説明

画像形成装置

【課題】装置内で浮遊しているゴミ等の付着物がポリゴンミラーの反射面に付着しても、ポリゴンミラーの回転を制御できる画像形成装置を提供する。
【解決手段】BD信号の欠落が周期的に検出されたと判断された場合、少なくとも欠落の部分においては予測信号を用いてポリゴンミラー13の回転を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザプリンタなどの画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、レーザプリンタなどの画像形成装置においては、ポリゴンミラーによって偏向されるレーザ光がBDセンサで検出され、レーザ光の偏向周期に応じたBD信号が出力される。そして、このBD信号を用いて、画像データにより変調されたレーザ光の点灯開始タイミングが制御される。このようなレーザプリンタにおいて、レーザ光が装置内で浮遊しているゴミに当たると散乱してBD信号の出力が欠落するといったことがときたま生じる。このようにしてプリント実行中に一度でもBD信号の欠落といったBDエラーが生じ、点灯開始タイミングが狂うと、適切にプリントを実行できないため、再プリントしなければならない。そこで、特許文献1に記載の画像形成装置では、BD信号が欠落したときはBD信号と同じタイミングで出力される疑似BD信号でBD信号の欠落を補い、動作に支障が生じないようにする技術が開示されている。また、特許文献1に記載の画像形成装置では、BD信号の欠落が多く、所定時間内に所定のBD信号の検出数に達しないと、故障の蓋然性が高く、異常と判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−242026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の画像形成装置では、装置内で浮遊しているゴミ等の付着物がポリゴンミラーの反射面に付着してBD信号が適切に出力されなくなった場合であっても、所定時間内に所定のBD信号の検出数に達しないため異常と判断されてしまうため、ユーザとしては可能な限り画像形成装置の動作を継続させたいのにも関わらず、ポリゴンミラーの回転が制御できなくなり、画像形成装置の動作を継続できなくなる問題があった。
【0005】
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、その目的は、装置内で浮遊しているゴミ等の付着物がポリゴンミラーの反射面に付着しても、ポリゴンミラーの回転を制御できる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、請求項1記載の画像形成装置は、レーザ光を出力するレーザ光出力部と、前記レーザ光を偏向するポリゴンミラーと、前記ポリゴンミラーにより偏向されたレーザ光を受光すると受光信号を出力する光センサと、前記受光信号を用いて前記ポリゴンミラーの回転を制御する制御部と、前記受光信号に代わる予測信号を出力する予測信号出力部と、前記受光信号の欠落を検出する欠落検出部と、前記欠落が周期的に検出されたか否かを判断する判断部と、を備え、前記制御部は、前記判断部により前記欠落が周期的に検出されたと判断された場合、少なくとも前記欠落の部分においては前記予測信号を用いて前記ポリゴンミラーの回転を制御する。
【0007】
請求項1記載の画像形成装置によれば、ポリゴンミラーの特定面にゴミ等の付着物が付着して受光信号が出力されない場合、受光信号の欠落が周期的に検出される。ポリゴンミラーのレーザ光を偏向する面にゴミ等の付着物が付着する場合、その面の回転方向における端部にゴミ等の付着物が付着しやすい傾向がある。ポリゴンミラーの特定面の端部にだけゴミ等の付着物が付着している場合、受光信号が欠落しても、レーザ光出力部又は光センサが故障していないので、受光信号の代わりに予測信号を用いることで、ポリゴンミラーの回転制御を継続できる。したがって、装置内で浮遊しているゴミ等の付着物がポリゴンミラーの反射面に付着しても、ポリゴンミラーの回転を制御できる。
【0008】
また、請求項2記載の画像系装置は、前記欠落検出部により検出された前記欠落の検出回数を計数する欠落計数部を備え、前記制御部は、前記判断部により前記欠落が周期的に検出されていないと判断され、かつ、前記検出回数が所定期間に所定回数以上である場合、前記ポリゴンミラーの回転を停止し、前記判断部により前記欠落が周期的に検出されていないと判断され、かつ、前記検出回数が前記所定期間に前記所定回数以上でない場合、少なくとも前記欠落の部分においては前記予測信号を用いて前記ポリゴンミラーの回転を制御する。
