説明

画像記録体の作製装置

【課題】 プラスチックフィルムへの画像形成手段として電子写真装置を用いた画像記録体の作製装置に関し、不良品を出すことなく、高解像度の画像記録体を高い生産性で連続して作製することができる画像記録体の作製装置を提供することである。
【解決手段】 フィルムの表面に画像を形成する画像形成手段と、支持体と前記フィルムを重ね合わせ積層体とする位置決め手段と、前記積層体をベルト対により形成されるニップ部を通過させて加熱加圧する加熱圧着手段とを含み、前記ベルト対の少なくとも一方の前記ニップ部を形成する側の面に、少なくとも1ヶ所グリップ部を設けるとともに、前記グリップ部の位置を検出する検出部と、該検出部からの出力信号に応じて前記積層体を搬送し、前記ニップ部の入口で積層体の先端部及び前記グリップ部を接触させるタイミング制御部とを含むタイミング制御手段を設けた画像記録体の作製装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置によって形成された画像を用いたプラスチックシート等の画像記録体の作製装置に関し、より詳細には、顔写真入りキャッシュカードや社員証、学生証、個人会員証、居住証、各種運転免許証、各種資格取得証明等の非接触式又は接触式個人情報画像情報入り情報媒体、さらに医療現場などで用いる本人照合用画像シートや画像表示板、表示ラベルなどに用いられる画像記録体の作製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像形成技術の発達に伴って、凹版印刷、凸版印刷、平版印刷、グラビヤ印刷及びスクリーン印刷などの様々な印刷法により、同一品質の画像を、大量かつ安価に形成する手段が知られている。そして、このような印刷法は、ICカード、磁気カード、光カード、あるいはこれらが組み合わさったカードなど、所定の情報を納め、外部装置と接触または非接触に交信可能な情報媒体の表面印刷にも多く用いられている。
【0003】
しかしながら、例えば上記スクリーン印刷は、印刷しようとする画像の数に応じた印刷版が多数必要であり、カラー印刷の場合には、さらにその色の数だけ印刷版が必要となる。そのため、これら印刷方法は、個人の識別情報(顔写真、氏名、住所、生年月日、各種免許証など)に個々に対応するには不向きである。
【0004】
上記問題点に対して、現在もっとも主流となっている画像形成手段は、インクリボン等を用いた昇華型や溶融型の熱転写方式を採用したプリンタ等による画像形成方法である。しかし、これらは個人の識別情報を容易に印字することはできるが、印刷速度を上げると解像度が低下し、解像度を上げると印刷速度が低下するという問題を依然抱えている。
【0005】
これに対して、電子写真方式による画像形成(印刷)は、像担持体表面を一様に帯電させ、画像信号に応じて露光し、露光部分と非露光部分との電位差による静電潜像を形成させ、その後、前記帯電と反対(あるいは同一)の極性を持つトナーと呼ばれる色粉(画像形成材料)を静電現像させることにより、前記像担持体表面に可視画像(トナー画像)を形成させる方法で行われる。カラー画像の場合は、この工程を複数回繰り返すこと、あるいは画像形成器を複数並配置することによりカラーの可視画像を形成し、これらを画像記録体に転写、定着(固定化:主に熱による色粉の溶融と冷却による固化)することによりカラー画像を得る方法で行われる。
【0006】
上述のように、電子写真方式では、像担持体表面の静電潜像を画像信号により電気的に形成するため、同じ画像を何度でも形成できるだけでなく、異なる画像に対しても容易に対応でき画像形成することが可能である。また、像担持体表面のトナー画像は、ほぼ完全に画像記録体表面に転移させることができ、像担持体表面にわずかに残存するトナー画像も、樹脂ブレードやブラシ等により容易に除去することができるため、多品種少量生産に向けた印刷物を容易に作製することが可能である。
【0007】
また、上記トナーは、通常、熱溶融性樹脂及び顔料、並びに場合によっては帯電制御剤などの添加剤を溶融混合し、この混練物を粉砕、微粒子化して形成される。さらに、前記電子写真方式における静電潜像は、上記微粒子化されたトナーに比べてかなり高い解像度を持っており、前記スクリーン印刷やインクリボンの熱転写方式の解像度と比べても十分な解像度が期待できる。
【0008】
カラー画像についても、カラートナーとしてシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの四原色を用い、これらを混合することにより、理論的に印刷と同様の色を再現できる。また、上記カラートナーでは、トナー樹脂と顔料とを比較的自由に配合できるため、トナーによる画像隠蔽性を増加させることは容易である。
【0009】
前述の電子写真装置を使用して、各種カードの印字を行った例としては以下のものが挙げられる。
例えば、片方の面に電子写真装置で定着画像が形成された2つの光透過性フィルムを、コアシートを介して積層し位置決めを行い、その積層体を加熱加圧することで、コアシートを2つの光透過性フィルムでラミネートしてカードを作製する方法が提示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−195973号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一般にカード印刷の場合、その表面には高光沢が求められる。上記のようなカード印刷装置では、ラミネータのベルト表面が作製するカードの表面にそのまま転写されるため、ラミネータのベルトには光沢度の高いものが使用されている。しかしながら、光沢度の高いベルトはフィルムからなる積層体との摩擦係数が小さく、ラミネータのベルト対により形成されるニップ部に積層体が入る際に両者の間ですべりが発生したり、ニップ部に入らずに積層体の詰まりが発生してしまうことがあった。
【0011】
また、前記電子写真装置では、フィルムに画像を定着する定着装置において、定着装置にトナーが付着するのを防止するためオイルを供給しており、このオイルが積層体表面に付着している。このため、定着装置の劣化でオイルの付着量が増大すると、特に前記ニップ部での積層体の詰まりが顕著となり、頻繁に定着装置の清掃が必要になるなどの信頼性の観点で問題があった。
【0012】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決することを目的とする。
