説明

画像記録装置

【課題】迅速かつ簡単に廃棄すべきインクの吸引量を調節できるようにする。
【解決手段】インクジェットヘッドの複数のノズル列の開口面を覆うように、1つのキャップ体50を2つのキャップ部50a,50bに区画する。各キャップ部50a,50b毎にチューブを介してロータリ式の4ポート切替弁に接続し、これをチューブ式吸引ポンプを介して廃棄インク吸収体に接続する。ベース体51に平行リンク53を介して昇降台52を昇降可能に装着し、昇降台52にキャップ体50を上向き付勢して配置する。キャリッジ13を矢印C方向に移動させて昇降台52の当接部52bを押して第2バネ55の付勢力に抗して上昇させて、キャップ体50をノズル面12aに密着させ、吸引ポンプを作動している途中で、キャリッジ13を矢印D方向に移動させると、第2バネ55の力でキャップリリースできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクをノズルから吐出して被記録媒体に画像記録を行うインクジェット方式の画像記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、画像記録装置には、インクをノズルから吐出して被記録媒体に記録を行うインクジェットヘッドを搭載したキャリッジを、被記録媒体の搬送方向と直交する方向に往復移動させて画像記録するタイプがあり、このようなインクジェット式の画像記録装置では、吐出性能を維持するために、インクジェットヘッドの内部に溜まった気泡や、乾燥により固化したインク等をノズル側から吸引して除去するメンテナンス作業が行われている。そのため、画像記録装置には、通常、インクジェットヘッド(キャリッジ)が被記録媒体に対して移動しながら記録を行う記録領域の外側で、且つインクジェットヘッド(キャリッジ)の移動端近傍に、メンテナンス部が設けられている。
【0003】
メンテナンス部には、ノズルの開口面に対して接離動するキャップ体が備えられており、インクジェットヘッドが記録領域を外れて前記キャップ体の位置に移動したときに、当該キャップ体が前記開口面に接近してこれを覆い、キャップ体に接続された吸引ポンプにより、吸引作業等が行われる。前記キャップ体は、通常、ゴム状弾性体からなるとともに、ノズル開口面側に向かう突出部が設けられており、複数のノズルの開口を囲むようにして、前記突出部がノズル開口面に密着するようになっている。
【0004】
一方、搭載されるインクジェットヘッドは、近年のカラー化に伴って、ブラックインクだけでなく、複数のカラーインク(例えば、イエローインク、マゼンタインク、シアンインク)も搭載され、複数のノズルからなるノズル列毎に異なるインク色を吐出できるように構成されている。
【0005】
しかしながら、ノズルの目詰まり等の度合いは、例えば、染料系と顔料系などのインクの種類(特性)がノズル列毎に異なるため、全てのノズルのメンテナンスを、同じ時間、同じ吸引圧に設定していると、目詰まり度合いの少ないノズルでは、無駄な吸引が行われることになり、吸引されて廃棄されるインク量が無駄であるだけでなく、 メンテナンス時間も無駄になるという問題があった。
【0006】
そこで、特許文献1では、インクジェットヘッド(記録ヘッド)の吐出口(ノズル)のそれぞれをキャッピングするための複数のキャップと、該キャップが対応する吐出口をキャッピングしているときに、前記対応する吐出口から吸引を行うための複数の吸引ポンプとを有し、液体の種類または吐出口の口径に応じて、前記複数の吸引ポンプによる吸引時の最大吸引圧を異ならせる構成が開示されている。
【0007】
他方、特許文献2では、複数の吐出口からなるノズル列が複数設けられたインクジェットヘッド(記録ヘッド)の吐出口(ノズル)のそれぞれをキャッピングするためのキャップと、該キャップの内部空間を大気と連通させるための連通弁と、キャップと連通手段、吐出口から吸引を行うための吸引ポンプとを有し、キャップは複数のノズル列毎に対応して内部空間を複数に区画した一体型に形成され、連通弁は、複数の内部空間にそれぞれ個別に連通するように複数設けられ、キャップが記録ヘッドの吐出口面に当接している際に、各内部空間毎に密閉及び大気連通させる前記連通弁の開閉手段を備えた構成が開示されている。
【0008】
これらは、いずれも、吐出口の口径の大小や、インクの特性に応じて、ノズル列毎のインク吸引量を調節して、無駄なインクの吸引を防止することができるものである。
【特許文献1】特許第2805361号公報
【特許文献2】特開2002−36606号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1の構成によれば、吸引ポンプが複数必要であり、記録ヘッドの回復装置の構造が複雑且つ大型化してしまうという問題があった。
【0010】
他方、上記特許文献1の構成によれば、複数の連通弁が必要であり、且つ各連通弁の開閉のタイミングを制御する構成が複雑となるという問題があった。
【0011】
本願発明は、簡単な構成で、複数のノズルのグループ毎のインク吸引量を調節できるようにし、回復作業を迅速に行える画像記録装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明における画像記録装置は、インクを吐出する複数のノズルを有するインクジェットヘッドと、前記ノズルの開口面を覆うキャップ体と、前記キャップ体の内部空間に接続して前記ノズルからのインク吸引が可能な吸引手段と、が備えられた画像記録装置において、前記キャップ体を前記ノズルの開口面に対して接離動可能に駆動するキャップ体駆動手段を備え、前記吸引手段による吸引動作中に前記キャップ体を前記ノズルの開口面から離隔するタイミングを、前記ノズルから吸引するべきインク量に応じて変更可能にする制御手段を備えたものである。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像記録装置において、前記キャップ体の内部空間は、前記複数のノズルを複数のグループに分けたグループ毎に吸引できるように区画され、前記吸引手段には、1 つの吸引ポンプと、この吸引ポンプから前記各内部空間への連通を遮断する切替弁を備えたものである。