説明

画像表示装置、画像表示観察システム及び画像表示方法

【課題】液晶表示ディスプレイなど応答速度が比較的遅いディスプレイを用いた場合にクロストークの発生を確実に抑えること。
【解決手段】画像信号の入力を受け、右目用画像R及び左目用画像Lのそれぞれを少なくとも2回連続して表示させるための信号へ変換する左右映像信号制御部120と、左右映像信号制御部120において変換された信号が入力され、2回以上連続する右目用画像Rと2回以上連続する左目用画像Lとを交互に表示する液晶表示パネル132と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置、画像表示観察システム及び画像表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記の特許文献に記載されているように、視差を有する左目用画像及び右目用画像を所定周期で交互にディスプレイに供給し、この画像を所定周期に同期して駆動される液晶シャッターを備える眼鏡で観察する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−138384号公報
【特許文献2】特開2000−36969号公報
【特許文献3】特開2003−45343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来例のように、立体映像ディスプレイをシャッター眼鏡方式で観察する場合、画像表示装置の応答速度不足や液晶シャッターのコントラスト不足など、表示装置やシャッター眼鏡の特性上の要因による問題が生じる。これらの要因により、右目用の画像の一部が左目に、左目用の画像の一部が右目に漏れ込む現象(以下、クロストークと言う)が発生する。
【0005】
特に、上述した立体画像表示観察システムにおいて、ディスプレイを液晶表示ディスプレイ等から構成すると、その応答速度が問題となる。すなわち、液晶表示ディスプレイでは、画面の一方の端(画面上辺など)から他方の方の端(画面下辺など)に向けて線順次に映像信号が供給されるが、一方の端から他方の端に書き込まれるタイミングには応答遅れが生じる。
【0006】
液晶の応答速度の不足により、右目用画像の書き込みにおいては、画面上辺が所望の輝度に達した時点において、画面下辺では、ようやく右目用画像の書き込みが開始される状態となる。左目用画像の書き込みにおいても、画面上辺が所望の輝度に達した時点において、画面下辺では、ようやく左目用画像の書き込みが開始される状態となる。
【0007】
このため、画面上辺と画面下辺の双方で右目用画像または左目用画像の一方のみが表示されているタイミングで液晶シャッターを開くことが困難となり、右目用画像と左目用画像とが混ざってユーザに視認されるクロストークの問題が発生する。また、液晶の応答速度の不足により、液晶が完全に応答していない状態で液晶シャッターが開かれると、ユーザが所望の輝度の映像を視認できなくなるという問題も生じる。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、液晶表示ディスプレイなど応答速度が比較的遅いディスプレイを用いた場合に、クロストークの発生を確実に抑えることが可能な、新規かつ改良された画像表示装置、画像表示観察システム及び画像表示方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、画像信号の入力を受け、右目用画像及び左目用画像のそれぞれを少なくとも2回連続して表示させるための信号へ変換する信号制御部と、前記信号制御部において変換された信号が入力され、2回以上連続する前記右目用画像と2回以上連続する前記左目用画像とを交互に表示する表示パネルと、を備える画像表示装置が提供される。
【0010】
また、右目用と左目用のシャッターを備える鑑賞用眼鏡に対して前記右目用画像と前記左目用画像の切換タイミングを通知するため、前記右目用画像と前記左目用画像の切換タイミングを示すタイミング信号を発生させるシャッター制御部を備え、前記タイミング信号に基づいて前記シャッターが閉じる期間は、少なくとも左右一回分の書き込み時間であってもよい。
【0011】
また、前記タイミング信号は、右目用の前記シャッターと左目用の前記シャッターが共に閉じられる期間を生じさせるものであってもよい。
【0012】
