説明

画像記録装置、画像記録方法、吐出特性検査用チャート、および吐出特性検査方法

【課題】吐出特性のばらつきに基づく濃度ムラの発生を抑制することができる画像記録装置、画像記録方法、吐出特性検査用チャート、および吐出特性検査方法を提供する。
【解決手段】本発明の画像記録装置は、複数のノズルのうち、1つのノズルだけからインク滴を吐出させる第1のテストチャート部と、隣接する2以上のノズルおよび離間した2以上のノズルのうち、少なくとも1つについて同時にインク滴を吐出させる第2のテストチャート部とを有する検査用チャートを記録ヘッドにより記録媒体に記録する工程と、記録された検査用チャートが読み取れられた第1のテストチャート部および第2のテストチャート部と、チャートデータの第1のテストチャート部および第2のテストチャート部とを比較して、各ノズルについてインク吐出特性を取得する工程と、インク吐出特性に基づいて入力画像データを補正する工程と、補正された入力画像データに基づいて画像を記録する工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録方式の画像記録装置、画像記録方法、吐出特性検査用チャート、および吐出特性検査方法に関し、特に、吐出特性のばらつきに基づくムラの発生を抑制する画像記録装置、画像記録方法、吐出特性検査用チャート、および吐出特性検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
記録媒体に画像を記録するものとしては、画像信号に応じて、インク室の圧力を上げることによりノズルからインク滴を吐出させ、記録媒体上に着弾させ、画像を記録するインクジェット記録装置がある。
近年、印刷の更なる高速化、低電力化、高画質化(高精細化)の要求から、インクジェット記録装置のうち、二次元的にノズルが配列されたラインヘッドを用いたワンパスによるインクジェット記録装置が注目されている。この種の画像記録方法は、吐出バラツキの影響を受けやすく、例えば、標準偏差数ミクロン程度の吐出位置ばらつきでもスジムラが視認される。
【0003】
また、インクジェット記録装置においては、インク室の圧力を上げることでインク滴を吐出させているが、近傍ノズルの吐出の有無により、吐出インク量および吐出速度が変化することが知られている(以下、クロストークという)。これらはインク室のインク量減少に伴い生じるメニスカス力、または吐出に伴う圧力波に起因するものである。
インクジェット記録装置は、クロストークによる吐出誤差の影響を受けやすい。吐出ばらつきなどの吐出誤差は、インクジェット記録装置において、スジムラ、濃度ムラなどの画質劣化も引き起し、特に高濃度部で濃度ムラ、スジムラ、ジャギーとして画像上に現れ、画質の劣化要因となる。
【0004】
そこで、インクジェット記録装置において、クロストークの影響を抑制するための種々の技術が提案されている(特許文献1〜4参照)。
【0005】
特許文献1には、同時に多数のインク滴が吐出された際に生じる濃度ムラのムラ補正方法が開示されている。この特許文献1においては、吐出誤差のうち滴量誤差については、インク通路の容積変化にフィードバックをかけることにより画質を向上させている。
また、特許文献2の画像形成装置は、特許文献2においては、画像データから生成された印字データに基づいてノズルから液滴を吐出する液体吐出ヘッドと、印字データとノズルの吐出特性とを関連付けた吐出特性データが格納された記憶手段と、吐出特性データに基づき、各ノズルが印字する画像の濃度ムラを抑えるように印字データに補正をかける画像補正手段とを有する。この特許文献2には、主に時間的に同一ノズルからインク滴が頻繁に吐出される際に生じる滴量の減少により生じる濃度ムラ補正方法が開示されている。
【0006】
上記以外にも、スジムラ、濃度ムラなどを補正するために、テストパターンを出力しスキャナで結果を取り込み、取り込んだ画像データをもとにムラ補正を行うといったことが実施されている。
特許文献3、4には、スキャナで取り込んだ画像データをもとに位置誤差、滴量誤差を算出し、これらの量を印刷の高画質化に用いることが開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開2000−218823号公報
【特許文献2】特開2007−237477号公報
【特許文献3】特開2004−174751号公報
【特許文献4】特開2000−94655号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1においては、同機構を盛り込むことは製造コストの上昇を招き、コスト増加につながる。
また、特許文献2のように、印字データを補正し、インク滴量をコントロールすることは、一般に困難であるため、濃度ムラを消しきることができないという問題点がある。
【0009】
また、特許文献3、4においては、ムラ補正に一定の効果をもたらすものの、ムラ補正の改善が十分ではない。
【0010】
本発明の目的は、前記従来技術に基づく問題点を解消し、吐出特性のばらつきに基づくムラの発生を抑制することができる画像記録装置、画像記録方法、吐出特性検査用チャート、および吐出特性検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様は、複数のノズルを有し、各ノズルからインク滴を吐出する記録ヘッドを記録媒体に対して相対的に搬送しつつ画像を記録する画像記録装置であって、前記複数のノズルのうち、1つのノズルだけからインク滴を吐出させた際の第1の特性と、隣接する2以上のノズルおよび離間した2以上のノズルのうち、少なくとも1つについて同時にインク滴を吐出させた際の第2の特性とに基づいて、所定の画像を表す入力画像データを補正する補正部と、前記補正された入力画像データに基づいて前記記録ヘッドにより所定の画像を前記記録媒体に記録させる制御部とを有することを特徴とする画像記録装置を提供するものである。
【0012】
本発明の第2の態様は、複数のノズルを有し、各ノズルからインク滴を吐出する記録ヘッドを記録媒体に対して相対的に搬送しつつ画像を記録する画像記録装置であって、前記複数のノズルのうち、1つのノズルだけからインク滴を吐出させる第1のテストチャート部と、隣接する2以上のノズルおよび離間した2以上のノズルのうち、少なくとも1つについて同時にインク滴を吐出させる第2のテストチャート部とを有する検査用チャートのチャートデータを記憶する記憶部と、前記チャートデータに基づいて前記記録ヘッドにより前記記録媒体に記録された前記検査用チャートを読み取る画像読取部と、前記画像読取部に読み取れられた前記検査用チャートの第1のテストチャート部および第2のテストチャート部と、前記チャートデータにおける検査用チャートの第1のテストチャート部および第2のテストチャート部とを比較するか、または前記読み取れられた前記検査用チャートの第1のテストチャート部と、第2のテストチャート部とを比較して、前記各ノズルのインク吐出特性を取得するインク吐出特性取得部と、前記インク吐出特性に基づいて、所定の画像を表す入力画像データを補正する補正部と、前記補正された入力画像データに基づいて前記記録ヘッドにより所定の画像を前記記録媒体に記録させる制御部とを有することを特徴とする画像記録装置を提供するものである。
【0013】
また、本発明においては、前記記録ヘッドは、複数色のインク滴を前記ノズルから吐出するものであり、前記入力画像データのうち、前記複数色のインクのうち、少なくとも1色のインク滴で記録されるものについては前記補正部で補正しないことが好ましい。
【0014】
さらに、本発明においては、さらに、入力画像データについて、濃度解析を行う濃度解析部を有し、前記入力画像データのうち、濃度が所定の値以上の領域についてだけ前記補正部で補正することが好ましい。
【0015】
また、本発明の第3の態様は、複数のノズルを有し、各ノズルからインク滴を吐出する記録ヘッドを記録媒体に対して相対的に搬送しつつ画像を記録する画像記録方法であって、前記複数のノズルのうち、1つのノズルだけからインク滴を吐出させた際の第1の特性と、隣接する2以上のノズルおよび離間した2以上のノズルのうち、少なくとも1つについて同時にインク滴を吐出させた際の第2の特性とに基づいて、所定の画像を表す入力画像データを補正する工程と、前記補正された入力画像データに基づいて前記記録ヘッドにより所定の画像を前記記録媒体に記録する工程とを有することを特徴とする画像記録方法を提供するものである。
【0016】
また、本発明の第4の態様は、複数のノズルを有し、各ノズルからインク滴を吐出する記録ヘッドを記録媒体に対して相対的に搬送しつつ画像を記録する画像記録方法であって、前記複数のノズルのうち、1つのノズルだけからインク滴を吐出させる第1のテストチャート部と、隣接する2以上のノズルおよび離間した2以上のノズルのうち、少なくとも1つについて同時にインク滴を吐出させる第2のテストチャート部とを有する検査用チャートを前記記録ヘッドにより前記記録媒体に記録する工程と、前記記録された検査用チャートを読み取り、読み取れられた前記検査用チャートの第1のテストチャート部および第2のテストチャート部と、前記チャートデータにおける検査用チャートの第1のテストチャート部および第2のテストチャート部とを比較するか、または前記読み取れられた前記検査用チャートの第1のテストチャート部と、第2のテストチャート部とを比較して、前記各ノズルについてインク吐出特性を取得する工程と、前記インク吐出特性に基づいて、所定の画像を表す入力画像データを補正する工程と、前記補正された入力画像データに基づいて所定の画像を前記記録媒体に記録する工程とを有することを特徴とする画像記録方法を提供するものである。
【0017】
本発明においては、前記記録ヘッドは、複数色のインク滴を前記ノズルから吐出するものであり、前記入力画像データのうち、前記複数色のインクのうち、少なくとも1色のインク滴で記録されるものについては補正しないことが好ましい。
本発明においては、さらに、入力画像データについて、濃度解析を行う工程を有し、
前記入力画像データのうち、濃度が所定の値以上の領域についてだけ前記補正をすることが好ましい。
【0018】
また、本発明の第5の態様は、複数のノズルを有し、各ノズルからインク滴を吐出する記録ヘッドを記録媒体に対して相対的に搬送しつつ画像を記録する画像記録装置に用いられる吐出特性検査用チャートであって、前記複数のノズルのうち、1つのノズルだけからインク滴を吐出させる第1のテストチャート部と、隣接する2以上のノズルおよび離間した2以上のノズルのうち、少なくとも1つについて同時にインク滴を吐出させる第2のテストチャート部を有することを特徴とする吐出特性検査用チャートを提供するものである。
【0019】
本発明においては、前記第1のテストチャート部と前記第2のテストチャート部とは、前記記録媒体の搬送方向に連続または離間して配置されることが好ましい。
【0020】
また、本発明の第6の態様は、複数のノズルを有し、各ノズルからインク滴を吐出する記録ヘッドを記録媒体に対して相対的に搬送しつつ画像を記録する画像記録装置における吐出特性検査方法であって、前記複数のノズルのうち、1つのノズルだけからインク滴を吐出させる第1のテストチャート部と、隣接する2以上のノズルおよび離間した2以上のノズルのうち、少なくとも1つについて同時にインク滴を吐出させる第2のテストチャート部とを有する検査用チャートを前記記録ヘッドにより前記記録媒体に記録する工程と、前記記録された検査用チャートを読み取り、読み取れられた前記検査用チャートの第1のテストチャート部および第2のテストチャート部と、前記チャートデータにおける検査用チャートの第1のテストチャート部および第2のテストチャート部とを比較するか、または前記読み取れられた前記検査用チャートの第1のテストチャート部と、第2のテストチャート部とを比較して、前記各ノズルについてインク吐出特性を取得する工程とを有することを特徴とする吐出特性検査方法を提供するものである。
【0021】
本発明においては、前記第1のテストチャート部と前記第2のテストチャート部とは、前記記録媒体の搬送方向に連続または離間して配置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の画像記録装置および画像記録方法によれば、吐出特性のばらつきに基づくムラの発生を、構成を複雑化することなく抑制することができる。
また、本発明の吐出特性検査用チャート、および吐出特性検査方法によれば、ノズル間の相互作用、すなわち、クロストークによる吐出特性のばらつきに基づくムラの発生を容易かつ高い精度で抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の画像記録装置、画像記録方法、吐出特性検査用チャート、および吐出特性検査方法について、添付の図面に示される好適実施形態を基に詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る画像記録装置を示す模式図であり、図2は、図1に示す画像記録装置の吸着搬送ベルト部と記録ヘッドユニットを示す模式的平面図である。
【0024】
画像記録装置10は、基本的に、記録媒体Pを供給する供給部12と、供給部12から供給された記録媒体Pを平面性を保持しながら、搬送する搬送部14と、搬送部14に対向して配置され、記録媒体Pに画像を描画する記録ヘッドユニット50、及びこの記録ヘッドユニット50に供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部52等を有する描画部16と、画像が描画された記録媒体Pを加熱・加圧する加熱加圧部18と、画像が描画された記録媒体Pを外部に排出する排出部20と、これらを制御する制御部22と、描画部16により記録媒体Pに記録された画像、および後述する記録媒体Pに記録されたテストチャート(吐出特性検査用チャート)を読み取る画像読取部24とを有する。この画像記録装置10は、インクジェット方式の記録装置である。
