画像記録装置
【課題】装置のコストアップを少なく抑えつつ、キャップが記録ヘッドに密着していることを確実に検出することのできる手段を提供する。
【解決手段】液滴を吐出する記録ヘッドに圧接する第1位置と離反する第2位置に姿勢変化可能なキャップ55と、キャップ55の姿勢変化に必要な第1電流をキャップ55の駆動源であるASFモータに流して、キャップ55を第2位置から第1位置に姿勢変化させるキャッピング手段と、ASFモータの駆動量が、キャップ55の第2位置から第1位置への移動に設計上必要な駆動量に達すると、第1電流より小さく且つASFモータの無負荷での駆動に必要な第2電流より大きい第3電流を、ASFモータに流す電流供給手段と、第3電流がASFモータに流れる期間に、ASFモータの駆動量が所定量以下である場合、キャップ55の姿勢変化が正常に実行されていないと判定する第1判定手段とを備える。
【解決手段】液滴を吐出する記録ヘッドに圧接する第1位置と離反する第2位置に姿勢変化可能なキャップ55と、キャップ55の姿勢変化に必要な第1電流をキャップ55の駆動源であるASFモータに流して、キャップ55を第2位置から第1位置に姿勢変化させるキャッピング手段と、ASFモータの駆動量が、キャップ55の第2位置から第1位置への移動に設計上必要な駆動量に達すると、第1電流より小さく且つASFモータの無負荷での駆動に必要な第2電流より大きい第3電流を、ASFモータに流す電流供給手段と、第3電流がASFモータに流れる期間に、ASFモータの駆動量が所定量以下である場合、キャップ55の姿勢変化が正常に実行されていないと判定する第1判定手段とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッドからシートにインク滴を吐出することによって画像記録を行うインクジェット記録装置等の画像記録装置に関し、例えば、ポンプによって記録ヘッドからインクを排出するパージ処理のために、記録ヘッドの吐出口を覆うキャップを備え、当該キャップが吐出口を覆う位置と吐出口から離れた位置とに摺動可能な画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液滴を吐出することで文字、写真、配線パターン等の種々の画像記録を行う装置が知られている。例えば、入力信号に基づいてインクを吐出してシートに画像記録を行う画像記録装置が知られている。このような画像記録装置は、一般に「インクジェットプリンタ」と称される。インクジェットプリンタにおける画像記録は、記録ヘッドの吐出口からインクが選択的に吐出されることによって実現される。
【0003】
記録ヘッドにおいて、吐出口へ通ずるインク流路に気泡が生じたり異物が詰まったりすることが起こり得る。これらは、記録ヘッドからのインク滴の吐出に対して障害となり得る。このような障害を防止又は回復するために、記録ヘッドの吐出口から気泡や異物を除去する手法が知られている。このような手法は、一般に「パージ」と称される。パージはメンテナンスユニットによって実現される。メンテナンスユニットは、例えば、記録ヘッドの吐出口を覆うキャップ、キャップ内を減圧してインクを吸引するためのポンプ、吸引したインクを貯留する廃液タンク、ポンプと廃液タンクを接続するチューブなどを備えている。
【0004】
シートへの画像記録が実行されるときには、記録ヘッドはシートの搬送方向と直交する方向へ移動可能である。このとき、キャップは記録ヘッドの吐出口から離れている。パージが実行されるときには、記録ヘッドの吐出口がキャップで覆われ、記録ヘッドとキャップの間には気密空間が形成される。この状態でポンプが駆動されると、インクが吸引される。このように、インクジェットプリンタにおいては、キャップが、記録ヘッドに密着して吐出口を覆う位置と記録ヘッドから離れた位置とに摺動する「キャップリフト機構」が備えられている。
【0005】
キャップリフト機構には、キャップを摺動させるための手段として、摩擦クラッチ機構が用いられることがある。また、キャップの位置を検出するための手段として、一部に欠歯部分を有する欠歯ギヤが用いられることがある。
【0006】
例えば、摩擦クラッチ機構は、全周に歯を有する通常ギヤと、欠歯ギヤと、両ギヤを押しつける付勢部材とを備えている。通常ギヤと欠歯ギヤは駆動源から駆動伝達される駆動ギヤと噛合している。欠歯ギヤは、欠歯ギヤの回転方向の運動を上下方向などの運動に変換する機構を介してキャップと連結されている。このような構成によれば、欠歯ギヤと駆動ギヤと噛合されているとき、キャップは摺動する。一方、欠歯ギヤの欠歯部分が駆動ギヤと対向しているとき、つまり欠歯ギヤと駆動ギヤが噛合されていないとき、キャップは摺動しない。
【0007】
当該キャップリフト機構の動作について説明する。欠歯ギヤと駆動ギヤが噛合している状態において、欠歯ギヤが所定向きに所定量回転すると、欠歯ギヤの欠歯部分が駆動ギヤと対向する。これにより、欠歯ギヤと駆動ギヤの噛合が解除される。このとき、キャップの位置は記録ヘッドに密着する位置である。この状態において、欠歯ギヤが上記所定向きと逆向きに回転すると、キャップは記録ヘッドから離れる向きに摺動を開始する。なお、この状態において、欠歯ギヤと駆動ギヤの噛合は解除されているが、欠歯ギヤは通常ギヤとの摩擦によって通常ギヤと一体に回転することによって、再び駆動ギヤと噛合する。欠歯ギヤが逆向きに所定量回転すると、欠歯ギヤの欠歯部分が駆動ギヤと対向する。これにより、欠歯ギヤと駆動ギヤの噛合が解除される。このとき、キャップの位置は記録ヘッドから離れた位置である。
