説明

画像記録装置

【課題】多数の記録素子を複数グループに分け、各グループ毎に駆動回路を備えるものにおいて、駆動回路間に温度の偏りが生じ駆動特性がばらつくことを抑制し、高い品質の画像記録を実現する。
【解決手段】複数の記録素子7は複数のグループ81、82に分けられ、前記グループごとに駆動回路340L、340Rが設けられている。前記各記録素子に駆動信号を出力すると、画像記録を行うべきデータをビットマップデータとして格納するメモリ303から、制御回路306により各グループの記録素子に対応したデータが読み出され、一方のグループの記録素子列7b1により奇数行91の画素が形成され、他のグループの記録素子列7b2により奇数行92の画素が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に対して複数の記録素子を相対移動させながら画像記録を行う画像記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像記録装置に用いられるインクジェット式の吐出ヘッドでは、インクを吐出させる記録素子を多数備えており、記録媒体に対して記録素子を相対移動させながらインクを吐出して、記録媒体に画像記録を行う。近年、画像記録装置では、記録の高密度化や高速化が求められ、記録素子の数が増加し、かつ高密度化している。これにともない、多数の記録素子を個別に駆動させるための駆動回路も大型化、高密度化しなければならなくなる。しかし、駆動回路が大型化、高密度化すると部品コストが嵩むだけでなく、駆動回路の発熱が大きくなり、その熱の影響で駆動回路自体の電気的特性が変わったり、記録素子の動作特性が変わったりして、画像記録の品質が低下する問題がある。そのため、特許文献1に記載されたインクジェット式の記録装置のように、吐出ヘッドを2つ並べ、それぞれに駆動回路を接続し、各駆動回路の負担を分ける構成が考えられる。
【特許文献1】特開2003−80683号公報(段落0014、図2、図9、図15、図17参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のように吐出ヘッド毎に駆動回路を対応させると、記録素子の使用頻度の偏りによって、駆動回路間に温度差が発生する。例えば、テキスト印字で、ブラックインクの使用頻度が高いと、ブラックインクの吐出に対応する駆動回路が、その他のカラーインクに対応する駆動回路よりも高温になる。この駆動回路間の温度差は、駆動回路の駆動特性、特に、立ち上がり時間/立ち下がり時間(tr/tf)に悪影響を及ぼし、画像記録品質が低化する要因となる。
【0004】
本発明は、上記問題を解消するものであり、多数の記録素子を複数グループに分け、各グループ毎に駆動回路を備えるものにおいて、駆動回路間に温度の偏りが生じ駆動特性がばらつくことを抑制し、高い品質の画像記録を実現することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明における画像記録装置は、複数の記録素子と記録媒体とを相対移動させて前記記録素子により前記記録媒体上に画像記録を行う画像記録装置であって、前記複数の記録素子は、複数のグループに分けられ、その各グループはそれぞれ複数の記録素子を前記相対移動方向と交差する方向に所定ピッチで配列して備え、他のグループに対し前記相対移動方向に間隔をあけ、かつ各グループの記録素子は他のグループの記録素子に対し前記相対移動方向と交差する方向に前記所定ピッチよりも小さいピッチだけずれて位置している画像記録装置において、前記グループごとに設けられ、前記各記録素子に駆動信号を出力する駆動回路と、前記画像記録を行うべきデータをビットマップデータとして格納するメモリと、前記メモリから前記各グループの記録素子に対応したデータを読み出し、前記グループごとに前記各駆動回路に出力する制御回路とを備えるものである。
【0006】
また、請求項2に記載の発明における画像記録装置は、複数の記録素子と記録媒体とを相対移動させて前記記録素子により前記記録媒体上に画像記録を行う画像記録装置であって、前記複数の記録素子は、複数のグループに分けられ、その各グループはそれぞれ複数の記録素子を前記相対移動方向と交差する方向に所定ピッチで配列して備え、他のグループに対し前記相対移動方向に間隔をあけ、かつ各グループの記録素子は他のグループの記録素子に対し前記相対移動方向に並んで位置している画像記録装置において、前記グループごとに設けられ、前記各記録素子に駆動信号を出力する駆動回路と、前記画像記録を行うべきデータをビットマップデータとして格納するメモリと、前記メモリから前記各グループの記録素子に対応したデータを読み出し、前記グループごとに前記各駆動回路に出力する制御回路とを備えるものである。
