説明

画像形成装置

【課題】使用の初期においても、回転を確実に伝達することができる電磁クラッチの電源供給装置、及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】CPU242は、印加電圧の設定処理を行う(S14)。CPU242は、電磁クラッチ250の動作回数Nを取得する(S31)。CPU242は、動作回数Nが所定の回数M以下の場合に(S32)、定格電圧より高い電圧(26V,28V等)を印加電圧として設定し(S33)、動作回数Nが所定の回数Mを超える場合に、定格電圧以下の電圧を印加電圧として設定する(S34)。所定の回数Mは、アマチュア255の吸着面255Aが十分に平滑化されて、摩擦係数が所定値以上となる電磁クラッチ250の動作回数である。CPU242は、設定した印加電圧を所定時間Tの間、電磁クラッチ250に印加する(S15)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電磁クラッチへ電圧を印加する電源供給装置、及び電磁クラッチと電源供給装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁クラッチは、励磁コイル、ロータ、及びアマチュアを備え、入力軸の回転を出力軸に伝達する。励磁コイルは、電源供給装置から電圧の印加を選択的に受ける。ロータは、入力軸に連結されており、入力軸とともに回転する。アマチュアは、出力軸に連結されており、励磁コイルへの電圧の印加時に、吸着面をロータに密着させてロータの回転を出力軸に伝達する。なお、電磁クラッチには、励磁コイルへの電圧の非印加時に、アマチュアの吸着面をロータに密着させるものもある。
【0003】
励磁コイルに電圧を印加する電源供給装置には、電磁クラッチの応答性を向上させるとともに電力消費量を低減するために、印加する電圧を変更するものがある(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載の電源供給装置は、印加開始時に定格電圧の2〜4倍の電圧を一定時間印加した後に、定格電圧以下の電圧に切り換えて印加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−018284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電磁クラッチの使用の初期において、アマチュアの吸着面は、十分に平滑化されずに、摩擦係数が低い状態であることが多い。この状態で、励磁コイルに定格電圧以下の電圧を印加すると、アマチュアの吸着面とロータとの間に滑りを生じ、入力軸の回転を出力軸に確実に伝達することができない。
【0006】
例えば、電子写真方式の画像形成装置には、転写ユニットを複数の位置の間で変位させる機構の一部に電磁クラッチを備えたものがある。転写ユニットを複数の位置の間で変位させるためには大きな力を必要とし、電磁クラッチ内で入力軸の回転が出力軸に確実に伝達されないと、転写ユニットを正確に変位させることができない。
【0007】
そこで、この発明の目的は、電磁クラッチの使用の初期においても、入力軸の回転を出力軸に確実に伝達することができる電源供給装置、及び電源供給装置を備えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の電源供給装置は、カウンタ及び制御部を備える。カウンタは、電磁クラッチの動作回数をカウントする。制御部は、カウンタがカウントした動作回数が所定の回数以下の場合に、定格電圧よりも高い電圧を電磁クラッチに印加する。定格電圧は、電磁クラッチに印加される電圧の基準値である。この構成では、電磁クラッチは、使用の初期において、アマチュアの吸着面が十分に平滑化されずに摩擦係数が低い状態であるため、定格電圧よりも高い電圧が印加される。
【0009】
この構成において、制御部は、動作回数が所定の回数を超えると、定格電圧以下の電圧を電磁クラッチに印加することが好ましい。電磁クラッチの使用により、アマチュアの吸着面は研磨され十分に平滑化され、摩擦係数が高い状態である。この状態においては、定格電圧よりも高い電圧を電磁クラッチに印加しなくても、電磁クラッチによって回転を確実に伝達することができる。
【0010】
また、制御部は、電磁クラッチの交換時に、カウンタがカウントする動作回数をリセットすることが好ましい。アマチュアの吸着面が十分に平滑化されてない電磁クラッチに交換しても、電磁クラッチによって回転を確実に伝達することができる。
【0011】
