,形成されたトナー像のシートへの転写を行う転写ローラーであってもよい。厚みの厚いシートが転写ローラーのニップ部に突入することに起因する駆動源の速度変動による画像の濃度ムラの発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば,感光体を回転駆動するモーターの速度変動に起因する画像不良の抑制を図った画像形成装置が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態に係る画像形成装置を説明するための概略構成図である。
【図2】実施形態に係る画像形成装置の制御系を説明するためのブロック図である。
【図3】実施形態に係る画像形成装置において濃度ムラの発生原因を説明するための図である。
【図4】実施形態に係る画像形成装置の感光体ドラムの回転速度と画像の濃度との関係を示す図(その1)である。
【図5】実施形態に係る画像形成装置の感光体ドラムの回転速度と画像の濃度との関係を示す図(その2)である。
【図6】実施形態に係る画像形成装置に用いられるモーターの電流値の時間的変化を示すグラフである。
【図7】実施形態に係る画像形成装置のモーターの電流値の変化量およびモーターの回転速度の変化量の時間的変化を示す図(その1)である。
【図8】実施形態に係る画像形成装置のモーターの電流値の変化量およびモーターの回転速度の変化量の時間的変化を示す図(その2)である。
【図9】実施形態に係る画像形成装置の感光体ドラムにおける露光調整を行う領域を例示する図である。
【図10】実施形態に係る画像形成装置におけるモーターの電流値の変化量と露光量補正値との関係を示すグラフである。
【図11】実施形態に係る画像形成装置のモーター電流値の変化量とモーターの回転速度と露光量とを示すグラフである。
【図12】実施形態に係る画像形成装置における露光量の調整手順を示すフローチャートである。
【図13】実施形態に係る画像形成装置により画像形成されるシートにおける画質低下範囲を示すためのグラフである。
【図14】実施形態に係る画像形成装置により複数のシートに連続的に画像形成される場合を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下,本発明を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。以下に説明する形態は,カラーコピー機について,本発明を具体化したものである。
【0021】
1.画像形成装置
1−1.画像形成装置の概略構成
画像形成装置100は,図1にその概略構成を示すように,中間転写ベルト101を有する,いわゆるタンデム方式のカラーコピー機である。中間転写ベルト101は,無端状ベルト部材であり,その図中両端部がローラー102,103によって支持され,図1中の矢印Xの向きに回転するようになっている。中間転写ベルト101の図中下部に沿って,イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)の各色の画像形成部1Y,1M,1C,1Kが配置されている。
【0022】
各色の画像形成部1Y,1M,1C,1Kはいずれも同様の構成である。それぞれ,感光体ユニット20と,露光装置30と,現像ユニット10とを有している。感光体ユニット20は,静電潜像を担持する感光体ドラム21を有している。感光体ドラム21は,トナー像を担持するための像担持体である。露光装置30は,感光体ドラム21に静電潜像を描きこむためのものである。現像ユニット10は,感光体ドラム21の静電潜像にトナーを付与して現像するためのものである。また,中間転写ベルト101を挟んで感光体ドラム21に対向する位置に,1次転写ローラー111が配置されている。図1中では画像形成部1Yによって代表してこれらの各装置の符号を示している。
【0023】
図1中で下方に配置されているのは,用紙Pを収容する給紙カセット112である。給紙カセット112の上部には,用紙Pを送り出す給紙ローラー113が設けられている。用紙Pは,給紙カセット112から用紙搬送経路114に沿って上方へ送られる。用紙搬送経路114を挟んで,ローラー103と対面する位置に,2次転写ローラー115が配置されている。ローラー103と2次転写ローラー115とにより,ニップ部125が構成されている。ローラー103および2次転写ローラー115は,用紙Pの搬送経路上に設けられた,用紙Pを搬送するための搬送ローラー対である。1次転写ローラー111と,中間転写ベルト101と,2次転写ローラー115とは,トナー像をシートに転写するための転写部である。さらに2次転写ローラーの下流側(図1中上方)の位置には,定着装置130が配置されている。定着装置130は,加圧ローラー131,定着ローラー132のローラー対を有している。
【0024】
画像形成装置100には,原稿載置面211に載置された原稿から画像を読み取るための画像読取部210が設けられている。また,画像形成装置100は,タッチパネル230を有している。タッチパネル230は,プリントアウトに関するユーザーからの指示を受け付ける入力部である。
【0025】
また,画像形成装置100は,モーターMを有している。モーターMは,感光体ドラム21と,1次転写ローラー111と,2次転写ローラー115と,ローラー103とを回転駆動するための駆動源である。モーターMは,後述するように,設定回転速度D0で回転するように制御されている。これらの回転駆動を受ける各部は,モーターMからの駆動を受けるようになっている。これらの各部は,減速機などを用いることにより,必ずしも回転速度は等しくないが,モーターMの回転とともに回転するものである。また,画像形成装置100は,モーター電流測定部360を有している。モーター電流測定部360は,モーターMの電流を測定するための駆動源電流値測定部である。
【0026】
また,画像形成装置100は,制御部300を有している。制御部300は,各部の機械的な動作を制御する。また,読み取った画像に画像処理を施すものでもある。その詳細については,後述する。
【0027】
1−2.画像形成装置の基本的動作
次に,本形態の画像形成装置100の基本的な動作を簡単に説明する。この画像形成装置100では,コピーを行うジョブを受け付けると,画像読取部210が原稿の画像情報を読み取る。その際には,原稿に光を入射し,その反射波を画像情報として読み取る。
【0028】
画像形成の指示を受けると,その読み取った画像信号から各色の画像データを生成する。生成された各色の画像データは,対応する画像形成部1Y,1M,1C,1Kにそれぞれ送出される。各色の画像形成部1Y,1M,1C,1Kは,画像データに基づいて,静電潜像を形成する。さらに,形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する。
【0029】
形成されたトナー像は,順次,1次転写ローラー111によって中間転写ベルト101に転写され,重ね合わせられる。中間転写ベルト101に重ね合わせられたトナー像は,2次転写ローラー115によって用紙Pに転写される。トナー像を担持した用紙Pは,さらに搬送されて定着装置130に至り,定着装置130によって加熱されるとともに加圧される。これによりトナー像が用紙Pに定着される。トナー像が定着された用紙Pは,排紙ローラー116によって排紙トレイ117に排出される。以上が,画像形成装置100の基本的な動作である。
