説明

画像形成装置

【課題】定着処理に起因する記録紙の帯電を効果的に抑制して記録紙の搬送を安定化する。
【解決手段】トナー画像を記録紙P上に形成する画像形成手段(ベルトローラー41〜2次転写ローラー49)と、記録紙P上のトナー画像を定着させる定着ローラー51と、定着ローラー51を通過した記録紙Pを一枚づつ検出し、検出信号を出力する記録紙センサー57と、記録紙センサー57から入力された検出信号に基づいて定着ローラー51を通過した記録紙Pの枚数をカウントする演算制御部6と、除電バイアスを用いて記録紙Pを除電する分離除電部50とを具備する複合機Aであって、演算制御部6は、カウントした記録紙Pの枚数が増加する程に除電バイアスを減少させる制御手段を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置においては、トナー画像が転写された記録紙を定着部に搬送し、定着部により記録紙を加熱及び加圧することでトナー画像を記録紙に定着させる(下記特許文献1参照)。上記定着部における加圧部材や加熱部材(記録紙と接触する部材)にはフッ素系樹脂が一般的に用いられるが、このフッ素系樹脂は記録紙との摩擦によって負極性に帯電する材料である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−31369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記定着部における加圧部材や加熱部材の摩擦帯電性は、初期状態(フッ素樹脂が磨耗されていない状態)において非常に高く、記録紙に対する定着処理の回数(枚数)が増加するに従って(つまり記録紙の通過数が増加するに従って)フッ素樹脂表面が磨耗することにより徐々に低下する。このため、定着部の使用開始初期には、加圧部材や加熱部材に蓄積された静電気が記録紙に転移して記録紙が比較的強く負極性に帯電する。また、1枚の記録紙が定着部を2回通過する両面画像形成の場合には、記録紙における負極性の帯電量が多くなる。さらに、正極性トナーを用いる場合には、トナー画像を記録紙に転写させるために負極性の転写バイアスを用いるので、記録紙における負極性の帯電量はさらに増加する。
【0005】
上記転写バイアスによる記録紙の帯電を解消するために、画像形成装置には記録紙上の電荷を除電する除電器が一般的に設けられるが、この除電器は定着部から記録紙に転移した静電気を考慮したものではないので、記録紙の電荷を十分に除電することができない。帯電状態の記録紙を所定の搬送経路(通過経路)に沿って搬送する場合、この通過経路に設けられた金属性ガイドへの吸着等により、例えば定着部への通紙が不安定となることがあり、この結果として記録紙にシワが生じたり、また記録紙詰まりが発生したりする。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、定着処理に起因する記録紙の帯電を効果的に抑制して記録紙の搬送を安定化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、第1の解決手段として、トナー画像を記録紙上に形成する画像形成手段と、記録紙上のトナー画像を定着させる定着手段と、定着手段を通過した記録紙の枚数をカウントするカウント手段と、記録紙の通過経路に設けられ、除電バイアスを用いて記録紙を除電する除電手段とを具備する画像形成装置であって、カウント手段がカウントした記録紙の枚数が増加する程に除電バイアスを減少させる制御手段を具備するという手段を採用する。
【0008】
本発明では、第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、制御手段は、カウント手段がカウントした記録紙の枚数が所定枚数に到達する毎に除電バイアスを段階的に減少させるという手段を採用する。
【0009】
本発明では、第3の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、画像形成手段は、正極性トナーを用いて像担持体上にトナー画像を形成し、当該トナー画像を負極性の転写バイアスを用いて記録紙に転写させ、除電手段は、記録紙に正極性の除電バイアスを供給するという手段を採用する。
【0010】
本発明では、第4の解決手段として、上記第1〜第3のいずれか1つの解決手段において、定着手段は、記録紙と接触する接触面がフッ素系材料によって形成されているという手段を採用する。
【0011】