すなわち、本発明は、プラスチックフィルムへの画像形成手段として電子写真装置を用いた画像記録体の作製装置に関し、不良品を出すことなく、高解像度の画像記録体を高い生産性で連続して作製することができる画像記録体の作製装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題は、以下の本発明により達成される。すなわち本発明は、
<1> 少なくとも、フィルムの表面に電子写真方式により画像を形成する画像形成手段と、前記フィルムを、少なくとも支持体の片面と前記画像が形成された面とが互いに対面するように重ね合わせ積層体とする位置決め手段と、位置決めされた前記積層体をベルト対により形成されるニップ部を通過させて加熱加圧する加熱圧着手段と、を含んでなる画像記録体の作製装置であって、
前記ベルト対の少なくとも一方の前記ニップ部を形成する側の面に、少なくとも1ヶ所グリップ部を設けるとともに、前記グリップ部の位置を検出する検出部と、該検出部からの出力信号に応じて前記積層体を搬送し、前記ニップ部の入口で積層体の先端部及び前記グリップ部を接触させるタイミング制御部とを含むタイミング制御手段を設けた画像記録体の作製装置である。
【0014】
上記<1>の発明では、ベルト上にグリップ部を設け、該グリップ部の位置を検出する検出部の出力信号に応じて、積層体のニップ部入口への搬送のタイミングを制御することができるため、積層体はニップ部入口でベルトのグリップ部と接触することになり、安定してニップ部に突入させることができる。
【0015】
<2> 前記グリップ部の表面の粗さが、算術平均粗さRaで0.1〜2.0μmの範囲である<1>に記載の画像記録体の作製装置である。
【0016】
上記<2>の発明では、ベルトの表面を粗すという簡易な方法でグリップ部を形成することにより、積層体との摩擦力を大きくすることができ、安定して積層体をニップ部に突入させることができる。
【0017】
<3> 前記グリップ部が、ベルトに複数の穴あるいは溝を形成することで構成されている<1>に記載の画像記録体の作製装置である。
【0018】
上記<3>の発明では、ベルトに複数の穴あるいは溝を形成してグリップ部を設けることにより、積層体を安定してニップ部に突入させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、画像形成手段として従来の電子写真装置を大きく改造することなく用い、高解像度のプラスチックシート(画像記録体)を、不良品やマシントラブルを発生することなく高い生産性で製造することができる画像記録体の作製装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、下記において実質的に同様の機能を有するものには、全図面通して同じ符号を付して説明し、場合によってはその説明を省略することがある。まず、前記効果を得ることができる本発明の画像記録体の作製装置を説明する前に、本発明により作製される画像記録体について簡単に説明する。
【0021】
図6に本発明の画像記録体の作製装置により作製される画像記録体の一例の構成断面図を示す。この画像記録体は、コアシート(支持体)の表裏に少なくとも一方の面にトナー画像が形成された電子写真用ラミネートフィルム(以下、「ラミネートフィルム」という場合がある)を重ね合わせラミネートされてなる。
図6に示すように、画像記録体は、コアシート1と画像2、4が形成された表面フィルム3及び裏面フィルム5(共に電子写真用ラミネートフィルム)とが、画像2、4が形成された側の面がコアシート1と各々と対向するように重ねられ、ラミネートされて構成されている。
【0022】
なお、画像記録体の構成は、図6に示す例のみに限定されるものではなく、例えば、表面フィルム3および裏面フィルム5のいずれか一方が非光透過性フィルムであってもよいし、画像2、4のうち、いずれか一方の画像の形成を省略してもよい。また、表面フィルム3及び/または裏面フィルム5(例えば、光非透過性フィルム)の片面に画像を形成し、その非画像面を対向させてラミネートする形態であってもよい。この場合、フィルムにおける画像形成面をさらに保護用フィルムでラミネートしてもよい。したがって、電子写真用ラミネートフィルム表面に形成される画像は正像であってもよいし、鏡像であってもよい。
【0023】
また、図7は本発明のプラスチックシートの作製装置により作製される他の画像記録体に関し、画像記録体の作製における加熱圧着前の状態と、加熱圧着、剥離後の画像記録体の一例を示す断面図である。図7中、100、200は電子写真用画像形成材料転写シート、300は被転写体(支持体)を表す。
図7(a)は、電子写真用画像形成材料転写シート(以下、「転写シート」という場合がある)100及び200と、被転写体300とを重ね合わせて積層体を構成した時の状態を示すものである。加熱圧着前は、画像形成材料(トナー、本発明においては転写シート上に鏡面で形成されたもの)130は転写シートの画像受像層120、220側、あるいは画像受像層120、220と被転写体300との界面に存在する。
【0024】
一方、図7(b)に示すように、加熱圧着、剥離後は、画像形成材料130は被転写体300の表面に完全に埋め込まれた状態となっている。したがって、被転写体300の表面と画像形成材料130の存在する部分とでは、段差がほとんどなく、作製された画像記録体はそのまま印刷された画像記録体と同様の感触を有し、画像形成材料130も簡単に剥がれたりすることがない。
【0025】
次に、上記画像記録体を得ることができる本発明の画像記録体の作製装置について、図面を用いて説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の画像記録体の作製装置の一例の概略構成図である。この作製装置は、図6に示した画像記録体を作製するためのものであり、前記フィルムとして光透過性フィルムを用いている。
図1に示す画像記録体の作製装置は、画像形成装置(画像形成手段)10、丁合い装置20、及び加熱圧着装置(加熱圧着手段)30から構成されている。
【0026】
画像形成装置10は、例えば、フィルムスタッカー11(フィルム収納部)と、画像形成部12と、フィルムスタッカー11から画像形成部12へ光透過性フィルムを搬送する搬送路13と、画像形成部12から排出口14へ画像形成後の光透過性フィルムを搬送する搬送路15とから構成されている。その他の構成は省略する。
【0027】
