説明

画像監視システム

【課題】監視カメラの設置位置や監視エリアの設定を自動的に行えるようにし、これにより運用開始前の設定作業に要する時間及び労力を大幅に減らして作業性の向上を図る。
【解決手段】監視カメラ1,1,…に位置センサ、方位センサ及び傾斜センサを持たせて、当該監視カメラ1,1,…が設置された時にその設置位置、設置向き及び傾斜角等のカメラの設置状態を表す情報を管理サーバ9により取得し記憶する。そして、管理サーバ9において、監視エリア割当制御プログラム131に従い、上記記憶されたカメラの設置状態を表す情報と、予め記憶しておいた建造物等の位置と大きさを表す情報をもとに、監視カメラ1,1,…ごとに障害物を検出し、この障害物の位置と大きさを考慮して地図上に監視カメラ1,1,…ごとの監視担当エリアを設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、監視カメラを使用して監視対象エリアを遠隔監視する画像監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、犯罪や災害対策の一つとして、監視対象エリアに監視カメラを設置してその撮像画像をもとに監視対象エリアおける被害又は被災の状況を監視するシステムが実用化されている。また、この監視システムを利用して、外出中のユーザの状況を画像により確認できるようにしたシステムも提案されている。このシステムは、例えばユーザにGPS(Global Positioning System)による位置計測機能を備えた携帯端末を所持させる。そして、この携帯端末から非常時信号が送信された場合に、この非常時信号に付随する位置情報をもとに上記携帯端末の現在位置に最も近い監視カメラを作動させて上記携帯端末の方向に向け、これにより非常事態が発生した現場の画像データを確認できるようにするものとなっている(例えば特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−329757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、この種の従来のシステムは、監視カメラの設置位置や設置向き、それに基づく監視エリアのプリセットポジション等を、システムの運用開始前にシステムオペレータが手動作業で登録設定する必要があり、その作業に多くの時間と労力を費やしていた。
【0005】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、監視カメラの設置位置や設置向きの設定を不要にして、監視カメラに対する監視エリアの割当設定を自動的に行えるようにし、これにより設定作業に要する時間及び労力を大幅に減らして作業性の向上を図った画像監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためにこの発明の一つの観点は、監視対象エリアに、撮像方向を検出する手段及び前記設置位置を計測する手段を備えた複数の監視カメラを設置すると共に、これら複数の監視カメラとの間で通信ネットワークを介してそれぞれ通信が可能な管理サーバを具備する。そして、管理サーバが、上記複数の監視カメラから上記検出された撮像方向を表す情報及び上記計測された設置位置を表す位置情報を通信ネットワークを介してそれぞれ受信し、この受信された撮像方向を表す情報及び位置情報と、監視対象エリアにおいて死角を形成する構造物の設置条件を表す情報とに基づいて、上記複数の監視カメラに対しそれぞれ監視担当エリアを割り当るように構成したものである。
【発明の効果】
【0007】
したがって、監視カメラの設置位置及び撮像方向が監視カメラから送られる情報により得られ、この情報もとに監視カメラに対する監視担当エリアの割り当て設定の処理が自動的に行われる。このため、監視カメラの設置位置や設置向き、監視エリアごとのプリセットポジション等を、システムオペレータがシステムの運用開始前に手動で設定する必要がなくなり、これにより運用開始前の作業を簡略化して登録設定に要する時間及び労力を大幅に減らすことができる。
【0008】
すなわちこの発明によれば、監視カメラの設置位置や設置向きの設定を不要にして、監視カメラに対する監視エリアの割当設定を自動的に行えるようになり、これにより設定作業に要する時間及び労力を大幅に減らして作業性の向上を図った画像監視システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の第1の実施形態に係わる画像監視システムの全体構成を示す図。
【図2】図1に示した画像監視システムの管理サーバの構成を示すブロック図。