また、前記タイミング信号に基づいて前記シャッターが閉じる期間は、前記右目用画像又は前記左目用画像の1回目の表示期間の少なくとも一部期間を含むものであってもよい。
【0013】
また、前記タイミング信号に基づいて前記シャッターが開く期間は、2回以上連続して表示される前記右目用画像又は前記左目用画像のそれぞれにおいて、最終回の表示期間の少なくとも一部であってもよい。
【0014】
また、2回以上連続する前記右目用画像又は前記左目用画像において、連続する各画像の輝度を補正する輝度補正部を更に備えるものであってもよい。
【0015】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、画像信号の入力を受け、右目用画像及び左目用画像のそれぞれを少なくとも2回連続して表示させるための信号へ変換する信号制御部と、前記信号制御部において変換された信号が入力され、2回以上連続する前記右目用画像と2回以上連続する前記左目用画像とを交互に表示する表示パネルと、前記右目用画像と前記左目用画像の切換タイミングを示すタイミング信号を発生させるシャッター制御部と、を有する、画像表示装置と、右目用と左目用のシャッターを有し、前記タイミング信号に基づいて、前記右目用と左目用の前記シャッターを交互に開く立体映像観察眼鏡と、を備える画像表示観察システムが提供される。
【0016】
また、前記立体映像観察眼鏡において、前記シャッターの閉状態に対する開状態の光透過率のコントラスト比が1000以上であってもよい。
【0017】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、画像信号の入力を受け、右目用画像及び左目用画像のそれぞれを少なくとも2回連続して表示させるための信号へ変換するステップと、前記信号制御部において変換された信号が入力され、2回以上連続する前記右目用画像と2回以上連続する前記左目用画像とを交互に表示するステップと、を備える画像表示方法が提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、液晶表示ディスプレイなど応答速度が比較的遅いディスプレイを用いた場合にクロストークの発生を確実に抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像表示観察システムの構成を示す模式図である。
【図2】画像表示装置の構成を示すブロック図である。
【図3】左右の映像表示と液晶シャッターの開閉のタイミングを示すタイミングチャートである。
【図4】本実施形態による2度書き込みの原理と、液晶シャッターの開閉を示すタイミングチャートである。
【図5】液晶シャッターの開状態と閉状態のコントラストと、クロストーク量との関係を示す特性図である。
【図6】右目用画像Rと左目用画像Lのそれぞれについて3度の書き込みを連続して行った例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0021】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
(1)システム構成例
(2)画像表示装置の構成例
(3)液晶表示ディスプレイを用いた場合のクロストークの発生について
(4)本実施形態による2度書き込みの例
(5)液晶シャッターのコントラストについて
(6)本実施形態による3度書き込みの例
【0022】
[(1)システム構成例]
図1は、本発明の一実施形態に係る画像表示観察システムの構成を示す模式図である。図1に示すように、本実施形態に係るシステムは、液晶表示ディスプレイ(LCD)から構成される画像表示装置100と、表示画像鑑賞用メガネ200とを備える。
【0023】
画像表示装置100は、例えば、フィールド毎に右目用画像Rと左目用画像Lを交互に表示する。表示画像鑑賞用メガネ200には、レンズに相当する部分に一対の液晶シャッター200a,200bが設けられている。液晶シャッター200a,200bは、画像表示装置100のフィールド毎の画像切り換えに同期して交互に開閉動作を行う。すなわち、画像表示装置100に右目用画像Rが表示されるフィールドでは、左目用の液晶シャッター200bが閉鎖状態となり、右目用の液晶シャッターが開放状態200aとなる。また、左目用画像Lが表示されるフィールドでは、これと逆の動作を行う。
【0024】