本発明では、第5の解決手段として、上記第1〜第4のいずれか1つの解決手段において、表面にトナー画像が形成されて前記定着手段を通過した記録紙の裏面にトナー画像を別途形成する両面画像形成機能を備えるという手段を採用する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、定着手段を通過した記録紙の枚数をカウントし、カウントされた記録紙の枚数が増加する程に除電バイアスを減少させる。つまり、本発明によれば、定着手段を通過した記録紙の枚数が少なく、定着手段が帯電し易い場合には、記録紙を除電する除電バイアスを増大させて除電能力を向上させ、一方、定着手段を通過した記録紙の枚数が多く、定着手段が帯電し難い場合には、記録紙を除電する除電バイアスを減少させて除電能力を低下させる。本発明によれば、定着手段の帯電性に応じて除電バイアスの大きさを変えることにより除電能力を変化させるので、定着処理に起因する記録紙の帯電を効果的に抑制することが可能であり、よって記録紙の搬送を安定化することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る複合機Aの全体構成を示す機能ブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態において、定着ローラー51を通過した記録紙Pの枚数に応じた除電バイアスの電流値を示す特性図(a)と、定着カウントの変化に応じた記録紙Pの搬送性と除電バイアスの電流値との関係を検証した実験結果(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態に係る複合機Aは、電子写真方式に基づいてカラー画像を形成するカラー方式の画像形成装置であり、図1に示すように、操作表示部1、画像読取部2、画像データ記憶部3、画像形成部4、通信部5及び演算制御部6を備える。なお、演算制御部6は、本実施形態における制御手段である。
【0015】
操作表示部1は、操作キー及びタッチパネルを備えており、ユーザーと複合機Aとを関係付けるマンマシンインターフェイスとして機能する。操作表示部1は、操作キーまたはタッチパネルに表示された操作ボタンに対するユーザーの操作指示を操作信号として演算制御部6に出力するとともに、演算制御部6から入力される制御信号に基づいてタッチパネルに種々の情報を表示する。
【0016】
画像読取部2は、演算制御部6から入力される制御信号に基づいてADF(Automatic document feeder:自動原稿送り装置)により自動給紙される原稿またはプラテンガラス上に載置された原稿の表面画像(原稿画像)をラインセンサーで読み取って原稿画像データに変換し、この原稿画像データを画像データ記憶部3に出力する。
【0017】
画像データ記憶部3は、半導体メモリーまたはハードディスク装置等であり、演算制御部6から入力される制御信号に基づいて、原稿画像データ、通信部5が外部のクライアントコンピューターから受信するプリント画像データ及び通信部5が外部のファクシミリ装置から受信するファクシミリ画像データを記憶すると共に、これら画像データを演算制御部6から入力される制御信号に基づいて読み出して画像形成部4に出力する。
【0018】
画像形成部4は、演算制御部6から入力される制御信号に基づいて、給紙カセット45から取り出した記録紙Pに画像データ記憶部3から読み出した画像データに基づくトナー画像を画像形成するものである。この画像形成部4は、ベルトローラー41、中間転写ベルト42、トナーの各色(Y,M,C,K)に対応する4つの画像形成ユニット43Y,43C,43M,43K、1次転写ローラー44Y,44C,44M,44K、給紙カセット45、ピックアップローラー46、搬送ローラー47、レジストローラー48、2次転写ローラー49、分離除電部50、定着ローラー51、排紙ローラー52、排紙トレイ53、反転ローラー54、分岐ガイド55、3対の反転紙搬送ローラー56及び記録紙センサー57を備えている。なお、ベルトローラー41〜2次転写ローラー49は、本実施形態における画像形成手段を構成する。また、定着ローラー51は、本実施形態における定着手段である。さらに、分離除電部50は、本実施形態における除電手段である。
【0019】
ベルトローラー41は、図示するように、離間して配設された3つのローラー、つまり駆動ローラー41a、従動ローラー41b及びテンションローラー41cからなる。すなわち、駆動ローラー41aと従動ローラー41bとは水平方向に一定距離を空けて配置され、テンションローラー41cは、このような駆動ローラー41aと従動ローラー41bとの間かつ若干上方に変位した位置に配置されている。中間転写ベルト42は、このようなベルトローラー41(駆動ローラー41a、従動ローラー41b、テンションローラー41c)に架け渡された無端ベルトであり、駆動ローラー41aによって矢印で示す方向に走行する。