【0008】
なお、特許文献1には、当該キャップリフト機構と同様の構成を有したインクジェット式プリンタが開示されている。当該インクジェット式プリンタにおいては、モータから駆動伝達されるギヤが、摩擦クラッチ機構のみを介して、ノズル形成面に付着しているインクを払拭するためのワイピング手段と接続され、当該ワイピング手段が、モータからの駆動伝達によって上方あるいは下方に回転される。また、摩擦クラッチ機構は、欠歯ギヤ、通常ギヤ、及び両ギヤを相互に押し付ける圧縮バネを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−66755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したキャップリフト機構において通常ギヤと欠歯ギヤが当接する間隙には、インクジェット式プリンタの動作の過程において、紙粉やインクが入り込むおそれがある。これにより、通常ギヤと欠歯ギヤの間の摩擦力に変化が生じた場合、欠歯ギヤが空転してしまい、キャップの摺動が適正に実行されないおそれがある。その結果、キャップは、中途半端にしか摺動せず、記録ヘッドに密着されないおそれがある。
【0011】
ところで、当該キャップリフト機構においては、欠歯ギヤと駆動ギヤの噛合が解除されるとキャップが停止され、当該停止の位置がキャップの記録ヘッドに対する密着位置であるとされる。つまり、当該キャップリフト機構は、キャップの位置を検出する手段を有していない。そのため、上述したようにキャップの摺動が適正に実行されずに、キャップが記録ヘッドに密着されなかったとしても、当該キャップリフト機構において、キャップの摺動が適正でないことは検出不可能である。
【0012】
上記問題を解決するため、当該キャップリフト機構にキャップの位置を検出するセンサを設けることが考えられる。しかし、キャップを記録ヘッドに密着する向きへ付勢するためにキャップに取り付けられているバネの荷重、各ギヤ間のバックラッシ、及び各部品の製造時に生じる大きさなどのばらつきなどによって、摺動されたキャップの位置に誤差が生じるおそれがある。この場合、センサでは、当該誤差を補正できない。
【0013】
当該誤差を補正するために、キャップを摺動させる駆動源の駆動量を検出するエンコーダを、当該駆動源または当該駆動源と連結されているギヤに設けることが考えられる。しかし、センサ及びエンコーダの両方を設けることは、装置のコストアップを招いてしまう。
【0014】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、装置のコストアップを少なく抑えつつ、キャップが記録ヘッドに密着していることを確実に検出することのできる手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(1) 本発明の画像記録装置は、液滴を吐出する記録ヘッドに圧接して吐出口を覆う第1位置、及び上記記録ヘッドから離反した第2位置に姿勢変化可能なキャップと、第1駆動源と、上記第1駆動源から駆動伝達される駆動ギヤと噛合し、全周に歯を有する第1ギヤと、上記第1ギヤと同軸に配置されて上記駆動ギヤと噛合可能に設けられており、上記第1ギヤと同じピッチの歯を有し、当該歯の一部が上記駆動ギヤと噛合しないように欠落された第2ギヤと、上記第1ギヤと上記第2ギヤとが圧接するようにスラスト方向へ付勢する付勢部材と、上記第2ギヤに対して円周方向へ遊びを有して係合された回転体を有し、当該回転体の回転方向の運動を上記キャップの姿勢変化の運動に変換するとともに、上記キャップを上記第1位置及び上記第2位置に保持可能なカム機構と、上記第1駆動源の駆動量を検出する第1検出部と、制御部と、を備える。上記第2ギヤは、上記カム機構が上記キャップを上記第1位置に保持している状態において、上記駆動ギヤと噛合しない。上記回転体は、上記遊びによって、上記カム機構が上記キャップを上記第1位置に保持している状態において、上記キャップを上記第1位置から上記第2位置へ移動させるための回転方向へ上記第2ギヤと個別に回転可能である。上記制御部は、上記キャップを姿勢変化させるために必要な大きさの第1電流を上記第1駆動源に流すことによって、上記キャップを上記第2位置から上記第1位置に姿勢変化させるキャッピング手段と、上記第1駆動源の駆動量が、上記キャップの上記第2位置から上記第1位置への移動に設計上必要な第1駆動量であると上記第1検出部により検出されたことを条件として、上記第1電流より小さく、かつ上記第1駆動源を無負荷で駆動するために必要な大きさの第2電流より大きい第3電流を、上記第1駆動源に流す電流供給手段と、上記第3電流が上記第1駆動源に流れる所定期間に、上記第1駆動源の駆動量が所定の第2駆動量以下であると上記第1検出部により検出されたことを条件として、上記キャッピング手段による上記キャップの姿勢変化が正常に実行されていないと判定する第1判定手段と、を備える。
【0016】
駆動ギヤと第2ギヤが噛合していない場合、第1駆動源は、駆動ギヤのみを駆動すればよい。しかし、駆動ギヤと第2ギヤが噛合している場合、第1駆動源は、駆動ギヤに加えて第2ギヤ及び第2ギヤと係合されたカム機構やキャップを駆動する必要がある。そのため、駆動ギヤと第2ギヤが噛合している場合の第1駆動源の負荷トルクは、駆動ギヤと第2ギヤが噛合していない場合の第1駆動源の負荷トルクより大きい。
