画像表示装置
【課題】観察者の視軸と光学系の光軸との不一致による回折光学素子からの不要回折次数光(フレア光)の発生を低減する。
【解決手段】画像表示装置は、原画を形成する画像形成素子1と、該画像形成素子からの光束を複数の反射面6,7で反射して射出する第1の光学素子10と、該第1の光学素子から射出した光束を射出瞳2に導く光学系15とを有する。該光学系は回折光学素子3を含み、該光学系のうち回折光学素子よりも射出瞳側の部分21aが負の光学パワーを有する。
【解決手段】画像表示装置は、原画を形成する画像形成素子1と、該画像形成素子からの光束を複数の反射面6,7で反射して射出する第1の光学素子10と、該第1の光学素子から射出した光束を射出瞳2に導く光学系15とを有する。該光学系は回折光学素子3を含み、該光学系のうち回折光学素子よりも射出瞳側の部分21aが負の光学パワーを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)等の画像表示装置に関し、特に回折光学素子を含む光学系を有する画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
HMDのような画像表示装置では、広画角での画像提示が可能で、かつ観察者が頭部に装着しても違和感や疲労感をあまり与えない小型で軽量な構成が求められる。ただし、一般に画角が大きくなると、光学系のサイズが指数関数的に大きくなり、収差補正も困難になる。
【0003】
HMDの光学系としては、内部全反射と自由曲面を用いた単一のプリズム光学系が提案されている(特許文献1参照)。この光学系では、単一のプリズムを用いて、画像形成素子(液晶パネル等)からの光束を、入射面(第1面)での透過屈折、第2面での内部全反射、第3面での裏面反射及び第4面(第2面)での透過屈折を介して、観察者の眼球が置かれる射出瞳に導く。この光学系では、単一の材料により形成された単一のプリズムを用いているために、その透過面を通る際にプリズムの材料の分散に起因して発生する倍率色収差を補正することができない。
【0004】
これに対し、いわゆる色消しを行うために、プリズムとレンズとの間にホログラフィック素子を配置したり(特許文献2参照)、回折光学素子(DOE)を配置したり(特許文献3参照)するHMDが開示されている。
【0005】
特許文献2にて開示されたHMDでは、色消し効果が得られるような分散を有する材質としてガラスを用いざるを得ず、この結果、HMDの重量が増加する。また、特許文献3にて開示されたHMDでは、DOEを用いることで特定の波長域の光に対しては効果的な色消しを行うことが可能であるが、カラー画像のように広い波長域の光に対して画角全域で不要回折次数光の発生を抑えることが困難である。
【0006】
DOEは、その特性からマイナスの分散を持つ。このため、一般的な光学材料で発生した倍率色収差を効果的に補正することはできるが、特定の波長域及び特定の入射角以外の条件では回折効率が100%又はこれに近い値にならず、不要回折次数光が発生する。この場合、コントラストの高い画像を表示すると、その画像内に画質を劣化させるフレア光が視認されてしまったり、高周波の画像のコントラストが低下したりする。
【0007】
これに対し、異なる材料によって異なる設計回折次数を有するように製作された複数のDOEを互いに近接して設置し、広い波長域で高い回折効率を実現する手法が特許文献4,5にて提案されている。
【0008】
また、HMDの光学系に回折光学素子を用いて倍率色収差を補正する例が、特許文献6〜8にて開示されている。
特許文献6にて開示されたHMDでは、透過面、透過/反射兼用面及び反射面の3面により構成されるプリズムを用い、画像形成素子からの光束の光路を該プリズム内で折り畳んで射出瞳に導く。そして、このHMDでは、画像形成素子と射出瞳との間のいずれかの位置に、倍率色収差補正機能を有するDOEが設けられている。
【0009】
また、特許文献7にて開示されたHMDでは、少なくとも1つの回転非対称曲面を含む3面により構成される偏心プリズムを用い、画像形成素子とプリズムとの間に平行平板上に形成されたDOEが設けられている。
【0010】
さらに、特許文献8にて開示されたHMDでは、画角を拡大するために偏心プリズムと射出瞳との間に正レンズが設けられている。そして、該正レンズによって増加した倍率色収差を補正するために、光路中のいずれかの面に回折光学素子が設けられている。
【0011】
これらのように、DOEを用いることにより、HMDの光学設計上は倍率色収差の補正が可能になる。ただし、射出瞳の位置に観察者の眼球が配置されるというHMD特有の条件により、さらに考慮しなければならない以下の事項がある。
【0012】
HMDでは、観察者の眼球の回転位置(視軸)がHMDの光学系の光軸に必ずしも一致しない。屈折や反射のみを用いた光学系ではこのような不一致が生じても画像全域が良好に観察できるように、できるだけ射出瞳径を大きくして各収差の補正がなされる。このため、観察者の視軸と光学系の光軸とにある程度のずれがあっても、画像観察に顕著な支障は発生しない。
【0013】
一方、DOEを用いた光学系の場合、DOEの設計は、DOE上の各点において特定の角度で入射する光線に対して最適化される。しかし、眼球の瞳孔が射出瞳の中心からずれて、DOEに入射する光線の角度が特定入射角から大きく逸脱すると、不要回折次数光が発生し、画質が劣化した画像が視認される。
【0014】
特に、色収差補正を十分に行うためにDOEの光学パワーを十分に確保しようとすると、回折格子のピッチが細かくなるために、不要回折次数光がより顕著に発生する。上記特許文献6〜8では、これらの問題について何ら言及されていない。
【特許文献1】特許第2911750号公報
【特許文献2】特開2002−318366号公報
【特許文献3】特開平09−65246号公報
【特許文献4】特開平09−127321号公報
【特許文献5】特開平09−127322号公報
【特許文献6】特許第3482396号公報
【特許文献7】特許第3559624号公報
【特許文献8】特開2002−311380号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
HMDにDOEを用いる場合、HMDの組立性やDOEの設置スペースの観点から、DOEを全光学系のうち射出瞳に近づけて設置することが望ましい。また、HMDの光学系では、偏心光学系や回転非対称曲面が用いられることが多く、これらの複雑な形状を有する光学面上にDOEを形成するのは困難である。
【0016】
また、これらの光学面の間や画像形成素子とプリズムとの間に平面状のDOEを設けても、その形状が複雑となり、DOEの製造が困難になる。
【0017】
また、小型の原画サイズを有する画像形成素子の選択肢は限られ、原画に対する提示画像の拡大倍率もある程度に抑える必要がある。このため、DOEを画像形成素子とプリズムの間に設置すると、その設置スペースを確保するために、光学系の設計自由度が低下する。
【0018】
これに対し、DOEを光学系のうち最も射出瞳側(観察者の眼球側)に配置し、射出瞳との間に光学パワーを持つ偏心面がないように設計すれば、平面状の基板に回転対称形状の輪帯を有するDOEを形成すればよく、DOEの製作が容易になる。
【0019】
ただし、前述したように、観察者の視軸が光学系の光軸と一致していないと、画像形成素子の各点から発してDOEを通過し、眼球に導かれる各光線のDOEへの入射角が、設計入射角からずれる。この場合に、眼球からDOEまでの距離が短いと、DOEへの実際の光線の入射角と設計入射角との角度差が大きくなり、不要回折次数光が多く発生する。また、DOEに色消しの機能を主として担うだけの光学パワーを持たせると、高画角での格子のピッチが小さくなるため、より不要回折次数光が発生し易くなる。
【0020】
また、このような観察者の視軸と光学系の光軸との不一致は、HMDの射出瞳が観察者の眼球の位置に対してずれて頭部に装着された場合にも生ずる。
【0021】
したがって、HMDの光学系では、特に射出瞳の近くにDOEを配置する場合は、観察者の視軸と光学系の光軸との不一致に起因した不要回折次数光を低減するための光学的な対策が求められる。
【0022】
本発明では、観察者の視軸と光学系の光軸との不一致によるDOEからの不要回折次数光(フレア光)の発生を低減できるようにした画像表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の一側面としての画像表示装置は、原画を形成する画像形成素子と、該画像形成素子からの光束を複数の反射面で反射して射出する第1の光学素子と、該第1の光学素子から射出した光束を射出瞳に導く光学系とを有する。該光学系は回折光学素子を含み、該光学系のうち回折光学素子よりも射出瞳側の部分が負の光学パワーを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、DOEを用いた画像表示装置において、観察者の視軸と光学系の光軸との不一致に起因した不要回折次数光を効果的に低減することができる。したがって、眼球が回転したり眼球が射出瞳に対してずれて位置したりする場合でも、良好な画質を有する画像を提示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0026】
まず、具体的な実施例の説明に先だって、各実施例に共通する特徴について説明する。
【0027】
1.本実施例の画像表示装置(HMD)は、原画を形成する画像形成素子と、該画像形成素子からの光束を複数の反射面で反射して射出する第1の光学素子と、該第1の光学素子から射出した光束を射出瞳に導く光学系とを有する。そして、該光学系は回折光学素子を含み、該光学系のうち回折光学素子よりも射出瞳側の部分が負の光学パワーを有することを特徴とする。