【0020】
すなわち、中間転写ベルト42は、駆動ローラー41aと従動ローラー41bとの間においては水平方向に走行する。また、上述した駆動ローラー41aは、駆動力を発生するモーターが軸結合されたローラーであり、モーターの動力によって中間転写ベルト42を矢印方向に走行させる。上記従動ローラー41bは、自由回転するように設けられたフリーローラーであり、中間転写ベルト42を駆動ローラー41aの動力に従って案内する。また、上記テンションローラー41cは、回転軸が可動可能に設けられ、所定の付整力で中間転写ベルト42を押圧することにより一定のテンション(張力)を中間転写ベルト42に付与するローラーである。
【0021】
画像形成ユニット43Y,43C,43M,43Kは、図示するように、上述した中間転写ベルト42の水平走行部位に所定間隔を空けて設けられている。これら画像形成ユニット43Y,43C,43M,43Kのうち、画像形成ユニット43Yは、イエロー(Y)のトナー画像を形成するユニットであり、従動ローラー41bに最も近い位置に設けられている。画像形成ユニット43Cは、シアン(C)のトナー画像を形成するユニットであり、上記画像形成ユニット43Yの次に従動ローラー41bに近い位置に設けられている。画像形成ユニット43Mは、マゼンダ(M)のトナー画像を形成するユニットであり、上記画像形成ユニット43Cの次に従動ローラー41bに近い位置に設けられている。画像形成ユニット43Kは、ブラック(K)のトナー画像を形成するユニットであり、駆動ローラー41aに最も近い位置に設けられている。
【0022】
このような画像形成ユニット43Y,43C,43M,43Kは、各々に感光体ドラムay,ac,am,ak、帯電部by,bc,bm,bk、レーザースキャニングユニットcy,cc,cm,ck、現像ユニットdy,dc,dm,dk及びクリーナーey,ec,em,ekを構成要素としている。
【0023】
すなわち、画像形成ユニット43Yは、感光体ドラムay、帯電部by、レーザースキャニングユニットcy、現像ユニットdy及びクリーナーeyから構成され、画像形成ユニット43Cは、感光体ドラムac、帯電部bc、レーザースキャニングユニットcc、現像ユニットdc及びクリーナーecから構成され、画像形成ユニット43Mは、感光体ドラムam、帯電部bm、レーザースキャニングユニットcm、現像ユニットdm及びクリーナーemから構成され、画像形成ユニット43Kは、感光体ドラムak、帯電部bk、レーザースキャニングユニットck、現像ユニットdk及びクリーナーekから構成されている。
【0024】
各感光体ドラムay,ac,am,akは、周面が所定の感光体材料(例えばアモルファスシリコン)で形成された円筒部材である。各帯電部by,bc,bm,bkは、各感光体ドラムay,ac,am,akの周面(感光面)を均一に帯電させるものである。各レーザースキャニングユニットcy,cc,cm,ckは、帯電状態の上記感光面にレーザー光を照射することにより、感光面に静電潜像を形成するものである。
【0025】
各現像ユニットdy,dc,dm,dkは、内部に所定の量のトナー(正極性トナー)を収容すると共に当該トナーを感光面に供給することにより当該感光面に形成された静電潜像をトナー画像として現像する。各クリーナーey,ec,em,ekは、トナー画像の転写後の感光面に残留するトナー(残留トナー)を掻き落として除去するものである。
【0026】
1次転写ローラー44Y,44C,44M,44Kは、図示するように画像形成ユニット43Y,43C,43M,43Kに対応して4つ設けられており、各々に中間転写ベルト42を挟んだ状態で各画像形成ユニット43Y,43C,43M,43Kの感光体ドラムay,ac,am,akに対向配置されている。また、各1次転写ローラー44Y,44C,44M,44Kには負極性の1次転写バイアス(高電圧)が印加されており、各1次転写ローラー44Y,44C,44M,44Kは、この1次転写バイアスの作用によって各画像形成ユニット43Y,43C,43M,43Kの感光体ドラムay,ac,am,akにそれぞれ形成された各色のトナー画像を中間転写ベルト42に転写(1次転写)させる。
【0027】