この発明の画像形成装置は、像担持体上の静電潜像を顕像化してトナー像を形成する現像ユニットと、トナー像を用紙に転写する転写ユニットとを有し、用紙に電子写真方式の画像形成処理を行う。画像形成装置は、電磁クラッチ、上述の電源供給装置、及び変換機構を備える。電磁クラッチは、駆動源の回転の伝達を選択的に遮断可能である。電源供給装置は、電磁クラッチへ電圧を印加する。変換機構は、電磁クラッチを介して伝達された回転を、転写ユニットを複数の位置の何れかの位置から他の位置へ変位するための駆動力に変換する。
【0012】
画像形成装置は、上述の電源供給装置を備えることで、電磁クラッチを介して駆動源の回転を変換機構に確実に伝達することができるため、例えば、トナー像の転写を行う転写位置及び転写を行わない非転写位置へ転写ユニットを確実に変位させることができる。
【0013】
この構成において、電源供給装置のカウンタは、用紙に対する画像形成処理を内容とするジョブの実行回数を動作回数としてカウントすることが好ましい。電磁クラッチの動作回数をカウントするカウンタを備えなくても、ジョブの実行回数をカウントする既設のカウンタを用いて電磁クラッチに印加する電圧を制御することができる。
【0014】
また、電源供給装置のカウンタは、画像形成処理が行われた用紙の枚数を動作回数としてカウントすることが好ましい。電磁クラッチの動作回数をカウントするカウンタを備えなくても、画像形成処理が行われた用紙の枚数をカウントする既設のカウンタを用いて電磁クラッチに印加する電圧を制御することができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明の電源供給装置、及び画像形成装置は、電圧を印加する電磁クラッチの使用の初期においても、当該電磁クラッチを介して回転を確実に伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略の正面断面図である。
【図2】同画像形成装置の制御部のブロック図である。
【図3】(A)及び(B)は同画像形成装置の二次転写ユニットが離間位置及び当接位置に位置する場合の概略の正面断面図である。
【図4】同画像形成装置の変換機構であるカムの形状を示す模式図である。
【図5】同画像形成装置の電磁クラッチとカムとの配置関係を示す模式図である。
【図6】同画像形成装置における濃度調整モード及び画像形成モードの実行処理を示すフローチャートである。
【図7】同画像形成装置における印加電圧の設定処理を示すフローチャートである。
【図8】同画像形成装置における電磁クラッチの動作回数のリセット処理を示すフローチャートである。
【図9】(A)、(B)及び(C)は、同画像形成装置の非画像形成処理時、モノクロ画像形成処理時、及びカラー画像形成処理時における一次転写ローラの概略の正面断面図である。
【図10】ジョブの実行回数に基づく印加電圧の設定処理を示すフローチャートである。
【図11】画像形成処理済み枚数に基づく印加電圧の設定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に示すように、画像形成装置100は、給紙部80、画像読取部90、画像形成部110を備え、原稿から読み取った画像データを用いて、記録媒体である用紙に電子写真方式による多色又は単色の画像形成処理を行う。なお、画像形成装置100は、外部装置から入力される画像データに基づく画像形成処理を行うものであってもよい。
【0018】
画像読取部90は、上面に原稿台92,93を備えている。画像読取部90の上面には、載置トレイ121に載置された原稿を搬送する自動原稿搬送装置120が背面側端部を支軸に開閉自在に装着されている。画像読取部90は、自動原稿搬送装置120の搬送によって原稿台93上を通過する原稿、又はオペレータによる自動原稿搬送装置120の開閉を伴う手動操作によって原稿台92上に載置された原稿から画像データを読み取る。
【0019】
画像形成部110は、露光ユニット1、画像形成ユニット10A〜10D、中間転写ユニット60、二次転写ユニット30、定着ユニット70を備えている。
【0020】
画像形成ユニット10Aは、現像器2A、感光体ドラム(本発明の像担持体に相当する。)3A、クリーナユニット4A、帯電器5Aを備え、ブラック(Bk)の画像を形成する。帯電器5Aは、感光体ドラム3Aの表面を所定の電位に均一に帯電させる。現像器(本発明の現像ユニットに相当する。)2Aは、露光ユニット1の露光によって感光体ドラム3A上に形成された静電潜像を、Bkのトナー像に顕像化する。クリーナユニット4Aは、感光体ドラム3Aの周面に残留したトナーを回収する。画像形成ユニット10B〜10Dは、画像形成ユニット10Aと同様に構成されており、それぞれシアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)のトナー像を感光体ドラム3B〜3Dの表面に形成する。