【0007】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の画像記録装置において、前記制御回路は、前記記録媒体上に隣接して形成される画素に対応する前記メモリ内のデータをそれぞれ異なるグループの各記録素子に割り当てるように読み出すものである。
【0008】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれかに記載の画像記録装置において、前記記録素子は、液体を吐出するノズルと、そのノズル内の液体に吐出圧力を与える駆動部とからなり、前記駆動回路からの駆動信号により前記駆動部を駆動して前記記録媒体に液体による画像記録を行うものである。
【0009】
また、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の画像記録装置において、前記ノズルは、前記各グループごとに前記相対移動方向に離れて配置され、前記駆動部はそのノズルに対応する位置に前記各グループごとにまとまって配置され、前記駆動部と前記駆動回路とを接続する配線パターンを有するシート状の配線部材が前記各グループごとに独立して設けられ、各配線部材上に前記駆動回路が実装されているものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、記録素子のグループでは、複数の記録素子が前記相対移動方向と交差する方向に所定ピッチで配列し、他のグループの記録素子に対し前記相対移動方向と交差する方向に前記所定ピッチよりも小さいピッチだけずれて位置している。そのため、複数の記録素子を相対移動方向に一度走査することにより、記録媒体上に、各グループの記録素子による画素を、互いに他のグループの記録素子により形成された画素の相対移動方向と交差する方向の間を埋める(補完する)ように形成することができる。
【0011】
そして、ビットマップデータにおいて前記相対移動方向と交差する方向の各データを、異なるグループに分けて出力することで、記録素子の各グループでの使用頻度の偏りを抑制(ほぼ均等化)することができる。これにより、各グループに対応する駆動回路の負担を同程度に揃えることができるので、駆動回路の発熱量の差に起因して駆動特性がばらつくことを抑制し、高い品質の画像記録を実現することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、記録素子の各グループでは、複数の記録素子が前記相対移動方向と交差する方向に所定ピッチで配列し、他のグループの記録素子に対し前記相対移動方向に並んで位置している。そのため、複数の記録素子を相対移動方向に一度走査することにより、記録媒体上に、各グループの記録素子による画素を、互いに他のグループの記録素子により形成画素の、相対移動方向の間を埋める(補完する)ように形成することができる。
【0013】
そして、ビットマップデータにおいて前記相対移動方向の各データを、異なるグループに分けて出力することで、記録素子の各グループでの使用頻度の偏りを抑制(ほぼ均等化)することができる。これにより、各グループに対応する駆動回路の負担を同程度に揃えることができるので、駆動回路の発熱量の差に起因して駆動特性がばらつくことを抑制し、高い品質の画像記録を実現することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、異なるグループの記録素子により隣接した画素を形成するが、一般的に画像では隣接した画素で急激に画素数が変化することが少ないから、各グループで形成される画素の総数が、全体的にみて極めて近い数になる。そのため、各動回路に掛かる負荷がほぼ均等化し、駆動回路の発熱による温度差を抑え、駆動回路間の特性ばらつきを抑制して高い品質の画像記録を実現することができる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、記録素子が液体を吐出するノズル及び駆動部からなり、ノズルから吐出した液体により記録媒体に画像記録を行うものにおいて、上記のように駆動回路の駆動特性がばらつくことを抑制し、高い品質の画像記録を実現することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、ノズルが、各グループ毎に前記相対移動方向に離れて配置され、駆動部もグループ毎にまとまって且つグループ同士は前記相対移動方向に離れて配置され、駆動部と駆動回路とを接続する配線パターンを有するシート状の配線部材が各グループごとに独立して設けられ、各配線部材上に駆動回路が実装されている。従って、駆動回路が実装された配線部材を、各グループの駆動部に接続するときに、互いに干渉しないように配置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明の基本的な実施形態を説明する。図1は、本発明を具体化した画像記録装置における記録部1の概略平面図である。この記録部1は、インクジェット式の記録素子を有するものであり、単独のプリンタ装置に適用しても、あるいは、ファクシミリ機能やコピー機能等の複数の機能を備えた多機能装置のプリンタ機能(記録部)に適用してもよい。