給紙カセット45は、A4サイズやB5サイズ等、所定形状の記録紙Pを複数枚重ねた状態で収容する容器である。ピックアップローラー46は、給紙カセット45の上部において記録紙Pに圧接するように設けられ、給紙カセット45内の記録紙Pを1枚づつ取り出して搬送ローラー47に送り出すローラーである。搬送ローラー47は、ピックアップローラー46から給紙された記録紙Pをレジストローラー48に向けて搬送するローラーである。レジストローラー48は、搬送ローラー47から供給された記録紙Pを所定のタイミングで2次転写ローラー49に供給するローラーである。
【0028】
2次転写ローラー49は、中間転写ベルト42を挟んで駆動ローラー41aに対向配置されたローラーであり、中間転写ベルト42上のトナー画像を記録紙Pに転写(2次転写)させるものである。この2次転写ローラー49には、負極性の2次転写バイアス(高電圧)が印加されており、2次転写ローラー49は、この2次転写バイアスの作用によって中間転写ベルト42上のトナー画像を記録紙Pに転写(2次転写)させる。
【0029】
分離除電部50は、演算制御部6から入力される制御信号に基づいて記録紙Pに向けて正極性の除電バイアスを供給する。この除電バイアスは、記録紙Pの帯電を中和して無帯電状態にするためのものであり、記録紙Pの2次転写ローラー49からの分離を良好にするものである。分離除電部50は、ステンレスからなる鋸歯状電極を有し、この鋸歯状電極の先端から電界が形成され記録紙Pが除電される。
【0030】
定着ローラー51は、内部にヒータを備えた加熱ローラー51aと、当該加熱ローラー51aに圧接する加圧ローラー51bとから構成されている。この定着ローラー51は、加熱ローラー51aと加圧ローラー51bとで各色のトナー画像が転写された記録紙Pを挟み込むことにより記録紙Pを加熱及び加圧して、各色のトナー画像を記録紙P上に定着させる。加熱ローラー51a及び加圧ローラー51bは、記録紙Pと接触する接触面(表面)が摩擦により負極性に帯電するフッ素系材料によって形成されている。すなわち、加熱ローラー51a及び加圧ローラー51bは、その表面が記録紙Pとの摩擦により負極性に帯電する。
【0031】
排紙ローラー52は、定着ローラー51から搬送されると共に分岐ガイド55により案内された記録紙Pを排紙トレイ53に向けて搬送するローラーである。排紙トレイ53は、排紙ローラー52から供給された記録紙Pを収容・保持する収容部である。反転ローラー54は、定着ローラー51から搬送されると共に分岐ガイド55により案内された記録紙Pをスイッチバック搬送するためのローラーである。つまり、反転ローラー54は、正転することにより定着ローラー51から供給された記録紙Pを挟み込み、当該挟みこんだ状態で逆転することにより記録紙Pを反転紙搬送ローラー56に向けて搬送する。
【0032】
分岐ガイド55は、演算制御部6から入力される制御信号に基づいて定着ローラー51から排出された記録紙Pの搬送先を排紙ローラー52または反転ローラー54に択一的に切り替える。つまり、分岐ガイド55は、記録紙Pを排紙トレイ53に排紙する場合には、第1の姿勢(図1に示す点線の姿勢)とすることにより記録紙Pの搬送先を排紙ローラー52とし、一方、第2の姿勢(図1に示す実線の姿勢)とすることにより記録紙Pの搬送先を反転ローラー54に切り替える。
【0033】
反転紙搬送ローラー56は、反転ローラー54から供給された記録紙Pをレジストローラー48に向けて搬送するための搬送経路(反転経路)に設けられたローラーである。この反転紙搬送ローラー56は、図示するように、反転経路において離間した3箇所に設けられている。記録紙センサー57は、定着ローラー51と分岐ガイド55との間に配置され、定着ローラー51を通過した記録紙Pの枚数を検出し、当該枚数を示す検出信号を演算制御部6に出力する。
【0034】
ここで、記録紙Pの表面と裏面とにトナー画像を形成する両面画像形成においては、上記反転ローラー54、分岐ガイド55及び反転紙搬送ローラー56が機能することにより、表面の画像形成において定着ローラー51を通過した記録紙Pが表面と裏面とが反転した状態でレジストローラー48に再度供給され、記録紙Pの裏面の画像形成が行われる。
【0035】
通信部5は、演算制御部6から入力される制御信号に基づいて、電話回線を介して外部の複合機あるいはファクシミリ装置と通信を行うと共に、LAN(Local Area Network)を介してクライアントコンピューター等と通信を行うものである。すなわち、この通信部5は、G3等のファクシミリ規格に準拠した通信機能とイーサネット(登録商標)等のLAN規格に準拠した通信機能とを兼ね備えたものである。
【0036】