画像形成部12は、図示しないが、潜像を形成する潜像担持体と、該潜像を少なくともトナーを含む現像剤を用いて現像し、トナー画像を得る現像器と、現像されたトナー画像を光透過性フィルムに転写する転写器、光透過性フィルムに転写されたトナー画像を加熱・加圧して定着する定着器などを含む、公知の電子写真方式のカラー画像形成装置で構成されている。
【0028】
搬送路13、15は、駆動ローラ対を含む複数のローラ対やガイド(図示せず)から構成されており、さらに搬送路15には、光透過性フィルムの搬送方向を180°反転させる反転路16が設けられている。搬送路15と反転路16との分岐付近には、光透過性フィルムの案内方向を変更するカム17が設けられている。この反転路16で光透過性フィルムを往復させ、再び搬送路15に戻すと、光透過性フィルムの搬送方向が180°反転されると共に、光透過性フィルムの表裏が反転して搬送される。
【0029】
丁合い装置(位置決め手段)20は、コアシートスタッカー22と、丁合いトレイ25、コアシートスタッカー22から丁合いトレイ25へコアシートを供給する搬送路24と、画像形成装置10の排出口14から排出された光透過性フィルムを、丁合いトレイ25へ供給する搬送路21と、から構成されている。
【0030】
コアシートを丁合いトレイ25へ供給する搬送路24の排出部と、光透過性フィルムを丁合いトレイ25へ供給する搬送路21の排出部は、高さ方向に並列して設けられている。
【0031】
上記搬送路21としては、例えば、平滑な板状部材と、その表面を光透過性フィルムを搬送させるための搬送ロールが設けられた構成であってもよく、また回転するベルト状の搬送体で構成されていてもよい。そして光透過性フィルムが画像形成装置10から排出されるタイミングで搬送ロールやベルトが回転し、光透過性フィルムを丁合いトレイ25に搬送する。
【0032】
また、コアシートスタッカー22には、通常の給紙装置に備えられているようなピックアップロールや給紙ロールが備えられており、丁合いトレイ25がコアシートスタッカー22の排出口の位置に移動した直後のタイミングで給紙ロール等が回転し、丁合いトレイ25にコアシートを搬送する。
【0033】
丁合いトレイ25は、例えば、搬送路24の排出部と搬送路21の排出部からコアシート及び光透過性フィルムがそれぞれ供給されるように、例えば、その端部の一部が上下(図における上下方向)に張架されたベルト外壁に連結されており、当該ベルトの回転駆動に伴い昇降するよう構成されている。このような昇降手段に限らず、モーター駆動方式など、公知の昇降手段を適用させることができる。また、図示しないが、図5における積層されたコアシート1及び表面フィルム3、裏面フィルム5の端部を揃えて、位置決めする手段が設けられている。
【0034】
丁合いトレイ25には、コアシートを介して2つの光透過性フィルムを積層した積層体を仮留めする仮留め装置26が設けられている。この仮留め装置26は、例えば、ヒータなどにより加熱されるよう金属からなる一対の突片で構成されており、この加熱された一対の突片により積層体の端部を挟むことで、積層体の端部が熱溶着されて仮留めされる。
【0035】
なお、上記仮留め装置26は、図1のように丁合いトレイ25からクリーニング装置50への積層体の搬送路上に設けられる場合には、仮留め装置26は、仮留め時のみ丁合いトレイ25の端部に配置され、それ以外のときは上記搬送路から退避できる構造をとる必要がある。
【0036】
仮留め装置26で端部が仮留めされた積層体は、丁合いトレイ25から、加熱圧着装置30へと搬送され、この加熱圧着装置30内に配置された加熱圧着部(符号31〜35に示される部材で構成される部分)にてラミネートされることにより、図6に示すようなプラスチックシート(画像記録体)が作製される。
【0037】
なお、丁合いトレイ25から加熱圧着部への積層体の搬送は、丁合いトレイ25から加熱圧着部へと直接搬送してもよいが、必要に応じて丁合いトレイ25と加熱圧着部との間に搬送ベルトから構成される搬送手段を設けてもよい。
【0038】
図3は、加熱圧着装置30における加熱圧着部の一構成例の詳細を示す概略構成図である。
加熱圧着部は、一対のベルト対(無端ベルト対)31から構成されるベルトニップ方式を採用することにより、プラスチックシートを容易にオンラインで作製できる構成となっている。前記ベルト対31は、一対のテンションロール対32と、一対のインレットロール対35とによりそれぞれ張架された状態で、テンションバネ36によりベルト対31が歪みを生じないように構成されている。
【0039】
そして、ベルト対31の内部には、テンションロール32とインレットロール35との間に一対の加熱加圧ロール対34及び冷却ロール対33が、それぞれベルト対31を介して両側から(図における上下方向から)、ベルト対31を圧接するようにして配置されている。なお、テンションロール対32と、インレットロール対35とはそれぞれのロール対を圧接させず、ベルト対31間に間隙が設けられるように設置されている。これにより、連続稼動によりベルト対31が蛇行しても稼動させながらベルトを所定の位置に戻すことが可能である。
【0040】
ベルト対31が蛇行した際に所定の位置に復帰させる方法としては、図示しないが、ベルト対31が所定の位置よりずれないようにストッパーを設置してもよいし、左右に設置したテンションバネのバネ力をコントロールしてベルト対31の蛇行を防止するようにしてもよい。
【0041】
なお、本発明のプラスチックシートの作製装置では、加熱圧着部において前記光透過性フィルム(フィルム)のガラス転移温度以上に加熱することによりラミネートが行われる。したがって、ベルト表面の状態がそのままラミネート後の積層体の表面に繁栄される。よって、ベルトの表面はできるだけ平滑で均一であることが好ましく、表面粗さは算術平均粗さRaで0.02μm以下とすることが好ましい。
【0042】
加熱圧着部における積層体の熱融着(ラミネート)は、インレットロール対35の下流側に配置された加熱加圧ロール対34により、積層体が加熱加圧されることにより行われる。しかしながら、前記のようにベルト対30を構成するベルトは、表面の光沢度が高く平滑であるため、表裏が樹脂フィルムからなる積層体がベルト対31のニップ部へ突入する際、積層体の先端部とベルト対31とがスリップし、積層体が前記ニップ部に突入できない場合がある。
【0043】
上記のような状態で積層体がベルト対31の入口付近で停止してしまうと、画像形成工程、丁合い工程で作製された次の積層体が連続して搬送されて来るため、ベルト対31の入り口付近で積層体が重なり、積層体詰まりが発生してしまう。また、長時間積層体がベルト対31の入口に停滞し、積層体の先端部とベルト対31とが摺擦され続けると、積層体の先端部のみが溶融し変形してしまうだけでなく、ベルトの表面の傷ついてしまうため好ましくない。