【0025】
供給部12は、マガジン30と、加熱ドラム32と、第1のカッタ34とを有する。
マガジン30は、ロール状の記録媒体Pが収納されている。画像描画時には、記録媒体Pがマガジン30から加熱ドラム32に供給される。
加熱ドラム32は、記録媒体Pの搬送経路において、マガジン30の下流側に配置され、マガジン30から送り出された記録媒体Pを、マガジン30に収納されていた方向と逆の方向に曲げた状態で加熱する。
記録媒体Pを加熱ドラム32により加熱することで、マガジン30に収納されている間に記録媒体Pについた巻きクセを除去する。つまり、加熱ドラム32は、記録媒体Pのデカール処理を行う。
このとき、記録媒体Pが、印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御することが好ましい。
【0026】
第1のカッタ34は、記録媒体Pの搬送路幅以上の長さの固定刃34Aと、固定刃34Aに沿って移動する丸刃34Bとを有し、記録媒体Pの画像が描画される面側に丸刃34Bが配置され、搬送路を挟んで対向する面に固定刃34Aが配置されている。
第1のカッタ34は、加熱ドラム32を通過して供給された記録媒体Pを所望のサイズにカットする。
【0027】
ここで、本実施形態では、供給部のマガジンを1つとしたが、本発明はこれに限定されず、例えば、紙幅、紙質や種類が異なる記録媒体を収納したマガジンを複数配置してもよく、また、マガジンに替えて、または、加えて、予め所定長さに切断されている記録媒体が多数枚積層されたカセットも用いることができる。また、記録媒体Pとして、予め所定長さに切断されている記録媒体Pのみを用いる場合は、上述の加熱ローラ及びカッタを必ずしも設ける必要はない。
【0028】
また、複数のマガジン及び/又はカセットを用い、複数種類の記録紙を利用可能な構成にした場合、紙の種類情報を記録したバーコードまたは無線タグなどの情報記録体をマガジン及び/又はカセットに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される用紙の種類を自動的に判別し、用紙の種類に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
【0029】
搬送部14は、吸着ベルト搬送部36、吸着チャンバー39、ファン40、ベルト清掃部42及び加熱ファン44を有し、供給部12でデカール処理され、所定長さにカットされた記録媒体Pを描画位置つまり、後述する描画部16により画像が描画される位置に搬送する。
【0030】
吸着ベルト搬送部36は、記録媒体Pの搬送経路において、第1のカッタ34の下流側に配置されており、ローラ37a、ローラ37b及びベルト38と、モータ98とを有する。
ベルト38は、記録媒体Pの幅よりも広い幅寸法を有する無端状のベルトであり、ローラ37aとローラ37bとで張架されている。また、ベルト38は、ベルト面に多数の吸引孔(図示せず)が形成されている。
また、吸着ベルト搬送部36の少なくとも画像描画(印字)位置、つまり、描画部16の後述する記録ヘッドユニット50の記録ヘッド50K〜50Yのノズル面に対向する部分および後述する画像読取部24のセンサ面に対向する部分(画像検出位置)は、ノズル面に対して水平(フラット)に保持されている。
ベルト38が巻かれているローラ37a、37bの少なくとも一方は、モータ98に接続されており、モータ98の動力がローラ37a、37bの少なくとも一方を介してベルト38に伝達されることにより、ベルト38は図1上の時計回り方向に駆動され、ベルト38上に保持された記録媒体Pは方向a(図1の左から右)に搬送される。この方向aは、画像記録時に、モータ98により、記録媒体Pが搬送される副走査方向Mと同じ方向である。画像記録時においては、記録媒体Pは、間欠的搬送される。
【0031】
ここで、記録媒体Pの搬送手段は特に限定されず、吸着ベルト搬送部36に代えて、ローラー・ニップ搬送機構を用いることもできる。しかしながら、描画領域をローラー・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面をローラが接触するので画像が滲み易いという問題があるため、印字領域では、本実施形態のように、画像面と接触しない吸着ベルト搬送が好ましい。
【0032】
吸着チャンバー39は、ベルト38の内側において描画部16の後述する記録ヘッドユニット50の記録ヘッド50K〜50Yのノズル面および画像読取部24のセンサ面に対向する位置に設けられている。また、ファン40は吸着チャンバー39に接続されている。吸着チャンバー39をファン40で吸引して負圧にすることによってベルト38上の記録媒体Pがベルト38に吸着保持される。
記録媒体Pをベルト38に吸着させることで、記録媒体Pを安定して保持することができる。
【0033】
ベルト清掃部42は、ベルト38の外側、つまりリング形状の外周面と対向する側で、かつ、記録媒体Pの搬送経路から外れた位置に配置されている。つまり、ベルト38は、描画部16を通過し、記録媒体Pを後述する加圧ローラ54に排出した後、ベルト清掃部42に対向する位置を通過する。
ベルト清掃部42は、縁無しプリント等を行うことによりベルト38上に付着したインクを除去する。ベルト清掃部42としては、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、またはこれらを組み合せた方式などが用いられる。なお、清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
【0034】
加熱ファン44は、ベルト38の外側で、かつ記録媒体Pの搬送経路上において描画部16の後述する記録ヘッドユニット50の上流側に配置されている。
加熱ファン44は、描画前の記録媒体Pに加熱空気を吹き付け、記録媒体Pを加熱する。描画直前に記録媒体Pを加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
【0035】
描画部16は、画像を描画(印字)する記録ヘッドユニット50と、記録ヘッドユニット50にインクを供給するインク貯蔵/装填部52とを有する。
【0036】
記録ヘッドユニット50は、記録ヘッド50K,50C,50M,50Yを有しており、ノズル面がベルト38の記録媒体Pが載置される面に対向して配置されている。
記録ヘッド50K,50C,50M,50Yは、それぞれ、吐出部60(図3(a)参照)のノズル62から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)の各色のインク滴を吐出するインクジェットヘッドである。
記録ヘッド50K,50C,50M,50Yは、それぞれ、ベルト38の記録媒体Pが載置される面に対向して、加熱ファン44よりの記録媒体Pの搬送方向下流側に加熱ファン44に近い順に、記録ヘッド50K,50C,50M,50Yの順で配置されている。
また、記録ヘッド50K,50C,50M,50Yは、図2に示すように、記録媒体Pの搬送方向に直交する方向の幅が搬送する記録媒体Pの最大幅を越える領域に複数の吐出部(ノズル)が列状に配置されているフルライン型のインクジェットヘッドである。記録ヘッド50K,50C,50M,50Yおよびその吐出部60周辺の構成については後ほど説明する。
【0037】
本実施形態のように、記録ヘッド50K,50C,50M,50Yをフルライン型とすることにより、記録媒体Pと描画部16を記録ヘッド50K,50C,50M,50Yの吐出部の延在方向と直交する方向(副走査方向M)に相対的に1度、移動させることで(すなわち1回の走査で)、記録媒体Pの全面に画像を記録することができる。これにより、記録ヘッド50K,50C,50M,50Yが主走査方向Rに往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
記録媒体Pを搬送しつつ、各記録ヘッド50K,50C,50M,50Yからそれぞれの各色インクを吐出することにより記録媒体P上にカラー画像を記録することができる。
【0038】
なお、本実施形態においては、KCMYの標準色(4色)の構成としたが、インク色、色数の組み合わせについては、本実施形態には限定されるものではなく、必要に応じて淡インク、濃インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタ等のライト系インク滴を吐出するヘッドを追加する。
また、記録ヘッドユニットをK(黒)インク滴を吐出する記録ヘッドのみ、つまり、単色の記録ヘッドユニットとし、単色の画像を描画する画像記録装置として用いることもできる。
【0039】
インク貯蔵/装填部52は、各記録ヘッド50K,50C,50M,50Yに対応する色のインクを貯蔵するインク供給タンクを有する。
インク供給タンクとしては、例えば、インク残量が少なくなった場合に、補充口(図示せず)からタンク内にインクを補充する方式や、タンクごと交換するカートリッジ方式を用いることができる。
インク貯蔵/装填部52の各インク供給タンクは、図示しない管路を介して各記録ヘッド50K,50C,50M,50Yと連通されており、各記録ヘッド50K,50C,50M,50Yにインクを供給する。
【0040】
ここで、インク貯蔵/装填部52は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段等)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有することが好ましい。
また、使用用途に応じてインク種類を変える場合には、カートリッジ方式を用いることが好ましい。また、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じた吐出制御を行うことが好ましい。
【0041】
加熱・加圧部18は、後乾燥部46と、加圧ローラ対54とを有し、描画部16で画像が描画された記録媒体Pを加熱・加圧し、画像部を乾燥し定着させる。
後乾燥部46は、記録媒体Pの搬送経路において、記録ヘッドユニット50の下流側でかつ、ベルト38に対向する位置に配置されている。後乾燥部46は、加熱ファン等であり、記録媒体Pの画像面に熱風を吹き付け、描画された画像を乾燥させる。
ここで、後乾燥部46には、ヒータ99(図4参照)が設けられている加熱ファンを用い、熱風を吹き付けることが好ましい。
加熱ファンにより、記録媒体上の画像部のインクを乾燥させることで、画像部に接触することなく乾燥させることができる。これにより、記録媒体Pに描画された画像に画像欠陥、画像汚れが生じることを防止できる。
【0042】
また、加圧ローラ対54は、記録媒体Pの搬送経路において、後乾燥部46の下流側に配置されている。加圧ロール対54は、後乾燥部46を通過した後、ベルト38から分離された記録媒体Pを、挟持搬送する。
加圧ローラ対54は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、吸着ベルト搬送部36により搬送された記録媒体Pの画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラ54で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
【0043】
また、多孔質のぺーパに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパの孔を塞ぐことでオゾンなど、染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぐことができ、画像の耐候性が向上させることができる。
【0044】
さらに、インクジェット描画装置10は、記録媒体Pの搬送経路において、加圧・加熱部18の下流側に第2のカッタ56が配置されている。
第2のカッタ56は、固定刃56Aと丸刃56Bとから構成され、記録媒体Pに通常の画像と位置ずれ検出用の画像を記録した場合に、通常の画像部分と位置ずれ検出用の画像部分とを切り離す。
【0045】
排出部20は、第1排出部58A、第2排出部58Bを有し、記録媒体Pの搬送方向において、第2のカッタ56の下流側に配置されている。排出部20は、加熱・加圧部18で画像が定着された記録媒体Pを排出する。
ここで、本実施形態では、記録媒体Pに記録された画像により、図示しない選別手段が記録媒体Pを排出する排出部を切換、第1排出部58Aには、通常の画像が描画された記録媒体Pが排出され、第2排出部58Bには、後述するテストチャートが記録された記録媒体Pが排出される。
【0046】
また、排出部20には、オーダ別に画像を集積するソーターを設けることが好ましい。
なお、本実施形態のように、排出部を2つ設け、目的に応じて排出部を選択できるようにすることが好ましいが、これに限定されず、排出部を1つとし、全ての記録媒体を1つの排出部から排出させてもよい。また、排出部を3つ以上設けてもよい。
【0047】
制御部22は、供給部12、搬送部14、描画部16、加熱・加圧部18、排出部20、画像読取部24による記録媒体の搬送、加熱、描画、位置ずれ検出等を制御するものである。この制御部22については、後ほど詳細に説明する。
【0048】