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の画像記録装置において、前記キャップ体は、前記複数のノズルを複数のグループに分けたグループ毎に接離動できるように分離され、前記各キャップ体毎に前記ノズルの開口面から離隔するタイミングを、前記ノズルから吸引するべきインク量に応じて変更可能に制御するものである。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の画像記録装置において、前記複数のノズルのグループは、ノズルの口径、ノズルの数あるいは吐出するインク色等のインクの特性に応じて、グループ分けがされているものである。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の画像記録装置において、前記タイミングは、前記インクを吸引する吸引圧の最大負圧の大小の設定値により決定されるものである。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の画像記録装置において、前記インク吸引圧の最大負圧の設定値は、ノズルの口径が大きいほど小さく設定されているものである。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載の画像記録装置において、前記制御手段には、前記キャップ体が前記ノズルの開口面と離隔しているときに、前記吸引ポンプによって前記キャップ体に残るインクを吸引する空吸引モードが備えられているものである。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載の発明によれば、キャップ体をノズルの開口面から離隔するタイミングを、前記ノズルから吸引するべきインク量に応じて変更可能にする制御を実行するから、従来のように、吸引ポンプとキャップ体とを接続するチューブの中途に設けた切替弁による負圧を解除する(キャップ部の内部空間を大気圧になるように開放する)作業に比べて、キャップリリース後のワイピング作業を含めた回復動作時間を短縮できるという顕著な効果を奏する。
【0020】
請求項2に記載の発明によれば、前記キャップ体の内部空間は、前記複数のノズルを複数のグループに分けたグループ毎に吸引できるように区画され、前記吸引手段には、1 つの吸引ポンプと、この吸引ポンプから前記各内部空間への連通を遮断する切替弁を備えたものであるから、請求項1に記載の発明による作用・効果に加えて、ノズルの孔径の大小や、ノズルの総数の大小、さらには、インクの粘性の大小等のインクの特性に応じたグループ分けをすることで、キャップリリース(キャップ開放)の時間(所定時間)を調節でき、各グループ毎のインクの吸引量を最適なものに設定でき、無駄なインクの吸引を無くすることができる。
【0021】
また、前記所定時間を別々に設定することで、複数のノズル列を同時に覆って、一斉にインク吸引を実行することに比べて、各ノズル列毎のインクの吸引量を最適なものに設定でき、無駄なインクの吸引を無くすることができる。
【0022】
請求項3に記載の発明によれば、前記キャップ体は、前記複数のノズルを複数のグループに分けたグループ毎に接離動できるように分離され、前記各キャップ体毎に前記ノズルの開口面から離隔するタイミングを、前記ノズルから吸引するべきインク量に応じて変更可能に制御するものであるので、キャップリリースのためのキャップ体駆動手段の構成や制御手段を簡素化できるという効果を奏する。
【0023】
請求項5に記載の発明によれば、前記タイミングは、前記インクを吸引する吸引圧の最大負圧の大小の設定値により決定されるものである。最大負圧が大きければ吸引すべきインク量を大きくすることが容易であり、また、その場合、吸引開始からキャップリリースまでのタイミング(所定時間)を同じに設定しても、グループごとの吸引すべきインク量を互いに異ならせることが容易となるという効果を奏する。
【0024】
請求項6に記載の発明によれば、前記インク吸引圧の最大負圧の設定値は、ノズルの口径、ノズルの数が大きいほど大きく設定され、また、カラーインクの場合はブラックインクの場合に比べて大きく設定されているものである。一般的に、1つのキャップ体のキャップ部をグループ分けしたり、または複数のキャップ体毎にグループ分けして、吸引開始からキャップリリースまでのタイミング(所定時間)を設定する場合の設定基準として適切だからである。
【0025】
請求項7に記載の発明によれば、空吸引モードを設けることにより、キャップ部またはキャップ体の内部空間に廃棄インクが溜まったまま放置されるのを防止し、他の部品を汚すことがなくなるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施形態である多機能型の画像記録装置1の全体斜視図、図2は画像読取装置部分を外した画像記録部の斜視図、図3はその平面図、図4は図3のIV−IV線矢視拡大断面図、図5はキャリッジの下面図、図6(a)及び図6(b)は本発明の回復装置の第1実施形態を示す図、図7(a)〜図7(c)は吸引手段及び切替弁の動作を示す図、図8は回復装置の第2実施形態を示す図、図9は制御装置の機能ブロック図、図10は制御のフローチャートである。
【0027】
図1に示す多機能型の画像記録装置1は、ファクシミリ機能、プリンタ機能、複写機能、スキャナ機能等を備えている。多機能型(Multi Function Device )の画像記録装置1は、上面開放の略箱状の本体ケース2と、この本体ケース2の一側(図1の実施形態では左側)に対して、蝶番、ヒンジ部等の回動軸線部(図示せず)を介して上下回動可能に枢着された上部ケース3とを有する。なお、以下の説明において、図1の画像記録装置1の手前側を前側とし、左右方向(主走査方向、Y軸方向)や、前後方向(副走査方向、X軸方向)、上下方向に関しても図1の画像記録装置1の向きを基準に説明する。本体ケース2及び上部ケース3は合成樹脂製の射出成形品である。