【0044】
本発明者等は、前記問題を回避するためには、積層体のニップ部への進入に際し、積層体がニップ部の入口に搬送されたタイミングに合わせて積層体をニップ部へ突入させる何らかのアシストが必要であると考えた。そして、具体的にはベルトの前記ニップ部を形成する側の面に少なくとも1ヶ所グリップ部を設け、積層体の先端部がニップ部の入口に搬送されたタイミングに合わせて、前記先端部と前記グリップ部とをニップ部の入口で接触させることにより、確実に積層体を前記ニップ部に突入させることができることを見出した。
【0045】
ここで、本発明における前記グリップ部とは、ベルトにおける積層体との摺擦による摩擦力が、他の部分より大きくなる部分をいう。
より具体的には、一定条件における積層体とベルトとの動摩擦係数が0.6以上となる部分であることが好ましく、1.0以上となる部分であることがより好ましい。これに対し、グリップ部以外のベルト部分と積層体との動摩擦係数は0.1〜0.5の範囲である。
【0046】
ベルト表面に上記のようなグリップ部を設け、ベルト対のニップ部入口で積層体の先端部と前記グリップ部とを接触させることにより、積層体とベルトとの摩擦力を、積層体が確実にニップ部に運び込まれる以上にまで高めることができ、前記のような入口付近での積層体とベルトとのスリップを防止することができる。
【0047】
なお、上記動摩擦係数の測定は、新東科学(株)製表面摩擦係数測定機 HEIDONを使用し、ベルト(グリップ部とそれ以外の部分は別々に用意する)と積層体(表面はフィルム)とを面接触させ、積層体を可動、ベルトを固定し、100℃のオーブンに入れて、荷重1kg、移動スピード2.5mm/secの条件で行った。
【0048】
図4に、本実施形態に用いられるグリップ部を設けたベルトの概略図(斜視図)を示す。本実施形態においては、ベルト表面の少なくとも1ヶ所に、グリップ部として粗した部分を設けており、図に示すベルト60ではベルト周上に等間隔で4ヶ所のグリップ部62a、62b(他の2ヶ所については、図におけるベルト下側に存在)設けている。
【0049】
グリップ部62a、62bは、種々の方法によりグリップ部に相当する部分のベルト表面を荒らすことにより、表面粗さが算術平均粗さRaで0.1〜2.0μmの範囲となっている。前記表面粗さはRaで0.2〜2.0μmの範囲であることが好ましい。
表面粗さが0.1μmに満たないと、積層体の先端部が接触したときに十分な摩擦力が得られず搬送不良の原因となる場合がある。一方2.0μmを超えると、接触する積層体や対向する対ベルトを傷つけ、画像記録体の品質低下やベルト寿命の短縮という問題は発生する場合がある。
【0050】
なお、上記Raは、表面粗さ計surfcom1400A(東京精密社製)を用い、JIS B 0601−1994に従って、ベルトの回転方向について、測定長5.0mm、カットオフ値0.8mm、測定速度0.30mm/secの条件で測定した。
【0051】
グリップ部の形状は、前記積層体の先端部が接触したときに、積層体をニップ部に搬送でき、積層体や対ベルトを傷つけないような形状であれば特に制限されないが、図4に示すようなバンド状であることが好ましい。この場合のグリップ部の幅(ベルトの周方向の長さ)は1〜20mmの範囲が好ましく、2〜10mmの範囲がより好ましい。
【0052】
また本発明におけるグリップ部は、ベルト周面上に1ヶ所以上積層体の先端部と接触できる位置に設けられていればよいが、グリップ部62a、62bのように、ベルトの回転(進行)方向と直行する方向に連続して形成されていることが好ましい。また、図4に示すようにベルト60の幅方向全体に形成されていてもよいし、一定の長さで幅方向に複数並列させてもよい。ただし、全体の長さ(複数の場合にはそれらの和の長さ)としてはベルト60の幅Wに対して0.3W〜1.0Wの範囲とすることが好ましい。
【0053】
さらに、複数のグリップ部62a、62bの間隔は、ほぼ積層体の長さにより決定されるものであり、積層体の長さLに対して1.0L〜1.5L範囲とすることが好ましく、1.0L〜1.2Lの範囲とすることがより好ましい。また、無端ベルト上にグリップ部を複数設ける場合には、後述する積層体を搬送するタイミングとの関係から等間隔で設けることが好ましい。
【0054】
前記グリップ部62a、62bを形成する方法は、特に制限されないが、ベルトがステンレス等の金属ベルトの場合には、サンドブラスト処理や研削処理等により形成することができる。
また、グリップ部は一方のベルトだけでなく両方のベルトに設けることがより好ましいが、この場合にはニップ部で対向するベルトを傷つけることがないよう、後述する方法により両方のグリップ部が同時にニップ部に突入するようにタイミング制御することが好ましい。
【0055】
次に、本発明における積層体の動きについて説明する。
本発明の画像記録体の作製装置においては、前述のように、加熱圧着部のニップ部入口において、搬送されてきた積層体の先端部がベルトにおける前記グリップ部と接触する必要がある。したがって、前記グリップ部がニップ部に突入できた積層体に裁上してニップ部に突入したり、積層体が搬送される前にニップ部に突入したりすると、積層体表面にグリップ部の痕がついたり画像記録体の生産効率が低下したりする。
【0056】
そこで、本発明においては、上記問題の発生を防止するために、積層体の前記ニップ部入口への搬送のタイミングを制御することが必要となる。
具体的には、ベルト上のグリップ部の位置を検出する検出部と、該検出部からの信号に応じ、積層体のニップ部入口への搬送のタイミングを制御するタイミング制御部とを含むタイミング制御手段を設けている。なお、前記ニップ部入口とは、図3における符号39の位置をいう。
【0057】
より具体的には、(A)加熱圧着部の入口にゲートを設け、グリップ部の位置を検出する検出部(光センサ等)からの信号に応じ、前記ゲートを開閉して、積層体のニップ部への搬送のタイミングを制御する方法、(B)加熱圧着部にベルト対の回転速度制御手段を設け、グリップ部の位置を検出する検出部からの信号に応じ、前記回転速度制御手段によりベルト対の回転速度を加減速することで、積層体のニップ部入口への搬送のタイミングを制御する方法が挙げられる。
【0058】