本実施形態の画像読取部24は、ベルト38の外側に対向し、かつ、記録ヘッドユニット50と後乾燥部46と間となる位置に配置されている。画像読取部24は、描画部16の打滴結果を撮像するためのイメージセンサ(ラインセンサー等)を有し、このイメージセンサによって読み取った打滴画像からドットの大きさ、ノズルの目詰まり、着弾位置誤差などの吐出特性をチェックする手段として機能する。
【0049】
本実施形態の画像読取部24は、各記録ヘッド50K,50C,50M,50Yによるインク吐出幅(画像記録幅)よりも幅の広い受光素子列を有するラインセンサーで構成される。このラインセンサーは、赤(R)の色フィルターが設けられた光電変換素子(画素)がライン状に配列されたRセンサー列と、緑(G)の色フィルターが設けられたGセンサー列と、青(B)の色フィルターが設けられたBセンサー列と、を備える色分解ラインCCDセンサである。なお、ラインセンサーに代えて、受光素子が二次元配列されて成るエリアセンサーを用いることも可能である。画像読取部24は、各色の記録ヘッド50K,50C,50M,50Yにより記録された出力画像について、色、および濃度を読み取る機能を有するものでもある。
【0050】
画像読取部24は、各色の記録ヘッド50K,50C,50M,50Yにより描画されたテストパターンを読み取り、各ヘッドの吐出特性の判定が行われる。吐出特性判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドット着弾位置の測定などにより構成される。各ヘッドの吐出特性の検出の詳細については後述する。
【0051】
画像読取部24の後段に、後乾燥部46が設けられている。後乾燥部46は、記録された画像記録面を乾燥させるものであり、例えば、加熱ファンが用いられている。このため、画像記録後のインクが乾燥するまでは画像記録面と接触することは避けることが好ましいため、熱風を吹き付ける方式が好ましい。
【0052】
次に、記録ヘッド50K,50C,50M,50Yの構造について説明する。ここで、記録ヘッド50K,50C,50M,50Yは、吐出するインクの色を除いて、構成は同一であるので、以下、代表して記録ヘッド50Kについて説明する。
【0053】
図3(a)は、本発明の実施形態の画像記録装置の記録ヘッドを示す模式図であり、(b)は、記録ヘッドの吐出部の構造を示す模式的断面図である。
図3(a)に示すように、記録ヘッド50Kにおいて、記録媒体P面上に画像形成されるドットピッチを高密度化するためには、記録ヘッド50Kにおけるノズルピッチを高密度化する必要がある。
本実施形態の記録ヘッド50Kにおいては、画像を構成するドットを形成するためのインク滴を吐出するノズル62が複数、主走査方向Rに対して、所定の角度θ傾斜して配列されており、これらのノズル62によりノズル列NL(ノズルブロック)が構成されている。このノズル列NLが主走査方向Rに沿って、所定の解像度となるよう複数配置されており、ノズル62が、千鳥状で、かつマトリックス状に配置されている。
本実施形態の記録ヘッド50Kにおいては、インク滴が吐出される各ノズル62には、それぞれ吐出部60が設けられている。各吐出部60が、千鳥状で、かつマトリックス状に配置されている。このノズル62、すなわち、吐出部60の配置により、見かけ上のノズルピッチの高密度化が達成されている。
【0054】
記録ヘッド50においては、ノズル62(各吐出部60)が副走査方向Mに対して所定の角度θ傾けて配置されている。このように、主走査方向Rに対して所定の角度θ傾けて、吐出部60を一定のピッチdで複数配列することにより、主走査方向Rに並ぶように投影されたノズルのピッチPはd×COSθとなる。
【0055】
主走査方向Rについては、各ノズル62が一定のピッチで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向Rに並ぶように投影されるノズル列が、例えば、1インチ当たり1200個(1200ノズル/インチ)におよぶ高密度の記録解像度(ドットピッチ)のノズル構成を実現することができる。
【0056】
図3(a)に示すように、本実施形態の記録ヘッド50Kにおいては、6個のノズル62により各ノズル列NLが構成されており、各ノズル列NLは、1つの流路が配置されており、各ノズル列NLにおいては、互いの流路は隔離されている。このように、1つの流路に対して1つのノズル列NLが設けられている。これをノズルブロックともいう。
【0057】
図3(a)に示すように、記録ヘッド50Kには多数のノズル62が千鳥状に設けられており、副走査方向Mのノズル密度(ノズルピッチ)は、例えば、1インチあたり1200個(1200ノズル/インチ)におよぶ高密度の記録解像度(ドットピッチ)にできる。
【0058】
次に、記録ヘッド50Kの吐出部60の内部構造について説明する。
図3(b)に示すように、吐出部60は、インク室ユニット61と、アクチュエータ66とを有する。さらに、インク室ユニット61は、共通流路65に接続している。この共通流路65は、複数の吐出部60のインク室ユニット61と接続している。
【0059】
インク室ユニット61は、ノズル62と、圧力室63と、供給口64とを有する。
ノズル62は、インク液滴を吐出する開口部であり、一端が記録媒体Pと対向する面に開口し、他端が圧力室63に接続している。
圧力室63は、インク液滴を吐出する方向に垂直な面の平面形状が概略正方形の直方体形状であり、対角線上の両隅部がノズル62と供給口64とに接続されている。
供給口64は、一端が圧力室63と接続し、他端が共通流路65と連通している。
【0060】
アクチュエータ66は、圧力室63のノズル62および供給口64との接続面とは反対側の面(天面)に配置され、加圧板67と、個別電極68とを有する。
このアクチュエータ66は、個別電極68に駆動電圧を印加することで、加圧板67が変形する。
本実施形態においては、1つのノズル列NLについて共通流路65が1つ設けられており、各ノズル列NLの共通流路65は、互いに分離されている。このため、ノズル列NLは、他のノズル列のインク滴吐出の影響を受けることなく吐出することができる。
【0061】
吐出部60のインク吐出方法について説明する。
インクは、共通流路65から共通口64を介して、圧力室63及びノズル62に供給される。
圧力室63及びノズル62にインクが満ちている状態で、個別電極68に駆動信号(駆動電圧)が印加されると、加圧板67がノズル62側に凸になるように変形し、これにより圧力室63が加圧されて、ノズル62からインク滴が吐出される。このようにアクチュエータ66を駆動させることでノズル62からインク液滴を吐出させることができる。
また、ノズル62からインク滴が吐出されると、共通流路65から供給口64を通って圧力室63に新しいインクが供給される。
なお、圧力室63の形状は、特に限定されるものではなく、平面形状が四角形、五角形、または六角形などの多角形、円形、または楕円形とすることができる。
【0062】
なお、本実施形態において吐出部の構造は、特に限定されるものではない。
また、本実施形態においては、圧電素子(ピエゾ素子)に代表されるアクチュエータの変形によって、インク滴を吐出させる方式を用いているが、本発明は、これに限定されるものではない。インク滴を吐出させる方式は、特に限定されず、ピエゾ方式に代えて、ヒータなどの発熱体によってインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式など、各種方式を適用できる。
【0063】
図4は、画像記録装置10の制御部22のシステム構成を示す要部ブロック図である。
制御部22は、通信インターフェース80、システムコントローラ82、画像メモリ84、ROM85、モータドライバ86、ヒータードライバ88、プリント制御部90、画像バッファメモリ92、ヘッドドライバ94等を備え、上述したように、供給部12、搬送部14、描画部16、加熱・加圧部18、排出部20、画像読取部24による記録媒体Pの搬送、加熱、描画、位置ずれ検出等を制御する。
【0064】
本実施形態の制御部22においては、ホストコンピュータ96から送り出された、所定の画像を表す入力画像データは、通信インターフェース80を介して、一旦画像メモリ84に記憶される。
画像メモリ84は、通信インターフェース80を介して入力された入力画像データを格納する記憶手段であり、システムコントローラ82を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ84は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
【0065】
システムコントローラ82は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従って画像記録装置10の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。すなわち、システムコントローラ82は、通信インターフェース80、モータドライバ86、ヒータードライバ88等の各部を制御し、ホストコンピュータ96との間の通信制御、画像メモリ84及びROM85の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ98およびヒータ99を制御する制御信号を生成する。
【0066】
また、システムコントローラ82は、画像読取部24に読み取られたテストパターンの読取データから着弾位置誤差のデータを生成する演算処理を行う着弾誤差測定演算部82aと、測定された着弾位置誤差の情報から濃度補正係数を算出する濃度補正係数算出部82bとを有する。
着弾誤差測定演算部82a及び濃度補正係数算出部82bの処理機能はASICやソフトウエア又は適宜の組み合わせによって実現可能である。
濃度補正係数算出部82bにおいて求められた濃度補正係数のデータは、濃度補正記憶部87に記憶される。
【0067】
さらには、システムコントローラ82は、後述するように、テストパターンを用いて記録ヘッドの各ノズルのインク吐出特性を取得するインク吐出特性取得部も兼ねるものである。
【0068】
システムコントローラ82においては、記録媒体Pに記録され、読み取れられた第1のテストチャート部および第2のテストチャート部の画像データが画像読取部24から入力される。この第1のテストチャート部および第2のテストチャート部の画像データと、チャートデータに基づく第1のテストチャート部および第2のテストチャート部の画像データとを比較する。そして、第1のテストチャート部により、ノズル単独でのインク滴吐出特性(第1の特性)を求める。これは、インク滴により構成されるドットの大きさ、位置により求めることができる。
また、第2のテストチャート部により、複数ノズルの同時吐出によるインク滴吐出特性、すなわち、クロストーク特性(第2の特性)を求めることができる。このクロストーク特性を求める際に、ノズル単独でのインク滴吐出特性を除去することにより、より正確なクロストーク特性を求めることができる。このようにして取得されたインク吐出特性の情報は、濃度補正記憶部87に記憶される。
なお、吐出特性を取得する場合、測定前の第1のテストチャート部および第2のテストチャート部の画像データと測定後の第1のテストチャート部および第2のテストチャート部の画像データを比較することなく、読み取られた第1のテストチャート部および第2のテストチャート部の画像データを比較することによっても、インク滴吐出特性(第1の特性)およびクロストーク特性(第2の特性)を求めることができる。
【0069】
ROM85には、システムコントローラ82のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データ(着弾位置誤差測定用のテストパターンのデータを含む)、および後述する各テストパターンZa、Zb、Zcの画像データ(チャートデータ、(図12(b)、図13、および図14参照))などが格納されている。ROM85は、書換不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書換可能な記憶手段であってもよい。また、このROM85の記憶領域を活用することで、ROM85を濃度補正記憶部87として兼用する構成も可能である。
【0070】
画像メモリ84は、上述のように入力画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
【0071】
モータドライバ86は、システムコントローラ82からの指示に従って搬送系のモータ98を駆動するドライバ(駆動回路)である。
ヒータードライバ88は、システムコントローラ82からの指示に従って後乾燥部46等のヒータ99を駆動するドライバ(駆動回路)である。
【0072】
プリント制御部90は、システムコントローラ82の制御に従い、画像メモリ84内の入力画像データ(例えば、24ビットのRGBデータ)から打滴制御用の信号(インク吐出データ)を生成するための各種加工、および入力画像データのムラ補正などの補正処理を行う信号処理手段として機能するとともに、生成したインク吐出データをヘッドドライバ94に供給して記録ヘッド50K〜50Yの吐出駆動を制御する駆動制御手段として機能するものである。
【0073】
プリント制御部90は、二値化部90aと、印字データ作成部90bと、補正部90cと、濃度算出部90dとを有する。これら各機能ブロック(二値化部90a、印字データ作成部90b、補正部90cおよび濃度算出部90d)は、例えば、ASIC、ソフトウエア、またはこれらの適宜の組み合わせによって構成されるものである。
【0074】
二値化部90aは、例えば、24ビットのRGBデータにより構成される入力画像データに対して、例えば、ルックアップテーブルによる濃度変換処理を行い、記録装置10の記録ヘッド50K〜50Yが有する、例えば、CMYKの各インク色に対応した濃度データに変換する。これにより、入力画像データの各画素について、濃度データが割り当てられる。