【0021】
露光ユニット1は、半導体レーザ、ポリゴンミラー、fθレンズ及び反射ミラー等の光学系部品を備えたレーザスキャニングユニットである。露光ユニット1は、Bk、C、M、Yのそれぞれの画像データで変調されたレーザ光のそれぞれで画像形成ユニット10A〜10Dの感光体ドラム3A〜3Dの表面を軸方向に沿って露光走査し、静電潜像を形成する。
【0022】
中間転写ユニット60は、中間転写ベルト61、駆動ローラ62、従動ローラ63、一次転写ローラ64A〜64D、及びクリーニングユニット65を有する。中間転写ベルト61は、駆動ローラ62、及び従動ローラ63に張架され、画像形成ユニット10D,10C,10B,10Aをこの順に通過する循環経路に沿って移動する。一次転写ローラ(本発明の転写ユニットに相当する。)64A〜64Dのそれぞれは、中間転写ベルト61を挟んで感光体ドラム3A〜3Dに対向して配置されており、感光体ドラム3A〜3Dの周面に形成されたトナー像を中間転写ベルト61の表面に一次転写する。
【0023】
カラー画像形成処理時には、中間転写ベルト61が循環経路に沿って移動する間に、Y,M,C,Bkのトナー像が中間転写ベルト61の表面に順次重ね合わせて転写される。モノクロ画像形成処理時には、中間転写ベルト61が循環経路に沿って移動する間に、Bkのトナー像のみが中間転写ベルト61の表面に転写される。
【0024】
二次転写ユニット30(本発明の転写ユニットに相当する。)は、二次転写ローラ31及び二次転写ベルト32を備えている。二次転写ベルト32は、複数のローラに張架され、所定の循環経路に沿って移動する。二次転写ローラ31は、駆動ローラ62との間に二次転写ベルト32及び中間転写ベルト61を挟んで駆動ローラ62に対向する二次転写位置に配置されている。二次転写ユニット30は、中間転写ベルト61の表面のトナー像を、中間転写ベルト61と二次転写ベルト32との間に搬送された用紙へ二次転写する。二次転写後の中間転写ベルト61の表面に残留したトナーは、クリーニングユニット65によって回収される。
【0025】
定着ユニット70は、二次転写位置を通過してトナー像が転写された用紙を加熱及び加圧する。用紙に転写されたトナー像が、用紙の表面に堅牢に定着する。定着ユニット70を通過した用紙は、画像形成部110の上方に配置された排紙トレイ91に排出される。
【0026】
給紙部80は、給紙カセット81及び手差しトレイ82を備えている。給紙カセット81は、画像形成処理に使用する複数枚の用紙を収納しており、露光ユニット1の下側に設けられている。手差しトレイ82は、画像形成装置100の側面に装備されている。給紙部80は、給紙カセット81又は手差しトレイ82から用紙を1枚ずつ用紙搬送路40に給紙する。用紙搬送路40は、給紙部80から中間転写ベルト61と二次転写ユニット30との間及び定着ユニット70を経由して排紙トレイ91に至る間に形成されている。
【0027】
図2に示すように、二次転写ユニット30は、二次転写ローラ31及び二次転写ベルト32の他に二次転写フレーム33を備える。二次転写フレーム33は、二次転写ローラ31及び二次転写ベルト32を軸支する。二次転写フレーム33は、バネ280の一端部が係止され、バネ280の他端部は、画像形成装置100の本体フレームの所定位置に係止されている。二次転写フレーム33は、バネ280によって中間転写ベルト61から離間する方向へ付勢されている。
【0028】
二次転写フレーム33は、中間転写ベルト61の反対側で且つ駆動ローラ62の軸方向における両端付近に、同一形状の偏心カムであるカム(本発明の変換機構に相当する。)260,270が当接するように配置されている。図3に示すように、カム260は、外周部261に当接形成部262及び離間形成部263を有しており、当接形成部262の回転中心264からの距離R1が、離間形成部263の回転中心264からの距離R2よりも長く形成されている。
【0029】
カム260,270は、離間形成部263が二次転写フレーム33に当接した状態で、中間転写ベルト61から離間する方向に付勢されたバネ280の力が作用して、二次転写ユニット30を離間位置に位置させる(図2(A)参照。)。カム260,270は、当接形成部262が二次転写フレーム33に当接した状態で、中間転写ベルト61を圧接する力がバネ280の力よりも大きくなり、二次転写ユニット30を当接位置に位置させる(図2(B)参照。)。
【0030】