【0017】
キャッピング手段によるキャップの第1位置への姿勢変化が正常に完了した場合、駆動ギヤは、第2ギヤの欠歯部分と対向しているため、第2ギヤと噛合していない。つまり、第1駆動源の負荷は駆動ギヤのみである。この状態において、電流供給手段により第1駆動源に第3電流が流された場合、第3電流は第2電流より大きいために、第1駆動源は駆動される。したがって、第1駆動源の駆動量が第2駆動量以下であることが第1検出部によって検出されない。
【0018】
一方、キャッピング手段によるキャップの第1位置への姿勢変化が正常に完了していない場合、駆動ギヤは第2ギヤと噛合している。つまり、第1駆動源の負荷は、駆動ギヤ、第2ギヤ、カム機構及びキャップである。この状態において、電流供給手段により第1駆動源に第3電流が流された場合、第3電流は第1電流より小さいために、第1駆動源は駆動されない。したがって、第1駆動源の駆動量が第2駆動量以下であることが第1検出部によって検出される。
【0019】
(2) 上記回転体は、上記第2ギヤと一体に回転する第3ギヤに対して円周方向へ遊びを有して係合された第4ギヤである。上記カム機構は、上記キャップを上記第1位置に保持するための第1カム面、上記キャップを上記第2位置に保持するための第2カム面、及び上記第1カム面と上記第2カム面とを連結する第3カム面を有し、上記キャップの移動方向と交差する方向へ移動することによって上記キャップを姿勢変化させるスライドカムと、上記第3ギヤと、上記第4ギヤと、上記スライドカムにおいて上記スライドカムの移動方向へ沿って設けられており、上記第3ギヤと噛合可能な第1ラックギヤと、上記第1ラックギヤに並んで設けられており、上記第4ギヤと噛合可能な第2ラックギヤと、を備える。上記第1ラックギヤは、上記スライドカムが上記キャップを上記第1位置に保持する第1移動端部、及び上記第2位置に保持する第2移動端部において、上記第3ギヤと噛合しない範囲であって、かつ少なくとも上記スライドカムが上記第3カム面によって上記キャップを支持する領域において上記第3ギヤと噛合する範囲に渡って設けられている。上記第2ラックギヤは、上記スライドカムが上記キャップを上記第1位置に保持する第1移動端部、及び上記第2位置に保持する第2移動端部に渡って上記第4ギヤと噛合するように設けられている。上記第2ギヤは、上記スライドカムが上記キャップを上記第1位置に保持する第1移動端部において上記駆動ギヤと噛合しない。上記第4ギヤは、上記遊びによって、上記スライドカムが上記キャップを上記第1位置に保持する第1移動端部において、上記スライドカムを上記第2移動端部へ移動させるための回転方向へ上記第3ギヤと個別に回転可能である。
【0020】
上述の構成では、第2ギヤは第1移動端部において駆動ギヤと噛合しない。つまり、第2ギヤが所定向きに回転した結果、第2ギヤの欠歯部分が駆動ギヤと対向すると、第2ギヤと駆動ギヤとの噛合が解除されるのである。この場合、第2ギヤはそれ以上所定向きへ回転しない。
【0021】
この状態において、第2ギヤが反対向きに回転するには、第2ギヤは再び駆動ギヤと噛合する必要がある。そのためには、第2ギヤが当該反対向きに回転する第1ギヤとの摩擦によって第1ギヤと一体に回転すればよい。しかし、第2ギヤが第1ギヤとの摩擦力によって回転するには、第2ギヤが他の負荷、例えば他のギヤから完全に切り離される必要がある。
【0022】
上述の構成では、第2ギヤと一体に回転する第3ギヤは、第1移動端部において、第1ラックギヤと噛合しない。また、第3ギヤは、第1移動端部において、第4ギヤとの係合部分に設けられた遊びによって、第4ギヤと個別に回転可能である。つまり、第1移動端部において、第2ギヤは、他の負荷であるスライドカムから完全に切り離される。よって、第1移動端部において、第2ギヤは、第1ギヤとの摩擦によって第1ギヤと一体に、当該反対向きに回転可能である。
【0023】
(3) 上記回転体は、スラスト方向の一方の面において、上記第2ギヤに対して円周方向へ遊びを有して係合され、スラスト方向の他方の面において、周方向へ連続するカム溝を有し、上記第2ギヤから駆動伝達されて回転される回転カムである。上記カム機構は、上記回転カムと、上記カム溝に係入された係合部を有し、当該係合部が上記回転カムの径方向へ移動することに基づいて上記キャップを姿勢変化させるカムフォロアと、を備える。上記第2ギヤは、上記カムフォロアが上記キャップを上記第1位置に保持している状態において、上記駆動ギヤと噛合しない。上記回転カムは、上記遊びによって、上記カムフォロアが上記キャップを上記第1位置に保持している状態において、上記キャップを上記第1位置から上記第2位置へ移動させるための回転方向へ上記第2ギヤと個別に回転可能である。
【0024】
既に述べたように、所定向きに回転することによって欠歯部分が駆動ギヤと対向している第2ギヤが、第1ギヤとの摩擦力によって所定向きと反対向きに回転するには、第2ギヤが他の負荷から完全に切り離される必要がある。
【0025】
上述の構成では、第2ギヤは、カムフォロアがキャップを第1位置に保持している状態において、回転カムとの係合部分に設けられた遊びによって、回転カムと個別に回転可能である。つまり、カムフォロアがキャップを第1位置に保持している状態において、第2ギヤは、他の負荷である回転カム、カムフォロア及びキャップから完全に切り離される。よって、カムフォロアがキャップを第1位置に保持している状態において、第2ギヤは、第1ギヤとの摩擦によって第1ギヤと一体に、当該反対向きに回転可能である。
