画像表示装置
【課題】ユーザが画像表示装置に向かって移動しているときには、表示画像のみならず、画像表示装置が表示した画像であることをユーザに認識させることができる画像をも表示する。
【解決手段】画像表示装置100は、バックライト110と対象画像表示部118の間に輝度画像表示部112を備え、輝度画像表示部は、予め定められた時間範囲における輝度ブロックごとの透過率の平均値がすべての輝度ブロックにおいて略等しくなるように、複数の輝度画像を分割領域ごとに分割した分割画像を、所定の順番かつ時分割でそれぞれ等しい時間、分割領域に表示し、かつ、基準となる分割領域である基準領域を基準として、水平方向の予め定められた基準領域に離隔するに従って、または、基準領域に向かうに従って、分割画像を順次所定時間遅延させて表示する。
【解決手段】画像表示装置100は、バックライト110と対象画像表示部118の間に輝度画像表示部112を備え、輝度画像表示部は、予め定められた時間範囲における輝度ブロックごとの透過率の平均値がすべての輝度ブロックにおいて略等しくなるように、複数の輝度画像を分割領域ごとに分割した分割画像を、所定の順番かつ時分割でそれぞれ等しい時間、分割領域に表示し、かつ、基準となる分割領域である基準領域を基準として、水平方向の予め定められた基準領域に離隔するに従って、または、基準領域に向かうに従って、分割画像を順次所定時間遅延させて表示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を表示する画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、多種類の静止画を切り換えて表示したり、動画を表示したりする画像表示装置を商業宣伝用の看板として利用したものを散見するようになった。このような画像表示装置は、静止画の表示の切り換えを容易に行うことができるため、画像表示装置を看板として採用すると、画像の張り替えの手間を省くことができ、広告としての様々な画像を簡単に交換することが可能となる。また、画像表示装置に動画を表示させる場合、画像をダイナミックに変化させることが可能となるため、画像表示装置を看板として採用すると、広告としての画像をユーザ(観察者)に注目させたり、静止画と比較して伝達する情報量を増加させたりすることができる。
【0003】
一方、近年では、ディスプレイ上に、視差を有する2以上の画像を表示し、ユーザに対してあたかもオブジェクトが立体的に存在するように知覚させる立体画像表示装置が脚光を浴びている。このような画像表示を実現するための技術のうち、偏光眼鏡や電子シャッタ眼鏡等の特殊な眼鏡を使用せずとも立体画像を知覚させる方式(以下、単に裸眼立体視方式と称する)として、パララックスバリア方式、レンチキュラ方式等の様々な方式が知られている。
【0004】
このような裸眼立体視方式の画像表示装置を看板として採用すると、誰にでも立体画像を知覚させることができ、広告としての機能をより効果的に発揮できると考えられる。
【0005】
裸眼立体視方式の画像表示装置を看板として利用した例として、例えば、画像表示装置の前面に液晶パララックスバリアを設け、距離センサーを利用して対象者の位置を検知し、検知した対象者の位置に応じて液晶パララックスバリアへ印加する電圧を制御することで、対象者が画像表示装置を基準とした所定範囲外にいる場合には、2次元画像の知覚を目的とした画像(以下、単に2次元画像と称する)を表示し、対象者が画像表示装置を基準とした所定範囲内にいる場合には、立体画像を知覚させるための画像(以下、単に3次元画像と称する)を表示する技術が提案されている(例えば、特許文献1)。このような切り換えにより広告効果を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−294861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、裸眼立体視方式の画像表示装置を、家庭内のテレビジョン受像機として利用したり、映画館で利用する場合、ユーザは、画像表示装置が表示する画像が3次元画像であることを予め認識しているため、自身が知覚する立体画像が、画像表示装置によって形成されたものであることを把握することができる。
【0008】
しかし、裸眼立体視方式の画像表示装置を看板として採用する場合、ユーザは、自身が知覚している立体画像が、画像表示装置によって表示された3次元画像に基づくものであるか、実際の対象物を視認したものであるかを容易に把握できないことがある。この場合、ユーザが、画像表示装置によって表示された3次元画像を実際の対象物と勘違いしてしまうおそれがある。例えば、ユーザが、3次元画像を実際の対象物と勘違いし、その3次元画像との衝突を避けようとしたり、その3次元画像に触れようとしたりして、無駄な行動をとってしまうこともある。
【0009】
そこで、本発明は、このような課題に鑑み、ユーザが停止しているときは、ユーザに伝達すべき表示画像のみを知覚させることができ、ユーザが画像表示装置に向かって移動しているときには、表示画像のみならず、画像表示装置が表示した画像であることをユーザに認識させることが可能な画像をも表示する画像表示装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の画像表示装置は、ユーザが視認する対象となる画像である対象画像を表示する透過型の対象画像表示部と、対象画像表示部の前方に配置され、対象画像表示部を構成する表示画素を1または複数含む視認領域に対応した開口部を複数配列した視差分割部と、対象画像表示部の後方に配置されたバックライトと、対象画像表示部とバックライトとの間に配置され、対象画像表示部の予め定められた領域である輝度ブロックごとにバックライトから照射される光の透過率を変更することで、輝度で表される画像である輝度画像を表示する輝度画像表示部と、輝度画像表示部と対象画像表示部との間に配置され、バックライトから照射され、輝度画像表示部を通過した光を、対象画像表示部の視認領域に集光する集光部とを備え、輝度画像表示部は、予め定められた時間範囲における輝度ブロックごとの透過率の平均値がすべての輝度ブロックにおいて略等しくなるように、予め定められた複数の輝度画像を、輝度画像表示部の予め定められた領域である分割領域ごとに分割した分割画像を、所定の順番かつ時分割でそれぞれ等しい時間、分割領域に表示し、かつ、基準となる分割領域である基準領域を基準として、水平方向の予め定められた、基準領域に離隔するに従って、または、基準領域に向かうに従って、分割画像を順次所定時間遅延させて表示し、任意の時刻に、任意の視認角度で、隣接する複数の開口部を通じて、複数の輝度画像のうち1の輝度画像の少なくとも一部が見えるように、分割画像を表示することを特徴とする。
【0011】
バックライトおよび輝度画像表示部は、1の自発光の表示装置で構成されてもよい。
【0012】
上記画像表示装置は、集光部と対象画像表示部との間に、屈折板をさらに備え、屈折板は、集光部で集光された光を、対象画像表示部に直交する方向に屈折させ、視認領域に収めてもよい。
【0013】
輝度画像表示部は、2種類の輝度で輝度画像を構成してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の画像表示装置によれば、ユーザが停止しているときは、ユーザに伝達すべき表示画像のみを知覚させることができ、ユーザが画像表示装置に向かって移動しているときには、表示画像のみならず、画像表示装置が表示した画像であることをユーザに認識させる画像をも表示することができる。したがって、ユーザが、画像表示装置によって表示された画像を実際の対象物と誤認してしまうことによって生じる問題を回避することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】従来の裸眼立体視方式の画像表示装置の構成を説明するための説明図である。
【図2】実施形態にかかる画像表示装置の構成を説明するための説明図である。
【図3】実施形態にかかる画像表示装置の構成を説明するための説明図である。
【図4】実施形態にかかる画像表示装置の構成を説明するための説明図である。
【図5】実施形態にかかる画像表示装置の構成を説明するための説明図である。
【図6】視差分割部の開口部を通じてユーザが視認する輝度画像を説明するための説明図である。
【図7】視差分割部の開口部を通じてユーザが視認する対象画像表示部を説明するための説明図である。
【図8】輝度画像表示部が複数の輝度画像を表示する例について説明するための説明図である。
【図9】輝度画像の他の例を説明するための説明図である。
【図10】数式(2)および数式(3)を利用して算出した遅延時間Yを示す図である。
【図11】数式(2)および数式(3)を利用して算出したs2とL1の関係、s2と時間tの関係およびs2vと時間tの関係を示す図である。
【図12】ユーザが開口部を通じて略同じ角度で視認できる画像表示装置の水平方向の幅を説明するための説明図である。
【図13】ユーザが開口部を通じて略同じ角度で視認できる画像表示装置の水平方向の幅を説明するための説明図である。
【図14】ユーザが視認する画像表示装置の対象画像および輝度画像を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0017】
図1は、従来の裸眼立体視方式の画像表示装置の構成を説明するための説明図である。また、図1は、従来の画像表示装置の上面視に相当する。図1に示すように、裸眼立体視方式の画像表示装置10は、バックライト12と、対象画像表示部14と、視差分割部16とを含んで構成される。視差分割部16には鉛直方向に伸長された開口部18が複数設けられている。
【0018】
ユーザ20は、開口部18を通じて、視差分割部16の後方(図1中、上側)に設けられた対象画像表示部14に表示された画像を視認する。このとき、開口部18を通じてユーザが視認する対象画像表示部14の位置は、左眼22と右眼24とで異なる。そこで、左眼22で視認する対象画像表示部14の位置に表示させる画像(左眼用画像:図1中「左画」で示す)と、右眼24で視認する対象画像表示部14の位置に表示させる画像(右眼用画像:図1中「右画」で示す)とに水平視差を持たせることで、ユーザ20は、左眼用画像と右眼用画像に基づく立体画像を知覚することができる。
【0019】
このような裸眼立体視方式の画像表示装置10を、広告等を表示する看板として採用する場合、ユーザ20は、自身が知覚する立体画像が、画像表示装置10によって表示された3次元画像(ユーザ20に立体画像を知覚させるための画像、左眼用画像および右眼用画像)に基づくものであるか、実際の対象物を視認したものであるかを容易に把握できないことがある。この場合、例えば、ユーザ20が、画像表示装置10によって表示された3次元画像を実際の対象物と勘違いしてしまうおそれがある。例えば、ユーザが、3次元画像を実際の対象物と勘違いし、その3次元映像との衝突を避けようとし、無駄な行動をとってしまうことがある。また、例えば店頭の陳列窓(ショーウインドー)内に、画像表示装置10を設置して3次元画像を表示した場合、ユーザ20が、画像表示装置10によって表示された3次元画像を実際の対象物と勘違いして手で触れようとすると、ユーザ20の手と陳列窓が衝突してしまうおそれもある。
【0020】
そこで、本実施形態では、ユーザが停止しているときは、ユーザに伝達すべき表示画像のみを知覚させることができ、ユーザが画像表示装置に向かって移動しているときには、表示画像のみならず、画像表示装置が表示した画像であることをユーザに認識させることができる画像をも表示する画像表示装置を提供することを目的とする。以下、本実施形態にかかる画像表示装置の構成について説明し、その後、本実施形態の画像表示装置の特徴である輝度画像表示部の処理について詳述する。
【0021】
(画像表示装置100)
図2から図5は、画像表示装置100の構成を説明するための説明図である。また、図2および図5は、画像表示装置100の上面視に相当し、図3および図4は、画像表示装置100の右側面視に相当する。画像表示装置100は、バックライト110と、輝度画像表示部112と、集光部114と、屈折板116と、対象画像表示部118と、視差分割部120とを含んで構成される。ここで、図2から図5に示すように、バックライト110、輝度画像表示部112、集光部114、屈折板116、対象画像表示部118、視差分割部120は、ユーザ102から見て、後方からこの順で配置される。
【0022】
バックライト110は、ユーザ102から見て、対象画像表示部118の後方に配置され、対象画像表示部118に照射する光を発光する。本実施形態において、バックライト110は、例えば、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)、冷陰極管(CCFL:Cold Cathode Fluorescent Lamp)等で構成される。
【0023】
輝度画像表示部112は、例えば、液晶等で構成され、バックライト110と対象画像表示部118との間に配置される。輝度画像表示部112は、同時に存在しうる複数の輝度画像を表示する。ここで、輝度画像は、予め定められた領域である輝度ブロック130ごとに、バックライト110から照射される光の透過率を変更することで、輝度で表される画像である。輝度画像は、静止画であってもよいし、動画であってもよい。1の輝度ブロック130を通過した光は、対象画像表示部118の複数の視認領域各々の1の表示画素132に到達することになる。ここで、1の輝度ブロック130は、輝度画像表示部112の1の画素で構成してもよいし、複数の画素で構成してもよい。輝度画像表示部112の具体的な処理については、後に詳述する。