【0009】
請求項2記載の画像形成装置によれば、受光信号の欠落が周期的に検出されないで、受光信号の欠落を検出した回数が所定期間に所定回数以上である場合は、レーザ光出力部又は光センサが故障している可能性が高いため、ポリゴンミラーの回転を停止する。受光信号の欠落が周期的に検出されていないで、受光信号の欠落を検出した回数が所定期間に所定回数以上でない場合は、偶然何らかの原因で受光信号が欠落した可能性が高いため、予測信号を用いてポリゴンミラーの回転を制御する。したがって、ポリゴンミラーの回転を継続するか停止するかを適切に制御できる。
【0010】
また、請求項3記載の画像系装置は、前記判断部により前記欠落が周期的に検出されたと判断されたポリゴンミラーの反射面を特定する特定部を備え、前記予測信号出力部は、ポリゴンミラーの反射面に対応した前記受光信号に代わる予測信号を出力可能であり、前記制御部は、前記特定部により特定された前記反射面に対応する前記予測信号を用いる。
【0011】
請求項3記載の画像形成装置によれば、周期的に受光信号が欠落するポリゴンミラーの面に対応する予測信号を用いてポリゴンミラーの回転を制御するので、ポリゴンミラーの全ての面に対応する予測信号を用いてポリゴンミラーの回転を制御するよりも精度が高くポリゴンミラーの回転を制御できる。
【0012】
また、請求項4記載の画像系装置は、前記ポリゴンミラーの反射面ごとに、予測信号が出力される予測間隔を記憶する第1記憶部と、前記受光信号が出力される受光間隔を記憶する第2記憶部と、前記第1記憶部に記憶された前記予測間隔と前記第2記憶部に記憶された前記受光間隔とを照合する照合部と、を備え、前記予測信号出力部は、前記受光信号の出力タイミングを予測して同等の出力タイミングに予測信号を出力し、前記制御部は、前記照合部により照合された情報に基いて、前記特定部により特定された前記反射面に対応する前記予測信号が出力される予測間隔を用いる。
【0013】
請求項4記載の画像形成装置によれば、欠落する受光信号と同等の出力タイミングに出力される予測信号を用いてポリゴンミラーの回転を制御できるので、高い精度でポリゴンミラーの回転を制御できる。
【0014】
また、請求項5記載の画像系装置は、前記欠落検出部は、前記光センサが前記レーザ光を受光する期間に前記レーザ光を受光しなかった場合に、前記受光信号の欠落を検出し、前記判断部は、少なくとも前記ポリゴンミラーが2回転する期間内に、前記ポリゴンミラーの所定の面により偏向された前記レーザ光が1度も受光されなかったか否かにより、前記欠落が周期的に検出されたか否かを判断する。
【0015】
(効果)
請求項5記載の画像形成装置によれば、少なくともポリゴンミラーが2回転する期間内に、ポリゴンミラーの所定の面により偏向されたレーザ光が1度も受光されなかったか否かにより、受光信号の欠落が周期的に検出されたか否かを判断できるので、ポリゴンミラーの回転制御を継続するか否かを早期に判断できる。少なくともポリゴンミラーが2回転する期間内に、ポリゴンミラーの特定面により偏向されたレーザ光が1度も受光されない場合、例えば、レーザ光出力部又は光センサの故障と区別して判断することができる。したがって、適切にポリゴンミラーの回転制御を継続できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、装置内で浮遊しているゴミ等の付着物がポリゴンミラーの反射面に付着しても、ポリゴンミラーの回転を制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係るレーザプリンタ1を示す断面図である。
【図2】図1に示すスキャナユニット9の構成を示す模式図である。
【図3】図1に示すレーザプリンタ1の電気的構成を示すブロック図である。
【図4】図1に示すポリゴンミラー13の反射面に付着物が付着した様子を示す図である。
【図5】図1に示すレーザプリンタ1の動作を表すフローチャートである。
【図6】図1に示すポリゴンミラー13の第2面に付着物が付着したときのBD信号の波形とBD信号の検出カウンタの様子を示す図である。
【図7】図3に示すRAM42におけるBD信号の出力間隔を記憶する領域を示す図である。
【図8】図3に示すRAM42における予測信号の出力間隔を記憶する領域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[実施形態]