【0030】
2.画像形成装置の制御系
ここで,画像形成装置100の制御系について説明する。画像形成装置100の制御系を図2のブロック図に示す。制御部300は,機械制御部310と,画像制御部320とを有している。機械制御部310は,モーター制御部350を有している。画像制御部320は,画質低下範囲算出部330と,露光量調整部340とを有している。
【0031】
機械制御部310は,画像形成部1Y,1M,1C,1Kやその他の各部の機械的な動きを制御するためのものである。モーター制御部350は,1次転写ローラー111と,中間転写ベルト101と,2次転写ローラー115と,感光体ドラム21Y,21M,21C,21Kとを回転駆動を制御するための駆動源制御部である。そして,モーターMを予め定めた設定回転速度D0で回転するように制御するためのものである。その制御の際に,モーター電流測定部360により測定されたモーターMの電流値が入力される。
【0032】
画像制御部320は,画像読取部210により読み取られた画像イメージを加工するためのものである。そして,少なくとも画像の濃度を補正することのできるものである。画質低下範囲算出部330は,後述する変形例で用いられるものである。画質低下範囲算出部330は,モーターMの回転速度の速度変動期間内に静電潜像が描かれる範囲を算出するためのものである。露光量調整部340は,各色の露光装置30Y,30M,30C,30Kがそれぞれ感光体ドラム21Y,21M,21C,21Kを露光する際の露光量に補正をかけることにより露光量を調整するためのものである。そして,補正を行う場合の露光量補正値を決定する露光量補正値決定部でもある。この露光量補正値は,後述するように,画像の濃度の補正に用いられる補正値である。
【0033】
記憶部400は,本体付属記憶部410と,ユニット付属記憶部420と,露光量補正値記憶部430とを有している。本体付属記憶部410は,画像形成装置100本体の情報を記憶するためのものである。ユニット付属記憶部420は,現像ユニット10や感光体ユニット20に付属されている記憶部である。露光量補正値記憶部430は,モーターMの電流値の変化量ΔIと,露光量補正値ΔEとの関係を定めた露光量補正値表を記憶しておくためのものである。
【0034】
3.モーターの回転速度の速度変動に起因する画質の低下
ここで,画質が低下する原因について説明する。本形態で問題とする画質の低下は,モーターMの回転速度の変動に起因して起こるものである。このモーターMの回転速度の変動の原因として,次のようなものが挙げられる。例えば,シートとして厚紙を採用した場合に,そのシートが転写部のニップ部に突入した際における,モーターMにかかる負荷トルクの上昇である。画像形成部1が静電潜像の書き込みを行っている期間内に負荷トルクの上昇があると,モーターMの回転速度に変動が生じる。そして,画像形成する画像の品質が低下する。その理由を後述する。
【0035】
3−1.駆動源および駆動伝達系
本形態では,前述のとおり,1個のモーターMが,感光体ドラム21Y,21M,21C,21K,中間転写ベルト101,2次転写ローラー115を駆動する。そのため,駆動を受ける各部のうち,いずれか一つにでも大きな負荷がかかると,モーターMの回転速度は下がる。これにより,モーターMから駆動を受けるその他の各部の回転速度も下がることとなる。
【0036】
3−2.モーターにかかる負荷とモーターの速度変動
図3は,画像形成の途中で,2次転写ローラー115とローラー103とのニップ部125に厚紙が突入したときに,スジ状のムラが発生する様子を説明するための図である。図3では,モーターMの負荷トルクと,モーターMの回転速度と,厚紙に形成される画像とが関連付けて示されている。モーターMの負荷トルクを図3中の上段のグラフに示す。モーターMの回転速度を図3中の中段のグラフに示す。厚紙に形成される画像を図3中の下段の図に示す。
【0037】
図3の上段および中段のグラフの横軸は,時間である。図3の上段のグラフの縦軸はモーターMの負荷トルクである。図3の中段のグラフの縦軸はモーターMの回転速度である。図3の下段の図の横方向は,シート上の副走査方向である。ここにおける位置y1〜y5がそれぞれ,図3の上段および中段の横軸中の時刻t1〜t5に露光された位置である。図3の下段の図の縦方向は,シート上の主走査方向である。
【0038】
画像形成時に,厚紙がニップ部125に突入すると,図3の上段のグラフに示すように,モーターMにかかる負荷は大きいものとなる。図3の上段のグラフに示すように,時刻t1において,厚紙は,ニップ部125に突入する。厚紙の搬送に要するトルクは,薄紙の搬送に要するトルクより大きい。ここで薄紙とは,厚紙よりも薄いシートのことであり,普通紙を含むものとする。そのため,モーターMの負荷トルクは,時刻t1の後に上昇する。負荷トルクがモーターMの発生トルクを超えると,モーターMの回転速度は下がる。つまり,ニップ部125に厚紙が突入すると,モーターMの回転速度は設定速度D0より下がる。
【0039】
モーターMの回転速度は,時刻t1の経過後に一旦は下がるが,その後再び上昇する。機械制御部310が,モーターMの回転速度を設定速度D0まで回復させようと制御しているからである。そのため,時刻t2でモーターMの回転速度は,一旦は設定速度D0となる。しかし,時刻t2の直後には,モーターMの回転速度の値は設定速度D0より大きい値をとる。モーターMの回転速度を設定速度D0まで短時間で回復させようとするために,モーターMの回転速度がオーバーシュートするからである。そのため,時刻t2経過後には,感光体ドラム21Y,21M,21C,21Kは,通常の画像形成時の設定速度D0より速い回転速度で回転する期間(図3では時刻t2から時刻t3までの期間)がある。
【0040】
そして,感光体ドラム21の回転速度は,時刻t3で再び設定速度D0となる。図3の中段のグラフに示すように,感光体ドラム21の回転速度は,設定速度D0に徐々に収束していく。そして,時刻t5以降では,モーターMの回転速度は再び設定速度D0となる。つまり,時刻t1から時刻t5までの期間内では,モーターMの回転速度は,設定速度D0で安定に回転していない。この時刻t1から時刻t5までの間に露光装置30が感光体ドラム21上に書き込んだ静電潜像は,図3の下段の図に示すように,y1からy5までの領域にわたって存在している。y1からy5までの領域は,時刻t1から時刻t5までの期間内に感光体ドラム21上に画像形成されたトナー像がシートに転写された領域である。そのため,y1からy5までの領域では,後述するように,スジ状のムラが発生しうる。
【0041】
3−3.スジ状のムラの発生
このように,感光体ドラム21Y,21M,21C,21Kの回転速度は,図3の中段のグラフに示すように,時刻t1から時刻t2の間では設定速度D0より遅い。そして,時刻t2から時刻t3の間では,感光体ドラム21の回転速度は設定速度D0より速い。そして,時刻t3から時刻t4の間では,感光体ドラム21の回転速度は設定速度より遅い。
【0042】