つまり、上記の構成によりタイミングを制御する方法は、少なくとも、(a)検出部によりグリップ部の位置を検出する工程と、(b)検出部からの信号に応じ、積層体のニップ部入口への搬送のタイミングを制御するタイミング制御工程と、を要することになる。
以下、これらのうち、(A)のタイミング制御方法を用いた実施態様について図3により説明する。
【0059】
積層体が丁合い装置で積層され、仮留めされると、丁合い装置から加熱圧着装置への搬送手段に設けられたシャッター50まで図における左側から搬送される。このとき、シャッター50は閉じられており、積層体はシャッター50の手前で停止する。
【0060】
一方、加熱圧着部には検出部として光センサ40が設けられており、これがベルト上のグリップ部の通過を検出すると、図示しないタイミング制御部はグリップ部がベルト対のニップ部入口39に到達するタイミングを計算し、積層体が同時にニップ部入口39に到達するタイミングでシャッター50を開く。そして、積層体が図示しない搬送手段により、ニップ部入口39でグリップ部と接触するように搬送される。
なお、本実施形態では、検出部はベルト表面の状態を検出しているが、ベルト表面に切り欠きやマーキングを設け、その部分を検出することも可能である。
【0061】
なお、本発明において前記タイミング制御を行う上で、用いる積層体の長さLは100〜1000mmの範囲であることが好ましく、また、積層体の搬送速度は1〜20mm/secの範囲とすることが好ましい。
【0062】
以上のように、ベルト上に設けられたグリップ部の位置を検出して、それに応じて積層体のベルト対のニップ部入口への搬送のタイミングを制御することにより、積層体をベルトとスリップすることなくスムーズにニップ部に突入させることができる。その結果、高品質のプラスチックシート(画像記録体)を生産効率よく得ることができる。
【0063】
このようにして熱融着された積層体は、図3における加熱加圧ロール対34と冷却ロール対33との間で変形を生じないようにニップされており、平面性を維持したまま冷却ロール対33を通過することとなる。なお、積層体の冷却を促進させるため、ここでは、加熱加圧ロール対34と冷却ロール対33との間に冷却ファン37を設置している(冷却ファン37を設置しない場合は自然冷却となる)。また、連続稼動によるベルト31の汚れ等を除去するためクリーニング装置38が設置されている。
【0064】
なお、ベルト対31としては、シームレスベルトを用いることが好ましい。ベルト対31がシームレスベルトでない場合には、シート部を接合したシーム部が1周に1個所存在することになる。このため、積層体をラミネートする際に、このシーム部分と積層体とが重なると、プラスチックシートの表面に凹凸が発生してしまう。
【0065】
このような場合には、前述のような本発明におけるグリップ部を検出する検出部と同様、ベルトのシーム部を検出するセンサを設け、シャッター50の開くタイミングをシーム部が積層体と接触しないように調整することで、プラスチックシートの表面に凹凸のない高品質なプラスチックシートを得ることが可能である。またこの場合には、なるべく前記グリップ部を設ける位置を前記シーム部と一致させることが好ましい。
【0066】
(第2の実施形態)
図2は、本発明の画像記録体の作製装置の他の一例の概略構成図である。この作製装置は、図7に示した画像記録体を作製するためのものであり、前記フィルムとして電子写真用画像形成材料転写シートを用いている。
【0067】
この作製装置の構成は、第1の実施形態で説明した作製装置の加熱圧着装置30のさらに下流側に剥離装置80を設けた構成であり、該剥離装置80以外の構成の詳細は、第1の実施形態における図1に示した作製装置と同様である。ただし、画像形成装置10においては、画像が転写シートから被転写体に転写されることから、鏡像で画像を形成する必要がある。
したがって、本実施形態の作製装置によれば、さらに加熱圧着後の積層体から電子写真用画像形成材料転写シートを剥がし、画像形成材料を支持体に転写することができる。
【0068】
本実施形態における加熱圧着までの工程については第1の実施形態と同様であるので省略する。
加熱圧着された積層体は、次に剥離装置80へと搬送される。剥離装置80に搬送された積層体は、図7(a)に示す構成となっており、例えばその先端右端部に切欠きがあり、その部分では第1の転写シート100と第2の転写シート200とは被転写体300に接着することなく、一定の隙間をあけて対峙している。積層体先端部がエア噴出しノズル83にさしかかると、ノズルから圧縮空気が噴射される。すると、第1の転写シート100及び第2の転写シート200の端部が被転写体300より浮き上がり、ガイド82の先端が第1の転写シート100と被転写体300との間及び第2の転写シート200と被転写体300との間に入る。さらに、積層体が搬送されるにつれ、2つの転写シート100、200はガイド82に沿って被転写体300と分離する方向に搬送され、被転写体300から剥がされる。
【0069】
次いで、被転写体300は排出トレイ84に排出され、記録済み被転写体(画像記録体)が得られる。ここで、記録済み被転写体に個別の画像が複数形成されている場合、この各画像毎に裁断し、所定のサイズの画像記録体を得る。
【0070】
また、第1の転写シート100及び第2の転写シート200は、その後図示しない経路を通って転写シート排出トレイ81に排出される。排出された転写シートは、転写シートスタッカーに戻して、再度画像記録を行ってもよい。
【0071】
以上のように、本実施形態の画像記録体の作製装置では、加熱圧着された積層体から転写シートを剥がし、画像形成材料を被転写体に転写することで画像記録体が得られるが、本実施形態においても、第1の実施形態同様、加熱圧着装置におけるニップ部入口で前記グリップ部と積層体の先端部とが接触し、確実に積層体をニップ部に突入させることができるので、高品質の画像記録体を生産効率よく得ることができる。
【0072】
(第3の実施形態)
本実施形態では、図1に示した画像記録体の作製装置における前記グリップ部が、ベルトに複数の穴あるいは溝を形成することにより構成されたベルト対を用いていて構成されている。上記グリップ部を設けることにより、第1の実施形態と同様に積層体の先端部との摩擦力を大きくすることができ、同様の効果を得ることができる。装置の構成としては、下記グリップ部が異なる以外は第1の実施形態と同様である。
【0073】
図5は、実施形態に係る画像記録体の作製装置に搭載された加熱圧着装置用ベルトの概略構成図(斜視図)である。