【0026】
(4) 本発明の画像記録装置は、上記記録ヘッドを搭載して上記キャップの移動方向と交差する方向へ往復動される走査部と、上記走査部を移動させる第2駆動源と、上記走査部が往復動される方向における上記走査部の位置を検出する第2検出部と、上記第1位置の上記キャップが上記記録ヘッドに圧接された状態において、上記走査部の移動を制止するストッパと、を更に備える。上記制御部は、上記第3電流が上記第1駆動源に流れる所定期間に、上記第1駆動源の駆動量が所定の第2駆動量より大きいと上記第1検出部により検出されたことを条件として、上記第2駆動源を駆動させて上記走査部を移動させる移動指示手段と、上記移動指示手段による上記走査部の移動で上記走査部の位置が変わったことを上記第2検出部によって検出されたことを条件として、上記キャッピング手段による上記キャップの姿勢変化が正常に実行されていないと判定する第2判定手段と、を更に備える。
【0027】
第2ギヤの空転、或いは駆動ギヤ、第2ギヤまたはカム機構の故障などが発生すると、キャッピング手段が実行されたにもかかわらず、キャップが全く動かないおそれがある。
【0028】
キャッピング手段が実行されたにもかかわらずキャップが全く動かなかった場合、駆動ギヤは、キャッピング手段の実行完了後も第2ギヤの欠歯部分と対向しており、第2ギヤと噛合していない。そのため、電流供給手段により第3電流が流されると、第1駆動源は駆動される。つまり、キャップの姿勢変化が正常に実行されていないにもかかわらず、第1判定手段は、キャップの姿勢変化が正常に実行されていないとは判定しない。
【0029】
そこで、上述の構成では、移動指示手段によって走査部を移動させ、第2判定手段は、移動指示手段による指示で走査部が移動したか否かによって、キャップの姿勢変化が正常に実行されたか否かを判定する。上述の構成においては、キャップが第1位置に到達して記録ヘッドに圧接されている場合、記録ヘッドが搭載された走査部はストッパによって移動を制止されている。一方、キャップが全く動かずに第1位置に到達していない場合には、移動指示手段によって走査部は移動する。これにより、第2判定手段は、キャップの姿勢変化が正常に実行されていないと判定可能である。
【0030】
(5) 上記第1駆動量は、上記キャップが上記第2位置から上記第1位置へ移動するのに必要最小限の駆動量である第3駆動量と、上記第3駆動量分の駆動のあとに余分に駆動する駆動量である第4駆動量とが含まれている。上記電流供給手段は、上記第1駆動源が上記第3駆動量分の駆動のあとに上記第4駆動量分の駆動をするときに、上記第1電流を上記第3電流に切り換えて、上記第3電流を上記第1駆動源に流す。
【0031】
上述の構成においては、キャッピング手段が実行された際に、第1駆動源は設計上必要な駆動量である第3駆動量に加えて第4駆動量余分に駆動される。これは、キャップを記録ヘッドに確実に圧接させるためである。
【0032】
また、上述の構成においては、電流供給手段は、第1駆動源が第4駆動量分の駆動をするときに、第3電流を第1駆動源に流す。その後、第2判定手段による判定が実行される。つまり、電流供給手段及び第2判定手段は、キャッピング手段の実行中に並行して実行される。これにより、キャップの姿勢変化が正常に行われたか否かの判定に要する時間が短縮可能である。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、キャップが記録ヘッドに密着していることを検出するためにセンサを設ける必要がない。よって、上述したようなセンサ及びエンコーダ(第1検出部)の両方を設けることによる装置のコストアップを防止できる。
【0034】
また、本発明では、キャップを姿勢変化させるよりも少ない電流を流した場合に第1駆動源が駆動するか否かによって、キャップの姿勢変化が正常に完了したか否かを検出している。第1駆動源は、必要な電流より少ない電流で駆動することはない。よって、キャップが記録ヘッドに密着していることを確実に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、プリンタ部2の主要構成を示す平面図であり、主としてプリンタ部2の略中央から装置背面側の構成が示されている。
【図2】図2は、メンテナンス機構51の側面構造を模式的に示す側面図である。
【図3】図3は、キャップ55の位置を説明するための模式図であり、(A)にはキャップ55が第2位置に保持された状態が示されており、(B)にはキャップ55が第1位置と第2位置の間を移動中の状態が示されており、(C)にはキャップ55が第1位置に保持された状態が示されている。
【図4】図4は、カム機構60の各ギヤの配置を示す模式図である。