このような動作により、表示画像鑑賞用メガネ200を掛けて画像表示装置100を見るユーザの右目には右目用画像Rのみが、また、左目には左目用画像Lのみが入射される。このため、鑑賞者の目の内部で右目用と左目用の画像が合成され、画像表示装置100に表示される画像が立体的に認識される。
【0025】
[(2)画像表示装置の構成例]
次に、画像表示装置100の構成について説明する。図2は、画像表示装置100の構成を示すブロック図である。図2に示すように、画像表示装置100は、左右映像信号制御部120、シャッター制御部122、エミッタ(発光素子)124、タイミング制御部126、ゲートドライバ128、データドライバ130、液晶表示パネル132、バックライト134を備える。
【0026】
液晶表示パネル132は、液晶層、液晶層を挟んで対向する透明電極、カラーフィルタ等から構成されている。液晶表示パネル132では、ガラス等の透明板の間に所定の確度に捩れて配向された液晶が封入されて、液晶層が構成されている。なお、液晶は、TNモードに限られるものではなく、VAモード、IPSモードであっても良い。
【0027】
左右映像信号制御部120には、右目用画像R及び左目用画像Lに対応する左右映像信号が入力される。左右映像信号制御部120は、液晶表示パネル134に右目用画像Rと左目用画像Lを交互に表示させるため、左右映像信号を交互に出力する。また、左右映像信号制御部120は、入力された左右映像信号に基づいて、後述する2度書き込みを行うため、右目用映像信号と左目用映像信号のそれぞれについて、同じ1フレームの信号が2つ連続するように変換を行う。
【0028】
タイミング制御部126には、左右映像信号制御部120で変換された右目用映像信号及び左目用映像信号が入力される。タイミング制御部126は、入力された右目用映像信号及び左目用映像信号を液晶表示パネル132へ入力するための信号に変換し、ゲートドライバ128およびデータドライバ130の動作に用いられるパルス信号を生成する。
【0029】
タイミング制御部126で変換された信号は、ゲートドライバ128とデータドライバ130のそれぞれに入力される。ゲートドライバ128およびデータドライバ130は、タイミング制御部126で生成されたパルス信号を受け、入力された信号に基づいて液晶表示パネル132の各画素を発光させる。これにより、液晶表示パネル132に映像が表示される。
【0030】
また、左右映像信号制御部120は、同じ1フレームの信号が2つ連続するように変換された右目用映像信号及び左目用映像信号について、映像の切り換わりのタイミングを示すタイミング信号をシャッター制御部122へ送る。シャッター制御部122は、左右映像信号制御部120から送られたタイミング信号に基づいて、エミッタ126を発光させる駆動信号をエミッタ126へ送る。発光ダイオード等の発光素子から構成されるエミッタ126は、シャッター制御部122から送られた駆動信号に応じて発光し、左右の映像信号の切り換わりのタイミングを示す光信号を表示画像鑑賞用メガネ200に対して送信する。
【0031】
表示画像鑑賞用メガネ200は、詳細は省略するが、エミッタ126から送られた光信号を受信するセンサを備えている。光信号を受信した表示画像鑑賞用メガネ200は、画像表示装置100の右目用映像信号と左目用映像信号の切り換わりのタイミングに同期して、液晶シャッター200a,200bの開閉動作を交互に行う。
【0032】
[(3)液晶表示ディスプレイを用いた場合のクロストークの発生について]
図3は、左右の映像表示と液晶シャッター200a,200bの開閉のタイミングを示すタイミングチャートである。上述したように、画像表示装置100においては、右目用画像Rと左目用画像Lとを交互に表示させるが、右目用画像R又は左目用画像Lの1フレームが表示される駆動周波数を60[Hz]以下とするとフリッカ(画面のちらつき)が発生する。このため、図3では、右目用画像R又は左目用画像Lの1フレームを120[Hz]で表示した場合を示している。すなわち、図3において、右目用画像Rと左目用画像Lのそれぞれは、120[Hz]の駆動周波数で表示され、右目用画像R又は左目用画像Lが表示される時間は、1/120[Hz]=8.3[ms]である。
【0033】
液晶表示パネル132では、通常、画面の一端から他端へ線順次で表示が行われる。図3(A)では、液晶表示パネルの上辺(Y=Y0)から下辺(Y=0)に向けて線順次で表示が行われ、上辺から下辺に至る縦方向の各位置において、時間とともに輝度が変化している様子を示している。
