説明

画像形成装置

【課題】横縞状ピッチなどの異常画像を発生させることがなく、通紙条件に関わらず画像を良好に転写する。
【解決手段】裏面ローラ53とニップ形成ローラ56で二次転写部を構成する。二次転写部の下流側(通紙方向)には分離手段200が配設されている。二次転写バイアスとして高圧電源110から重畳転写バイアスを印加する場合は、高圧電源210から分離手段200に印加する分離バイアスの交流成分の電圧値を、二次転写バイアスとして直流転写バイアスを印加する際の分離バイアスの交流成分の電圧値よりも小さくする。これにより、転写バイアスと分離バイアスの干渉を抑制し、横縞状ピッチムラ等の異常画像の発生を防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を用いた複写機、プリンタ等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置においては、あらかじめ一様に帯電された感光体等の像担持体上に光学的な画像情報を形成することによって得た帯電潜像を、現像装置からのトナーによって可視化し、この可視像を転写紙等の記録媒体上に直接又は中間転写ベルト等の中間転写体を介して転写し、記録媒体上に定着することによって画像形成を行っている。
【0003】
近年、画像形成装置において用いられる記録媒体として、多種多様な用紙が用いられるようになり、高級感を備えた皮革模様をイメージしたものや和紙調のものなどが市販されている。このような用紙では、高級感を出すため、エンボス加工等により表面に凹凸が存在している。凹部は凸部に比べてトナーが転写しにくく、特に凹凸の大きい記録用紙にトナーを転写させる場合、凹部にトナーが充分に転写せず画像の抜けが発生する場合がある。
【0004】
用紙凹部への転写不良に関しては、例えば特開2008−185890号公報(特許文献1)、特開2006−267486号公報(特許文献2)、特開2008−058585号公報(特許文献3)、特開平09−146381号公報(特許文献4)、特開平04−086878号公報(特許文献5)等において、用紙凹部への転写率を向上させる技術が提案されている。
【0005】
上記特許文献1に記載のものは、記録用紙へのトナー像の転写の直前に記録用紙を加熱し、かつトナーと反対極性に帯電させることにより、転写時の転写電界を強くさせることで、凹部にトナーを転写させるようにしている。しかし、このような方法では、凹凸紙における大きな凹凸の部分では充分な転写性を得ることはできない。
【0006】
また、上記特許文献2〜5では、転写バイアスとして直流電圧に交流電圧を重畳することで、転写率の向上や中抜けなどの異常画像の改善を図っている。
特許文献2に記載のものは、転写バイアスとして直流電圧に交流電圧を重畳したものを用い、また転写前に記録用紙の表面を凹凸に応じてトナーの極性と逆極性に帯電させることで凹部にトナーを転写させるよう制御を行うものである。
【0007】
特許文献3に記載のものは、、転写バイアスとして直流電圧に交流電圧を重畳したものを用い、交流電圧のピーク間電圧が、直流電圧の2倍以下になるように交流電圧を重畳する事を特徴としている。
【0008】
特許文献4に記載のものは、中間転写体の表面にフッ素樹脂を用い、転写バイアスとして直流電圧に交流電圧を重畳したものを用い、交流電圧のピーク間電圧が、直流電圧の2.05倍以上になるように交流電圧を重畳する事を特徴としている。
【0009】
特許文献5では、転写バイアスとして直流電圧に交流電圧を重畳したものを用い、交流電圧の周波数が4kHz以下で転写ニップ中での周期回数が20回以上となるように交流電圧を重畳する事を特徴としている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、本願発明者らが確認したところ、上記特許文献2〜5で提案されている方法では、いずれも重畳している交流電圧が小さく、凹凸の大きい用紙では、各文献に記載されたように電圧を印加しても、用紙凹部へトナーがあまり転写されず、効果が無いことが判明した。
【0011】
そこで本願発明者らが鋭意検討を行なったところ、転写バイアスとして直流電圧に交流電圧を重畳したものを用い、交流電圧のピークツウピーク値が、前記直流電圧の絶対値の4倍よりも大きな値とすることで凹凸紙の転写性を良好にできることを見出した。しかし、この方法でも、用紙によっては横縞状のピッチという異常画像が発生する場合があった。上記特許文献1〜5においては、横縞状のピッチという異常画像については何ら言及されておらず、各特許文献に記載の技術ではこの問題を解決することはできない。
【0012】
本発明は、従来の画像形成装置における上述の問題を解決し、横縞状ピッチなどの異常画像を発生させることがなく、通紙条件に関わらず画像を良好に転写することのできる画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の課題は、本発明により、像担持体に担持された可視像を記録媒体に転写させる転写手段と、該転写手段により可視像が転写された記録媒体を前記像担持体から分離させる分離手段とを備え、前記分離手段に直流成分に交流成分を重畳した分離バイアスを印加するとともに、前記転写手段に、直流成分からなる直流転写バイアスまたは直流成分に交流成分を重畳した重畳転写バイアスを印加可能な画像形成装置において、前記転写手段に前記重畳転写バイアスを印加する場合、前記分離手段に印加する分離バイアスを、前記転写手段に前記直流転写バイアスを印加する際の分離バイアスから変更することにより解決される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の画像形成装置によれば、前記転写手段に前記重畳転写バイアスを印加する場合、前記分離手段に印加する分離バイアスを、前記転写手段に前記直流転写バイアスを印加する際の分離バイアスから変更することにより、転写バイアスと分離バイアスの干渉を抑制し、横縞状ピッチムラ等の異常画像の発生を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明を適用した画像形成装置の一例であるカラー画像形成装置の概略を示す断面構成図である。