【0018】
記録部1には、図1に示すように、キャリッジ2が備えられ、このキャリッジ2には、吐出ヘッド3がそのノズル7をキャリッジ2の下面に露出させて搭載されている。キャリッジ2は、第1ガイド部材5及び第2ガイド部材6に主走査方向(Y軸方向)に移動可能に支持され、キャリッジモータ8に連結された駆動プーリ9と、従動プーリ10とに掛け渡されたタイミングベルト11によってY軸方向に沿って往復移動する。記録媒体である用紙は、キャリッジ2の下方において、主走査方向(Y軸方向)に直交する副走査方向(X軸方向)に搬送される。この形態では、ノズル7を有する吐出ヘッド3は、用紙に対してY軸方向に移動するので、Y軸方向が請求項における相対移動方向となる。
【0019】
装置本体12内には、交換式のインクカートリッジ13が静置されており、ここではインク色の数に応じて、ブラックインク用、シアンインク用、マゼンタインク用、イエローインク用の4つのインクカートリッジ13が備えられている。各インクカートリッジ13のインクは、可撓性を有する樹脂製のインク供給チューブ15を介して、それぞれ独立してキャリッジ2の後述するインク貯留部22に供給される。なお、説明では、ノズルの開口面側を前面もしくは下面、その反対側を背面もしくは上面として記載する。
【0020】
キャリッジ2には、図2に示すように、上面を開放した略箱状の筐体すなわちヘッドホルダ20が備えられ、ヘッドホルダ20の底板21の下面側には、補強フレーム24を介在させて、吐出ヘッド3が固着される。
【0021】
吐出ヘッド3は、図3に示すように、下面側にノズルが開口し且つ内部にインク流路を有する1つのキャビティ部31の上面に、2つのアクチュエータ32L、32RをY軸方向に並べて配置し、アクチュエータ32L、32R上面にシート状のフレキシブル配線材4L、4Rをそれぞれ配置して構成されている。2つのフレキシブル配線材4L、4Rは、アクチュエータ32L、32Rに駆動信号を供給する配線パターンを備えるものであり、接続されたアクチュエータから互いに干渉しないように、Y軸方向に沿って互いに離反する方向に引き出されている。そして、キャビティ部31の背面に、2つのアクチュエータ32L、32Rを囲む形状の補強フレーム24が積層されている。
【0022】
なお、別例として、2つのアクチュエータ32L、32Rを一体とし、その上面から2つの配線材4L、4Rを引き出してもよい。またキャビティ部とアクチュエータとフレキシブル配線材とを1つずつ積層した吐出ヘッド3を、Y軸方向に2つ並べてヘッドホルダ20に固定する構造でもよい。
【0023】
ヘッドホルダ20の底板21の上面側には、インクカートリッジ13から供給されたインクを一旦貯留するインク貯留部22と、回路基板23とが搭載されている。回路基板23は、装置本体12に静置された制御部300(図6参照)からフレキシブルな配線ケーブル(図示せず)を介して駆動信号を受ける。回路基板23には、2箇所にコネクタ23aが設けられていて、一方のコネクタ23aとアクチュエータ32Lとが配線材4Lで繋がれ、他方のコネクタ23aとアクチュエータ32Rとが配線材4Rで繋がれる。
【0024】
ヘッドホルダ20の底板21には開口部(図示せず)が貫通形成されており、この開口部の内側では、インク貯留部22と、吐出ヘッド3の導入口31aとが、補強フレーム24の接続穴24aを介して接続され、インク貯留部22から吐出ヘッド3にインクが色毎に独立して供給される。また、底板21には、フレキシブル配線材4L、4Rを下から上に挿通させるスリット孔25が2箇所穿設されている。
【0025】
吐出ヘッド3において上下関係にある1つのアクチュエータ32L(32R)、配線材4L(4R)及びキャビティ部31の半分は、特開2005−322850号公報に記載の公知のものと同様の内部構成を備える。キャビティ部31は、図4に示すように、複数の薄いプレートを積層して形成されており、その内部には、インク貯留部22からキャビティ部31の導入口31aへ導入されたインクが、マニホールド室34を介して、多数の圧力室35に分配されて下面に開口するノズル7に供給されるように一連のインク流路が構成されている。
【0026】
マニホールド室34は、X軸方向に列をなす複数の圧力室35にインクを分配するために、圧力室35の列と平行で且つX軸方向へ長く形成されている。ここでは、マニホールド室34は、各色毎に対応して、全部で8つが互いに平行状に設けられている。また、導入口31aは、図3に示すように、キャビティ部31の上面におけるX軸方向の一方の端部に全部で8個開口し、各マニホールド室34の長手方向の一端に連通している。
【0027】