【0075】
なお、二値化部90aにおける濃度変換処理は、一般的なものであり、下色除去(UCR:Under color Removal)処理、またはライトインク(同色系の淡インク)を使用するシステムの場合におけるライトインクへの分配処理などが含まれる。
また、入力画像データの解像度とプリンタの解像度(ノズル解像度)とが一致しない場合は、プリンタ解像度に合わせて、入力画像データについて画素数変換の処理を行う。
このように、濃度変換処理(UCR処理、色変換を含む)、および要な場合には画素数変換処理を行う。次に、CMYKの各インク色に対応して変換された濃度データに対して、ハーフトーニング処理を行い、インク滴吐出のオン/オフ信号(2値化データ)に変換する。
なお、ハーフトーニングの手法は特に限定されるものではなく、誤差拡散法またはディザ法など周知の2値化手法を用いることができる。
【0076】
印字データ作成部90bは、二値化部90aで作成された入力画像の2値化データに基づいて各ノズルのインク吐出(打滴)データを生成するものであり、画像データの各画素とノズルとが対応付けられる。このインク吐出データにより、記録ヘッド50K〜50Yの吐出動作が制御される。
この印字データ作成部90bは、ヘッドドライバ94に接続されており、インク吐出(打滴)データは、ヘッドドライバ94に出力され、記録ヘッド50K〜50Yのインク吐出動作、すなわち、各ノズル62のインク滴吐出のオン/オフが制御される。
【0077】
補正部90cは、後述するように、入力画像データから求めた濃度データについて、ムラ補正処理をするものである。このムラ補正処理については、後に詳細に説明する。
さらには、入力画像データから求めた濃度データをムラ補正処理した後のムラ補正濃度データを再度、入力画像データと同じデータ形式、例えば、24ビットのRGBデータに変換するものでもある。この場合、後述するように、例えば、ROM85に予め記憶されている後述のガンマカーブを用いて、ムラ補正濃度データを入力画像データ(24ビットのRGBデータ)に変換する。
【0078】
濃度算出部90dは、印字データ作成部90bで作成されたインク吐出データに基づいて、出力画像の濃度を算出するものである。以下、インク吐出データから算出された出力画像の濃度を出力予測濃度という。
【0079】
なお、濃度算出部90dにおいては、出力予測濃度を算出する場合、記録ヘッド50K〜50Yの各ノズルのインク吐出特性が考慮され、このインク吐出特性の情報は、濃度補正記憶部87から読み出される。
【0080】
本実施形態においては、例えば、ROM85に、インクの滴量が変化した際のガンマカーブ(RGBデータとマクロ濃度の関係)を予め保持(記憶)している。濃度算出部90dにおいては、ROM85のインクの滴量が変化した際のガンマカーブを参照して、インク吐出データに基づいて出力画像の濃度を算出する。このインクの滴量が変化した際のガンマカーブは、記録ヘッドについて実験により測定するか、またはシミュレーションにより求められるものである。
【0081】
ガンマカーブを実験で求める場合には、先ず、シングルノズルで各面積率のベタチャートを打滴して濃度を濃度計で測定する。そして、インクの滴量を変化させて各面積率のベタチャートを打滴して濃度を濃度計で測定する。これにより、インクの滴量が変化した際のガンマカーブを得ることができる。もちろんインクの滴量の変化がないときのガンマカーブも得ることができる。
また、ガンマカーブをシミュレーションで求める場合においても、実験で求める場合と同様であり、先ず、シングルノズル打滴結果をモデル化し、各面積率のベタチャートを打滴した場合の濃度を予測する。そして、インク滴の量を変化させて各面積率のベタチャートを打滴した場合の濃度を予測することにより、インクの滴量が変化した際のガンマカーブおよびインクの滴量の変化がないときのガンマカーブを得ることができる。
インクの滴量が変化した際のガンマカーブおよびインクの滴量の変化がないときのガンマカーブは、例えば、製造時に実験により測定されるか、またはシミュレーションにより求められてROM85に記憶される。
【0082】
濃度算出部90dにおいては、出力予測濃度を算出する場合、さらに濃度補正記憶部87からインク吐出特性の情報を取得することにより、インク滴量の変化量が特定され、インクの滴量が変化した際のガンマカーブを用いることにより出力予測濃度を算出する。
【0083】
この記録ヘッド50K〜50Yの各ノズルのインク吐出特性の取得方法については、後に詳細に説明する。なお、この記録ヘッド50K〜50Yの各ノズルのインク吐出特性は、製造時に初期値として求めてもよいし、画像記録する毎など定期的に求めてもよい。いずれの場合にも、インク吐出特性の情報は、濃度補正記憶部87に記憶される。
【0084】
さらには、濃度算出部90dは、入力画像データ(24ビットのRGBデータ)から出力画像の濃度を算出するものでもある。以下、入力画像データ(24ビットのRGBデータ)から出力画像の濃度を理想濃度という。
また、理想濃度を求める場合においては、インク滴量の変化量がゼロの状態であるため、濃度算出部90dにおいては、単にROM85に予め記憶された、インクの滴量の変化がないときのガンマカーブを用いて算出する。
【0085】
判定部90eは、濃度算出部90dで算出された出力予測濃度と理想濃度との濃度差を各画素について求めるものであり、例えば、判定部90eには判定基準となる濃度差の閾値が設定されている。
この判定部90eにおいては、得られた濃度差と閾値とを比較し、補正が必要か否かが判定される。
【0086】
なお、判定部90eにおける判定は、各画素について濃度を求めるものに限定されるものではない。例えば、出力予測濃度について、所定領域の領域内の平均濃度を求め、これを理想濃度における所定領域の平均濃度と比較し、補正が必要か否かを判定してもよい。
また、濃度ムラのパワースペクトルを求め、その低周波成分に基づいて、補正が必要か否かを判定してもよい。これは、低周波成分がムラ視認性に相関するため、低周波成分が所定値以上であると、ムラが視認されるためである。
【0087】
判定部90eにおいては、判定条件を満足していれば、すなわち、補正が不要であれば、印字データ90bからヘッドドライバ94にインク吐出データを出力させる。
一方、判定部90eにおいては、判定条件を満足しなければ、すなわち、補正が必要な場合には、補正部90cにおいて、入力画像が二値化されて形成された濃度データに、例えば、後述するムラ補正処理する。その後、ムラ補正処理した濃度データを再度、入力画像データ(24ビット、RGBデータ)にさせる。
【0088】
さらには、判定部90eは、画像読取部24で読み取られた読取濃度が入力され、この読取濃度について濃度解析を行うものでもあり、濃度解析部の機能を有する。判定部90eは、入力画像データについても濃度解析を行う。
【0089】
プリント制御部90には画像バッファメモリ92が備えられており、プリント制御部90における画像データ処理時に画像データ、パラメータなどのデータが画像バッファメモリ92に一時的に格納される。なお、図4において画像バッファメモリ92はプリント制御部90に付随する態様で示されているが、画像メモリ84と兼用することも可能である。また、プリント制御部90とシステムコントローラ82とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0090】
ここで、本実施形態の画像記録装置10の画像記録方法について、簡単に説明する。
本実施形態においては、記録する画像を表す入力画像データが、例えば、24ビットのRGBデータとして、通信インターフェース80を介して外部から入力され、画像メモリ84に格納される。
【0091】
画像記録装置10では、インク(色材)による微細なドットの打滴密度やドットサイズを変えることによって、人の目に疑似的な連続階調の画像を記録するため、入力されたデジタル画像の階調(画像の濃淡)をできるだけ忠実に再現するようなドットパターンに変換する必要がある。そのため、画像メモリ84に蓄えられた入力画像データは、システムコントローラ82を介してプリント制御部90に送られ、このプリント制御部90の二値化部90a、印字データ作成部90bを経て各インクの色毎のインク吐出データに変換される。
【0092】
この場合、例えば、プリント制御部90は、入力画像データを、二値化部90aでK,C,M,Yの4色のドットデータに変換する処理を行い、二値化部90aで生成されたドットデータは、画像バッファメモリ92に蓄えられる。この色別ドットデータは、印字データ作成部90bで、記録ヘッド50K〜50Yのノズルからインクを吐出するためのインク吐出データ(CMYK打滴データ)に変換される。
【0093】
ヘッドドライバ94は、プリント制御部90から与えられるインク吐出データ(画像(印字)データ)の信号に基づいて各色の記録ヘッド50K,50C,50M,50Yの各吐出部60の圧電素子62(アクチュエータ)を駆動するための駆動信号を生成し、出力して、これらを駆動する。ヘッドドライバ94にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0094】
こうして、ヘッドドライバ94から出力された、インク吐出データに基づく駆動信号が記録ヘッド50K〜50Yに加えられることによって、該当するノズル62からインクが吐出される。記録媒体Pの搬送速度に同期して記録ヘッド50K〜50Yからのインク吐出を制御することにより、記録媒体P上に画像が記録される。
【0095】
上述のように、プリント制御部90における所要の信号処理を経て生成されたインク吐出データに基づき、ヘッドドライバ94を介して各ノズルからのインク液滴の吐出量、吐出タイミングの制御が行われる。これにより、記録する画像に応じたドット配置が実現される。
【0096】
画像読取部24は、上述のようにイメージセンサを有するものであり、記録媒体Pに記録された記録画像を読み取り、所要の信号処理などを行って記録状況(吐出の有無、打滴のばらつき、色、光学濃度など)を検出し、その検出結果をプリント制御部90及びシステムコントローラ82に提供する。
【0097】
プリント制御部90は、必要に応じて画像読取部24から得られる情報に基づいて記録ヘッド50K〜50Yに対する各種補正を行うとともに、必要に応じて予備吐出、吸引、ワイピング等のクリーニング動作(ノズル回復動作)を実施する制御を行う。
【0098】
なお、本実施形形態においては、着弾誤差測定演算部82a、濃度補正係数算出部82b、二値化部90a、印字データ作成部90bは、制御部22に設ける構成としたが、これに限定されるものではなく、これらの全て又は一部をホストコンピュータ96側に設ける構成でもよい。
【0099】
以下、プリント制御部90の補正部90cが行うムラ補正について、シングルラインヘッドモデルを例にして説明する。
まず、ムラ補正の原理について説明する。濃度ムラの補正処理では、あるノズルが持つ着弾位置誤差を補正する際に、そのノズルを含む周囲のノズルN本を用いて補正する。補正に用いるノズル数Nが大きいほど、より補正精度が高くなる。
【0100】
図5は、補正前の様子を示す模式図である。図5は、シングルラインヘッドモデル(記録ヘッドに相当)60aの左から3番目のノズル(nzl3)が着弾位置誤差を持っており、理想的な着弾位置(原点O)から図上で右方向(X軸で示した主走査方向)に着弾位置がずれて着弾する。また、図5の下側に示したグラフは、ノズルからの打滴による印字濃度を被記録媒体搬送方向(副走査方向)に平均化して得られる、ノズル列方向(主走査方向)の濃度プロファイルを示したものである。ただし、図5ではノズルnzl3の印字に対する補正を考察するので、ノズルnzl3以外の濃度出力の図示を省略している。
【0101】
各ノズルnzl1〜5の初期出力濃度をDi=Dini(ただし、iはノズル番号1〜5、Diniは一定値を表す)、ノズルnzl3の理想着弾位置を原点O、各ノズルnzl1〜5の着弾位置をXiとする。
【0102】
ここでDiは、物理的には記録媒体搬送方向に平均化したノズルの出力光学濃度を表し、データ処理上は各画素が持つ濃度データD(i,j)(ただし、iはノズル番号、jは記録媒体搬送方向の画素番号を表す)に対して「j」について平均化したものを表している。
【0103】
図5に示すように、ノズルnzl3の着弾位置誤差は、ノズルnzl3の濃度出力(太線)の原点Oからのズレとして表される。今、この出力濃度のズレを補正することを考える。
【0104】
図6は、補正後の様子を示す模式図である。ただし、ノズルnzl3以外は補正分のみを図示している。図6の場合、補正に用いるノズル数はN=3であり、ノズルnzl2,nzl3,nzl4に濃度補正係数d2,d3,d4が乗ぜられている。ここでいう濃度補正係数diは、補正後の出力濃度をDi’とするとき、Di’=Di+di×Diで定義される係数である。
【0105】
本実施形態では、濃度ムラの視認性が最小となるよう、各ノズルの濃度補正係数diが決定される。印字画像の濃度ムラは、空間周波数特性(パワースペクトル)での強度で表される。人間の視覚的には高周波成分は視認できないため、濃度ムラの視認性は、パワースペクトルの低周波成分に等しい。そのため、パワースペクトルの低周波成分を最小とするよう、各ノズルの濃度補正係数diが決定される。
【0106】
濃度補正係数diを決定する式の導出について詳細は後述するが、結果のみを先に示すと、特定のノズルの着弾位置誤差に対する濃度補正係数diは、以下の式より決定される。
【0107】
【数1】