【0028】
ここで、HMDに用いられる観察光学系として、図4Aに示すように、画像形成素子1からの光束を、3つの面5〜7に囲まれた領域が屈折率が1以上の材料で満たされたプリズム10によって、観察者の眼球が配置される射出瞳2に導く光学系を考える。画像形成素子1は、液晶パネルや有機EL等の光変調素子である。プリズム10の3面5〜7のうち少なくとも1面は、回転非対称曲面である。
【0029】
画像形成素子1からの光束は、プリズム10に第1面5から入射し、射出瞳2に正対する第2面(反射面)6で内部全反射される。この後、光束は、第2面6に対して射出瞳2側とは反対側に配置され、かつチルトした第3面(反射面)7で裏面反射されて再度第2面6に向かい、第2面(透過面)6を透過して射出瞳2に到達する。これにより、画像形成素子1に形成された2次元原画の拡大虚像(以下、画像又は提示画像という)が観察者に提示される。
【0030】
上記観察光学系で発生する倍率色収差を補正するため、第2面6と射出瞳2との間には、同心円状の複数の格子(以下、格子輪帯ともいう)を有する単層の回折光学素子(DOE)3が平行平板11上に設けられて配置されている。ここで、DOE3の中心は、原画(つまりは提示画像)の中心から射出瞳2の中心に向かう光線(中心画角主光線)の光路上に位置する。言い換えれば、DOE3の中心は、提示画像の中心を注視する観察者の視軸(視線)上に位置する。なお、以下の説明において、中心画角主光線の光路を観察光学系の光軸ともいう。
【0031】
DOE3はブレーズ形状を有し、必要な色収差補正に必要な光学パワーに応じて設定された位相差関数に従い、中心から周辺部に向かって格子ピッチが小さくなっている。各格子輪帯の高さは、その格子輪帯を通過する光線に対する特定の回折効率が最大になるように個別に設定される。
【0032】
ここで、画像形成素子1からプリズム10及びDOE3を経て射出瞳2に向かう光線を逆方向に追跡する逆光線追跡にて、DOE3の形状について説明する。DOE3に設けられた複数の格子輪帯のうち、DOE3の中心から距離rの点Pが属する格子の高さdを適切に設定する場合、光路差関数Φは以下のように表される。ただし、該格子輪帯に入射する光線の波長をλとし、入射角度をθ1とし、格子ピッチをpとし、格子面の入射側屈折率をn1とし、出射側屈折率をn2とする。また、回折次数をmとし、m次の回折角をθ2とする。
【0033】
Φ(r,λ)={n1(λ)・cosθ1−n2(λ)・cosθ2}・d(r)
(θ2=sin−1[{n1(λ)・sinθ1−m・λ/p}/n2 ]) …(1)
また、スカラー近似の回折効率ηは、
η(r,λ)-=sinc2[π・{m−Φ(r,λ)/λ}] …(2)
で表される。そして、このηが最大又は最大に近くなるように、各格子輪帯の高さdの値を適切に設定する。
【0034】
点Pに入射する光線を光学系の射出瞳2の中心Oから点Pに向かう光線とし、θ1,θ2を用いてηが最大になるようにdを設定したとする。これは、観察者の視軸方向が光軸方向に一致するとき、瞳孔に入射して網膜に到達する各光線に関して、特定の回折次数の回折効率が最大になり、不要次数の回折効率が最小に抑えられていることになる。実際の画像観察時には、観察者は各画角方向に向かって眼球を回転させるため、各画角を構成する光線について回転した眼球の瞳孔の中心を通る光線を考慮する必要がある。しかし、ここでは説明を簡単にするために眼球の回転は無視する。このことは以下の説明でも同じである。
【0035】
次に、図4Bに示すように、眼球の瞳孔の中心位置が、観察光学系の光軸に対してy[mm]ずれた点O′にある場合を考える。
【0036】
射出瞳2からDOE3までの光軸上の距離をLとすると、射出瞳2の中心OからDOE3上の点Pに入射する光線のDOE3への入射角θ1は、
θ1=atan(r/L)
である。これに対し、点O′から点Pに入射する光線のDOE3への入射角θ1′は、
θ1′=atan{(r+y)/L}
である。つまり、入射角θ1′は、設計上の入射角θ1に対し、
θ1′−θ1=atan{(r+y)/L}−atan(r/L)
だけ異なる。
【0037】
例えば、n(λd)=1.63554、L=20[mm]、r=7.279[mm]とするとき、眼球の瞳孔の中心位置が観察光学系の光軸に一致するときの点Pへの光線の入射角は、
θ1=20[°]
となる。なお、λd=587.56nmである。
【0038】
DOE3の位相関数が、
【0039】
【数1】
【0040】
ただし、C1=−4.32639991617E−04
C2=−4.71519573549E−06
C3= 2.48970933136E−08
C4=−6.33450529409E−11
C5= 1.36788418606E−13
(E−Xは×E−Xの意味)
であるとする。また、r=7.279[mm]又はその近傍の格子輪帯の格子高さ(格子ピッチは34.0μm)が、設計波長λd=587.56[nm]において、θ1の入射角度を有する光線に対して適切に設定されているとする。このとき、格子高さdは、
d=0.888[μm]
となる。
このときの一次回折光のスカラー近似回折効率特性は、図5に破線で示すようになる。なお、図5において、横軸は波長(nm)、縦軸は回折効率(%)を示す。
【0041】
上述したように設計されたDOE3に対して、眼球の瞳孔中心の光軸からのずれが、
y=−4[mm]
であると、点Pへの入射角度は θ1′=29.422[°]となる。したがって、角度差θ1′−θ1は、9.422[°]となる。このときの回折効率は、図5の実線に示すような特性になり、眼球の瞳孔中心の光軸からのずれがない場合に比べて回折効率のピークは100%を維持するが、そのピーク波長が30nmほど長波側にシフトする。このため、視認性の低い赤〜近赤外域で回折効率が2〜3%増加するが、青〜緑の波長域では3〜10%低下し、不要回折次数光が増加する。
【0042】
眼球の瞳孔中心(眼球の回転中心)が常時、光学系の光軸に一致していれば問題ないが、HMDが実際に観察者の頭部に装着された状態でこれらが一致しているかどうかを確認するのは容易ではない。また、仮にこれらが一致した状態が得られても、HMDの自重や観察者の体の動きによってずれることも十分にあり得る。そして、DOEへの光線の入射角の変化に対する回折効率の変化を抑えることは困難である。
【0043】
そこで、本実施例では、眼球の瞳孔中心の観察光学系の光軸に対するずれ(以下、眼球ずれという)が生じた場合のDOEへの光線の入射角の変化を小さくすることで、回折効率の低下を抑制する。
【0044】
具体的には、図1Aに示すように、画像形成素子1からの光束を複数の反射面6,7で反射して射出するプリズム(第1の光学素子)10と、DOE3を含み、該プリズム10から射出した光束を射出瞳2に導く接眼光学系15とを設ける。そして、接眼光学系15のうちDOE3よりも射出瞳2側の部分(言い換えれば、DOE3と射出瞳2との間の部分)に、負の光学パワーを持たせる。
【0045】
より具体的には、プリズム10と射出瞳2との間に第2の光学素子としての負レンズ21を配置する。該負レンズ21は、その射出瞳2側の面(光学系15のうちDOE3よりも射出瞳2側の部分)21aを凹面とすることで負の光学パワーを生じ、プリズム10側の平面にDOE3を設けることで、DOE3を設けるための基板としても機能する。
【0046】
このような構成により、眼球ずれ量に対するDOE3に入射する光線の入射角の変化を小さくすることができ、この結果、回折効率の低下も抑制することができる。
【0047】
なお、DOE3が設けられる負レンズ21のプリズム10側の面は、平面に限らず、凹面や凸面になっていてもよい。また、DOE3の材料は負レンズ21の材料と同じでも別でもよい。ここでは、屈折率がnのプリズム10の材料と同じ材料でDOE3を形成する。また、凹面21aとDOE3は観察光学系の光軸に対して偏心していない。
【0048】
図1Aの観察光学系において、画像形成素子1からの光束は、図4Aの観察光学系と同様の光路を辿り、プリズム10を射出した後にDOE3で回折した後、負レンズ21を透過して射出瞳2に到達する。
【0049】
図1Aの観察光学系において眼球ずれが生じた状態を、図1Bに示す。そして、図1Bを用いて、逆光線追跡によってDOE3上の点Pを通る光線のDOE3への入射角の変化量を算出する。図2には、図1Bの一部を拡大して示している。
【0050】
負レンズ21の中心厚をt[mm]、射出瞳2から凹面21aまでの光軸上の距離をL1[mm]、凹面21aの曲率半径をRとするとき、近軸計算において、眼球ずれ量が0のときに画角θ0を構成する光線のDOE3への入射角θ1は、以下のように表される。なお、nはDOE3の材料の屈折率である。
【0051】
θ1=θ0/n+(n−1)・θ0・L1/(n・R)
={1/n+(n−1)・L1/(n・R)}・θ0 …(4)
また、DOE3の中心から点Pまでの距離rは、以下のように表される。
【0052】
r=L1・θ0+t・θ1
=L1・θ0+t・{θ0/n+(n−1)・θ0・L1/(n・R)}
={L1+t/n+t・(n−1)・L1/(n・R)}・θ0 …(5)
一方、眼球の瞳孔の中心位置が観察光学系の光軸に対してy[mm]ずれた点O′にある場合(眼球ずれ量)がyのとき、点O′と点Pを通る光線の画角をθ0′とすると、
r+y=L1・θ0′+t・θ1′
となる。このとき、画角θ0′は、
θ0′=θ0+y/{L1+t/n+t・(n−1)・L1/(n・R)} …(6)
である。このため、点Pへの入射角θ1′は、以下のように表される。