アクチュエータ32L(32R)は、複数(全ての圧力室の半数)の圧力室35にわたる大きさを有する扁平形状で且つその扁平な方向と直交する方向に積層された複数のセラミックス層36と、この複数のセラミックス層36間に配置された複数の電極とから構成されている(図4参照)。電極は、圧力室35毎に形成された個別電極37と、複数の圧力室35に跨って形成されたコモン電極38とを含み、セラミックス層36間にその積層方向に交互に配置されている。積層方向の各個別電極37は相互に接続されて、アクチュエータ32の表面(フレキシブル配線材4と対向する面)に形成された個別用の表面電極(図示せず)にスルーホール等に充填された導電材を介して導通している。また、積層方向の各コモン電極38も相互に接続されて、前記表面に形成されたコモン用の表面電極(図示せず)に導通している。
【0028】
このように電極が設けられたアクチュエータ32L(32R)では、公知のように個別電極37とコモン電極38との間に挟まれたセラミックス層36の部分が分極され、駆動部として形成されている。また、記録時には、個別用表面電極37aとコモン用表面電極38aとから、両電極37と38間に電圧を印加することで、駆動部が伸長して対応する圧力室35内のインクに圧力を加え、ノズル7からインクを吐出することができる。つまり、請求項の記録素子は、ノズル7とノズル7から吐出するインクに吐出圧力を与える駆動部とを含んでいる。
【0029】
フレキシブル配線材4L、4Rの長手方向の中途部には、後述する駆動回路340L、340Rを内蔵するICチップ化された回路素子50L、50Rが実装されている。回路素子内の駆動回路340L、340Rは、フレキシブル配線材4L、4R上の配線パターンに接続され、回路基板23及びアクチュエータ32の各駆動部と接続されている。回路素子50L(50R)は、記録時にノズルからインクを吐出する駆動信号を出力することで発熱する。
【0030】
回路素子50L(50R)の熱を放熱するために、図2に示すように、熱伝導率の高い(アルミニウム等)金属製の放熱体52が、ヘッドホルダ20の内側に配置されている。フレキシブル配線材4L(4R)は、中途部位において回路素子50L(50R)を放熱体52と接触させ、上方の回路基板23へ向けて引き回されている。回路素子50L(50R)は、ゴム状の弾性部材53の弾性力によって放熱体52に熱伝導可能に密着している。
【0031】
図5に示すように、ノズル7は、キャビティ部31の下面にX軸方向に延びる列状に配置され、全部で8列のノズル列がY軸方向に配列されている。8列に配列されたノズル列は、隣接する4列ずつを1つのグループとして、第1グループ81と第2グループ82とをY軸方向に並べている。第1グループ81のノズル列は、アクチュエータ32Lに重なる位置に配置されていて、フレキシブル配線材4Lの回路素子50Lを介した駆動信号がアクチュエータ32Lに入力されることで、インクを吐出する。第2グループ82のノズル列は、アクチュエータ32Rに重なる位置に配置されていて、フレキシブル配線材4Rの回路素子50Rを介した駆動信号がアクチュエータ32Rに入力されることで、インクを吐出する。これら第1グループ81及び第2グループ82は、ノズル列だけをグループ化したものではなく、ノズル7からインクを吐出させるための駆動部も含めた記録素子を、2つのグループに分けたものである。
【0032】
8列のノズル列は、2列ずつが同じ色のインクを吐出するが、この同じ色のインクを吐出する2つのノズル列は、第1グループ81と第2グループ82とに分かれて配置されている。ここでは、図5の左から順に、イエローインク用のノズル列7y1、シアンインク用のノズル列7c1、マゼンタインク用のノズル列7m1、ブラックインク用のノズル列7b1、ブラックインク用のノズル列7b2、マゼンタインク用のノズル列7m2、シアンインク用のノズル列7c2、イエローインク用のノズル列7y2の順に並んでいる。
【0033】
図5(b)はブラックインク用のノズル列7d1、7d2のみを例示したものであるが、各ノズル列では、ノズル7がX軸方向に所定ピッチPで並んでおり、同じ色のインクを吐出する2つのノズル列同士は、前記所定ピッチPよりも小さいピッチ、ここではP/2だけX軸方向にずれている。例えば、所定ピッチPが、X軸方向の解像度が150dpiとなるピッチである場合には、同じインクを吐出するノズル列同士を合わせると、X軸方向の解像度が300dpiとなる。
【0034】
次に、図6を参照して、この画像記録装置の制御部300について説明する。この制御部300は、画像記録装置の全体的な動作を制御するものである。
【0035】
制御部300は、CPU301、ROM302、RAM303、EEPROM304からなるマイクロコンピュータ、及び、それらにバス305を介して接続されたASIC(Application Specific Integrated Circuit )306を中心として構成されている。ASIC306が、請求項における制御回路に相当する。