ここで、xiはそれぞれ補正対象ノズルの理想着弾位置を原点とした各ノズルの着弾位置である。Πは、補正に用いるN本のノズル内で積をとることを意味する。図6におけるN=3の場合について明示的に表すと、次のようになる。
【0108】
【数2】

【0109】
次に、濃度補正係数の導出について説明する。
濃度ムラのパワースペクトルの低周波成分を最小化するという条件から、理論的に各ノズルの濃度補正係数を導くことができる。
【0110】
まず、各ノズルの誤差特性を取り込んだ濃度プロファイルを次式のように定義する。
【0111】
【数3】

画像の濃度プロファイルD(x)は、各ノズルが印字する濃度プロファイルの和であり、ノズルの印字を表すのが印字モデル(1ノズルが印字する濃度プロファイル)である。印字モデルはノズル出力濃度Diと標準濃度プロファイルz(x)に分離して表現される。
【0112】
標準濃度プロファイルz(x)は、厳密にはドット径に等しい有限の広がりを持つものであるが、位置誤差の補正を濃度ズレのバランシングの問題であると考えると、重要なのは濃度プロファイルの重心位置(着弾位置)であって、濃度プロファイルの広がりは副次的な要素である。そのため、プロファイルをδ関数で置き換える近似は妥当である。このような標準濃度プロファイルを仮定すると数学的な取り扱いが容易となり、補正係数の厳密解が得られる。
【0113】
図7(a)は現実に即した印字モデルであり、図7(b)はδ関数型印字モデルである。δ関数モデルで近似する場合、標準濃度プロファイルは次式で表される。
【0114】
【数4】

補正係数を導出するにあたり、ある特定のノズル(i=0)の着弾位置誤差Δx0を、
周辺ノズルN本によって補正することを考える。なお、ここでは補正対象ノズルの番号をi=0とした。また、周辺のノズルも、所定の着弾位置誤差を持ち得ることに注意する。
【0115】
補正対象ノズル(中心ノズル)を含むN本のノズルの番号(index)は、次式で表される。
【0116】
【数5】

なお、この式においては、Nは奇数である必要があるが、本実施形態においては、Nを奇数に限定する必要はない。
【0117】
初期出力濃度(補正前の出力濃度)はi=0のみ値を持つものとして、次式で表される。
【0118】
【数6】

濃度補正係数をdiとするとき、補正後出力濃度Di’は、次式で表される。
【0119】
【数7】

つまり、i=0では初期出力濃度値と補正値(di×Dini)の和で表され、i≠0では補正値のみとなる。
【0120】
各ノズルiの着弾位置xiは、次式で表される。
【0121】
【数8】

δ関数型印字モデルを用いると、補正後の濃度プロファイルは、次式で表される。
【0122】
【数9】

これに対してFourier変換を行うと、次式、
【0123】
【数10】

と表される。なお、Diniは共通の定数のため省略した。
【0124】
濃度ムラの視認性を最小化することは、すなわち、次式のパワースペクトルの低周波成分を最小化することである。
【0125】
【数11】

これは、数学的にはT(f)のf=0における微分係数(1次、2次、…)がゼロであることで近似できる。今、未知数di’はN個であるから、DC成分の保存条件も含めると、N−1次までの微分係数がゼロの条件を用いれば、全ての(N個の)未知数di’が厳密に定まる。このようにして、以下の補正条件が定まる。
【0126】
【数12】

δ関数モデルにおいては、各補正条件を展開していくと、容易な計算によってDiについてのN本の連立方程式に帰着する。各補正条件を展開したものを整理すると、以下の条件群(方程式群)が得られる。
【0127】
【数13】

これらの方程式群の意味するところは、1式目はDC成分の保存であり、2式目は重心位置の保存を表している。3式目以降は統計学におけるN−1次モーメントがゼロであることを表している。
【0128】
このようにして得られた条件式を行列形式で表すと、以下のように表すことができる。
【0129】
【数14】

この係数行列Aは、いわゆるVandermonde型の行列であり、その行列式は差積を用いて次式となることが知られている。
【0130】
【数15】

このため、Crammerの公式を用いてdi’の厳密解を求めることができる。計算の詳細な過程は省略するが、代数計算によって、その解は次式となることが示される。
【0131】
【数16】

よって、求めるべき補正係数diは、次式となる。
【0132】
【数17】

以上のように、パワースペクトルの原点微分係数をゼロにするという条件から、濃度補正係数diの厳密解が導かれる。補正に用いる周辺ノズル数Nを増やすほど、より高次の
微分係数をゼロにすることが可能になるため、低周波エネルギーがより小さくなり、ムラの視認性は一層低減する。
【0133】
本実施形態では、原点微分係数をゼロにする条件を用いたが、完全にゼロとせずとも、補正前の微分係数に比べて十分小さい値(例えば、補正前の1/10)に設定しても、濃度ムラのパワースペクトルの低周波成分を十分に小さくすることができる。つまり、濃度ムラが視認されない程度にパワースペクトルの低周波成分を小さくするという条件の観点で、パワースペクトルの原点微分係数を十分に小さい値(略0)に設定するという意味から、その値の範囲として補正前の微分係数の絶対値の1/10以下までを許容する。
また、人間の視覚特性を考慮すると、濃度ムラの視認性を示すのは、0〜8cycle/mmの低周波領域であり、この領域のパワースペクトルが小さいほど、補正精度が高いことを意味する。
【0134】
本実施形態においては、ある特定の1ノズル(例えば、図5におけるノズルnzl3)に対する濃度補正係数の決定方法について説明している。実際には、ヘッド内の全てのノズルが何らかの着弾位置誤差を持っているため、全ての着弾位置誤差に対して補正を行うことが好ましい。
【0135】
すなわち、全てのノズルに対して、周囲N個のノズルにおける上記の濃度補正係数を求める。濃度補正係数を決定する際に用いる後述のパワースペクトル最小化方程式は線形なので、ノズルごとに重ね合わせが可能である。そのため、トータルの濃度補正係数は、上述のようにして得られた濃度補正係数の和を取れば求められる。
【0136】
つまり、ノズルkの持つ位置誤差に対するノズルiの濃度補正係数をd(i,k)とおくと、このd(i,k)は[数1]の方程式で求められる。そして、ノズルiのトータルの濃度補正係数diは、次式として求められる。
【0137】
【数18】

なお、上記の例では、全ノズルの着弾位置誤差を補正対象としてインデックスkを足し合わせているが、ある値ΔX_threshを閾値として予め設定しておき、この閾値を超える着弾位置誤差をもつノズルのみを補正対象とするように選択的に補正する構成も可能である。
【0138】
前述のとおり、補正に用いるノズル数Nの値を増加させると補正精度が向上するが、濃度補正係数の変化幅も増加して再現画像の破綻を招く可能性がある。そのため、画像破綻を起こさないための補正係数制限範囲(上限値d_maxと下限値d_min)を定めておき、上記の式で求まるトータルの濃度補正係数が制限範囲内に収まるようにN値を設定することが望ましい。すなわち、d_min<di<d_maxを満たすようN値を定める。
【0139】
実験的な知見によれば、d_min≧−1、d_max≦1を満たすならば画像破綻を起こさない。
【0140】
本実施形態のムラ補正処理においては、入力画像データが、24ビットのRGBデータである場合、二値化部90aで、入力画像データに対して、濃度変換処理を行い、プリンタの持つインク色に対応した各CMYKを含む濃度データD(i,j)に変換される。なお、(i,j)は画素の位置を表し、各画素について濃度データが割り当てられる。
【0141】
濃度変換処理を経て得られた濃度データD(i,j)に対してムラ補正処理が行われる。この場合、各画素に対応するノズルに応じた濃度補正係数diを濃度データD(i,j)に乗ずる演算が行われる。
【0142】
図8に示すように、ノズルnzliの位置(主走査方向位置)iと副走査方向位置jによって画像上の画素位置(i,j)が特定され、各画素について濃度データD(i,j)が与えられる。
ここで、図8の斜線で示す画素列の打滴を受け持つノズルについてムラ補正処理を行う場合、補正後の濃度データD’(i,j)は次式、D’(i,j)=D(i,j)+di×D(i,j)で計算される。こうして、補正済みの濃度データD’(i,j)が得られる。このようにして、ムラ補正処理がなされる。
本実施形態においては、補正部90cで、ムラ補正された濃度データを、後述するように、入力画像データの補正に利用するため、再度24ビットのRGBデータに変換する。
【0143】
また、本発明の適用範囲は、着弾位置誤差による濃度ムラの補正に限定されず、液滴量誤差による濃度ムラ、不吐出ノズルの存在による濃度ムラ、周期的印字誤差による濃度ムラなど、様々な要因による濃度ムラに対して、上述した補正処理と同様の手法によって、補正効果を得ることができる。
更に、本発明の適用はラインヘッド方式のプリンタに限定されず、シリアル(シャトル)スキャン方式のプリンタにおけるスジムラに対しても有効な補正効果を得ることができる。
【0144】
以上、ムラ補正について、印字モデルとしてδ関数モデルを用いた例を説明したが、ムラ補正における印字モデルはこれに限定されるものではなく、一般的な任意の濃度プロファイルを想定した一般モデルを用いることができ、この一般モデルを用いた場合のムラ補正について以下に説明する。
【0145】
一般モデルを用いる場合も、構成上はδ関数モデルを用いる場合とほぼ同様であるが、演算に用いる数式が異なる。
【0146】
すなわち、一般モデルの場合、濃度プロファイルは下記の一般式で表される。
【0147】
【数19】

ただし、この関数は以下の式[数20],[数21]を満たすものである。
【0148】
【数20】

【0149】
【数21】

[数20]の式は正規化条件、[数21]は対称条件を表している。[数19]で表されるドットモデルは液滴量や被記録媒体(メディア)の種類に応じて変更される。
【0150】
かかる一般モデルを用いて補正した後の濃度プロファイルをFourier変換すると、次式となる。
【0151】
【数22】

これは[数10]に対応する式である。既に、説明したとおり、濃度ムラの視認性を最小化することは、[数11]で表されるパワースペクトルの低周波成分を最小化することであるから、数学的にはT(f)の f=0における微分係数(1次、2次、…)をゼロとすることに相当する。
【0152】
つまり、補正条件は次のとおりである。
【0153】
【数23】

上記の補正条件について、[数22]の一般モデルで計算すると、以下の条件群(方程式群)が得られる。
【0154】
【数24】

上記のN本の連立方程式が得られる。[数24]で示した連立方程式を数値的に解くことで濃度補正係数が求まる。
【0155】
現実のドット形状に近く、また解析計算が可能なモデルとして半球モデルが有用である。このため、以下、ムラ処理に、半球モデルを用いた場合について説明する。まず、半球モデルの場合、濃度プロファイルは下記の一般式で表される。
【0156】
【数25】