一方,露光装置30は,感光体ドラム21Y,21M,21C,21Kが設定速度D0で回転しているものとして,静電潜像の書き込みを行う。したがって,モーターMにかかる負荷に起因するスジ状のムラが引き起こされることとなる。そのため,画像形成時にこのような感光体ドラム21の回転速度の変化が起こると,図4に示すように,画像形成時に回転速度の速い箇所(U2)と,回転速度の遅い箇所(U1,U3)とができる。
【0043】
そのため,図4に示すように,回転速度の遅い箇所U1,U3では,画像の濃度が濃い。回転速度の速い箇所U2では,画像の濃度が薄い。これは,ハーフトーン画像をプリントアウトした場合には,濃度ムラとなって表れる。また,回転速度の遅い箇所U1,U3で,静電潜像そのものが副走査線方向に縮んでしまうおそれがある。線図をプリントアウトした場合には,画像の歪みとして表れる。
【0044】
このように,濃度ムラや画像の歪み等,スジ状のムラが生ずることがある。このスジ状のムラは,感光体ドラム21Y,21M,21C,21K上に形成される画像に表れる。そのため,その後の転写像や定着画像にも同様に,スジ状のムラとなって表れる。
【0045】
このように,感光体ドラム21Y,21M,21C,21Kの回転速度が速くなったり,遅くなったりすると,画像形成される画像にスジ状のムラが生じる。これは,図3の中段のグラフと,図3の下段の図との対応にも現れている。一方,感光体ドラム21Y,21M,21C,21Kの回転速度をほぼ一定とすれば,図5に示すように,画像形成される画像にスジ状のムラはほとんど生じない。
【0046】
つまり,モーターMの回転速度の速い場合に,画像形成する画像の濃度を濃くするとともに,モーターMの回転速度の遅い場合に,画像形成する画像の濃度を薄くすればよい。
【0047】
3−4.画質低下領域(スジ状のムラが発生する領域)
スジ状のムラは,図3に示す画質低下領域Rの内部で発生する。画質低下領域Rは,図3の下段におけるy1からy5までにわたる領域である。モーターMとの関連性を理解しやすくするために,画質低下領域Rは,図3中ではやや広い領域で描かれている。画質低下領域Rは,モーターMの回転速度が設定速度D0からずれている期間内に画像形成された領域である。つまり,厚紙の転写部のニップ部125への突入という外乱が生じてからモーターMの回転速度が安定状態に回復するまでの期間内(時刻t1から時刻t5)に,露光装置30が感光体ドラム21に形成した静電潜像の領域である。したがって,y1からy5までにわたる長さWは,画質低下領域Rにおける副走査方向の長さ(搬送方向サイズ)である。
【0048】
そして,この搬送方向サイズW(y1からy5までの長さ)は,シートの厚みによって決まる。シートの厚みが厚いほど,モーターMの回転速度が設定速度D0に回復するまでの時間が長い。つまり,搬送方向サイズWは長い。そして,紙の材質によっても,搬送方向サイズWは変わる。したがって,搬送方向サイズWについては,紙の種類に対応させて予め記憶しておけばよい。
【0049】
また,画質低下領域Rは,用紙搬送方向と直交する方向にわたって存在している。つまり,画質低下領域Rにおける搬送方向に垂直な方向のサイズ(幅方向サイズ)は,シートの幅方向(搬送方向に垂直な方向)のサイズそのものである。
【0050】
画質低下領域Rは,図3の下段の図に示すように,シートの搬送方向の先端P1から一定の距離Qだけ離れた箇所からシートの搬送方向の下流に向かって存在している。ここで,Qは,ニップ部125から1次転写ローラー111までの距離と,各色の感光体ドラム21における露光箇所から1次転写ローラー111と対面する箇所までの距離との和で決まるものである。つまり,Qは,画像形成装置1の機械的構成により決まる既知の値である。ただし,各色の感光体ドラム21Y,21M,21C,21Kにおいて,それぞれ異なる値をとる。したがって,Qについても,予め記憶しておけばよい。
【0051】
なお,図3には,画質の低下する領域が1個だけ示されている。しかし実際には,各色の感光体ドラム21Y,21M,21C,21Kのそれぞれに,画質低下領域Rが存在する。したがって,カラーの画像形成装置では,画質低下領域Rが4個あることがある。ただし,これらの画質低下領域Rの一部の箇所が互いに重なりあっていることもある。
【0052】
4.濃度ムラとモーターの電流値の変化量との関係
本形態の画像形成装置100は,モーターMにかかる負荷が増大することによるモーターMの回転速度の変動量に応じて露光量を調整するものである。そして,モーターMの回転速度の変動量については,モーターMの電流の測定値に基づいて求める。モーターMの電流値については,モーターMの回転制御のために,通常測定されるものだからである。したがって,露光量の補正について説明する前に,モーターMの電流値の変化量と濃度ムラとの関係について説明する。
【0053】
4−1.モーターの電流値の変化量
本形態の画像形成装置100は,モーターMに流れる電流値を,一定のサンプリング間隔おきに取得している。このサンプリング周期ごとの電流値の取得は,前述したモーター電流測定部360によりなされる。そして,モーター制御部350は,サンプリング周期ごとの電流値をリアルタイムで取得するとともに,そのデータを露光量調整部340に送信する。露光量調整部340は,後述するように,サンプリング周期ごとの電流値の変化量を算出して,感光体ドラム21に露光する露光量の調整を行う。
【0054】
図6に,モーターMの電流値の時間的変化を示す。図3では,モーターMの電流値の上昇と下降との繰り返しを2回繰り返した後にモーターMの回転速度が一定値に収束するものとして描いたが,図6では,モーターMの電流値の上昇と下降との繰り返しを1回繰り返した後にモーターMの回転速度が一定値に収束するものとして描いてある。時刻t1はニップ部125へシートが突入した時刻である。本形態の画像形成装置100は,モーターMの電流値の立ち上がりの程度に応じて,露光量を調整するものである。
【0055】
時刻t1以降で最も早い時刻にサンプリングを行う時刻をtmとする。時刻tmの次にサンプリングを行う時刻をtnとする。すると,サンプリング周期の1区間分の期間内におけるモーターMの電流値の変化量ΔIは,次式により表される。
ΔI = In − Im
Im: 時刻tmにおいてモーターMに流れる電流
In: 時刻tnにおいてモーターMに流れる電流
【0056】
4−2.モーターの電流値とモーターの回転速度との関係
ここで,モーターMの電流値とモーターMの回転速度との関係について説明する。図7および図8は,モーターMの電流値とモーターMの回転速度との関係を示すものである。図7および図8の上段のグラフは,モーターMの電流値の時間変化を示している。図7および図8の中段のグラフは,モーターMの回転速度の時間変化を示している。図7および図8の下段の図は,画像形成されるハーフトーン画像を示している。
【0057】
図7および図8の上段および中段のグラフの横軸は,時間である。図7および図8の下段のグラフの横軸は,その時間に対応して画像形成されるシート上の副走査方向を示している。
【0058】
図7と図8とでは,画像形成に供するシートの厚みが異なっている。図8で示す場合のシートの厚みは,図7で示す場合のシートの厚みより厚い。図7と図8との比較から分かるように,モーターMの回転速度の変化量|F2−S2|は,モーターMの回転速度の変化量|F1−S1|よりも大きい。そして,モーターMの回転速度の変化量が大きいほど,モーターMの電流値の変化量も大きい。