【図3】図2に示した管理サーバによる監視カメラに対する監視エリアの割当処理を説明するための図。
【図4】監視平面を緯度・経度情報により管理する場合の概念と、カメラの監視画像に対する緯度・経度情報の割当例を示す図。
【図5】図4に示した監視画面の表示例を示す図。
【図6】図1に示した画像監視システムの携帯端末における監視画像の表示例を示す図。
【図7】基準画像と災害時の画像の一例を示す図。
【図8】災害時の危険エリアの分布とその時の迂回ルートの表示例を示す図。
【図9】この発明の第2の実施形態に係わる画像監視システムの全体構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照してこの発明に係わる実施形態を説明する。
(第1の実施形態)
図1は、この発明の第1の実施形態に係わる画像監視システムの全体構成を示す図であり、以下のように構成される。
すなわち、監視対象エリアには複数台の監視カメラ1,1,…が分散配置されている。これらの監視カメラ1,1,…は、撮像方向(パン、チルト方向)を変化させるための雲台と、レンズの倍率を変化させるためのズーム機構を備えた可動カメラからなり、さらに位置センサ、方位センサ及び傾斜センサを備えている。位置センサは、GPS(Global Positioning System)を利用してカメラの設置位置を検出する。設置位置は、緯度、経度、高さにより表される。方位センサは例えばジャイロを用いたもので、カメラの設置向きを検出する。傾斜センサはカメラが設置された状態での傾斜角を検出する。
【0011】
監視カメラ1,1,…は、撮像画像データをルータ2及び通信ネットワーク8を介して管理サーバ9へ送信する機能と、上記各センサにより得られた設置位置、設置向き及び傾きの各検出データを管理サーバ9へ送信する機能を備える。上記撮像画像データは、管理サーバ9から通信ネットワーク8を介して画像記録装置10に伝送されて記録される。画像記録装置10は例えばデータベースサーバにより構成される。
【0012】
上記監視カメラ1,1,…が接続されたルータ2には、画像処理装置3が接続されている。画像処理装置3は以下の機能を有する。すなわち、監視カメラ1,1,…ごとにその平常時の画像データを定期的に取得し、この画像データから草木の揺れ等の環境要因、車両や人等の移動物体による変動画像成分を除去して、この除去処理後の画像データを基準画像データとして更新保存する。そして、監視カメラ1,1,…により得られる画像データを定期的に上記基本画像データと比較し、その差分がしきい値より大きい場合に危険通知データを生成して上記管理サーバ9へ送信する。
【0013】
ユーザが所持する携帯端末4は、無線LAN(Local Area Network)のアクセスポイント5或いはセルラ移動通信網の基地局(図示せず)を介して通信ネットワーク8に接続され、この通信ネットワーク8を経て上記管理サーバ9に接続可能となっている。携帯端末4は例えば携帯電話機又はPDA(Personal Digital Assistant)等の携帯情報端末からなり、GPSを利用した位置計測機能を備えている。また携帯端末4は、監視画像データの表示要求を管理サーバ9へ送信する際に、上記GPS位置計測機能により検出された自端末の位置情報を送信し、これにより自端末が存在するエリアの監視画像データを管理サーバ9から受信して表示する機能を有する。さらに携帯端末4は、上記監視画像データが表示されている状態で、ユーザの操作に応じて、監視カメラ1,1,…の雲台又はレンズを遠隔操作するための制御信号、さらには監視カメラ1,1,…を選択するための制御信号を送信する機能も備えている。
【0014】
監視端末6は、有線LANを介してルータ7に接続され、このルータ7から通信ネットワーク8を介して上記管理サーバ9に接続可能となっている。監視端末6は例えばパーソナル・コンピュータからなり、上記携帯情報端末4とほぼ同様の機能を備えている。この監視端末6は、ユーザ又は監視者が自宅やオフィス内において監視画像データを確認するために使用される。
なお、通信ネットワーク8としては、例えばインターネットに代表されるIP(Internet Protocol)網が用いられる。
【0015】
ところで、管理サーバ9は以下のように構成される。図2はその構成を示すブロック図である。管理サーバ9は、中央処理ユニット(CPU)11を備え、このCPU11に対しバス12を介してプログラムメモリ13と、データメモリ14と、通信インタフェース15と、入出力インタフェース16を接続したものとなっている。
【0016】