図5に示すベルトにおいては、ベルト周面に4ヶ所のグリップ部72a、72b(他の2ヶ所については、図におけるベルト下側に存在)が、拡大図に示すように複数の溝74により形成されている。このような複数の溝74を設けることにより、第1の実施形態と同レベルで積層体との動摩擦係数を大きくすることができる。
【0074】
上記のように、グリップ部に溝74を設ける場合、その形状は円形に限らず、四角形やその他の形状でもよいが、円形であると溝部分からクラック等が発生し難いため好ましい。また、1つの溝74の開口面積は0.5〜10mm2の範囲が好ましく、深さは0.01〜0.1mmの範囲が好ましい。また、グリップ部における溝の総面積はベルトの引張強度を保つ観点から、グリップ部全体の面積の5〜50%の範囲であることが好ましい。
なお、1つ1つの溝の大きさは均一である必要はないが、積層体との摩擦力を均一にするためにはほぼ均一であることが好ましい。また、溝の並び方も特に制限はなく連続した溝でもよいが、図5に示すような千鳥状に均一に並んでいることが好ましい。
【0075】
なお、本実施形態では、ベルトの厚さ方向に関して貫通していない溝を形成しているが、十分な駆動力を与えるのであればこの形状に限られることはなく、ベルトの引張強度に影響を及ぼさない範囲で、貫通穴を形成することも可能である。前記溝と同様にこの穴の形状は丸に限らず、四角形やその他の形状でもよい。また、1つ1つの大きさや全体の面積も溝の場合と同様である。
これ以外の構成は、前記第1の実施形態と同様なので説明を省略する。
【0076】
なお、図1に示した作製装置の加熱圧着装置30のさらに下流側に、第2の実施形態で説明した剥離装置80を配置し、フィルムとして電子写真用画像形成材料転写シートを用い鏡像で画像形成を行うことにより、第2の実施形態と同様にして、図7(b)に示すような画像記録体を高い生産効率で得ることができる。
【0077】
次に、本発明に用いられる支持体、フィルムについて説明する。なお本発明においては、前述のように、図6に示す画像記録体の場合は、支持体はコアシート1、フィルムは電子写真用ラミネートフィルム3、5であり、図7に示す画像記録体の場合は、支持体は被転写体300、フィルムは転写シート100、200である。
【0078】
(支持体)
−コアシート−
本発明において用いられるコアシートは、プラスチックシート(画像記録体)としたときの光透過性フィルムに形成された画像が見えやすいよう不透明であることが好ましく、白色に着色されていることがより好ましい。
【0079】
コアシートの材質としては、プラスチックが使用される。具体的には、アセテートフィルム、三酢酸セルローズフィルム、ナイロンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリイミドフィルム、塩化ビニールなどがあり、中でもポリエステルフィルム、塩化ビニール等が好ましく用いられる。
【0080】
コアシートとしては、これらに顔料や染料などが添加され着色される。また、コアシートは、フィルム状、板状であってもよいし、可とう性を有しない程度、または、コアシートとしての要求に必要な強度を有する程度に厚みを有する形状であってもよい。
【0081】
本発明に用いられるコアシートとしては、厚さ50〜5000μmの範囲のプラスチックからなるフィルムを用いることが好ましく、厚さ100〜1000μmの範囲のPETフィルムを用いることがより好ましい。
【0082】
−被転写体−
本発明において用いられる被転写体は、金属、プラスチック、セラミックなどであり、さらにこれらはシート状のものが好ましい。
本発明に用いられる被転写体としては、プラスチック製のシートが好ましく、特に、画像記録体としたときに形成された画像が見えやすいよう不透明であることが好ましく、白色化したプラスチック製のシートが代表的に使用される。
【0083】
上記プラスチック製のシート用樹脂としては、前記電子写真用画像形成材料転写シートの基体に用いたものと同様なものを用いることができ、ポリアセテートフィルム、三酢酸セルローズフィルム、ナイロンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリイミドフィルム、セロハン、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂フィルムなどを好ましく用いることができる。
【0084】
上記の中でも、ポリエステルフィルム、特に、PET(ポリエチレンテレフタレート)のエチレングリコール成分の半分前後を1,4−シクロへキサンメタノール成分に置き換えたPETGと呼ばれるものや、前記PETにポリカーボネートを混ぜアロイ化させたもの、さらに二軸延伸しないPETで、A−PETと呼ばれる非晶質系ポリエステル等をより好ましく用いることができる。
【0085】
本発明においては、被転写体の少なくとも画像が転写される側の面が、前記PETGを含むことが好ましい。画像転写面をPETGとすることにより、転写された画像形成材料(トナー)を被転写体表面にほとんど完全に埋め込ませることができ、最終的な画像記録体の表面を電子写真画像形成材料転写シートの表面形状と同様にすることができる。
【0086】
なお、本発明の画像記録体がICカードや磁気カード等として用いられる場合には、必要に応じてコアシートや被転写体にICチップ、アンテナ、磁気ストライプ、外部端子などが埋め込まれる。また、磁気ストライプ、ホログラム等が印刷されたり、必要文字情報がエンボスされる場合がある。
【0087】
(フィルム)
−電子写真用ラミネートフィルム−
本発明における電子写真用ラミネートフィルムに使用可能な基体は、透明性を有することが必要である。ここで、透明性とは、例えば、可視光領域の光をある程度、透過する性質をいい、本発明においては、少なくとも形成された画像が、画像が形成された面と反対側の面から基体を通して目視できる程度に透明であればよい。
【0088】
上記基体としては、前記コアシートの材料として用いることができるプラスチックのフィルムを同様に使用することができる。
また、上記各種プラスチックのフィルムの中でも、ポリエステルフィルム、特に、前記PETGや、前記PETにポリカーボネートを混ぜアロイ化させたもの、さらに二軸延伸しないPETで、A−PETと呼ばれる非晶質系ポリエステル等をより好ましく用いることができる。
【0089】
上記基体のビカット軟化温度は、70〜130℃の範囲であることが好ましく、80〜120℃の範囲であることがより好ましい。