【0059】
このように,画質低下領域Rの内部に画像形成される画像が含まれている場合には,画像形成に供するシートの厚みが厚いほど,モーターMの回転速度の変化量は大きい。図4や図5のところで示したように,モーターMの回転速度の変化量が大きいほど,補正無しでは,感光体ドラム21上に発生する濃度ムラの程度は大きい。一方,図7や図8に示すように,モーターMの回転速度の変化量とモーターMの電流値との間には相関がある。そして,モーターMの電流値と露光量との間にも相関がある。したがって,モーターMの電流値に応じて,露光量を調整することにより,濃度ムラの発生を抑制することができる。
【0060】
5.濃度ムラの抑制方法
ここで,濃度ムラの発生を抑制する方法について説明する。この濃度ムラは,ニップ部125に厚みの厚いシートが突入することによるモーターMの速度変動に起因して発生する。そのため,画像制御部320は,モーターMの速度変動している期間Y内に,感光体ドラム21上への露光量を調整するのである。これにより,感光体ドラム21上における濃度ムラの発生を抑制することができる。
【0061】
つまり,ニップ部125にシートが突入した後,モーターMの突入後回転速度と,モーターMの設定回転速度D0との差が,予め定めた程度以上である場合に,画像形成する画像の濃度を補正すればよい。このモーターMの速度変動に起因する画像ムラの発生を抑制するための画像の濃度の補正を,駆動源速度変動濃度補正ということとする。そして,駆動源速度変動濃度補正を行う期間は,モーターMの突入後回転速度が設定回転速度D0からはずれてから再び設定回転速度D0に収束するまでの期間である。この期間を,回転速度変動期間という。
【0062】
駆動源速度変動濃度補正を行う場合には,露光量調整部340は,モーターMの突入後回転速度が設定回転速度D0より速いときに画像の濃度を濃く補正する補正値を決定する。一方,モーターMの突入後回転速度が設定回転速度D0より遅いときに画像の濃度を薄く補正する補正値を決定する。
【0063】
一方,モーターMの突入後回転速度と,モーターMの設定回転速度D0との差が,予め定めた程度未満である場合に,回転速度変動期間内に,駆動源速度変動濃度補正を行わない。画像制御部320は,この駆動源速度変動濃度補正の実行の要否を決定する。
【0064】
5−1.露光量の補正範囲
濃度ムラの発生する領域は,前述したように,モーターMの速度変動の生じる図3に示した画質低下領域Rである。そして,この画質低下領域Rを感光体ドラム21上に露光される領域として,図9に領域Yを示す。領域Yは,時刻t1から時刻t5までの期間内に静電潜像を形成される感光体ドラム21上の領域を例示したものである。したがって,静電潜像のうち,領域Yの部分を露光している期間内に露光量の補正を行えばよい。
【0065】
5−2.露光量の補正の開始条件および終了条件
前述したように,図3の画質低下領域Rで露光量の調整を行うには,画質低下領域Rを特定する必要がある。そのために,露光量の補正の開始条件および終了条件を設定することにより,画質低下領域Rでの露光量の補正を行う。本形態では,露光量の補正の開始条件および終了条件を,サンプリング周期の1区間分の期間内におけるモーターMの電流値の変化量ΔIにより決定する。そのために,サンプリング周期ごとにモニタリングしているモーターMの電流値の変化量ΔIから補正の開始条件および終了条件を予め定めておく。そして,開始条件を満たす時刻に補正を開始し,終了条件を満たす時刻に補正を終了することとすればよい。
【0066】
5−2−1.露光量の補正の開始条件
リアルタイムで検知しているモーターMの電流値の変化量ΔIが大きい場合に,露光量の補正を行う。その開始条件を次に説明する。図6に示すように,時刻t1でニップ部125にシートが突入する。そして,時刻t1以降にサンプリングを行う時刻tmでは,モーターMの電流値が設定電流値I0より有意に大きい値をとっている。そして,時刻tmの次のサンプリングを行う時刻tnでは,モーターMの電流値はさらに大きい値となっている。
【0067】
この時刻tmから時刻tnまでの間のモーターMの電流値の変化量ΔIが予め定めた電流閾値IA以上である場合に,露光量の補正を開始する。その開始時刻tiは,電流値の変化量ΔIと電流閾値IAとの大小比較の判断の後,可能な限り早い時刻である。なお,モーターMの電流値の変化量ΔIが予め定めた電流閾値IA未満である場合に,露光量の補正は行わない。濃度ムラはほとんど生じないからである。
【0068】
5−2−2.露光量の補正の終了条件
続いて,露光量の補正の終了条件について説明する。露光量の補正については,モーターMの電流値が収束するまで行うこととすればよい。つまり,モーターMの電流値が予め定めた期間ゼロとなる場合に,露光量の補正を終了することとすればよい。しかし,実際には,モーターMの電流値の変化量ΔIにはノイズがある。したがって,露光量の補正の開始後,モーターMの電流値の変化量ΔIが予め定めた時間にわたって,予め定めた電流閾値IB未満である場合に,露光量の補正を終了することとすればよい。これが,露光量の補正の終了条件である。
【0069】
なお,補正期間Yの間にも,ΔIが一時的にゼロとなる場合(図11の区間C1と区間C2との中間点等参照)がありうる。したがって,予め定めた時間にわたって,モーターMの電流値の変化量ΔIをモニタリングするとよい。その予め定めた時間とは,サンプリング周期の2区間分以上であるとよい。
【0070】
このように,露光量の補正の開始条件および終了条件により露光量の補正範囲を決定することとした。しかし,開始条件等の判断を行った後に露光量の補正を行うので,画質低下領域Rと補正領域Zとの間にはわずかなずれが生じうる。しかし,このずれは十分に小さく,実際には問題とならない。
【0071】
5−3.露光量の補正の有無
次に,露光量の補正の要否をどうのように判断するかについて説明する。これは,前述した露光量の補正の開始条件と同じである。つまり,モーターMの電流値の変化量ΔIが予め定めた電流閾値IA以上であれば,モーターMの突入後回転速度と設定回転速度との差が予め定めた程度以上であると判断する。具体的には,露光装置30Y,30M,30C,30Kがそれぞれ感光体ドラム21Y,21M,21C,21Kを露光する露光量の補正を行う。つまり,補正済みの露光量を設定して画像形成を行う。濃度ムラの発生を抑制するためである。これは,厚紙に画像形成する場合に対応している。
【0072】
一方,モーターMの電流値の変化量ΔIが予め定めた電流閾値IA未満であれば,モーターMの突入後回転速度と設定回転速度との差が予め定めた程度未満であると判断する。具体的には,露光装置30Y,30M,30C,30Kがそれぞれ感光体ドラム21Y,21M,21C,21Kを露光する露光量の補正を行わない。露光量の補正なしでも,濃度ムラはそれほど発生しないからである。これは,薄紙に画像形成する場合に対応している。
【0073】
5−4.露光量補正値表