通信インタフェース15は、CPU11の制御の下で、通信ネットワーク8により規定される通信プロトコルに従い、監視カメラ1,1,…、画像処理装置3、携帯端末4、監視端末6及び画像記録装置10との間で画像データ及び制御信号の送受信を行う。通信プロトコルとしては例えばTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)が用いられる。
【0017】
入出力インタフェース16には、保守のための入力部17及び表示部18が接続されている。入出力インタフェース16は、入力部17において入力された制御データ等を受付ける処理と、システム管理情報等を表示部18に表示させる処理を行う。
【0018】
データメモリ14には、カメラ設置情報データベース141と、ユーザ情報データベース142と、地図情報データベース143が設けられている。
カメラ設置情報データベース141には、各監視カメラ1,1,…からそれぞれ取得したカメラの設置位置、設置向き、傾斜角等のカメラの設置状態を表す情報が記憶され、さらに各監視カメラ1,1,…に対し設定された監視担当範囲におけるプリセットエリアとそのプリセットポジション番号が記憶される。
【0019】
ユーザ情報データベース142には、システムに利用登録されたユーザを管理するための情報が記憶される。このユーザ情報には、ユーザ名等のユーザ属性を表す情報と、ユーザが使用する携帯端末4又は監視端末6の識別情報(端末ID)、電話番号及びアドレス情報が含まれる。
【0020】
地図情報データベース143には、監視対象エリアを含むエリアの地図情報が記憶されている。地図情報には、地図上の各位置の緯度、経度、高さを表す位置データと、地図上に存在する山や谷、建造物の位置とその大きさを表すデータが含まれる。
【0021】
プログラムメモリ13には、監視エリア割当制御プログラム131と、カメラ遠隔制御プログラム132と、危険監視制御プログラム133と、ルートマップ作成プログラム134と、安否確認画像作成プログラム135が格納されている。
【0022】
監視エリア割当制御プログラム131は、以下の処理を上記CPU11に実行させる。
(1) 各監視カメラ1,1,…からカメラの設置位置、設置向き、傾斜角等のカメラの設置状態を表す情報を取得し、この取得したカメラの設置状態を表す情報を上記カメラ設置情報データベース141に記憶させる処理。
(2) 上記カメラ設置情報データベース141に記憶されたカメラの設置状態を表す情報と、地図情報データベース143に記憶された建造物等の位置と大きさを表す情報をもとに、監視カメラ1,1,…ごとに障害物を考慮して地図上に監視カメラ1,1,…ごとの監視担当エリアを設定する。そして、この設定した監視担当エリアの位置を表す情報を上記カメラ設置情報データベース141に記憶させる処理。
【0023】
カメラ遠隔制御プログラム132は、以下の処理をCPU11に実行させる。
(1) 携帯端末4から監視画像取得要求が送られた場合に、当該要求と共に送られた携帯端末4の現在位置を表す情報と、カメラ設置情報データベース141に記憶された各監視カメラ1,1,…の設置位置を表す情報をもとに、上記要求元の携帯端末4に最も近い監視カメラを選択する。そして、この選択した監視カメラ4から送られた監視画像データと、上記要求元の携帯端末の現在位置とその周辺の監視カメラの設置位置を地図上に表示した地図データを、要求元の携帯端末4へ送信して表示させる処理。
【0024】
(2) 上記監視画像データ及び地図データが表示された状態で、携帯端末4からカメラを遠隔操作するための制御信号が送られた場合に、この操作制御信号に応じて該当する監視カメラの撮像方向や倍率を制御する処理。
【0025】
(3) 上記監視画像データ及び地図データが表示された状態で、携帯端末4からカメラを選択するための制御信号が送られた場合に、この選択制御信号により指示された監視カメラを選択し、その監視画像データを要求元の携帯端末4へ送信し表示させる処理。またこのとき、携帯端末4に表示されている地図データも更新する。
【0026】
危険監視制御プログラム133は、画像処理装置3から危険通知データが送られた場合に、この危険通知データをもとに危険エリアを例えばその危険の度合いに応じて色分けして地図上に表示した危険表示マップを生成し保存する。そして、携帯端末4から危険表示マップの表示要求が送られた場合に、当該表示要求と共に送られる携帯端末4の現在位置情報をもとに、当該要求元の携帯端末4が存在するエリアの危険表示マップを選択して要求元の携帯端末4へ送信し表示させる処理。
【0027】