演算制御部6は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及び電気的に相互接続された各部と各種信号の送受信を行うインターフェイス回路等から構成されている。この演算制御部6は、上記ROMに記憶された制御プログラムに基づいて各種の演算処理を行うと共に各部と通信を行うことにより複合機Aの全体動作を制御する。
【0037】
詳細については後述するが、演算制御部6は、上記各種の演算処理の一環として、記録紙Pの枚数に応じて分離除電部50を駆動させて記録紙Pに供給させる除電バイアスの電流値を調整する。つまり、演算制御部6は、定着ローラーを通過した記録紙Pの枚数を記録紙センサー57から入力される検出信号に基づいてカウントし、カウントした記録紙Pの枚数が増加する程に除電バイアスを減少させる。なお、このような演算制御部6は、記録紙センサー57と共に本実施形態におけるカウント手段を構成する。
【0038】
次に、このように構成された複合機Aの動作について説明する。
最初に本複合機Aの全体動作を説明する。例えばユーザーがADFに原稿をセットし、また操作表示部1を操作することによって記録紙Pの片面への原稿の複写(コピー)を指示すると、当該指示に関する指示信号は操作表示部1から演算制御部6に入力される。この結果、演算制御部6は、画像読取部2に原稿の頁毎に原稿画像を順次読み取らせると共に、当該原稿画像の原稿画像データを画像データ記憶部3に記憶させる。そして、演算制御部6は、上記原稿画像データに基づいて各トナー色に対応するビットマップ画像データをそれぞれ生成し、これらビットマップ画像データに基づいて原稿画像の画像形成処理を画像形成部4に実行させる。
【0039】
すなわち、演算制御部6は、ピックアップローラー46を駆動させて給紙カセット45内の記録紙Pを1枚づつ取り出して搬送ローラー47に送り出させると共に当該搬送ローラー47を駆動させて記録紙Pをレジストローラー50に向けて搬送させる。また、演算制御部6は、駆動ローラー41aを駆動させて中間転写ベルト42を走行状態とすると共に、各画像形成ユニット43Y,43M,43C,43Kを駆動させ、上述した各ビットマップ画像データに基づいて各色の正極性トナーからなるトナー画像を各感光体ドラム43aの感光面(周面)に形成させる。そして、演算制御部6は、各1次転写ローラー44Y,44M,44C,44Kに負極性の1次転写バイアスを印加させることによって、各感光体ドラム43aのトナー画像を中間転写ベルト42上に1次転写させる。
【0040】
そして、演算制御部6は、画像形成ユニット43Y,43M,43C,43Kにおける各色の画像形成の処理タイミングに合わせてレジストローラー50を駆動させると共に2次転写ローラー51に負極性の2次転写バイアス(その際の電流値は60μA)を印加させることによって、記録紙Pの所望位置に中間転写ベルト42上のトナー画像(原稿画像)を2次転写させる。そして、演算制御部6は、分離除電部50に正極性の除電バイアスを使用させて記録紙Pを除電しつつ、定着ローラー52を駆動させると共に、分岐ガイド55を第1の姿勢に切り替えさせることで記録紙Pを排紙ローラー53に向けて搬送させる。そして、演算制御部6は、排紙ローラー53を駆動させて記録紙Pを排紙トレイ53に排出させる。
【0041】
一方、演算制御部6は、ユーザーにより記録紙Pの両面への原稿の複写(コピー)が指示された場合には、定着ローラー52を駆動させるまでの処理を上記処理と同様に進め、その後の処理を異ならせる。つまり、演算制御部6は、定着ローラー52を駆動させると共に、分岐ガイド55を第2の姿勢(図1に示す実線の姿勢)に切り替えさせることで記録紙Pを反転ローラー54に向けて搬送させる。そして、演算制御部6は、反転ローラー54を所定時間正回転させた後に、分岐ガイド55を第1の姿勢(図1に示す点線の姿勢)に切り替えさせると共に、反転ローラー54を逆回転させて記録紙Pを反転紙搬送ローラー56に向けて搬送させる。そして、演算制御部6は、反転紙搬送ローラー56を駆動させて、記録紙Pをレジストローラー48に向けて搬送させる。
【0042】
また、演算制御部6は、各色の正極性トナーからなるトナー画像を各感光体ドラム43aの感光面に形成させる。そして、演算制御部6は、各1次転写ローラー44Y,44M,44C,44Kに負極性の1次転写バイアスを印加させることによって、各感光体ドラム43aのトナー画像を中間転写ベルト42上に1次転写させる。そして、演算制御部6は、各1次転写ローラー44Y,44M,44C,44Kに負極性の1次転写バイアスを印加させることによって、各感光体ドラム43aのトナー画像を中間転写ベルト42上に1次転写させる。
【0043】