次に、本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明においては、まず、レーザプリンタ1の全体構成を簡単に説明した後、本発明の特徴部分の詳細を説明することとする。また、以下の説明においては、図1において、右側を「手前側」と称し、左側を「奥側」と称し、紙面垂直方向のうち奥側を「右側」と称し、紙面垂直方向のうち手前側を「左側」と称する。また、上下方向については、図の上下方向をそのまま「上下方向」と称することとする。
【0019】
<レーザプリンタ1の全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係るレーザプリンタ1を示す断面図である。図1に示すように、レーザプリンタ1は、装置本体としての本体ケーシング2内に用紙3を給紙するためのフィーダ部4や、用紙3に画像を形成するための画像形成部5等を備えている。
【0020】
<フィーダ部4の構成>
フィーダ部4は、公知の構造であり、主に、給紙トレイ6、用紙押圧板7および用紙搬送機構8を備えている。そして、フィーダ部4では、給紙トレイ6内の用紙3が、用紙押圧板7によって上方に寄せられ、用紙搬送機構8によって画像形成部5に搬送される。
【0021】
<画像形成部5の構成>
画像形成部5は、用紙3に現像剤像を形成するスキャナユニット9およびプロセスカートリッジ10と、プロセスカートリッジ10により用紙3上に転写された現像剤像を当該用紙3上に熱定着させる定着部11等を備えている。
【0022】
スキャナユニット9は、レーザ光を出射する発光素子12(図2参照)、回転駆動されることでレーザ光を所定の範囲で走査させるポリゴンミラー13、fθレンズ14、トーリックレンズ15、反射鏡16,17等を備えている。発光素子12から出射されたレーザ光は、図の二点鎖線で示す経路を通って、感光体18の表面上に照射される。尚、スキャナユニット9の構成の詳細については、後述する。
【0023】
プロセスカートリッジ10は、本体ケーシング2の手前側のフロントカバー2Aが適宜開放されて、本体ケーシング2に対して着脱される。このプロセスカートリッジ10は、現像カートリッジ19とドラムユニット20とで主に構成されている。
【0024】
現像カートリッジ19は、ドラムユニット20とともに本体ケーシング2に対して着脱され、或いは本体ケーシング2に固定されたドラムユニット20に対して着脱される。現像カートリッジ19は、主に、現像ローラ21、層厚規制ブレード22、供給ローラ23およびトナーホッパ24を備えている。
【0025】
この現像カートリッジ19では、トナーホッパ24内の現像剤が、アジテータ25で攪拌された後、供給ローラ23により現像ローラ21に供給され、このとき、供給ローラ23と現像ローラ21との間で正に摩擦帯電される。現像ローラ21上に供給された現像剤は、現像ローラ21の回転に伴って、層厚規制ブレード22と現像ローラ21との間に進入し、さらに摩擦帯電されつつ、一定厚さの薄層として現像ローラ21上に担持される。
【0026】
ドラムユニット20は、公知の感光体18、スコロトロン型帯電器26および転写ローラ27を主に備えている。そして、このドラムユニット20内において、感光体18の表面は、スコロトロン型帯電器26により一様に正帯電された後、スキャナユニット9からの画像データによって変調されたレーザ光に照射されることにより露光される。これにより、露光された部分の電位が下がって、画像データに基づく静電潜像が形成される。
【0027】
次いで、現像ローラ21の回転により、現像ローラ21上に担持されている現像剤が、感光体18の表面上に形成された静電潜像に供給されて、感光体18の表面上に現像剤像が形成される。その後、感光体18と転写ローラ27の間に用紙3が搬送されることで、感光体18の表面に担持されている現像剤像が用紙3上に転写される。
【0028】
定着部11は、公知の構造であり、加熱ローラ28と、押圧ローラ29とを備えている。加熱ローラ28は、加熱ローラ28を加熱するハロゲンヒータ30が内設されている。そして、定着部11では、用紙3上に転写された現像剤像が、用紙3が加熱ローラ28と押圧ローラ29との間を通過する間に熱定着される。なお、定着部11を通過した用紙3は、排紙ローラ31によって排紙トレイ32上に送り出される。
【0029】
<スキャナユニット9の構成>
図2は、図1に示すスキャナユニット9の構成を示す模式図である。図2においては、右側を「手前側」と称し、左側を「奥側」と称し上側を「右側」と称し、下側を「左側」と称する。スキャナユニット9は、発光素子12、レンズ部35、ポリゴンミラー13、fθレンズ14、トーリックレンズ15(図1参照)、反射鏡16,17(図1参照)および、BDセンサ36等を備えている。レンズ部35は、コリメータレンズ、および、シリンドリカルレンズ等で構成されている。本実施形態のBDセンサ36は、本発明の光センサの一例である。