【0036】
ROM302には、画像記録装置の各種動作を制御するプログラム等が格納されており、RAM303は、CPU301がこれらのプログラムを実行する際に用いる各種データを一時的に記憶する記憶領域として、また作業領域として用いられる。画像記録装置に一体化あるいは別体化されたイメージスキャナ310で原稿を読み取って作成した画像データや、コンピュータ311や他のファクシミリ装置や記憶媒体312等の外部装置から受信した画像データも、一旦、RAM303のイメージデータ領域(請求項のメモリに相当)にASIC306によりビットマップデータとして記憶される。
【0037】
ASIC306にはNCU(Network Control Unit)317が接続されており、公衆回線(PSTN)からNCU317を介して入力された通信信号はモデム318によって復調されてからASIC306に入力される。また、ASIC306がファクシミリ送信等で画像データを外部へ送信する場合には、その画像データがモデム318によって通信信号に変調され、その通信信号がNCU317を介して公衆回線に出力される。
【0038】
また、ASIC306は、マイクロコンピュータからの指令に従い、例えば各モータに通電する相励磁信号等を生成して、これらの信号を用紙搬送用のモータ(LFモータ)320の駆動回路321やキャリッジモータ(CRモータ)8の駆動回路322に与え、用紙搬送用のモータ(LFモータ)320やキャリッジモータ8の制御を行う。
【0039】
更に、ASIC306には、各種操作のためのパネルや入力部を有する表示パネル部330を備えたパネルインターフェース331、パーソナルコンピュータ311などの外部機器とパラレルケーブルやUSBケーブルを介してデータの送受信を行うためのパラレルインターフェース332やUSBインターフェース333、記憶媒体312が装着される外部入力端子を備えたメモリインターフェース334などが接続されている。
【0040】
駆動回路340Lは回路素子50Lに含まれる回路であり、駆動回路340Rは回路素子50Rに含まれる回路である。駆動回路340L、340Rは、RAM303のイメージデータ領域から回路基板23を経てシリアル伝送された駆動データの信号を、多数の個別電極37に対応したパラレル信号に変換し、セラミックス層36の駆動に適した電圧の駆動信号として吐出ヘッド3へ所定のタイミングで出力するものである。
【0041】
記録部1で記録すべき各種の画像は、RAM303内のイメージデータ領域に、マゼンタ、イエロー、シアン、ブラックの各色毎に、吐出ヘッド3の走査に対応した形態でビットマップデータとして記憶されているので、この領域からASIC306により、色毎に且つ記録ヘッド4の主走査方向(Y軸方向)に順次データが読み出される。そして、データは、ASIC306から駆動回路340Lと駆動回路340Rとを介して吐出ヘッド3に供給されて、用紙に画像が記録される。
【0042】
第1実施形態では、図7(a)に示すように、RAM303に記憶されたビットマップデータのうち奇数行91のデータを第1グループ81の駆動回路340Lに割り当て、偶数行92のデータを第2グループ82の駆動回路340Rに割り当てている。なお、ここでいう行とは、吐出ヘッド3の主走査方向(Y軸方向)と同じ方向に対応するデータの行を意味している。
【0043】
ブラックインク用のノズル列7b1、7b2のY軸方向(行方向)の間隔をWbとすると、ブラックインクを吐出させるためにビットマップデータからブラックインク用のデータを読み出すときに、データ上で行方向に距離wb(前記Wbに相当するデータ上の距離)だけ離れた2列(ノズルX方向の列に対応するデータ上の列)のデータを同時に読み出し、読み出したデータの一方の列を駆動回路340Lに、他方の列を駆動回路340Rに出力するようにしている。また、マゼンタインクを吐出させるためにビットマップデータからマゼンタインク用のデータを読み出すときに、データ上で行方向に距離wm(マゼンタインク用のノズル列7m1、7m2のY軸方向(行方向)の間隔Wmに相当するデータ上の距離)だけ離れたデータを同時に読み出し、一方を駆動回路340Lに、他方を駆動回路340Rに出力する(なお、前記Wm、wmは図示していない)。イエローインク、シアンインクの場合にも同様である。
【0044】
用紙に記録した結果は、図7(b)に模式的に示すように、駆動回路340Lを介した駆動信号でノズル列7b1から吐出されたインクが奇数行91の画素(白丸)を形成し、駆動回路340Rを介した駆動信号でノズル列7b2から吐出されたインクが偶数行92の画素(黒丸)を形成する。前述したように、同じ色のインクを吐出する2つのノズル列は所定ピッチPの1/2だけずれているので、吐出ヘッド3を主走査方向(Y軸方向)に1回走査することで、前記奇数行91と偶数行92の画素とを、互いのピッチP間を埋めるように形成することができる。