【図2】そのカラー画像形成装置の画像形成ユニットを示す構成図である。
【図3】二次転写電源から出力される重畳バイアスの波形の一例を示す波形図である。
【図4】凹凸の大きい種々の用紙について抵抗を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
まず、本発明を適用した画像形成装置の一例であるカラー画像形成装置の基本的な構成について説明する。
【0017】
図1に示すカラー画像形成装置(以下、単にプリンタと呼ぶ)は中間転写方式を採用したものであり、中間転写体としての無端状ベルト(中間転写ベルト51)を装置本体の略中央部に配設している。その中間転写ベルト51の上部走行辺に沿って、イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)の各色トナー画像を形成するための4つの画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kが並設され、タンデム作像部を構成している。
【0018】
4つの画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは扱うトナーの色が異なるのみで構成は同一であるため、図2を参照して一つの画像形成ユニットについてのみ説明する。図2に示すように、画像形成ユニットは、像担持体としての感光体ドラム11、感光体ドラム11の表面を帯電ローラによって帯電する帯電装置21、感光体ドラム11上の潜像を可視化する現像装置31、感光体ドラム11から中間転写ベルト51にトナー像を転写させる一次転写手段としての転写ローラ55、感光体ドラム11表面をクリーニングするクリーニング装置41等を備えている。本実施形態では、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、プリンタ本体に対して脱着可能に設けられている。
【0019】
本例の感光体11は、ドラム基体の表面上に有機感光層が形成された外径60mm程度のドラム形状のものであって、図示しない駆動手段によって図中時計回りに回転駆動される。帯電装置21は、帯電バイアスが印加される帯電ローラを感光体ドラム11に接触あるいは近接させながら、帯電ローラと感光体11との間に放電を発生させることで、感光体表面を一様帯電せしめる。本実施形態では、トナーの正規帯電極性と同じマイナス極性に一様帯電せしめる。帯電バイアスとしては、直流電圧に交流電圧を重畳したものを採用している。帯電ローラを用いる方式に変えて、帯電チャージャによる方式を採用しても良い。
【0020】
現像装置31は、トナーとキャリアからなる2成分現像剤が収容される収容容器内に、現像剤担持体としての現像スリーブ31a及び現像剤を攪拌しながら搬送する攪拌部材としての2本のスクリュー部材31b,31cを備えている。現像装置31の詳しい構成等については後述する。なお、1成分現像剤を用いる現像装置を採用することも可能である。
【0021】
クリーニング装置41は、一次転写工程を経た後の感光体11の表面に付着している転写残トナーを除去するもので、本例ではクリーニングブレード41aと、クリーニングブラシ41bを備えている。クリーニングブレード41aは、感光体ドラム11の回転方向に対してカウンタ方向から感光体ドラム11と当接され、転写残トナーを感光体表面から掻き落とす。クリーニングブラシ41bは感光体ドラム11と逆方向に回転しながら接触している状態で感光体ドラム11表面をクリーニングする。
【0022】
また、クリーニング装置41によってクリーニングされた後の感光体11の残留電荷を除電する除電装置(図示省略)が設けられており、その除電装置による除電により、感光体11の表面が初期化されて次の画像形成に備えられる。
【0023】
図1に戻り、画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの上方には、潜像書込手段たる光書込ユニット80が配設されている。この光書込ユニット80は、パーソナルコンピュータ等の外部機器から送られてくる画像情報に基づいてレーザーダイオードから発したレーザー光により、感光体11Y,11M,11C,11Kを光走査する。この光走査により、感光体11Y,11M,11C,11K上にY,M,C,K用の静電潜像が形成される。具体的には、感光体11の一様帯電した表面の全域のうち、レーザー光が照射された箇所は、電位を減衰せしめる。これにより、レーザー照射箇所の電位が、それ以外の箇所(地肌部)の電位よりも小さい静電潜像となる。なお、光書込ユニット80は、光源から発したレーザー光Lを、図示しないポリゴンモータによって回転駆動したポリゴンミラーで主走査方向に偏光せしめながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体に照射するものである。LEDアレイの複数のLEDから発したLED光によって光書込を行うものを採用してもよい。
【0024】
画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの下方には、無端状の中間転写ベルト51を張架しながら図中反時計回り方向に無端移動せしめる転写装置としての転写ユニット50が配設されている。転写ユニット50は、像担持体たる中間転写ベルト51の他に、駆動ローラ52、二次転写裏面ローラ53、クリーニングバックアップローラ54、4つの一次転写ローラ55、ニップ形成ローラ56、ベルトクリーニング装置57、電位センサ58などを有している。
【0025】