【0024】
なお、バックライト110および輝度画像表示部112は、有機EL(Electro Luminescence)等の1の自発光の表示装置で構成することもできる。この場合、バックライト110と輝度画像表示部112とが電力を費やすことがなくなるので、省電力化を図ることができる。
【0025】
集光部114は、輝度画像表示部112と対象画像表示部118との間に配置され、バックライト110から照射され、輝度画像表示部112を通過した光を、対象画像表示部118の1または複数の表示画素132で構成される視認領域に集光する。ここで、視認領域は、後述する1の開口部140を通じて異なる位置から視認できる、1または複数(例えば100)の、対象画像表示部118の表示画素132で構成される。
【0026】
本実施形態において、集光部114は、輝度画像表示部112が表示する輝度画像を正立画像として屈折板116(焦点面)に結像する。この場合、集光部114は、例えば、屈折率分布型レンズ(Gradient Indexレンズ、セルフォックスレンズ)を含んで構成されてもよいし、凸レンズや凹レンズの組み合わせで構成されてもよい。したがって、ユーザ102の左眼102aは、開口部140を通じて、矢印104aで示される輝度ブロック130を視認することとなり、右眼102bは、矢印104bで示される輝度ブロック130を視認することとなる。なお、同じ時刻に同じ角度θで、隣接する開口部140から見える輝度画像は、1の(同一の)輝度画像である。
【0027】
図2に示すように、輝度画像を屈折板116に結像するために、集光部114の焦点距離は、水平方向(両眼視差を形成する方向:図2では、左右方向)において、1の視認領域の水平方向の長さJhに結像する、複数の輝度ブロック130の水平方向の長さKhと、輝度画像表示部112から集光部114までの距離と、集光部114から屈折板116(焦点面)までの距離等に応じて、設定される。
【0028】
また、図3に示すように、集光部114は、鉛直方向(垂直方向:図3では、左右方向)において、1の視認領域の鉛直方向の長さJvに結像する、複数の輝度ブロック130による輝度画像表示部112の鉛直方向の長さKvが、長さJvと等しくなるように構成される。そして、例えば、図3に示すように、集光部114を円柱レンズの組み合わせで構成する。このように集光部114を円柱レンズの組み合わせで構成する場合、画像表示装置100の鉛直方向の分解能の最小単位は、円柱レンズの鉛直方向の長さ、すなわち1の視認領域の鉛直方向の長さJv、または、輝度画像表示部112の鉛直方向の長さKvによって決定される。
【0029】
また、例えば、図4(a)、(b)に示すように、輝度画像表示部112と集光部114との間に、集光部114に輝度ブロック130を通過した光を導く導光板114aを水平に重ねた積層導光板114bを配置してもよい。このような積層導光板114bを配置する構成において、導光板114aの奥行き方向(図4(a)中の上下方向)の寸法は、輝度画像表示部112と集光部114との隙間がほとんどなくなるようにするとよい。なお、この場合、画像表示装置100の鉛直方向の分解能の最小単位は、積層導光板114bを構成する導光板114aの鉛直方向の厚みによって決定される。
【0030】
また、ここで集光部114は、輝度画像を正立画像として結像する例について説明したが、これに限定されず、集光部114は、輝度画像を倒立画像として屈折板116に結像してもよい。図2を参照すると、この場合、ユーザ102の左眼102aは、開口部140を通じて、矢印106a(図2中、一点鎖線矢印で示す)で示される輝度ブロック130を視認することとなり、右眼102bは、矢印106b(図2中、一点鎖線矢印で示す)で示される輝度ブロック130を視認することとなる。
【0031】
集光部114として、輝度画像表示部112が表示する輝度画像に応じて、正立画像として結像するものや、倒立画像として結像するものを適宜採用するとよい。集光部114と輝度画像の関係ついては後に詳述する。
【0032】
集光部114により集光された光は、対象画像表示部118に集光され、輝度画像表示部112の輝度画像の一部を視認領域に映し出す。ここで、集光部114を構成する各レンズの光軸の延長線上に位置する表示画素132には輝度画像表示部112の光が垂直に近い角度で照射されるが、光軸の延長線上から離れた位置にある表示画素132には、垂直から所定の角度偏差をもって輝度画像表示部112の光が照射されるため、光の利用効率が低下する。したがって、ユーザが観察する角度によって、対象画像表示部118が映し出す画像の明るさが変わってしまう。
【0033】
そこで、集光部114と対象画像表示部118との間に屈折板116を配置し、集光部114により集光された光を屈折板116に集光し、屈折板116が角度偏差を減少させて対象画像表示部118に直角に近い角度で照射する構成とする。なお、屈折板116から対象画像表示部118を通る光を視差分割部120の開口部140に向かう方向に向けることにより、より効果的に画像の明るさを安定させることができる。この場合、屈折板116を対象画像表示部118の集光部114側の面に密着させる、または、屈折板116と対象画像表示部118とを一体形成するとよい。
【0034】
屈折板116は、例えば、プリズムまたはフレネルレンズもしくはこれらの組み合わせで構成され、集光部114と対象画像表示部118との間に配置される。
【0035】
また、屈折板116を備える構成により、対象画像表示部118を通過する光の光路の指向性を向上させることができ、対象画像表示部118を通過する光が、視差分割部120で反射してしまうことによる、ユーザが視認する対象画像や輝度画像の鮮明度の低下を抑制することができ、また、隣接する開口部140への光漏れを抑制することで対象画像の輝度を向上させることも可能となる。
【0036】
対象画像表示部118は、例えば、透過型の液晶ディスプレイで構成され、1または複数の対象画像を表示する。対象画像は、ユーザが視認する対象となる画像である。なお、ここでは、透過型の液晶ディスプレイで構成される対象画像表示部118を例に挙げて説明するが、これに限定されず、対象画像表示部118を、対象画像を固定的に表示するための半透明のシートで構成することもできる。
【0037】
視差分割部120は、ユーザ102から見て、対象画像表示部118の前方に配置され、対象画像表示部118の視認領域に対応した開口部140を複数配列している。したがって、ユーザ102は、1の開口部140を通じて、その開口部140に対応した視認領域を構成する1または1以上の表示画素132を視認することになる。ここで、視差分割部120は、開口部140にレンチキュラーレンズを配したレンチキュラーアレイでも、開口部140の鉛直方向に沿って遮光板を配しても、開口部140にピンホールを配したピンホールアレイでも、開口部140にフライアイレンズを配したフライアイレンズアレイでもよい。
【0038】
また、1の開口部140を通じて、隣接する開口部140から視認される視認領域が見えてしまわないように、対象画像表示部118の、1の開口部140を通じて視認される視認領域と、隣接する開口部140を通じて視認される視認領域との間に、図2に示すように遮光マスク部122を設けてもよい。
【0039】
したがって、図5(a)に示すように、画像表示装置100では、バックライト110から照射された光は、輝度画像表示部112を通過し、対象画像表示部118を通過して、ユーザの眼に入射する。このため、図5(b)に示すように、ユーザが視認する表示画素には、輝度画像が重畳された対象画像の一部の画像である部分画像142が表示される。ユーザは開口部140を通じて、輝度画像が重畳された対象画像を視認することになるが、以下、単に輝度画像を視認すると省略して記載することとする。
【0040】
例えば、輝度画像表示部112のある輝度ブロックの透過率が0%の場合(図5中、黒色で示す)、バックライト110が照射した光は、輝度ブロックにおいて遮光されるため、その輝度ブロックに対応した表示画素にはバックライト110からの光が届かない。したがって、図5(b)に示すように、ユーザが、透過率0%の輝度ブロックに対応する表示画素を視認した場合、その表示画素に表示された部分画像142を黒色の画像であると認識することになる。
【0041】
一方、輝度画像表示部112の輝度ブロックの透過率が100%の場合(図5中、白色で示す)、バックライト110が照射した光は、輝度ブロックにおいて100%透過され、その輝度ブロックに対応した表示画素にはバックライト110からの光が照射される。したがって、図5(b)に示すように、ユーザが、透過率100%の輝度ブロックに対応する表示画素を視認した場合、その表示画素に表示された、対象画像の部分画像142を、その表示画素が表す色の画像であると認識することになる。
【0042】
上述したように、開口部140を通じて、ある位置のユーザ102が視認する対象画像表示部118の位置(表示画素)は、左眼104と右眼106とで異なる(図5(b)参照)。そこで、左眼104で視認する対象画像表示部118の位置に表示させる対象画像(左眼用画像)と、右眼106で視認する対象画像表示部118の位置に表示させる対象画像(右眼用画像)とに水平視差を持たせることで、ユーザは、左眼用画像と右眼用画像に基づく立体画像を知覚することができる。
【0043】
また、画像表示装置100を看板として利用する場合、ユーザ102の位置(ユーザの眼の位置)は画像表示装置100に対して、1つの固定された位置ではなく、画面に平行な方向において異なる複数の位置となることが想定される。例えば、画面に平行な方向に異なる複数の位置として50の位置を想定し、その50の位置にそれぞれユーザがいると仮定して、すべてのユーザに立体画像を知覚させる場合、対象画像表示部118は、開口部140を通じて視認できる100の対象画像を表示することになる。この場合、ユーザは、99の位置から立体画像を知覚することができる。なお、複数の対象画像と、複数の輝度画像は、目的は異なるものの、どちらも同時に表示されるものである。
【0044】
図6は、視差分割部120の開口部140を通じてユーザが視認する輝度画像を説明するための説明図であり、図6(a)は、輝度画像表示部112に表示される輝度画像150aを、図6(b)は、屈折板116に投影される輝度画像150bを、図6(c)は、視差分割部120の開口部140を通じて視認される輝度画像150cを、それぞれ示す。また、図6は、輝度画像が2次元画像の場合であって、鉛直方向の解像度が高い場合を示している。
【0045】
例えば、輝度画像表示部112は、図6(a)に示す、2値化された2次元画像を表示したとする。本実施形態において、集光部114は、輝度画像を正立画像として結像する構成であるため、集光部114によって屈折板116に焦点を結んだ輝度画像150bは、図6(b)に示したような画像となる。例えば、ユーザが画像表示装置100の略正面にいるとすると、ユーザが開口部140を通じて視認する輝度画像150cは、図6(c)に示すように、輝度画像表示部112が表示する輝度画像150aと同様の輝度画像150cとなる。
【0046】
図7は、視差分割部120の開口部140を通じてユーザが視認する対象画像表示部118を説明するための説明図である。図7では、理解を容易にするために、ユーザ102の片眼(例えば、左眼102a)から視認する例について説明し、また、対象画像表示部118と視差分割部120のみを示し、表示画素も抽象的に示して説明する。
【0047】
図7に示すように、開口部140aを通じて、(A)の位置のユーザは、表示画素A7を、(B)の位置のユーザは、表示画素A1を、(C)の位置のユーザは、表示画素A5を、(D)の位置のユーザは、表示画素A8を、それぞれ視認することになる。また、ユーザを基準に考えると、(A)の位置のユーザは、上述したように開口部140aを通じて表示画素A7を、開口部140bを通じて表示画素B7を、開口部140cを通じて表示画素C7を、開口部140dを通じて表示画素D7を視認することになる。なお、ここで、開口部140a、140b、140c、140dは、それぞれ隣接しているわけではなく、ある程度離隔した位置にある。
【0048】
なお、対象画像表示部118の表示画素132は、立体映像を表示するためのものであるため、輝度画像の輝度ブロック130と1対1で対応する必要はない。つまり、対象画像表示部118が表示する対象画像が、例えば、4眼立体カメラで撮影された立体画像であり、対応する視認領域が4分割されたものであって、この視認領域に対応する長さKhにある輝度ブロック130の数が40個であっても、輝度画像の各輝度ブロック130の輝度差が対象画像表示部118を通して、輝度ブロック130の分解能(ここでは40)で表示できればよい。
【0049】
したがって、対象画像表示部118は、表示画素A7、B7、C7、D7に分割して、立体画像を知覚するための対象画像を表示すれば、(A)の位置のユーザは立体画像を知覚することができる。対象画像表示部118は、(B)の位置のユーザに立体画像を知覚させるため、表示画素A1、B3、C5、D7に分割して対象画像を表示し、同様に(C)、(D)の位置のユーザが立体画像を知覚できるように、(C)、(D)から視認できる表示画素に分割して対象画像を表示する。以下、このような、1の開口部140を通じて視認できる複数の表示画素、すなわち視認領域を構成する複数の表示画素に表示される、同時に存在しうる複数の対象画像それぞれの同一の位置から抽出された部分画像の群(例えば、図7の開口部140aにおいては、A1〜A9)、を一組の多眼画素群と称する。