【0034】
図3(A)に示すように、画面上辺(Y=Y0)では、時刻t0からt1まで右目用画像Rが表示され、所定のブランク期間の後、時刻t2からt3まで左目用画像Lが表示される。以降、所定のブランク期間を挟んで、時刻t4からt5は右目用画像R、時刻t6からt7までは左目用画像Lが表示される。
【0035】
ここで、右目用画像Rが表示される時刻t0〜t1において、画面上辺(Y=Y0)に着目すると、時刻t0で右目用画像Rの表示を開始すると、時間の経過とともに画面上辺の輝度が上昇し、時刻t1で所望の輝度に到達する。そして、画面上辺における右目用画像Rの表示は終了する。なお、本明細書において、液晶表示パネル132への表示を、液晶表示パネル132への表示データの書き込みと称する場合がある。上述したように、液晶表示パネル132では画面上辺から下辺に向けて線順次に表示が成されるため、下辺に向かうほど、右目用画像Rの表示が開始される時刻はt0よりも遅くなり、また、右目用画像Rの表示が終了する時刻もt1よりも遅くなる。
【0036】
同様に、左目用画像Lが表示される時刻t2〜t3において、画面上辺(Y=Y0)に着目すると、時刻t2で左目用画像Lの表示を開始すると、時間の経過とともに画面上辺の輝度が上昇し、時刻t3で所望の輝度に到達する。そして、画面上辺における左目用画像Lの表示は終了する。左目用画像Lにおいても、下辺に向かうほど、左目用画像Lの表示が開始される時刻はt2よりも遅くなり、また、左目用画像Lの表示が終了する時刻もt3よりも遅くなる。
【0037】
図3(A)に示すように、線順次に表示が成される際に、液晶の応答速度は比較的遅いため、右目用画像Rの書き込みにおいては、時刻t1で画面上辺が所望の輝度に達した時点において、画面下辺では、ようやく書き込みが開始される状態となる。また、左目用画像Lの書き込みにおいても、時刻t3で画面上辺が所望の輝度に達した時点において、画面下辺では、ようやく書き込みが開始される状態となる。
【0038】
図3(B)は、液晶シャッター200a,200bの開閉タイミングを示している。図3(B)に示すように、右目用の液晶シャッターR(液晶シャッター200a)は、時刻t1−t10間、及びt5−t12間で開かれる。また、左目用の液晶シャッターL(液晶シャッター200b)は、時刻t3−t11間、及びt7−t13間で開かれる。
【0039】
時刻t1−t10間で液晶シャッター200aが開かれると、図3(A)に示す画面下辺(Y=0)からY=y1までの領域では、液晶シャッター200aが開かれたタイミングで右目用画像Rが表示されているため、ユーザの右目には右目用画像Rが視認される。しかしながら、Y>y2の領域では、シャッター200aを開いている間に右目用画像Rの表示が終了して、次の左目用画像Lが表示される。また、画面上辺(Y=Y0)では、時刻t1−t10間において、次のフレームの左目用画像Lが表示されている。従って、ユーザは、Y>y2の画面下辺〜上辺の中間近傍では、右目用画像Rから左目用画像Lへ遷移する過渡状態の映像を視認し、画面上辺(Y=Y0)近傍では次のフレームの左目用画像Lを視認することとなる。このため、右目用画像Rと左目用画像Lとが混ざってユーザに視認されるクロストークの問題が発生する。
【0040】
また、画面下辺(Y=0)の近傍では、液晶シャッター200aが開かれる時刻t1−t10間で右目用画像Rは表示されてはいるものの、時刻t1で表示が開始された直後に液晶シャッター200aが開かれるため、液晶が十分に応答していない状態となる。このため、ユーザが画面下辺(Y=0)の近傍で視認する映像は、輝度が十分に高い状態となっておらず、ユーザは所望の輝度の映像を視認することができない。
【0041】
[(4)本実施形態による2度書き込みの例]
上述した液晶の応答速度の不足に起因するクロストークの発生、及び輝度不足等を解消するため、本実施形態では、液晶パネルの駆動周波数を高め、左右の画像の1フレームを液晶表示パネル132に2度表示させる(書き込む)という手法を採用している。
【0042】
図4は、本実施形態による2度書き込みの原理と、液晶シャッター200a,200bの開閉を示すタイミングチャートであって、右目用画像Rと左目用画像Lのそれぞれを240[Hz]の駆動周波数で表示した場合を示している。図4において、1回の書き込みにより右目用画像R又は左目用画像Lが表示される時間は、1/240[Hz]=4.2[ms]である。