【0030】
発光素子12は、点灯制御回路49(図3参照)から出力される信号に応じて点灯又は消灯する。発光素子12から出射されたレーザ光は、レンズ部35を介してポリゴンミラー13に照射される。ポリゴンミラー13はポリゴンモータ53によって高速回転されており、照射されたレーザ光はポリゴンミラー13によって偏向され、fθレンズ14、反射鏡16、トーリックレンズ15、および、反射鏡17を介して感光体18に照射される。ポリゴンミラー13の1つの反射面によって偏向されたレーザ光が感光体18の1ライン上に走査される。図2に示すように、ポリゴンミラー13は、反時計回りに回転している。レーザ光は左側から右側に向かって走査され、BDセンサ36、感光体18の順にレーザ光が照射される。本実施形態の発光素子12、及び、レンズ部35は、本発明のレーザ光出力部の一例である。
【0031】
図4は、図1に示すポリゴンミラー13の反射面に付着物が付着した様子を示す図である。ポリゴンミラー13は6つの反射面(A面,B面,C面,D面,E面,F面)(図4参照)で構成されており、レーザ光を周期的に偏向する。本実施形態ではレーザ光がポリゴンミラー13の1つの反射面によって偏向される期間を1周期とする。したがって本実施形態では6周期でポリゴンミラー13が1回転することになる。
【0032】
BDセンサ36は、ポリゴンミラー13で偏向されたレーザ光が感光体18を走査するより前に通過する位置に配置されている。BDセンサ36により、印字時において感光体18に向けて1ライン毎にレーザ光を走査し始める発光素子12の点灯開始のタイミングが決定される。BDセンサ36は、発光素子12から出射されたレーザ光を受光するとBD(Beam Detect)信号を点灯制御回路49に出力する(図3参照)。ポリゴンミラー13の回転制御については後述する。
【0033】
<レーザプリンタ1の電気的構成>
次に、レーザプリンタ1の電気的構成について説明する。レーザプリンタ1は、図3に示すように、CPU40、ROM41、RAM42、表示部43、操作部44、フィーダ部4、画像形成部5、ネットワークインターフェース45等を備えている。図3は、図1に示すレーザプリンタ1の電気的構成を示すブロック図である。
【0034】
CPU40は、ROM41に格納されている各種プログラムを実行し、RAM42に各数値を記憶させている。CPU40は、表示部43、操作部44、フィーダ部4、画像形成部5等と電気的に接続されている。ROM41は、このレーザプリンタ1において印字動作を行うための各種制御プログラムを格納している。RAM42は、各種制御プログラムにおいて設定される数値等を一時的に記憶する。
【0035】
表示部43は、たとえば、液晶ディスプレイおよびランプからなり、各種の設定画面および動作状態を表示する。また、表示部43は、CPU40によってレーザプリンタ1の何らかの異常が検知された際に、異常があったことを警告する警告表示を行う。操作部44は、複数のボタンおよびスイッチからなり、ユーザによって印字開始の指示等の各種の入力操作が行われる。フィーダ部4は、操作部44等により印字開始の指示が入力されると、給紙トレイ6内の用紙3を画像形成部5に搬送する。
【0036】
ネットワークインターフェース45は、ネットワークに接続され、他の情報処理装置との接続を可能にしている。そして、ネットワークインターフェース45を介して外部装置とデータ通信を行うことができる。
【0037】
画像形成部5は、スキャナユニット9等を備えている。スキャナユニット9は、ポリゴンミラー13を駆動するためのポリゴンミラー駆動部48と、発光素子12の点灯を制御する点灯制御回路49とを備えている。
【0038】
ポリゴンミラー駆動部48は、ポリゴンモータ53、および、モータドライバ54を備えている。ポリゴンモータ53は、ポリゴンミラー13を回転駆動させるためのモータである。モータドライバ54は、ポリゴンモータ53に接続されている。モータドライバ54は、CPU40からのポリゴンミラー駆動指令に基づき、ポリゴンモータ53にデジタル信号を入力する。ポリゴンモータ53は、入力されたデジタル信号に基づき回転が制御される。なお、ポリゴンミラー13は、公知の制御により回転が制御される。デジタル信号は、BD信号の出力間隔によってポリゴンミラー13の回転速度が予測され、ポリゴンミラー13が所定回転速度で回転するように生成される。このデジタル信号の生成において、BD信号が出力されるタイミングにBD信号が出力されない場合、BD信号が欠落したとして、BD信号の代わりに後述する予測信号が用いられる。