【図5】図5は、カム機構60の動作を説明するための模式図であり、(A)にはキャップ55が第1位置に保持された状態の図4におけるA−A及びB−Bの断面が示されており、(B)にはキャップ55が第1位置に保持された状態の図4のC−Cの断面が示されており、(C)にはキャップ55が第1位置に保持された状態の図4のD−Dの断面が示されており、(D)にはキャップ55が第1位置の保持を解除される直前の図4におけるA−A及びB−Bの断面が示されており、(E)にはキャップ55が第1位置の保持を解除される直前の図4のC−Cの断面が示されており、(F)にはキャップ55が第1位置の保持を解除される直前の図4のD−Dの断面が示されており、(G)にはキャップ55が第1位置と第2位置の間に位置されている状態の図4におけるA−A及びB−Bの断面が示されており、(H)にはキャップ55が第1位置と第2位置の間に位置されている状態の図4のC−Cの断面が示されており、(I)にはキャップ55が第1位置と第2位置の間に位置されている状態の図4のD−Dの断面が示されており、(J)にはキャップ55が第2位置に保持された状態の図4におけるA−A及びB−Bの断面が示されており、(K)にはキャップ55が第2位置に保持された状態の図4のC−Cの断面が示されており、(L)にはキャップ55が第2位置に保持された状態の図4のD−Dの断面が示されている。
【図6】図6は、カム機構60付近を示す斜視図であり、(A)にはカム機構60全体の外観が示されており、(B)にはカム機構60のうち第ピニオンギヤ16、第1ラックギヤ17、及び第2ラックギヤ18が示されている。
【図7】図7は、キャリッジ38及びキャップ55の側面図である。
【図8】図8は、制御部130の構成を示すブロック図である。
【図9】図9は、ASFモータ115の駆動量に対する駆動電流及びキャップ55の位置を示す特性図であり、(A)にはキャップ55が正常に姿勢変化した場合が示されており、(B)にはキャップ55が正常に姿勢変化しなかった場合が示されている。
【図10】図10は、制御部130によって行われるキャッピング制御及び判定制御の手順の一例を示すフローチャートである。
【図11】図11は、変形例におけるASFモータ115の駆動量に対する駆動電流及びキャップ55の位置を示す特性図であり、(A)にはキャップ55が正常に姿勢変化した場合が示されており、(B)にはキャップ55が正常に姿勢変化しなかった場合が示されている。
【図12】図12は、変形例におけるカム機構60の左側面図、平面図及び右側面図であり、(A)には左側面図が示されており、(B)には平面図が示されており、(C)には右側面図が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。また、以下の説明において、番号が付されていないものは、基本的に不図示である。
【0037】
[複合機]
本発明の実施形態に係る画像記録装置の一例としての複合機は、プリンタ部2(図1参照)とスキャナ部とを一体的に備えた多機能装置(MFP:Multi Function Product)であり、プリント機能、スキャナ機能、コピー機能、ファクシミリ機能等を有する。複合機のうちプリンタ部2が、本発明に係る画像記録装置に相当する。複合機は概ね直方体に形成されている。複合機の下部がプリンタ部2であり、上部がスキャナ部である。なお、プリント機能以外の機能は任意であり、例えば、本発明に係る画像記録装置が、プリント機能のみを有するプリンタとして実施されてもよい。
【0038】
プリンタ部2は、主にコンピュータ等の外部情報機器と接続されて、該コンピュータ等から送信された画像データや文書データを含む印刷データに基づいて、記録用紙に画像や文書を記録する。プリンタ部2は、正面に開口が形成されている。給紙トレイ及び排紙トレイは、開口の内側に上下2段に設けられている。給紙トレイに収容された記録用紙がプリンタ部2の内部へ給送されて、その記録用紙に所望の画像が記録されると、その後、画像記録済みの記録用紙が排紙トレイへ排出される。
【0039】
スキャナ部は、所謂フラットベッドスキャナとして構成されている。複合機の天板としての原稿カバーがスキャナ部の上部に開閉自在に設けられている。原稿カバーの下側に、図示しないプラテンガラス及びイメージセンサが設けられている。プラテンガラスに載置された原稿の画像がイメージセンサによって読み取られる。なお、本発明を実現するうえでスキャナ部は関係しないため、ここでは、スキャナ部の詳細な説明は省略される。
【0040】
複合機の正面上部には、プリンタ部2やスキャナ部を操作するための操作パネルが設けられている。操作パネルは、各種操作ボタンや液晶表示部から構成されている。複合機は、操作パネルからの操作指示に基づいて動作する。複合機が外部のコンピュータに接続されている場合には、該コンピュータからプリンタドライバ又はスキャナドライバを介して送信される指示に基づいても複合機が動作する。
【0041】
[プリンタ部2]
複合機の底側に給紙トレイが設けられている。給紙トレイの上側に給紙ローラが設けられている。給紙ローラは、一端が基軸に回動可能に軸支された給紙アームの先端に回転可能に軸支されている。給紙ローラは、プリンタ部2の内部に設けられたASFモータ115(図8参照)を駆動源としてギヤ列を介して回転駆動される。なお、ASFモータ115は、図1において、プラテン42の左端部の裏側に配置されている。
【0042】
給紙トレイの奥側に傾斜板が設けられている。給紙ローラが給紙トレイ上の記録用紙に圧接された状態で、給紙ローラが回転されると、給紙ローラのローラ面と記録用紙との間の摩擦力により、最上位置の記録用紙が傾斜板側へ送り出される。記録用紙は、その先端が傾斜板に当接して上方へ案内される。傾斜板から記録用紙を搬送すべき経路に沿って、用紙搬送路が設けられている。用紙搬送路は、傾斜板から上方へ向けられ、複合機の正面側へ曲げられてから、複合機の背面側から正面側へと延ばされて、画像記録ユニット24(図1参照)の下部を通って、排紙トレイまで延設されている。したがって、給紙トレイに収容された記録用紙は、用紙搬送路により下方から上方へUターンするように案内されて画像記録ユニット24に至り、画像記録ユニット24により画像記録が行われた後、排紙トレイに排出される。