【0050】
このように、対象画像表示部118が、例えば、100の対象画像をそれぞれ、表示画素に相当する数の部分画像に分割して、対象画像の同一の位置の部分画像を並べて、多眼画素群を生成し、開口部140から視認できるように一組の多眼画素群を表示すると、ユーザは、99の位置のどこで視認しても立体画像を知覚することができる。したがって、上述したように、画像表示装置100によって表示された対象画像(3次元画像)を実際の対象物と勘違いすることもある。そこで、輝度画像表示部112を設けることにより、ユーザが停止しているときは、ユーザに伝達すべき対象画像のみを知覚させることができ、ユーザが画像表示装置100に向かって移動しているときには、対象画像のみならず、画像表示装置100が表示した画像であることをユーザに認識させることができる画像をも表示することが可能となる。以下に、本実施形態の画像表示装置100の特徴である、輝度画像表示部112の処理について詳述する。
【0051】
(輝度画像表示部112の処理)
上述した図7を参照すると、ユーザが(A)から(B)に移動していると、ユーザが開口部140aを通じて視認できる対象画像表示部118の表示画素は、表示画素A7から表示画素A1になる。例えば、(A)と(B)との距離が1500(mm)であるとし、ユーザの移動速度を1200(mm/秒)とすると、ユーザが(A)から(B)までの移動に要する時間は、1.25秒となる。つまりユーザは、(A)から(B)まで移動する1.25秒の間に、表示画素A7、A6、A5、A4、A3、A2、A1の順で表示画素を視認することになる。
【0052】
ここで、輝度画像表示部112が、表示画素A7からA1までのそれぞれの表示画素で輝度が異なるように輝度画像を表示すると、ユーザが、開口部140aを通じて視認するものが変化することになる。例えば、図7で示す例では、ユーザは1秒間に5または6の表示画素を視認することになる。また、表示画素A7から表示画素A1に相当する領域に75の表示画素がある場合、ユーザは、1秒間に60の表示画素を視認することになる。
【0053】
本実施形態において、輝度画像表示部112は、基準となる分割領域である基準領域を基準として、基準領域に離隔するに従って、または、基準領域に向かうに従って、分割画像を順次所定時間遅延させて表示する。ここで、分割領域は、輝度画像表示部112の予め定められた領域であり、分割領域の水平方向の長さは、予め定められた整数個(例えば、1個)の輝度ブロック130の水平方向の長さと等しく、鉛直方向の長さは輝度画像表示部112の鉛直方向の長さまで伸ばしてもよく、また、構成による鉛直方向の分解能に応じて分割してもよい。また、分割画像は、複数の輝度画像を分割領域毎に分割したものである。
【0054】
なお、本実施形態では、輝度画像を正立画像として結像する集光部114を採用しているため、輝度画像表示部112が、基準領域を始点とし、基準領域から水平方向に離隔するに従って、分割画像を順次所定時間遅延させて表示するが、輝度画像を倒立画像として結像する集光部114を採用する場合、輝度画像表示部112は、基準領域を終点とし、水平方向に基準領域に向かうに従って、分割画像を順次所定時間遅延させて表示する。
【0055】
こうすることで、輝度画像表示部112は、ユーザが移動に伴って視認する表示画素A7からA1までのそれぞれの表示を異ならせることができる。また、輝度画像表示部112は、任意の時刻に、任意の視認角度で、隣接する複数の開口部140を通じて、分割画像が連結して、複数の輝度画像のうち1の輝度画像の少なくとも一部が見えるように、分割画像を表示する。
【0056】
また、輝度画像表示部112は、予め定められた時間範囲における輝度ブロック130ごとの透過率の平均値が、すべての輝度ブロック130において略等しくなるように、分割画像を所定の順番かつ時分割でそれぞれ等しい時間、分割領域に表示する。
【0057】
図8は、輝度画像表示部112が複数の輝度画像を表示する例について説明するための説明図である。
【0058】
輝度画像表示部112は、複数(ここでは3)の輝度画像(図8(a)に示す輝度画像152a、152b、152c各1枚)を表示する。図8(a)に示すように、輝度画像152aおよび輝度画像152bは、輝度値E(例えば、輝度値が90)の輝度ブロック(図8中、白色で示す)と、輝度値F(例えば、輝度値が0)の輝度ブロック(中、黒色で示す)とで生成される。また、輝度画像152cは、輝度値Eの輝度ブロックのみで生成される。
【0059】
輝度画像表示部112は、図8(b)に示すような、輝度画像150aを分割領域ごとに分割した分割画像P1、P2、P3、P4、P5、P6と、輝度画像150bを分割領域ごとに分割した分割画像Q1、Q2、Q3、Q4、Q5、Q6と、輝度画像150cを分割領域ごとに分割した分割画像R1、R2、R3、R4、R5、R6とを、所定の順番かつ時分割でそれぞれ等しい時間、分割領域に表示し、かつ、基準領域を始点とし、基準領域から水平方向に離隔するに従って、分割画像を順次所定時間遅延させて表示する。
【0060】
具体的に説明すると、例えば、輝度画像表示部112は、図8(c)に示すように、時刻t0のとき、図7に示す表示画素A7の列(表示画素A8と鉛直方向の位置が同じである複数の表示画素の群)に対応する分割領域A−7にQ5を、時刻t0の次の時刻t0+1のとき、A−7にR5を、次の時刻t0+2のとき、A−7にP5をそれぞれ等しい時間表示する。
【0061】
こうすると、例えば、ユーザが図7の(A)の位置で停止している場合、図8(c)に示す、任意の時刻t0において、ユーザは、開口部140aから分割画像Q5を視認でき、ユーザは、輝度画像152aの一部を視認することになる。同様に、ユーザは開口部140aを通じて、時刻t0+1において分割画像R5を、時刻t0+2において分割画像P5を視認することになる。
【0062】
したがって、図7の(A)の位置にいるユーザは、予め定められた時間範囲(時刻t0〜t0+2)において、輝度画像152aと輝度画像152bと輝度画像152cとを1:1:1の時間の比率で視認することになるため、輝度画像を構成する輝度ブロックごとの輝度値(透過率)の平均値が、すべての輝度ブロックにおいて略等しく、輝度値(2E+F)/3となる。
【0063】
同様に、輝度画像表示部112は、時刻t0、時刻t0+1、時刻t0+2において、分割領域A−3に分割画像P1、Q1、R1を、分割領域A−4に分割画像Q2、R2、P2を、分割領域A−5に分割画像R3、P3、Q3を、分割領域A−6に分割画像P4、Q4、R4を、分割領域A−8に分割画像R6、P6、Q6をそれぞれ表示する。すなわち輝度画像表示部112は、分割領域A−3、A−6には輝度画像152a、152b、152cの順で、分割領域A−4、A−7には輝度画像152b、152c、152aの順で、分割領域A−5、A−8には輝度画像152c、152a、152bの順で、それぞれの分割領域に対応する分割画像を等しい時間表示する。この場合、図8(d)に示すように、表示画素A3は輝度値Eで、A4は輝度値Fで、A5は輝度値Eで、A6は輝度値Eで、A7は輝度値Fで、A8は輝度値Eで表示されることになる。
【0064】
そうすると、停止しているユーザは、どの位置にいたとしても、図8(c)に示すように、見かけ上、輝度画像152a、152b、152cが平均化された輝度画像152dを視認することになる。したがって、ユーザが停止していると、輝度画像152a、152bに示される横縞を認識することができない。
【0065】
つまり、ユーザが複数の開口部140を通じて視認することができる輝度画像を構成する輝度ブロックの透過率は輝度ブロックごとに変更されているものの、ユーザが停止して輝度画像表示部112を見ている場合、輝度ブロックの透過率の所定時間範囲の平均値はすべて略等しくなるため、ユーザは、輝度が略均一な輝度画像、すなわち、情報を有さない画像を視認することになり、対象画像のみを認識することになる。
【0066】
一方、輝度画像表示部112は、図8(c)に示すように、基準となる分割領域である基準領域(図8に示す例では、分割領域A−8を基準領域とする)を始点とし、基準領域から水平方向に離隔するに従って、分割画像を順次所定時間遅延させて表示する。なお、輝度画像表示部112が、抽出した分割画像を遅延させる遅延時間Yの導出方法は、後に詳述する。
【0067】
こうすると、ユーザが図7の(A)の位置から(A)よりも画像表示装置100に近い(B)の方向に移動している場合、図8(c)に示す、時刻t0において、(A)の位置のユーザは、開口部140aから表示画素A7に表示された分割画像Q5を視認することになり、ユーザは、輝度画像152bの一部を視認することができる。同様に、ユーザは、開口部140aを通じて、時刻t0+1において表示画素A6に表示された分割画像Q4を、時刻t0+2において表示画素A5に表示された分割画像Q3を視認することになる。したがって、ユーザは、輝度画像152bのみを視認することになる。
【0068】
このように、少なくとも2種類の輝度で輝度画像を構成すれば、ユーザは、輝度画像を視認することができる。また、2種類の輝度で輝度画像を構成することにより、輝度画像表示部112を開閉の電子シャッタ等で構成でき、細かい透過率を表現しなくてよくなるので、コストを低減することが可能となる。
【0069】
なお、ここでは、輝度画像を2種類の輝度で構成しているが、輝度画像は、3種類以上の輝度で構成されてもよい。また、例えば、輝度画像表示部112に表示される輝度画像が5枚であり、ある輝度ブロック130には5種類の輝度で交互に表示される場合、他の輝度ブロック130にも同じ5種類の輝度で同じ頻度表示されると全体的な輝度が均一化されるが、その表示順序は限定されない。
【0070】
図9は、輝度画像の他の例を説明するための説明図である。例えば、上述した図8では、輝度画像152a、152bが横縞模様の画像(1次元画像)であるため、集光によって結像する画像は正立画像であっても倒立画像であってもよいが、鉛直方向の分解能を構成するために、円柱レンズで構成された集光部114を採用したり、積層導光板114bを集光部114に組み合わせることが必要となる。しかし、輝度画像表示部112が、図9(a)で示す、2次元画像の輝度画像154a、154bを表示する場合、倒立画像として結像させる集光部114を利用すると、ユーザは、輝度画像154a、154bを、左右上下が反転した像を視認することになってしまう。そこで、輝度画像表示部112が2次元画像の輝度画像を表示する場合、正立画像として結像させる集光部114を利用する必要があり、かつ円柱レンズで構成された集光部114を採用したり、積層導光板114bを集光部114に組み合わせることが必要となる。なお、輝度画像表示部112が、図9(b)、(c)に示す、1の輝度で表される輝度画像156a、156bまたは縦縞を示す輝度画像158a、158b(0次元画像)である場合、屈折板116または対象画像表示部118に、集光により結像する画像は、正立画像であっても倒立画像であってもよいので、倒立画像として結像させる集光部114を採用することができる。
【0071】
(輝度画像表示部112が遅延させる遅延時間Yの導出方法)
輝度画像表示部112が、基準領域から水平方向に離隔するに従って、分割画像を順次所定時間遅延させて表示するときの、遅延時間Yは、以下の式で導出することができる。
【0072】
例えば、ユーザが図7の(A)から(B)へ移動する場合、ユーザの平均の移動速度を1200(mm/秒)、図7の(A)から(B)までの距離を1500(mm)とし、開口部140aを通じて1秒間に60の分割画像を視認させるように構成すると、ユーザは、図7の(A)から(B)へ移動する間に、図7中表示画素A1からA7に相当する領域で75の分割画像を視認することになる。また、ユーザが図7の(A)から1920(mm)の距離を、平均の移動速度1200(mm/秒)で移動して、開口部140aを通じて図7中表示画素A1からA9を視認する場合には、ユーザは表示画素A1からA9に相当する領域で96の分割画像を視認することになる。
【0073】
そして、開口部140が含まれる平面からユーザの位置までの距離をL1(図7中、開口部140が含まれる平面から(A)までの距離をL1aで、開口部140が含まれる平面から(B)までの距離をL1bで示す)、(A)から開口部140が含まれる平面に延ばした垂線と開口部140が含まれる平面との交点から、視認対象である開口部140aまでの距離をL2、開口部140から対象画像表示部118までの距離をs1、開口部140aおよび対象画像表示部118の表示面に直交する線と対象画像表示部118の表示面との交点から、ユーザの位置で開口部140aから視認できる表示画素(ユーザがの位置が(A)の場合は、表示画素A7)までの距離をs2とすると、s2は、数式(1)で示される。
s2=s1・L2/L1
…数式(1)
【0074】
ここで、s1を0.1(mm)、L2を2000(mm)、L1を2000(mm)とすると、上記数式(1)に代入してs2は0.1(mm)となり、s1を0.1(mm)、L2を2000(mm)、L1を500(mm)とすると、s2は0.4(mm)となる。