【0043】
図4(A)は、図3(A)と同様に、液晶表示パネル132の下辺(Y=0)から上辺(Y=Y0)に至る縦方向の各位置において、時間とともに輝度が変化している様子を示している。また、図4(B)は、液晶表示パネル132のバックライト134が発光している様子を示している。図4(B)に示すように、本実施形態では、バックライト134は常時点灯している。
【0044】
図4(C)は、図3(B)と同様に、液晶シャッター200a,200bの開閉タイミングを示している。また、図4(D)は、液晶シャッター200a,200bの開閉により、鑑賞用メガネ200を掛けたユーザの右目に右目用画像Rが入射し、左目に左目用画像Lが入射している状態を示している。
【0045】
図4(A)に示すように、画面上辺(Y=Y0)では、時刻t20からt21までの4.2[ms]間に左目用画像Lが書き込まれ、続けて時刻t21からのt22までの4.2[ms]間に再び左目用画像Lが書き込まれる。ここで、時刻t20からt21の間に書き込まれる左目用画像Lと時刻t21からのt22の間に書き込まれる左目用画像Lは、基本的には同一の画像であるが、オーバードライブ処理などの調整に起因して相違するものであってもよい。オーバードライブ等の処理としては、例えば、2回目の書き込みにおいて実際の信号レベルと1回目の映像信号レベル(ドライブ量)との比較を行い、1回目の書き込みでは到達しなかった輝度値の補正を行う処理や、揺り戻し現象の補正等の処理が挙げられる。また、1回目の書き込みにおいてもオーバードライブをすることができる。これらの処理はタイミング制御部126で行うことができ、タイミング制御部126は、オーバードライブ等の処理による輝度補正部としても機能する。また、1回目に書き込まれる左目用画像Lと2回目に書き込まれる左目用画像Lとの間に所定のブランク期間を設けても良い。
【0046】
そして、左目用画像Lを2回書き込んだ後に右目用画像Rが書き込まれる。右目用画像Rについても、画面上辺(Y=Y0)では、時刻t22からt23までの4.2[ms]間に右目用画像Rが書き込まれ、続けて時刻t23からのt24までの4.2[ms]間に再び右目用画像Rが書き込まれる。時刻t22からt23の間に書き込まれる右目用画像Rと時刻t23からのt24の間に書き込まれる右目用画像Rは、基本的には同一の画像であるが、オーバードライブ処理などの調整に起因して相違するものであってもよい。また、1回目に書き込まれる右目用画像Rと2回目に書き込まれる右目用画像Rとの間、または左目用画像Lと右目用画像Rの間に所定のブランク期間を設けても良い。
【0047】
一般に液晶表示装置は、その応答時間が比較的遅いため、書き込み時間が短時間であると、各画素が所望の輝度に達しない。このため、駆動周波数を高くして右目用画像Rと左目用画像Lを交互に書き込むと、1回の書き込み時間(=4.2ms)が短くなり、1回目の書き込み後にしか所望の輝度に到達しないため、画面上辺と下辺の両方が所望の輝度に達しているタイミングが存在しない。
【0048】
本実施形態では、右目用画像Rと左目用画像Lをそれぞれ2度に渡って書き込みしているため、2回目の書き込み時には、1回目に既に同じ画像を書き込んでいることから、所望の輝度を保持することができ、従って、画面の上辺と下辺の両方で所望の輝度に達した状態を実現できる。
【0049】
そして、図4(A)において、時刻t22の時点では、画面上辺から画面下辺に至る全域において、左目用画像Lの輝度は所望のレベルに到達している。このため、図4(C)及び図4(D)に示すように、時刻t22を中心とする所定の期間(例えば2.1ms)だけ液晶シャッター200bを開口させることで、ユーザの左目には左目用画像Lのみが視認され、クロストークの発生を確実に抑えることができる。なお、クロストークと輝度はトレードオフの関係にあるので、どちらを優先するかによってシャッターオープン期間は適宜設定できる。
【0050】
同様に、右目用画像Rにおいても、図4(A)に示す時刻t24の時点では、画面上辺から画面下辺に至る全域において、右目用画像Rの輝度は所望のレベルに到達している。このため、図4(C)及び図4(D)に示すように、時刻t24を中心とする所定の期間(例えば2.1ms)だけ液晶シャッター200aを開口させることで、ユーザの右目には右目用画像Rのみが視認され、クロストークの発生を確実に抑えることができる。