ルートマップ作成プログラム134は、携帯端末4から出発地点及び到達予定地点を指定する情報を含むルートマップ表示要求が送られた場合に、上記危険監視制御プログラム133により生成された危険表示マップ上において、その危険エリアの位置と危険度に基づいて、危険度が予め設定したしきい値以上のエリアを迂回して上記出発地点から到達予定地点へ到達するためのルートを探索する。そしてこの探索されたルートを地図上に表示したルートマップを生成し、このルートマップを上記要求元の携帯端末4へ送信し表示させる処理。
【0028】
安否確認画像作成プログラム135は、以下の処理をCPU11に実行させる。
(1) 安否確認を要求するユーザの携帯端末4又は監視端末6に安否確認入力画面をダウンロードし、この入力画面において当該ユーザが安否確認対象者の携帯端末の電話番号又はアドレス情報が入力した場合に、この電話番号又はアドレス情報をもとに該当する安否確認対象者の位置情報を取得する処理。
【0029】
(2) 上記取得された安否確認対象者の位置情報をもとに、当該安否確認対象者の現在位置に最も近い監視カメラを選択する。さらに、当該監視カメラの撮像方向を予め設定したプリセットエリア単位で制御することにより、安否確認対象者が存在するプリセットエリアの画像データを取得し、上記安否確認要求元の携帯端末4又は監視端末6へ送信して表示させる処理。
【0030】
次に、以上のように構成されたシステムの動作をより具体的に説明する。
(1)各監視カメラに対する監視エリアの割当制御
監視対象エリアに監視カメラ1,1,…を設置して起動すると、各監視カメラ1,1,…では内蔵する位置センサ、方位センサ及び傾斜センサによりそれぞれ設置位置(緯度、経度及び高さ)、設置向き、傾斜角が検出され、その検出データがカメラの設置状態を表す情報として管理サーバ9へ送信される。なお、このカメラの設置状態を表す情報にはカメラの固有識別情報も含まれる。
【0031】
管理サーバ9は、監視カメラ1,1,…から送信されたカメラの設置状態を表す情報を通信インタフェース15により受信すると、監視エリア割当制御プログラム131に従い、上記受信されたカメラの設置状態を表す情報をカメラ設置情報データベース141に格納する。
【0032】
次に、上記カメラ設置情報データベース141に記憶されたカメラの設置状態を表す情報と、地図情報データベース143に記憶された建造物等の位置と大きさを表す情報をもとに、監視カメラ1,1,…ごとに障害物を検出し、この障害物の位置と大きさを考慮して地図上に監視カメラ1,1,…ごとの監視担当エリアを設定する。さらに、この設定された監視担当エリアごとに、当該エリアをカメラの画角を考慮して複数のプリセットエリアに分割し、この分割された各プリセットエリアの位置を表す情報を、そのプリセットポジションを表す情報と、当該プリセットエリアを監視する時に使用するカメラの優先順位を表す情報と共に、上記カメラ設置情報データベース141に記憶させる。
【0033】
例えば、いま図3(a)に示すように監視対象エリアE内のC1,C2に示す位置に監視カメラが設置され、その中間位置に障害物となる構造物Bが存在したとする。この場合は、地図上において、図3(b)に示すように構造物Bを境界として各監視カメラが撮像可能なエリアをそれぞれ監視担当エリアE1,E2に設定する。なお、障害物が存在しない場合には、双方の監視カメラからの距離が等しい地点を監視担当エリアの境界とする。続いて、各監視カメラの画角を考慮して、上記設定された監視担当エリアE1,E2ごとに複数のプリセットエリアPE11〜PE15,PE21〜PE27を設定する。このとき、プリセットエリアPE11〜PE15,PE21〜PE27のサイズは、監視カメラの近傍エリアでは画角を最大広角にしても撮像範囲は狭くなるため小さく設定され、遠方になればなるほど大きくなるように設定される。
【0034】
次に管理サーバ9は、監視エリア割当制御プログラム131に従い、各監視カメラに対し雲台及びズーム機構の遠隔制御信号を送信してカメラを旋回及びズームさせ、これにより上記設定されたプリセットエリアPE11〜PE15,PE21〜PE27ごとにカメラがその中心を指向する状態を探す。そして、この中心を指向する状態をプリセットポジションとし、このときの旋回角及びズーム倍率をプリセットポジション番号と共に、プリセットエリアPE11〜PE15,PE21〜PE27を表す情報と関連付けてカメラ設置情報データベース141に記憶させる。
【0035】