【0053】
θ1′={1/n+(n−1)・L1/(n・R)}・θ0′
={1/n+(n−1)・L1/(n・R)}・
[{L1+t/n+t・(n−1)・L1/(n・R)}・θ0+y]
/{L1+t/n+t・(n−1)・L1/(n・R)}
={1/n+(n−1)・L1/(n・R)}・θ0
+y・{1/n+(n−1)・L1/(n・R)}
/{L1+t/n+t・(n−1)・L1/(n・R)} …(7)
このとき、
θ1′−θ1 =y・{1/n+(n−1)・L1/(n・R)}
/{L1+t/n+t・(n−1)・L1/(n・R)}
θ0′−θ0 =y/{L1+t/n+t・(n−1)・L1/(n・R)}
である。このため、画角の差に対するDOE3への光線の入射角差の比は、
(θ1′−θ1)/(θ0′−θ0)=1/n+(n−1)・L1/(n・R) …(8)
となる。例えば、L1=20[mm]、n=1.63554のとき、Rに対する式(8)の値の変化は、図3に実線で示すようになる。
【0054】
図3において、横軸は凹面21aの曲率半径R(mm)を、縦軸は入射角差の比(θ1′−θ1)/(θ0′−θ0)を示す。図3に示すように、凹面21aの負の光学パワーが大きいほど、入射角差の比(θ1′−θ1)/(θ0′−θ0)が小さくなる。言い換えれば、該負の光学パワーが大きいほど、眼球ずれ量yに対するDOE3への光線の入射角θ1の変化が小さくなる。特に、R<0[°]であれば、式(8)の値を0.6未満とすることができ、DOE5への光線の入射角の変化を十分に抑えることができる。
【0055】
なお、図1Aには、DOE3が負レンズ21の面に形成された場合について説明したが、図16に示すように、DOE3をプリズム10の射出面(第2面6)の外面に設けてもよい。
【0056】
2.本実施例のHMDの観察光学系において、DOE3は、互いに異なる材料により形成された複数の回折格子を積層した積層型回折光学素子(以下、積層DOEという)であってもよい。
【0057】
DOEは、単層では基本的に特定の単一波長かつ特定の入射角の光線に対してのみ特定の回折次数で100%の回折効率を達成できる。このため、例えば、3原色(R,G,B)の波長成分を含む可視光が単層DOEに入射する場合は、該可視光の全ての波長成分に対して高い回折効率を得ることが難しく、この結果、色が付いたフレア光が発生する。
【0058】
一方、互いに異なる材料により形成された複数の回折格子を積層した積層DOEでは、各回折格子の回折次数、すなわち格子輪帯の高さを適切に設定することで、広い波長領域において100%に近い回折効率を得ることが可能となる。図6には、単層DOEの回折効率特性の例と、射出瞳2側から順に第1の回折格子及び第2の回折格子が積層された2層タイプの積層DOEの回折効率特性の例を示す。図6において、横軸は波長(nm)、縦軸は回折効率(%)を示す。
【0059】
このとき、第1の回折格子及び第2の回折格子はともに回転対称形状を有する。また、第1の回折格子(以下、第1回折層という)と第2の回折格子(以下、第2回折層という)との間には、中間層としての空気層が介在している。
【0060】
そして、第1及び第2回折層において、光軸上のこれらの中心から距離rの位置にある点Pが属する格子輪帯の高さd1,d2を適切に設定する場合の光路差関数Φ1,Φ2は以下のように表される。ここでは、第1回折層に入射する光線の波長をλとし、入射角度をθ1とする。また、第1及び第2回折層の格子ピッチをpとする。さらに、第1回折層の格子面の入射側屈折率をn1、中間層側屈折率をn2、回折次数をm1、m1次の回折角をθ2とする。さらに、第2回折層の屈折率をn3、回折次数をm2、m2次の回折角をθ3する。
【0061】
Φ1(r,λ)={n1(λ)・cosθ1−n2(λ)・cosθ2}・d1(r)
(θ2=sin−1[{n1(λ)・sinθ1−m1・λ/p}/n2 ])
Φ2(r,λ)={n2(λ)・cosθ2−n3(λ)・cosθ3}・d2(r)
(θ3=sin−1[{n2(λ)・sinθ2−m2・λ/p}/n3 ])
…(5)
また、2層合計でのスカラー近似の回折効率ηは、以下のように表される。
【0062】
η(r,λ)=sinc2[π・{m−{Φ1(r,λ)+Φ2(r,λ)}/λ}]
(m=m1+m2) …(6)
このような積層DOEを用いる場合でも、θ1で入射する光線について、特定の回折次数光の回折効率ηが最大になるように各層の格子高さを設定する。
【0063】
なお、各層の材料は互いに異なるが、各層の材料とその基板の材料とは互いに異なっていてもよいし、互いに同じであってもよい。すなわち、ある材料の基板上にその材料とは異なる材料により形成されたDOE層を設けてもよいし、基板とDOE層を同じ材料で一体形成してもよい。また、第1回折層と第2回折層との間に空気層を設けず、第1回折層と第2回折層とが互いに接合された積層DOEを用いてもよい。
【0064】
図7には、積層DOE3′のうち、射出瞳2側の第1回折層3Aが屈折率n1の第1の基板KA上に形成され、プリズム10側の第2回折層3Bが屈折率n2の第2の基板KB上に形成されている観察光学系を示す。各基板は、厚さ1mmの平行平板である。これら2つの基板KA,KBにおける互いに対向する面に第1回折層3A及び第2回折層3Bが形成されている。また、第1回折層3A及び第2回折層3Bの間には空気層AIRが形成されている。
【0065】
第1回折層3Aの格子高さをd1、第2回折層3Bの格子高さをd2とすると、d1,d2は前述したように広い波長域で高い回折効率が得られるように設定されている。
【0066】
積層DOE3′の位相関数が(3)式によって表され、n1(λd)=1.52415、n2(λd)=1.63554とすると、画角θ0が20[°]である光線の第1層3Aへの入射角θ1(λd)は、12.968[°]である。積層DOE3′の中心から点Pまでの距離rは、r=7.521[mm]となる。
【0067】
この観察光学系において、観察者の眼球が射出瞳2の中心に対してy=4[mm]だけ上方(+方向)にずれると、画角θ0′は9.662[°]となる。また、波長λdの光線のDOE3′への入射角θ1(λd)′は6.322[°]となり、点Pへの入射角は6.646[°]だけ変化する。
【0068】
このときの回折効率の変化を図8に示す。図8において、横軸は波長(nm)、縦軸は回折効率(%)を示す。点線は眼球ずれがない場合の回折効率を、実線は眼球が+4mmだけずれた場合の回折効率を、破線は眼球が−4mmだけずれた場合の回折効率を示す。
【0069】
眼球が+方向にずれた場合は、視感度の低い近紫外域や近赤外域で回折効率が上がるが、視感度の最も高い緑の波長域では回折効率が4〜5%程度低下する。これは、0次や2次の不要回折光が数%発生することを意味する。
【0070】
逆に、眼球が−方向にずれると、緑の波長域では回折効率の低下が少ないものの、これよりも短波長側及び長波長側での回折効率の低下が大きくなる。
【0071】
積層DOEでは、該DOEへの光線の入射角が小さくなる方向に変化すると、特に視感度の低い近紫外域や近赤外域の特性変化が大きく、可視域(特に視感度の高い緑)での回折効率の低下が顕著になる。
【0072】
そこで、図9に示すように、積層DOE3′を含む観察光学系において、第1回折層3Aの基板KAに相当する負レンズ21における射出瞳2側の面21aを凹面とし、接眼光学系15のうちDOE3′よりも射出瞳2側の部分に負の光学パワーを与える。これにより、前述した単層DOE3を含む観察光学系と同様に、眼球ずれが生じたときのDOE3′への光線の入射角の変化を小さくすることができる。凹面21aの曲率半径Rを80[mm]とすると、DOE3′への入射角θ1′は、上記例の場合、8.686[°] となり、回折効率は、図12に実線に示すようになる。図12において、横軸は波長(nm)、縦軸は回折効率(%)を示し、破線は眼球ずれが生じたときに上記負の光学パワーがない場合の回折効率を、点線は眼球ずれがないときの回折効率を示す。
【0073】
このように、積層DOE3′と射出瞳2との間に負の光学パワーが与えられると、単層DOEの場合と同様に、眼球が射出瞳2の中心からずれたときのDOE3′への光線の入射角の変化が小さくなるため、回折効率の低下を抑えることができる。
【0074】
なお、図示しないが、プリズム10側の第2回折層3Bを、プリズム10の射出面(第2面6)の外面に設けてもよい。
【0075】
3.また、本実施例では、接眼光学系15のうちDOE(3,3′)よりも第1の光学素子(プリズム10)側の部分に正の光学パワーを与えてもよい。
【0076】
前述したように、接眼光学系15のうちDOE(3,3′)よりも射出瞳2側の部分に負の光学パワー(凹面21a)を与えると、逆光線追跡において、主光線はこの凹面21aで広がる方向に屈折される。したがって、プリズム10の有効径を大きくしなければならなくなる。また、プリズム10に付与される正の光学パワーもより強くしなければならないため、プリズム10の各面における収差補正上の負担が大きく場合が起こり得る。
【0077】
これを回避するための構成を、図14に示す。図14では、接眼光学系15′に積層DOE3′を設けた観察光学系を示す。図14において、接眼光学系15′の一部を構成する光学素子として、積層DOE3′よりもプリズム10側(第1の光学素子側)に正の光学パワーを有する第3の光学素子としての正レンズ23を設ける。正レンズ23のプリズム10側の面23aが凸面に形成されることで、該正レンズ23は正のパワーを有する。また、正レンズ23は、その射出瞳2側の平面に第2の回折層3Bが形成されることで、第2の基板KBとしても機能する。
【0078】
