説明

画像表示装置

【課題】単位画素当たりの電流値を低減するとともに、閾値電圧を補償することが可能な画像表示装置を提供する。
【解決手段】第1発光素子及び第2発光素子と、前記第1発光素子と前記第2発光素子との間に形成され、前記第1発光素子から前記第2発光素子に流入される電流を調整するドライバ素子と、前記ドライバ素子の閾値電圧に応じた電荷を保持する第1容量素子と、前記第2発光素子の両端への接続をオン状態又はオフ状態により切り替えるスイッチング素子と、を備え、前記スイッチング素子がオフ状態のときに、前記第1発光素子から流出された電流が前記第2発光素子に流入され、前記スイッチング素子がオン状態のときに、前記第1容量素子に保持された電荷が前記ドライバ素子を介して当該スイッチング素子に流入されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ELディスプレイ装置等の画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発光層に注入された正孔と電子とが再結合することにより発光する有機EL(Electro Luminescence)素子を用いた画像表示装置が提案されている。画像表示装置として、例えば、アモルファスシリコン又は多結晶シリコン等で形成される薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor;以下「TFT」という)及び、有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode)等を有する画素回路をマトリクス状に配置したものがある。
【0003】
また、従来、平面的に複数に分割された発光手段を直列に接続した構成の画像表示装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−10986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、単位画素当たりの電流値を低減することはできるものの、有機EL素子を駆動する薄膜トランジスタの閾値電圧の補償については考慮されていないため、閾値電圧のバラツキにより画素ムラが発生する可能性がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、単位画素当たりの電流値を低減するとともに、閾値電圧を補償することが可能な画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明の第1の態様に係る画像表示装置は、第1発光素子及び第2発光素子と、前記第1発光素子と前記第2発光素子との間に形成され、前記第1発光素子から前記第2発光素子に流入される電流を調整するドライバ素子と、前記ドライバ素子の閾値電圧に応じた電荷を保持する第1容量素子と、前記第2発光素子の両端への接続をオン状態又はオフ状態により切り替えるスイッチング素子と、を備え、前記スイッチング素子がオフ状態のときに、前記第1発光素子から流出された電流が前記第2発光素子に流入され、前記スイッチング素子がオン状態のときに、前記第1容量素子に保持された電荷が前記ドライバ素子を介して当該スイッチング素子に流入されることを特徴とする。
また、本発明の第2の態様に係る画像表示装置において、前記ドライバ素子は、前記第1容量素子と接続されたゲートに対応する第1電極と、何れか一方がドレインに対応し他方がソースに対応する第2電極及び第3電極とを有し、前記第2電極が前記第1発光素子のカソードに接続されるとともに、前記第3電極が前記第2発光素子のアノードに接続され、前記第1端子と前記第2端子との電位差に応じて前記第2端子と前記第3端子との間に流れる電流を調整することを特徴とする。
また、本発明の第3の態様に係る画像表示装置において、前記閾値電圧を検出する閾値電圧検出素子を更に備え、前記閾値電圧検出素子は、前記第1容量素子に蓄積される電荷を利用して、前記閾値電圧を検出することを特徴とする。
また、本発明の第4の態様に係る画像表示装置において、前記スイッチング素子は、前記第1発光素子及び前記第2発光素子の発光時にオフ状態とされ、前記第1発光素子及び前記第2発光素子は、前記発光時に前記ドライバ素子を介して接続されることを特徴とする。
また、本発明の第5の態様に係る画像表示装置において、前記第1発光素子及び前記第2発光素子の発光輝度に対応する画像信号電圧を保持する第2容量素子を更に備え、前記第1容量素子及び前記第2容量素子は、前記発光時に前記ドライバ素子に対して直列に接続されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、単位画素当たりの電流値を低減するとともに、閾値電圧の変動を補償することが可能な画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本実施形態に係る画像表示装置の構成を模式的に示した図である。
【図2】図2は、図1に示した画素回路の構成の一例を示した回路図である。
【図3】図3は、図1に示した画素回路の駆動方法を説明するためのタイミングチャートである。
【図4】図4は、発光停止期間における画素回路の動作状態を示した図である。
【図5】図5は、Vth検出準備期間時における画素回路の動作状態を示した図である。
【図6】図6は、Vth検出準備期間時における画素回路の動作状態を示した図である。
【図7】図7は、Vth検出期間時における画素回路の動作状態を示した図である。
【図8】図8は、リセット期間時における画素回路の動作状態を示した図である。
【図9】図9は、書き込み期間時における画素回路の動作状態を示した図である。
【図10】図10は、発光期間時における画素回路の動作状態を示した図である。
【図11】図11は、図2に示した画素回路の平面図である。
【図12】図12は、図11に示した画素回路のA−A断面図である。
【図13】図13は、図11に示した画素回路のB−B断面図である。
【図14】図14は、画素回路に設けられるインシュレータの平面図である。
【図15】図15は、画素回路を行列状に配置した際の平面図である。
【図16】図16は、図11に示した画素回路のA−A断面における発光期間時の電流の流れを示した図である。