【0051】
上述のように、液晶の駆動周波数を高めると、1回目の書き込み時には、書き込み終了時に画面下部では所望の輝度に到達しないため、液晶表示パネル132の過渡応答中である1回目の書き込み時の少なくとも一部区間では、液晶シャッター200a,200bは閉じられる。より詳細には、右目用画像R又は左目用画像Lが表示されている約8.4msのうち、少なくとも50%に相当する4.2msの区間では、液晶シャッター200a,200bは閉じられる。これにより、1回目の書き込みによる過渡応答中の映像がユーザに視認されることを回避できる。また、クロストークを抑えるため、液晶シャッター200a,200bの双方が閉じている区間が設けられる。
【0052】
本実施形態では、図4(C)に示すように、右目用の液晶シャッターR(液晶シャッター200a)は、時刻t24を中心とする所定時間(2.1ms)の間だけ開かれる。また、左目用の液晶シャッターL(液晶シャッター200b)は、時刻t22,t26を中心とする所定時間(例えば2.1ms)の間だけ開かれる。
【0053】
時刻t24の時点では、画面下辺においては、右目用画像Rの2回目の書き込みが開始されており、画面上辺においては、右目用画像Rの2回目の書き込みが終了する。従って、時刻t24の時点で液晶シャッター200aを開くことによって、1回目の書き込みによる右目用画像Rがユーザの右目に視認されることがなく、画面下辺から上辺に至る全域において、2回目の書き込みによる右目用画像Rがユーザの右目に視認される。
【0054】
同様に、時刻t22,t26の時点では、画面下辺においては、左目用画像Lの2回目の書き込みが開始されており、画面上辺においては、左目用画像Lの2回目の書き込みが終了する。従って、時刻t22または時刻t26の時点で液晶シャッター200bを開くことによって、1回目の書き込みによる左目用画像Lがユーザの左目に視認されることがない。これにより、画面下辺から上辺に至る全域において、2回目の書き込みによる左目用画像Lがユーザの左目に視認される。
【0055】
このように、1度目の書き込みで所望の輝度に到達し、2度目の書き込みでその輝度を保持することで、画面全体において所望の輝度に到達した映像をユーザに視認させることが可能となる。従って、図4(C)に示す時刻t22,t24,t26の時点において、必要最小限の所定時間(例えば2.1ms)のみ液晶シャッター200a,200bを開くことで、クロストークの発生を確実に抑えることが可能となる。特に、画面上辺において、右目用画像Rから左目用画像Lへ切り換わるタイミング、または左目用画像Lから右目用画像Rに切り換わるタイミングよりも以前に液晶シャッター200a,200bの開期間を設けることで、クロストークの発生を確実に抑止できる。
【0056】
以上説明したように本実施形態に係る2度書き込みの例によれば、右目用画像Rと左目用画像Lが混ざるクロストークの発生を確実に抑えることが可能となる。
【0057】
[(5)液晶シャッターのコントラストについて]
クロストークの発生は、液晶シャッター200a,200bの光透過率と関連しており、液晶シャッター200a,200bの開状態と閉状態のコントラストが低いと、閉状態において遮光している映像が透過してしまい、クロストークが発生する。図5は、液晶シャッター200a,200bのコントラストと、クロストーク量との関係を示す特性図である。図5において、横軸は、液晶シャッター200a,200bの閉状態の光透過率に対する開状態の光透過率であるコントラストを示しており、縦軸は、クロストーク量を所望の輝度値からのズレ量をグレーレベル[Gray Level]に換算して表したものである。図5に示すように、クロストーク量を低減するためにはコントラストを高くする必要があり、コントラストが1000未満になるとクロストーク量は顕著に増加する。そして、有効な立体映像性能(3D性能)を確保するためには、視感評価などの評価によると、クロストーク量は25[Gray Level]以下とするのが望ましい。従って、液晶シャッター200a,200bのコントラストは、1000以上の値を確保することが好適である。
【0058】
[(6)本実施形態による3度書き込みの例]