正レンズ23による正のパワーは、積層DOE3′よりも射出瞳2側に設けられた凹面21aの負のパワーを相殺する。これにより、プリズム10サイズの増加を抑えることができる。同様の構成は、図1A及び図1Bに示した、接眼光学系15に単層DOE3を設けた観察光学系にも適用することができる。
【0079】
また、負レンズ21と正レンズ23に互いにアッベ数が異なる材料を用いることにより、DOE3′(3)で過剰に発生した軸上色収差を相殺することにも寄与することができる。
【0080】
4.さらに、本実施例では、接眼光学系のうちDOEよりも射出瞳側の部分が、少なくとも観察者の眼幅方向において負の光学パワーを有するようにすることが好ましい。
【0081】
本実施例のHMDでは、上述した画像形成素子1及び観察光学系(10,15,15′)を観察者の左右の眼のそれぞれに対して設け、観察者に両眼を通じて画像を観察させる。この場合、観察者の眼幅に合わせるように2つの画像形成素子及び観察光学系の左右方向の間隔を調節する眼幅調整機構を装えるものもある。しかし、HMDを軽量化するためには、このような眼幅調整機構を設けない方が望ましい。
【0082】
眼幅調整機構を設けない場合、一般的な観察者の眼幅の平均値を用いて、左右眼用の観察光学系の左右方向(眼幅方向)の間隔を固定する。このとき、観察者の眼幅の個人差によって、少なくとも片側の眼球が観察光学系の射出瞳の中心から左右方向にずれる。
【0083】
したがって、接眼光学系におけるDOEよりも射出瞳側の部分に与える負の光学パワーを、左右方向においてのみ有効としたり、上下方向にも負の光学パワーを与えつつ左右方向の負の光学パワーを上下方向の負の光学パワーより強くしたりするとよい。具体的には、図1A、図9及び図14に示した負レンズ21の凹面21aとして、左右方向にのみ負のパワーを有するシリンドリカル面を用いたり、左右方向に強い負のパワーを有し、上下方向には弱い負のパワーを有するトーリック面を用いたりしてもよい。
【0084】
これにより、眼幅調整機構を設けないことによって眼球ずれが生じ易くなる左右方向において、効果的に眼球ずれによる回折効率の低下を抑え、フレア光を減少させることができる。
【0085】
以下、具体的な実施例について説明する。
【実施例2】
【0086】
図1A、図1B及び図2に示した単層DOE3を含むHMDの観察光学系において、プリズム10は、屈折率がn(λd)=1.63554の材料により形成されている。ブレーズ型の単層DOE3の位相関数φは式(3)により表され、各格子輪帯の高さは、図10に示すように設定されている。図10において、横軸はDOE3上における観察光学系の光軸上の中心からの距離(輪帯半径)rを、縦軸は格子高さdを示している。
【0087】
ここで、射出瞳2から負レンズ21の凹面21aまでの光軸上の距離L1が20mm、凹面21aの曲率半径Rが100[mm]、負レンズ21の中心厚tが1.0[mm]とした場合のDOE3上の点Pを通る光線について説明する。
【0088】
DOE3の中心から点Pまでの距離rが7.158[mm]とすると、射出瞳2の中心と点Pを通る光線(図1B中に破線で示す)のDOE3への入射角θ1は、式(4)より、10.118[°]となる。このときの回折効率特性を、図11に破線で示す。
【0089】
眼球ずれ量がy=−4[mm]である場合、瞳孔の中心と点Pを通る光線(図1B中に実線で示す)のDOE3への入射角θ1′は、式(7)より、15.772[°]となる。したがって、このときの点Pへの該光線の入射角の変化量(入射角差θ1′−θ1)は5.654[°]となり、回折効率特性は図11に実線で示すようになる。このときの回折効率特性の変化は、回折効率のピークのシフトが10nm程度で、青〜緑域での回折効率の低下は1〜2%程度に抑えられる。すなわち、回折効率特性の変化が、図5に示した従来のものに比べて大幅に低減される。
【実施例3】
【0090】
図9に示した積層DOE3′を含むHMDの観察光学系において、プリズム10は、屈折率がn(λd)=1.63554の材料により形成されている。また、第1の基板KAとしての負レンズ21及び第1の回折層3Aの材料の屈折率はn1(λd)=1.52415であり、第2の基板KB及び第2の回折層3Bの材料の屈折率はn2(λd)=1.63554である。
【0091】
広い波長域で高い回折効率を得るために、第1及び第2の回折層3A,3Bの格子高さd1,d2は図13のように設定されている。図13において、横軸はDOE3′上における観察光学系の光軸上の中心からの距離(輪帯半径)rを、縦軸は格子高さd1,d2を示している。また、第1及び第2の回折層3A,3Bの設計回折次数は、2層合計での回折次数が1となるように設定されている。
【0092】
本実施例において、眼球が射出瞳2の中心からずれたときの回折効率特性の変化は、図12に示した通りである。
【実施例4】
【0093】
図14に示した積層DOE3′を含むHMDの観察光学系において、プリズム10は、屈折率がn(λd)=1.63554の材料により形成されている。また、第1の基板KAとしての負レンズ21及び第1の回折層3Aの材料の屈折率はn1(λd)=1.52415である。さらに、第2の基板KBとしての正レンズ23及び第2の回折層3Bの材料の屈折率はn2(λd)=1.63554である。
【0094】
広い波長域で高い回折効率を得るために、第1及び第2の回折層3A,3Bの格子高さd1,d2は、実施例2と同様に、図13のように設定されている。また、第1及び第2の回折層3A,3Bの設計回折次数も、実施例2と同様に設定されている。本実施例において、眼球が射出瞳2の中心からずれたときの回折効率特性の変化も、実施例2と同様に、図12に示す通りである。
【実施例5】
【0095】
図15には、実施例1〜3のHMDにおいて、負レンズ21の凹面21aとして、左右方向にのみ負のパワーを有するシリンドリカル面を用いたHMDの観察光学系の外観を示している。
【0096】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【0097】
例えば、上記実施例では、3面のうち2面が反射面として機能するプリズム(第1の光学素子)を用いた場合について説明したが、第1の光学素子としてこれ以外の光学素子を用いてもよい。
【0098】
また、上記実施例では、接眼光学系のうちDOEよりも射出瞳側又はプリズム側に1つのレンズ(負又は正レンズ)を設けた場合について説明したが、それぞれに複数のレンズ(第2又は第3の光学素子)を設けてもよい。この場合、該複数のレンズの合成光学パワーが負又は正になればよい。
【0099】
また、上記実施例では、HMDについて説明したが、HMD以外の画像表示装置にも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1A】本発明の実施例1であるHMDの構成を示す断面図。
【図1B】実施例1において眼球ずれが生じた状態を示す断面図。
【図2】実施例1の部分拡大図。
【図3】図1AのHMDに設けられた凹面の曲率半径とDOEへの光線の入射角との関係を示すグラフ。
【図4A】単層DOEの基板が平行平板である従来のHMDの構成を示す断面図。
【図4B】図4AのHMDにおいて眼球ずれが生じた状態を示す断面図。
【図5】図4AのHMDにおいて眼球ずれが生じたときの回折効率特性の変化を示すグラフ。
【図6】単層DOEの回折効率特性と積層DOEの回折効率特性の例を示すグラフ。
【図7】積層DOEの基板が平行平板である従来のHMDの構成を示す断面図。
【図8】図7のHMDにおいて眼球ずれが生じたときの回折効率特性の変化を示すグラフ。
【図9】本発明の実施例2であるHMDの構成を示す断面図。
【図10】実施例1のHMDにおける格子高さの設計例を示すグラフ。
【図11】実施例1のHMDにおいて眼球ずれが生じたときの回折効率特性の変化を示すグラフ。
【図12】実施例2のHMDにおいて眼球ずれが生じたときの回折効率特性の変化を示すグラフ。
【図13】実施例2のHMDにおける格子高さの設計例を示すグラフ。
【図14】本発明の実施例3であるHMDの構成を示す断面図。
【図15】本発明の実施例4であるHMDの構成を示す斜視図。
【図16】実施例1のHMDの変形例を示す断面図。
【符号の説明】
【0101】
1 画像形成素子
2 射出瞳
3 単層DOE
3′ 積層DOE
10 プリズム
21 負レンズ
22 正レンズ
【技術分野】
【0001】
本発明は、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)等の画像表示装置に関し、特に回折光学素子を含む光学系を有する画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
HMDのような画像表示装置では、広画角での画像提示が可能で、かつ観察者が頭部に装着しても違和感や疲労感をあまり与えない小型で軽量な構成が求められる。ただし、一般に画角が大きくなると、光学系のサイズが指数関数的に大きくなり、収差補正も困難になる。
【0003】
HMDの光学系としては、内部全反射と自由曲面を用いた単一のプリズム光学系が提案されている(特許文献1参照)。この光学系では、単一のプリズムを用いて、画像形成素子(液晶パネル等)からの光束を、入射面(第1面)での透過屈折、第2面での内部全反射、第3面での裏面反射及び第4面(第2面)での透過屈折を介して、観察者の眼球が置かれる射出瞳に導く。この光学系では、単一の材料により形成された単一のプリズムを用いているために、その透過面を通る際にプリズムの材料の分散に起因して発生する倍率色収差を補正することができない。
【0004】