【0039】
点灯制御回路49は、発光素子12、および、BDセンサ36に接続されている。点灯制御回路49は、BDセンサ36から出力されるBD信号の出力タイミングに合わせて発光素子12の点灯を制御する。BD信号の出力タイミングから所定期間経過した時点を、発光素子12の点灯開始タイミングとする。
【0040】
BD信号の代わりに予測信号が用いられると、予測信号に基づいて発光素子12の点灯が制御される。予測信号はBD信号が出力された直後のタイミングで出力される。予測信号の出力間隔は、工場出荷時にポリゴンミラー13が所定回転速度で回転しているときに1回転分のBD信号の出力を検出し、その検出されたBD信号の出力間隔を用いる。したがって、予測信号の出力間隔は、BD信号の出力間隔と同等になるが、出力タイミングが異なる。予測信号の出力間隔はRAM42に記憶され、点灯制御回路49によって予測信号が出力される。BD信号の出力間隔は、ポリゴンミラー13の反射面の加工面精度により、各面(A面,B面,C面,D面,E面,F面)ごとに若干異なる。BD信号と予測信号の出力タイミングのずれをより少なくするために、本実施形態では、予測信号が用いられる反射面を特定し、特定された反射面に対応する予測信号を用いる。本実施形態の点灯制御回路49は、本発明の予測信号出力部の一例である。本実施形態の予測信号の出力間隔が記憶されたRAM42は、本発明の第1記憶部の一例である。
【0041】
BD信号が欠落する場合、点灯制御回路49は、予測信号の出力タイミングから所定期間経過した時点で発光素子12を点灯する。CPU40は、点灯開始タイミングから1ライン分の点灯信号を発光素子12に出力する。これにより感光体18に1ライン分の静電潜像が形成される。
【0042】
<ポリゴンミラー13にゴミ等の付着物が付着する場合について>
次に、図4を用いてポリゴンミラー13にゴミ等の付着物が付着する場合について説明する。図4の左側のポリゴンミラー13は、工場出荷時のゴミ等の付着物が付着していない状態である。図4の右側のポリゴンミラー13は、長年使用され、ゴミ等の付着物が各反射面の端部に付着している状態である。ポリゴンミラー13の反射面の端部は、点線で示された円の軌道上を回転する。反射面の中央付近は、点線よりも内側を回転する。したがって、ポリゴンミラー13の周りに用紙3の紙粉などが浮遊していると反射面の中央付近よりも反射面の端部に付着しやすい。紙粉を含むゴミ等の付着物が反射面の端部に付着していくと、図4の右のように付着物が反射面の端部に付着し、付着物がレーザ光を遮るため、BDセンサ36がレーザ光を受光できなくなる。
【0043】
紙粉は反射面の端部に徐々に付着していくため、BD信号が欠落する反射面も徐々に増えていく。正常にBD信号の出力が検出されている状態から、反射面の付着物の影響により、突然、全ての反射面からBD信号が欠落する状態にはならない。全ての反射面からBD信号が欠落する場合は、発光素子12、又は、BDセンサ36の異常である可能性が高い。ゴミ等の付着物が反射面に付着してBD信号が欠落する場合は、BD信号が欠落する反射面が徐々に増えていくため、発光素子12、又は、BDセンサ36が異常である場合と区別することができる。
【0044】
<制御動作>
次に、図5から図8を用いてレーザプリンタ1の動作について説明する。図5は、図1に示すレーザプリンタ1の動作を表すフローチャートである。図6は、図1に示すポリゴンミラー13の第2面に付着物が付着したときのBD信号の波形とBD信号の検出カウンタの様子を示す図である。図7は、図3に示すRAM42におけるBD信号の出力間隔を記憶する領域を示す図である。図8は、図3に示すRAM42における予測信号の出力間隔を記憶する領域を示す図である。
【0045】
レーザプリンタ1に電源が投入されると、図5に示すフローチャートに従う動作が開始される。S101では、印字指示があるか否かが判断される。印字指示は、ユーザが外部の情報処理装置、又は、操作部44等を操作して入力される。レーザプリンタ1は、印字指示が入力されるまで待機状態となる(S101:No)。印字指示があると判断されると(S101:Yes)、ポリゴンミラー13の回転制御が行われる(S102)。ポリゴンミラー13の回転が所定速度で安定して回転するように周知の回転制御が行われる。
【0046】