図6は、2度書き込みと同様の手法により、右目用画像Rと左目用画像Lのそれぞれについて3度の書き込みを連続して行った例を示す模式図である。ここで、図6(A)は、液晶表示パネル132の下辺(Y=0)から上辺(Y=Y0)に至る縦方向の各位置において、時間とともに輝度が変化している様子を示している。また、図6(B)は、液晶シャッター200a,200bの開閉タイミングを示している。図6(B)に示すように、右目用の液晶シャッターR(液晶シャッター200a)は、時刻t35からt36までの2.8msの間だけ開かれる。また、左目用の液晶シャッターL(液晶シャッター200b)は、時刻t32からt33までの2.8msの間、及び時刻t38からt39までの2.8msの間だけ開かれる。
【0059】
図6(A)に示すように、本実施形態において、右目用画像Rと左目用画像Lのそれぞれは、360[Hz]の駆動周波数で表示され、1回の書き込みにより右目用画像R又は左目用画像Lが表示される時間は、1/360=2.8[ms]である。
【0060】
図6(A)に示すように、画面上辺(Y=Y0)では、時刻t30からt31までの2.8[ms]間に左目用画像Lが書き込まれ、続けて時刻t31からt32までの2.8[ms]間に左目用画像Lが書き込まれる。更に、続けて時刻t32からt33までの2.8[ms]間に左目用画像Lが書き込まれる。3回連続して書き込まれる各左目用画像Lは、基本的には同一の画像であるが、オーバードライブ処理などの調整に起因して相違するものであってもよい。また、連続して書き込まれる左目用画像Lの間に所定のブランク期間を設けても良い。
【0061】
そして、左目用画像Lを3回書き込んだ後に右目用画像Rが書き込まれる。右目用画像Rについても、画面上辺(Y=Y0)では、時刻t33からt34までの2.8[ms]間に右目用画像Rが書き込まれ、続けて時刻t34からt35までの2.8[ms]間に右目用画像Rが書き込まれる。更に、続けて時刻t35からt36までの2.8[ms]間に右目用画像Rが書き込まれる。連続して書き込まれる各右目用画像Rは、基本的には同一の画像であるが、オーバードライブ処理などの調整に起因して相違するものであってもよい。3度書き込みの場合においても、液晶の応答特性を考慮して、オーバードライブによる補正を行うことが望ましい。また、連続して書き込まれる右目用画像Rの間、または左目用画像Lと右目用画像Rの間に所定のブランク期間を設けても良い。
【0062】
図6(A)に示すように、左目用画像Lをt30〜t33間で3度書き込みしているため、1回目で書き込んだものと同じ画像を2回目、3回目と書き込むため、1度目で書いた画像(輝度)を長い期間保持することが可能となる。
【0063】
従って、図6(A)において、時刻t32〜時刻t33の期間では、画面上辺から画面下辺に至る全域において、液晶パネルの輝度は所望のレベルに到達している。このため、図6(B)に示すように、時刻t32から時刻t33までの所定の期間(例えば2.8ms)だけ液晶シャッター200bを開口させることで、ユーザの左目には左目用画像Lのみが視認され、クロストークの発生を確実に抑えることができる。
【0064】
同様に、右目用画像Rにおいても、1回目で書き込んだものと同じ画像を2回目、3回目と書き込むため、1度目で書いた画像(輝度)を長い期間保持することが可能となる。
【0065】
従って、図6(A)において、時刻t35〜時刻t36の期間では、画面上辺から画面下辺に至る全域において、液晶パネルの輝度は所望のレベルに到達している。このため、図6(B)に示すように、時刻t35から時刻t36までの所定の期間(例えば2.8ms)だけ液晶シャッター200aを開口させることで、ユーザの右目には右目用画像Rのみが視認され、クロストークの発生を確実に抑えることができる。
【0066】
以上のように、書き込み回数を多くすると、より長時間所望の輝度を保持でき、クロストークの発生をより低減できることから、液晶シャッター200a,200bのオープン期間をより長くすることができる。従って、3回書き込みの例によれば、2回書き込み以降で液晶シャッター200a,200bを開くことで、クロストークの更なる低減が可能であり、高輝度の3D映像の表示が可能となる。また、右目用画像Rと左目用画像Lのそれぞれについて、書き込み回数が比較的少ない場合は、クロストークを抑えるため、液晶シャッター200a,200bを開く期間が短くなる傾向にある。このため、液晶シャッター200a,200bは短時間で応答することが望ましく、5[ms]以下の応答速度であることが望ましい。