上記ビカット軟化温度が70℃に満たないと、加熱圧着工程において、コアシート(コア)に光透過性フィルムを十分に密着・接着させることができない場合がある。また、ビカット軟化温度が130℃を超えると、上記密着・接着は十分であっても画像(画像形成材料)または後述する塗工層が軟化しすぎてしまい、画像に欠陥(画像流れ)が発生してしまう場合がある。
【0090】
上記ビカット軟化温度とは熱可塑性樹脂の軟化温度評価の一方法から測定されるものであって、その測定方法は、成形されたプラスチック材料の耐熱性を試験する方法として、熱可塑性樹脂に対しては、JIS K7206やASTM D1525、ISO306にその方法が規定されている。
【0091】
一方、基体の少なくとも片面の表面抵抗率が1.0×108〜1.0×1013Ωの範囲であることが好ましく、1.0×109〜1.0×1011Ωの範囲であることがより好ましい。
上記表面抵抗率が1.0×108Ωに満たないと、特に、高温高湿時に画像記録体の抵抗値が低くなりすぎ、例えば転写部材からの転写トナーが乱れる場合があり、また、表面抵抗率が1.0×1013Ωを超えると、画像記録体として使用される光透過性フィルムの抵抗値が高くなりすぎ、例えば転写部材からのトナーをフィルム表面に移行できず、転写不良による画像欠陥が発生する場合がある。
【0092】
なお、上記表面抵抗率は、23℃、55%RHの環境下で、円形電極(例えば、三菱油化(株)製ハイレスターIPの「HRプローブ」)を用い、JIS K6991に従って測定することができる。
また、電子写真用ラミネートフィルムにおいて、片面のみが上記範囲の表面抵抗率を有する場合には、当該面は画像が形成される側の面であることが好ましい。
【0093】
前記基体の少なくとも片面の表面抵抗率を1.0×108〜1.0×1013Ωの範囲に制御するにあたっては、基体となるフィルム製造時、直接界面活性剤、高分子導電剤や導電性微粒子などを樹脂中に添加したり、上記フィルム表面に界面活性剤を塗工したり、金属薄膜を蒸着したり、あるいは接着剤などに界面活性剤などを適量添加したりすることで調整することができる。
【0094】
前記基体の厚さは、50〜500μmの範囲が好ましく、75〜150μmの範囲がより好ましい。厚さが50μmに満たないと搬送不良となる場合があり、300μmを超えると転写不良による画像劣化となる場合がある。
【0095】
本発明における電子写真用ラミネートフィルムは、基体の片面に画像受像層が形成されることが好ましく、またこの画像受像層が形成される面と反対側の面に機能性制御手段が設けられることが好ましい。
前記機能性制御手段は、光沢性、耐光性、抗菌性、難燃性、離型性、及び帯電性を制御する機能から選択される少なくとも1つ以上の機能を有するものであることが好ましく、具体的には、基体の表面に対し、光沢性、耐光性、抗菌性、難燃性、離型性、導電性、さらに好ましくは耐湿性、耐熱性、撥水性、耐磨耗性及び耐傷性などの様々な機能を付加及び/または向上させるために設けられる。これにより、前記機能性制御手段を有する電子写真用ラミネートフィルムは、様々な使用条件に対して耐性を有することができる。
【0096】
−電子写真用画像形成材料転写シート−
本発明に用いられる電子写真用画像形成材料転写シートの基体としては、前記光透過性フィルムの基体の材料と同様のものを用いることができる。
本発明に用いられる転写シートは、前記基体の少なくとも片面に画像受像層を有し、該画像受像層が少なくとも離型性材料を含有し、かつ該画像受像層の表面抵抗率が、23℃、55%RHにおいて、1.0×108〜3.2×1013Ωの範囲であることが好ましい。
【0097】
すなわち前記転写シートでは、表面に設けられた画像受像層が適切な表面抵抗率範囲を有するため、電子写真方式での画像形成でも転写不良等が発生することなく、良好な画像形成を行うことができる。また、前記画像受像層には離型性材料が含まれており、該離型性材料は後述するような画像形成材料を被転写体に良好に転写できるだけでなく、電子写真方式での画像定着特性にも優れたものである。
【0098】
前記離型性材料は、転写シートにおいて画像形成材料を一旦定着し固定化すると共に、被転写体と加熱圧着されたときには上記画像形成材料を離型する画像受像層に用いられるものである。したがって、前記離型性材料としては、電子写真において画像形成材料として一般的に使用されるトナーに対して密着性と、離型性とを有することが望ましい。
【0099】
このような離型性材料としては、特に制限されないが、シリコーン系ハードコート材料を含むものであることが離型性を有し、さらにフィルム搬送時における表層傷を抑制することができる点で好ましい。
【0100】
<試験例>
図1に示すような画像記録体の作製装置を用い、加熱圧着部のベルト対を、一方のベルト上に図4に示すような表面を粗したグリップ部を形成したものにより構成してプラスチックシート(画像記録体)の作製を行った。
【0101】
前記ベルトは、表面が鏡面加工され表面の算術平均粗さRaが0.02μmのステンレス製の無端ベルトであり、周長は1000mm、幅は350mm、厚さは200μmである。また一方のベルトには、図4に示すように、間隔を250mmずつとして4ヶ所、表面をサンドブラスト処理した表面の算術平均粗さが0.5μmのグリップ部を形成した。これらのグリップは、長さ(ベルト周方向の長さ)を20mmとし、ベルトの全幅について設けた。
なお、上記ベルトについて、前述の方法により下記積層体との動摩擦係数の測定を行ったところ、前記グリップ部については1.2、グリップ部以外の部分については0.4であった。
【0102】
フィルムスタッカー11にセットしたPETG樹脂からなる透明フィルム(A4サイズ、厚さ:100μm、表面抵抗率:2.8×1010Ω、ビカット軟化温度:78℃)の表面に、図1に示す画像記録体の作製装置における画像形成装置(定着時のフィルムの表面温度が、95〜100℃の範囲になるようにし、加熱ロールにオイル塗布装置を設けたもの)により、ベタ画像を含むカラーの鏡像画像を印字し、該鏡像画像が形成されたラミネートフィルムを作製した。
【0103】
一方、コアスタッカー22にセットした表面がPETGで内部がA−PETであるA4サイズの白色シート(三菱樹脂社製:ディアクレールW2012、A4サイズ、厚さ:500μm、ビカット軟化温度:85℃)に対し、丁合いトレイ25を介してこの白色シートの表裏に、前記ラミネートフィルムを各フィルムの四隅の位置が合うようにして画像面(ラミネート面)で重ね合わせ、位置決めした後、積層体として仮留め装置26により仮留めを行った。