つまり、ユーザが、(A)の位置(L1aが2000(mm))から、(B)の位置(L1bが500(mm))まで近づくと、ユーザが開口部140aを通じて視認できる表示画素の総距離は、(B)のs2である0.4(mm)から(A)のs2である0.1(mm)を減した値である0.3(mm)となる。ここで、ユーザが移動速度1200(mm/秒)で、(A)から(B)まで移動すると、(A)から(B)までにかかる移動時間は1.25秒となり、表示画素上の見かけのユーザの視線の移動速度は平均0.24(mm/秒)となる。
ここで、ユーザが画像表示装置100に近づく速さを、L1v(mm/秒)、移動開始を0とする経過時間を時間tとすると、
s2(t)=s1・L2/(L1a−L1v・t)
…数式(2)
s2の移動速度、をs2v(mm/秒)とすると、
s2v(t)=s1・L2・L1v/{(L1a)2−2・L1a・L1v・t+(L1v・t)2}
…数式(3)
【0075】
図10は、数式(2)および数式(3)を利用して算出した移動速度を示す図であり、図11は、数式(2)および数式(3)を利用して算出したs2とL1の関係(図11(a))、s2と時間tの関係(図11(b))およびs2vと時間tの関係(図11(c))を示す図である。図11では、s1を0.1(mm)、L2を2000(mm)とした場合を示す。
【0076】
図10(a)は、L2を2000(mm)、s1を0.1(mm)、L1vを1200(mm/秒)とした場合の移動速度を示す表であり、図10(b)は、L2を1000(mm)、s1を0.1(mm)、L1vを1200(mm/秒)とした場合の移動速度を示す表である。なお、ここでユーザが開口部140aを通じて視認できる視認領域の幅を0.3(mm)とし、この幅の視認領域に75の分割画像が表示されるとすると、1の分割画像の幅は0.004(mm)となる。
【0077】
図10に示すように、数式(2)、数式(3)を用いてs2vを導出すると、ユーザの視線の移動速度(個/秒)は、s2v/0.004で導出することができる。そして、かかる移動速度に相当する速度で分割画像を水平方向に移動するかの如く切り換えると、ユーザは、1の輝度画像による任意の画像を視認することができることとなる。このようにユーザの視線の移動速度に、分割画像を水平方向に移動するかの如く切り換える切換速度を合わせた場合、抽出した分割画像を遅延させる遅延時間Yは、s2v/0.004の逆数となって図10(a)、(b)のような値となる。
【0078】
したがって、図10(a)および図10(b)に示すように、輝度画像表示部112は、1/60秒で分割画像を遅延させて表示させることによって、ユーザが1200(mm/秒)で画像表示装置100に接近すると、L1が1000(mm)の地点でL2が2000(mm)の位置に輝度画像が見え(図10(a)参照)、L1が707(mm)の地点でL2が1000(mm)の位置に輝度画像が見えることになる(図10(b)参照)。
【0079】
図12、図13は、ユーザが開口部140を通じて略同じ角度で視認できる画像表示装置100の水平方向の幅を説明するための説明図である。図12の例において、開口部140が含まれる平面からユーザの位置までの距離L1を1000(mm)、位置Uから開口部140が含まれる平面に延ばした垂線と開口部140が含まれる平面との交点から、視認対象である開口部140eまでの距離L2を1000(mm)、開口部140から対象画像表示部118までの距離s1を0.1(mm)、ユーザの移動速度L1vを1200(mm/秒)とし、輝度画像152aの分割画像Wの切換速度s2Vを0.120(mm/秒)、開口部140eから隣接する開口部140fまたは開口部140gまでの距離を0.3(mm)、1の分割画像Wの幅は0.004(mm)とする。
【0080】
図12(a)に示すように、ユーザが開口部140eを通じて角度θで対象画像表示部118を視認することができる位置を位置Uとし、隣接する開口部140fを通じて角度θで対象画像表示部118を視認することができる位置を位置Vとすると、位置Uと位置Vとの距離Kは、以下の数式(4)を利用して算出することができる。
tanθ=L1/L2=(L1−K)/(L2−0.3(mm))
…数式(4)
【0081】
したがって、Kは、0.3(mm)となる。ユーザが、位置Uから位置VまでL1Vで移動すると、この移動にかかる時間は、0.3(mm)/1200(mm/秒)=0.00025秒となる。
【0082】
ここで、ユーザが位置Uにいる時点において、輝度画像表示部112が、各開口部140を通じて角度θで視認できる対象画像表示部118の位置に分割画像Wを表示すると、分割画像Wの切換速度s2Vは0.120(mm/秒)であるので、ユーザが位置Vに移動したときに開口部bを通じて視認できる分割画像Wは、0.120(mm/秒)×0.00025(秒)=0.03(μm)移動することになる(図12では、右方向に移動するとする)。
【0083】
したがって、分割画像Wの水平方向の幅は0.004(mm)であるため、ユーザが、略同じ角度θで視認できる画像表示装置100の水平方向の幅は、0.004(mm)×0.3(mm)/0.03(μm)=40(mm)となる。
【0084】
図12(b)は、位置Uから約45度(θが約45度)の角度で見える3つの開口部140(図12(b)中、開口部140h、140i、140jで示す)を示す。ここでは、説明の便宜のため、位置Uから開口部140までの距離や、分割画像Wの幅を模式的に示している。図12(b)に示すように、分割画像Wの水平方向の幅が、0.004(mm)である場合、上述したように、ユーザは、画像表示装置100の表示画面上の水平方向の幅40(mm)において同じ分割画像Wを映す表示画素132が見えることになる。また、図12(b)に示すように、ユーザは、位置Uから開口部140hを通じて分割画像Wの左端を見ているとすると、開口部140hから水平方向に40(mm)離隔した位置にある開口部140iを通じて分割画像Wの右端を見ることになる。
【0085】
さらに、図12(b)に示す、2つの開口部140h、140iの中間の位置にある、開口部140jを通して見える表示画素132は、同じ分割画像Wを映すものであり、また、位置Uにいるときに、ユーザは、その分割画像W(表示画素132)の中央の位置を見ることになる。
【0086】
そうすると、図13に示すように、ユーザは位置AAにいる場合に、ユーザの視線と画像表示装置100の為す角が角度θとみなされる(角度θと略等しい角度である)範囲、すなわち、画像表示装置100上の水平方向が40(mm)幅の領域に分割画像Wの群が視認できる。そして、ユーザが、画像表示装置100に向かって1200(mm/秒)で移動すると、位置BBに来たときにも、位置CCに来たときにも角度θとみなされる範囲に分割画像Wの群を視認することができる。
【0087】
ユーザの移動速度が1200(mm/秒)の整数倍の速度でない場合、例えば位置AAにおいて輝度画像152aの分割画像Wの群が視認できていたとしても、位置BBにおいて輝度画像152aの分割画像Wの群は視認できず、輝度画像の遅延速度と同期すれば、他の輝度画像152bまたは輝度画像152cの分割画像の群を視認することができる。
【0088】
なお、ユーザがどの輝度画像を視認することができるかは、ユーザと画像表示装置100の角度、ユーザの位置、ユーザの移動速度とそれぞれの輝度画像の表示タイミングによる。
【0089】
図14は、ユーザが視認する画像表示装置100の対象画像および輝度画像を説明するための説明図である。
【0090】
また、輝度画像が見える位置は、表示画素のサイズ、遅延時間Y、ユーザの位置およびユーザの移動速度によって変化する。例えば、図14(a)に示すように、ユーザが停止している場合、輝度画像を認識することはできないが、図14(b)に示すようにユーザが画像表示装置100に向かって移動すると、画像表示装置100の画面の左右の両端に輝度画像を視認することができるようになる。また、図14(c)、(d)に示すように、ユーザの移動速度が速いほど、またユーザの位置が画像表示装置100に近いほど、ユーザは、画像表示装置100の画面の左右の両端から中央側に寄って輝度画像を視認することになる。特に図14(d)において、ユーザは、画像表示装置100の画面の中央側のみならず、画面の左右両端にも輝度画像を視認することができる。
【0091】
ここで、輝度画像表示部112は、基準領域Xを始点とし、基準領域Xから水平方向に離隔するに従って、分割画像を、遅延時間Yで、順次所定時間遅延させて表示しているが、遅延時間Yは、輝度画像表示部112の表示画面全体に渡って同じとする必要はなく、所定の領域に区分して、それぞれ独立して変更してもよい。ただし、同じ方向から見た隣接する開口部140を通じて見える表示画素は、所定の時刻には1の輝度画像の表示となるように構成する必要がある。
【0092】
また、基準領域Xは、対象画像表示部118の表示画面の中心に位置する表示画素に対応する輝度画像表示部112の輝度ブロック130を含む分割領域とするとよい。こうすることで画像表示装置100の中心に向けて接近するユーザの両脇に輝度画像を表示することができる。
【0093】
また、上述した例(数式(2)および数式(3))では、ユーザが画像表示装置100に向かって垂直方向に移動する場合の遅延時間Yの算出方法について説明したが、ユーザが画像表示装置100の表示面と平行に移動する場合に輝度画像を視認させることもできる。この場合、以下の数式を用いて、ユーザの視線の移動速度s2v(mm/秒)を求め、それに相当する分割画像を水平方向に移動するかの如く切り換える切換速度、または、その逆数をとって、抽出した分割画像を遅延させる遅延時間Yを算出することができる。
s2(t)=s1・(L2+L2v・t)/L1
…数式(4)
s2v(t)=s1・L2v/L1
…数式(5)
【0094】
以上説明したように、本実施形態における画像表示装置100によれば、ユーザが停止しているときは、対象画像のみを知覚させることができ、ユーザが画像表示装置100に向かって移動しているときには、対象画像のみならず輝度画像の一部を視認させ、画像表示装置100が表示した対象画像である旨をユーザに違和感なく認識させることができる。したがって、画像表示装置100が対象画像として3次元画像を表示する場合、ユーザが、画像表示装置100によって表示された3次元画像を実際の対象物と誤認してしまうことによって生じる問題を回避することが可能となる。
【0095】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0096】
例えば、上述した実施形態では、対象画像表示部118は、対象画像として3次元画像を表示しているが、これに限定されず、2次元画像を表示してもよい。この場合、ユーザが画像表示装置100に向かって移動すると、輝度画像が示す文字、記号、絵等を視認することができるようになるので、広告の効果を向上させることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、画像を表示する画像表示装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0098】
100 …画像表示装置
110 …バックライト
112 …輝度画像表示部
114 …集光部
116 …屈折板
118 …対象画像表示部
120 …視差分割部
140 …開口部
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を表示する画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、多種類の静止画を切り換えて表示したり、動画を表示したりする画像表示装置を商業宣伝用の看板として利用したものを散見するようになった。このような画像表示装置は、静止画の表示の切り換えを容易に行うことができるため、画像表示装置を看板として採用すると、画像の張り替えの手間を省くことができ、広告としての様々な画像を簡単に交換することが可能となる。また、画像表示装置に動画を表示させる場合、画像をダイナミックに変化させることが可能となるため、画像表示装置を看板として採用すると、広告としての画像をユーザ(観察者)に注目させたり、静止画と比較して伝達する情報量を増加させたりすることができる。
【0003】
一方、近年では、ディスプレイ上に、視差を有する2以上の画像を表示し、ユーザに対してあたかもオブジェクトが立体的に存在するように知覚させる立体画像表示装置が脚光を浴びている。このような画像表示を実現するための技術のうち、偏光眼鏡や電子シャッタ眼鏡等の特殊な眼鏡を使用せずとも立体画像を知覚させる方式(以下、単に裸眼立体視方式と称する)として、パララックスバリア方式、レンチキュラ方式等の様々な方式が知られている。
【0004】
このような裸眼立体視方式の画像表示装置を看板として採用すると、誰にでも立体画像を知覚させることができ、広告としての機能をより効果的に発揮できると考えられる。
【0005】