これに対し、いわゆる色消しを行うために、プリズムとレンズとの間にホログラフィック素子を配置したり(特許文献2参照)、回折光学素子(DOE)を配置したり(特許文献3参照)するHMDが開示されている。
【0005】
特許文献2にて開示されたHMDでは、色消し効果が得られるような分散を有する材質としてガラスを用いざるを得ず、この結果、HMDの重量が増加する。また、特許文献3にて開示されたHMDでは、DOEを用いることで特定の波長域の光に対しては効果的な色消しを行うことが可能であるが、カラー画像のように広い波長域の光に対して画角全域で不要回折次数光の発生を抑えることが困難である。
【0006】
DOEは、その特性からマイナスの分散を持つ。このため、一般的な光学材料で発生した倍率色収差を効果的に補正することはできるが、特定の波長域及び特定の入射角以外の条件では回折効率が100%又はこれに近い値にならず、不要回折次数光が発生する。この場合、コントラストの高い画像を表示すると、その画像内に画質を劣化させるフレア光が視認されてしまったり、高周波の画像のコントラストが低下したりする。
【0007】
これに対し、異なる材料によって異なる設計回折次数を有するように製作された複数のDOEを互いに近接して設置し、広い波長域で高い回折効率を実現する手法が特許文献4,5にて提案されている。
【0008】
また、HMDの光学系に回折光学素子を用いて倍率色収差を補正する例が、特許文献6〜8にて開示されている。
特許文献6にて開示されたHMDでは、透過面、透過/反射兼用面及び反射面の3面により構成されるプリズムを用い、画像形成素子からの光束の光路を該プリズム内で折り畳んで射出瞳に導く。そして、このHMDでは、画像形成素子と射出瞳との間のいずれかの位置に、倍率色収差補正機能を有するDOEが設けられている。
【0009】
また、特許文献7にて開示されたHMDでは、少なくとも1つの回転非対称曲面を含む3面により構成される偏心プリズムを用い、画像形成素子とプリズムとの間に平行平板上に形成されたDOEが設けられている。
【0010】
さらに、特許文献8にて開示されたHMDでは、画角を拡大するために偏心プリズムと射出瞳との間に正レンズが設けられている。そして、該正レンズによって増加した倍率色収差を補正するために、光路中のいずれかの面に回折光学素子が設けられている。
【0011】
これらのように、DOEを用いることにより、HMDの光学設計上は倍率色収差の補正が可能になる。ただし、射出瞳の位置に観察者の眼球が配置されるというHMD特有の条件により、さらに考慮しなければならない以下の事項がある。
【0012】
HMDでは、観察者の眼球の回転位置(視軸)がHMDの光学系の光軸に必ずしも一致しない。屈折や反射のみを用いた光学系ではこのような不一致が生じても画像全域が良好に観察できるように、できるだけ射出瞳径を大きくして各収差の補正がなされる。このため、観察者の視軸と光学系の光軸とにある程度のずれがあっても、画像観察に顕著な支障は発生しない。
【0013】
一方、DOEを用いた光学系の場合、DOEの設計は、DOE上の各点において特定の角度で入射する光線に対して最適化される。しかし、眼球の瞳孔が射出瞳の中心からずれて、DOEに入射する光線の角度が特定入射角から大きく逸脱すると、不要回折次数光が発生し、画質が劣化した画像が視認される。
【0014】
特に、色収差補正を十分に行うためにDOEの光学パワーを十分に確保しようとすると、回折格子のピッチが細かくなるために、不要回折次数光がより顕著に発生する。上記特許文献6〜8では、これらの問題について何ら言及されていない。
【特許文献1】特許第2911750号公報
【特許文献2】特開2002−318366号公報
【特許文献3】特開平09−65246号公報
【特許文献4】特開平09−127321号公報
【特許文献5】特開平09−127322号公報
【特許文献6】特許第3482396号公報
【特許文献7】特許第3559624号公報
【特許文献8】特開2002−311380号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
HMDにDOEを用いる場合、HMDの組立性やDOEの設置スペースの観点から、DOEを全光学系のうち射出瞳に近づけて設置することが望ましい。また、HMDの光学系では、偏心光学系や回転非対称曲面が用いられることが多く、これらの複雑な形状を有する光学面上にDOEを形成するのは困難である。
【0016】
また、これらの光学面の間や画像形成素子とプリズムとの間に平面状のDOEを設けても、その形状が複雑となり、DOEの製造が困難になる。
【0017】
また、小型の原画サイズを有する画像形成素子の選択肢は限られ、原画に対する提示画像の拡大倍率もある程度に抑える必要がある。このため、DOEを画像形成素子とプリズムの間に設置すると、その設置スペースを確保するために、光学系の設計自由度が低下する。
【0018】
これに対し、DOEを光学系のうち最も射出瞳側(観察者の眼球側)に配置し、射出瞳との間に光学パワーを持つ偏心面がないように設計すれば、平面状の基板に回転対称形状の輪帯を有するDOEを形成すればよく、DOEの製作が容易になる。
【0019】
ただし、前述したように、観察者の視軸が光学系の光軸と一致していないと、画像形成素子の各点から発してDOEを通過し、眼球に導かれる各光線のDOEへの入射角が、設計入射角からずれる。この場合に、眼球からDOEまでの距離が短いと、DOEへの実際の光線の入射角と設計入射角との角度差が大きくなり、不要回折次数光が多く発生する。また、DOEに色消しの機能を主として担うだけの光学パワーを持たせると、高画角での格子のピッチが小さくなるため、より不要回折次数光が発生し易くなる。
【0020】
また、このような観察者の視軸と光学系の光軸との不一致は、HMDの射出瞳が観察者の眼球の位置に対してずれて頭部に装着された場合にも生ずる。
【0021】
したがって、HMDの光学系では、特に射出瞳の近くにDOEを配置する場合は、観察者の視軸と光学系の光軸との不一致に起因した不要回折次数光を低減するための光学的な対策が求められる。
【0022】
本発明では、観察者の視軸と光学系の光軸との不一致によるDOEからの不要回折次数光(フレア光)の発生を低減できるようにした画像表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の一側面としての画像表示装置は、原画を形成する画像形成素子と、該画像形成素子からの光束を複数の反射面で反射して射出する第1の光学素子と、該第1の光学素子から射出した光束を射出瞳に導く光学系とを有する。該光学系は回折光学素子を含み、該光学系のうち回折光学素子よりも射出瞳側の部分が負の光学パワーを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、DOEを用いた画像表示装置において、観察者の視軸と光学系の光軸との不一致に起因した不要回折次数光を効果的に低減することができる。したがって、眼球が回転したり眼球が射出瞳に対してずれて位置したりする場合でも、良好な画質を有する画像を提示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0026】
まず、具体的な実施例の説明に先だって、各実施例に共通する特徴について説明する。
【0027】
1.本実施例の画像表示装置(HMD)は、原画を形成する画像形成素子と、該画像形成素子からの光束を複数の反射面で反射して射出する第1の光学素子と、該第1の光学素子から射出した光束を射出瞳に導く光学系とを有する。そして、該光学系は回折光学素子を含み、該光学系のうち回折光学素子よりも射出瞳側の部分が負の光学パワーを有することを特徴とする。
【0028】
ここで、HMDに用いられる観察光学系として、図4Aに示すように、画像形成素子1からの光束を、3つの面5〜7に囲まれた領域が屈折率が1以上の材料で満たされたプリズム10によって、観察者の眼球が配置される射出瞳2に導く光学系を考える。画像形成素子1は、液晶パネルや有機EL等の光変調素子である。プリズム10の3面5〜7のうち少なくとも1面は、回転非対称曲面である。
【0029】
画像形成素子1からの光束は、プリズム10に第1面5から入射し、射出瞳2に正対する第2面(反射面)6で内部全反射される。この後、光束は、第2面6に対して射出瞳2側とは反対側に配置され、かつチルトした第3面(反射面)7で裏面反射されて再度第2面6に向かい、第2面(透過面)6を透過して射出瞳2に到達する。これにより、画像形成素子1に形成された2次元原画の拡大虚像(以下、画像又は提示画像という)が観察者に提示される。
【0030】
上記観察光学系で発生する倍率色収差を補正するため、第2面6と射出瞳2との間には、同心円状の複数の格子(以下、格子輪帯ともいう)を有する単層の回折光学素子(DOE)3が平行平板11上に設けられて配置されている。ここで、DOE3の中心は、原画(つまりは提示画像)の中心から射出瞳2の中心に向かう光線(中心画角主光線)の光路上に位置する。言い換えれば、DOE3の中心は、提示画像の中心を注視する観察者の視軸(視線)上に位置する。なお、以下の説明において、中心画角主光線の光路を観察光学系の光軸ともいう。
【0031】
DOE3はブレーズ形状を有し、必要な色収差補正に必要な光学パワーに応じて設定された位相差関数に従い、中心から周辺部に向かって格子ピッチが小さくなっている。各格子輪帯の高さは、その格子輪帯を通過する光線に対する特定の回折効率が最大になるように個別に設定される。
【0032】