【0045】
このように、第1グループ81による画素と第2グループ82による画素は、隣接した行を形成するが、一般的に画像では隣接した行で急激に画素数が変化することが少ないから、各グループで形成される画素の総数が、全体的にみて極めて近い数になる。そのため、2つの駆動回路340L、340Rに掛かる負荷もほぼ均等化し、駆動回路の発熱による温度差を小さく抑えることができ、駆動回路間の特性ばらつきも抑制できる。
【0046】
なお、第1実施形態では、同じ色のインクを吐出する2つのノズル列に対応するビットマップデータ上の距離wだけ行方向に離れたデータを読み出しているが、用紙上に走査方向と直交する方向に形成される画素列(つまり図7(b)において縦方向の1列)に対応する、ビットマップデータ上の同じ列のデータを読み出すようにしてもよい。この場合には、同じ色を吐出する2つのノズル列のうち、吐出ヘッド3を走査する方向において後方位置にあるノズル列の駆動回路には、先行位置にあるノズル列の駆動回路よりも、距離Wに相当する走査時間だけ遅延させてデータを出力するようにすればよい。
【0047】
また、上記ピッチPで形成された画素の間を、複数回の走査で形成する画素で埋めるようにすることもできる。つまり、1回の走査後、P/nまたは(mP+P/n)(m及びnはそれぞれ2以上の整数)だけ走査方向と直交する方向に用紙を搬送し、次の走査でP/nの位置に画素を形成することを繰り返す。この場合、図5(b)ノズル列7b1と7b2とのずれ量はP/2でなくてもよい。また、この場合ノズル列7b1と7b2とに割り当てるデータは、ビットマップ上の奇数行、偶数行に必ずしも対応しない。
【0048】
次に、第1実施形態のノズル配列を変形した第2実施形態(図8に示す)について説明する。この実施形態の各ノズル列も、X軸方向に延びているが、同じ色を吐出するノズル列が、Y軸方向に8列並び、異なる色を吐出するノズル列がX軸方向に4列並んで(縦列して)おり、全部で32列のノズル列が形成されている。
【0049】
ここでは、図8の上の左から順に、ブラックインク用のノズル列7b1〜7b8、その下に縦列してイエローインク用のノズル列7y1〜7y8、さらにこれに縦列して、シアンインク用のノズル列7c1〜7c8(図では省略して符号7cと記載)、さらにこれに縦列して、7m1〜7m8(図では省略して符号7mと記載)が配置されている。そして、左側寄りの16列のノズル列(ノズル列7b1〜7b4、7c1〜7c4、7m1〜7m4、7y1〜7y4)が第1グループ81を構成し、右側寄りの16列のノズル列(ノズル列7b5〜7b8、7c5〜7c8、7m5〜7m8、7y5〜7y8)が、第2グループ82を構成している。そして、第1グループ81に駆動回路340Lが、第2グループ82に駆動回路340Rが対応している。なお、第2実施形態の吐出ヘッド3では、キャビティ部31のマニホールド室34(図8(a)では1つだけを一点鎖線で図示)は、Y軸方向に長く延びて、互いに平行に4つ形成されているものとする。
【0050】
各ノズル列のノズル7は、いずれもX軸方向に所定ピッチPで配置されており、同じ色のインクを吐出するノズル列同士は、互いにX軸方向に、前記所定ピッチPよりも小さいピッチだけずれて位置している。ここでは、ブラックインク用のノズル列は、ノズル列7b1〜7b4が互いに前記所定ピッチPの1/4ずつずれ、ノズル列7b5〜7b7も互いに前記所定ピッチPの1/4ずつずれ、ノズル列7b1とノズル列7b5とは、前記所定ピッチPの1/8ずれている。従って、前記所定ピッチPが、X軸方向の解像度が150dpiとなるピッチの場合には、全体として、1200dpiの高解像度が得られることになる。他のインク色のノズル列もブラックインクのノズル列と同様にずれて配列されている。
【0051】
第2実施形態の場合にも、イメージデータ領域(RAM303)におけるビットマップデータのうち奇数行91のデータを、駆動回路340L(第1グループ81)に割り当て、偶数行92のデータを駆動回路340R(第2グループ82)に割り当てている。そして、ビットマップデータから各色毎にデータを読み出すときには、同じ色を吐出する8つのノズル列のY軸方向(行方向)の配置間隔W2、W3、W4、W5、W6、W7、W8に相当する距離がデータ上で離れている8箇所のデータをそれぞれ同時に読み出し、それぞれ対応するノズルの駆動部に出力する。
【0052】
また、用紙上に走査方向と直交する方向に形成される画素列(つまり図7(b)において縦方向の1列)に対応する、列のデータをビットマップデータから読み出し、各ノズルの駆動部に、吐出ヘッド3の各ノズル間の走査時間ずつ順次ずらせて出力するようにすることもできる。
【0053】