また、カム260の外周部261における二次転写フレーム33との当接点が、当接形成部262から上流側端部265へ向かう際の径の増加度合いは、当接点が離間形成部263から下流側端部266へ向かう際の径の増加度合いよりも大きい。よって、当接点が当接形成部262から上流側端部265を経由して離間形成部263へ向かう際の回転は、当接点が離間形成部263から下流側端部266を経由して当接形成部262へ向かう際の回転よりも大きい。このため、一旦当接点が当接形成部262に位置すると、当接点が当接形成部262から移動し、上流側端部265又は下流側端部266を経由して離間形成部263に向かってしまうという事態が防止される。
【0031】
図4に示すように、電磁クラッチ250は、ロータ251、励磁コイル252、出力軸であるクラッチ軸253、クラッチ軸受254、及びアマチュア255を備えている。
【0032】
ロータ251は、駆動源であるモータ256にギアトレイン(不図示)を介して連結されており、モータ256の回転が供給されるとモータ256の回転に同期して回転する。ロータ251は、内部に開口を有する円柱状を呈し、画像形成装置100の本体フレームの所定位置に配設されている。ロータ251に形成された空間部には、電源供給装置240によって電圧が印加される励磁コイル252が配置されている。ロータ251の内周面には、クラッチ軸253を回転自在に支持するクラッチ軸受254が保持されている。
【0033】
クラッチ軸253は、軸方向が二次転写ローラ31の軸方向に一致するように配置されている。クラッチ軸253は、カム260,270、及びアマチュア255が固定されている。アマチュア255は、吸着面255Aがロータ251に対向するように配置され、且つクラッチ軸253の軸方向にのみ移動自在に固定されている。
【0034】
モータ256の回転中に、電源供給装置240によって励磁コイル252に電圧を印加すると、励磁コイル252が励磁する。励磁コイル252が励磁すると、アマチュア255の吸着面255Aがロータ251に吸着し、吸着面255Aの突起部255Bがロータ251の凹部251Aに嵌合する。ロータ251の回転は、アマチュア255を介してクラッチ軸253に伝達する。クラッチ軸253の回転に伴って、カム260,270が回転する。
【0035】
この状態で、電源供給装置240による電圧の印加を止めると、アマチュア255の吸着面255Aがロータ251から離脱して、クラッチ軸253への回転の伝達を遮断する。クラッチ軸253の回転の停止に伴って、カム260,270は回転を停止する。
【0036】
以上のように、二次転写ユニット30は、カム260,270の回転に伴って、中間転写ベルト61から離間した離間位置(図2(A)参照。)と、中間転写ベルト61に当接する当接位置(図2(B)参照。)との間で変位し、カム260,270の回転が停止すると、離間位置又は当接位置にそのまま位置する。
【0037】
図5に示すように、画像形成装置100は、反射型フォトセンサ300、操作部130及び制御部200をさらに備える。反射型フォトセンサ300は、中間転写ベルト61の周囲に配置され、中間転写ベルト61からの反射光量を検知する。
【0038】
操作部130は、画像形成処理時の画像濃度の調整を行う濃度調整モード、及び用紙に対する画像形成処理を行う画像形成モード等の各種実行モードの実行指示の入力と、カウンタ241のリセット指示の入力とを受け付ける。
【0039】
濃度調整モードでは、中間転写ベルト61に形成されたテスト用のトナー像の反射光量を反射型フォトセンサ300が検知することで、各色の画像濃度を検出して、適正な画像濃度に調整する濃度調整処理を行う。濃度調整処理は、中間転写ベルト61から離れる離間位置に二次転写ユニット30を位置させた状態(図2(A)参照。)で行われる。また、濃度調整処理は、操作部130による濃度調整モードの実行指示の入力受付時の他に、画像形成装置100の主電源投入時、ジャム処理時や、画像形成処理を内容とするジョブの所定回数毎の実行時に行われる。
【0040】
画像形成モードでは、コピーや印刷等の画像形成処理を用紙に対して行う。画像形成処理は、中間転写ベルト61に当接する当接位置に二次転写ユニット30を位置させた状態(図2(B)参照。)で行われる。
【0041】
制御部200は、操作部130からの情報が入力される入力部210、二次転写ユニット30の位置を記憶するメモリ220、カム260,270への回転の伝達を選択的に遮断可能な電磁クラッチ250、電磁クラッチ250に電圧を印加する電源供給装置240、及び電源供給装置240に対して電圧の印加を指示するCPU230を備える。
【0042】
電源供給装置240は、電磁クラッチ250の動作回数をカウントするカウンタ241、電磁クラッチ250への印加電圧を決定するCPU242、定格電圧以下の電圧及び定格電圧より高い電圧で電力を供給する電源243を備える。なお、電源供給装置240は、電源243のみを備え、CPU230によって制御してもよい。この場合、制御部200は、カウンタ241を備える。