また管理サーバ9は、上記プリセットエリアPE11〜PE15,PE21〜PE27ごとに当該エリアが複数の監視カメラにより撮像可能か否かを判定し、複数のカメラにより撮像可能なプリセットエリアに対しては、当該エリアを撮像する監視カメラの優先順位を設定する。そして、この設定した監視カメラの優先順位を表す情報を、上記プリセットエリアを表す情報と関連付けてカメラ設置情報データベース141に記憶させる。例えば、図3(b)のプリセットエリアPE15については地点C1の監視カメラを優先順位第1位、地点C2の監視カメラを優先順位第2位とする。また、プリセットエリアPE26については地点C2の監視カメラを優先順位第1位、地点C1の監視カメラを優先順位第2位とする。
【0036】
(2)位置情報と関連付けた監視画像データの表示
管理サーバ9は、カメラ設置情報データベース141に記憶されたカメラの設置位置(緯度、経度、高さ)を表す情報と、地図情報記憶部143に記憶された緯度経度データ付の地図情報とをもとに、監視対象エリアEを例えば図4(a)に示すように緯度経度に応じて複数の小エリアに分割して管理している。
【0037】
この状態で、携帯端末4から所望の監視対象エリアについて監視画像取得要求が送られたとする。なお、上記監視対象エリアの指定は、例えば携帯端末4からのアクセスに応じて管理サーバ9から地図情報を送信してブラウザ上に表示させ、携帯端末4のユーザがこの表示された地図上の所望の地点をクリック又はタッチするか或いはその住所を入力することにより行われる。
【0038】
そうすると管理サーバ9は、当該要求と共に送られた携帯端末4の現在位置を表す情報と、カメラ設置情報データベース141に記憶された各監視カメラ1,1,…の設置位置を表す情報をもとに、上記要求元の携帯端末4に最も近い監視カメラを選択する。そして、この選択した監視カメラから送られた監視画像データDを、要求元の携帯端末4へ送信してブラウザ上で表示させる。図4(b)はその表示画像の一例を示すもので、緯度経度を表す情報として、小エリアを示す格子状の線が監視画像D上に重畳された状態で表示される。
【0039】
(3)安否確認のための監視画像の表示
ここでは、災害発生時に、外出中のユーザUの安否をその家族が確認しようとする場合を例にとって説明を行う。
安否確認を行おうとする家族ユーザは、自身の携帯端末4から管理サーバ9に対しユーザUの安否確認要求を送信する。この安否確認要求の送信は、例えば携帯端末4からのアクセスに応じて管理サーバ9から安否確認要求の入力画面を送信してブラウザ上に表示させ、家族ユーザがこの表示された安否確認要求入力画面において安否確認対象者Uの携帯端末の電話番号又はアドレス情報を入力することにより行われる。
【0040】
管理サーバ9は、携帯端末4から送信された安否確認要求を受信すると、安否確認画像作成プログラム135に従い、この要求に含まれる電話番号又はアドレス情報をもとに該当する安否確認対象者Uの位置情報を取得する。この安否確認対象者Uの位置情報は、例えば移動通信事業者の位置管理サーバから取得することができる。
【0041】
続いて管理サーバ9は、上記取得された安否確認対象者Uの位置情報をもとに、当該安否確認対象者Uの現在位置を含むプリセットエリアを選択し、この選択されたプリセットエリアを撮像可能な監視カメラの中から優先順位が第1位に設定された監視カメラを選択する。さらに、当該監視カメラの撮像方向が上記選択されたプリセットエリアに向くように制御し、これにより安否確認対象者Uが存在するプリセットエリアの撮像画像データを取得する。そして、この撮像画像データにその位置を示す格子状の線を表示した安否確認画像データを作成し、この作成された安否確認画像データを上記要求元の家族ユーザの携帯端末4へ送信してそのブラウザ上で表示させる。図5はこの安否確認画像データの表示結果の一例を示すものである。
【0042】
また上記安否確認画像データが表示された状態で、家族ユーザがタッチ操作又はカーソル操作により安否確認対象者Uが存在する切り出しエリアEcを指定し、当該切り出しエリアEcの画像送信要求を管理サーバ9へ送信したとする。そうすると管理サーバ9は、監視カメラから送信されてくる監視画像データから、上記要求により指定された切り出しエリアEcに相当する画像データをプリセットエリア単位で切り出す。そして、この切り出された監視画像データをディジタル処理によりズームアップし、このズームアップされた監視画像データを上記要求元の家族ユーザの携帯端末4へ送信してブラウザ上で表示させる。
【0043】
この結果、家族ユーザは安否確認対象者Uの様子を多数の被災者の中から抜き出してピンポイントで確認することが可能となる。また、切り出された監視画像データはデータ量が通常の画面サイズのデータ量より少ないため、災害時のトラフィックが増大した回線状況の下でも回線に大きな負荷をかけずに伝送することが可能となる。なお、ディジタルズームアップ処理すると画質が低下するため、監視カメラとしてはメガピクセルカメラのような高解像度カメラを使用することが好ましい。