次にS103では、BD信号が未検出であるか否かが判断される。BD信号が未検出であるか否は、例えば、ポリゴンミラー13の回転が所定速度で安定回転した後に、ポリゴンミラー13が1回転する期間にBD信号の出力が検出されたか否かにより判断される。BD信号が未検出であると判断された場合、発光素子12、又は、BDセンサ36の異常が考えられる。したがって、この場合印字を継続することができないため、エラーを報知してこの処理を終了する(S104)。BD信号が未検出でないと判断された場合、S201に進む。
【0047】
S201では、ポリゴンミラー13の反射面がゴミ等の付着物が付着して、その付着した面からBD信号の出力が検出できなくなっているか否かが判断される。この判断のために、ポリゴンミラー13が3回転する期間、BD信号の出力が検出される。BD信号の出力を検出するためのポリゴンミラー13の回転期間は、少なくとも2回転以上必要である。これは、ポリゴンミラー13を1回転させている期間の検出では、たまたま何らかの要因でBD信号の出力が欠落した場合と、付着面からのBD信号の出力が欠落した場合とを区別することができないためである。本実施形態では、判断の精度を向上させるために、ポリゴンミラー13が3回転する期間を用いる。
【0048】
次に、S202では、BD信号が欠落したか否かが判断される。ポリゴンミラー13の反射面の数が6面である場合、ポリゴンミラー13が3回転する期間に検出されるBD信号の出力数は、最初に検出される数を除いて18回である。つまり、ポリゴンミラー13が3回転する期間にBD信号の出力が18回検出されると、BD信号が欠落していないと判断し(S202:No)、S203に進む。本実施形態のS202、及び、点灯制御回路49は、本発明の欠落検出部の一例である。
【0049】
S203では、正常にBD信号の出力が全て検出できる状態であるので、予測信号を出力するための予測間隔のデータが更新される。予測間隔のデータは、図8に示すようなRAM42の領域に記憶される。検出したBD信号の出力間隔を予測間隔YT1から順に予測間隔YT6まで更新する。工場出荷時の予測間隔のデータでは、現状のBD信号の出力間隔と異なる場合があるので、予測間隔のデータを更新することで、より正確な予測信号を出力することができる。更新された予測信号を用いてS204の印字処理を行うことができるので、印字処理中にBD信号の出力が欠落しても精度の高い予測信号を用いてポリゴンミラー13の回転を制御することができる。S204の印字処理が終わるとこのフローチャートの処理が終了し、再度このフローチャートの処理が開始され、S101が行われる。
【0050】
S202で、検出したBD信号の出力数が17回以下であると、BD信号が欠落したと判断され(S202:Yes)、S301に進む。図6に示すように、S201が開始されると、ポリゴンミラー13が3回転する期間、BD信号の出力が検出される。BD信号の出力が検出されると、RAM42のBD信号検出カウンタの値が1ずつ増えていく。S201が開始されたときにBD信号検出カウンタの値を初期値の0に設定する。図6では、ポリゴンミラー13の第2面に付着物が付着し、第2面からのレーザ光をBDセンサが受光できない状態である。第2面からBD信号が出力されないため、BD信号検出カウンタの値は15となる。BD信号検出カウンタの値が17以下である場合、BD信号が欠落したと判断される。
【0051】
S301では、周期的にBD信号の出力が欠落するか否かが判断される。S201で検出したBD信号の出力が特定の面から周期的に欠落すると判断された場合(S301:Yes)、ポリゴンミラー13の特定面にゴミ等の付着物が付着したと判断し、S302に進む。周期的にBD信号の出力が欠落しないと判断された場合(S301:No)、S306に進む。
【0052】
BD信号の出力が特定の面から周期的に欠落するか否かは、BD信号の出力間隔を計測して、計測された順に、図7に示すようなRAM42のBD出力間隔PT11、BD出力間隔PT21、BD出力間隔PT31、BD出力間隔PT41、BD出力間隔PT51、BD出力間隔PT61、BD出力間隔12、BD出力間隔PT22、BD出力間隔PT32、BD出力間隔PT42、BD出力間隔PT52、BD出力間隔PT62、BD出力間隔PT13、BD出力間隔PT23、BD出力間隔PT33、BD出力間隔PT43、BD出力間隔PT53、BD出力間隔PT63に記憶される。ただし、BD信号の出力許容期間(例えば平均出力間隔の1.2倍以上の期間)が経過してもBD信号の出力が検出されなかった場合、BD信号が欠落したとして、0の値が出力間隔に記憶される。
【0053】