【0104】
次に、図3における左側からシャッター50まで搬送され停止した積層体を、光センサ40からの信号に応じて、ベルト対31のニップ部入口39において前記グリップ部と積層体の先端部とが接触するようにシャッター50を開くタイミングを制御して、積層体をニップ部入口39に搬送した。なお、本装置において、積層体の搬送速度は10mm/sec、加熱圧着部における加熱加圧ロールの温度を150℃とした。
【0105】
以上のようなプラスチックシートの作製を連続して100枚行ったが、ニップ部入口における積層体のスリップは全く発生せず、高品質のプラスチックシートを生産性よく作製することができた。
【0106】
次に、前記グリップ部を設けたベルトの代わりに、グリップ部を設けていない全面鏡面加工のベルトを用い、前記と同様のプラスチックシートの作製を行った。その結果、100枚中5枚でニップ部入口ですべりが発生し、搬送ジャムが発生した。これは、積層体とベルトとの動摩擦係数が小さく、ニップ部に進入するのに十分は搬送力が積層体に作用しなかったことが原因である。また、本試験例では作製装置の画像形成部において、トナー画像を定着するためにオイルを塗布した加熱ロールを使っているため、積層体表面には微量のオイルが付着しており、このオイルの量の変動によりすべりの量も変化していると考えられる。
【0107】
<試験例2>
試験例1において、ベルト上のグリップ部として複数の円形の溝を設けたこと以外は同様にしてプラスチックシートの作製を行った。
すなわち、ベルト対31における一方のベルト上に、図5に示すように、グリップ部として直径1mm、深さ0.3mmの円形の複数の溝が、縦横に2mm間隔で千鳥状に金属エッチングにより形成されている。このグリップ部全体の幅及び長さは、前記試験例1と同様にした。なお、前記グリップ部と積層体との動摩擦係数は1.5であった。
【0108】
上記作製装置により、試験例1と同様のプラスチックシートの作製を連続100枚行った結果、ニップ部入口における積層体のスリップは全く発生せず、高品質のプラスチックシートを生産性よく作製することができた。
【0109】
以上述べたように、本発明は、少なくともフィルムを含む積層体をラミネート等することにより得られる画像記録体の作製装置に関し、特に、積層体の加熱圧着ニップ部への突入の不良発生を防止する手段及び方法に着目し、不良品を出すことなく、高解像度のプラスチックシートを高い生産性で連続して作製することができる画像記録体の作製装置を見出したものである。
【0110】
すなわち、ベルト上にグリップ部を設け、ニップ部入口で積層体の先端部が前記グリップ部と接触するように制御することで、積層体にはベルトから十分な搬送力を与えられ、全くすべることなくニップ部に突入することができることとなった。ベルトのグリップ部は、積層体の先端部でのみ積層体に接触し、残りの部分はベルトの高光沢部と接触するように制御されるため、積層体の有効範囲で表面の光沢が劣化したり、熱融着に問題が発生することもなく、安定して高生産性を維持しつつ画像記録体を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明の画像記録体の作製装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明の画像記録体の作製装置の他の一例を示す概略構成図である。
【図3】画像記録体作製装置内に配置された加熱圧着部の一構成例の詳細を示す構成図である。
【図4】本発明における加熱圧着部を構成するベルトの一例を示す概略図である。
【図5】本発明における加熱圧着部を構成するベルトに他の一例示す概略図である。
【図6】本発明の画像記録体の作製装置により作製される画像記録体の一例の構成断面図を示す。
【図7】本発明の画像記録体の作製装置により作製される画像記録体の他の一例の構成断面図を示す。
【符号の説明】
【0112】
1 コアシート(支持体)
2、4 画像
3 表面フィルム(電子写真用ラミネートフィルム)
5 裏面フィルム(電子写真用ラミネートフィルム)
10 画像形成装置(画像形成手段)
11 フィルムスタッカー
12 画像形成部
13、15、21、24 搬送路
14 排出口
16 反転路
17 カム
20 丁合い装置(位置決め手段)
22 コアスタッカー
23 裏面フィルムスタッカー
25 丁合いトレイ
26 仮留め装置
30 加熱圧着装置(加熱圧着手段)
31 ベルト対
32 テンションロール対
33 冷却ロール対
34 加熱加圧ロール対
35 インレットロール対
60、70 ベルト
62a、62b、72a、72b グリップ部
80 剥離装置
100、200 電子写真用画像形成材料転写シート(フィルム)
300 被転写体(支持体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、フィルムの表面に電子写真方式により画像を形成する画像形成手段と、前記フィルムを、少なくとも支持体の片面と前記画像が形成された面とが互いに対面するように重ね合わせ積層体とする位置決め手段と、位置決めされた前記積層体をベルト対により形成されるニップ部を通過させて加熱加圧する加熱圧着手段と、を含んでなる画像記録体の作製装置であって、
前記ベルト対の少なくとも一方の前記ニップ部を形成する側の面に、少なくとも1ヶ所グリップ部を設けるとともに、前記グリップ部の位置を検出する検出部と、該検出部からの出力信号に応じて前記積層体を搬送し、前記ニップ部の入口で積層体の先端部及び前記グリップ部を接触させるタイミング制御部とを含むタイミング制御手段を設けたことを特徴とする画像記録体の作製装置。
【請求項2】
前記グリップ部の表面の粗さが、算術平均粗さRaで0.1〜2.0μmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の画像記録体の作製装置。
【請求項3】
前記グリップ部が、ベルトに複数の穴あるいは溝を形成することにより構成されていることを特徴とする請求項1に記載の画像記録体の作製装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−256044(P2006−256044A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−75578(P2005−75578)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】