【0028】
上部ケース3の上面前部には操作パネル30が配置されている。操作パネル30には、数字ボタンやスタートボタン、機能操作ボタン等の各種のボタンが設けられており、これらのボタンを押下することにより、各種の操作が行われる。操作パネル30には液晶(LCD)等のディスプレイ部31が設けられ、画像記録装置1の設定状態や各種の操作メッセージ等が必要に応じて表示される。
【0029】
上部ケース3には、操作パネル30の後部側にスキャナ装置(画像読取部)33が配置されている。即ち、ファクシミリ機能時に相手ファクシミリ装置に送信すべきファクシミリ原稿や、複写機能時に複写すべき原稿の画像を読取るためのスキャナ装置33は、大判のガラス板上の原稿の画像を読取るフラットベッド読取部と、このフラットベッド読取部の上面を覆う回動可能なカバー体34とからなる。
【0030】
図示しないが、フラットベッド読取部におけるガラス板の直下には、ガラス板に当接させた原稿の画像面を読取るための光電変換素子の一例としてのライン型の密着型のイメージセンサ(CIS:Contact Image Sensor) が、後述するキャリッジの移動方向(主走査方向、Y軸方向)と直交する方向(副走査方向、X軸方向)に延びるガイド軸に沿って往復移動可能に設けられている。
【0031】
なお、カバー体34は、画像記録装置1の背面側(図1の奥側)を中心にしてヒンジを介して開閉回動可能に構成されている。
【0032】
次に、プリンタ装置(記録部)の構成について説明する。図1に示すように、本体ケース2内の左右方向中央部には、その底部に複数枚の被記録媒体としての用紙Pをほぼ水平状にて堆積状態で載置する給紙カセット5が配置され、この給紙カセット5は本体ケース2の前面の開口部2aに対して引き出し動可能に構成されている。本実施形態では、給紙カセット5は、被記録媒体としての、例えば、A4サイズ、レターサイズ、リーガルサイズ、はがきサイズ等にカットされた用紙Pをその短辺(幅)が給紙方向(矢印A方向)と直交する方向(主走査方向、Y軸方向)に延びるようにして、複数枚積層(堆積)されて収納できる形態とする。
【0033】
給紙カセット5の奥側(図4において右側)には、用紙分離用に傾斜分離板8が配置されている。この傾斜分離板8は、用紙Pの幅方向(Y軸方向)の中央側で突出し、用紙Pの幅方向の左右両端部側に行くに従って後退するように平面視で凸湾曲状に形成されており、且つ用紙Pの幅方向の中央部には、用紙Pの先端縁に当接して分離を促進するための鋸歯状の弾性分離パッド(図示せず)が設けられている。
【0034】
また、本体ケース2側には、給送手段6における給紙アーム6aの基端部が上下方向に回動可能に装着され、この給紙アーム6aの先端部に設けられた給紙ローラ7には、駆動軸14からの回転力が給紙アーム6a内に設けられた歯車伝達機構を介して伝えられる。そして、この給紙ローラ7と傾斜分離板8の弾性分離パッドとにより、給紙カセット15に堆積された用紙Pを一枚ずつ分離搬送する。給紙方向(矢印A方向)に沿って進むように分離された用紙Pは、横向きの略Uターン搬送路9を介して、給紙カセット5より上側(高い位置)に設けられた記録部10に給送される。
【0035】
カラー記録用の記録ヘッド12(図5参照)にインクを供給するためのインクカートリッジ26は、本体ケース2内で上向き開放状の収容部27(図2、図3参照)に対して上方から着脱可能に構成されている。インクカートリッジ26は、複数色毎のインクが収納されており、実施形態ではブラック、シアン、マゼンタ、イエローの四色であるが、それ以上の色のインクを収納しても良い。各インクカートリッジ26から記録ヘッド12へは可撓性を有するインクチューブ28を接続してインク供給する。
【0036】
図2〜図4に示すように、記録部10は記録ヘッド12を有するキャリッジ13、合成樹脂製の板状のプラテン11、キャリッジ13を往復移動させるためのCR(キャリッジ)モータ24及びこのCRモータ24に接続されたタイミングベルト25、並びにこれらを支持するための金属板製のエンジンフレーム39を主体として構成されている。エンジンフレーム39は本体ケース2の後部側であって供給カセット5の上方に配されている。支持フレームとしてのエンジンフレーム39は金属製であって、図2〜図4に示すように箱型をなす本体部39aの上部側に本体ケース2の左右方向(主走査方向、Y軸方向)に伸びて、キャリッジ13を摺動可能に支持する一対のガイドプレート40、41を装着している。排紙方向(矢印B方向)の下流側に配置されたガイドプレート41の上面には、主走査方向(Y軸方向)に延びるようにタイミングベルト25が配置され、このタイミングベルト25を駆動するCR(キャリッジ)モータ24はガイドプレート41の下面に固定されている。ガイドプレート41には、その長手方向(Y軸方向)に沿って延びるようにリニアエンコーダ(エンコーダストリップ)37が配置されて、キャリッジ13のY軸方向(主走査方向)の位置やその移動方向を検知する。この帯状のリニアエンコーダ(エンコーダストリップ)37は検査面(Y軸方向に一定間隔で配置されたスリットの形成面)が垂直方向に沿うように配置されている。
【0037】
本体部39aには、駆動軸14及び給送手段6のアーム6aが回動自在に軸止されるとともに記録ヘッド12の下面と対向して用紙Pを支持するための平板状のプラテン11が配置されている。なお、図示しないねじりバネ等の付勢手段により、アーム6aが常時下向き回動方向に付勢されている。
【0038】
また、プラテン11を挟んで搬送方向上流側に配置されて用紙Pを記録ヘッド12の下面に送るためのレジストローラ(搬送ローラ)対20とプラテン11より搬送方向下流側にて配置され、記録済みの用紙Pを排紙部に向かって(図1、図2及び図4の矢印B方向参照)搬送するための排紙ローラ対21とが備えられている。なお、正逆回転可能なLFモータ42により、給紙ロータ7、レジストローラ対20、排紙ロータリ対21等の給紙ユニットを駆動する。
【0039】