中間転写ベルト51は、そのループ内側に配設された駆動ローラ52、二次転写裏面ローラ53、クリーニングバックアップローラ54、及び4つの一次転写ローラ55によって張架されており、図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動される駆動ローラ52の回転力により、同方向に無端移動せしめられる。中間転写ベルト51としては、次のような特性を有するものを用いている。即ち、厚みは20[μm]〜200[μm]、好ましくは60[μm]程度である。また、体積抵抗率は1e6[Ωcm]〜1e12[Ωcm]、好ましくは約1e9[Ωcm]程度である(三菱化学製ハイレスタ−UP MCP HT45にて、印加電圧100Vの条件で測定)。また、材料は、カーボン分散ポリイミド樹脂からなる。
【0026】
4つの一次転写ローラ55は、無端移動せしめられる中間転写ベルト51を感光体11(Y,M,C,K)との間に挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト51のおもて面と、感光体11(Y,M,C,K)とが当接するY,M,C,K用の一次転写ニップが形成されている。一次転写ローラ55には、図示しない転写バイアス電源によってそれぞれ一次転写バイアスが印加されている。これにより、感光体11(Y,M,C,K)上の各色トナー像と、各色一次転写ローラ55との間に転写電界が形成され、転写電界やニップ圧の作用により、感光体11上から中間転写ベルト51上にトナー像が一次転写される。Yトナー像上にM,C,Kトナー像が、順次重ね合わせて一次転写されることにより、中間転写ベルト51上には4色重ね合わせトナー像が形成される。
【0027】
モノクロ画像を形成する場合には、転写ユニット50におけるY,M,C用の一次転写ローラ55Y,M,Cを支持している図示しない支持板を移動せしめて、一次転写ローラ55Y,M,Cを、感光体11Y,M,Cから遠ざける。これにより、中間転写ベルト51のおもて面を感光体11Y,M,Cから引き離して、中間転写ベルト51をK用の感光体11Kだけに当接させる。この状態で、4つの画像形成ユニット1Y,M,C,Kのうち、K用の画像形成ユニット1Kだけを駆動して、Kトナー像を感光体11K上に形成する。
【0028】
一次転写ローラ55は、金属製の芯金と、これの表面上に固定された導電性のスポンジ層とを具備している弾性ローラからなり、次のような特性を有している。即ち、外形は16[mm]である。また、心金の径は10[mm]である。また、接地された外径30[mm]の金属ローラを10[N]の力でスポンジ層に押し当てた状態で、一次転写ローラ心金に1000[V]の電圧を印加したときに流れる電流Iから、オームの法則(R=V/I)に基づいて算出したスポンジ層の抵抗Rは、約3E7Ωである。このような一次転写ローラ55に対して、一次転写バイアスを定電流制御で印加する。なお、転写ローラに代えて、転写チャージャーや転写ブラシなどを採用してもよい。
【0029】
転写ユニット50のニップ形成ローラ56は、中間転写ベルト51のループ外側に配設されており、ループ内側の二次転写裏面ローラ53との間に中間転写ベルト51を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト51のおもて面と、ニップ形成ローラ56とが当接する二次転写ニップが形成されている。ニップ形成ローラ56は接地されているのに対し、二次転写裏面ローラ53には、二次転写バイアス電源110によって二次転写バイアスが印加される。これにより、二次転写裏面ローラ53とニップ形成ローラ56との間に、トナーを二次転写裏面ローラ53側からニップ形成ローラ56側に向けて静電移動させる二次転写電界が形成される。
【0030】
転写ユニット50の下方には、記録紙Pを複数枚重ねた紙束の状態で収容している給紙カセット100が配設されている。この給紙カセット100は、紙束の一番上の記録紙Pに給紙ローラ101を当接させており、これを所定のタイミングで回転駆動させることで、その記録紙Pを給紙路に向けて送り出す。給紙路の末端付近には、レジストローラ対102が配設されている。このレジストローラ対102は、給紙カセット100から送り出された記録紙Pをローラ間に挟み込むとすぐに両ローラの回転を停止させる。そして、挟み込んだ記録紙Pを二次転写ニップ内で中間転写ベルト51上のトナー像に同期させ得るタイミングで回転駆動を再開して、記録紙Pを二次転写ニップに向けて送り出す。二次転写ニップで記録紙Pに密着せしめられた中間転写ベルト51上のトナー像は、二次転写電界やニップ圧の作用によって記録紙P上に一括二次転写される。このようにして表面にフルカラートナー像またはモノクロトナー像が形成された記録紙Pは、二次転写ニップを通過すると、ニップ形成ローラ56や中間転写ベルト51から曲率分離する。
【0031】
二次転写裏面ローラ53は次のような特性を有している。すなわち、外径は約24[mm]である。また、芯金の径は約16[mm]である。芯金の表面には導電性のNBR系ゴム層が被覆されており、その抵抗Rは1e6[Ω]〜1e12[Ω]、好ましくは約4E7[Ω]である。抵抗Rは、1次転写ローラと同様の方法によって測定された値である。
【0032】
また、ニップ形成ローラ56は次のような特性を有している。すなわち、外径は約24[mm]である。また、芯金の径は約14[mm]である。芯金の表面には導電性のNBR系ゴム層が被覆されており、その抵抗Rは1E6Ω以下である。抵抗Rは、1次転写ローラと同様の方法によって測定された値である。
【0033】
そして、二次転写ニップの下流側(用紙搬送方向の下流側=図1で右側)には、用紙分離補助の分離装置200が設置されている。本実施例ではニップ形成ローラ56の軸方向に延設された鋸歯状の除電針を使用し、分離バイアス出力電源210から分離バイアスが印加される。分離バイアス出力電源210は二次転写バイアス出力電源110と同じ構成の高圧電源を使用している。