【図17】図17は、図11に示した画素回路のB−B断面における発光期間時の電流の流れを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態に係る画像表示装置を詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0011】
<画像表示装置の構成>
図1は、本実施形態に係る画像表示装置の構成を模式的に示した図である。同図に示したように、画像表示装置は、複数の画素回路10が行列状に配置された表示パネル1と、制御回路2と、電源線制御回路3と、制御線駆動回路4と、画像信号線駆動回路5とを備えている。
【0012】
表示パネル1の画面水平方向には、VSS線11、VDD線12、センス線13、リセット線15及びセレクト線14が配設されている。また、表示パネル1の画面垂直方向には、画像信号線16が配設されている。ここで、VSS線11及びVDD線12は、電源線制御回路3と電気的に接続されている。また、センス線13、セレクト線14及びリセット線15は、制御線駆動回路4と電気的に接続されている。また、画像信号線16は、画像信号線駆動回路5と電気的に接続されている。
【0013】
制御回路2は、例えば演算回路、論理回路などを内部に含むICやカウンタなどの制御機器を用いて構成することができる。制御回路2は、表示の対象となる画像データを表示パネル1に表示させるための電力を、電源線制御回路3、制御線駆動回路4及び画像信号線駆動回路5から供給するタイミングを制御する。
【0014】
電源線制御回路3は、例えば半導体素子等を内部に含むICなどを用いて構成することができる。電源線制御回路3は、制御回路2から入力される指示信号(クロック信号等)に基づき、自己の内部で生成した電位をVSS線11及びVDD線12の夫々に印加する。
【0015】
制御線駆動回路4は、例えば半導体素子等を内部に含むICなどを用いて構成することができる。制御線駆動回路4は、制御回路2から入力される指示信号(クロック信号等)に基づき、自己の内部で生成した電位をセンス線13、セレクト線14及びリセット線15の夫々に印加する。
【0016】
画像信号線駆動回路5は、例えば演算回路などを内部に含むICなどを用いて構成することができる。画像信号線駆動回路5は、制御回路2から入力される画像信号から、当該画像信号に対応する電圧(以下、画像データ電位と言う)を生成し、制御回路2から入力される指示信号(クロック信号等)に基づいて画像信号線16に供給する。
【0017】
なお、図1の構成において、VSS線11、VDD線12、センス線13、リセット線15、セレクト線14及び画像信号線16、ならびに制御回路2、電源線制御回路3、制御線駆動回路4及び画像信号線駆動回路5に関するレイアウトは、その一例を示すものであり、これに限られるものではない。例えば、図1では、制御回路2、電源線制御回路3、制御線駆動回路4及び画像信号線駆動回路5を表示パネル1の外部に配置しているが、これら回路の何れか又は全てを表示パネル1に内蔵する形態としてもよい。
【0018】
<画像回路の構成>
次に、図1に示した表示パネル1を構成する画素回路10について説明する。図2は、図1に示した画素回路10(1画素)の構成の一例を示した図である。同図に示したように、画素回路10は、第1発光素子である第1有機EL素子OLED1と、第2発光素子である第2有機EL素子OLED2と、第1有機EL素子OLED1及び第2有機EL素子OLED2を駆動するためのドライバ素子である駆動トランジスタTdと、駆動トランジスタTdの閾値電圧を検出する際に用いられる閾値電圧検出素子である閾値電圧検出用トランジスタTthと、画像信号電圧の印加を制御する第1スイッチングトランジスタTselと、第1容量素子として閾値電圧を保持する第1保持容量Cthと、第2容量素子として画像信号電圧を保持する第2保持容量Cdataと、第2有機EL素子OLED2と並列に接続されたスイッチング素子としての第2スイッチングトランジスタTrstと、を備える。なお、第1有機EL素子OLED1及び第2有機EL素子OLED2は、逆電圧印加時にコンデンサとして機能するため、図2ではこれを第1素子容量Coled1、第2素子容量Coled2として等価的に表している。
【0019】
第1有機EL素子OLED1及び第2有機EL素子OLED2は、電流量に応じた輝度で自発光する有機EL素子である。具体的に、第1有機EL素子OLED1及び第2有機EL素子OLED2では、アノード電極とカソード電極との間に導通電圧以上の電位差が生じることにより、アノード電極とカソード電極との間の有機発光層に電流が流れ、該有機発光層に注入された正孔と電子とが再結合することによって光を生じる。
【0020】
ここで、アノード電極としては、例えばインジウム錫酸化膜(ITO)、錫酸化物等の光透過性を有する導電材料を用いることができる。また、アノード電極が、例えばマグネシウム、銀、アルミニウム又はカルシウム等の材料から成る場合、その厚みを100nm以下にすることによって、光透過性の電極とすることができる。また、カソード電極としては、例えばアルミニウム、ロジウム、ネオジム、銀、銅又は金等の金属或いはこれらの合金等を用いることができる。
【0021】
また、有機発光層としては、例えば、Alq3(トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体)等の発光性の材料で構成される。発光効率を高めるために、トリス[ピリジニル−kN−フェニル−kC]イリジウム等の有機金属化合物又クマリン等の色素をドーパント材料として、正孔輸送性又は電子輸送性を有するホスト材料にドープして発光層を構成してもよい。発光層を構成するドーパント材料の濃度は、例えば、0.5質量%以上20質量%以下とする。正孔輸送性を有するホスト材料の例としては、α−NPD、TPD等がある。電子輸送性を有するホスト材料の例としては、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−(フェニルフェノラト)アルミニウム、1,4−フェニレンビス(トリフェニルシラン)、1,3−ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン、1,3,5−トリ(9H−カルバゾール−9−イル)ベンゼン、CBP、Alq3又はSDPVBi等がある。なお、発光層の各層を構成する材料は、発する光の色に応じて、適当な材料が選択される。赤色の光を発するドーパント材料の例としては、トリス(1−フェニルイソキノリナト−C2,N)イリジウム又はDCJTB等がある。緑色の光を発するドーパント材料の例としては、トリス[ピリジニル−kN−フェニル−kC]イリジウム又はビス[2−(2−ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)等がある。青色の光を発するドーパント材料の例としては、ジスチリルアリーレン誘導体、ペリレン誘導体又はアゾメチン亜鉛錯体等がある。