次に,露光量の補正を行う場合に,その補正に用いる露光量補正値について説明する。この露光量の補正は,モーターMの回転速度の揺らぎによる濃度ムラの発生を抑制するために行うものである。したがって,濃度が薄くなるモーターMの回転速度が設定回転速度D0より速い期間内に書き込みがなされる画像部分には,濃度が濃くするように補正する。すなわち,露光量の値を大きいものとする。一方,濃度が濃くなるモーターMの回転速度が設定回転速度D0より遅い期間内に書き込みがなされる画像部分には,濃度が薄くなるように補正する。すなわち,露光量の値を小さいものとする。
【0074】
本形態では,モーターMの電流値の変化量ΔIに,露光量補正値ΔEが関連付けされている。この露光量補正値ΔEは,画像の濃度を補正するための濃度補正値である。モーターMの電流値の変化量ΔIと,露光量補正値ΔEとは,予め露光量補正値表として用意されている。露光量補正値表は,前述したように,露光量補正値表記憶部430に記憶されている。
【0075】
モーターMの電流値Iと,露光量補正値ΔEとの関連性について説明する。そのために,モーターMの電流の収束後の値であるIcを考える。すると,図10は,モーターMの電流値の差ΔIcと,露光量補正値ΔEとの関係を簡略化して示すグラフである。
ΔIc = I − Ic
ここで,モーターMの収束後の電流値Icは,図11に示すように,ニップ部125に厚みの厚いシートが突入することによるモーターMの電流値の揺らぎの後,再びモーターMの電流値が収束した場合のモーターMの電流の値である。図10に示すように,モーターMの電流値Icからの差ΔIcがゼロのときには,露光量補正値ΔEはゼロである。つまり,露光量の補正を行う必要がない。
【0076】
図10に示すように,モーターMの電流値Icからの差ΔIcが大きい値をとるほど,露光量補正値ΔEは小さい値をとる。つまり,露光量を抑制し,濃度を薄くするのである。一方,モーターMの電流値Icからの差ΔIcが小さい値をとるほど,露光量補正値ΔEは大きい値をとる。つまり,露光量を増やし,濃度を濃くするのである。これは,図11に示したように,補正期間Tpにおいて,モーターMの電流値の位相が,その場合に適した露光量の値の位相とほぼ逆転しているからである。
【0077】
なお,モーターMの電流値の変化量ΔIと,露光量補正値ΔEとの関係については,実験機により決定すればよい。画像形成に供するシートの厚みを変えて画像形成し,そのシートに画像形成する場合のモーターMの回転速度の時間変化と,モーターMに流れる電流値の時間変化とについてデータを採ればよい。これにより,露光量補正値表を作成することができる。なお,実験機により実際に上記の関係を決定する場合には,図10に示した関係からずれることもありうる。
【0078】
5−5.露光量補正値とモーターとの関係
次に,露光量補正値ΔEと,モーターMの電流値および回転速度との関係について図11により説明する。図11の上段のグラフは,モーターMの電流値の時間変化を示すグラフである。図11の中段のグラフは,モーターMの回転速度の時間変化を示すグラフである。図11の下段のグラフは,各色の露光装置30Y,30M,30C,30Kが感光体ドラム21Y,21M,21C,21Kをそれぞれ露光する際の露光量の時間変化を示すグラフである。
【0079】
ここで,図11の各グラフの横軸は,時間である。図11の上段のグラフの縦軸は,モーターMに流す電流値である。図11の中段のグラフの縦軸は,モーターMの回転速度である。図11の下段のグラフの縦軸は,露光量である。
【0080】
そして,図11の下段のグラフに露光量を示す。露光量設定値E1は,各色の画像部分に露光させる露光量である。図11の下段のグラフにおいて,露光量設定値E1からずれているずれ量ΔEが,露光量補正値である。図11に示すように,設定すべき露光量補正値ΔEは,時間的に変化する。また,モーターMの電流値が大きいほど,露光量補正値ΔEの値は小さい。一方,モーターMの電流値が小さいほど,露光量補正値ΔEの値は大きい。
【0081】
区間C1:
図11のグラフに示すように,区間C1では,モーターMの回転速度の値は減少している。そして,モーターMの電流値の変化量ΔIは正の値である。モーターMの回転速度を減少から増加に転じさせるためである。そのときの露光量補正値ΔEは負の値である。このモーターMにより駆動される感光体ドラム21の回転速度は,画像形成に好適な回転速度よりも遅い速度で回転しているからである。つまり,補正がなければ濃度が濃くなるところを,補正により濃度を薄くしているのである。そして,露光量補正値ΔEの絶対値は時間の経過とともに大きくなっている。区間C1では,時間が経過するに従い,モーターMの回転速度と設定速度の差が大きくなっているからである。
【0082】
区間C2:
区間C2では,モーターMの回転速度の値は増加に転じている。ただし,モーターMの回転速度は,設定速度D0よりも遅い。このとき,モーターMの電流値の変化量ΔIは負の値である。モーターMの回転速度が上昇しすぎないようにするためである。区間C2での露光量補正値ΔEは負の値である。このモーターMにより駆動される感光体ドラム21の回転速度は,画像形成に好適な回転速度よりも遅い速度で回転しているからである。つまり,補正がなければ濃度が濃くなるところを,補正により濃度を薄くしているのである。しかし,区間C2では,時間が経過するに従い,モーターMの回転速度が設定速度D0に近づいている。したがって,露光量補正値ΔEの絶対値は時間の経過とともに小さくなっている。
【0083】
区間C3:
区間C3では,モーターMの回転速度の値は依然として増加している。そして,モーターMの回転速度は,設定速度D0よりも速い。このとき,モーターMの電流値の変化量ΔIは負の値である。モーターMの回転速度を設定速度D0に収束させるためである。この区間C3での露光量補正値ΔEは正の値である。このモーターMにより駆動される感光体ドラム21の回転速度は,画像形成に好適な回転速度よりも速い速度で回転しているからである。つまり,補正がなければ濃度が薄くなるところを,補正により濃度を濃くしているのである。区間C3では,時間が経過するに従い,モーターMの回転速度は速くなっている。したがって,露光量補正値ΔEの絶対値は時間の経過とともに大きくなる値としている。
【0084】
区間C4:
区間C4では,モーターMの回転速度の値は減少している。区間C4では,モーターMの電流値の変化量ΔIは正の値である。モーターMの電流値が設定速度D0より小さい値になりすぎないようにするためである。この区間C4での露光量補正値ΔEは正の値である。このモーターMにより駆動される感光体ドラム21の回転速度は,画像形成に好適な回転速度よりも速い速度で回転しているからである。つまり,補正がなければ濃度が薄くなるところを,補正により濃度を濃くしているのである。そして,その回転速度の値は時間の経過とともに設定速度D0に近づいている。したがって,露光量補正値ΔEの絶対値も時間の経過とともに小さくなる値としている。そして,区間C4の終了時刻では,モーターMの回転速度は,設定速度D0にほぼ収束している。
【0085】
露光量の補正にあたって,露光量調整部340は,露光量補正値表記憶部430から前述の露光量補正値表を読み出す。そして,露光量補正値表からモーターの電流値の変化量ΔIに対応する露光量補正値ΔEを読み出して,既に設定されている露光量にその露光量補正値ΔEを加えて,新たな露光量の設定値とする。
【0086】