【0034】
電位センサ58は、中間転写ベルト51のループ外側に配設されている。そして、中間転写ベルト51の周方向における全域のうち、接地された駆動ローラ52に対する掛け回し箇所に対して、約4[mm]の間隙を介して対向している。そして、中間転写ベルト51上に一次転写されたトナー像が自らとの対向位置に進入した際に、そのトナー像の表面電位を測定する。なお、電位センサ58としては、TDK(株)社製のEFS−22Dを用いている。
【0035】
二次転写ニップの図中右側方には、定着装置90が配設されている。この定着装置90は、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ91と、これに所定の圧力で当接しながら回転する加圧ローラ92とによって定着ニップを形成している。定着装置90内に送り込まれた記録紙Pは、その未定着トナー像担持面を定着ローラ91に密着させる姿勢で、定着ニップに挟まれる。そして、加熱や加圧の影響によってトナー像中のトナーが軟化さしめられて、フルカラー画像が定着せしめられる。定着装置90内から排出された記録紙Pは、定着後搬送路を経由した後、機外へと排出される。
【0036】
本実施形態のプリンタが備える二次転写バイアス出力手段としての二次転写バイアス電源110は、直流成分を出力する直流電源と、交流成分又は直流成分に交流成分を重畳したものを出力する交流電源とから構成されており、二次転写バイアスとして、直流電圧(以下、直流バイアスと称す)と、直流電圧に交流電圧を重畳せしめたもの(以下、重畳バイアスと称す)とを出力することができる。なお、二次転写バイアス電源110は、定電流制御を行うことも可能である。
【0037】
二次転写バイアス電源110の出力端子は、二次転写裏面ローラ53の芯金に接続されている。二次転写裏面ローラ53の芯金の電位は、二次転写バイアス電源110からの出力電圧値とほぼ同じ値になる。また、ニップ形成ローラ56については、その芯金を接地(アース接続)している。なお、重畳バイアスを二次転写裏面ローラ53の芯金に印加しつつニップ形成ローラ56の芯金を接地する代わりに、重畳バイアスをニップ形成ローラ56の芯金に印加しつつ二次転写裏面ローラ53の芯金を接地してもよい。この場合、直流電圧の極性を異ならせる。具体的には、図示のように、マイナス極性のトナーを用い且つニップ形成ローラ56を接地した条件で二次転写裏面ローラ53に重畳バイアスを印加する場合には、直流電圧としてトナーと同じマイナス極性のものを用いて、重畳バイアスの時間平均の電位をトナーと同じマイナス極性にする。これに対し、二次転写裏面ローラ53を接地し且つ重畳バイアスをニップ形成ローラ56に印加する場合には、直流電圧としてトナーとは逆のプラス極性のものを用いて、重畳バイアスの時間平均の電位をトナーとは逆のプラス極性にする。重畳バイアスを二次転写裏面ローラ53やニップ形成ローラ56に印加する代わりに、直流電圧を何れか一方のローラに印加するとともに、交流電圧を他方のローラに印加してもよい。交流電圧としては、図3に示すような正弦波状の波形のものを採用しているが、矩形波状の波形のものを用いてもよい。なお、記録紙Pとして、ザラ紙のような表面凹凸の大きなものを用いずに、普通紙のような表面凹凸の小さなものを用いる場合には、凹凸パターンにならった濃淡パターンが出現しないので、転写バイアスとして、直流電圧だけからなるものを印加してもよい。但し、ザラ紙のような表面凹凸の大きなものを用いるときには、転写バイアスを、直流電圧だけからなるものから、重畳バイアスに切り替える必要がある。
【0038】
二次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト51には、記録紙Pに転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、中間転写ベルト51のおもて面に当接しているベルトクリーニング装置57によってベルト表面からクリーニングされる。中間転写ベルト51のループ内側に配設されたクリーニングバックアップローラ54は、ベルトクリーニング装置57によるベルトのクリーニングをループ内側からバックアップする。
【0039】
本実施形態において、二次転写バイアスは、上述したように、二次転写裏面ローラ53の芯金に印加される。電圧出力手段である二次転写バイアス電源110は、転写バイアスを印加する転写バイアス印加手段として機能している。また上述したように、二次転写裏面ローラ53の芯金に二次転写バイアスが印加されると、第1部材たる二次転写裏面ローラ53の芯金と、第2部材たるニップ形成ローラ56の芯金との間に電位差が発生する。よって、二次転写バイアス電源110は、電位差発生手段としても機能している。なお、電位差は、絶対値として取り扱われることが一般的であるが、本稿では、極性付きの値として取り扱うものとする。より詳しくは、二次転写裏面ローラ53の芯金の電位から、ニップ形成ローラ56の芯金の電位を差し引いた値を、電位差として取り扱うことにする。かかる電位差の時間平均値は、本実施形態のように、トナーとしてマイナス極性のものを用いる構成では、その極性がマイナスになった場合に、ニップ形成ローラ56の電位を二次転写裏面ローラ53の電位よりもトナーの帯電極性とは逆極性側(本例ではプラス側)に大きくすることになる。よって、トナーを二次転写裏面ローラ53側からニップ形成ローラ56側に静電移動させることになる。
【0040】
図3は、二次転写バイアス電源110から出力される重畳バイアスの波形の一例を示す波形図である。