【0043】
図6に示すように、CPU230は、濃度調整モードの実行指示が入力されると(S11)、メモリ220を参照して二次転写ユニット30の位置を取得する(S12)。CPU230は、二次転写ユニット30が離間位置に位置する場合に(S13)、濃度調整処理を行う(S16)。
【0044】
CPU230は、二次転写ユニット30が離間位置に位置せずに、当接位置に位置する場合には、二次転写ユニット30を離間位置に変位させるように、図7に示す変位処理をCPU242によって行う(S14)。
【0045】
図7に示すように、CPU242は、カウンタ241のカウント値を参照して電磁クラッチ250の動作回数Nを取得する(S31)。CPU242は、動作回数Nが所定の回数(例えば、20回、30回等)M以下の場合に(S32)、定格電圧(24V)より高い電圧(26V,28V等)を印加電圧として設定し(S33)、動作回数Nが所定の回数Mを超える場合には、定格電圧(24V)以下の電圧を印加電圧として設定する(S34)。所定の回数Mは、電磁クラッチ250のアマチュア255の吸着面255Aが十分に平滑化されて、吸着面255Aの摩擦係数が所定値以上になる電磁クラッチ250の動作回数である。CPU242は、設定した印加電圧を所定時間Tの間、電磁クラッチ250に印加する(S35)。所定時間Tは、二次転写ユニット30が当接位置から離間位置へ変位する時間である。CPU242は、電磁クラッチ250の動作回数Nを示すカウンタ241のカウント値をN+1に更新する(S36)。
【0046】
CPU230は、メモリ220に記憶している二次転写ユニット30の位置を離間位置に更新して(S15)、濃度調整処理を行う(S16)。
【0047】
また、CPU230は、画像形成モードの実行指示が入力された場合には、メモリ220を参照して二次転写ユニット30の位置を取得する(S17)。CPU230は、二次転写ユニット30が当接位置に位置する場合に(S18)、画像形成処理を行う(S21)。
【0048】
CPU230は、二次転写ユニット30が当接位置に位置せずに、離間位置に位置する場合には、二次転写ユニット30を当接位置に変位させるように、図7に示す変位処理をCPU242によって行う(S19)。CPU230は、メモリ220に記憶している二次転写ユニット30の位置を当接位置に更新して(S20)、画像形成処理を行う(S21)。
【0049】
以上のように、CPU230は、電磁クラッチ250の使用の初期においては、アマチュア255の吸着面255Aが十分に平滑化されずに、摩擦係数が低い状態であるため、定格電圧よりも高い電圧を印加電圧として設定する。電磁クラッチ250の所定の回数Mの使用後においては、アマチュア255の吸着面255Aが十分に平滑化されて、摩擦係数が高い状態であるため、定格電圧以下の電圧を印加電圧として設定する。
【0050】
これにより、電磁クラッチ250は、使用の初期においても、モータ256の回転を確実にカム260,270へ伝達することができる。特に、二次転写ユニット30の当接位置及び離間位置への変位には大きな力を要する。電磁クラッチ250の使用の初期においても、モータ256の回転を確実にカム260,270へ伝達することができるため、二次転写ユニット30を当接位置及び離間位置へ確実に変位させることができる。
【0051】
また、CPU230は、図8に示すように、リセット指示の入力を待機する(S41)。CPU230は、リセット指示の入力を受け付けると、電磁クラッチ250の動作回数Nを示すカウンタ241のカウント値をCPU242によってリセットする(S42)。
【0052】
これにより、アマチュア255の吸着面255Aが十分に平滑化されていない電磁クラッチ250に交換したとしても、電磁クラッチ250の交換時にカウンタをリセットすることで、モータ256の回転を確実にカム260,270へ伝達することができる。
【0053】
また、図9(A)に示すように、非画像形成処理時において、一次転写ローラ64A〜64Dのそれぞれが感光体ドラム3A〜3Dのそれぞれから離間する離間位置にカム260によって変位する。図9(B)に示すように、モノクロ画像形成処理時において、一次転写ローラ64Aが中間転写ベルト61を挟んで感光体ドラム3Aに当接する当接位置に、一次転写ローラ64B〜64Dのそれぞれが感光体ドラム3B〜3Dのそれぞれから離間する離間位置にカム260によって変位する。図9(C)に示すように、カラー画像形成処理時において、一次転写ローラ64A〜64Dのそれぞれが中間転写ベルト61を挟んで感光体ドラム3A〜3Dのそれぞれに当接する当接位置にカム260によって変位する。一次転写ローラ64A〜84Dの当接位置及び離間位置への変位についても、大きな力を要するため、カム260へ回転を伝達する電磁クラッチ250への電圧を制御する構成を用いればよい。これにより、電磁クラッチ250の使用の初期においても、モータ256の回転を確実にカム260に伝達することができるため、一次転写ローラ64A〜84Dを当接位置及び離間位置へ確実に変位させることができる。