搬送される用紙Pの幅(用紙Pの短辺)より外側には、その一端側(実施形態では、図3でエンジンフレーム39の用紙Pの給送方向から見て左側の側板39bに近い部位、画像記録領域より左側)にインク受け部35が、また、他端側(図3で右側の側板39cに近い部位であって、画像記録領域より右側)にメンテナンスユニットからなるメンテナンス部36がそれぞれ配置されている。これにより、記録ヘッド12はインク受け部35に設けられたフラッシング位置にて記録動作中に定期的にノズルの目詰まり防止のためのインク吐出を行い、インク受け部35にてインクを受ける。
【0040】
記録ヘッド12のノズル内のインクが蒸発や低温化により増粘してしまったり、ノズル内や共通インク室に気泡が侵入してしまったり、ノズル面に異物が付着して、記録ヘッド12が正常で安定した記録動作ができなくなってしまう。そこで、メンテナンス部36では、吸引回復装置45を設け、そのキャップ体50が記録ヘッド12のノズル面を下方から覆った状態でLFモータ42が駆動し、吸引ポンプ47を作動させてノズルからインクを選択的に吸引したり、記録ヘッド12上の図示しないバッファタンクや共通インク室内の気泡を除去するための回復処理等を行うものである。
【0041】
図5は本実施形態の多色用の記録ヘッド12の下面を示し、ブラックインクを吐出するための複数のノズルからなるノズル列46aと、シアン、マゼンタ、イエローのインクを吐出するための複数のノズルからなるノズル列46b,46c,46dが主走査方向(Y軸方向)に適宜間隔で配置されている。本実施形態では、ブラックインクのためのノズル列46aは一列につき75個のノズルをX軸方向に所定間隔で並べ、且つ千鳥配列させてなる(従って、合計150個のノズルを備える)。上記カラーインクのためのノズル列46b,46c,46dは各列につき75個のノズルを備える。
【0042】
なお、記録ヘッド12の内部には、インクチューブ28で供給されるインクを一時的に貯留する共通インク室 (マニホールド)と、共通インク室に連通し各ノズル毎に延びる個別インク流路が形成されている。本実施形態では、個別インク流路が連通する共通インク室の出口には、記録ヘッド12内で一番流路抵抗が高い絞り部が配置されている。また、記録ヘッド12は、個別インク流路の一部を構成する圧電アクチュエータを含んでおり、入力された画像データによりこの圧電アクチュエータが変形することで、対応するノズルからインクが吐出される。つまり、記録ヘッド12のインク供給口から共通インク室、絞り部及び個別インク流路を介してノズルに至る一連の流路が形成されている。
【0043】
また、本実施形態では、ブラックインクは顔料系の色素材料を使用し、カラーインクは染料系の色素材料を使用している。
【0044】
本発明に係る吸引回復装置45の第1実施形態は図6(a)、図6(b)及び図7(a)〜図7(c)に示す。この実施形態では、メンテナンス部36に固定配置されたベース体51の上に昇降台52を一対の平行リンク53、53を介して昇降可能に連結する。昇降台52には、前述したキャップ体50が上下動のみ可能となるようにガイド部52aに支持され、昇降台52の下端が支持された第1バネ54にてキャップ体50を上向きに付勢している。また、昇降台52とベース体51とは、昇降台52を画像記録領域側(図6(a)で左方向、矢印C方向)に付勢する第2バネ55にて連結されている。
【0045】
また、ベース体51には、昇降台52の下動限界及び左方移動限界を規定するためのストッパ体51aが設けられている。さらに、昇降台52には、キャリッジ13が右方向に移動したときに当接して、第2バネ55の付勢力に抗して上昇させるための当接部52bが設けられている。なお、キャリッジ13がメンテナンス部36から、画像記録領域に向かって横方向(図6(b)の矢印D方向)に移動するとき、ベース体51の一側部にて昇降可能に配置されているワイパー体56でノズル面12aを拭いてクリーニングを行う。
【0046】
そして、キャップ体50は、上記のノズル列46aの部分を覆うための第1キャップ部50aと、カラーインク用の3つのノズル列46b,46c,46dの部分を一体的に覆うための第2キャップ部50bとに区画(グループ分け)され、キャップ体50の少なくともノズル面に当接する上端部が軟質のゴムなどの弾性材にて構成されている。これにより、キャップ体50の上端縁でノズル面12a(請求項でのノズルの開口面に相当)に密着させて気密状態を保持できるものである。
【0047】
図7(a)に示すように、キャップ体50の各キャップ部50a,50bごとに可撓性チューブ59a、59bの一端が接続され、キャップ部50aに対するチューブ59aの他端は、ロータリ式の4ポート切替弁60における ポート60aに接続され、キャップ部50bに対するチューブ59bの他端は、ポート60bに接続されいる。ポート60cに接続された可撓性のチューブ61は、吸引手段としてのチューブ式吸引ポンプ47の一構成部品であり、このチューブ61の他端は、不要になったインクを保持できる廃棄インク吸収体62に接続または臨んでいる。なお、ポート60dに接続された可撓性のチューブ63の他端は大気に開放されている。切替弁60の弁体60eが所定角度回動するとき、ポート60aとポート60cとだけが連通する第1位相(図7(a)の状態参照)と、ポート60bとポート60cとだけが連通する第2位相(図7(c)の状態参照)と、ポート60dとポート60cとだけが連通する第3位相と、前記全てのポートが閉止(遮断)された状態の第4位相(図7(b)の状態参照)とに選択できるように構成されている。
【0048】
図7(a)に示すように、チューブ式吸引ポンプ47は、ポンプ軸47aを中心に回転するガイドローラ47bと、このガイドローラ47bの偏心位置に回動可能に軸支された加圧コロ47cと、ガイドローラ47bの略半円の外周に配置されて、加圧コロ47cとでチューブ61の一部を押し潰すための規制面47dとを有する。ガイドローラ47b、ひいては加圧コロ47cを図7(a)で矢印方向に回転することにより、後述のようにノズル面に対して密着状態のキャップ部50a,50b側に接続するチューブ61,59a,59bの内部が負圧になるものである。