同図において、オフセット電圧Voffは、重畳バイアスの直流成分の値である。また、ピークツウピーク電圧Vppは、重畳バイアスの交流成分のピークツウピーク電圧である。重畳バイアスは、オフセット電圧Voffとピークツウピーク電圧Vppとを重畳したものであり、その時間平均値はオフセット電圧Voffと同じ値になる。また、本実施形態に係るプリンタにおいては、既に述べたように、二次転写バイアスを二次転写裏面ローラ53の芯金に印加し、且つニップ形成ローラ56の芯金を接地している(0V)。よって、二次転写裏面ローラ53の芯金の電位は、そのまま両芯金の電位差となる。そして、両芯金の電位差は、オフセット電圧Voffと同じ値の直流成分(Eoff)と、ピークツウピーク電圧Vppと同じ値の交流成分(Epp)とから構成される。
【0041】
同図に示すように、本実施形態に係るプリンタでは、オフセット電圧Voffとして、マイナス極性のものを採用している。二次転写裏面ローラ53に印加される二次転写バイアスのオフセット電圧Voffの極性をマイナスにすることで、二次転写ニップ内において、マイナス極性のトナーを二次転写裏面ローラ53側からニップ形成ローラ56側に相対的に押し出すことが可能になる。二次転写バイスの極性がトナーと同じマイナス極性になっているときには、二次転写ニップ内において、マイナス極性のトナーを二次転写裏面ローラ53側からニップ形成ローラ56側に静電的に押し出す。これにより、中間転写ベルト51上のトナーを記録紙P上に転移させる。一方、二次転写バイアスの極性がトナーとは逆のプラス極性になっているときには、二次転写ニップ内において、マイナス極性のトナーをニップ形成ローラ56側から二次転写裏面ローラ53側に向けて静電的に引き寄せる。これにより、記録紙Pに転移させたトナーを中間転写ベルト51側に再び引き寄せる。但し、二次転写バイアスの時間平均値(本例ではオフセット電圧Voffと同じ値)がマイナス極性であるので、相対的には、トナーは二次転写裏面ローラ53側からニップ形成ローラ56側に静電的に押し出されるのである。なお、同図において、戻り電位ピーク値Vrは、トナーとは逆極性であるプラス側のピーク値を示している。
【0042】
ところで、上述したように、転写バイアスとして直流電圧に交流電圧を重畳したものを用い、交流電圧のピークツウピーク値が、前記直流電圧の絶対値の4倍よりも大きな値とすることで凹凸紙の転写性を良好にできるが、用紙によっては、横縞状のピッチという異常画像が発生する場合がある。
【0043】
横縞のピッチが発生する主な理由として、二次転写バイアスと分離バイアスの交流成分の大きさ及び用紙特性の影響が上げられる。
二次転写バイアスの交流成分あるいは分離バイアスの交流成分が大きくなると、記録用紙裏面やベルト表面に電荷が充電される。電荷が充電されることにより、一定周期で放電が発生することでトナーの逆帯電が起こり、横縞状のピッチムラが発生する。
【0044】
あるいは、一定周期で電荷が充電されることで電位差が小さくなり、充電された箇所の転写率が著しく低下することで横縞状のピッチムラが発生する可能性もある。
二次転写バイアスと分離バイアスの交流成分が大きくなると、それに比例して充電される電荷量も大きくなるため、上記のような現象を防止するには、何れかの交流成分を小さくすれば良いが、二次転写バイアスの交流成分を小さくすると、凹凸紙への転写性が悪化するため、分離バイアスの交流成分を下げることでピッチムラの発生しない良好な画像を得ることができる。
【0045】
また、上記の現象は、用紙抵抗の低いものでより顕著に発生する。これは、用紙抵抗が低いことで、交流電圧を印加した際に流れる電流が大きくなるためである。
図4は、凹凸の大きい種々の用紙について抵抗を測定した結果を示すグラフである。この図に例示するように、用紙の抵抗は紙によって大きく異なり、高くて2乗程度の違いがある。
【0046】
これらの用紙を用いて実験を行ったところ、用紙の表面抵抗が約10[logΩ]以下、体積抵抗が約9.2[logΩ]以下であると横縞状のピッチムラが発生した。なお、表面抵抗の測定は、JIS測定法(JIS−K6911)を用い、500V印加、10[sec]値を取っている。用紙は23℃、相対湿度50%の環境下に10時間おいたものである。
【0047】
表4の用紙番号9は体積抵抗:9.18[logΩ],表面抵抗・表:9.92[logΩ],表面抵抗・裏:9.89[logΩ]であり、用紙番号10は体積抵抗:9.12[logΩ],表面抵抗・表:9.75[logΩ],表面抵抗・裏:9.71[logΩ]であるが、用紙番号9ではピッチムラは発生せず、用紙番号10以下ではピッチムラが発生した。
【0048】
また、この値は実施構成によって変化するため、それぞれの構成においてピッチムラが発生する抵抗の閾値は異なる。
その為、抵抗が一定の値より低い用紙の場合に分離バイアスの交流成分を小さくすることで良好な画像を得られることが分かった。
【0049】
しかし単純に分離バイアスを小さくした場合、坪量の低い薄紙を通紙した場合、用紙が転写ニップ内を出る際に、中間転写ベルト、又は二次転写ローラ(本実施形態ではニップ形成ローラ56)から分離出来ず用紙詰りが発生する可能性がある。
【0050】
また、二次転写バイアスとして交流成分を使用する目的は凹凸の大きい用紙に対して、凹部への転写性を改善するためである。そのため、凹凸の大きい用紙に対してのみ二次転写バイアスとして交流成分を印加し(重畳バイアスを印加し)、分離バイアスを小さくする制御を行うことで凹凸紙では良好な画像を、それ以外の用紙では(二次転写バイアスとして直流バイアスを印加することで)良好な画像と分離性を確保することが出来る。
【0051】
なお、転写バイアスと分離バイアスの干渉は普通紙であっても起こりえる。実際、本願発明者がAC電圧を故意に高くして実験したところ、普通紙でも転写バイアスと分離バイアスの干渉(による横縞状のピッチムラ)が発生した。ただし、普通紙の転写性向上については、凹凸紙に印加するよりも低い電圧で効果がある場合が多いため、干渉が起こるほど電圧を上げる必要がなく、普通紙でピッチムラが起こる可能性は低い。
【0052】
次に、本願発明者らが実施した実験について説明する。