【0043】
用紙搬送路には、画像記録ユニット24が配置されている。図1及び図2に示されるように、画像記録ユニット24は、インクジェット方式の記録ヘッド39(本発明の記録ヘッドの一例、図2参照)と、記録ヘッド39を搭載するキャリッジ38(本発明の走査部の一例)とを備えている。キャリッジ38は、記録用紙の搬送方向と直交する主走査方向(図1の左右方向)へスライド可能に支持されている。なお、後述するキャップ55は図1の上下方向に移動する。つまり、キャリッジ38はキャップ55の移動方向と交差する方向へ往復動される。
【0044】
記録ヘッド39は、キャリッジ38の底面に配置されており、記録ヘッド39のノズル40(本発明の吐出口の一例)がキャリッジ38の下面に露出されている。複合機の内部に配置されたインクカートリッジから各色のインクが記録ヘッド39へ供給される。キャリッジ38が往復してスライドされる間に、記録ヘッド39のノズル40から各色インクが微小なインク滴(本発明の液滴の一例)として選択的に吐出される。これにより、プラテン42上を搬送される記録用紙に画像記録が行われる。
【0045】
図1に示されるように、用紙搬送路の上側において一対のガイドレール43,44が配置されている。ガイドレール43,44は、記録用紙の搬送方向(図1の上側から下側方向)に所定距離を隔てられて対向しており、且つ記録用紙の搬送方向と直交する主走査方向(図1の左右方向)に延設されている。ガイドレール43,44は、プリンタ部2の筐体内に設けられ、プリンタ部2を構成する各部材を支持するフレームの一部を構成している。キャリッジ38は、ガイドレール43,44を跨ぐようにして上記主走査方向に摺動可能に載置されている。
【0046】
ガイドレール43は、記録用紙の搬送方向上流側に配設されている。ガイドレール43は、用紙搬送路の幅方向(図1の左右方向)の長さがキャリッジ38の往復動範囲より長い平板状のものである。ガイドレール44は、記録用紙の搬送方向下流側に配設されている。ガイドレール44は、用紙搬送路の幅方向の長さがガイドレール43とほぼ同じ長さの平板状のものである。キャリッジ38の搬送方向上流側の端部がガイドレール43に載置され、キャリッジ38の搬送方向下流側の端部がガイドレール44に載置されている。キャリッジ38は、各ガイドレール43,44の長手方向に摺動される。
【0047】
ガイドレール44の搬送方向上流側の縁部45は、上方へ向かって略直角に曲折されている。ガイドレール43,44に担持されたキャリッジ38は、縁部45をローラ対等の狭持部材により摺動可能に狭持している。これにより、キャリッジ38は、記録用紙の搬送方向に対して位置決めされ、且つ、記録用紙の搬送方向と直交する方向に摺動することができる。
【0048】
ガイドレール44の上面には、ベルト駆動伝達機構46が配設されている。ベルト駆動伝達機構46は、駆動プーリ47と、従動プーリ48と、無端環状のベルト49とを有する。
【0049】
駆動プーリ47及び従動プーリ48は、用紙搬送路の幅方向の両端付近にそれぞれ設けられている。駆動プーリ47と従動プーリ48の間に、無端環状のベルト49が張架されている。駆動プーリ47の軸に、プリンタ部2の内部に設けられた本発明の第2駆動源の一例であるキャリッジモータ(以下、CRモータ96と記す。図8参照)の駆動軸が連結されている。CRモータ96の回転駆動力が駆動プーリ47に伝達されると、駆動プーリ47の回転によりベルト49が周運動する。なお、ベルト49は無端環状のもののほか、有端のベルトの両端部をキャリッジ38に固着するものも採用され得る。
【0050】
キャリッジ38は、その底面側においてベルト49に連結されている。したがって、ベルト49の周運動に基づいて、キャリッジ38が縁部45を基準としてガイドレール43,44上をスライドする。つまり、CRモータ96はキャリッジを移動させる。このようなキャリッジ38に記録ヘッド39が搭載されて、記録ヘッド39が、用紙搬送路の幅方向を主走査方向として往復動される。
【0051】
ガイドレール44には、エンコーダストリップ50が配設されている。エンコーダストリップ50は、透明な樹脂からなる帯状のものである。ガイドレール44の幅方向(キャリッジ38のスライド方向)の両端には、その上面から起立するように一対の支持用リブ33,34が形成されている。エンコーダストリップ50は、その両端部が支持用リブ33,34に係止されて、縁部45に沿って架設されている。なお、エンコーダストリップ50はバネなどによって張力が付与されている。
【0052】
エンコーダストリップ50には、光を透過させる透光部と光を遮断する遮光部とが、長手方向に等ピッチで交互に配置されたパターンが記されている。キャリッジ38の上面のエンコーダストリップ50に対応する位置には、透過型センサである光学センサ35が設けられている。エンコーダストリップ50と光学センサ35とによって、キャリッジ38の位置を検出するためのリニアエンコーダ(本発明の第2検出部の一例)が構成される。複合機の制御部130(本発明の制御部の一例、図8参照)には、光学センサ35からの検出信号が入力される。これにより、制御部130はキャリッジ38の位置を認識する。制御部130は、キャリッジ38の位置情報に基づいて、CRモータ96やASFモータ115を制御する。以上より、リニアエンコーダによって、キャリッジ38が往復動される方向におけるキャリッジ38の位置が検出される。