【0049】
次に図9を参照して、この画像記録装置1の制御部(制御手段)について説明する。この制御部は、画像記録装置1の全体的な動作を制御するものである。
【0050】
この制御部は、CPU300、ROM301、RAM302、EEPROM303を中心とするマイクロコンピュータとして構成され、バス305を介してASIC(Application Specific Integrated Circuit )306に接続されている。
【0051】
ROM301には、インクジェットプリンタの各種動作を制御するプログラム等が格納されおり、RAM302は、CPUがこれらのプログラムを実行する際に用いる各種データを一時的に記憶する記憶領域として、また作業領域として用いられる。
ASIC306にはNCU(Network control Unit)317が接続されており、公衆回線からNCU317を介して入力された通信信号はMODEM318によって復調されてからASIC306に入力される。また、ASIC306がファクシミリ送信等で画像データを外部へ送信する場合には、その画像データがMODEM318によって通信信号に変調され、その通信信号がNCU317を介して公衆回線に出力される。
【0052】
また、ASIC306は、CPU300からの指令に従い、例えばLFモータ42に通電する相励磁信号等を生成して、これらの信号をLFモータ42の駆動回路311やCRモータ24の駆動回路312に与え、駆動回路311や駆動回路312等を介してLFモータ42やCRモータ24に駆動信号を通電し、LFモータ42やCRモータ24の回転、停止等の制御を行っている。
【0053】
更に、ASIC306には、原稿の画像や文字を読み取るための、スキャナ装置33(例えば、CISなど)、送受信操作のための操作パネル30のキーボード30aや液晶ディスプレイ(LCD)30bを備えたパネルインターフェース313、パソコンなどの外部機器とパラレルケーブルやUSBケーブルを介してデータの送受信を行うためのパラレルインターフェース315やUSBインターフェース316、などが接続されている。
【0054】
更に、ASIC306には、メンテナンス部36のカム(図示せず)の回転位置を検出するためのリーフスイッチ103、用紙PがUターン搬送路9を介して記録ヘッド12の下方に近づくように給紙されたときに、その用紙Pの先端位置を検出するためにUターン搬送路9の搬送下流側に位置する用紙先端検出体に関連させて設けられたレジセンサ104、駆動ローラ20aの回転量を検出するためのロータリエンコーダ44、キャリッジ13の主走査方向での移動量及び移動位置(現在位置)を検出するためのリニアエンコーダ37等が接続されている。
【0055】
駆動回路314は、記録ヘッド12から所定のタイミングでインクを用紙Pに対して選択的に吐出させるためのものであり、CPU300から出力される駆動制御手順に基づきASIC306において生成され出力された信号を受けて、記録ヘッド12を駆動制御する。駆動回路319は、後述する第2実施形態の第1及び第2キャップ体64、65を作動させるための電磁ソレノイド等のアクチュエータ67a,67bをON・OFF作動させるためのものである。
【0056】
次に、図10のフローチャートを参照しながら、上述の制御手段による記録ヘッド12の回復処理制御について説明する。例えば長期間の不使用の場合や、画像記録作業の中途でインク残量が少なくなってインクカートリッジの交換の必要が出るなどのメンテナンス作業が必要な場合には、以下の回復処理を実行する。
【0057】
処理スタートに続いて、キャリッジ13を図6(a)の矢印C方向(右方向)に移動させる(S1)。メンテナンス部36に配置されているキャップ体50の上方に記録ヘッド12が来る時、キャリッジ13の右側面が昇降台52における当接部52bを図6(a)の右方向に押す。そうすると、第2バネ55の付勢力に抗して、昇降台52は右方向に移動しつつ、且つ平行リンク53の作用により上向きに移動する。従って、昇降台52上のキャップ体52の上端縁がキャリッジ13の下面の記録ヘッド12におけるノズル面12aに当接した後は、さらなる昇降台52の上昇に拘らず第1バネ54の弾性力に抗してキャップ体52のみが下降可能であるから、キャップ体52の上端縁がノズル面12aを弾力的に押し付けた状態(密着状態)を保持できる。これにより、キャップ部50aはブラックインクのノズル列46aを覆い、キャップ部50bはカラーインク用の3列のノズル列46b,46c,46dを一斉に覆うことができる(図6(b)参照)。これがいわゆるグループ分けしたキャッピングである(S2)。この状態で、キャリッジ13の移動を停止する。
【0058】
次いで、図7(a)に示すように、ポート60aと、ポート60cとを連通させるように(第1位相となるように)切替弁60を回動させる(S3)。この切替弁60の回動は、メンテナンス部36に配置された図示しない回転カム板の回動位相に対応しているものとする。次いで、吸引ポンプ47を所定回転数だけ回転させることにより(S4:yes )、キャップ部50aの内部空間が負圧になり、ブラックインク用のノズル列46aからインクが吸引され始める。
【0059】
上記キャップ部50aの内部空間の負圧を所定値にするために、吸引ポンプ47の所定回転数が予め定められている。回転数がある程度大きい時には、前記負圧を最大値とすることができる。
【0060】
上記キャップ部50aの内部空間の負圧が所定値になった時点で、吸引ポンプ47を停止させ(S5)、さらに続いて、切替弁60を回動させて、図7(b)に示すように、全てのポートを遮断する第4位相に切り換える(S6)。この状態では所定のノズル列46aからのインクの吸引が続行している。
【0061】
なお、インクが吸引されても流路抵抗の高い絞り部には気泡が残留しやすいので、吸引ポンプ47を停止する負圧の所定値を、絞り部において、このような気泡を確実に排出できるインクの流速が生じるように設定されている。
【0062】