プリント試験機として、図1に示す実施形態と同様の構成のものを用意した。そして、そのプリント試験機を用いて、種々のプリントテストを実施した。二次転写バイアス及び分離バイアスは、直流成分を定電流、交流成分を定電圧で印加する。なお、交流成分を定電圧で印加するのは、交流成分のVpp(電圧の振幅値)を定電流制御するのは難しい(定電圧で制御した方が振幅値を制御しやすい)ためである。
【0053】
基準となる直流電流および交流電圧(ピークツウピーク)の値は以下の値を用いる。
(比較例1)
二次転写バイアス、直流電流:−60[μA],交流電圧:Vpp7.0[kV],周波数500[Hz]
分離バイアス、直流電流:1[μA],交流電圧:Vpp9.0[kV],周波数1[kHz]
【0054】
二次転写バイアスと分離バイアスで交流電圧の周波数が異なっているが、分離バイアスで周波数の低いものを用いると縞が出てしまうためであり、画像に縞が見えにくくするため高い周波数にしている。なお、周波数1[kHz]の電源は汎用品で低コストである。
【0055】
実験においては用紙の厚さ毎に線速を変えており、坪量が220gsm以下の場合は線速352.8mm/s、それ以上の坪量では246.96mm/sで通紙を行った。
【0056】
記録用紙としてA〜Eの5種類を用意し、比較例1及び実施例のそれぞれにハーフトーン画像を出力し、横縞状ピッチムラ等の異常画像発生の有無について目視による画像評価を行った。なお、記録用紙A〜Eは図4で示した用紙から抜粋したものである。
【0057】
印加する二次転写バイアス及び分離バイアスとして、上記した《比較例1》、二次転写バイアスは上記比較例1と同じで分離バイアスの交流電圧のVppを3.0[kV]としたのもの《実施例1》、二次転写バイアスは上記比較例1と同じで分離バイアスの交流電圧をオフした(Vpp=0kV)もの《実施例2》、を用いてそれぞれ通紙を常温常湿環境にて行った。
【0058】
評価サンプルについては、現像剤の状態を均一に保つため、画像面積率が各色9%程度からなる画像を250枚印刷した後に、ハーフトーン画像を5枚出力し、画像評価を行った。なお、評価基準に関しては、異常画像が発生しない場合を○、横縞状ピッチムラ等の異常画像が発生した場合を×とした。評価結果を次の表1に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
この表1より、比較例1に比べて、本発明の実施例1及び実施例2では、それぞれピッチむら等の異常画像が生じる用紙が減少しており、発明の効果があることが示されている。
【0061】
次に、普通紙の薄紙Fを通紙して、用紙詰まりが発生することなく出力できるかどうか、評価を行った。
使用する用紙は、薄紙として52.3gsmの標準紙(普通紙A)、また、抵抗の高い凹凸の大きい用紙である記録用紙A、抵抗の低い凹凸の大きい用紙である記録用紙E、を用いた。なお、普通紙Aと記録用紙Aは別の紙である。
【0062】
印加する二次転写バイアス及び分離バイアスとして、上記した《比較例1》、二次転写バイアスを直流バイアス(直流成分のみ)とし分離バイアスは上記比較例1と同じもの《比較例2》、凹凸紙通紙時は二次転写バイアスは上記比較例1と同じで分離バイアスは上記比較例1の交流電圧をオフ(Vpp=0kV)とし、普通紙通紙時は二次転写バイアスを直流バイアス(直流成分のみ)とし分離バイアスは比較例2と同じく上記比較例1の交流電圧をオフ(Vpp=0kV)したもの《実施例3》、を用いてそれぞれ通紙を常温常湿環境にて行った。
【0063】
評価サンプルについては、白紙を25枚通紙し、用紙詰まりが発生しなかった場合を○、発生した場合を×、用紙詰まりは発生しないが異常画像あるいは濃度不足が発生する場合を△として評価した。評価結果を次の表2に示す。
【0064】
【表2】

【0065】
この表2より、普通紙通紙時に分離バイアスの交流電圧を下げると用紙詰まりが発生することがわかる。一方、分離バイアスの交流電圧を下げないと凹凸紙において異常画像が発生する可能性がある。したがって、用紙の形態に合わせて条件を設定することで、用紙詰まりが発生せず且つ異常画像の発生しない良好な出力を行なうことができる。
【0066】
これらのことから、転写バイアスとして直流成分と交流成分を重畳した重畳バイアスを印加する際に分離バイアスを変化させる(制御する)ことによって、ピッチムラ等の異常画像が発生せず、常に良好な画像を得ることができる。
【0067】
本実施形態のプリンタにおいては、普通紙を通紙する場合、二次転写バイアスとして直流バイアスを印加し、分離バイアスとして重畳バイアスを印加することで、必要充分な転写性を得ながら確実な分離により紙詰まりを防止するようにしている。また、凹凸紙(凹凸の大きな用紙)を通紙する場合、二次転写バイアスとして重畳バイアス(直流成分に交流成分を重畳したもの)を印加し、分離バイアスは交流電圧を下げることで、凹凸紙における転写性を良好にしつつ、ピッチムラ等の異常画像の発生を防止することができる。なお、凹凸紙はもともと分離性が良いので、分離バイアスの交流電圧を下げても紙詰まりの可能性は小さい。
【0068】
次に、本願発明者らは、分離バイアスの交流成分を振って(Vppの値を異ならせて)評価実験を行なった。
上記した記録用紙C,Dおよび普通紙Aを使用し、分離バイアスの交流成分を振って画像を出力したものである。なお、二次転写バイアスに関しては、上記比較例1と同じ値に固定し画像を出力した。記録用紙C,Dに対しては横縞状ピッチムラ等の異常画像発生の有無を評価し、普通紙Aに対しては横縞状ピッチムラ等の異常画像に加えて分離性についても評価した。
【0069】
出力画像に関しては、上記と同様、横縞状ピッチムラ等の異常画像発生に関してはハーフトーン画像を、分離性に関しては白紙を通紙して評価を行なった。次の表3に評価結果を示す。
【0070】
【表3】

【0071】