前述したように、各ノズル列はX軸方向にずれているので、吐出ヘッド3を主走査方向(Y軸方向)に1回走査することで、用紙に、ノズル列7b1のノズルにより形成した画素のピッチP間にノズル7b2、7b3、7b4により形成した画素を配置し、さらにその第1グループ81による各画素間を第2グループ82による各画素が埋めるように形成する。その結果、第1実施形態の効果と同様に、各グループで形成される画素の総数が、極めて近い数になるため、2つの駆動回路340L、340Rに掛かる負荷もほぼ均等化し、駆動回路の発熱による温度差を小さく抑えることができ、駆動回路間の特性ばらつきも抑制できる。また、この第2実施形態では、X軸方向の画像の記録密度を向上させることができる。
【0054】
次に、第1実施形態におけるノズル列及びビットマップデータの読み出しを変形させた第3実施形態について、図9及び図10を用いて説明する。
【0055】
第3実施形態のノズル列は、図9(a)の下面図に示すように、第1実施形態と同様に、X軸方向に延びる列状で且つY軸方向に8列並んでいて、4列ずつを1つとしてグループ化され、第1グループ81と第2グループ82とがY軸方向に沿って並んでいる。インク色に対応するノズル列の配列順序も第1実施形態と同様であり、同じ符号を付して説明を省略する。
【0056】
各ノズル列では、ノズル7がX軸方向に所定ピッチPで並んでいるが、同じ色のインクを吐出する2つのノズル列同士は、図9(b)に示すように走査方向(Y)に同じ線上で並んでいる。
【0057】
図10(a)に示すように、イメージデータ領域(RAM303)におけるビットマップデータのうちの奇数列93のデータを駆動回路340Lに割り当て、偶数列94のデータを駆動回路340Rに割り当てている。ブラックインク用の2つのノズル列のY軸方向の間隔をWbとすると、ブラックインクを吐出させるためにビットマップデータからブラックインク用のデータを読み出すときに、データ上で行方向に距離wb(前記Wbに相当するデータ上の距離)だけ離れた奇数列93と偶数列94のデータを同時に読み出す。読み出したデータの一方を駆動回路340Lに他方を駆動回路340Rにそれぞれ出力し、同じタイミングで吐出させている。他の色のインクも同様である。
【0058】
なお、読み出すデータの距離はwbに限らず、任意の距離(隣接する2列を含む)のデータを読み出し、走査方向において後方位置にあるノズル列の駆動回路には、先行位置にあるノズル列の駆動回路よりも、所定走査時間だけ遅延させてデータを出力するようにしても、上記と同等の動作になる。
【0059】
吐出ヘッド3を主走査方向(Y軸方向)に1回走査した後に、用紙をX軸方向に半ピッチ(P/2)分だけ相対的に移動させて(図10(a)では斜めにずらして点線で図示)、隣接する次の行の吐出を行い、先に吐出形成された画素間(X軸方向の画素間)を補完するように画素を形成する。
【0060】
記録した結果は、図10(b)に模式的に示すように、駆動回路340Lを介した駆動信号で吐出されたインクが奇数列93の画素(白丸)を形成し、駆動回路340Rを介した駆動信号で吐出されたインクが偶数列94の画素(黒丸)を形成し、互いの走査方向の画素間を埋める。この結果、第1グループ81による画素と第2グループ82による画素は、隣接した列を形成することになるが、一般的に画像では隣接した列で急激に画素数が変化することが少ないから、各グループで形成される画素の総数が、全体的にみて極めて近い数になる。そのため、2つの駆動回路340L、340Rに掛かる負荷もほぼ均等化し、駆動回路の発熱による温度差を小さく抑えることができ、駆動回路間の特性ばらつきも抑制できる。
【0061】
このように、上記各実施形態では、多数の記録素子を複数のグループに分け、それぞれを別の駆動回路で分担させ、用紙上で隣接して形成される画素に対応するデータをそれぞれ異なるグループの各記録素子に割り当てているから、各グループの駆動回路の使用頻度をほぼ均等化させることができる。これにより、複数の駆動回路の温度差が極めて小さくなり、駆動特性のばらつきを抑制でき、高い品質の画像記録を実現することができる。
【0062】
また、従来、駆動回路の温度が高くなった場合、電源電圧を降下させて温度上昇分を補償する方法があったが、複数の回路素子間に温度差が生じる場合、複数の駆動回路に対してそれぞれ温度センサと電源回路とを設けることが必要となる。しかし、上記実施形態のように、複数の駆動回路の温度差が小さくなると、複数の駆動回路に対して1つの温度センサと電源回路とを共用できるので、部品コストの削減も可能となる。
【0063】
なお、上記実施形態では、圧電方式により液体を吐出する記録素子について記載したが、液体を沸騰式で吐出する記録素子や感熱方式の記録素子等、その他の形態の記録素子に適用してもよい。
【0064】
また、記録素子と用紙などの記録媒体とは、相対的にどちらが移動するように構成することもできる。