吸引ポンプ47の回転停止、すなわち、キャップ50a内の負圧が所定の最大値を迎えてから所定時間T1経過したか否かを判別し(S7)、所定時間T1経過すれば(S7:yes )、直ちに、キャリッジ13を図6(b)の状態から矢印D方向(左方向)に移動させる(S8)。キャリッジ13の一側面(右側面)が昇降台52の当接部52bから離間すると、第2バネ55の力により、昇降台52は下降し、記録ヘッド12のノズル面12aからキャップ部50aが外れ、開放される(キャップリリース)(S8)。このキャップの開放はキャリッジ13の左方向へのわずかな移動により達成され、キャップリリースは迅速に行える。そして、このキャップリリースにより、ノズル列46aからのインクの吸引は直ちに停止されるのであり、キャップ部50aの内部空間に溜まった廃棄インクはそのままに保持される。
【0063】
なお、キャップリリースのタイミングによっては、キャップ部50aの内部空間に負圧が多少残っていることがある。しかし、第2バネ55の力は、キャップ部50aを大気開放するに足る大きさとなっている。また、絞り部における気泡の排出は、 各ノズルから排出されるインクの総量に依存するので、所定時間T1を、絞り部において、このような気泡の排出が完了する時間以上に設定されている。
【0064】
次に、カラーインク用の3つのノズル列46b,46c,46dからのインクの吸引のために、上記ステップS1と同様に、再度キャリッジ13をC方向に移動させる(S9)。そして、上記ステップS2と同様にして、ノズル面12aにキャップ体50を密着させるキャッピングを実行する(S10)。次いで、図7(c)に示すように、ポート60bとポート60cとを連通させるように(第2位相となるように)切替弁60を回動させる(S11)。次いで、吸引ポンプ47を所定回転数だけ回転させることにより(S12:yes )、キャップ部50bの内部空間が負圧になり、カラーインク用の3つのノズル列46b,46c,46dからそれぞれインクが吸引され始める。
【0065】
キャップ部50bの内部空間の負圧を所定値にするために、吸引ポンプ47の所定回転数が予め定められている。回転数がある程度大きい時には、前記負圧を最大値とすることができる。
【0066】
なお、本実施形態では、このときの負圧の所定値は、上述のブラックインク用のノズル列46aからインクを吸引する場合と同じに設定してある。つまり、色の種類に限らず、各ノズル列46a、46b、46c、46dからインクが吸引されるとき、絞り部でのインクの流量に差が生じない。
【0067】
キャップ部50bの内部空間の負圧が所定値になった時点で、吸引ポンプ47を停止させ(S13)、さらに続いて、切替弁60を回動させて、全てのポートを遮断する第4位相に切り換える(S14)。例えば、図7(b)に示す状態がこれに相当する。この状態では所定のノズル列46b,46c,46dからのインクの吸引が続行している。
【0068】
吸引ポンプ47の回転停止してから所定時間T2経過したか否かを判別し(S15)、所定時間T2だけ経過すれば(S15:yes )、直ちに、キャリッジ13を図6(b)の状態から矢印D方向(左方向)に移動させる(S16)。キャリッジ13の一側面(右側面)が昇降台52の当接部52bから離間すると、第2バネ55の力により、昇降台52は下降し、記録ヘッド12のノズル面12aからキャップ部50bが外れ、開放される(キャップリリース)(S16)。このキャップの開放はキャリッジ13の左方向へのわずかな移動により達成され、キャップリリースは迅速に行える。そして、このキャップリリースにより、3つのノズル列46b,46c,46dからのインクの吸引は直ちに停止されるのであり、キャップ部50bの内部空間に溜まった廃棄インクはそのままに保持される。このような、空吸引モードを設けることにより、キャップ部50a、50bに廃棄インクが溜まったまま放置されるのを防止し、他の部品を汚すことがなくなる。
【0069】
なお、キャップリリースのタイミングによっては、キャップ部50bの内部空間に負圧が多少残っていることがあるのは、上述の場合を同じである。また、第2バネ55の力は、キャップ部50bを容易に大気開放する大きさとなっており、所定時間T2を、絞り部において、気泡の排出が完了する時間以上に設定されているのも、上述の場合と同じである。さらに、所定時間T1とT2は、吸引の対象となるノズルの数に対応して決められ、ノズル数の多いカラーインクの方がブラックインクより長い。
【0070】
必要なノズル列のインクの吸引による回復作業が終了すると、キャリッジ13を図6(b)の状態から矢印D方向に移動させ、そのときワイパー体56を上昇させることにより、ノズル面12aをワイパー体56の先端面にて摺接することで、当該ノズル面12aに付着しているインクなどを拭き取ることができ、清掃が完了する(S17)。また、各キャップ部52a、52b内に溜まった廃棄インクを廃棄インク吸引体62に導くため、切替弁60の弁体60eを上記第1位相、第2位相及び第3位相に順次切り換えつつ、吸引ポンプ47を作動させることで(S18)、各キャップ部52a、52b内及び各チューブ59a、59b、61内の廃棄済みインクを全て廃棄インク吸引体62に吸収させることができる。その後は、キャリッジ13を画像記録領域に戻して印刷(印字)作業を実行するか、メンテナンス部36に戻して、キャッピング動作のみを実行して、ノズル面12aにを乾燥から保護した状態で、待機させることができる(S19)。
【0071】
上記の一方のキャップ部50aでのキャップリリースまでの所定時間T1と他方のキャップ部50bでのキャップリリースまでの所定時間T2は、上述のようにして異ならせることができる。各キャップ部でのインクの吸引量は、キャップ内の時間的に変化する負圧の値と、吸引開始からキャップリリースまでの時間の積分値に比例するものである。従って、前記所定時間の長短の設定によっては、上述のように、最大吸引負圧を越えた任意の時間帯(時点)でキャップリリースすることや、逆に、最大吸引負圧になる前にキャップリリースすることも可能である。
【0072】