6.制御フロー
ここで,本形態の濃度ムラの発生を抑制するための制御フローについて図12により説明する。まず,モーター電流測定部360がモーターMの電流値を読み取る(S101)。次に,露光量調整部340がモーターMの電流値の変化量ΔIを算出する(S102)。なお,これらS101およびS102の各ステップは,サンプリング周期ごとにリアルタイムで実行される。
【0087】
次に,モーターMの電流値の変化量ΔIと,電流閾値IAとを比較する(S103)。モーターMの電流値の変化量ΔIが電流閾値IA以上であれば(S103:Yes),S104に進む。モーターMの電流値の変化量ΔIが電流閾値IA未満であれば(S103:No),S106に進む。なお,このS103のステップも,サンプリング周期ごとにリアルタイムで実行される。
【0088】
S104では,前述したように,露光量補正値の決定を行う。次に,その露光量補正値による補正済みの露光量で,感光体ドラム21Y,21M,21C,21Kの露光を行う(S105)。一方,S106では,通常の露光を行う。ここで,通常の露光とは,本形態の露光量補正値による補正を行わないで,露光を行うことをいう。したがって,本形態の露光量補正値ではない別の補正を行ってもよい。
【0089】
以上説明したように,モーターMに負荷のかかる場合,すなわち,厚みの厚いシートに画像形成する場合には,画質低下領域Rに露光する露光量の調整を行う。モーターMに負荷のそれほどかからない場合には,通常の露光量で感光体ドラム21Y,21M,21C,21Kの露光を行う。これにより,濃度ムラの発生を抑制することができる。
【0090】
ただし,本形態で行う露光量の補正は,モーターMの回転速度の変化に起因する濃度ムラの発生を抑制するためのものである。したがって,別の原因による画像不良を抑制するための露光量の調整等を別途行ってもよい。別の原因による画像不良とは,モーターMの回転速度の変化に起因しない,別の画像形成条件等により引き起こされるものである。その場合の露光量の調整は,本形態に特徴的な露光量の調整とは別のものである。
【0091】
7.変形例
7−1.サンプリング周期の区間
本形態では,シートがニップ部125に突入した時刻t1の後,時刻tmから時刻tnまでのサンプリング周期の1区間分におけるモーターMの電流値の変化量ΔIにより,露光量の調整の有無の判断を行うこととした。しかし,サンプリング周期の2区間分以上の時間のモーターMの電流値の単位時間当たりの変化量ΔIXにより,露光量の調整の有無の判断を行うこととしてもよい。
【0092】
モーターMの電流値の単位時間当たりの変化量ΔIXは,次式を満たす。
ΔIX = (Ib−Ia)/(tb−ta)
Ia: 時刻taにおいてモーターMに流れる電流
Ib: 時刻tbにおいてモーターMに流れる電流
このようにしても,本発明の効果を奏する。そして,サンプリング間隔としていずれの値を用いたとしても,補正の要否を判断するために,好適な時間を選ぶことができる。
【0093】
7−2.モーターの電流値の積分
本形態では,シートの厚みに応じたモーターMへの負荷の程度について,ある時刻tmから予め定めた時間の経過後の時刻tnまでの期間内におけるモーターMの電流値の立ち上がりの上昇率から求めることとした。しかし,モーターMの負荷の上昇の程度を,積分値により求めてもよい。例えば,
∫|Ex|dt
積分区間は時刻t1から時刻tnまで
により算出してもよい。
【0094】
7−3.露光量補正値の算出
本形態では,露光量補正値ΔEについて露光量補正値表から決定することとした。しかし,露光量補正値ΔEをリアルタイムで算出することにより決定することとしてもよい。そのためには,測定データからモーターMの電流値の変化量ΔIと露光量補正値ΔEとを関連付ける関数を予め用意しておけばよい。
【0095】
7−4.シートの厚み
7−4−1.シートの厚みと露光量補正値との関係
本形態では,モーターMの電流値のサンプリング周期ごとの変化量ΔIの値に基づいて,露光量の調整を行うか否かの判断と,露光量の調整を行う場合の露光量補正値ΔEとを決定することとした。しかし前述したように,モーターMの電流値の変化は,モーターMの回転速度の変化に起因して起こるものである。そのモーターMの回転速度の変化は,例えば,厚紙に画像形成を行う場合など,モーターMに負荷がかかることに起因するものである。
【0096】
したがって,モーターMの電流値の変化量ΔIの代わりに,シートの厚みを用いることができる。つまり,シートの厚みが予め定めた厚み閾値以上である場合に,露光量の調整を行い,シートの厚みが予め定めた厚み閾値未満である場合に,露光量の調整を行わないこととすればよい。この場合,予め実験しておくことにより,シートの厚みと,図11の下段のグラフに示す露光量補正値ΔEの時間変化のパターンとを対応させることができる。したがって,露光量の調整を行う場合には,本形態の露光量補正値表に代えて,シートの厚みと,設定すべき露光量補正値ΔEの時間変化パターンとの関係を対応させた露光量補正値表を用いて,露光量補正値ΔEを決定することとすればよい。そして,露光量を補正すべき画質低下領域Rを算出するために,画質低下範囲算出部330を用いればよい。
【0097】
7−4−2.給紙カセット
本形態では,モーターMの回転速度の変化量を,モーターMの電流値の変化量から測定することとした。しかし,モーターMの速度変動は,シートの厚みに応じて決まるものである。したがって,画像形成に供するシートの厚みと,露光量補正値とを,対応付けて記憶しておけばよい。
【0098】
そのために,画像形成装置100に,同一サイズであって厚みの異なるシートを給紙する複数のシート給紙部を設ければよい。そして,そのシート給紙部のそれぞれと,そのシート給紙部から供給されるシートがニップ部125に突入したときに設定すべき露光量の時間変化パターンとを対応させた露光量補正値表を,露光量補正値記憶部430に記憶させておけばよい。そして,画像形成時には,画像形成に供するシートを給紙するシート給紙部と,露光量補正値表とから,補正値を決定すればよい。
【0099】
7−4−3.シートの厚み検出センサー
画像形成を行うシートの厚みを,ユーザーからの入力をタッチパネル230から受け付けることにより,判別することとした。しかし,シートの厚みを,シート厚検出センサーにより検出することとしてもよい。その場合には,このシート厚検出センサーはもちろん,転写部のニップ部125の上流に位置している必要がある。モーターMの負荷トルクの上昇に起因する画質の低下を抑制することができることに変わりないからである。
【0100】
7−5.トルク変動
本形態では,モーターMの回転速度の変化量を,モーターMの電流値の変化量に置き換えて計測することとした。しかし,モーターMの電流値の変化量を用いる代わりに,モーターMにかかるトルクの変動量を用いてもよい。そのために,モーターMのトルクをリアルタイムで測定することが望ましい。つまり,画像形成装置100に,モータートルク測定部を設ければよい。モータートルク測定部は,モーターMのトルクをサンプリング周期ごとに測定する駆動源トルク測定部である。
【0101】