【0022】
第1有機EL素子OLED1が有する2電極のうち、アノード電極はVDD線12と電気的に接続されており、カソード電極は駆動トランジスタTdの第2Td電極t12と電気的に接続されている。また、第2有機EL素子OLED2が有する2電極のうち、アノード電極は駆動トランジスタTdの第3Td電極t13と電気的に接続されており、カソード電極はVSS線11と電気的に接続されている。
【0023】
駆動トランジスタTd、閾値電圧検出用トランジスタTth、第1スイッチングトランジスタTsel及び第2スイッチングトランジスタTrstは、例えば、アモルファスシリコン等で形成される薄膜トランジスタ(TFT)である。なお、各TFTのチャネルは、n型、p型の何れのタイプを用いてもよいが、本実施形態ではn型を用いるものとする。
【0024】
駆動トランジスタTdは、第1Td電極t11、第2Td電極t12及び第3Td電極t13を有している。第1Td電極t11は、第1保持容量Cthの第2Cth電極t52と電気的に接続されている。また、第2Td電極t12は、第1有機EL素子OLED1のカソード電極と電気的に接続されており、第3Td電極t13は、第2有機EL素子OLED2のアノード電極と電気的に接続されている。
【0025】
ここで、第1Td電極t11はゲート電極(ゲート)に対応し、第2Td電極t12及び第3Td電極t13のうち何れか一方がドレイン電極(ドレイン)に、他方がソース電極(ソース)に対応する。なお、本実施形態で使用するn型のトランジスタにおいては、第2Td電極t12及び第3Td電極t13のうち、高電位側の電極が「ドレイン」となり、低電位側の電極が「ソース」となる。そのため、ドレイン及びソースは、第2Td電極t12及び第3Td電極t13に印加される相対的な電位関係により定義される。
【0026】
駆動トランジスタTdは、第1Td電極t11に印加される電位、より詳細にはソースに対してゲートに印加される電圧値(ゲート・ソース間電圧)に応じて、ソースとドレインとの間に流れる電流量を調整し、電流が流れ得る状態(オン状態)と、電流が流れ得ない状態(オフ状態)とを選択的に設定する。
【0027】
閾値電圧検出用トランジスタTthは、第1Tth電極t21、第2Tth電極t22及び第3Tth電極t23を有している。第1Tth電極t21は、センス線13と電気的に接続されている。第2Tth電極t22は、駆動トランジスタTdの第2Td電極t12と第1有機EL素子OLED1のカソード電極とを電気的に接続する配線に対して導電可能に接続されている。また、第3Tth電極t23は、駆動トランジスタTdの第1Td電極t11と、第1保持容量Cthの第2Cth電極t52とを電気的に接続する配線に対して導電可能に接続されている。
【0028】
ここで、第1Tth電極t21がゲートに対応し、第2Tth電極t22及び第3Tth電極t23の何れか一方がソースに、他方がドレインに対応する。なお、本実施形態で使用するn型のトランジスタにおいては、高電位側の電極が「ドレイン」となり、低電位側の電極が「ソース」となる。そのため、ドレイン及びソースは、第2Tth電極t22及び第3Tth電極t23に印加される相対的な電位関係により定義される。
【0029】
閾値電圧検出用トランジスタTthは、第1Tth電極t21に印加される電位、より詳細にはソースに対してゲートに印加される電圧値(ゲート・ソース間電圧)に応じて、ソースとドレインとの間に流れる電流量を調整し、電流が流れ得る状態(オン状態)と、電流が流れ得ない状態(オフ状態)とを選択的に設定する。
【0030】
第1スイッチングトランジスタTselは、第1Tsel電極t31、第2Tsel電極t32及び第3Tsel電極t33を有している。ここで、第1Tsel電極t31は、セレクト線14と電気的に接続されている。また、第2Tsel電極t32は、画像信号線16と電気的に接続されている。また、第3Tsel電極t33は、第1保持容量Cthの第1Cth電極t51と電気的に接続されている。なお、本実施形態では、第1Tsel電極t31がゲートに対応し、第2Tsel電極t32がドレインに、第3Tsel電極t33がソースに対応する。
【0031】
第2スイッチングトランジスタTrstは、第1Trst電極t41、第2Trst電極t42及び第3Trst電極t43を有している。ここで、第1Trst電極t41は、リセット線15と電気的に接続されている。また、第2Trst電極t42は、VSS線11と電気的に接続されている。また、第3Trst電極t43は、第2有機EL素子OLED2のアノード電極と電気的に接続されている。
【0032】
ここで、第1Trst電極t41はゲートに対応し、第2Trst電極t42及び第3Trst電極t43のうち何れか一方がドレインに、他方がソースに対応する。なお、本実施形態で使用するn型のトランジスタにおいては、第2Td電極t12及び第3Td電極t13のうち、高電位側の電極が「ドレイン」となり、低電位側の電極が「ソース」となる。そのため、ドレイン及びソースは、第2Td電極t12及び第3Td電極t13に印加される相対的な電位関係により定義される。
【0033】
第1保持容量Cthは、駆動トランジスタTdの閾値電圧Vthを保持するための容量素子であって、後述するVth検出期間時に駆動トランジスタTdの閾値電圧Vthに対応する電荷量を保持する機能を有している。また、第1保持容量Cthは、第1Cth電極t51及び第2Cth電極t52を有している。ここで、第1Cth電極t51は、第1スイッチングトランジスタTselの第3Tsel電極t33と電気的に接続されており、第2Cth電極t52は、駆動トランジスタTdの第1Td電極t11と電気的に接続されている。