従って、各ノズル列ごとの各ノズルの孔径の大小や、ノズルの総数の大小、さらには、インクの粘性の大小等のインクの特性に応じて上記所定時間T1(T2)を決定することで、記録ヘッド12の複数のノズル列を同時に覆って、一斉にインク吸引を実行することに比べて、各ノズル列毎のインクの吸引量を最適なものに設定でき、無駄なインクの吸引を無くすることができる。
【0073】
また、従来のように、吸引ポンプとキャップ体とを接続するチューブの中途に設けた切替弁による負圧を解除する(キャップ部の内部空間を大気圧になるように開放する)作業に比べて、キャリッジ13の主走査方向に沿う移動だけで、キャッピング及びキャップリリースが行えるから迅速な回復作業が期待できる。特に、後のワイピング作業を含めた回復動作時間を短縮できるという顕著な効果を奏する。本実施形態では、キャリッジ13が昇降台52の当接部52bに当接する手段と、第2バネ55及び平行リンク53の構成がキャップ体駆動手段に相当する。キャリッジ13の主走査方向に沿う移動の制御が、ノズルから吸引するべきインク量に応じて変更可能にする制御手段となる。
【0074】
図8は吸引回復装置の第2実施形態を示す。この実施形態では、ブラックインク用のノズル列46aに対応させた第1キャップ体64と、カラーインク用の3つのノズル列46b,46c,46dに対応させた第2キャップ体65とに分割し、それぞれのキャップ体64、65は個別に上下動のみ可能に配置されている。なお、各キャップ体64、65の上端部(ノズル面12aに当接する部分)は少なくとも軟質のゴム等の弾性部材にて構成されている。
【0075】
各キャップ体64、65は下向き(メンテナンス部36に位置する記録ヘッド12のノズル面12aから離間する方向)にバネ66にて付勢されている一方、所定の指令信号により電磁ソレノイド等のアクチュエータ67a,67bにて各キャップ体64、65を上向きに突き上げるように構成されている。
【0076】
また、各キャップ体64、65はチューブ69a,69bを介して個別の切替弁68a,68bに接続され、各切替弁68a,68bはチューブ70を介して1つの吸引ポンプ47に接続され、この吸引ポンプ47からチューブ71を介して廃棄インク吸収体62に接続されている。そして、各切替弁68a,68bはLFモータ42等のアクチュエータにて切替制御される。各切替弁68a,68bは第1実施形態と同様のロータリ式であり、第1位相から第4位相まで切替可能に構成されている。
【0077】
この第2実施形態の吸引回復装置の制御態様を図11に示すフローチャートに従って説明する。処理スタートに続いて、キャリッジ13を図8の矢印C方向(右方向)に移動させ、メンテナンス部36に配置されているキャップ体64、65の上方に記録ヘッド12の各ノズル列46aのグループと、3つのノズル列46b,46c,46dのグループが対応する位置に来た時、停止する(S21)。
【0078】
次いで、アクチュエータ67a,67bを作動させて、各キャップ体64、65をノズル面12aに密着させてキャッピングする(S22)。次いで、両切替弁68a,68bを吸引ポンプ47に連通するようにLFモータ42を作動させる(S23)。続いて、吸引ポンプ47を回転させて、各キャップ体64、65の内部空間を負圧となるように吸引を開始する(S24)。これにより、第1キャップ体64には、ノズル列46aからブラックインクが吸引され始め、第2キャップ体65には、カラーインク用の3つのノズル列46b,46c,46dからそれぞれインクが吸引され始める。
【0079】
第1及び第2キャップ体64、65のそれぞれの内部空間の負圧が所定値にするために、吸引ポンプ47の所定回転数が予め定められている。回転数がある程度大きい時には、前記負圧を最大値とすることができる。
【0080】
各キャップ体64、65の内部空間の負圧が所定値になった時点で、各切替弁68a,68bを遮断し、その後吸引ポンプ47を停止させる(S26)。この状態では各ノズル列46a〜46dからのインクの吸引が続行している。
【0081】
吸引ポンプ47の回転停止してから所定時間T1、T2経過したか否かを判別し(S27)、所定時間T1経過すれば、アクチュエータ67aを作動させて第1キャップ体64をノズル面12aから離間させ、所定時間T2経過すれば、アクチュエータ67bを作動させて第2キャップ体65をノズル面12aから離間させるというように、個別に作動させてキャップリリースする(S28)。このキャップリリースにより、インクの吸引は直ちに停止されるのであり、各キャップ体64、65の内部空間にそれぞれ溜まった廃棄インクはそのままに保持される。
【0082】
キャップリリースの後には、直ちに、キャリッジ13を図8の状態から矢印D方向(左方向)に移動させる、そのときワイパー体(図示せず)を上昇させておくと、ワイヤいピングすることができる(S29)。
【0083】
続いて、各キャップ体64、65内に溜まった廃棄インクを廃棄インク吸引体62に導くため、切替弁60の弁体60eを上記第1位相、第2位相及び第3位相に順次切り換えつつ、吸引ポンプ47を作動させることで、各キャップ体64、65内及び各チューブ内の廃棄済みインクを全て廃棄インク吸引体62に吸収させることができる(S30)。このような、空吸引モードを設けることにより、他の部品を汚さない。その後は、キャリッジ13を画像記録領域に戻して印刷(印字)作業を実行するか、メンテナンス部36に戻して、キャッピング動作のみを実行して、ノズル面12aにを乾燥から保護した状態で、待機させることができる(S31)。
【0084】
本実施形態においても、上記の一方のキャップ体64でのキャップリリースまでの所定時間T1と他方のキャップ体65でのキャップリリースまでの所定時間T2は、上述のようにして異ならせることができる。各キャップ体でのインクの吸引量は、キャップ内の時間的に変化する負圧の値と、吸引開始からキャップリリースまでの時間の積分値に比例するものである。本実施形態ではキャップリリースのためのアクチュエータ67a,67bと、リリース方向に付勢するばね66とがキャップ体駆動手段に相当し、アクチュエータ67a,67bの作動制御が、ノズルから吸引するべきインク量に応じて変更可能にする制御手段となる。従って、前記所定時間の長短の設定によっては、最大吸引負圧を越えた任意の時間帯(時点)でキャップリリースすることや、逆に、最大吸引負圧になる前にキャップリリースすることも可能である。