裸眼立体視方式の画像表示装置を看板として利用した例として、例えば、画像表示装置の前面に液晶パララックスバリアを設け、距離センサーを利用して対象者の位置を検知し、検知した対象者の位置に応じて液晶パララックスバリアへ印加する電圧を制御することで、対象者が画像表示装置を基準とした所定範囲外にいる場合には、2次元画像の知覚を目的とした画像(以下、単に2次元画像と称する)を表示し、対象者が画像表示装置を基準とした所定範囲内にいる場合には、立体画像を知覚させるための画像(以下、単に3次元画像と称する)を表示する技術が提案されている(例えば、特許文献1)。このような切り換えにより広告効果を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−294861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、裸眼立体視方式の画像表示装置を、家庭内のテレビジョン受像機として利用したり、映画館で利用する場合、ユーザは、画像表示装置が表示する画像が3次元画像であることを予め認識しているため、自身が知覚する立体画像が、画像表示装置によって形成されたものであることを把握することができる。
【0008】
しかし、裸眼立体視方式の画像表示装置を看板として採用する場合、ユーザは、自身が知覚している立体画像が、画像表示装置によって表示された3次元画像に基づくものであるか、実際の対象物を視認したものであるかを容易に把握できないことがある。この場合、ユーザが、画像表示装置によって表示された3次元画像を実際の対象物と勘違いしてしまうおそれがある。例えば、ユーザが、3次元画像を実際の対象物と勘違いし、その3次元画像との衝突を避けようとしたり、その3次元画像に触れようとしたりして、無駄な行動をとってしまうこともある。
【0009】
そこで、本発明は、このような課題に鑑み、ユーザが停止しているときは、ユーザに伝達すべき表示画像のみを知覚させることができ、ユーザが画像表示装置に向かって移動しているときには、表示画像のみならず、画像表示装置が表示した画像であることをユーザに認識させることが可能な画像をも表示する画像表示装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の画像表示装置は、ユーザが視認する対象となる画像である対象画像を表示する透過型の対象画像表示部と、対象画像表示部の前方に配置され、対象画像表示部を構成する表示画素を1または複数含む視認領域に対応した開口部を複数配列した視差分割部と、対象画像表示部の後方に配置されたバックライトと、対象画像表示部とバックライトとの間に配置され、対象画像表示部の予め定められた領域である輝度ブロックごとにバックライトから照射される光の透過率を変更することで、輝度で表される画像である輝度画像を表示する輝度画像表示部と、輝度画像表示部と対象画像表示部との間に配置され、バックライトから照射され、輝度画像表示部を通過した光を、対象画像表示部の視認領域に集光する集光部とを備え、輝度画像表示部は、予め定められた時間範囲における輝度ブロックごとの透過率の平均値がすべての輝度ブロックにおいて略等しくなるように、予め定められた複数の輝度画像を、輝度画像表示部の予め定められた領域である分割領域ごとに分割した分割画像を、所定の順番かつ時分割でそれぞれ等しい時間、分割領域に表示し、かつ、基準となる分割領域である基準領域を基準として、水平方向の予め定められた、基準領域に離隔するに従って、または、基準領域に向かうに従って、分割画像を順次所定時間遅延させて表示し、任意の時刻に、任意の視認角度で、隣接する複数の開口部を通じて、複数の輝度画像のうち1の輝度画像の少なくとも一部が見えるように、分割画像を表示することを特徴とする。
【0011】
バックライトおよび輝度画像表示部は、1の自発光の表示装置で構成されてもよい。
【0012】
上記画像表示装置は、集光部と対象画像表示部との間に、屈折板をさらに備え、屈折板は、集光部で集光された光を、対象画像表示部に直交する方向に屈折させ、視認領域に収めてもよい。
【0013】
輝度画像表示部は、2種類の輝度で輝度画像を構成してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の画像表示装置によれば、ユーザが停止しているときは、ユーザに伝達すべき表示画像のみを知覚させることができ、ユーザが画像表示装置に向かって移動しているときには、表示画像のみならず、画像表示装置が表示した画像であることをユーザに認識させる画像をも表示することができる。したがって、ユーザが、画像表示装置によって表示された画像を実際の対象物と誤認してしまうことによって生じる問題を回避することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】従来の裸眼立体視方式の画像表示装置の構成を説明するための説明図である。
【図2】実施形態にかかる画像表示装置の構成を説明するための説明図である。
【図3】実施形態にかかる画像表示装置の構成を説明するための説明図である。
【図4】実施形態にかかる画像表示装置の構成を説明するための説明図である。
【図5】実施形態にかかる画像表示装置の構成を説明するための説明図である。
【図6】視差分割部の開口部を通じてユーザが視認する輝度画像を説明するための説明図である。
【図7】視差分割部の開口部を通じてユーザが視認する対象画像表示部を説明するための説明図である。
【図8】輝度画像表示部が複数の輝度画像を表示する例について説明するための説明図である。
【図9】輝度画像の他の例を説明するための説明図である。
【図10】数式(2)および数式(3)を利用して算出した遅延時間Yを示す図である。
【図11】数式(2)および数式(3)を利用して算出したs2とL1の関係、s2と時間tの関係およびs2vと時間tの関係を示す図である。
【図12】ユーザが開口部を通じて略同じ角度で視認できる画像表示装置の水平方向の幅を説明するための説明図である。
【図13】ユーザが開口部を通じて略同じ角度で視認できる画像表示装置の水平方向の幅を説明するための説明図である。
【図14】ユーザが視認する画像表示装置の対象画像および輝度画像を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0017】
図1は、従来の裸眼立体視方式の画像表示装置の構成を説明するための説明図である。また、図1は、従来の画像表示装置の上面視に相当する。図1に示すように、裸眼立体視方式の画像表示装置10は、バックライト12と、対象画像表示部14と、視差分割部16とを含んで構成される。視差分割部16には鉛直方向に伸長された開口部18が複数設けられている。
【0018】
ユーザ20は、開口部18を通じて、視差分割部16の後方(図1中、上側)に設けられた対象画像表示部14に表示された画像を視認する。このとき、開口部18を通じてユーザが視認する対象画像表示部14の位置は、左眼22と右眼24とで異なる。そこで、左眼22で視認する対象画像表示部14の位置に表示させる画像(左眼用画像:図1中「左画」で示す)と、右眼24で視認する対象画像表示部14の位置に表示させる画像(右眼用画像:図1中「右画」で示す)とに水平視差を持たせることで、ユーザ20は、左眼用画像と右眼用画像に基づく立体画像を知覚することができる。
【0019】
このような裸眼立体視方式の画像表示装置10を、広告等を表示する看板として採用する場合、ユーザ20は、自身が知覚する立体画像が、画像表示装置10によって表示された3次元画像(ユーザ20に立体画像を知覚させるための画像、左眼用画像および右眼用画像)に基づくものであるか、実際の対象物を視認したものであるかを容易に把握できないことがある。この場合、例えば、ユーザ20が、画像表示装置10によって表示された3次元画像を実際の対象物と勘違いしてしまうおそれがある。例えば、ユーザが、3次元画像を実際の対象物と勘違いし、その3次元映像との衝突を避けようとし、無駄な行動をとってしまうことがある。また、例えば店頭の陳列窓(ショーウインドー)内に、画像表示装置10を設置して3次元画像を表示した場合、ユーザ20が、画像表示装置10によって表示された3次元画像を実際の対象物と勘違いして手で触れようとすると、ユーザ20の手と陳列窓が衝突してしまうおそれもある。
【0020】
そこで、本実施形態では、ユーザが停止しているときは、ユーザに伝達すべき表示画像のみを知覚させることができ、ユーザが画像表示装置に向かって移動しているときには、表示画像のみならず、画像表示装置が表示した画像であることをユーザに認識させることができる画像をも表示する画像表示装置を提供することを目的とする。以下、本実施形態にかかる画像表示装置の構成について説明し、その後、本実施形態の画像表示装置の特徴である輝度画像表示部の処理について詳述する。
【0021】
(画像表示装置100)
図2から図5は、画像表示装置100の構成を説明するための説明図である。また、図2および図5は、画像表示装置100の上面視に相当し、図3および図4は、画像表示装置100の右側面視に相当する。画像表示装置100は、バックライト110と、輝度画像表示部112と、集光部114と、屈折板116と、対象画像表示部118と、視差分割部120とを含んで構成される。ここで、図2から図5に示すように、バックライト110、輝度画像表示部112、集光部114、屈折板116、対象画像表示部118、視差分割部120は、ユーザ102から見て、後方からこの順で配置される。
【0022】
バックライト110は、ユーザ102から見て、対象画像表示部118の後方に配置され、対象画像表示部118に照射する光を発光する。本実施形態において、バックライト110は、例えば、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)、冷陰極管(CCFL:Cold Cathode Fluorescent Lamp)等で構成される。
【0023】
輝度画像表示部112は、例えば、液晶等で構成され、バックライト110と対象画像表示部118との間に配置される。輝度画像表示部112は、同時に存在しうる複数の輝度画像を表示する。ここで、輝度画像は、予め定められた領域である輝度ブロック130ごとに、バックライト110から照射される光の透過率を変更することで、輝度で表される画像である。輝度画像は、静止画であってもよいし、動画であってもよい。1の輝度ブロック130を通過した光は、対象画像表示部118の複数の視認領域各々の1の表示画素132に到達することになる。ここで、1の輝度ブロック130は、輝度画像表示部112の1の画素で構成してもよいし、複数の画素で構成してもよい。輝度画像表示部112の具体的な処理については、後に詳述する。
【0024】
なお、バックライト110および輝度画像表示部112は、有機EL(Electro Luminescence)等の1の自発光の表示装置で構成することもできる。この場合、バックライト110と輝度画像表示部112とが電力を費やすことがなくなるので、省電力化を図ることができる。
【0025】
集光部114は、輝度画像表示部112と対象画像表示部118との間に配置され、バックライト110から照射され、輝度画像表示部112を通過した光を、対象画像表示部118の1または複数の表示画素132で構成される視認領域に集光する。ここで、視認領域は、後述する1の開口部140を通じて異なる位置から視認できる、1または複数(例えば100)の、対象画像表示部118の表示画素132で構成される。
【0026】
本実施形態において、集光部114は、輝度画像表示部112が表示する輝度画像を正立画像として屈折板116(焦点面)に結像する。この場合、集光部114は、例えば、屈折率分布型レンズ(Gradient Indexレンズ、セルフォックスレンズ)を含んで構成されてもよいし、凸レンズや凹レンズの組み合わせで構成されてもよい。したがって、ユーザ102の左眼102aは、開口部140を通じて、矢印104aで示される輝度ブロック130を視認することとなり、右眼102bは、矢印104bで示される輝度ブロック130を視認することとなる。なお、同じ時刻に同じ角度θで、隣接する開口部140から見える輝度画像は、1の(同一の)輝度画像である。
【0027】
図2に示すように、輝度画像を屈折板116に結像するために、集光部114の焦点距離は、水平方向(両眼視差を形成する方向:図2では、左右方向)において、1の視認領域の水平方向の長さJhに結像する、複数の輝度ブロック130の水平方向の長さKhと、輝度画像表示部112から集光部114までの距離と、集光部114から屈折板116(焦点面)までの距離等に応じて、設定される。
【0028】
また、図3に示すように、集光部114は、鉛直方向(垂直方向:図3では、左右方向)において、1の視認領域の鉛直方向の長さJvに結像する、複数の輝度ブロック130による輝度画像表示部112の鉛直方向の長さKvが、長さJvと等しくなるように構成される。そして、例えば、図3に示すように、集光部114を円柱レンズの組み合わせで構成する。このように集光部114を円柱レンズの組み合わせで構成する場合、画像表示装置100の鉛直方向の分解能の最小単位は、円柱レンズの鉛直方向の長さ、すなわち1の視認領域の鉛直方向の長さJv、または、輝度画像表示部112の鉛直方向の長さKvによって決定される。
【0029】
また、例えば、図4(a)、(b)に示すように、輝度画像表示部112と集光部114との間に、集光部114に輝度ブロック130を通過した光を導く導光板114aを水平に重ねた積層導光板114bを配置してもよい。このような積層導光板114bを配置する構成において、導光板114aの奥行き方向(図4(a)中の上下方向)の寸法は、輝度画像表示部112と集光部114との隙間がほとんどなくなるようにするとよい。なお、この場合、画像表示装置100の鉛直方向の分解能の最小単位は、積層導光板114bを構成する導光板114aの鉛直方向の厚みによって決定される。
【0030】