【0034】
第2保持容量Cdataは、画像信号電圧に応じた電荷量を保持するための容量素子であって、後述する書き込み期間時に、画像信号電圧に応じた電荷量を保持する機能を有している。また、第2保持容量Cdataは、第1Cdata電極t61及び第2Cdata電極t62を有している。ここで、第1Cdata電極t61は、第1スイッチングトランジスタTselの第3Tsel電極t33と、第1保持容量Cthの第1Cth電極t51とを電気的に接続する配線に対して導電可能に接続されている。また、第2Cdata電極t62は、駆動トランジスタTdの第3Td電極t13と、第2有機EL素子OLED2のアノード電極とを電気的に接続する配線に対して導電可能に接続されている。
【0035】
<画素回路の動作>
次に、図3〜図10を参照して、上述した画素回路10の動作について説明する。なお、以下に説明する画素回路10の動作は、図1に示した制御手段(制御回路2、電源線制御回路3、制御線駆動回路4及び画像信号線駆動回路5)の制御により実現されるものである。また、図4〜図10に示した画素回路10、電流が流れない部位を破線で示している。
【0036】
図3は、画素回路10の駆動方法を説明するためのタイミングチャートであって、第1有機EL素子OLED1及び第2有機EL素子OLED2を順次発光方式で発光させる際の信号波形(駆動波形)を示している。ここで、順次発光方式とは、各画素回路に対するフレーム毎の画像信号電圧の書き込み制御及び各画素回路の発光制御を、同一の制御線又は電源線に共通に接続された画素回路のグループ毎(例えば一行毎、一列毎等)に順次行う方式である。
【0037】
図3において、縦軸は、各制御線に印可される電位示しており、上から順に、VSS線11、VDD線12、センス線13、リセット線15、セレクト線14、画像信号線16となっている。また、横軸は時間経過を示している。以下に説明するシーケンスでは、発光停止期間、Vth検出準備期間、Vth検出期間、リセット期間、書き込み期間及び発光期間の6つの制御期間を1サイクルとしており、この1サイクルの制御により第1有機EL素子OLED1及び第2有機EL素子OLED2が1回発光される。
【0038】
なお、順次発光方式では、制御の単位となるグループ毎のサイクルが時間的にずれた状態で制御されるが、1サイクルの期間中における各画素回路群の動作はグループ毎に同一である。したがって、以下の説明では、特定のグループの画素回路に着目しその動作を説明する。また、VDD線12については、1サイクル中常にゼロ電位(0V)とされるため説明を省略する。
【0039】
(発光停止期間)
図4は、発光停止期間における画素回路10の動作状態を示した図である。発光停止期間では、図3に示したように、センス線13が低電位(VgL)、リセット線15が低電位(VgL)、セレクト線14が低電位(VgL)及び画像信号線16がゼロ電位(0V)とされる一方、VSS線11が、後述する発光期間時の低電位(−Vp)からゼロ電位(0V)とされる。
【0040】
この制御により、VSS線11及びVDD線12が同電位となり、第1有機EL素子OLED1及び第2有機EL素子OLED2に流れる電流が停止するため、第1有機EL素子OLED1及び第2有機EL素子OLED2が消灯する。
【0041】
なお、発光停止期間終了時において、駆動トランジスタTdと第1保持容量Cthとの間の電位、即ち駆動トランジスタTdのゲート電位はβVg’であるものとする。ここで、βVg’は、前フレームの発光期間の終了時(本フレームの発光停止期間の開始時)に、第1保持容量Cthの第2Cth電極t52と、駆動トランジスタTdの第1Td電極t11との間に残留している電位(駆動トランジスタTdのゲート電位)である。また、駆動トランジスタTdと第1有機EL素子OLED1(第1素子容量Coled1)との間の電位は、Vdataの値に応じて第1有機EL素子OLED1による電圧降下が生じ、負の電位“−Voled”となる。
【0042】
(Vth検出準備期間)
図5及び図6は、Vth検出準備期間時における画素回路10の動作状態を示した図である。Vth検出準備期間では、図3に示したように、セレクト線14の低電位(VgL)及び画像信号線16のゼロ電位(0V)が維持された状態で、まずリセット線15が高電位(VgH)とされ、さらに所定時間の経過後にVSS線11が高電位(Vp)とされる。
【0043】
この制御により、VSS線11→第2保持容量Cdataという経路で電流が流れる。これにより、第2保持容量Cdataの第2Cdata電極t62側の電位がVpとなる。また、この電位分の容量カップリングによる突き上げが第1保持容量Cthに発生することで、第2Cth電極t52と駆動トランジスタTdの第1Td電極t11との間の電位が上昇し、結果として駆動トランジスタTdがオン状態になる。そのため、第3Td電極t13(ソース)から第2Td電極t12(ドレイン)へ電流が流れ、第2Td電極t12と第1素子容量Coled1の電位もVpとなる。
【0044】
このとき、第1保持容量Cthと駆動トランジスタTdとの間の電位、即ち駆動トランジスタTdのゲート電位は以下のように導出される。
【0045】
第1保持容量Cthの第2Cth電極t52と駆動トランジスタTdの第1Td電極t11との間の電位、即ち駆動トランジスタゲート電位は、第2保持容量Cdataの第2Cdata電極t62及び駆動トランジスタTdの第3Td電極t13が、0Vから−Vpへと変化する間保持されている。よって電荷保存の法則が成り立ち、0Vの状態及び−Vpの状態の駆動トランジスタゲート電位Vgを、夫々βVg’、Vg_pとすると、下記式(1)にように表される。
【0046】
(βVg’−0)×{CgsTdoff+Cth×Cdata/(Cdata+Cth)}
+(βVg’−0)×Coled1×CgdTdoff/(Coled1+CgdTdoff
+(βVg’−VgL)×CgsTthoff
=(Vg_p−Vp)×{CgsTdoff+Cth×Cdata/(Cdata+Cth)}