ここで、画像形成素子1からプリズム10及びDOE3を経て射出瞳2に向かう光線を逆方向に追跡する逆光線追跡にて、DOE3の形状について説明する。DOE3に設けられた複数の格子輪帯のうち、DOE3の中心から距離rの点Pが属する格子の高さdを適切に設定する場合、光路差関数Φは以下のように表される。ただし、該格子輪帯に入射する光線の波長をλとし、入射角度をθ1とし、格子ピッチをpとし、格子面の入射側屈折率をn1とし、出射側屈折率をn2とする。また、回折次数をmとし、m次の回折角をθ2とする。
【0033】
Φ(r,λ)={n1(λ)・cosθ1−n2(λ)・cosθ2}・d(r)
(θ2=sin−1[{n1(λ)・sinθ1−m・λ/p}/n2 ]) …(1)
また、スカラー近似の回折効率ηは、
η(r,λ)-=sinc2[π・{m−Φ(r,λ)/λ}] …(2)
で表される。そして、このηが最大又は最大に近くなるように、各格子輪帯の高さdの値を適切に設定する。
【0034】
点Pに入射する光線を光学系の射出瞳2の中心Oから点Pに向かう光線とし、θ1,θ2を用いてηが最大になるようにdを設定したとする。これは、観察者の視軸方向が光軸方向に一致するとき、瞳孔に入射して網膜に到達する各光線に関して、特定の回折次数の回折効率が最大になり、不要次数の回折効率が最小に抑えられていることになる。実際の画像観察時には、観察者は各画角方向に向かって眼球を回転させるため、各画角を構成する光線について回転した眼球の瞳孔の中心を通る光線を考慮する必要がある。しかし、ここでは説明を簡単にするために眼球の回転は無視する。このことは以下の説明でも同じである。
【0035】
次に、図4Bに示すように、眼球の瞳孔の中心位置が、観察光学系の光軸に対してy[mm]ずれた点O′にある場合を考える。
【0036】
射出瞳2からDOE3までの光軸上の距離をLとすると、射出瞳2の中心OからDOE3上の点Pに入射する光線のDOE3への入射角θ1は、
θ1=atan(r/L)
である。これに対し、点O′から点Pに入射する光線のDOE3への入射角θ1′は、
θ1′=atan{(r+y)/L}
である。つまり、入射角θ1′は、設計上の入射角θ1に対し、
θ1′−θ1=atan{(r+y)/L}−atan(r/L)
だけ異なる。
【0037】
例えば、n(λd)=1.63554、L=20[mm]、r=7.279[mm]とするとき、眼球の瞳孔の中心位置が観察光学系の光軸に一致するときの点Pへの光線の入射角は、
θ1=20[°]
となる。なお、λd=587.56nmである。
【0038】
DOE3の位相関数が、
【0039】
【数1】
【0040】
ただし、C1=−4.32639991617E−04
C2=−4.71519573549E−06
C3= 2.48970933136E−08
C4=−6.33450529409E−11
C5= 1.36788418606E−13
(E−Xは×E−Xの意味)
であるとする。また、r=7.279[mm]又はその近傍の格子輪帯の格子高さ(格子ピッチは34.0μm)が、設計波長λd=587.56[nm]において、θ1の入射角度を有する光線に対して適切に設定されているとする。このとき、格子高さdは、
d=0.888[μm]
となる。
このときの一次回折光のスカラー近似回折効率特性は、図5に破線で示すようになる。なお、図5において、横軸は波長(nm)、縦軸は回折効率(%)を示す。
【0041】
上述したように設計されたDOE3に対して、眼球の瞳孔中心の光軸からのずれが、
y=−4[mm]
であると、点Pへの入射角度は θ1′=29.422[°]となる。したがって、角度差θ1′−θ1は、9.422[°]となる。このときの回折効率は、図5の実線に示すような特性になり、眼球の瞳孔中心の光軸からのずれがない場合に比べて回折効率のピークは100%を維持するが、そのピーク波長が30nmほど長波側にシフトする。このため、視認性の低い赤〜近赤外域で回折効率が2〜3%増加するが、青〜緑の波長域では3〜10%低下し、不要回折次数光が増加する。
【0042】
眼球の瞳孔中心(眼球の回転中心)が常時、光学系の光軸に一致していれば問題ないが、HMDが実際に観察者の頭部に装着された状態でこれらが一致しているかどうかを確認するのは容易ではない。また、仮にこれらが一致した状態が得られても、HMDの自重や観察者の体の動きによってずれることも十分にあり得る。そして、DOEへの光線の入射角の変化に対する回折効率の変化を抑えることは困難である。
【0043】
そこで、本実施例では、眼球の瞳孔中心の観察光学系の光軸に対するずれ(以下、眼球ずれという)が生じた場合のDOEへの光線の入射角の変化を小さくすることで、回折効率の低下を抑制する。
【0044】
具体的には、図1Aに示すように、画像形成素子1からの光束を複数の反射面6,7で反射して射出するプリズム(第1の光学素子)10と、DOE3を含み、該プリズム10から射出した光束を射出瞳2に導く接眼光学系15とを設ける。そして、接眼光学系15のうちDOE3よりも射出瞳2側の部分(言い換えれば、DOE3と射出瞳2との間の部分)に、負の光学パワーを持たせる。
【0045】
より具体的には、プリズム10と射出瞳2との間に第2の光学素子としての負レンズ21を配置する。該負レンズ21は、その射出瞳2側の面(光学系15のうちDOE3よりも射出瞳2側の部分)21aを凹面とすることで負の光学パワーを生じ、プリズム10側の平面にDOE3を設けることで、DOE3を設けるための基板としても機能する。
【0046】
このような構成により、眼球ずれ量に対するDOE3に入射する光線の入射角の変化を小さくすることができ、この結果、回折効率の低下も抑制することができる。
【0047】
なお、DOE3が設けられる負レンズ21のプリズム10側の面は、平面に限らず、凹面や凸面になっていてもよい。また、DOE3の材料は負レンズ21の材料と同じでも別でもよい。ここでは、屈折率がnのプリズム10の材料と同じ材料でDOE3を形成する。また、凹面21aとDOE3は観察光学系の光軸に対して偏心していない。
【0048】
図1Aの観察光学系において、画像形成素子1からの光束は、図4Aの観察光学系と同様の光路を辿り、プリズム10を射出した後にDOE3で回折した後、負レンズ21を透過して射出瞳2に到達する。
【0049】
図1Aの観察光学系において眼球ずれが生じた状態を、図1Bに示す。そして、図1Bを用いて、逆光線追跡によってDOE3上の点Pを通る光線のDOE3への入射角の変化量を算出する。図2には、図1Bの一部を拡大して示している。
【0050】
負レンズ21の中心厚をt[mm]、射出瞳2から凹面21aまでの光軸上の距離をL1[mm]、凹面21aの曲率半径をRとするとき、近軸計算において、眼球ずれ量が0のときに画角θ0を構成する光線のDOE3への入射角θ1は、以下のように表される。なお、nはDOE3の材料の屈折率である。
【0051】
θ1=θ0/n+(n−1)・θ0・L1/(n・R)
={1/n+(n−1)・L1/(n・R)}・θ0 …(4)
また、DOE3の中心から点Pまでの距離rは、以下のように表される。
【0052】
r=L1・θ0+t・θ1
=L1・θ0+t・{θ0/n+(n−1)・θ0・L1/(n・R)}
={L1+t/n+t・(n−1)・L1/(n・R)}・θ0 …(5)
一方、眼球の瞳孔の中心位置が観察光学系の光軸に対してy[mm]ずれた点O′にある場合(眼球ずれ量)がyのとき、点O′と点Pを通る光線の画角をθ0′とすると、
r+y=L1・θ0′+t・θ1′
となる。このとき、画角θ0′は、
θ0′=θ0+y/{L1+t/n+t・(n−1)・L1/(n・R)} …(6)
である。このため、点Pへの入射角θ1′は、以下のように表される。
【0053】
θ1′={1/n+(n−1)・L1/(n・R)}・θ0′
={1/n+(n−1)・L1/(n・R)}・
[{L1+t/n+t・(n−1)・L1/(n・R)}・θ0+y]
/{L1+t/n+t・(n−1)・L1/(n・R)}
={1/n+(n−1)・L1/(n・R)}・θ0
+y・{1/n+(n−1)・L1/(n・R)}
/{L1+t/n+t・(n−1)・L1/(n・R)} …(7)
このとき、
θ1′−θ1 =y・{1/n+(n−1)・L1/(n・R)}
/{L1+t/n+t・(n−1)・L1/(n・R)}
θ0′−θ0 =y/{L1+t/n+t・(n−1)・L1/(n・R)}
である。このため、画角の差に対するDOE3への光線の入射角差の比は、
(θ1′−θ1)/(θ0′−θ0)=1/n+(n−1)・L1/(n・R) …(8)
となる。例えば、L1=20[mm]、n=1.63554のとき、Rに対する式(8)の値の変化は、図3に実線で示すようになる。
【0054】
図3において、横軸は凹面21aの曲率半径R(mm)を、縦軸は入射角差の比(θ1′−θ1)/(θ0′−θ0)を示す。図3に示すように、凹面21aの負の光学パワーが大きいほど、入射角差の比(θ1′−θ1)/(θ0′−θ0)が小さくなる。言い換えれば、該負の光学パワーが大きいほど、眼球ずれ量yに対するDOE3への光線の入射角θ1の変化が小さくなる。特に、R<0[°]であれば、式(8)の値を0.6未満とすることができ、DOE5への光線の入射角の変化を十分に抑えることができる。
【0055】
なお、図1Aには、DOE3が負レンズ21の面に形成された場合について説明したが、図16に示すように、DOE3をプリズム10の射出面(第2面6)の外面に設けてもよい。
【0056】
2.本実施例のHMDの観察光学系において、DOE3は、互いに異なる材料により形成された複数の回折格子を積層した積層型回折光学素子(以下、積層DOEという)であってもよい。
【0057】