また、ここで集光部114は、輝度画像を正立画像として結像する例について説明したが、これに限定されず、集光部114は、輝度画像を倒立画像として屈折板116に結像してもよい。図2を参照すると、この場合、ユーザ102の左眼102aは、開口部140を通じて、矢印106a(図2中、一点鎖線矢印で示す)で示される輝度ブロック130を視認することとなり、右眼102bは、矢印106b(図2中、一点鎖線矢印で示す)で示される輝度ブロック130を視認することとなる。
【0031】
集光部114として、輝度画像表示部112が表示する輝度画像に応じて、正立画像として結像するものや、倒立画像として結像するものを適宜採用するとよい。集光部114と輝度画像の関係ついては後に詳述する。
【0032】
集光部114により集光された光は、対象画像表示部118に集光され、輝度画像表示部112の輝度画像の一部を視認領域に映し出す。ここで、集光部114を構成する各レンズの光軸の延長線上に位置する表示画素132には輝度画像表示部112の光が垂直に近い角度で照射されるが、光軸の延長線上から離れた位置にある表示画素132には、垂直から所定の角度偏差をもって輝度画像表示部112の光が照射されるため、光の利用効率が低下する。したがって、ユーザが観察する角度によって、対象画像表示部118が映し出す画像の明るさが変わってしまう。
【0033】
そこで、集光部114と対象画像表示部118との間に屈折板116を配置し、集光部114により集光された光を屈折板116に集光し、屈折板116が角度偏差を減少させて対象画像表示部118に直角に近い角度で照射する構成とする。なお、屈折板116から対象画像表示部118を通る光を視差分割部120の開口部140に向かう方向に向けることにより、より効果的に画像の明るさを安定させることができる。この場合、屈折板116を対象画像表示部118の集光部114側の面に密着させる、または、屈折板116と対象画像表示部118とを一体形成するとよい。
【0034】
屈折板116は、例えば、プリズムまたはフレネルレンズもしくはこれらの組み合わせで構成され、集光部114と対象画像表示部118との間に配置される。
【0035】
また、屈折板116を備える構成により、対象画像表示部118を通過する光の光路の指向性を向上させることができ、対象画像表示部118を通過する光が、視差分割部120で反射してしまうことによる、ユーザが視認する対象画像や輝度画像の鮮明度の低下を抑制することができ、また、隣接する開口部140への光漏れを抑制することで対象画像の輝度を向上させることも可能となる。
【0036】
対象画像表示部118は、例えば、透過型の液晶ディスプレイで構成され、1または複数の対象画像を表示する。対象画像は、ユーザが視認する対象となる画像である。なお、ここでは、透過型の液晶ディスプレイで構成される対象画像表示部118を例に挙げて説明するが、これに限定されず、対象画像表示部118を、対象画像を固定的に表示するための半透明のシートで構成することもできる。
【0037】
視差分割部120は、ユーザ102から見て、対象画像表示部118の前方に配置され、対象画像表示部118の視認領域に対応した開口部140を複数配列している。したがって、ユーザ102は、1の開口部140を通じて、その開口部140に対応した視認領域を構成する1または1以上の表示画素132を視認することになる。ここで、視差分割部120は、開口部140にレンチキュラーレンズを配したレンチキュラーアレイでも、開口部140の鉛直方向に沿って遮光板を配しても、開口部140にピンホールを配したピンホールアレイでも、開口部140にフライアイレンズを配したフライアイレンズアレイでもよい。
【0038】
また、1の開口部140を通じて、隣接する開口部140から視認される視認領域が見えてしまわないように、対象画像表示部118の、1の開口部140を通じて視認される視認領域と、隣接する開口部140を通じて視認される視認領域との間に、図2に示すように遮光マスク部122を設けてもよい。
【0039】
したがって、図5(a)に示すように、画像表示装置100では、バックライト110から照射された光は、輝度画像表示部112を通過し、対象画像表示部118を通過して、ユーザの眼に入射する。このため、図5(b)に示すように、ユーザが視認する表示画素には、輝度画像が重畳された対象画像の一部の画像である部分画像142が表示される。ユーザは開口部140を通じて、輝度画像が重畳された対象画像を視認することになるが、以下、単に輝度画像を視認すると省略して記載することとする。
【0040】
例えば、輝度画像表示部112のある輝度ブロックの透過率が0%の場合(図5中、黒色で示す)、バックライト110が照射した光は、輝度ブロックにおいて遮光されるため、その輝度ブロックに対応した表示画素にはバックライト110からの光が届かない。したがって、図5(b)に示すように、ユーザが、透過率0%の輝度ブロックに対応する表示画素を視認した場合、その表示画素に表示された部分画像142を黒色の画像であると認識することになる。
【0041】
一方、輝度画像表示部112の輝度ブロックの透過率が100%の場合(図5中、白色で示す)、バックライト110が照射した光は、輝度ブロックにおいて100%透過され、その輝度ブロックに対応した表示画素にはバックライト110からの光が照射される。したがって、図5(b)に示すように、ユーザが、透過率100%の輝度ブロックに対応する表示画素を視認した場合、その表示画素に表示された、対象画像の部分画像142を、その表示画素が表す色の画像であると認識することになる。
【0042】
上述したように、開口部140を通じて、ある位置のユーザ102が視認する対象画像表示部118の位置(表示画素)は、左眼104と右眼106とで異なる(図5(b)参照)。そこで、左眼104で視認する対象画像表示部118の位置に表示させる対象画像(左眼用画像)と、右眼106で視認する対象画像表示部118の位置に表示させる対象画像(右眼用画像)とに水平視差を持たせることで、ユーザは、左眼用画像と右眼用画像に基づく立体画像を知覚することができる。
【0043】
また、画像表示装置100を看板として利用する場合、ユーザ102の位置(ユーザの眼の位置)は画像表示装置100に対して、1つの固定された位置ではなく、画面に平行な方向において異なる複数の位置となることが想定される。例えば、画面に平行な方向に異なる複数の位置として50の位置を想定し、その50の位置にそれぞれユーザがいると仮定して、すべてのユーザに立体画像を知覚させる場合、対象画像表示部118は、開口部140を通じて視認できる100の対象画像を表示することになる。この場合、ユーザは、99の位置から立体画像を知覚することができる。なお、複数の対象画像と、複数の輝度画像は、目的は異なるものの、どちらも同時に表示されるものである。
【0044】
図6は、視差分割部120の開口部140を通じてユーザが視認する輝度画像を説明するための説明図であり、図6(a)は、輝度画像表示部112に表示される輝度画像150aを、図6(b)は、屈折板116に投影される輝度画像150bを、図6(c)は、視差分割部120の開口部140を通じて視認される輝度画像150cを、それぞれ示す。また、図6は、輝度画像が2次元画像の場合であって、鉛直方向の解像度が高い場合を示している。
【0045】
例えば、輝度画像表示部112は、図6(a)に示す、2値化された2次元画像を表示したとする。本実施形態において、集光部114は、輝度画像を正立画像として結像する構成であるため、集光部114によって屈折板116に焦点を結んだ輝度画像150bは、図6(b)に示したような画像となる。例えば、ユーザが画像表示装置100の略正面にいるとすると、ユーザが開口部140を通じて視認する輝度画像150cは、図6(c)に示すように、輝度画像表示部112が表示する輝度画像150aと同様の輝度画像150cとなる。
【0046】
図7は、視差分割部120の開口部140を通じてユーザが視認する対象画像表示部118を説明するための説明図である。図7では、理解を容易にするために、ユーザ102の片眼(例えば、左眼102a)から視認する例について説明し、また、対象画像表示部118と視差分割部120のみを示し、表示画素も抽象的に示して説明する。
【0047】
図7に示すように、開口部140aを通じて、(A)の位置のユーザは、表示画素A7を、(B)の位置のユーザは、表示画素A1を、(C)の位置のユーザは、表示画素A5を、(D)の位置のユーザは、表示画素A8を、それぞれ視認することになる。また、ユーザを基準に考えると、(A)の位置のユーザは、上述したように開口部140aを通じて表示画素A7を、開口部140bを通じて表示画素B7を、開口部140cを通じて表示画素C7を、開口部140dを通じて表示画素D7を視認することになる。なお、ここで、開口部140a、140b、140c、140dは、それぞれ隣接しているわけではなく、ある程度離隔した位置にある。
【0048】
なお、対象画像表示部118の表示画素132は、立体映像を表示するためのものであるため、輝度画像の輝度ブロック130と1対1で対応する必要はない。つまり、対象画像表示部118が表示する対象画像が、例えば、4眼立体カメラで撮影された立体画像であり、対応する視認領域が4分割されたものであって、この視認領域に対応する長さKhにある輝度ブロック130の数が40個であっても、輝度画像の各輝度ブロック130の輝度差が対象画像表示部118を通して、輝度ブロック130の分解能(ここでは40)で表示できればよい。
【0049】
したがって、対象画像表示部118は、表示画素A7、B7、C7、D7に分割して、立体画像を知覚するための対象画像を表示すれば、(A)の位置のユーザは立体画像を知覚することができる。対象画像表示部118は、(B)の位置のユーザに立体画像を知覚させるため、表示画素A1、B3、C5、D7に分割して対象画像を表示し、同様に(C)、(D)の位置のユーザが立体画像を知覚できるように、(C)、(D)から視認できる表示画素に分割して対象画像を表示する。以下、このような、1の開口部140を通じて視認できる複数の表示画素、すなわち視認領域を構成する複数の表示画素に表示される、同時に存在しうる複数の対象画像それぞれの同一の位置から抽出された部分画像の群(例えば、図7の開口部140aにおいては、A1〜A9)、を一組の多眼画素群と称する。
【0050】
このように、対象画像表示部118が、例えば、100の対象画像をそれぞれ、表示画素に相当する数の部分画像に分割して、対象画像の同一の位置の部分画像を並べて、多眼画素群を生成し、開口部140から視認できるように一組の多眼画素群を表示すると、ユーザは、99の位置のどこで視認しても立体画像を知覚することができる。したがって、上述したように、画像表示装置100によって表示された対象画像(3次元画像)を実際の対象物と勘違いすることもある。そこで、輝度画像表示部112を設けることにより、ユーザが停止しているときは、ユーザに伝達すべき対象画像のみを知覚させることができ、ユーザが画像表示装置100に向かって移動しているときには、対象画像のみならず、画像表示装置100が表示した画像であることをユーザに認識させることができる画像をも表示することが可能となる。以下に、本実施形態の画像表示装置100の特徴である、輝度画像表示部112の処理について詳述する。
【0051】
(輝度画像表示部112の処理)
上述した図7を参照すると、ユーザが(A)から(B)に移動していると、ユーザが開口部140aを通じて視認できる対象画像表示部118の表示画素は、表示画素A7から表示画素A1になる。例えば、(A)と(B)との距離が1500(mm)であるとし、ユーザの移動速度を1200(mm/秒)とすると、ユーザが(A)から(B)までの移動に要する時間は、1.25秒となる。つまりユーザは、(A)から(B)まで移動する1.25秒の間に、表示画素A7、A6、A5、A4、A3、A2、A1の順で表示画素を視認することになる。
【0052】
ここで、輝度画像表示部112が、表示画素A7からA1までのそれぞれの表示画素で輝度が異なるように輝度画像を表示すると、ユーザが、開口部140aを通じて視認するものが変化することになる。例えば、図7で示す例では、ユーザは1秒間に5または6の表示画素を視認することになる。また、表示画素A7から表示画素A1に相当する領域に75の表示画素がある場合、ユーザは、1秒間に60の表示画素を視認することになる。
【0053】
本実施形態において、輝度画像表示部112は、基準となる分割領域である基準領域を基準として、基準領域に離隔するに従って、または、基準領域に向かうに従って、分割画像を順次所定時間遅延させて表示する。ここで、分割領域は、輝度画像表示部112の予め定められた領域であり、分割領域の水平方向の長さは、予め定められた整数個(例えば、1個)の輝度ブロック130の水平方向の長さと等しく、鉛直方向の長さは輝度画像表示部112の鉛直方向の長さまで伸ばしてもよく、また、構成による鉛直方向の分解能に応じて分割してもよい。また、分割画像は、複数の輝度画像を分割領域毎に分割したものである。
【0054】
なお、本実施形態では、輝度画像を正立画像として結像する集光部114を採用しているため、輝度画像表示部112が、基準領域を始点とし、基準領域から水平方向に離隔するに従って、分割画像を順次所定時間遅延させて表示するが、輝度画像を倒立画像として結像する集光部114を採用する場合、輝度画像表示部112は、基準領域を終点とし、水平方向に基準領域に向かうに従って、分割画像を順次所定時間遅延させて表示する。