【0044】
(4)ユーザによるカメラの遠隔操作
携帯端末4から監視画像取得要求が送られると、管理サーバ9はカメラ遠隔制御プログラム132を起動し、当該要求と共に送られた携帯端末4の現在位置を表す情報と、カメラ設置情報データベース141に記憶された各監視カメラ1,1,…の設置位置を表す情報をもとに、上記要求元の携帯端末4に最も近い監視カメラを選択する。そして、この選択した監視カメラから送られた監視画像データと、上記要求元の携帯端末4の現在位置とその周辺の監視カメラの設置位置を地図上に表示した地図データを、要求元の携帯端末4へ送信してブラウザ上で表示させる。
【0045】
図6はその表示結果の一例を示すもので、監視画像データ41を携帯端末4の表示領域の上半分に、地図データを下半分に表示した場合を例示している。地図データ42では、ユーザUの位置をアイコン×で示し、また監視カメラの位置をアイコンC1,C2,C3で示すと共に、その撮像方向を矢印で示している。なお、現在選択されている監視カメラの位置は、アイコンC1,C2,C3の色を例えば赤色にすることで表示される。
【0046】
ところで、携帯端末4の前面には、図6に示すように雲台操作ボタン43と、ズーム操作ボタン44と、フォーカス操作ボタン45と、指向方向表示エリア46が設けられている。なお、携帯端末がタッチパネル式の場合には、上記各操作ボタン及び表示エリアはタッチパネル上に表示させるようにしてもよい。
【0047】
上記監視画像データ41及び地図データ42が表示された状態で、ユーザが雲台操作ボタン43、ズーム操作ボタン44及びフォーカス操作ボタン45を操作すると、この操作を表す制御情報が携帯端末4から管理サーバ9へ送信される。管理サーバ9は、上記操作制御情報に応じて選択中の監視カメラに対し制御信号を送信してカメラの撮像方向及び倍率を制御する。
【0048】
なお、携帯端末4がタッチパネル式の場合、ユーザが監視画像データ41上の任意の位置をタッチすると、このタッチした位置座標を含む操作制御信号が監視サーバ9に送られる。監視サーバ9は、上記送られた操作制御信号に含まれる位置座標と現在の撮像方向を表す情報との差分から雲台の制御信号を生成し、監視カメラに送信する。監視カメラは、上記制御信号に従い雲台を駆動して、カメラの撮像方向が上記タッチした位置に対応する方向を向くように制御する。
【0049】
また、地図データ42上の監視カメラの位置を表すアイコンC1,C2,C3をタッチすると、このタッチされたアイコンを表す情報が携帯端末4から管理サーバ9に送られる。管理サーバ9は、上記アイコンを表す情報を受信すると、このアイコンに対応する監視カメラが選択されたものと判断し、この選択された監視カメラに対し制御信号を送信してこの監視カメラの撮像方向をユーザの方向に変化させる。そして、この監視カメラから送信される撮像画像データと、選択中のカメラのアイコンの表示色を更新した地図データを、要求元の携帯端末4へ送信してブラウザ上で表示させる。
したがって、ユーザは自己の携帯端末4において監視画像と地図を見ながら、監視カメラを任意に遠隔操作することができる。
【0050】
(5)危険監視処理
画像処理装置3は、監視カメラ1,1,…ごとにその平常時の画像データを定期的に取得し、この画像データを草木の揺れ等の環境要因、車両や人等の移動物体による変動画像成分を除去したのち、基準画像データとして更新保存している。そして、例えば災害が発生した場合に、監視カメラ1,1,…により撮像された画像データを取得して上記保存されている最新の基本画像データと比較し、その差分を複数のしきい値と比較する。そして、この比較の結果に基づいて危険度を複数段階に判定し、その判定結果を危険通知データとして管理サーバ9へ送信する。上記危険度の判定は、例えばクラスA(危険度大)、クラスB(危険度中)、クラスC(危険度小)、クラスD(危険度無し)の4段階で行われる。なお、「危険度中」以上を人が通行できないレベルとする。
【0051】
図7(b)は災害時の撮像画像の一例を示すものであり、建造物が倒壊して道路を塞いだ状態を示している。この災害時に得られた画像を、保存されている平常時の基準画像と比較してその差分を求めると、この場合の差分値は大きく結果的に「危険度中」以上と判定される。
【0052】
管理サーバ9は、画像処理装置3から危険通知データが送られると、この危険通知データをもとに危険エリアを例えばその危険の度合いに応じて色分けして地図上に表示した危険表示マップを生成し保存する。そして、携帯端末4から危険表示マップの表示要求が送られた場合に、当該表示要求と共に携帯端末4から送られる現在位置情報をもとに、当該要求元の携帯端末4が存在するエリアの危険表示マップを作成して要求元の携帯端末4へ送信し表示させる。