+(Vg_p−0)×Coled1×CgdTdoff/(Coled1+CgdTdoff
+(βVg’−VgL)×CgsTthoff (1)
【0047】
これより、容量カップリングによる突き上げ後の駆動トランジスタゲート電位は下記式(2)にて表される。なお、下記式(2)の右辺第1項が、VSS線11が0VからVpへと変化した際に生じる容量カップリングによって生じる突き上げ電圧である。
【0048】
g_p=[−{CgsTdoff+Cth×Cdata/(Cdata+Cth)}/[{CgsTdoff+Cth×Cdata/(Cdata+Cth)}+Coled1×CgdTdoff/(Coled1+CgdTdoff)]]×Vp+βVg’ (2)
【0049】
なお、上記式(1)及び(2)のうち、“CgsTdoff”は、駆動トランジスタTdがオフ時における、第1Td電極t11(ゲート)−第3Td電極t13(ソース)間の寄生容量である。“CgdTdoff”は、駆動トランジスタTdがオフ時における第1Td電極t11(ゲート)−第2Td電極t12(ドレイン)間の寄生容量である。“CgsTthoff”は、閾値電圧検出用トランジスタTthの、第1Tth電極t21(ゲート)−第3Tth電極t23(ソース)間の寄生容量である。
【0050】
また、上記式(1)及び(2)において、“Cth”は第1保持容量Cthの電気容量を意味し、“Cdata”は第2保持容量Cdataの電気容量を意味し、“Coled1”は第1素子容量Coled1の電気容量を意味する。
【0051】
図3に戻り、Vth検出準備期間では、VSS線11が高電位(Vp)とされた後、さらにセンス線13が高電位(VgH)とされる。この制御により、閾値電圧検出用トランジスタTthがオンとなり、図6に示したように、VSS線11→第2スイッチングトランジスタTrst→駆動トランジスタTd→閾値電圧検出用トランジスタTthという経路で電流が流れる。これにより、第1保持容量Cthと駆動トランジスタTdとの間の電位がVpとなる。
【0052】
(Vth検出期間)
図7は、Vth検出期間時における画素回路10の動作状態を示した図である。Vth検出期間では、図3に示したように、VSS線11がゼロ電位(0V)とされる一方で、センス線13、リセット線15、セレクト線14及び画像信号線16が従前の電位で維持される。
【0053】
この制御により、図7に示すように、第1保持容量Cthに蓄積された電荷が放電され、閾値電圧検出用トランジスタTth→駆動トランジスタTd→第2スイッチングトランジスタTrst→VSS線11という経路で電流が流れる。そして、駆動トランジスタTdの第1Td電極t11−第2Td電極t12間の電位差が駆動トランジスタTdの閾値電圧Vthに到達し、第2Td電極t12と第3Td電極t13とが接続された状態で保持される。このように、Vth検出期間では、駆動トランジスタTdの閾値電圧Vthに応じた電荷が第1保持容量Cthに蓄積されることで、画素回路毎に異なる閾値電圧Vthのばらつきを補償することができる。
【0054】
(リセット期間)
図8は、リセット期間時における画素回路10の動作状態を示した図である。リセット期間では、図3に示したように、センス線13が低電位(VgL)とされる一方で、VSS線11、リセット線15、セレクト線14及び画像信号線16が従前の電位で維持される。
【0055】
この制御により、図8に示すように、閾値電圧検出用トランジスタTthはオフ状態となる。その結果、第1素子容量Coled1に蓄積された閾値電圧Vth分の電荷が放電され、駆動トランジスタTd→第2スイッチングトランジスタTrst→VSS線11という経路で電流が流れ、第1素子容量Coled1に残存する電荷が放電される。これにより、第1有機EL素子OLED1自身の残存電荷による発光への影響が回避される。
【0056】
(書き込み期間)
図9は、書き込み期間時における画素回路10の動作状態を示した図である。書き込み期間では、図3に示したように、VSS線11のゼロ電位(0V)、センス線13の低電位(VgL)、リセット線15の高電位(VgH)及びセレクト線14の低電位(VgL)が維持される一方で、画像信号線16に画像信号に応じた所定のレベルの画像信号電圧(Vdata)が所定の期間供給される。また、セレクト線14は、画像信号電圧の供給が行われている間、所定の期間だけ高電位(VgH)とされる。
【0057】
この制御により、図9に示すように、第1スイッチングトランジスタTselがオンとなり、画像信号線16→第1スイッチングトランジスタTsel→第2保持容量Cdata→第2スイッチングトランジスタTrst→VSS線11という経路で電流が流れる。その結果、第2保持容量Cdataに画像信号電圧に応じた電荷が保持される。また、第2保持容量Cdataが保持する画像信号電圧(Vdata)の突き上げにより、第1保持容量Cthと駆動トランジスタTdとの間の電位がβVgに上昇する。
【0058】
ここで、電位βVgは、下記式(3)で表される。
βVg={(Cth+CgsTdoff+CgsTthoff)/(Cth+CgsTdon+CgdTdon+CgsTthoff)}×Vth+{Cth/(Cth+CgsTdon+CgdTdon+CgsTthoff)}×Vdata (3)
【0059】
なお、上記式(3)のうち、“CgsTdon”は、駆動トランジスタTdがオン時における、第1Td電極t11(ゲート)−第3Td電極t13(ソース)間の寄生容量である。“CgdTdon”は、駆動トランジスタTdがオン時における第1Td電極t11(ゲート)−第2Td電極t12(ドレイン)間の寄生容量である。
【0060】
(発光期間)
図10は、発光期間時における画素回路10の動作状態を示した図である。発光期間では、図3に示したように、VSS線11が低電位(−Vp)、リセット線15が低電位(VgL)とされる一方で、センス線13及びセレクト線14の低電位(VgL)、画像信号線16のゼロ電位(0V)が維持される。
【0061】