ただし、式中のrは液滴の着弾径(ドット半径)である。
【0157】
補正条件における2次微分係数の条件式は、以下のようになる。
【0158】
【数26】

そのため、例えば、N=3の場合の連立方程式は以下のようになる。
【0159】
【数27】

なお、Nを増やしていくと方程式は更に複雑になる。一般のNにおける連立方程式は、δ関数モデルのような厳密解が得られないため、数値計算によって解を求める必要がある。
【0160】
上述のように、被記録媒体の種類や液滴サイズ(吐出液滴量)などが変われば、これらの記録条件に応じてドット径(着弾径)などの記録状態が変わるため、多様な記録状態に対応した複数の印字モデルを用意しておき、記録状態に基づきその記録状態に適した印字モデルを選択的に使用する態様が好ましい。
【0161】
このような構成を実現するための構成例としては、複数の記録条件と、各条件で実現される記録状態に対応した複数の印字モデルのデータを、例えば、図4に示すROM85のEEPROM等の記憶手段に記憶しておき、被記録媒体の種類や液滴サイズに応じて、該当する条件(記録状態)に合った印字モデルを読み出し、これを用いて濃度補正係数を算出するようにプログラムされた図4システムコントローラ82を用いる。
【0162】
次に、画像記録装置10によりプリント、印刷物を作成する方法を説明する。
本実施形態においては、所定の画像を表す入力画像データに基づいて画像を記録する前に、入力画像データを補正するものである。
図9は、本発明の第1の実施形態の画像記録装置による画像形成方法を工程順に示すフローチャートである。
【0163】
本実施形態においては、先ず、供給部12のマガジン30から供給された記録媒体Pは、加熱ドラム32でデカール処理され、平坦化される。その後、第1のカッタ34で所定長さに切断された後、搬送部14に供給される。
搬送部14に供給された記録媒体Pは、吸着ベルト搬送部36のベルト38上に載置され、ベルト38の回転と共に搬送される。
【0164】
吸着ベルト搬送部36により搬送される記録媒体Pは、加熱ファン44に対向する位置を通過して、所定温度に加熱され、その後、記録ヘッドユニット50に対向する位置を通過する。このとき、記録媒体Pの表面に対して、各記録ヘッド50K、50C、50M、50Yにより、K、C、M、Yの順でインク滴を吐出し、記録媒体Pを所定のピッチだけ、例えば、記録ヘッド50K、50C、50M、50Yの副走査方向Mの長さだけ、副走査方向Mに移動させる。そして、再度K、C、M、Yの順で再度インク滴を吐出する。これを逐次繰り返し、副走査方向Mに、記録ヘッドにより記録する副走査方向Mにおける長さを間欠的に搬送しつつ、主走査方向Rに沿って像を形成し、最終的な画像を記録媒体P上に記録する。
【0165】
なお、記録媒体Pが記録ヘッドユニット50と対向する位置を通過する時は、吸着チャンバー39により吸引されており、記録媒体Pと記録ヘッドユニット50との距離は一定となる。記録ヘッドユニット50で画像が形成された記録媒体Pは、さらに、ベルト38により搬送され、後乾燥部46に対向する位置を通過して、インクで形成された画像部が乾燥され、加圧ローラ54で定着されたのち排出部20の第1排出部58Aから排出される。画像記録装置10は、このようにして記録媒体P上に画像を描画(記録)し、プリント、印刷物を作製する。
【0166】
本実施形態においては、画像記録装置10による画像形成時において、先ず、記録ヘッド50K、50C、50M、50Yのインク吐出特性に基づく、濃度ムラなどが出力画像に生じることを抑止し、最終的に、入力画像と同様の出力画像を記録媒体P上に記録するものである。
【0167】
先ず、記録媒体Pに記録する画像の入力画像データを、例えば、24ビットのRGB画像データを入力画像データとして、制御部22の画像メモリ84に格納させる。
次に、入力画像データに、濃度算出部90dにおいて、入力画像データ(24ビットのRGBデータ)から理想濃度を算出する(ステップS12)。この理想濃度は、例えば、画像バッファメモリ92に一旦格納される。
【0168】
一方、入力画像データを、二値化部90aで、誤差拡散法またはディザ法などにより、二値化データに変換する(ステップS14)。
次に、印字データ作成部90bで、入力画像データの二値化データに基づいて、各ノズルのインク吐出データを生成する(ステップS16)。
【0169】
次に、濃度算出部90dで、ガンマカーブを用いて、入力画像データに基づくインク吐出データから出力予測濃度を算出する(ステップS18)。このとき、予め求めておいたインク吐出特性(テストチャート、または製造時の測定で取得した吐出特性(隣接ノズルが打滴したときの誤差、およびインク滴量誤差値と画像データの関連付け情報))用いる。
【0170】
次に、判定部90eにおいて、例えば、同じ入力画像データに基づく、出力予測濃度と理想濃度との濃度差を各画素について求める(ステップS20)。
そして、判定部90eにおいて、例えば、得られた濃度差と、判定基準となる濃度差の閾値とを比較し、補正が必要か否かが判定される(ステップS22)。
【0171】
ステップS22において、判定基準を満たさない場合には、各画素について求めた出力予測濃度と理想濃度との濃度差の補正を、補正部90cで上述のムラ補正処理により行う(ステップS24)。
ステップS24において、ムラ補正処理をした濃度データを、ガンマカーブを用いて、補正部90cで再度24ビットのRGBデータに変換する。
なお、ステップS24においては、ムラ補正の際に、濃度差が生じている部分については、隣接するノズルからインク滴を吐出させないように、インク吐出データを補正するようにしてもよい。
【0172】
その後、ステップS14に戻り、二値化処理(ステップS14)、印字データ化処理(ステップS16)、および出力予測濃度を求め(ステップS18)、再度、判定部90eで、濃度差を判定する(ステップS22)。各画素についての出力予測濃度と理想濃度との濃度差が、判定基準となる濃度差の閾値未満となるまで、ステップS24からステップS14〜ステップS22を繰返し行う。このように、繰返しムラ補正をすることによって、近接したノズルによるクロストークの影響も補正される。
【0173】
そして、ステップS22において、補正判定が不要である場合、すなわち、各画素についての出力予測濃度と理想濃度との濃度差が、判定基準となる濃度差の閾値未満である場合、濃度補正された濃度データに基づく、ステップS16で作成されたインク吐出データを、ヘッドドライバ94に出力し、この入力画像を記録媒体Pに記録し、テスト画像を得る(ステップS26)。このように、ステップS26においては、所定の画像が記録されるかを確認するためのテスト画像の記録、すなわち、試しプリント(試し刷り)をする。
【0174】
ステップS26において、記録媒体Pに記録されたテスト画像(試しプリント(試し刷り))について、画像読取部24で読み取り、濃度を求め、読取濃度を得る。この読取濃度は、判定部90eに出力される。
次に、判定部90eで、理想濃度と読取濃度との濃度差を求める。判定部90eで、この濃度差に基づいて、判定基準となる濃度差と比較し、テスト画像(試しプリント)について補正が必要か否かが判定される(ステップS28)。
【0175】
ステップS28において、テスト画像(試しプリント)について補正が不要であれば、再度、最終的な記録画像を得るために、画像を記録する(ステップS30)。この場合、インク吐出データおよび濃度補正条件などは、入力画像データに対応させて記憶させておくことが好ましい。
一方、ステップS28において、テスト画像(試しプリント)について補正が必要であれば、記録ヘッド50C〜50Yについて吐出特性を取得する(ステップS32)。
【0176】
記録ヘッドについての吐出特性は、例えば、図10に示すように、複数のノズルから同時吐出する場合におけるノズル間距離と速度誤差との関係を、記録ヘッド50K〜50Yについて求める。この場合、図10に示すように、ノズル間距離がある程度距離になると、速度誤差がなくなる。なお、図10において、横軸のノズル間距離を示す数字は、同時吐出させるノズルの位置関係を示すものであり、例えば、正の数字が右側、負の数字が左側配置されたノズルとの距離を示す。
これ以外にも、例えば、記録ヘッド50K〜50Yを用いて、それぞれテストチャート(吐出特性検査用チャート)を記録媒体Pに記録し、このテストチャートに基づいて、吐出特性を取得する。
【0177】
以下、テストチャートを用いた吐出特性の取得方法について説明する。
図11は、吐出特性の取得方法を示すフローチャートである。
例えば、図12(a)に模式的に示す記録ヘッド51のように4つのノズル列NL1〜NL4を有し、各ノズル列NL1〜NL4は、6つのノズルA〜Fを有する。また、各ノズル列NL1〜NL4に対して、他のノズル列NL1〜NL4の流路とは隔離された流路が設けられているモデルに基づいて説明する。
この場合、1つのノズル列NL1〜NL4において各ノズルA〜Fでクロストークの影響を受けるものの、各ノズル列NL1〜NL4間では、クロストークの影響は受けない。このため、各ノズル列NL1〜NL4毎にクロストークの影響を調べることができるテストチャートを用いる。このテストチャートとしては、例えば、図12(b)に示すようなテストパターンZaを用いる。
【0178】
図12(b)に示すテストパターンZaは、例えば、ノズル間相互作用の効果を排除した第1のテストチャート部と適切なノズル間相互作用モデル、またはノズル間相互作用を明らかにする第2のテストチャート部を有している。
この第1のテストチャート部は、1つのノズルだけからインク滴を吐出させる第1パターン部p1を有する。また、第2のテストチャート部は、2以上の隣接するノズル、または2以上の離間したノズル、さらには2以上の隣接するノズルと、これらのノズルと離間したノズルから同時にインクを吐出させる第2パターン部p2を有する。
【0179】
本実施形態のテストパターンZaは、各ノズル列NL1〜NL4毎に4種類の異なるパターンβ1〜β4を有する。
パターンβ1〜β4とも、各ノズル列NL1〜NL4において、各ノズルA〜Fについて検査するものであり、副走査方向Mに沿って、例えば、ノズルAが常時吐出するもの、ノズルBが常時吐出するもの、ノズルCが常時吐出するもの、ノズルDが常時吐出するものと順次、異なるノズルA〜Fが常時吐出するパターンになっている。
【0180】
以上のような構成のテストパターンZaを記録媒体Pに記録させて、記録されたテストパターンZaを画像読取部24読み取らせる。そして、システムコントローラ82に出力し、システムコントローラ82において、テストパターンZaの画像データと、読み取られたテストパターンZaの画像データとを比較し、各ノズル列の各ノズルから吐出されるインク滴により形成されるドットからインク滴の量を求めることができ、これにより、吐出特性を求めることができる。
例えば、第1パターン部p1は、1つのノズルだけからインク滴を吐出させるため、インク滴の量から、ノズルそのもののインク吐出特性を得ることができる。また、複数のノズルから同時にインク滴を吐出させる第2パターン部p2は、同時に吐出しているノズルの位置関係と、各ノズルからのインク滴の量から、クロストーク特性を得ることができる。
【0181】
なお、吐出特性を取得する場合、テストパターンZaの画像データと、読み取られたテストパターンZaの画像データとを比較することなく、読み取られたテストパターンZaの第1パターン部p1(第1のテストチャート部)と第2パターン部p2(第2のテストチャート部)とを比較することによっても、インク滴吐出特性およびクロストーク特性を求めることができる。
【0182】
なお、吐出特性の測定精度を高めるためには、各ノズル列NL1〜NL4において、それぞれパターンβ1〜β4を記録させることが好ましい。この場合、テストパターンZaは、各ノズル列NL1〜NL4に4つのパターンβ1〜β4が必要であり、パターンβ1〜β4の合計が16になる。このため、予め記録ヘッドについて、例えば、流路位置が同じであれば吐出特性は等しいというある種の「モデル化」を行い、少ないパターンで特性を求めるようにすることが好ましい。
【0183】
また、このテストパターンZaは、副走査方向Mに対しては連続的なパターンである。このため、副走査搬送方向Mにおける吐出位置の誤差についての測定が難しい。そこで、図13に示すテストパターンZbのように、テストパターンZaに比して、各パターンβ1〜β4について副走査方向Mに所定の隙間sを設けた点が異なるパターンβ11〜β41を有するものを用いる。この副走査搬送方向Mにおける吐出位置の誤差は、吐出速度に起因するものである。
【0184】
図13に示すテストパターンZbを記録媒体Pに記録した場合、副走査搬送方向Mにおける吐出位置の誤差がある場合には、本来、ドットが打滴されない隙間sにドットが形成されることになる。これにより、ノズルA〜Fについて、吐出速度の誤差(ずれ)を求めることができる。
また、吐出速度の誤差(ずれ)がある場合には、隙間sにドットが形成されるため、このドットの径を測定することにより、インク滴の量も求めることができる。このようにして、ノズルの吐出速度および吐出量を求めることができる。
【0185】
さらには、図14(a)に示すテストパターンZaにテストパターンZdを組み合せたテストパターンZc、および図14(b)に示すテストパターンZbにテストパターンZdを組み合せたテストパターンZeを用いてもよい。