【0053】
図1及び図2に示されるように、用紙搬送路の下側には、記録ヘッド39と対向してプラテン42が配設されている。プラテン42は、キャリッジ38のスライド範囲のうち、記録用紙が通過する中央部分に渡って配設されている。プラテン42の幅は、搬送可能な記録用紙の最大幅より十分に大きいものであり、記録用紙の両端は常にプラテン42の上を通過する。
【0054】
図1に示されるように、記録用紙が通過しない範囲、すなわち記録ヘッド39による画像記録領域の外側には、メンテナンス機構51が配設されている。具体的には、メンテナンス機構51は、図1においてプラテン42の右端部に配置されている。メンテナンス機構51は、記録ヘッド39のノズル40(図2参照)内のインクの乾燥を防止したり、ノズル40から気泡や異物を吸引除去するものである。本実施形態では、画像記録を行わない場合は、キャリッジ38はメンテナンス機構51上に配置される。つまり、キャリッジ38は、次の画像記録指示があるまで、メンテナンス機構51上で待機する。なお、メンテナンス機構51については、後段で詳細に説明する。
【0055】
画像記録ユニット24の上流側には、搬送ローラとピンチローラとを有する一対の搬送ローラ対が設けられている。画像記録ユニット24の下流側には、排紙ローラと該排紙ローラの上方に設けられた拍車とを有する一対の排出ローラ対が設けられている。搬送ローラは、該搬送ローラの軸方向の一端にギヤなどを介して連結されたASFモータ115から駆動力が伝達されて、所定の改行幅で間欠駆動される。なお、搬送ローラは、ASFモータ115とは別に設けられたモータからの駆動力で駆動されてもよい。
【0056】
搬送ローラと排紙ローラとはギアなどの伝達機構により連結されており、該伝達機構を介して搬送ローラから駆動力が排紙ローラに伝達される。用紙搬送路を搬送されている記録用紙は、搬送ローラ対によってプラテン42上へ搬送される。そして、プラテン42上で画像が記録された記録済みの記録用紙は、排出ローラ対によって排紙トレイへ搬送される。
【0057】
[第1検出部]
搬送ローラには、エンコーダディスク及び光学センサ(リニアエンコーダに設けられている光学センサとは異なるセンサである。)で構成されるロータリーエンコーダ(本発明の第1検出部の一例)が設けられている。エンコーダディスクは、搬送ローラと共に回転する透明な円盤状のものであり、放射状のマークが所定ピッチで記されている。エンコーダディスクは、搬送ローラの軸に固定されており、搬送ローラと共に回転する。光学センサは、搬送ローラと近接する位置に配置されている。
【0058】
光学センサは、発光素子と受光素子との間の空間にエンコーダディスクの周縁が位置するように配置されている。受光素子で光が受光されると、受光した光の輝度に応じたレベルのセンサ信号(例えば、輝度に応じた電気信号)が生成される。発光素子と受光素子との間にマークが位置していない状態では、LOWレベルのセンサ信号が生成される。発光素子と受光素子との間にマークが位置する状態では、HIレベルのセンサ信号が生成される。
【0059】
LOWレベルとHIレベルの切換回数によってASFモータ115の駆動量が算出可能である。また、上述したように、搬送ローラはASFモータ115とギヤなどを介して連結されていることから、搬送ローラの駆動量に基づいてASFモータ115の駆動量は容易に算出可能である。したがって、ロータリーエンコーダによって、ASFモータ115の駆動量が検出可能である。
【0060】
制御部130には、光学センサで生成されたセンサ信号が入力される。これにより、制御部130はASFモータ115の駆動量を認識する。
【0061】
[メンテナンス機構51]
図1に示されるように、メンテナンス機構51は、記録ヘッド39による画像記録領域の外側に配設されている。図2に示されるように、メンテナンス機構51は、キャップ55(本発明のキャップの一例)と、フレーム57と、インク排出部63と、カム機構60などにより構成されている。
【0062】
キャップ55は、キャリッジ38がメンテナンス機構51の直上に設定されたキャッピング位置(図2において二点鎖線で示される位置)に移動された際に、記録ヘッド39のノズル40を覆うためのものである。本実施形態では、キャップ55は、その下部とフレーム57の底面との間に設けられたコイルバネ65を介して上下方向へ弾性的に支持されている。
【0063】
コイルバネ65が自然長である場合、つまりキャップ55に外力が加えられていない状態では、キャップ55は記録ヘッド39から離反した位置(本発明の第2位置に相当)に配置されている(図2及び図3(A)参照)。キャップ55が、後述するスライドカム11によって上向きに押されると、コイルバネ65が伸びる。このとき、コイルバネ65は、圧縮方向にバネ力を発生させて、キャップ55を下向きへ付勢する。キャップ55は、スライドカム11によって上向きに押されることによって、上記第2位置から記録ヘッド39を圧接してノズル40を覆う位置(本発明の第1位置に相当、図3(C)参照)に姿勢変化される。なお、キャップ55の姿勢変化については後段で更に詳細に説明する。