つまり,トルクの変動量が予め定めたトルク閾値以上であれば,モーターMの突入後回転速度と設定回転速度との差が予め定めた程度以上であると判断する。具体的には,本形態の露光量の補正を行う。トルクの変動量が予め定めたトルク閾値未満であれば,モーターMの突入後回転速度と設定回転速度との差が予め定めた程度未満であると判断する。具体的には,本形態の露光量の補正を行わない。この場合には,トルクの変動量と露光量補正値との関係を示す表を,露光量補正値表記憶部430に記憶しておけばよい。
【0102】
7−6.転写ローラーの転写電圧
本形態では,画質低下領域Rの露光量を露光量補正値により補正することにより,濃度ムラを抑制することとした。しかし,転写ローラーの転写電圧を調整することにより,濃度ムラを抑制することもできる。例えば,1次転写ローラー111や2次転写ローラー115に与える電位を調整することにより,転写電圧を調整することができる。つまり,図11等で,画像のうちの濃度の濃い箇所を転写する場合に,その場合の転写電圧を弱めるのである。
【0103】
そのため,モーターMに流れる電流の変化量が予め定めた閾値以上である場合に,転写電圧の補正を行うこととすればよい。そして,補正済みの転写電圧で,トナー像の転写を行う。一方,モーターMに流れる電流の変化量が予め定めた閾値未満である場合に,転写電圧の補正を行わないこととすればよい。
【0104】
補正を行うために,画像形成装置100は,転写電圧補正値決定部を有していればよい。転写電圧補正値決定部は,次のように転写電圧補正値を決定する。つまり,モーターMの回転速度が設定回転速度D0より速いときに転写電圧の値を大きいものとする。モーターMの回転速度が設定回転速度D0より遅いときに転写電圧の値を小さいものとする。なお,この場合の転写電圧の補正は,画質低下領域Rを転写する場合に行われる。
【0105】
7−7.白ベタの領域
画質低下領域Rに描かれる画像には,前述のようにスジ状のムラが生ずることがある。しかし,例えば,図13に示すように,形成しようとする画像において画質低下領域Rの部分が白ベタであれば,画質の低下はそもそも起こらない。その際には厚紙に画像形成する場合であっても,モーターMの回転速度を遅い速度とする必要はない。したがって,画質の低下の程度を見積もるために,画質低下領域Rに含まれている画像要素の面積やその他の画質の低下の原因を考慮するとよい。
【0106】
そのために,図13に示すように,画質低下範囲L1を設定する。ここで,画質低下範囲L1は,画質低下領域Rに含まれる画像の範囲である。画質低下領域Rは,画像形成を行う画像イメージによらずに定まる領域である。画質低下範囲L1は,画像形成を行う画像イメージに依存する領域である。画質低下範囲L1を図13にスラッシュでハッチングを施した領域として示す。なお,矢印H1の向きは,シートの搬送方向を示す。
【0107】
7−8.画像濃度ムラパターン
本形態では,モーターMの電流値を測定することにより,ニップ部125へのシートの突入によるモーターMの速度変動の影響を見積もり,露光量を補正することとした。このモーターMの速度変動および露光量補正値については,実験機の実験データに基づいて決定すればよい。
【0108】
しかし,市場に投入した画像形成装置で実際に画像濃度ムラパターンを厚いシートに画像形成し,それを読み取ることにより,露光量補正値を決定することとしてもよい。また,読み取られた画像濃度ムラパターンを,予め記憶指定ある露光量補正値の微調整に用いてもよい。また,画像情報の読み取りではなく,濃度検出センサーによる濃度の検出で代用してもよい。
【0109】
7−9.シートの後端
本形態では,ニップ部125にシートの先端が突入する場合について説明した。しかし,ニップ部125からシートの後端が抜ける場合にも,モーターMにかかる負荷は変化する。すなわち,モーターMの速度変動は生じる。ただし,シートの後端がニップ部125から抜けた後には,モーターMにかかるトルクは小さくなる方向に変化する。よって,本形態と同様に,モーターMの速度変動の程度に応じて,露光量の調整を行うとよい。
【0110】
7−10.連続して画像形成する場合
また,連続で画像形成する場合には,図14●に示すように,矢印H2の向きに搬送されるシートの後端がニップ部125から抜けることによるモーターMの速度変動の影響が,次に画像形成されるシートに表れることがある。前のシートの後端P2がニップ部125から抜けることによるモーターMの速度変動は,シートの後端P2から一定の距離Qだけ離れた位置から副走査方向の幅Wで示す領域に,濃度ムラが生じる。そのため,シートの後端P2が抜ける場合に,露光量の調整を行うこととすれば,連続で画像形成する場合にも,次に画像形成する画像に濃度ムラが生じることを抑制することができる。
【0111】
7−11.組み合わせ
また,上記に記載の変形例について,自由に組み合わせてよい。本発明の効果を奏することに変わりないからである。
【0112】
8.まとめ
以上,詳細に説明したように,本実施の形態に係る画像形成装置100は,ニップ部125へのシートの突入によるモーターMの電流値の変化量に応じて,露光量を調整するものである。そのため,モーターMに流れる電流の変化量が予め定めた閾値以上である場合に,露光量の補正を行う。一方,モーターMに流れる電流の変化量が予め定めた閾値未満である場合に,露光量の補正を行わない。これにより,濃度ムラを抑制して画像形成を行うことのできる画像形成装置100が実現されている。
【0113】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,画像形成装置は,片面印刷のものであっても,両面印刷のものであってもよい。また,カラー印刷のものに限らない。カラー印刷でない場合には,画質低下判定値については,1色のみについて決定すればよい。そして,画像形成装置は,プリンターであってもよい。また,読み取った画像を印刷ジョブとして公衆回線により送信する画像読取装置および画像形成装置に適用することができる。もちろん,複合機であってもよい。また,トナーの種類によらず適用できる。
【0114】
また,本形態では,用紙Pがローラー103および2次転写ローラー115のニップ部125に突入することとした。しかし,この場合の転写部材の構成は,これ以外の構成であっても構わない。そして,ローラー103および2次転写ローラー115のような転写部でなく,単なる搬送ローラー対であってもよい。例えば,用紙搬送経路114における2次転写ローラー115より上流の位置に,搬送ローラー対があってもよい。ただし,この搬送ローラー対は,モーターMから駆動を受けるものである。これにより,モーターMの速度変動に起因するスジ状のムラの発生を抑制することができることに変わりない。
【0115】
また,図2に示したように,露光量調整部340が画像制御部320を有していることとした。しかし,画像形成装置100の内部に,露光量調整部340が画像制御部320とは独立して設けられていることとしてもよい。
【符号の説明】
【0116】
1…画像形成部
10…現像ユニット
20…感光体ユニット
21…感光体ドラム
30…露光装置
100…画像形成装置
115…2次転写ローラー
125…ニップ部
230…タッチパネル
300…制御部
310…機械制御部
320…画像制御部
330…画質低下範囲算出部
340…露光量調整部
350…モーター制御部
360…モーター電流測定部