DOEは、単層では基本的に特定の単一波長かつ特定の入射角の光線に対してのみ特定の回折次数で100%の回折効率を達成できる。このため、例えば、3原色(R,G,B)の波長成分を含む可視光が単層DOEに入射する場合は、該可視光の全ての波長成分に対して高い回折効率を得ることが難しく、この結果、色が付いたフレア光が発生する。
【0058】
一方、互いに異なる材料により形成された複数の回折格子を積層した積層DOEでは、各回折格子の回折次数、すなわち格子輪帯の高さを適切に設定することで、広い波長領域において100%に近い回折効率を得ることが可能となる。図6には、単層DOEの回折効率特性の例と、射出瞳2側から順に第1の回折格子及び第2の回折格子が積層された2層タイプの積層DOEの回折効率特性の例を示す。図6において、横軸は波長(nm)、縦軸は回折効率(%)を示す。
【0059】
このとき、第1の回折格子及び第2の回折格子はともに回転対称形状を有する。また、第1の回折格子(以下、第1回折層という)と第2の回折格子(以下、第2回折層という)との間には、中間層としての空気層が介在している。
【0060】
そして、第1及び第2回折層において、光軸上のこれらの中心から距離rの位置にある点Pが属する格子輪帯の高さd1,d2を適切に設定する場合の光路差関数Φ1,Φ2は以下のように表される。ここでは、第1回折層に入射する光線の波長をλとし、入射角度をθ1とする。また、第1及び第2回折層の格子ピッチをpとする。さらに、第1回折層の格子面の入射側屈折率をn1、中間層側屈折率をn2、回折次数をm1、m1次の回折角をθ2とする。さらに、第2回折層の屈折率をn3、回折次数をm2、m2次の回折角をθ3する。
【0061】
Φ1(r,λ)={n1(λ)・cosθ1−n2(λ)・cosθ2}・d1(r)
(θ2=sin−1[{n1(λ)・sinθ1−m1・λ/p}/n2 ])
Φ2(r,λ)={n2(λ)・cosθ2−n3(λ)・cosθ3}・d2(r)
(θ3=sin−1[{n2(λ)・sinθ2−m2・λ/p}/n3 ])
…(5)
また、2層合計でのスカラー近似の回折効率ηは、以下のように表される。
【0062】
η(r,λ)=sinc2[π・{m−{Φ1(r,λ)+Φ2(r,λ)}/λ}]
(m=m1+m2) …(6)
このような積層DOEを用いる場合でも、θ1で入射する光線について、特定の回折次数光の回折効率ηが最大になるように各層の格子高さを設定する。
【0063】
なお、各層の材料は互いに異なるが、各層の材料とその基板の材料とは互いに異なっていてもよいし、互いに同じであってもよい。すなわち、ある材料の基板上にその材料とは異なる材料により形成されたDOE層を設けてもよいし、基板とDOE層を同じ材料で一体形成してもよい。また、第1回折層と第2回折層との間に空気層を設けず、第1回折層と第2回折層とが互いに接合された積層DOEを用いてもよい。
【0064】
図7には、積層DOE3′のうち、射出瞳2側の第1回折層3Aが屈折率n1の第1の基板KA上に形成され、プリズム10側の第2回折層3Bが屈折率n2の第2の基板KB上に形成されている観察光学系を示す。各基板は、厚さ1mmの平行平板である。これら2つの基板KA,KBにおける互いに対向する面に第1回折層3A及び第2回折層3Bが形成されている。また、第1回折層3A及び第2回折層3Bの間には空気層AIRが形成されている。
【0065】
第1回折層3Aの格子高さをd1、第2回折層3Bの格子高さをd2とすると、d1,d2は前述したように広い波長域で高い回折効率が得られるように設定されている。
【0066】
積層DOE3′の位相関数が(3)式によって表され、n1(λd)=1.52415、n2(λd)=1.63554とすると、画角θ0が20[°]である光線の第1層3Aへの入射角θ1(λd)は、12.968[°]である。積層DOE3′の中心から点Pまでの距離rは、r=7.521[mm]となる。
【0067】
この観察光学系において、観察者の眼球が射出瞳2の中心に対してy=4[mm]だけ上方(+方向)にずれると、画角θ0′は9.662[°]となる。また、波長λdの光線のDOE3′への入射角θ1(λd)′は6.322[°]となり、点Pへの入射角は6.646[°]だけ変化する。
【0068】
このときの回折効率の変化を図8に示す。図8において、横軸は波長(nm)、縦軸は回折効率(%)を示す。点線は眼球ずれがない場合の回折効率を、実線は眼球が+4mmだけずれた場合の回折効率を、破線は眼球が−4mmだけずれた場合の回折効率を示す。
【0069】
眼球が+方向にずれた場合は、視感度の低い近紫外域や近赤外域で回折効率が上がるが、視感度の最も高い緑の波長域では回折効率が4〜5%程度低下する。これは、0次や2次の不要回折光が数%発生することを意味する。
【0070】
逆に、眼球が−方向にずれると、緑の波長域では回折効率の低下が少ないものの、これよりも短波長側及び長波長側での回折効率の低下が大きくなる。
【0071】
積層DOEでは、該DOEへの光線の入射角が小さくなる方向に変化すると、特に視感度の低い近紫外域や近赤外域の特性変化が大きく、可視域(特に視感度の高い緑)での回折効率の低下が顕著になる。
【0072】
そこで、図9に示すように、積層DOE3′を含む観察光学系において、第1回折層3Aの基板KAに相当する負レンズ21における射出瞳2側の面21aを凹面とし、接眼光学系15のうちDOE3′よりも射出瞳2側の部分に負の光学パワーを与える。これにより、前述した単層DOE3を含む観察光学系と同様に、眼球ずれが生じたときのDOE3′への光線の入射角の変化を小さくすることができる。凹面21aの曲率半径Rを80[mm]とすると、DOE3′への入射角θ1′は、上記例の場合、8.686[°] となり、回折効率は、図12に実線に示すようになる。図12において、横軸は波長(nm)、縦軸は回折効率(%)を示し、破線は眼球ずれが生じたときに上記負の光学パワーがない場合の回折効率を、点線は眼球ずれがないときの回折効率を示す。
【0073】
このように、積層DOE3′と射出瞳2との間に負の光学パワーが与えられると、単層DOEの場合と同様に、眼球が射出瞳2の中心からずれたときのDOE3′への光線の入射角の変化が小さくなるため、回折効率の低下を抑えることができる。
【0074】
なお、図示しないが、プリズム10側の第2回折層3Bを、プリズム10の射出面(第2面6)の外面に設けてもよい。
【0075】
3.また、本実施例では、接眼光学系15のうちDOE(3,3′)よりも第1の光学素子(プリズム10)側の部分に正の光学パワーを与えてもよい。
【0076】
前述したように、接眼光学系15のうちDOE(3,3′)よりも射出瞳2側の部分に負の光学パワー(凹面21a)を与えると、逆光線追跡において、主光線はこの凹面21aで広がる方向に屈折される。したがって、プリズム10の有効径を大きくしなければならなくなる。また、プリズム10に付与される正の光学パワーもより強くしなければならないため、プリズム10の各面における収差補正上の負担が大きく場合が起こり得る。
【0077】
これを回避するための構成を、図14に示す。図14では、接眼光学系15′に積層DOE3′を設けた観察光学系を示す。図14において、接眼光学系15′の一部を構成する光学素子として、積層DOE3′よりもプリズム10側(第1の光学素子側)に正の光学パワーを有する第3の光学素子としての正レンズ23を設ける。正レンズ23のプリズム10側の面23aが凸面に形成されることで、該正レンズ23は正のパワーを有する。また、正レンズ23は、その射出瞳2側の平面に第2の回折層3Bが形成されることで、第2の基板KBとしても機能する。
【0078】
正レンズ23による正のパワーは、積層DOE3′よりも射出瞳2側に設けられた凹面21aの負のパワーを相殺する。これにより、プリズム10サイズの増加を抑えることができる。同様の構成は、図1A及び図1Bに示した、接眼光学系15に単層DOE3を設けた観察光学系にも適用することができる。
【0079】
また、負レンズ21と正レンズ23に互いにアッベ数が異なる材料を用いることにより、DOE3′(3)で過剰に発生した軸上色収差を相殺することにも寄与することができる。
【0080】
4.さらに、本実施例では、接眼光学系のうちDOEよりも射出瞳側の部分が、少なくとも観察者の眼幅方向において負の光学パワーを有するようにすることが好ましい。
【0081】
本実施例のHMDでは、上述した画像形成素子1及び観察光学系(10,15,15′)を観察者の左右の眼のそれぞれに対して設け、観察者に両眼を通じて画像を観察させる。この場合、観察者の眼幅に合わせるように2つの画像形成素子及び観察光学系の左右方向の間隔を調節する眼幅調整機構を装えるものもある。しかし、HMDを軽量化するためには、このような眼幅調整機構を設けない方が望ましい。
【0082】
眼幅調整機構を設けない場合、一般的な観察者の眼幅の平均値を用いて、左右眼用の観察光学系の左右方向(眼幅方向)の間隔を固定する。このとき、観察者の眼幅の個人差によって、少なくとも片側の眼球が観察光学系の射出瞳の中心から左右方向にずれる。
【0083】
したがって、接眼光学系におけるDOEよりも射出瞳側の部分に与える負の光学パワーを、左右方向においてのみ有効としたり、上下方向にも負の光学パワーを与えつつ左右方向の負の光学パワーを上下方向の負の光学パワーより強くしたりするとよい。具体的には、図1A、図9及び図14に示した負レンズ21の凹面21aとして、左右方向にのみ負のパワーを有するシリンドリカル面を用いたり、左右方向に強い負のパワーを有し、上下方向には弱い負のパワーを有するトーリック面を用いたりしてもよい。
【0084】
これにより、眼幅調整機構を設けないことによって眼球ずれが生じ易くなる左右方向において、効果的に眼球ずれによる回折効率の低下を抑え、フレア光を減少させることができる。