そして、演算制御部6は、画像形成ユニット43Y,43M,43C,43Kにおける各色の画像形成の処理タイミングに合わせてレジストローラー50を駆動させると共に2次転写ローラー51に負極性の2次転写バイアス(その際の電流値は60μA)を印加させることによって、記録紙Pの裏面の所望位置に中間転写ベルト42上のトナー画像を2次転写させる。そして、演算制御部6は、分離除電部50に正極性の除電バイアスを使用させて記録紙Pを除電させつつ供給させつつ、定着ローラー52を駆動させると共に、分岐ガイド55を第1の姿勢に切り替えさせることで記録紙Pを排紙ローラー53に向けて搬送させる。そして、演算制御部6は、排紙ローラー53を駆動させて記録紙Pを排紙トレイ54に排出させる。
【0044】
ここで、演算制御部6は、画像形成部4に上記画像形成処理を行わせるに際して、以下の特徴的な処理を行う。すなわち、演算制御部6は、定着ローラー51を通過した記録紙Pの枚数が所定枚数に到達する毎に除電バイアスを段階的に減少させる。例えば、図2(a)に示すように、演算制御部6は、定着ローラー51を通過する記録紙Pの枚数が0〜200枚までの間においては除電バイアスの電流値を5μAに設定し、201枚から400枚までの間においては4μAに設定し、401枚から600枚までの間においては3μAに設定し、601枚から800枚までの間においては2μAに設定し、801枚以上においては1μAに設定する。
【0045】
すなわち、演算制御部6は、定着ローラー51を通過した記録紙Pの枚数が200枚増加する毎に除電バイアスの電流値を段階的に減少させるように分離除電部50を制御する。このように定着ローラー51における記録紙Pの通過枚数の増大に応じて除電バイアスの電流値を減少させることにより、定着ローラー51の帯電に起因する記録紙Pの帯電を効果的に抑制することが可能である。
【0046】
図2(b)は、定着カウント(定着ローラー51を通過した記録紙Pの枚数)の変化に応じた記録紙Pの搬送性と除電バイアスの電流値との関係を検証した実験結果を示している。この図2(b)に示すように、定着カウントが0枚である場合では、電流値が1μA及び2μAの場合にはJAMやシワが発生し、電流値が3μA及び10μAの場合には搬送が不安定だがJAMやシワがない状態になり、電流値が4μA,5μA,7μAの場合には搬送が良好になる。また、定着カウントが1000枚である場合には、1μA〜5μAの場合には搬送が良好になり、電流値が7μA、10μAの場合には搬送が不安定だがJAMやシワがない状態になる。
【0047】
また、定着カウントが100000枚である場合には電流値が1μA〜3μAの場合には搬送が良好になり、電流値が4μAの場合には搬送が不安定だがJAMやシワがない状態になり、電流値が5μA,7μA,10μAの場合に、JAMやシワが発生してしまう。つまり、定着ローラー51を通過した記録紙Pの枚数が増加する程に除電バイアスを減少させることにより、記録紙Pの画像形成時に定着ローラー51から転移した電荷が記録紙Pから除電されるので、記録紙Pの搬送を安定化させることができる。
【0048】
すなわち、制御演算部6は、定着ローラー51を通過した記録紙Pの枚数をカウントし、カウントされた記録紙Pの枚数が増加する程に除電バイアスを減少させる。つまり、制御演算部6は、定着ローラー51を通過した記録紙Pの枚数が少なく、定着ローラー51に静電気が発生しやすい場合には、記録紙Pに供給する除電バイアスを増大させ、一方、定着ローラー51を通過した記録紙Pの枚数が多く、定着ローラー51に静電気が発生しにくい場合には、記録紙Pに供給する除電バイアスを減少させる。
【0049】
このような本実施形態によれば、定着ローラー51の帯電性に応じて除電バイアスの大きさを変えることにより、転写時に帯電した電荷と共に定着ローラー51から転移した電荷を記録紙Pから効果的に除電することができるので、記録紙Pの搬送を安定化させることが可能である。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく、例えば以下のような変形が考えられる。
(1)上記実施形態において、200枚ずつ段階的に、除電バイアスを減少させたが、本発明はこれに限定されない。例えば、200枚より少ない間隔(例えば100枚ずつ)でもよいし、200枚より多い間隔(例えば300枚ずつ)であってもよい。また、上記実施形態において、2次転写バイアスの電流値が60μAであったが、2次転写バイアスの電流値が60μAより低い場合には、除電バイアスの電流値を上記設定値より低く設定し、2次転写バイアスの電流値が60μAより高い場合には、除電バイアスの電流値を上記設定値より高く設定することにより、安定した記録紙Pの搬送を実現するようにしてもよい。