図6に示すように、第2面からのBD信号の出力が検出されない場合、BD出力間隔PT21、BD出力間隔PT22、及び、BD出力間隔PT23には0の値が記憶される。したがって、ある所定面に記憶された出力間隔の値が3つとも0である場合、その所定面にゴミ等の付着物が付着したと判断される。S301では、ポリゴンミラー13の第1面から第6面までの中から記憶された出力間隔の値が3回とも0である面があるか否かを判断する。付着面の特定は後述するS304で行われる。本実施形態のS301、及び、点灯制御回路49は、本発明の判断部の一例である。本実施形態のBD出力間隔PT11からBD出力間隔PT63を記憶するRAM42は、本発明の第2記憶部の一例である。
【0054】
次に、S302で、BD信号の出力間隔と予測信号の予測間隔とを照合する。S301で記憶したBD出力間隔PT11(図7参照)と一致する出力間隔が予測間隔YT1から順に予測間隔YT6までにないか照合する(図8参照)。一致する出力間隔がなければ、次のBD出力間隔PT12と一致する出力間隔が予測間隔YT1から順に予測間隔YT6までにないか照合する。この照合は、一致する出力間隔が出るまで行われる。一致する出力間隔が出なければ全ての記憶されたBD信号の出力間隔に対して行われる。本実施形態のS302は、本発明の照合部の一例である。
【0055】
次に、S303では、S302の照合の結果、BD信号の出力間隔と予測信号の予測間隔とが一致した出力間隔があるか否かが判断される。一致した出力間隔がないと判断された場合(S303:No)、S204の印字処理に進む。この場合、BD信号が周期的に欠落するポリゴンミラー13の反射面に対応しない予測信号を用いて印字処理が行われる。また、一致した出力間隔があると判断された場合(S303:Yes)、S304に進む。
【0056】
S304では、BD信号が欠落するポリゴンミラー13の欠落面を特定する。つまり、ゴミ等の付着物が付着したポリゴンミラー13の付着面を特定する。これは、S301で、ポリゴンミラー13の第1面から第6面までの中から記憶された出力間隔の値が3回とも0である面があるか否かを判断し、3回とも0である面を検出することで特定される。図6に示すように、BD出力間隔PT21、BD出力間隔PT22、BD出力間隔PT23の値が全て0であるので、欠落面(付着面)として第2面が特定される。本実施形態のS304は、本発明の特定部の一例である。
【0057】
次に、S305では、特定された欠落面に対応する予測信号を出力する。例えば、BD出力間隔PT11の値と予測間隔YT4の値とが一致した場合、欠落面である第2面はE面に対応付けられる。したがって、第2面のBD信号を用いる代わりに予測間隔YT5に基いて出力される予測信号を用いる。欠落面が複数面ある場合は、それぞれの面に対応する予測間隔を用いてそれぞれ予測信号が出力される。そして、S204では、BD信号が欠落しない面ではBD信号を用いて、BD信号が欠落する面ではその面に対応する予測信号を用いて、印字処理が行われる。
【0058】
S301で周期的にBD信号の出力が欠落しないと判断した場合、S306で、BD信号の欠落数が所定回数(例えば3回)以上であるか否かを判断する。これは、たまたま何らかの要因でBD信号が1,2回欠落したのか、又は、BDセンサ36等の異常により所定回数以上BD信号が欠落したのかを区別するために行われる。BD信号の欠落が所定回数以上である場合(S306:Yes)、BDセンサ36等の異常により所定回数以上BD信号が欠落した可能性が高いため、エラーを報知し(S307)、このフローチャートの処理を終了する。また、BD信号の欠落が所定回数以上でない場合(S306:No)、たまたま何らかの要因でBD信号が1,2回欠落した可能性が高いため、S204に進み、印字処理を行う。印字処理中にBD信号が欠落した場合は、記憶されている予測信号が出力される。BD信号の欠落数は、S301で出力間隔に0が記憶された数をカウントすることで分かる。BD信号出力間隔PT11からBD信号出力間隔PT63までの値に0が記憶されている数をカウントし、RAM42の欠落カウンタに記憶する。本実施形態のS306、及び、欠落カウンタは、本発明の欠落計数部の一例である。本実施形態のS301からS307、CPU40、及び、ポリゴンミラー駆動部48は、本発明の制御部の一例である。
【0059】
[変形例]
本発明は、本実施形態に限定されることはなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。以下にその一例を述べる。
【0060】
本実施形態では、レーザプリンタに限らず、その他の画像形成装置、例えば複写機や複合機等に本発明を適用してもよい。