【0055】
こうすることで、輝度画像表示部112は、ユーザが移動に伴って視認する表示画素A7からA1までのそれぞれの表示を異ならせることができる。また、輝度画像表示部112は、任意の時刻に、任意の視認角度で、隣接する複数の開口部140を通じて、分割画像が連結して、複数の輝度画像のうち1の輝度画像の少なくとも一部が見えるように、分割画像を表示する。
【0056】
また、輝度画像表示部112は、予め定められた時間範囲における輝度ブロック130ごとの透過率の平均値が、すべての輝度ブロック130において略等しくなるように、分割画像を所定の順番かつ時分割でそれぞれ等しい時間、分割領域に表示する。
【0057】
図8は、輝度画像表示部112が複数の輝度画像を表示する例について説明するための説明図である。
【0058】
輝度画像表示部112は、複数(ここでは3)の輝度画像(図8(a)に示す輝度画像152a、152b、152c各1枚)を表示する。図8(a)に示すように、輝度画像152aおよび輝度画像152bは、輝度値E(例えば、輝度値が90)の輝度ブロック(図8中、白色で示す)と、輝度値F(例えば、輝度値が0)の輝度ブロック(中、黒色で示す)とで生成される。また、輝度画像152cは、輝度値Eの輝度ブロックのみで生成される。
【0059】
輝度画像表示部112は、図8(b)に示すような、輝度画像150aを分割領域ごとに分割した分割画像P1、P2、P3、P4、P5、P6と、輝度画像150bを分割領域ごとに分割した分割画像Q1、Q2、Q3、Q4、Q5、Q6と、輝度画像150cを分割領域ごとに分割した分割画像R1、R2、R3、R4、R5、R6とを、所定の順番かつ時分割でそれぞれ等しい時間、分割領域に表示し、かつ、基準領域を始点とし、基準領域から水平方向に離隔するに従って、分割画像を順次所定時間遅延させて表示する。
【0060】
具体的に説明すると、例えば、輝度画像表示部112は、図8(c)に示すように、時刻t0のとき、図7に示す表示画素A7の列(表示画素A8と鉛直方向の位置が同じである複数の表示画素の群)に対応する分割領域A−7にQ5を、時刻t0の次の時刻t0+1のとき、A−7にR5を、次の時刻t0+2のとき、A−7にP5をそれぞれ等しい時間表示する。
【0061】
こうすると、例えば、ユーザが図7の(A)の位置で停止している場合、図8(c)に示す、任意の時刻t0において、ユーザは、開口部140aから分割画像Q5を視認でき、ユーザは、輝度画像152aの一部を視認することになる。同様に、ユーザは開口部140aを通じて、時刻t0+1において分割画像R5を、時刻t0+2において分割画像P5を視認することになる。
【0062】
したがって、図7の(A)の位置にいるユーザは、予め定められた時間範囲(時刻t0〜t0+2)において、輝度画像152aと輝度画像152bと輝度画像152cとを1:1:1の時間の比率で視認することになるため、輝度画像を構成する輝度ブロックごとの輝度値(透過率)の平均値が、すべての輝度ブロックにおいて略等しく、輝度値(2E+F)/3となる。
【0063】
同様に、輝度画像表示部112は、時刻t0、時刻t0+1、時刻t0+2において、分割領域A−3に分割画像P1、Q1、R1を、分割領域A−4に分割画像Q2、R2、P2を、分割領域A−5に分割画像R3、P3、Q3を、分割領域A−6に分割画像P4、Q4、R4を、分割領域A−8に分割画像R6、P6、Q6をそれぞれ表示する。すなわち輝度画像表示部112は、分割領域A−3、A−6には輝度画像152a、152b、152cの順で、分割領域A−4、A−7には輝度画像152b、152c、152aの順で、分割領域A−5、A−8には輝度画像152c、152a、152bの順で、それぞれの分割領域に対応する分割画像を等しい時間表示する。この場合、図8(d)に示すように、表示画素A3は輝度値Eで、A4は輝度値Fで、A5は輝度値Eで、A6は輝度値Eで、A7は輝度値Fで、A8は輝度値Eで表示されることになる。
【0064】
そうすると、停止しているユーザは、どの位置にいたとしても、図8(c)に示すように、見かけ上、輝度画像152a、152b、152cが平均化された輝度画像152dを視認することになる。したがって、ユーザが停止していると、輝度画像152a、152bに示される横縞を認識することができない。
【0065】
つまり、ユーザが複数の開口部140を通じて視認することができる輝度画像を構成する輝度ブロックの透過率は輝度ブロックごとに変更されているものの、ユーザが停止して輝度画像表示部112を見ている場合、輝度ブロックの透過率の所定時間範囲の平均値はすべて略等しくなるため、ユーザは、輝度が略均一な輝度画像、すなわち、情報を有さない画像を視認することになり、対象画像のみを認識することになる。
【0066】
一方、輝度画像表示部112は、図8(c)に示すように、基準となる分割領域である基準領域(図8に示す例では、分割領域A−8を基準領域とする)を始点とし、基準領域から水平方向に離隔するに従って、分割画像を順次所定時間遅延させて表示する。なお、輝度画像表示部112が、抽出した分割画像を遅延させる遅延時間Yの導出方法は、後に詳述する。
【0067】
こうすると、ユーザが図7の(A)の位置から(A)よりも画像表示装置100に近い(B)の方向に移動している場合、図8(c)に示す、時刻t0において、(A)の位置のユーザは、開口部140aから表示画素A7に表示された分割画像Q5を視認することになり、ユーザは、輝度画像152bの一部を視認することができる。同様に、ユーザは、開口部140aを通じて、時刻t0+1において表示画素A6に表示された分割画像Q4を、時刻t0+2において表示画素A5に表示された分割画像Q3を視認することになる。したがって、ユーザは、輝度画像152bのみを視認することになる。
【0068】
このように、少なくとも2種類の輝度で輝度画像を構成すれば、ユーザは、輝度画像を視認することができる。また、2種類の輝度で輝度画像を構成することにより、輝度画像表示部112を開閉の電子シャッタ等で構成でき、細かい透過率を表現しなくてよくなるので、コストを低減することが可能となる。
【0069】
なお、ここでは、輝度画像を2種類の輝度で構成しているが、輝度画像は、3種類以上の輝度で構成されてもよい。また、例えば、輝度画像表示部112に表示される輝度画像が5枚であり、ある輝度ブロック130には5種類の輝度で交互に表示される場合、他の輝度ブロック130にも同じ5種類の輝度で同じ頻度表示されると全体的な輝度が均一化されるが、その表示順序は限定されない。
【0070】
図9は、輝度画像の他の例を説明するための説明図である。例えば、上述した図8では、輝度画像152a、152bが横縞模様の画像(1次元画像)であるため、集光によって結像する画像は正立画像であっても倒立画像であってもよいが、鉛直方向の分解能を構成するために、円柱レンズで構成された集光部114を採用したり、積層導光板114bを集光部114に組み合わせることが必要となる。しかし、輝度画像表示部112が、図9(a)で示す、2次元画像の輝度画像154a、154bを表示する場合、倒立画像として結像させる集光部114を利用すると、ユーザは、輝度画像154a、154bを、左右上下が反転した像を視認することになってしまう。そこで、輝度画像表示部112が2次元画像の輝度画像を表示する場合、正立画像として結像させる集光部114を利用する必要があり、かつ円柱レンズで構成された集光部114を採用したり、積層導光板114bを集光部114に組み合わせることが必要となる。なお、輝度画像表示部112が、図9(b)、(c)に示す、1の輝度で表される輝度画像156a、156bまたは縦縞を示す輝度画像158a、158b(0次元画像)である場合、屈折板116または対象画像表示部118に、集光により結像する画像は、正立画像であっても倒立画像であってもよいので、倒立画像として結像させる集光部114を採用することができる。
【0071】
(輝度画像表示部112が遅延させる遅延時間Yの導出方法)
輝度画像表示部112が、基準領域から水平方向に離隔するに従って、分割画像を順次所定時間遅延させて表示するときの、遅延時間Yは、以下の式で導出することができる。
【0072】
例えば、ユーザが図7の(A)から(B)へ移動する場合、ユーザの平均の移動速度を1200(mm/秒)、図7の(A)から(B)までの距離を1500(mm)とし、開口部140aを通じて1秒間に60の分割画像を視認させるように構成すると、ユーザは、図7の(A)から(B)へ移動する間に、図7中表示画素A1からA7に相当する領域で75の分割画像を視認することになる。また、ユーザが図7の(A)から1920(mm)の距離を、平均の移動速度1200(mm/秒)で移動して、開口部140aを通じて図7中表示画素A1からA9を視認する場合には、ユーザは表示画素A1からA9に相当する領域で96の分割画像を視認することになる。
【0073】
そして、開口部140が含まれる平面からユーザの位置までの距離をL1(図7中、開口部140が含まれる平面から(A)までの距離をL1aで、開口部140が含まれる平面から(B)までの距離をL1bで示す)、(A)から開口部140が含まれる平面に延ばした垂線と開口部140が含まれる平面との交点から、視認対象である開口部140aまでの距離をL2、開口部140から対象画像表示部118までの距離をs1、開口部140aおよび対象画像表示部118の表示面に直交する線と対象画像表示部118の表示面との交点から、ユーザの位置で開口部140aから視認できる表示画素(ユーザがの位置が(A)の場合は、表示画素A7)までの距離をs2とすると、s2は、数式(1)で示される。
s2=s1・L2/L1
…数式(1)
【0074】
ここで、s1を0.1(mm)、L2を2000(mm)、L1を2000(mm)とすると、上記数式(1)に代入してs2は0.1(mm)となり、s1を0.1(mm)、L2を2000(mm)、L1を500(mm)とすると、s2は0.4(mm)となる。
つまり、ユーザが、(A)の位置(L1aが2000(mm))から、(B)の位置(L1bが500(mm))まで近づくと、ユーザが開口部140aを通じて視認できる表示画素の総距離は、(B)のs2である0.4(mm)から(A)のs2である0.1(mm)を減した値である0.3(mm)となる。ここで、ユーザが移動速度1200(mm/秒)で、(A)から(B)まで移動すると、(A)から(B)までにかかる移動時間は1.25秒となり、表示画素上の見かけのユーザの視線の移動速度は平均0.24(mm/秒)となる。
ここで、ユーザが画像表示装置100に近づく速さを、L1v(mm/秒)、移動開始を0とする経過時間を時間tとすると、
s2(t)=s1・L2/(L1a−L1v・t)
…数式(2)
s2の移動速度、をs2v(mm/秒)とすると、
s2v(t)=s1・L2・L1v/{(L1a)2−2・L1a・L1v・t+(L1v・t)2}
…数式(3)
【0075】
図10は、数式(2)および数式(3)を利用して算出した移動速度を示す図であり、図11は、数式(2)および数式(3)を利用して算出したs2とL1の関係(図11(a))、s2と時間tの関係(図11(b))およびs2vと時間tの関係(図11(c))を示す図である。図11では、s1を0.1(mm)、L2を2000(mm)とした場合を示す。
【0076】
図10(a)は、L2を2000(mm)、s1を0.1(mm)、L1vを1200(mm/秒)とした場合の移動速度を示す表であり、図10(b)は、L2を1000(mm)、s1を0.1(mm)、L1vを1200(mm/秒)とした場合の移動速度を示す表である。なお、ここでユーザが開口部140aを通じて視認できる視認領域の幅を0.3(mm)とし、この幅の視認領域に75の分割画像が表示されるとすると、1の分割画像の幅は0.004(mm)となる。
【0077】
図10に示すように、数式(2)、数式(3)を用いてs2vを導出すると、ユーザの視線の移動速度(個/秒)は、s2v/0.004で導出することができる。そして、かかる移動速度に相当する速度で分割画像を水平方向に移動するかの如く切り換えると、ユーザは、1の輝度画像による任意の画像を視認することができることとなる。このようにユーザの視線の移動速度に、分割画像を水平方向に移動するかの如く切り換える切換速度を合わせた場合、抽出した分割画像を遅延させる遅延時間Yは、s2v/0.004の逆数となって図10(a)、(b)のような値となる。
【0078】
したがって、図10(a)および図10(b)に示すように、輝度画像表示部112は、1/60秒で分割画像を遅延させて表示させることによって、ユーザが1200(mm/秒)で画像表示装置100に接近すると、L1が1000(mm)の地点でL2が2000(mm)の位置に輝度画像が見え(図10(a)参照)、L1が707(mm)の地点でL2が1000(mm)の位置に輝度画像が見えることになる(図10(b)参照)。
【0079】
図12、図13は、ユーザが開口部140を通じて略同じ角度で視認できる画像表示装置100の水平方向の幅を説明するための説明図である。図12の例において、開口部140が含まれる平面からユーザの位置までの距離L1を1000(mm)、位置Uから開口部140が含まれる平面に延ばした垂線と開口部140が含まれる平面との交点から、視認対象である開口部140eまでの距離L2を1000(mm)、開口部140から対象画像表示部118までの距離s1を0.1(mm)、ユーザの移動速度L1vを1200(mm/秒)とし、輝度画像152aの分割画像Wの切換速度s2Vを0.120(mm/秒)、開口部140eから隣接する開口部140fまたは開口部140gまでの距離を0.3(mm)、1の分割画像Wの幅は0.004(mm)とする。