【0053】
図8(a)はこの危険表示マップの一例を示すもので、「危険度中」以上のエリアEG を例えば赤色で表示し、「危険度小」以下のエリアES を例えば青色で表示する。なお、「危険度小」のエリアを黄色で表示し、「危険度が無い」エリアを青色で表示するようにしてもよい。また、危険度をハッチングの有無や網掛けの濃度により表現することも可能である。
したがって、ユーザは自身の携帯端末4において、周辺の危険エリアを一目で確認することが可能となる。
【0054】
(6)ルートマップの作成
上記危険表示マップが表示された状態で、携帯端末4においてユーザが安全に避難するためのルートの表示要求を入力すると、このルートの表示要求が携帯端末4から管理サーバ9へ送信される。管理サーバ89は、上記ルート表示要求を受信するとルートマップ作成プログラム134を起動し、上記危険表示マップ上において「危険度中」以上のエリアEG を迂回して出発地点P1から到達予定地点P2へ到達するためのルートを探索する。そしてこの探索されたルートを地図上に表示したルートマップを生成し、このルートマップを上記要求元の携帯端末4へ送信し表示させる。図8(b)は、上記図(a)に示した危険表示マップに対応するルートマップの一例を示すものであり、ルートRを太い実線で示している。
したがって、ユーザはこのルートマップにより危険度の高いエリアを避けて安全に避難することが可能となる。
【0055】
以上詳述したように第1の実施形態では、監視カメラ1,1,…に位置センサ、方位センサ及び傾斜センサを持たせて、当該監視カメラ1,1,…が設置された時にその設置位置、設置向き及び傾斜角等のカメラの設置状態を表す情報を管理サーバ9により取得し記憶する。そして、管理サーバ9が、上記記憶されたカメラの設置状態を表す情報と、予め記憶しておいた建造物等の位置と大きさを表す情報をもとに、監視カメラ1,1,…ごとに障害物を検出し、この障害物の位置と大きさを考慮して地図上に監視カメラ1,1,…ごとの監視担当エリアを設定する。さらに、この設定された監視担当エリアごとに、当該エリアをカメラの画角を考慮して複数のプリセットエリアに分割し、この分割された各プリセットエリアの位置を表す情報を、そのプリセットポジションを表す情報と、当該プリセットエリアを監視する時のカメラの優先順位を表す情報と共に記憶するようにしている。
【0056】
したがって、監視カメラ1,1,…の設置位置及び撮像方向が当該監視カメラ1,1,…から送られる設置状態を表す情報により取得でき、この情報もとに監視カメラ1,1,…に対する監視担当エリアの割当設定の処理が自動的に行われる。このため、監視カメラ1,1,…の設置位置や設置向き、監視エリアごとのプリセットポジション等を、システムオペレータがシステムの運用開始前に手動で設定する必要がなくなり、これにより運用開始前の作業を簡略化して登録設定に要する時間及び労力を大幅に減らすことができる。
【0057】
(第2の実施形態)
この発明の第2の実施形態は、ユーザの携帯端末から災害又は犯罪の発生通報が送られた場合に、管理サーバ9が当該通報元のユーザが存在するエリアの監視画像データを監視カメラから取得し、この取得した監視画像データを警報通知データと共に警察又は消防のサーバ又は端末へ送信するようにしたものである。
【0058】
図9は、この発明の第2の実施形態に係わる画像監視システムの全体構成を示す図である。同図において、管理サーバ9は通信ネットワーク8を介して警察又は消防の操作端末110との間で通信可能となっている。なお、同図において前記図1と同一部分には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0059】
災害や犯罪の発生時において、ユーザが自身の携帯端末4又は携帯型非常通報装置4′において警報通知操作を行うと、携帯端末4又は携帯型非常通報装置4′から管理サーバ9へ警報通知信号が送られる。この警報通知信号を受信すると管理サーバ9は、当該警報通知信号と共に受信した送信元の携帯端末4又は携帯型非常通報装置4′の位置情報をもとに、当該通報元のユーザの現在位置を含むプリセットエリアを選択し、この選択されたプリセットエリアを撮像可能な監視カメラの中から優先順位が第1位に設定された監視カメラを選択する。さらに、当該監視カメラの撮像方向が上記選択されたプリセットエリアに向くように制御し、これにより通報元のユーザが存在するプリセットエリアの撮像画像データを取得する。そして、この撮像画像データを、警報通知データと共に警察又は消防の操作端末110へ送信する。