【0067】
以上説明したように本実施形態に係る3度書き込みの例によれば、右目用画像Rと左目用画像Lが混ざるクロストークの発生を確実に抑えることが可能となる。また、3度書き込みにより、より長時間所望の輝度を保持できるため、高輝度の3D映像をユーザに提供することが可能となる。
【0068】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0069】
100 画像表示装置
120 左右映像制御部
122 シャッター制御部
126 タイミング制御部
132 液晶表示パネル
200 鑑賞用メガネ
200a,200b 液晶シャッター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像信号の入力を受け、右目用画像及び左目用画像のそれぞれを少なくとも2回連続して表示させるための信号へ変換する信号制御部と、
前記信号制御部において変換された信号が入力され、2回以上連続する前記右目用画像と2回以上連続する前記左目用画像とを交互に表示する表示パネルと、
を備える、画像表示装置。
【請求項2】
右目用と左目用のシャッターを備える鑑賞用眼鏡に対して前記右目用画像と前記左目用画像の切換タイミングを通知するため、前記右目用画像と前記左目用画像の切換タイミングを示すタイミング信号を発生させるシャッター制御部を備え、
前記タイミング信号に基づいて前記シャッターが閉じる期間は、少なくとも左右一回分の書き込み時間である、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記タイミング信号は、右目用の前記シャッターと左目用の前記シャッターが共に閉じられる期間を生じさせる、請求項2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記タイミング信号に基づいて前記シャッターが閉じる期間は、前記右目用画像又は前記左目用画像の1回目の表示期間の少なくとも一部期間を含む、請求項2に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記タイミング信号に基づいて前記シャッターが開く期間は、2回以上連続して表示される前記右目用画像又は前記左目用画像のそれぞれにおいて、最終回の表示期間の少なくとも一部である、請求項2に記載の画像表示装置。
【請求項6】
2回以上連続する前記右目用画像又は前記左目用画像において、連続する各画像の輝度を補正する輝度補正部を更に備える、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項7】
画像信号の入力を受け、右目用画像及び左目用画像のそれぞれを少なくとも2回連続して表示させるための信号へ変換する信号制御部と、前記信号制御部において変換された信号が入力され、2回以上連続する前記右目用画像と2回以上連続する前記左目用画像とを交互に表示する表示パネルと、前記右目用画像と前記左目用画像の切換タイミングを示すタイミング信号を発生させるシャッター制御部と、を有する、画像表示装置と、
右目用と左目用のシャッターを有し、前記タイミング信号に基づいて、前記右目用と左目用の前記シャッターを交互に開く立体映像観察眼鏡と、
を備える、画像表示観察システム。
【請求項8】
前記立体映像観察眼鏡において、前記シャッターの閉状態に対する開状態の光透過率のコントラスト比が1000以上である、請求項7に記載の画像表示観察システム。
【請求項9】
画像信号の入力を受け、右目用画像及び左目用画像のそれぞれを少なくとも2回連続して表示させるための信号へ変換するステップと、
前記信号制御部において変換された信号が入力され、2回以上連続する前記右目用画像と2回以上連続する前記左目用画像とを交互に表示するステップと、
を備える、画像表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−210712(P2010−210712A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−54215(P2009−54215)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】