この制御により、第1有機EL素子OLED1及び第2有機EL素子OLED2は、駆動トランジスタTdを介して直列に接続される。また、第1保持容量Cthと第2保持容量Cdataとが直列に接続され、両者の電圧の和が駆動トランジスタTdの第1Td電極t11(ゲート)に印加され、図10に示したように、駆動トランジスタTdがオンとなる。これにより、VDD線12→第1有機EL素子OLED1→駆動トランジスタTd→第2有機EL素子OLED2→VSS線11という経路で電流が流れ、第1有機EL素子OLED1及び第2有機EL素子OLED2が発光する。
【0062】
このとき、駆動トランジスタTdの第3Td電極t13(ソース)の電位は、第2有機EL素子OLED2のアノード電位と同値となるため、書き込み期間の電位から変動することになる。しかし、駆動トランジスタTdのゲートは、第1保持容量Cth及び第2保持容量Cdataを介して第2有機EL素子OLED2のアノード電極と接続されているため、駆動トランジスタTdのゲート電位は、第2有機EL素子OLED2のアノード電極の電位の変動に追従して変動する。従って、駆動トランジスタTdのゲート電位は書き込み時間での値、即ち、βVgを維持することになる。
【0063】
<画素回路の特徴>
上述したように、本実施形態の画素回路10では、発光期間時において、直列接続された第1有機EL素子OLED1及び第2有機EL素子OLED2が同時に発光するよう構成されているため、一の有機EL素子のみを発光させる構成と比較して、電流に対する光度を約2倍とすることが可能である。
【0064】
また、有機EL素子自体の寿命は、当該有機EL素子に流れる電流密度と依存関係にあることが分っている。具体的には、有機EL素子に流れる電流密度が大きいほど有機発光層の劣化が速く進むため、当該有機EL素子に供給される電流密度を小さくすることで長寿命化を図ることが可能である。この点に関し、本実施形態の画素回路10では、発光期間時の目標となる所定の輝度(以下、目標輝度という)を、直列接続された2つの有機EL素子を用いて実現することが可能であるため、一の有機EL素子のみで目標輝度を実現する構成と比較して、約半分の電流密度を供給することで、目標となる所定の光度を実現することができる。つまり、単位画素当たりの電流量を低減することができるため、有機EL素子の長寿命化を図ることが可能である。なお、この場合、一の有機EL素子のみを発光させる構成と比較して、電源電圧が2倍必要となるが、電源線の抵抗による電圧降下が1/2となるため、結果として輝度への影響を低減することができる。
【0065】
<画素回路の構成>
以下、上述した画素回路10の具体的な構成例について説明する。図11は、図2に示した画素回路10の平面図であり、図12は、図11に示した画素回路のA−A断面図、図13は、図11に示した画素回路のB−B断面図である。また、図14は、画素回路に設けられるインシュレータ(絶縁層及び隔壁)の平面図であり、図15は、画素回路10を行列状に配置した際の平面図である。
【0066】
なお、図11では、後述する第2絶縁層132、当該第2絶縁層132の上部に存在するVSS線11、VDD線12、第1有機EL素子OLED1及び第2有機EL素子OLED2の図示を省略している。また、以下に説明する画素回路10は、基板側から光を取り出す構造ではなく、上面側(有機EL素子側)から光を取り出すトップエミッション型構造を採用している。
【0067】
図11、図12及び図13に示すように、画素回路10は、基板100の上部に、駆動トランジスタTd、閾値電圧検出用トランジスタTth、第1スイッチングトランジスタTsel、第2スイッチングトランジスタTrst、第1保持容量Cth及び第2保持容量Cdataを備えている。ここで、基板100は、ガラスやプラスチック等の材料で構成される。
【0068】
駆動トランジスタTdは、第1ゲート層101と、第1アモルファスシリコン層111と、第1信号線121及び第2信号線122との重畳部分に形成されている。ここで、第1ゲート層101部分が第1Td電極t11に対応し、第1信号線121部分が第2Td電極t12に対応し、第2信号線122部分が第3Td電極t13に対応する。
【0069】
閾値電圧検出用トランジスタTthは、センス線13と共通に設けられた第2ゲート層102と、第2アモルファスシリコン層112と、第1信号線121及び第3信号線123との重畳部分に形成されている。ここで、第2ゲート層102部分が第1Tth電極t21に対応し、第1信号線121部分が第2Tth電極t22に対応し、第3信号線123部分が第3Tth電極t23に対応している。なお、第3信号線123と第1ゲート層101とは、後述する第1絶縁層131に設けられた穴部H1を介して接続されている。
【0070】
第1スイッチングトランジスタTselは、セレクト線14と共通に設けられた第3ゲート層103と、第3アモルファスシリコン層113と、第4信号線124及び画像信号線16と共通に設けられた第5信号線125との重畳部分に形成されている。ここで、第3ゲート層103部分が第1Tsel電極t31に対応し、第4信号線124部分が第3Tsel電極t33に対応し、第5信号線125部分が第2Tsel電極t32に対応している。
【0071】
第2スイッチングトランジスタTrstは、リセット線15と共通に設けられた第4ゲート層104と、第4アモルファスシリコン層114と、第2信号線122及び第6信号線126との重畳部分に形成されている。ここで、第4ゲート層104部分が第1Trst電極t41に対応し、第6信号線126部分が第2Trst電極t42に対応し、第2信号線122部分が第3Trst電極t43に対応している。
【0072】
第1保持容量Cthは、第1ゲート層101と第4信号線124との重畳部分に形成されている。ここで、第4信号線124部分が第1Cth電極t51に対応し、第1ゲート層101部分が第2Cth電極t52に対応している。
【0073】
第2保持容量Cdataは、第5ゲート層105と第2信号線122との重畳部分に形成されている。ここで、第2信号線122部分が第2Cdata電極t62に対応し、第5ゲート層105部分が第1Cdata電極t61に対応している。なお、第5ゲート層105と第4信号線124とは、後述する第1絶縁層131に設けられた穴部H2を介して接続されている。
【0074】