図14(a)、(b)に示すテストパターンZc、Zeに含まれるテストパターンZdは、各ノズル列の各ノズルのうち、1つからインク滴を吐出させるパターンである。このテストパターンZdにより、クロストークの影響がない状態における各ノズルの吐出特性(以下、個別特性という)を得ることができる。これにより、クロストークの影響を調べる場合、個別特性による影響を排除して、クロストーク単独の影響を調べることができる。これにより、より一層ノズル列における各ノズルのクロストーク特性を取得することができる。
【0186】
なお、図14(a)、(b)に示すテストパターンZc、Zeにおいても、読み取られたテストパターンZaの第1パターン部p1(第1のテストチャート部)と第2パターン部p2(第2のテストチャート部)とを比較すること、テストパターンZaとテストパターンZdとを比較すること、またはテストパターンZbとテストパターンZdとを比較することによって、インク滴吐出特性およびクロストーク特性を求めることができる。
【0187】
なお、本実施形態においては、記録ヘッドに、副走査方向に対して千鳥状に配置されたノズル列を用いたが、これに限定されるものではなく、例えば、図15(a)に示すように、主走査方向Rに沿って直線状に延びたラインヘッドであってもよい。この場合においても、図12(b)、図13、および図14(a)、(b)に示す各テストパターンZa、Zb、Zc、Zeを、記録媒体Pに記録することにより吐出特性を求めることができる。
ラインヘッドの場合には、流路が共通であるため、流路毎にパターンを区切ることができない。このため、クロストークの影響が及ばない範囲で区切って、その区切られたノズル群について、パターンを記録させる。このパターンに基づいて吐出特性を求める。
なお、図12(b)、図13、および図14(a)、(b)に示す各テストパターンZa、Zb、Zc、Zeのパターンデータ(チャートデータ)は、例えば、ROM85に記憶されている。
【0188】
また、上述のようにして、画像記録後に、新たに取得したインク吐出特性は、ステップS18において出力予測濃度を算出する際に利用する。このため、図4に示す濃度補正記憶部87に、インク吐出特性を示す情報をデータとして記憶させておく(ステップS34)。このとき、濃度補正記憶部87に記憶されている前回、出力予測濃度を算出する際に用いたものは、ステップS32で新たに求められたものに更新される。
【0189】
なお、図10に示すように、実験または記録ヘッドのモデルによるシミュレーションなどでインク吐出特性を求めている場合には、実験またはシミュレーションで得られたインク吐出特性を示すパラメータを変更する。この場合には、図4に示す濃度補正記憶部87に記憶されているインク吐出特性の情報を書き換えられる。
【0190】
ステップS34後、再度スタートに戻り、ステップS14〜S20の工程を再度行い、ステップS22の判定において、判定基準を満たさなければ、ムラ補正を行う(ステップS24)。この場合、ステップS18においては、新たに取得されたインク吐出特性が用いられる。
そして、再度、ステップS14〜ステップS20の工程を再度行い、ステップS22の判定において、判定基準を満たすまで、繰返し行う。
【0191】
一方、ステップS22の判定において、判定基準を満たす場合には、記録媒体Pに画像を記録する(ステップS26)。次に、ステップS28において、テスト画像(試しプリント)について画像判定を行い、判定基準を満たす場合には、再度、最終的な記録画像を得るために、画像を記録する(ステップS30)。
【0192】
これに対して、ステップS28において、テスト画像(試しプリント)について画像判定を行い、判定基準を満たさない場合には、再度吐出特性を取得し(ステップS34)、再度スタートに戻り、ステップS12〜S28の工程を再度行い、ステップS28の判定において、判定基準を満たすまで、繰返し行い、最終的な出力画像を得る(ステップS30)。
【0193】
なお、ステップS28においては、印字検査部24により、濃度を計測し、この濃度差について判定したが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば、オペレータが判定してもよい。
また、入力画像データについて、例えば、K、C、M、Yの複数色のインクのうち、少なくとも1色のインク滴で記録されるものについては補正しないようにしてもよい。
例えば、イエロは、補正ムラが目立たないため、判定部90eで、濃度解析を行い、入力画像データのうち、イエロのインク滴で記録されるものについては補正しない。
さらには、入力画像データについて、例えば、ムラが最も目立つ黒のみ補正してもよい。このように、画像形成に利用するインクの色、およびインクの色の組み合わせにより、補正するインクの色を決定するようにしてもよい。
加えて、入力画像データのうち、濃度が所定の値以上の領域についてだけ補正をするようにしてもよい。例えば、ハイライト領域では、インク滴が同時に吐出されない確率が高いため、補正はしない。
【0194】
本実施形態の画像記録方法においては、インク吐出データに基づいて出力予測濃度を求めており、これには、各ノズルについてのインク吐出特性(クロストーク特性も含む)が含まれており、各ノズルの誤差量が正確に反映されている。しかも、出力画像についても、判定をしているため、記録ヘッドに吐出誤差がある場合でも、入力画像データに対して、より忠実で、高画質な出力画像を得ることができる。
【0195】
また、本実施形態においては、インク滴量の吐出制御をしていないため、各ノズルについてインク滴量を補償するための機構が不要であり、記録ヘッドの構成を簡略化することができるため、安価でき、歩留まりも良くなり製造コストも低くすることができる。さらには、余計な機構が不要であるため、ノズル密度の高密度化が容易である。
なお、インク滴量の制御は困難であり、本実施形態のように画像データを補正する方が確実にムラを補正でき、しかも、ムラ補正することにより、周辺画素も同時に補正され、よりムラが見えにくいものとなる。
【0196】
本実施形態においては、記録ヘッド50K〜50Yの各ノズルのインク吐出特性を考慮して、出力予測濃度を算出しており(ステップS18)、ステップS22において補正が不要と判定され、さらには、ステップS28において、テスト画像(試しプリント)について補正が不要であると判定されれば、再度、最終的な記録画像を得るために、画像が記録される(ステップS30)。このように、ステップS18で、吐出特性を考慮して所定の画像を表す入力画像データを補正することにより、所定の画像が忠実に再現された画像を記録媒体に記録することができる。
【0197】
次に、本発明の画像記録方法の第2の実施形態について説明する。
本実施形態は、第1の実施形態の画像記録方法に比して、入力画像データについて、理想濃度と出力予測濃度を求めること、これらの濃度差を求めるものではない点が異なるものの、第1の実施形態の画像記録装置10を用いて画像記録することができる。
【0198】
本実施形態においては、入力画像データを入力する(ステップS40)。
また、クロストーク特性を、実験的もしくは記録ヘッドのモデルによるシミュレーション、またはテストチャートにより予め求めておく、求め、このクロストーク特性を、例えば、ROM85に記憶させておく(ステップS42)。
次に、クロストーク特性と入力画像データとに基づいて、入力画像データに補正が必要か否かを、二値化する前に判定する(ステップS44)。
【0199】
ステップS44においては、判定部90eで、例えば、入力画像データについて濃度解析を行う。この濃度が高い場合には、隣接するノズルから同時に吐出することが多くなり、クロストークの影響を受け易くなり、濃度が部分的に低くなる可能性が高く、これにより、濃度ムラが生じる。一方、ハイライト画像のように濃度が低い場合には、隣接するノズルから同時に吐出することがなく、クロストークの影響を受けにくい。こられのことから、濃度の値と、その面積について閾値を設定し、この閾値を判定基準とする。
なお、入力画像データについてシーン解析を行い、ハイライトが多い画像、またはシャドーを含む画像、もしくはベタ画像などを分類し、この分類を補正の判定基準にしてもよい。
【0200】
ステップS44において、判定基準を満たし、補正が不要であれば、入力画像データを二値化データに変換し、二値化データ得る(ステップS48)。ステップS48における二値化は、第1の実施形態のステップS14の二値化データを得るのと同様の方法であるため、その詳細な説明は省略する。
【0201】
次に、印字データ作成部90bで、入力画像データの二値化データに基づいて、各ノズルのインク吐出データを生成する(ステップS50)。
次に、インク吐出データに基づいて画像を記録媒体Pに記録し、テスト画像を得る(ステップS52)。このように、ステップS52においては、ステップS26と同様に、所定の画像が記録されるかを確認するためのテスト画像の記録、すなわち、試しプリントをする。
【0202】
一方、ステップS44において、判定基準を満たさず、補正が必要であれば、入力画像データにムラ補正処理をする(ステップS46)。このムラ補正処理は、第1の実施形態のステップS24のムラ補正処理と同様の方法であるため、その詳細な説明は省略する。
次に、ステップS46によりムラ補正処理した補正入力画像データを二値化する(ステップS48)。
【0203】
次に、印字データ作成部90bで、補正入力画像データの二値化データに基づいて、各ノズルのインク吐出データを生成する(ステップS50)。
次に、ステップS50で作成されたインク吐出データを、ヘッドドライバ94に出力し、補正入力画像データに基づく、入力画像を記録媒体Pに記録し、テスト画像(試しプリント(試し刷り))を得る(ステップS52)。
次に、ステップS52で記録媒体Pに記録されたテスト画像(試しプリント(試し刷り))について、画像読取部24で読み取り、濃度を求め、読取濃度を得る。次に、判定部90eで、理想濃度と読取濃度との濃度差を求める。判定部90eで、この濃度差に基づいて、判定基準となる濃度差と比較し、テスト画像(試しプリント)について補正が必要か否かが判定される(ステップS54)。
【0204】
ステップS54において、テスト画像(試しプリント)について補正が不要であれば、再度、最終的な記録画像を得るために、画像を記録する(ステップS56)。この場合、インク吐出データなどは、入力画像データに対応させて記憶させておくことが好ましい。
【0205】
一方、ステップS54において、テスト画像(試しプリント)について補正が必要であれば、記録ヘッドについて吐出特性を取得する(ステップS58)。このステップS58における吐出特性の取得は、第1の実施形態のステップS32と同様の方法により得られるものであるため、その詳細な説明は省略する。このとき、濃度補正記憶部87に記憶されている前回、出力予測濃度を算出する際に用いたものは、ステップS58で新たに求められたものに更新される。
なお、実験または記録ヘッドのモデルによるシミュレーションなどでインク吐出特性を求めている場合には、実験またはシミュレーションで得られたインク吐出特性を示すパラメータを変更する。この場合には、図4に示す濃度補正記憶部87に記憶されているインク吐出特性の情報を書き換えられる。
【0206】
次に、ステップS58で取得された吐出特性をムラ補正に組み込む(ステップS60)。これにより、ムラ補正に吐出特性を加えられ、更に補正の精度を高くすることができる。
次に、ムラ補正(ステップS46)、二値データ化(ステップS48)、インク吐出データの作成(ステップS50)、画像出力、すなわち、テスト画像(試しプリント)の記録を行い(ステップS52)、テスト画像(試しプリント)について、再度補正が必要か判定する(ステップS54)。
ステップS54において、テスト画像(試しプリント)について、補正が不要であると判定されれば、再度、最終的な記録画像を得るために、画像を記録する(ステップS56)。
【0207】
一方、ステップS54において、テスト画像(試しプリント)について補正が必要であると判定されれば、再度吐出特性を取得する(ステップS58)。再度、ムラ補正(ステップS46)、二値データ化(ステップS48)、インク吐出データの作成(ステップS50)、画像出力、すなわち、テスト画像(試しプリント)の記録を行い(ステップS52)、テスト画像(試しプリント)について再度補正が必要か判定し(ステップS54)、ステップS54において、テスト画像(試しプリント)について補正が不要であると判定されるまで、繰返し行う。
【0208】
本実施形態においては、所定の画像を表す入力画像データと、クロストーク特性とに基づいて、補正の有無を判定し、この判定に基づいて入力画像を補正するため、クロストークによる影響が大きい画像について補正することができる。このため、入力画像データに基づく、最終的な画像を得るまでの時間を第1の実施形態に比して短くすることができる。しかも、最終的に得られる画像は、クロストークの影響が抑制されて、濃度ムラ、スジなどの発生が抑制されたものとなる。
【0209】
次に、本発明の画像記録方法の第3の実施形態について説明する。
本実施形態の画像記録方法は、第1の実施形態の画像記録方法に比して、入力画像データについて、理想濃度と出力予測濃度を求めること、これらの濃度差を求めるものではなく、入力画像データに対して、クロストーク特性に基づく補正だけをするものであるものの、第1の実施形態の画像記録装置10を用いて画像記録することができる。
【0210】
本実施形態においては、先ず、入力画像データを入力する(ステップS70)。