【0080】
図12(a)に示すように、ユーザが開口部140eを通じて角度θで対象画像表示部118を視認することができる位置を位置Uとし、隣接する開口部140fを通じて角度θで対象画像表示部118を視認することができる位置を位置Vとすると、位置Uと位置Vとの距離Kは、以下の数式(4)を利用して算出することができる。
tanθ=L1/L2=(L1−K)/(L2−0.3(mm))
…数式(4)
【0081】
したがって、Kは、0.3(mm)となる。ユーザが、位置Uから位置VまでL1Vで移動すると、この移動にかかる時間は、0.3(mm)/1200(mm/秒)=0.00025秒となる。
【0082】
ここで、ユーザが位置Uにいる時点において、輝度画像表示部112が、各開口部140を通じて角度θで視認できる対象画像表示部118の位置に分割画像Wを表示すると、分割画像Wの切換速度s2Vは0.120(mm/秒)であるので、ユーザが位置Vに移動したときに開口部bを通じて視認できる分割画像Wは、0.120(mm/秒)×0.00025(秒)=0.03(μm)移動することになる(図12では、右方向に移動するとする)。
【0083】
したがって、分割画像Wの水平方向の幅は0.004(mm)であるため、ユーザが、略同じ角度θで視認できる画像表示装置100の水平方向の幅は、0.004(mm)×0.3(mm)/0.03(μm)=40(mm)となる。
【0084】
図12(b)は、位置Uから約45度(θが約45度)の角度で見える3つの開口部140(図12(b)中、開口部140h、140i、140jで示す)を示す。ここでは、説明の便宜のため、位置Uから開口部140までの距離や、分割画像Wの幅を模式的に示している。図12(b)に示すように、分割画像Wの水平方向の幅が、0.004(mm)である場合、上述したように、ユーザは、画像表示装置100の表示画面上の水平方向の幅40(mm)において同じ分割画像Wを映す表示画素132が見えることになる。また、図12(b)に示すように、ユーザは、位置Uから開口部140hを通じて分割画像Wの左端を見ているとすると、開口部140hから水平方向に40(mm)離隔した位置にある開口部140iを通じて分割画像Wの右端を見ることになる。
【0085】
さらに、図12(b)に示す、2つの開口部140h、140iの中間の位置にある、開口部140jを通して見える表示画素132は、同じ分割画像Wを映すものであり、また、位置Uにいるときに、ユーザは、その分割画像W(表示画素132)の中央の位置を見ることになる。
【0086】
そうすると、図13に示すように、ユーザは位置AAにいる場合に、ユーザの視線と画像表示装置100の為す角が角度θとみなされる(角度θと略等しい角度である)範囲、すなわち、画像表示装置100上の水平方向が40(mm)幅の領域に分割画像Wの群が視認できる。そして、ユーザが、画像表示装置100に向かって1200(mm/秒)で移動すると、位置BBに来たときにも、位置CCに来たときにも角度θとみなされる範囲に分割画像Wの群を視認することができる。
【0087】
ユーザの移動速度が1200(mm/秒)の整数倍の速度でない場合、例えば位置AAにおいて輝度画像152aの分割画像Wの群が視認できていたとしても、位置BBにおいて輝度画像152aの分割画像Wの群は視認できず、輝度画像の遅延速度と同期すれば、他の輝度画像152bまたは輝度画像152cの分割画像の群を視認することができる。
【0088】
なお、ユーザがどの輝度画像を視認することができるかは、ユーザと画像表示装置100の角度、ユーザの位置、ユーザの移動速度とそれぞれの輝度画像の表示タイミングによる。
【0089】
図14は、ユーザが視認する画像表示装置100の対象画像および輝度画像を説明するための説明図である。
【0090】
また、輝度画像が見える位置は、表示画素のサイズ、遅延時間Y、ユーザの位置およびユーザの移動速度によって変化する。例えば、図14(a)に示すように、ユーザが停止している場合、輝度画像を認識することはできないが、図14(b)に示すようにユーザが画像表示装置100に向かって移動すると、画像表示装置100の画面の左右の両端に輝度画像を視認することができるようになる。また、図14(c)、(d)に示すように、ユーザの移動速度が速いほど、またユーザの位置が画像表示装置100に近いほど、ユーザは、画像表示装置100の画面の左右の両端から中央側に寄って輝度画像を視認することになる。特に図14(d)において、ユーザは、画像表示装置100の画面の中央側のみならず、画面の左右両端にも輝度画像を視認することができる。
【0091】
ここで、輝度画像表示部112は、基準領域Xを始点とし、基準領域Xから水平方向に離隔するに従って、分割画像を、遅延時間Yで、順次所定時間遅延させて表示しているが、遅延時間Yは、輝度画像表示部112の表示画面全体に渡って同じとする必要はなく、所定の領域に区分して、それぞれ独立して変更してもよい。ただし、同じ方向から見た隣接する開口部140を通じて見える表示画素は、所定の時刻には1の輝度画像の表示となるように構成する必要がある。
【0092】
また、基準領域Xは、対象画像表示部118の表示画面の中心に位置する表示画素に対応する輝度画像表示部112の輝度ブロック130を含む分割領域とするとよい。こうすることで画像表示装置100の中心に向けて接近するユーザの両脇に輝度画像を表示することができる。
【0093】
また、上述した例(数式(2)および数式(3))では、ユーザが画像表示装置100に向かって垂直方向に移動する場合の遅延時間Yの算出方法について説明したが、ユーザが画像表示装置100の表示面と平行に移動する場合に輝度画像を視認させることもできる。この場合、以下の数式を用いて、ユーザの視線の移動速度s2v(mm/秒)を求め、それに相当する分割画像を水平方向に移動するかの如く切り換える切換速度、または、その逆数をとって、抽出した分割画像を遅延させる遅延時間Yを算出することができる。
s2(t)=s1・(L2+L2v・t)/L1
…数式(4)
s2v(t)=s1・L2v/L1
…数式(5)
【0094】
以上説明したように、本実施形態における画像表示装置100によれば、ユーザが停止しているときは、対象画像のみを知覚させることができ、ユーザが画像表示装置100に向かって移動しているときには、対象画像のみならず輝度画像の一部を視認させ、画像表示装置100が表示した対象画像である旨をユーザに違和感なく認識させることができる。したがって、画像表示装置100が対象画像として3次元画像を表示する場合、ユーザが、画像表示装置100によって表示された3次元画像を実際の対象物と誤認してしまうことによって生じる問題を回避することが可能となる。
【0095】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0096】
例えば、上述した実施形態では、対象画像表示部118は、対象画像として3次元画像を表示しているが、これに限定されず、2次元画像を表示してもよい。この場合、ユーザが画像表示装置100に向かって移動すると、輝度画像が示す文字、記号、絵等を視認することができるようになるので、広告の効果を向上させることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、画像を表示する画像表示装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0098】
100 …画像表示装置
110 …バックライト
112 …輝度画像表示部
114 …集光部
116 …屈折板
118 …対象画像表示部
120 …視差分割部
140 …開口部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが視認する対象となる画像である対象画像を表示する透過型の対象画像表示部と、
前記対象画像表示部の前方に配置され、前記対象画像表示部を構成する表示画素を1または複数含む視認領域に対応した開口部を複数配列した視差分割部と、
前記対象画像表示部の後方に配置されたバックライトと、
前記対象画像表示部と前記バックライトとの間に配置され、前記対象画像表示部の予め定められた領域である輝度ブロックごとに前記バックライトから照射される光の透過率を変更することで、輝度で表される画像である輝度画像を表示する輝度画像表示部と、
前記輝度画像表示部と前記対象画像表示部との間に配置され、前記バックライトから照射され、前記輝度画像表示部を通過した光を、前記対象画像表示部の視認領域に集光する集光部と、
を備え、
前記輝度画像表示部は、
予め定められた時間範囲における輝度ブロックごとの透過率の平均値がすべての輝度ブロックにおいて略等しくなるように、予め定められた複数の輝度画像を前記輝度画像表示部の予め定められた領域である分割領域ごとに分割した分割画像を、所定の順番かつ時分割でそれぞれ等しい時間、前記分割領域に表示し、
かつ、基準となる分割領域である基準領域を基準として、水平方向の予め定められた、前記基準領域に離隔するに従って、または、前記基準領域に向かうに従って、前記分割画像を順次所定時間遅延させて表示し、
任意の時刻に、任意の視認角度で、隣接する複数の開口部を通じて、前記複数の輝度画像のうち1の輝度画像の少なくとも一部が見えるように、分割画像を表示することを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記バックライトおよび前記輝度画像表示部は、1の自発光の表示装置で構成されることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記集光部と前記対象画像表示部との間に、屈折板をさらに備え、
前記屈折板は、前記集光部で集光された光を、前記対象画像表示部に直交する方向に屈折させ、前記視認領域に収めることを特徴とする請求項1または2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記輝度画像表示部は、2種類の輝度で前記輝度画像を構成すること特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項1】
ユーザが視認する対象となる画像である対象画像を表示する透過型の対象画像表示部と、
前記対象画像表示部の前方に配置され、前記対象画像表示部を構成する表示画素を1または複数含む視認領域に対応した開口部を複数配列した視差分割部と、
前記対象画像表示部の後方に配置されたバックライトと、
前記対象画像表示部と前記バックライトとの間に配置され、前記対象画像表示部の予め定められた領域である輝度ブロックごとに前記バックライトから照射される光の透過率を変更することで、輝度で表される画像である輝度画像を表示する輝度画像表示部と、
前記輝度画像表示部と前記対象画像表示部との間に配置され、前記バックライトから照射され、前記輝度画像表示部を通過した光を、前記対象画像表示部の視認領域に集光する集光部と、
を備え、
前記輝度画像表示部は、
予め定められた時間範囲における輝度ブロックごとの透過率の平均値がすべての輝度ブロックにおいて略等しくなるように、予め定められた複数の輝度画像を前記輝度画像表示部の予め定められた領域である分割領域ごとに分割した分割画像を、所定の順番かつ時分割でそれぞれ等しい時間、前記分割領域に表示し、
かつ、基準となる分割領域である基準領域を基準として、水平方向の予め定められた、前記基準領域に離隔するに従って、または、前記基準領域に向かうに従って、前記分割画像を順次所定時間遅延させて表示し、
任意の時刻に、任意の視認角度で、隣接する複数の開口部を通じて、前記複数の輝度画像のうち1の輝度画像の少なくとも一部が見えるように、分割画像を表示することを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記バックライトおよび前記輝度画像表示部は、1の自発光の表示装置で構成されることを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記集光部と前記対象画像表示部との間に、屈折板をさらに備え、
前記屈折板は、前記集光部で集光された光を、前記対象画像表示部に直交する方向に屈折させ、前記視認領域に収めることを特徴とする請求項1または2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記輝度画像表示部は、2種類の輝度で前記輝度画像を構成すること特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−108420(P2012−108420A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258830(P2010−258830)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.セルフォック
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.セルフォック
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】
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