上述した第1ゲート層101、第2ゲート層102、第3ゲート層103、第4ゲート層104、第5ゲート層105、第1信号線121、第2信号線122、第3信号線123、第4信号線124、第5信号線125及び第6信号線126を形成する素材としては、例えば、アルミニウム合金又はモリブデン合金が用いられる。
【0075】
また、画素回路10は、図12及び図13に示すように、さらに第1絶縁層131と、第2絶縁層132と、平坦化層133と、第1電極層134と、層間絶縁層135と、隔壁層136と、有機発光層137と、第2電極層138とを有している。
【0076】
第1絶縁層131は、基板100又はゲート層(第1ゲート層101、第2ゲート層102、第3ゲート層103、第4ゲート層104及び第5ゲート層105)上に形成されている。ここで、第1絶縁層131には、第1ゲート層101と第3信号線123とを接続するための穴部H1と、第5ゲート層105と第4信号線124とを接続するための穴部H2(図11参照)とが形成されている。
【0077】
また、上述した各トランジスタ及び保持容量の上部には第2絶縁層132が形成されている。また、第2絶縁層132には、第1信号線121と第1電極層134(第1接続層1342)とを接続するための穴部H3と、第2信号線122と第1電極層134(第2有機EL素子アノード層1343)とを接続するための穴部H4と、第6信号線126と第1電極層134(第2接続層1344)とを接続するための穴部H5とが形成されている。なお、第1絶縁層131及び第2絶縁層132は、窒化珪素、酸化珪素又は酸化窒化珪素等の絶縁材料を用いて形成されている。
【0078】
第2絶縁層132の上部には、各トランジスタ及び各容量素子に起因する表面の凹凸を低減するための平坦化層133が形成されている。この平坦化層133には、例えば、ノボラック樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂又はシリコン樹脂等の絶縁性を有した有機材料を用いることができる。なお、平坦化層133にも第2絶縁層132と同様、上述した穴部H3〜H5が形成されている。
【0079】
第1電極層134は、平坦化層133の上部に形成されており、図14に示す層間絶縁層135により、第1有機EL素子アノード層1341、第1接続層1342、第2有機EL素子アノード層1343(穴部H4による接続層を含む)及び第2接続層1344(穴部H5及び第2有機EL素子カソード層1382に接続される)の4つの部位に区分けされている。また、層間絶縁層135の上部には隔壁層136が形成されている。
【0080】
図14に示すように、層間絶縁層135は、矩形状の穴部H6及びH7を保持するよう形成されている。また、隔壁層136は、穴部H6を囲うように形成されている。穴部H6及びH7は、第1有機EL素子OLED1及び第2有機EL素子OLED2が形成される領域であって、第1有機EL素子OLED1及び第2有機EL素子OLED2の開口部に相当する。また、波線で示すH3〜H5は、上述した穴部H3〜H5の位置に夫々対応する。
【0081】
第1有機EL素子アノード層1341は、第1有機EL素子OLED1のアノード層に対応し、画素回路10において共通電極VDD線層を形成する。なお、VDD線層はVDD線12に対応する。第1接続層1342は、穴部H3を介して第1信号線121と後述する第1有機EL素子カソード層1381とを電気的に接続している。第2有機EL素子アノード層1343は第2有機EL素子OLED2のアノード層に対応し、穴部H4を介して第2信号線122と電気的に接続されている。また、第2接続層1344は穴部H5を介して第6信号線126と後述する第2有機EL素子カソード層1382とを電気的に接続する。
【0082】
なお、第1電極層134は、例えば、アルミニウム、ロジウム、ネオジム、銀、銅又は金等の金属或いはこれらの合金等を用いて形成されている。また、層間絶縁層135は、フェノール樹脂、アクリル樹脂又はポリイミド樹脂等の光透過性の有機絶縁材料、あるいは窒化珪素、酸化珪素又は酸化窒化珪素等の光透過性の無機絶縁材料を用いて形成されている。また、隔壁層136は、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂又はノボラック樹脂等の光透過性を有した有機材料を用いて形成されている。
【0083】
有機発光層137は、穴部H6及びH7部分に形成されている。具体的に、第1有機EL素子アノード層1341の上部で且つ層間絶縁層135の穴部H6に、第1有機EL素子OLED1の発光層となる第1有機発光層1371が形成されている。また、第2有機EL素子アノード層1343の上部で且つ層間絶縁層135の穴部H7に、第2有機EL素子OLED2の発光層となる第2有機発光層1372が形成されている。
【0084】
そして、最上層には、VSS線11となる第2電極層138が形成されている。ここで、第2電極層138は、隔壁層136により、第1有機EL素子カソード層1381、第2有機EL素子カソード層1382の2つの部位に区分けされている。ここで、第1有機EL素子カソード層1381が、第1有機EL素子OLED1のカソード層に対応する。また、第2有機EL素子カソード層1382が、第2有機EL素子OLED2のカソード層に対応し、画素回路10において共通電極VSS線層を形成する。なお、VSS線層はVSS線11に対応する。また、第2有機EL素子カソード層1382は第2スイッチングトランジスタTrstの第2Trst電極t42に対応する。なお、第2電極層138は、インジウム錫酸化膜(ITO)、錫酸化物等の光透過性を有する導電材料により形成されている。また、第2電極層138は、例えばマグネシウム、銀、アルミニウム又はカルシウム等の材料から成る場合、その厚みを100nm以下にすることによって、光透過性の電極とすることができる。
【0085】
上記構成の画素回路10は、図15に示すように、行列状に配列されることで、表示パネル1が構成される。なお、図15では、一の画素回路10が占める範囲を破線で示している。
【0086】
次に、上述した発光期間時における電流の流れを、図16及び図17を用いて説明する。ここで、図16は、図11に示した画素回路10のA−A断面における発光期間時の電流の流れを示した図である。また、図17は、図11に示した画素回路10のB−B断面における発光期間時の電流の流れを示した図である。