【0051】
(2)上記実施形態では、ローラ方式の定着ローラー51を採用しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、トナーの定着方式として、ローラ方式の代わりに定着ベルト方式またはIH方式が用いられる画像形成装置に本発明を適用してもよい。
【0052】
(3)上記実施形態において、分離除電部50は、正極性の除電バイアスを記録紙Pに供給しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、定着ローラー51における記録紙Pと接触する接触面が正極性に帯電する材料によって形成され、負極性トナーを用いて各感光体ドラムay,am,ac,akに形成されたトナー画像が正極性の1次転写バイアスを用いて中間転写ベルト42に転写され、その後、正極性の2次転写バイアスを用いて中間転写ベルト42から記録紙Pにトナー画像を転写する画像形成装置においては、分離除電部50は、負極性の除電バイアスを用いることにより記録紙Pに帯電する正極性の電荷を除電してもよい。
【0053】
(4)上記実施形態において、定着ローラー51は、記録紙Pと接触する加熱ローラー51a及び加圧ローラー51bの接触面がフッ素系材料によって形成されているが、フッ素系材料以外の他の負極性に帯電する材料が用いられている画像形成装置に、本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0054】
A…複合機(画像形成装置)、1…操作表示部、2…画像読取部、3…画像データ記憶部、4…画像形成部、5…通信部、6…演算制御部(制御手段、カウント手段)、41a,41b,41c…ベルトローラー、42…中間転写ベルト、43Y,43C,43M,43K…画像形成ユニット、44Y,44M,44C,44K…1次転写ローラー、45…給紙カセット、46…ピックアップローラー、47…搬送ローラー、48…レジストローラー、49…2次転写ローラー、50…分離除電部(除電手段)、51…定着ローラー(定着手段)、52…排紙ローラー、53…排紙トレイ、54…反転ローラー、55…分岐ガイド、56…反転紙搬送ローラー、57…記録紙センサー(カウント手段)、ay,am,ac,ak…感光体ドラム、by,bm,bc,bk…帯電部、cy,cm,cc,ck…レーザースキャニングユニット、dy,dm,dc,dk…現像ユニット、ey,em,ec,ek…クリーナー、51a…加熱ローラー、51b…加圧ローラー、P…記録紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー画像を記録紙上に形成する画像形成手段と、前記記録紙上のトナー画像を定着させる定着手段と、前記定着手段を通過した前記記録紙の枚数をカウントするカウント手段と、前記記録紙の通過経路に設けられ、除電バイアスを用いて前記記録紙を除電する除電手段とを具備する画像形成装置であって、
前記カウント手段がカウントした前記記録紙の枚数が増加する程に前記除電バイアスを減少させる制御手段を具備することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記カウント手段がカウントした前記記録紙の枚数が所定枚数に到達する毎に前記除電バイアスを段階的に減少させることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記画像形成手段は、正極性トナーを用いて像担持体上にトナー画像を形成し、当該トナー画像を負極性の転写バイアスを用いて前記記録紙に転写させ、
前記除電手段は、前記記録紙に正極性の除電バイアスを供給することにより除電することを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記定着手段は、前記記録紙と接触する接触面がフッ素系材料によって形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
表面にトナー画像が形成されて前記定着手段を通過した前記記録紙の裏面にトナー画像を別途形成する両面画像形成機能を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−97165(P2013−97165A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239729(P2011−239729)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】