【0065】
また、本発明は、用紙上に文字、図形などの画像を形成するだけでなく、インク以外の液体、例えば液晶表示装置のカラーフィルタなどを着色する着色液を吐出する装置、あるいは導電性液体を塗布して電気回路パターンを形成する装置などにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の画像記録装置における記録部の概略平面図である。
【図2】ヘッドホルダをY軸方向に沿って切断した断面図である。
【図3】吐出ヘッドの分解斜視図である。
【図4】吐出ヘッドをY軸方向に沿って切断した断面図である。
【図5】(a)は吐出ヘッドの第1実施形態のノズル配列を示す下面図、(b)は(a)の要部拡大図である。
【図6】画像記録装置の制御を説明するブロック図である。
【図7】(a)は第1実施形態でのイメージデータ領域、駆動回路、記録素子の関係を説明するブロック図、(b)は形成された画像の模式図である。
【図8】(a)は吐出ヘッドの第2実施形態でのノズル配列を示す下面図、(b)は(a)の要部拡大図である。
【図9】(a)は吐出ヘッドの第3実施形態でのノズル配列を示す下面図、(b)は(a)の要部拡大図である。
【図10】(a)は第3実施形態でのイメージデータ領域、駆動回路記録素子の関係を説明するブロック図、(b)は形成された画像の模式図である。
【符号の説明】
【0067】
1 記録部
2 キャリッジ
3 吐出ヘッド
4L、4R フレキシブル配線材
7 ノズル
20 ヘッドホルダ
32L、32R アクチュエータ
81 第1グループ
82 第2グループ
340L、340R 駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の記録素子と記録媒体とを相対移動させて前記記録素子により前記記録媒体上に画像記録を行う画像記録装置であって、
前記複数の記録素子は、複数のグループに分けられ、その各グループはそれぞれ複数の記録素子を前記相対移動方向と交差する方向に所定ピッチで配列して備え、他のグループに対し前記相対移動方向に間隔をあけ、かつ各グループの記録素子は他のグループの記録素子に対し前記相対移動方向と交差する方向に前記所定ピッチよりも小さいピッチだけずれて位置している画像記録装置において、
前記グループごとに設けられ、前記各記録素子に駆動信号を出力する駆動回路と、
前記画像記録を行うべきデータをビットマップデータとして格納するメモリと、
前記メモリから前記各グループの記録素子に対応したデータを読み出し、前記グループごとに前記各駆動回路に出力する制御回路とを
備える画像記録装置。
【請求項2】
複数の記録素子と記録媒体とを相対移動させて前記記録素子により前記記録媒体上に画像記録を行う画像記録装置であって、
前記複数の記録素子は、複数のグループに分けられ、その各グループはそれぞれ複数の記録素子を前記相対移動方向と交差する方向に所定ピッチで配列して備え、他のグループに対し前記相対移動方向に間隔をあけ、かつ各グループの記録素子は他のグループの記録素子に対し前記相対移動方向に並んで位置している画像記録装置において、
前記グループごとに設けられ、前記各記録素子に駆動信号を出力する駆動回路と、
前記画像記録を行うべきデータをビットマップデータとして格納するメモリと、
前記メモリから前記各グループの記録素子に対応したデータを読み出し、前記グループごとに前記各駆動回路に出力する制御回路とを
備える画像記録装置。
【請求項3】
前記制御回路は、前記記録媒体上に隣接して形成される画素に対応する前記メモリ内のデータをそれぞれ異なるグループの各記録素子に割り当てるように読み出す請求項1または2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記記録素子は、液体を吐出するノズルと、そのノズル内の液体に吐出圧力を与える駆動部とからなり、
前記駆動回路からの駆動信号により前記駆動部を駆動して前記記録媒体に液体による画像記録を行う請求項1から3のいずれかに記載の画像記録装置。
【請求項5】
前記ノズルは、前記各グループごとに前記相対移動方向に離れて配置され、前記駆動部はそのノズルに対応する位置に前記各グループごとにまとまって配置され、前記駆動部と前記駆動回路とを接続する配線パターンを有するシート状の配線部材が前記各グループごとに独立して設けられ、各配線部材上に前記駆動回路が実装されている請求項4に記載の画像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−83434(P2009−83434A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−259363(P2007−259363)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】