【0060】
警察又は消防の操作端末110では、上記送られた警報通知データをもとに警報が発生される共に、同時に送られた災害又は犯罪発生現場の撮像画像データがディスプレイ等に表示される。したがって、警察又は消防の担当者は、上記警報の発生をもとに警報の発生要因を認識することができ、さらに上記表示された撮像画像データをもとに現場の状況をリアルタイムに確認することが可能となる。
【0061】
また、上記災害又は犯罪の発生現場の撮像画像データは管理サーバ9から画像記録装置10へ転送されて記録される。したがって、後日、警察又は消防の端末110から画像の取得要求が送られた場合には、管理サーバ9が上記撮像画像データを画像記録装置10から読み出して、警察又は消防の操作端末110へ送信することが可能である。
したがって、この実施形態によれば、例えば万引き犯や不審者などの犯人映像を警察へ提供することが可能となり、また電車内の車内監視カメラの録画映像をもとに、後に“この人が痴漢です”と映像付きで通報することも可能となる。
【0062】
(その他の実施形態)
なお、この発明は上記各実施形態に限定されるものではない。例えば、上記第1の実施形態では画像データの比較による危険度の判定処理を画像処理装置3で行う場合を例にとって説明したが、当該処理を管理サーバ9で行うようにしてもよい。
【0063】
また、第2の実施形態では、災害又は犯罪の発生現場の撮像画像データを警察又は消防の操作端末110へ送信するようにしたが、警報の発信者が所持する携帯端末にも送信して表示させるようにしてもよい。このようにすると、災害又は犯罪の発生現場の状況が適切に撮像されているかどうかを、警報の発信者自身が自己の携帯端末において確認することが可能となる。また、警報発信者が自身の携帯端末において監視カメラの撮像方向等を遠隔操作することにより、災害又は犯罪の発生現場を適切に撮像することが可能となる。
【0064】
その他、監視カメラの設置数や設置場所、カメラの構成、管理サーバ9の設置場所、機能やその処理内容等についても、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施可能である。
要するにこの発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1…監視カメラ、2,7…ルータ、3…画像処理装置、4…携帯端末、5…無線アクセスポイント、6…監視端末、8…通信ネットワーク、9…システム管理サーバ、10…画像記録装置、110…緊急対応機関の端末、11…中央処理ユニット(CPU)、12…バス、13…プログラムメモリ、14…データメモリ、15…通信インタフェース、16…入出力インタフェース、17…入力部、18…表示部18、41…監視画像データ、42…地図データ、43…雲台操作ボタン、44…ズーム操作ボタン、45…フォーカス操作ボタン、46…指向表示エリア、131…監視エリア割当制御プログラム、132…カメラ遠隔制御プログラム、133…危険監視制御プログラム、134…ルートマップ作成プログラム、135…安否確認画像作成プログラム、141…カメラ設置情報データベース、142…ユーザ情報データベース、143…基準画像データベース、144…地図情報データベース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象エリアに設置され、撮像方向を検出する手段及び前記設置位置を計測する手段を備えた複数の監視カメラと、これら複数の監視カメラとの間で通信ネットワークを介してそれぞれ通信が可能な管理サーバとを具備し、
前記管理サーバは、
前記複数の監視カメラから前記検出された撮像方向を表す情報及び前記計測された設置位置を表す位置情報を前記通信ネットワークを介してそれぞれ受信する手段と、
前記監視対象エリアにおいて死角を形成する構造物の設置条件を表す情報を記憶する手段と、
前記受信された撮像方向を表す情報及び位置情報と、前記記憶された構造物の設置条件を表す情報とに基づいて、前記複数の監視カメラに対しそれぞれ監視担当エリアを割当設定する手段と
を備えることを特徴とする画像監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−15795(P2012−15795A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150328(P2010−150328)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】