400…記憶部
410…本体付属記憶部
420…ユニット付属記憶部
430…露光量補正値表記憶部
M…モーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体に静電潜像を書き込みその静電潜像を現像してトナー像を形成するとともに,形成されたトナー像をシートに転写する画像形成部と,
前記画像形成部での転写に供するシートの搬送経路上に設けられた搬送ローラー対と,
前記感光体と前記搬送ローラー対とを駆動する,予め設定した設定回転速度で回転するように制御されている駆動源とを有する画像形成装置であって,
少なくとも画像の濃度を補正する画像制御部と,
前記画像制御部による画像の濃度の補正に用いられる補正値を決定する補正値決定部とを有し,
前記画像制御部は,
形成しようとする画像について前記感光体で静電潜像の書き込みを行っている間に前記搬送ローラー対のニップ部に,シートの先頭が突入した後もしくはシートの後端が抜けた後の前記駆動源の回転速度(以下,「変動回転速度」という)と前記設定回転速度との差が予め定めた程度以上である場合に,
前記駆動源の変動回転速度が前記設定回転速度からはずれてから前記設定回転速度に収束するまでの回転速度変動期間内に画像形成する画像の濃度を補正する駆動源速度変動濃度補正を行うとともに,
前記駆動源の変動回転速度と前記設定回転速度との差が予め定めた程度未満である場合に,
前記回転速度変動期間内に前記駆動源速度変動濃度補正を行わないものであり,
前記補正値決定部は,
前記画像制御部が前記回転速度変動期間内に前記駆動源速度変動濃度補正を行う場合に,
前記変動回転速度が前記設定回転速度より速いときに画像の濃度を濃く補正する補正値を決定するとともに,
前記変動回転速度が前記設定回転速度より遅いときに画像の濃度を薄く補正する補正値を決定するものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置であって,
前記駆動源に流れる電流値を測定する駆動源電流値測定部を有し,
前記画像制御部は,
前記駆動源電流値測定部により測定された電流値の変化量が,予め定めた電流閾値以上である場合に,
前記駆動源の変動回転速度と前記設定回転速度との差が予め定めた程度以上であると判断するとともに,
前記駆動源電流値測定部により測定された電流値の変化量が,予め定めた電流閾値未満である場合に,
前記駆動源の変動回転速度と前記設定回転速度との差が予め定めた程度未満であると判断するものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像形成装置であって,
前記駆動源のトルクを測定する駆動源トルク測定部を有し,
前記画像制御部は,
前記駆動源トルク測定部により測定されたトルクの変化量が,予め定めたトルク閾値以上である場合に,
前記駆動源の変動回転速度と前記設定回転速度との差が予め定めた程度以上であると判断するとともに,
前記駆動源トルク測定部により測定されたトルクの変化量が,予め定めたトルク閾値未満である場合に,
前記駆動源の変動回転速度と前記設定回転速度との差が予め定めた程度未満であると判断するものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載の画像形成装置であって,
前記補正値決定部は,
前記感光体に露光する露光量を補正する露光量補正値を決定する露光量補正値決定部であるとともに,
前記回転速度変動期間内に前記駆動源速度変動濃度補正を行う場合に,
前記変動回転速度が前記設定回転速度より速いときに前記感光体の露光量の値を大きいものとする補正値を決定するとともに,
前記変動回転速度が前記設定回転速度より遅いときに前記感光体の露光量の値を小さいものとする補正値を決定するものであり,
前記画像制御部は,
前記感光体を露光する露光量について補正済みの値を用いるものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれかに記載の画像形成装置であって,
前記補正値決定部は,
前記感光体上に担持されているトナー像をシートに転写する転写電圧を補正する転写電圧補正値を決定する転写電圧補正値決定部であるとともに,
前記回転速度変動期間内に前記駆動源速度変動濃度補正を行う場合に,
前記変動回転速度が前記設定回転速度より速いときに前記転写電圧の値を大きいものとする補正値を決定するとともに,
前記変動回転速度が前記設定回転速度より遅いときに前記転写電圧の値を小さいものとする補正値を決定するものであり,
前記画像制御部は,
前記感光体上のトナー像を転写する転写電圧について補正済みの値を設定するものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項4に記載の画像形成装置であって,
前記駆動源電流値測定部により検出された電流値の変化の程度が大きいほど値が小さく,前記駆動源電流値測定部により検出された電流値の変化の程度が小さいほど値が大きい露光量補正値が格納されている露光量補正値表記憶部を有し,
前記補正値決定部は,
前記露光量補正値表記億部に記憶されている露光量補正値表から読み出した露光量補正値を補正値として採用するものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1から請求項5までのいずれかに記載の画像形成装置であって,
シートの搬送経路における前記搬送ローラー対より上流の位置に設けられた,シートの厚みを検出するシート厚検出部と,
シートの厚みと,その厚みのシートを前記ニップ部に突入したときに設定すべき露光量の時間変化パターンとを対応させた露光量補正値表を記憶する露光量補正値記憶部とを有し,
前記補正値決定部は,
前記シート厚検出部から検出されたシートの厚みと,前記露光量補正値記憶部に記憶されている露光量補正値表とから,補正値を決定するものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1から請求項5までのいずれかに記載の画像形成装置であって,
同一サイズであって厚みの異なるシートを給紙するための複数のシート給紙部と,
前記複数のシート給紙部のそれぞれと,そのシート給紙部から供給されるシートが前記ニップ部に突入したときに設定すべき露光量の時間変化パターンとを対応させた露光量補正値表を記憶する露光量補正値記憶部とを有し,
前記補正値決定部は,
画像形成に供するシートを給紙するシート給紙部と,前記露光量補正値記憶部に記憶されている露光量補正値表とから,補正値を決定するものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか1つに記載の画像形成装置において,
前記搬送ローラー対の一方のローラーは,形成されたトナー像のシートへの転写を行う転写ローラーであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−20180(P2013−20180A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154969(P2011−154969)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】