【0087】
上述したように、発光期間時ではVDD線12がゼロ電位(0V)、VSS線11が低電位(−Vp)に制御されるため、VDD線12からVSS線11に向けて電流が流れる(図16のD1及びD2参照)。このとき、第1有機EL素子アノード層1341から、第1有機発光層1371を介して第1有機EL素子カソード層1381に電流が流れることで、第1有機EL素子OLED1が発光し図面上方向に光が照射される。
【0088】
また、第1有機EL素子カソード層1381から第1信号線121に電流が流れ(図16のD3参照)、駆動トランジスタTd及び第1保持容量Cthの第1信号線121を通じて、第2信号線122に到達する(図16のD4、図17のD5参照)。次いで、この第2信号線122から穴部H4を介して第2有機EL素子アノード層1343に電流が流れ(図17のD6参照)、第2有機発光層1372を介して第2有機EL素子カソード層1382に電流が流れることで(図17のD7参照)、第2有機EL素子OLED2が発光し、図面上方向に光が照射される。
【0089】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲での種々の変更、置換、追加等が可能である。上述した実施形態においては、トップエミッションの画像表示装置について説明したが、本発明の作用効果を奏するのであれば、ボトムエミッションの画像表示装置であっても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0090】
以上のように、本発明に係る画像表示装置は、有機ELディスプレイ装置等の画像表示装置に有用であり、特に、表示パネルを構成する各画素回路が二つの有機EL素子を備える場合に有用である。
【符号の説明】
【0091】
1 表示パネル
2 制御回路
3 電源線制御回路
4 制御線駆動回路
5 画像信号線駆動回路
10 画素回路
11 VSS
12 VDD
13 センス線
14 セレクト線
15 リセット線
16 画像信号線
100 基板
101 第1ゲート層
102 第2ゲート層
103 第3ゲート層
104 第4ゲート層
105 第5ゲート層
111 第1アモルファスシリコン層
112 第2アモルファスシリコン層
113 第3アモルファスシリコン層
114 第4アモルファスシリコン層
121 第1信号線
122 第2信号線
123 第3信号線
124 第4信号線
125 第5信号線
126 第6信号線
131 第1絶縁層
132 第2絶縁層
133 平坦化層
134 第1電極層
1341 第1有機EL素子アノード層
1342 第1接続層
1343 第2有機EL素子アノード層
1344 第2接続層
135 層間絶縁層
136 隔壁層
137 有機発光層
1371 第1有機発光層
1372 第2有機発光層
138 第2電極層
1381 第1有機EL素子カソード層
1382 第2有機EL素子カソード層
oled1 第1素子容量
oled2 第2素子容量
th 第1保持容量
data 第2保持容量
OLED1 第1有機EL素子
OLED2 第2有機EL素子
d 駆動トランジスタ
th 閾値電圧検出用トランジスタ
sel 第1スイッチングトランジスタ
rst 第2スイッチングトランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1発光素子及び第2発光素子と、
前記第1発光素子と前記第2発光素子との間に形成され、前記第1発光素子から前記第2発光素子に流入される電流を調整するドライバ素子と、
前記ドライバ素子の閾値電圧に応じた電荷を保持する第1容量素子と、
前記第2発光素子の両端への接続をオン状態又はオフ状態により切り替えるスイッチング素子と、
を備え、
前記スイッチング素子がオフ状態のときに、前記第1発光素子から流出された電流が前記第2発光素子に流入され、前記スイッチング素子がオン状態のときに、前記第1容量素子に保持された電荷が前記ドライバ素子を介して当該スイッチング素子に流入されることを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像表示装置において、
前記ドライバ素子は、前記第1容量素子と接続されたゲートに対応する第1電極と、何れか一方がドレインに対応し他方がソースに対応する第2電極及び第3電極とを有し、前記第2電極が前記第1発光素子のカソードに接続されるとともに、前記第3電極が前記第2発光素子のアノードに接続され、前記第1端子と前記第2端子との電位差に応じて前記第2端子と前記第3端子との間に流れる電流を調整することを特徴とする画像表示装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像表示装置において、
前記閾値電圧を検出する閾値電圧検出素子を更に備え、
前記閾値電圧検出素子は、前記第1容量素子に蓄積される電荷を利用して、前記閾値電圧を検出することを特徴とする画像表示装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の画像表示装置において、
前記スイッチング素子は、前記第1発光素子及び前記第2発光素子の発光時にオフ状態とされ、
前記第1発光素子及び前記第2発光素子は、前記発光時に前記ドライバ素子を介して接続されることを特徴とする画像表示装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の画像表示装置において、
前記第1発光素子及び前記第2発光素子の発光輝度に対応する画像信号電圧を保持する第2容量素子を更に備え、
前記第1容量素子及び前記第2容量素子は、前記発光時に前記ドライバ素子に対して直列に接続されることを特徴とする画像表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2010−237262(P2010−237262A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82190(P2009−82190)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】