【0054】
さらに、用紙搬送路40上に配置された各種ローラの回転についても、各種ローラへ回転を伝達する電磁クラッチ250への電圧を制御する構成を用いてもよい。
【0055】
また、画像形成装置100は、図10に示すように、画像形成モードにおけるジョブの実行回数に応じて印加電圧を設定してもよい。この場合、制御部200は、ジョブの実行回数NAが所定の回数MA以下の場合に(S42)、定格電圧より高い電圧を電磁クラッチ250に印加して(S33)、ジョブの実行回数NAが所定の回数MAを超えた場合に、定格電圧以下の電圧を電磁クラッチ250に印加する(S34)。これにより、電磁クラッチ250の動作回数をカウントするカウンタ241を備える必要がなく、ジョブの実行回数をカウントする既設のカウンタを用いて電磁クラッチ250に印加する電圧を制御することができる。
【0056】
また、図11に示すように、画像形成処理が行われた用紙の枚数に応じて印加電圧を設定してもよい。この場合、制御部200は、画像形成処理が行われた用紙の枚数NBが所定の枚数MB以下の場合に(S52)、定格電圧より高い電圧を電磁クラッチ250に印加して(S33)、画像形成処理が行われた用紙の枚数NBが所定の枚数MBを超えた場合に、定格電圧以下の電圧を電磁クラッチ250に印加する(S34)。これにより、電磁クラッチ250の動作回数をカウントするカウンタ241を備える必要がなく、画像形成処理が行われた用紙の枚数をカウントする既設のカウンタを用いて電磁クラッチ250に印加する電圧を制御することができる。
【0057】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0058】
30…二次転写ユニット
64A〜64D…一次転写ローラ
100…画像形成装置
110…画像形成部
200…制御部
210…入力部
220…メモリ
230…CPU
240…電源供給装置
241…カウンタ
242…CPU
243…電源
250…電磁クラッチ
260,270…カム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁クラッチの動作回数をカウントするカウンタと、
前記カウンタがカウントした前記動作回数が所定の回数以下の場合に、前記電磁クラッチに印加される電圧の基準値である定格電圧よりも高い電圧を前記電磁クラッチに印加する制御部と、を備える電源供給装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記カウンタがカウントした前記動作回数が前記所定の回数を超えると、前記定格電圧以下の電圧を前記電磁クラッチに印加する請求項1に記載の電源供給装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記電磁クラッチの交換時に、前記カウンタがカウントする前記動作回数をリセットする請求項1又は2に記載の電源供給装置。
【請求項4】
像担持体上の静電潜像を顕像化してトナー像を形成する現像ユニットと、前記トナー像を用紙に転写する転写ユニットとを有し、前記用紙に電子写真方式の画像形成処理を行う画像形成装置であって、
駆動源の回転の伝達を選択的に遮断可能な電磁クラッチと、
前記電磁クラッチへ電圧を印加する、請求項1〜3の何れかに記載の電源供給装置と、
前記電磁クラッチを介して伝達された回転を、前記転写ユニットを複数の位置の何れかの位置から他の位置へ変位するための駆動力に変換する変換機構と、を備える画像形成装置。
【請求項5】
前記電源供給装置のカウンタは、用紙に対する前記画像形成処理を内容とするジョブの実行回数を前記動作回数としてカウントする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記電源供給装置のカウンタは、前記画像形成処理が行われた用紙の枚数を前記動作回数としてカウントする請求項4に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−3456(P2013−3456A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136451(P2011−136451)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】