【0085】
従って、各ノズル列ごとの各ノズルの孔径の大小や、ノズルの総数の大小、さらには、インクの粘性の大小等のインクの特性に応じて上記所定時間T1(T2)を決定することで、記録ヘッド12の複数のノズル列を同時に覆って、一斉にインク吸引を実行することに比べて、各ノズル列毎のインクの吸引量を最適なものに設定でき、無駄なインクの吸引を無くすることができる。
【0086】
また、従来のように、吸引ポンプとキャップ体とを接続するチューブの中途に設けた切替弁による負圧を解除する(キャップ部の内部空間を大気圧になるように開放する)作業に比べて、キャップリリース後のワイピング作業を含めた回復動作時間を短縮できるという顕著な効果を奏する。
【0087】
前記第1及び第2実施形態においては、ノズルの孔径以外は同じ寸法の流路状態であれば、ノズルの孔径が大きいほど、ノズルの孔径が小さい場合に比べて、最大吸引負圧を小さいように設定する。これは、ノズルの孔径が大きいと、ノズルに至る流路の流路抵抗がノズルの孔径の小さい流路に比べて小さくなるためである。流路抵抗が小さいと容易にインクが排出されるが、その分絞り部での所定の流速が確保し易くなる。最大吸引負圧を小さくしても、絞り部において、所定の流速が確保される。逆に、ノズルの孔径が小さいと、全体的に流路抵抗が高くなり、その分絞り部での所定の流速を確保するために最大吸引負圧を大きくする必要がある。
【0088】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】画像記録装置の全体斜視図である。
【図2】画像読取部を除いた状態の本体ケースを後方から見た斜視図である。
【図3】図2の平面図である。
【図4】図3のIV−IV線矢視拡大断面図である。
【図5】キャリッジの下面図である。
【図6】(a)は第1実施形態の吸引回復装置を有するメンテナンス部にキャリッジが接近する状態を示す作用説明図、(b)は吸引回復作動状態の説明図である。
【図7】(a)は第1実施形態の吸引回復装置の構成図、(b)及び(c) は切替弁の各位相の状態を示す図である。
【図8】第2実施形態の吸引回復装置の構成を示す説明図である。
【図9】制御装置の機能ブロック図である。
【図10】第1実施形態の吸引回復制御のフローチャートである。
【図11】第2実施形態の吸引回復制御のフローチャートである。
【符号の説明】
【0090】
1 画像記録装置
2 本体ケース
3 上部ケース
5 給紙カセット
6 給送手段
10 記録部
11 プラテン
12 記録ヘッド
13 キャリッジ
24 CRモータ
36 メンテナンス部
42 LFモータ
45 吸引回復装置
47 吸引ポンプ
50、64、65 キャップ体
51 ベース体
52 昇降体
53 平行リンク
54、55 バネ
60、68a,68b 切替弁
67a,67b アクチュエータ
300 CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出する複数のノズルを有するインクジェットヘッドと、前記ノズルの開口面を覆うキャップ体と、前記キャップ体の内部空間に接続して前記ノズルからのインク吸引が可能な吸引手段と、が備えられた画像記録装置において、
前記キャップ体を前記ノズルの開口面に対して接離動可能に駆動するキャップ体駆動手段を備え、
前記吸引手段による吸引動作中に前記キャップ体を前記ノズルの開口面から離隔するタイミングを、前記ノズルから吸引するべきインク量に応じて変更可能にする制御手段を備えたことを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
前記キャップ体の内部空間は、前記複数のノズルを複数のグループに分けたグループ毎に吸引できるように区画され、
前記吸引手段には、1つの吸引ポンプと、この吸引ポンプから前記各内部空間への連通を遮断する切替弁を備えたことを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記キャップ体は、前記複数のノズルを複数のグループに分けたグループ毎に接離動できるように分離され、前記各キャップ体毎に前記ノズルの開口面から離隔するタイミングを、前記ノズルから吸引するべきインク量に応じて変更可能に制御することを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記複数のノズルのグループは、ノズルの口径、ノズルの数あるいは吐出するインク色等のインクの特性に応じて、グループ分けがされていることを特徴とする請求項2または3に記載の画像記録装置。
【請求項5】
前記タイミングは、前記インクを吸引する吸引圧の最大負圧の大小の設定値により決定されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の画像記録装置。
【請求項6】
前記インク吸引圧の最大負圧の設定値は、ノズルの口径が大きいほど小さく設定されていることを特徴とする請求項5に記載の画像記録装置。
【請求項7】
前記制御手段には、前記キャップ体が前記ノズルの開口面と離隔しているときに、前記吸引ポンプによって前記キャップ体に残るインクを吸引する空吸引モードが備えられていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の画像記録装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2007−111911(P2007−111911A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−303328(P2005−303328)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】