表3より、記録用紙CとDで、横縞状ピッチムラの発生する分離バイアスの下限値が異なることが分かる。また、普通紙Aに関しては、分離バイアスが一定の値より下げると(本例では6kV以下で)分離異常(詰まり)が発生する。また、分離バイアスを上げると記録用紙C,Dと同様、横縞状ピッチムラが発生したことが確認できる。このことから、転写バイアスとして重畳バイアスを用いるときは、直流バイアスを用いるときよりも分離バイアスを下げることで、横縞状ピッチムラの無い良好な画像を得られることが確認でき、また、用紙に応じて適切な分離バイアスを設定するよう制御することで、様々な用紙に対して良好な画像を確実な分離性のもとに得られることが確認できた。
【0072】
次に、環境変化による制御を加味した実施例について説明する。
部材や用紙の抵抗が変動する要因として環境の変化が挙げられる。そのため、温湿度を検知し、その検知結果を元に分離バイアスを補正することで、環境に依存せず良好な画像を得ることができる。
【0073】
本制御を実施する場合、ニップ形成ローラ56(図1)の近傍に温度及び湿度を検知する温湿度検知センサ(図示せず)を設け、二次転写部周辺の温湿度を検知する。該センサの検知出力は図示しない制御部(例えばプリンタの制御部)に送られ、環境条件を判断する。
【0074】
本実施例では、温湿度の水準として、絶対湿度を用いる。絶対湿度は、温度と相対湿度から求めることができ、次の数式で表される。
【数1】

【0075】
標準的な環境である23℃50%時の絶対湿度は10.30となる。
本実施例では、23℃50%時の絶対湿度を基準値とし、実施時の絶対湿度に応じて分離バイアスの制御を行なう。なお、環境変化による制御は、ここで説明するものに限らず、例えば、温度、相対湿度がそれぞれ一定以上変動した場合に制御を行うようにしても良い。
【0076】
さて、前出の記録用紙Dについて、実施環境を常温常湿環境(23℃50%)、低温低湿環境(10℃15%)、高温高湿環境(27℃80%)の場合でそれぞれ通紙を行なった。通紙条件は前記実施例同様に、剤状態を均一に保つため、画像面積率が各色9%程度からなる画像を250枚印刷した後に、ハーフトーン画像を5枚出力し、画像評価を行なった。
【0077】
転写バイアス、分離バイアスとして、上記比較例1と同じ値とし、分離バイアスは、交流成分の電圧を振って画像を出力し評価を行なった。次の表4に評価結果を示す。なお、表中、MMは常温常湿環境、HHは高温高湿環境、LLは低温低湿環境である。
【0078】
【表4】

【0079】
表4より、常温常湿環境(MM)に対して、低温低湿環境(LL)では横縞状ピッチムラの発生する分離バイアスの交流成分(Vpp)が大きい。一方、高温高湿環境(HH)では、分離バイアスの交流成分(Vpp)が小さくても横縞状ピッチムラが発生しており、各環境において必要な(最適な)分離バイアスが異なることが分かる。この結果から、検出した環境条件に基づいて分離バイアスを制御することで、環境によらず良好な画像を得られることが示された。
【0080】
なお、実際の分離バイアス補正量(検出した環境条件に基づいて決定される分離バイアスの値)は、実機で用いている部材およびバイアス値等の条件に基づき、適宜設定すればよいものである。
【0081】
最後に、図2に示されている現像装置31の詳しい構成等について記す。なお、4つの画像形成ユニットにおける現像装置は扱うトナーの色が異なるのみで構成及び動作は同じであるため、ここでは、Y,M,C,Kの各色を区別せずに説明する。
【0082】
現像装置31は、現像ロール31aを内包する現像部と、図示しない現像剤を撹拌搬送する現像剤搬送部とを有している。そして、現像剤搬送部は、第1スクリュウ部材31bを収容する第1搬送室と、第2スクリュウ部材31cを収容する第2搬送室とを有している。それらスクリュウ部材は、それぞれ、軸線方向の両端部がそれぞれ軸受けによって回転自在に支持される回転軸部材と、これの周面に螺旋状に突設せしめられた螺旋羽根とを具備している。
【0083】
第1スクリュウ部材31bを収容している第1搬送室と、第2スクリュウ部材31cを収容している第2搬送室とは、仕切り壁によって仕切られているが、仕切壁におけるスクリュウ軸線方向の両端箇所には、それぞれ両搬送室を連通させる連通口が形成されている。第1スクリュウ部材31bは、螺旋羽根内に保持している図示しない現像剤を、回転駆動に伴って回転方向に撹拌しながら、図中の紙面に直交する方向の奥側から手前側に向けて搬送する。第1スクリュウ部材31bと、後述する現像ロール31aとは互いに向かい合う姿勢で平行配設されているため、このときの現像剤の搬送方向は、現像ロール31aの回転軸線方向に沿った方向でもある。そして、第1スクリュウ部材31bは、現像ロール31aの表面に対して現像剤をその軸線方向に沿って供給していく。
【0084】
第1スクリュウ部材31bの図中手前側端部付近まで搬送された現像剤は、仕切壁の図中手前側端部付近に設けられた連通開口を通って、第2搬送室内に進入した後、第2スクリュウ部材31cの螺旋羽根内に保持される。そして、第2スクリュウ部材31cの回転駆動に伴って、回転方向に撹拌されながら、図中手前側から奥側に向けて搬送されていく。
【0085】
第2搬送室内において、ケーシングの下壁には図示しないトナー濃度センサが設けられており、第2搬送室内の現像剤のトナー濃度を検知する。トナー濃度センサとしては、透磁率センサからなるものが用いられている。トナーと磁性キャリアとを含有する現像剤の透磁率は、トナー濃度と相関関係があるため、透磁率センサは、トナー濃度を検知していることになる。
【0086】