【0085】
以下、具体的な実施例について説明する。
【実施例2】
【0086】
図1A、図1B及び図2に示した単層DOE3を含むHMDの観察光学系において、プリズム10は、屈折率がn(λd)=1.63554の材料により形成されている。ブレーズ型の単層DOE3の位相関数φは式(3)により表され、各格子輪帯の高さは、図10に示すように設定されている。図10において、横軸はDOE3上における観察光学系の光軸上の中心からの距離(輪帯半径)rを、縦軸は格子高さdを示している。
【0087】
ここで、射出瞳2から負レンズ21の凹面21aまでの光軸上の距離L1が20mm、凹面21aの曲率半径Rが100[mm]、負レンズ21の中心厚tが1.0[mm]とした場合のDOE3上の点Pを通る光線について説明する。
【0088】
DOE3の中心から点Pまでの距離rが7.158[mm]とすると、射出瞳2の中心と点Pを通る光線(図1B中に破線で示す)のDOE3への入射角θ1は、式(4)より、10.118[°]となる。このときの回折効率特性を、図11に破線で示す。
【0089】
眼球ずれ量がy=−4[mm]である場合、瞳孔の中心と点Pを通る光線(図1B中に実線で示す)のDOE3への入射角θ1′は、式(7)より、15.772[°]となる。したがって、このときの点Pへの該光線の入射角の変化量(入射角差θ1′−θ1)は5.654[°]となり、回折効率特性は図11に実線で示すようになる。このときの回折効率特性の変化は、回折効率のピークのシフトが10nm程度で、青〜緑域での回折効率の低下は1〜2%程度に抑えられる。すなわち、回折効率特性の変化が、図5に示した従来のものに比べて大幅に低減される。
【実施例3】
【0090】
図9に示した積層DOE3′を含むHMDの観察光学系において、プリズム10は、屈折率がn(λd)=1.63554の材料により形成されている。また、第1の基板KAとしての負レンズ21及び第1の回折層3Aの材料の屈折率はn1(λd)=1.52415であり、第2の基板KB及び第2の回折層3Bの材料の屈折率はn2(λd)=1.63554である。
【0091】
広い波長域で高い回折効率を得るために、第1及び第2の回折層3A,3Bの格子高さd1,d2は図13のように設定されている。図13において、横軸はDOE3′上における観察光学系の光軸上の中心からの距離(輪帯半径)rを、縦軸は格子高さd1,d2を示している。また、第1及び第2の回折層3A,3Bの設計回折次数は、2層合計での回折次数が1となるように設定されている。
【0092】
本実施例において、眼球が射出瞳2の中心からずれたときの回折効率特性の変化は、図12に示した通りである。
【実施例4】
【0093】
図14に示した積層DOE3′を含むHMDの観察光学系において、プリズム10は、屈折率がn(λd)=1.63554の材料により形成されている。また、第1の基板KAとしての負レンズ21及び第1の回折層3Aの材料の屈折率はn1(λd)=1.52415である。さらに、第2の基板KBとしての正レンズ23及び第2の回折層3Bの材料の屈折率はn2(λd)=1.63554である。
【0094】
広い波長域で高い回折効率を得るために、第1及び第2の回折層3A,3Bの格子高さd1,d2は、実施例2と同様に、図13のように設定されている。また、第1及び第2の回折層3A,3Bの設計回折次数も、実施例2と同様に設定されている。本実施例において、眼球が射出瞳2の中心からずれたときの回折効率特性の変化も、実施例2と同様に、図12に示す通りである。
【実施例5】
【0095】
図15には、実施例1〜3のHMDにおいて、負レンズ21の凹面21aとして、左右方向にのみ負のパワーを有するシリンドリカル面を用いたHMDの観察光学系の外観を示している。
【0096】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【0097】
例えば、上記実施例では、3面のうち2面が反射面として機能するプリズム(第1の光学素子)を用いた場合について説明したが、第1の光学素子としてこれ以外の光学素子を用いてもよい。
【0098】
また、上記実施例では、接眼光学系のうちDOEよりも射出瞳側又はプリズム側に1つのレンズ(負又は正レンズ)を設けた場合について説明したが、それぞれに複数のレンズ(第2又は第3の光学素子)を設けてもよい。この場合、該複数のレンズの合成光学パワーが負又は正になればよい。
【0099】
また、上記実施例では、HMDについて説明したが、HMD以外の画像表示装置にも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1A】本発明の実施例1であるHMDの構成を示す断面図。
【図1B】実施例1において眼球ずれが生じた状態を示す断面図。
【図2】実施例1の部分拡大図。
【図3】図1AのHMDに設けられた凹面の曲率半径とDOEへの光線の入射角との関係を示すグラフ。
【図4A】単層DOEの基板が平行平板である従来のHMDの構成を示す断面図。
【図4B】図4AのHMDにおいて眼球ずれが生じた状態を示す断面図。
【図5】図4AのHMDにおいて眼球ずれが生じたときの回折効率特性の変化を示すグラフ。
【図6】単層DOEの回折効率特性と積層DOEの回折効率特性の例を示すグラフ。
【図7】積層DOEの基板が平行平板である従来のHMDの構成を示す断面図。
【図8】図7のHMDにおいて眼球ずれが生じたときの回折効率特性の変化を示すグラフ。
【図9】本発明の実施例2であるHMDの構成を示す断面図。
【図10】実施例1のHMDにおける格子高さの設計例を示すグラフ。
【図11】実施例1のHMDにおいて眼球ずれが生じたときの回折効率特性の変化を示すグラフ。
【図12】実施例2のHMDにおいて眼球ずれが生じたときの回折効率特性の変化を示すグラフ。
【図13】実施例2のHMDにおける格子高さの設計例を示すグラフ。
【図14】本発明の実施例3であるHMDの構成を示す断面図。
【図15】本発明の実施例4であるHMDの構成を示す斜視図。
【図16】実施例1のHMDの変形例を示す断面図。
【符号の説明】
【0101】
1 画像形成素子
2 射出瞳
3 単層DOE
3′ 積層DOE
10 プリズム
21 負レンズ
22 正レンズ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原画を形成する画像形成素子と、
該画像形成素子からの光束を複数の反射面で反射して射出する第1の光学素子と、
該第1の光学素子から射出した光束を射出瞳に導く光学系とを有し、
該光学系は回折光学素子を含み、
前記光学系のうち前記回折光学素子よりも前記射出瞳側の部分が負の光学パワーを有することを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記回折光学素子は、前記光学系に含まれる第2の光学素子の面又は前記第1の光学素子の射出面の外面に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記光学系は、前記回折光学素子よりも前記第1の光学素子側に正の光学パワーを有する部分を含むことを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記回折光学素子は、互いに異なる材料により形成された複数の回折格子を積層した積層型回折光学素子であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記光学系のうち前記回折光学素子よりも前記射出瞳側の部分が、少なくとも観察者の眼幅方向において負の光学パワーを有することを特徴とする請求項1から4に記載の画像表示装置。
【請求項1】
原画を形成する画像形成素子と、
該画像形成素子からの光束を複数の反射面で反射して射出する第1の光学素子と、
該第1の光学素子から射出した光束を射出瞳に導く光学系とを有し、
該光学系は回折光学素子を含み、
前記光学系のうち前記回折光学素子よりも前記射出瞳側の部分が負の光学パワーを有することを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記回折光学素子は、前記光学系に含まれる第2の光学素子の面又は前記第1の光学素子の射出面の外面に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記光学系は、前記回折光学素子よりも前記第1の光学素子側に正の光学パワーを有する部分を含むことを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記回折光学素子は、互いに異なる材料により形成された複数の回折格子を積層した積層型回折光学素子であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記光学系のうち前記回折光学素子よりも前記射出瞳側の部分が、少なくとも観察者の眼幅方向において負の光学パワーを有することを特徴とする請求項1から4に記載の画像表示装置。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2009−145611(P2009−145611A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−322646(P2007−322646)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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