次に、入力画像データについてクロストーク特性補正をする(ステップS72)。このクロストーク特性補正は、ノズルの配置により、ムラの特性はほぼ決まっているため、各ノズルによる誤差を厳密に計算することなく補正を行うものである。
【0211】
二次元的にノズルが配列されたラインヘッドの場合、クロストークの影響は高濃度側でスジムラ、または高濃度画像エッジ部の濃度強調として現れる。特に、スジムラは、ヘッド配列における端部のノズルと、中央部のノズルとによる滴量誤差比が原因である。
このようなことから、クロストークの影響を、例えば、記録する画像の画素ごとに求めておき、補正係数のテーブルとして記憶しておく。
【0212】
次に、ステップS72において、得られた補正入力画像データを二値化データに変換し、二値化データ得る(ステップS74)。ステップS74における二値化は、第1の実施形態のステップS14の二値化データを得るのと同様の方法であるため、その詳細な説明は省略する。
【0213】
次に、印字データ作成部90bで、入力画像データの二値化データに基づいて、各ノズルのインク吐出データを生成する(ステップS76)。
次に、インク吐出データに基づいて、画像を記録媒体Pに記録する。これにより、最終的な画像が記録された記録媒体Pを得ることができる(ステップS78)。
【0214】
本実施形態においては、クロストーク特性補正(ステップS72)としたが、これに限定されるものではない。例えば、クロストークの影響が最も顕著なのは、高濃度平編み画像のエッジ部分であり、このエッジ部分が濃くなり、エッジ強調される。エッジ補正をするために、ヘッド中央部に位置するノズルの誤差>ヘッド端部に位置するノズルの誤差として、記録するノズルにおける濃度値について、上記特性の傾向が減少するような特性を有するフィルタを入力画像データに適用してもよい。このフィルタにおいては、例えば、ヘッド中央部に位置するノズルの誤差の補正係数>ヘッド端部に位置するノズルの誤差の補正係数とする。
【0215】
本実施形態においては、入力画像をクロストーク特性に基づいて補正することにより、クロストークによる影響の傾向を容易に抑制することができる。このため、入力画像データに基づく、最終的な画像を得るまでの時間を第1の実施形態に比して短くすることができる。しかも、最終的に得られる画像は、クロストークの影響の傾向が抑制されて、濃度ムラ、スジなどの発生が抑制されたものとなる。
【0216】
以上、本発明の画像記録装置、画像記録方法、吐出特性検査用チャート、および吐出特性検査方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良および変更を行ってもよいのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0217】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像記録装置を示す模式図である。
【図2】図1に示す画像記録装置の吸着搬送ベルト部と記録ヘッドユニットを示す模式的平面図である。
【図3】(a)は、本発明の実施形態の画像記録装置の記録ヘッドを示す模式図であり、(b)は、記録ヘッドの吐出部の構造を示す模式的断面図である。
【図4】本発明の実施形態の画像記録装置の制御部のシステム構成を示す要部ブロック図である。
【図5】本発明の実施形態による濃度ムラ補正前の濃度プロファイルの例を示す模式図である。
【図6】本発明の実施形態による濃度ムラ補正後の状態を示す模式図である。
【図7】(a)は、現実に即した印字モデルの濃度プロファイルを示す模式図であり、(b)はδ関数型印字モデルの濃度プロファイルを示す模式図である。
【図8】本実施形態による濃度ムラ補正処理の概念を示す模式図である。
【図9】本発明の第1の実施形態の画像記録装置による画像形成方法を工程順に示すフローチャートである。
【図10】縦軸に速度誤差をとり、横軸に同時駆動するノズル間距離を示す数字をとって、同時駆動するノズルの位置と速度誤差との関係を示すグラフである。
【図11】本発明の第1の実施形態の画像記録装置による画像形成方法のうち、吐出特性の取得方法を詳細に示すフローチャートである。
【図12】(a)は、記録ヘッドのモデルの一例を示す模式図であり、(b)は、吐出特性の取得に用いられるテストチャートの一例を示す模式図である。
【図13】吐出特性の取得に用いられるテストチャートの一例を示す模式図である。
【図14】(a)は、吐出特性の取得に用いられるテストチャートの一例を示す模式図であり、(b)は、吐出特性の取得に用いられるテストチャートの他の例を示す模式図である。
【図15】(a)は、記録ヘッドのモデルの一例を示す模式図であり、(b)は、吐出特性の取得に用いられるテストチャートの一例を示す模式図である。
【図16】本発明の第2の実施形態の画像形成方法を工程順に示すフローチャートである。
【図17】本発明の第3の実施形態の画像形成方法を工程順に示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0218】
10 画像記録装置
12 供給部
14 搬送部
16 描画部
18 加熱・加圧部
20 排出部
22 制御部
24 印字検査部
30 マガジン
32 加熱ドラム
34 カッタ
34a 固定刃
34b 丸刃
36 吸着ベルト搬送部
37a、37b ローラ
38 ベルト
39 吸着チャンバー
40 ファン
42 ベルト清掃部
44 加熱ファン
46 後乾燥部
50 記録ヘッドユニット
50K、50C、50M、50Y 記録ヘッド(インクジェットヘッド)
52 インク貯蔵/装填部
54 加圧ローラ
60 吐出部
62 圧電素子(ピエゾ素子)
80 通信インターフェース
82 システムコントローラ
84 画像メモリ
86 モータドライバ
88 ヒートドライバ
90 プリント制御部
92 画像バッファメモリ
94 ヘッドドライバ
96 ホストコンピュータ
98 モータ
99 ヒータ
A〜F ノズル
M 副走査方向
R 主走査方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルを有し、各ノズルからインク滴を吐出する記録ヘッドを記録媒体に対して相対的に搬送しつつ画像を記録する画像記録装置であって、
前記複数のノズルのうち、1つのノズルだけからインク滴を吐出させた際の第1の特性と、隣接する2以上のノズルおよび離間した2以上のノズルのうち、少なくとも1つについて同時にインク滴を吐出させた際の第2の特性とに基づいて、所定の画像を表す入力画像データを補正する補正部と、
前記補正された入力画像データに基づいて前記記録ヘッドにより所定の画像を前記記録媒体に記録させる制御部とを有することを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
複数のノズルを有し、各ノズルからインク滴を吐出する記録ヘッドを記録媒体に対して相対的に搬送しつつ画像を記録する画像記録装置であって、
前記複数のノズルのうち、1つのノズルだけからインク滴を吐出させる第1のテストチャート部と、隣接する2以上のノズルおよび離間した2以上のノズルのうち、少なくとも1つについて同時にインク滴を吐出させる第2のテストチャート部とを有する検査用チャートのチャートデータを記憶する記憶部と、
前記チャートデータに基づいて前記記録ヘッドにより前記記録媒体に記録された前記検査用チャートを読み取る画像読取部と、
前記画像読取部に読み取れられた前記検査用チャートの第1のテストチャート部および第2のテストチャート部と、前記チャートデータにおける検査用チャートの第1のテストチャート部および第2のテストチャート部とを比較するか、または前記読み取れられた前記検査用チャートの第1のテストチャート部と、第2のテストチャート部とを比較して、前記各ノズルのインク吐出特性を取得するインク吐出特性取得部と、
前記インク吐出特性に基づいて、所定の画像を表す入力画像データを補正する補正部と、
前記補正された入力画像データに基づいて前記記録ヘッドにより所定の画像を前記記録媒体に記録させる制御部とを有することを特徴とする画像記録装置。
【請求項3】
前記記録ヘッドは、複数色のインク滴を前記ノズルから吐出するものであり、
前記入力画像データのうち、前記複数色のインクのうち、少なくとも1色のインク滴で記録されるものについては前記補正部で補正しない請求項1または2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
さらに、入力画像データについて、濃度解析を行う濃度解析部を有し、
前記入力画像データのうち、濃度が所定の値以上の領域についてだけ前記補正部で補正する請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項5】
複数のノズルを有し、各ノズルからインク滴を吐出する記録ヘッドを記録媒体に対して相対的に搬送しつつ画像を記録する画像記録方法であって、
前記複数のノズルのうち、1つのノズルだけからインク滴を吐出させた際の第1の特性と、隣接する2以上のノズルおよび離間した2以上のノズルのうち、少なくとも1つについて同時にインク滴を吐出させた際の第2の特性とに基づいて、所定の画像を表す入力画像データを補正する工程と、
前記補正された入力画像データに基づいて前記記録ヘッドにより所定の画像を前記記録媒体に記録する工程とを有することを特徴とする画像記録方法。
【請求項6】
複数のノズルを有し、各ノズルからインク滴を吐出する記録ヘッドを記録媒体に対して相対的に搬送しつつ画像を記録する画像記録方法であって、
前記複数のノズルのうち、1つのノズルだけからインク滴を吐出させる第1のテストチャート部と、隣接する2以上のノズルおよび離間した2以上のノズルのうち、少なくとも1つについて同時にインク滴を吐出させる第2のテストチャート部とを有する検査用チャートを前記記録ヘッドにより前記記録媒体に記録する工程と、
前記記録された検査用チャートを読み取り、読み取れられた前記検査用チャートの第1のテストチャート部および第2のテストチャート部と、前記チャートデータにおける検査用チャートの第1のテストチャート部および第2のテストチャート部とを比較するか、または前記読み取れられた前記検査用チャートの第1のテストチャート部と、第2のテストチャート部とを比較して、前記各ノズルについてインク吐出特性を取得する工程と、
前記インク吐出特性に基づいて、所定の画像を表す入力画像データを補正する工程と、
前記補正された入力画像データに基づいて所定の画像を前記記録媒体に記録する工程とを有することを特徴とする画像記録方法。
【請求項7】
前記記録ヘッドは、複数色のインク滴を前記ノズルから吐出するものであり、
前記入力画像データのうち、前記複数色のインクのうち、少なくとも1色のインク滴で記録されるものについては補正しない請求項5または6に記載の画像記録方法。
【請求項8】
さらに、入力画像データについて、濃度解析を行う工程を有し、
前記入力画像データのうち、濃度が所定の値以上の領域についてだけ前記補正をする請求項請求項5〜7のいずれか1項に記載の画像記録方法。
【請求項9】
複数のノズルを有し、各ノズルからインク滴を吐出する記録ヘッドを記録媒体に対して相対的に搬送しつつ画像を記録する画像記録装置に用いられる吐出特性検査用チャートであって、
前記複数のノズルのうち、1つのノズルだけからインク滴を吐出させる第1のテストチャート部と、隣接する2以上のノズルおよび離間した2以上のノズルのうち、少なくとも1つについて同時にインク滴を吐出させる第2のテストチャート部を有することを特徴とする吐出特性検査用チャート。
【請求項10】
前記第1のテストチャート部と前記第2のテストチャート部とは、前記記録媒体の搬送方向に連続または離間して配置される請求項9に記載の吐出特性検査用チャート。
【請求項11】
複数のノズルを有し、各ノズルからインク滴を吐出する記録ヘッドを記録媒体に対して相対的に搬送しつつ画像を記録する画像記録装置における吐出特性検査方法であって、
前記複数のノズルのうち、1つのノズルだけからインク滴を吐出させる第1のテストチャート部と、隣接する2以上のノズルおよび離間した2以上のノズルのうち、少なくとも1つについて同時にインク滴を吐出させる第2のテストチャート部とを有する検査用チャートを前記記録ヘッドにより前記記録媒体に記録する工程と、
前記記録された検査用チャートを読み取り、読み取れられた前記検査用チャートの第1のテストチャート部および第2のテストチャート部と、前記チャートデータにおける検査用チャートの第1のテストチャート部および第2のテストチャート部とを比較するか、または前記読み取れられた前記検査用チャートの第1のテストチャート部と、第2のテストチャート部とを比較して、前記各ノズルについてインク吐出特性を取得する工程とを有することを特徴とする吐出特性検査方法。
【請求項12】
前記第1のテストチャート部と前記第2のテストチャート部とは、前記記録媒体の搬送方向に連続または離間して配置される請求項11に記載の画像記録装置の吐出特性検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−241564(P2009−241564A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−94366(P2008−94366)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】