本プリンタには、Y,M,C,K用の現像装置の第2収容室内にY,M,C,Kトナーをそれぞれ個別に補給するための図示しないY,M,C,Kトナー補給手段が設けられている。そして、プリンタの制御部は、RAMに、Y,M,C,Kトナー濃度検知センサからの出力電圧値の目標値であるY,M,C,K用のVtrefを記憶している。Y,M,C,Kトナー濃度検知センサからの出力電圧値と、Y,M,C,K用のVtrefとの差が所定値を超えた場合には、その差に応じた時間だけY,M,C,Kトナー補給手段を駆動する。これにより、Y,M,C,K用の現像装置における第2搬送室内にY,M,C,Kトナーが補給される。
【0087】
現像部内に収容されている現像ロール31aは、第1スクリュウ部材31bに対向しているとともに、ケーシングに設けられた開口を通じて、感光体11にも対向している。また、現像ロール31aは、回転駆動される非磁性パイプからなる筒状の現像スリーブと、これの内部にスリーブと連れ回らないように固定されたマグネットローラとを具備している。そして、第1スクリュウ部材31bから供給される現像剤をマグネットローラの発する磁力によってスリーブ表面に担持しながら、スリーブの回転に伴って、感光体11に対向する現像領域に搬送する。 現像スリーブには、トナーと同極性であって、感光体11の静電潜像よりも大きく、且つ感光体11の一様帯電電位よりも小さな現像バイアスが印加されている。これにより、現像スリーブと感光体11の静電潜像との間には、現像スリーブのトナーを静電潜像に向けて静電移動させる現像ポテンシャルが作用する。また、現像スリーブと感光体11の地肌部との間には、現像スリーブ上のトナーをスリーブ表面に向けて移動させる非現像ポテンシャルが作用する。それら現像ポテンシャル及び非現像ポテンシャルの作用により、現像スリーブ上のトナーが感光体11の静電潜像に選択的に転移して、静電潜像をトナー像に現像する。
【0088】
以上、本発明を図示例により説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。転写部の構成は適宜な構成を採用可能であり、対向部材側をベルトで構成しても良い。また、転写手段としてはニップを形成する方式に限らず、チャージャを用いた非接触方式も採用可能である。電源の構成も本発明の範囲内で適宜な構成を採用可能である。
【0089】
また、画像形成装置の構成も任意であり、タンデム式における各色作像ユニットの並び順などは任意である。また、4色機に限らず、3色のトナーを用いるフルカラー機や、2色のトナーによる多色機、あるいはモノクロ装置にも本発明を適用することができる。もちろん、画像形成装置としてはプリンタに限らず、複写機やファクシミリ、あるいは複数の機能を備える複合機であっても良い。
【符号の説明】
【0090】
1 画像形成ユニット
11 感光体ドラム(像担持体)
31 現像装置
50 転写ユニット
51 中間転写ベルト(像担持体)
53 二次転写裏面ローラ
56 ニップ形成ローラ
80 光書込ユニット
90 定着装置
110 二次転写バイアス電源
200 除電針(分離装置)
210 分離バイアス出力電源
【先行技術文献】
【特許文献】
【0091】
【特許文献1】特開2008−185890号公報
【特許文献2】特開2006−267486号公報
【特許文献3】特開2008−058585号公報
【特許文献4】特開平09−146381号公報
【特許文献5】特開平04−086878号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体に担持された可視像を記録媒体に転写させる転写手段と、該転写手段により可視像が転写された記録媒体を前記像担持体から分離させる分離手段とを備え、
前記分離手段に直流成分に交流成分を重畳した分離バイアスを印加するとともに、
前記転写手段に、直流成分からなる直流転写バイアスまたは直流成分に交流成分を重畳した重畳転写バイアスを印加可能な画像形成装置において、
前記転写手段に前記重畳転写バイアスを印加する場合、前記分離手段に印加する分離バイアスを、前記転写手段に前記直流転写バイアスを印加する際の分離バイアスから変更することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記転写手段に前記重畳転写バイアスを印加する場合、前記分離手段に印加する分離バイアスの交流成分の電圧値を、前記転写手段に前記直流転写バイアスを印加する際の分離バイアスの交流成分の電圧値よりも小さくすることを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記転写手段に前記重畳転写バイアスを印加する場合、前記分離手段に印加する分離バイアスの交流成分の電圧値をゼロにすることを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
通紙する記録媒体の抵抗値が所定値以下の場合に、前記分離バイアス変更の制御を実施することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
通紙する記録媒体が凹凸紙である場合に、前記転写手段に前記重畳転写バイアスを印加するとともに、前記分離バイアス変更の制御を実施することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記分離バイアスは、交流成分が定電圧制御、直流成分が定電流制御されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記可視像が記録媒体に転写される転写部近傍の環境条件を検出する検出手段を有し、該検出手段の検出結果に基づいて前記分離バイアスの値を制御することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−61453(P2013−61453A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199245(P2011−199245)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】