【0061】
S301で記憶したBD出力間隔11と一致する出力間隔が予測間隔YT1から順に予測間隔YT6までにないか照合したが、予測間隔YT1から予測間隔YT6までの中からBD出力間隔11と最も近い出力間隔を選出して照合してもよい。最も近い出力間隔が複数ある場合は、次のBD出力間隔21と最も近い出力間隔を選出する照合を行う。最も近い出力間隔が1つになるまで記憶したBD信号の出力間隔の順番にこの照合が行われる。最も近い出力間隔が1つになった場合、この最も近い出力間隔の情報を用いてBD信号が欠落した面の出力間隔に代わる予測間隔を対応付ける。S204では、対応付けた予測間隔を用いて欠落面のBD信号の代わりに予測信号を出力させて印字処理を行う。
【符号の説明】
【0062】
1 レーザプリンタ
3 用紙
5 画像形成部
9 スキャナユニット
10 プロセスカートリッジ
12 発光素子
13 ポリゴンミラー
36 BDセンサ
40 CPU
41 ROM
42 RAM
49 点灯制御回路







【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出力するレーザ光出力部と、
前記レーザ光を偏向するポリゴンミラーと、
前記ポリゴンミラーにより偏向されたレーザ光を受光すると受光信号を出力する光センサと、
前記受光信号を用いて前記ポリゴンミラーの回転を制御する制御部と、
前記受光信号に代わる予測信号を出力する予測信号出力部と、
前記受光信号の欠落を検出する欠落検出部と、
前記欠落が周期的に検出されたか否かを判断する判断部と、を備え、
前記制御部は、前記判断部により前記欠落が周期的に検出されたと判断された場合、少なくとも前記欠落の部分においては前記予測信号を用いて前記ポリゴンミラーの回転を制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記欠落検出部により検出された前記欠落の検出回数を計数する欠落計数部を備え、
前記制御部は、
前記判断部により前記欠落が周期的に検出されていないと判断され、かつ、前記検出回数が所定期間に所定回数以上である場合、前記ポリゴンミラーの回転を停止し、
前記判断部により前記欠落が周期的に検出されていないと判断され、かつ、前記検出回数が前記所定期間に前記所定回数以上でない場合、少なくとも前記欠落の部分においては前記予測信号を用いて前記ポリゴンミラーの回転を制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置において、
前記判断部により前記欠落が周期的に検出されたと判断されたポリゴンミラーの反射面を特定する特定部を備え、
前記予測信号出力部は、ポリゴンミラーの反射面に対応した前記受光信号に代わる予測信号を出力可能であり、
前記制御部は、前記特定部により特定された前記反射面に対応する前記予測信号を用いることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像形成装置において、
前記ポリゴンミラーの反射面ごとに、予測信号が出力される予測間隔を記憶する第1記憶部と、
前記受光信号が出力される受光間隔を記憶する第2記憶部と、
前記第1記憶部に記憶された前記予測間隔と前記第2記憶部に記憶された前記受光間隔とを照合する照合部と、を備え、
前記予測信号出力部は、前記受光信号の出力タイミングを予測して同等の出力タイミングに予測信号を出力し、
前記制御部は、前記照合部により照合された情報に基いて、前記特定部により特定された前記反射面に対応する前記予測信号が出力される予測間隔を用いることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の画像形成装置において、
前記欠落検出部は、前記光センサが前記レーザ光を受光する期間に前記レーザ光を受光しなかった場合に、前記受光信号の欠落を検出し、
前記判断部は、少なくとも前記ポリゴンミラーが2回転する期間内に、前記ポリゴンミラーの所定の面により偏向された前記レーザ光が1度も受光されなかったか否かにより、前記欠落が周期的に検出されたか否かを判断することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−97095(P2013−97095A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238503(P2011−238503)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】