【0064】
フレーム57の下側にインク排出部63が取り付けられている。インク排出部63は、チューブ継手64を有する。チューブ継手64は、キャップ55に接続されている。チューブ継手64にチューブの一端が接続されており、チューブの他端は、ポンプに接続されている。キャップ55が第1位置に配置された状態、つまりキャップ55がノズル40を覆った状態でポンプが駆動すると、ノズル40内のインクはポンプによって強制的に吸引されて廃インクトレイへ排出される。このような動作はパージ処理と呼ばれる。
【0065】
[ストッパ]
図2、図6及び図7に示されるように、キャップ55に対して突出する凸部58が設けられている。図2に示されるように、キャリッジ38の下面における凸部58に対向する位置には凹部59が設けられている。図2に示されるように、凹部59の形状は、凸部58の形状と相対する形状であって、凸部58よりも大きい形状である。
【0066】
図7に示されるように、キャップ55が第1位置に姿勢変化して、記録ヘッド39を圧接した場合、凸部58と凹部59は嵌合される。凸部58と凹部59が嵌合された状態において、キャリッジの主走査方向への移動は、凹部59の側面が凸部58に当たることによって制止される。よって、キャリッジ38は、キャップ55が第1位置に位置付けられたときには移動されない。以上より、凸部58及び凹部59は、第1位置のキャップ55が記録ヘッド39に圧接された状態において、キャリッジ38の移動を制止する本発明のストッパの一例である。
【0067】
[カム機構60]
以下、図2〜図6に基づいて、カム機構60(本発明のカム機構の一例)について説明する。ここで、図4は、図3の紙面右側から左側を見た場合のカム機構60の断面図であり、図5(A)、(D)、(G)、(J)の上段は、図4のA−Aの断面図であり、図5(A)、(D)、(G)、(J)の下段は、図4のB−Bの断面図であり、図5(B)、(E)、(H)、(K)は、図4のC−Cの断面図であり、図5(C)、(F)、(I)、(L)は、図4のD−Dの断面図であり、図6(A)は、カム機構60付近の斜視図であり、図6(B)は、カム機構60の第3ピニオンギヤ16、第1ラックギヤ17、及び第2ラックギヤ18以外を省略した場合のカム機構60付近の斜視図である。
【0068】
図2、図3及び図6に示されるように、複合機は、第1ピニオンギヤ12(本発明の第1ギヤの一例)と、欠歯ギヤ13(本発明の第2ギヤの一例)と、コイルバネ14(本発明の付勢部材の一例)とを備えている。
【0069】
図2〜図6に示されるように、カム機構60は、キャップ55の下側に設けられている。カム機構60は、スライドカム11(本発明のスライドカムの一例)と、第2ピニオンギヤ15(本発明の第3ギヤの一例)と、第3ピニオンギヤ16(本発明の回転体の一例である第4ギヤの一例)と、第1ラックギヤ17(本発明の第1ラックギヤの一例)と、第2ラックギヤ18(本発明の第2ラックギヤの一例)と、により構成されている。また、以下で説明するように、カム機構60は、スライドカム11によって、キャップ55を第1位置及び第2位置に保持可能である。
【0070】
スライドカム11は、キャリッジ38のスライド方向と同方向、つまりキャップ55の移動方向と交差する方向へ移動可能に支持されている。スライドカム11は、キャップ55の下面に当接されるガイド面を有する。図5に示されるように、ガイド面は、各々が異なる高さであって高位置の第1ガイド面111(本発明の第1カム面に相当)及び低位置の第2ガイド面112(本発明の第2カム面に相当)と、第1ガイド面と第2ガイド面を連結する傾斜面113(本発明の第3カム面に相当)と、により構成されている。
【0071】
図3(A)に示されるように、第2ガイド面112のみがキャップ55の下面とフレーム57の上面との間隙に入り込み、第2ガイド面112とキャップ55の下面が当接している場合、キャップ55は第2位置に保持される。つまり、第2ガイド面112は、キャップ55を第2位置に保持する。
【0072】
スライドカム11が駆動源(後述するように本実施形態ではASFモータ115)から駆動伝達されて図2及び図3の紙面右側へ摺動すると、図3(B)に示されるように、第2ガイド面112に加えて傾斜面113がキャップ55とフレーム57の上面との間隙に入り込む。これにより、第2ガイド面112がキャップ55の下面から離れ、傾斜面113がキャップ55の下面に当接する。その結果、キャップ55は、傾斜面113の高さに応じて、第2位置から第1位置へ向かって移動される。
【0073】
スライドカム11が駆動源から駆動伝達されて更に図2及び図3の紙面右側へ摺動すると、図3(C)に示されるように、第2ガイド面112及び傾斜面113に加えて第1ガイド面111がキャップ55の下面とフレーム57の上面との間隙に入り込む。これにより、傾斜面113がキャップ55の下面から離れ、第1ガイド面111がキャップ55の下面に当接する。その結果、キャップ55は第1位置に保持される。つまり、第1ガイド面111は、キャップを第1位置に保持する。以上より、スライドカム11は、移動することによってキャップ55を姿勢変化させる。
【0074】
第1ピニオンギヤ12は全周に歯を有するギヤである。第1ピニオンギヤ12は、本実施形態ではASFモータ115(本発明の第1駆動源の一例)から駆動伝達機構を介して駆動力が伝達されて回転される。駆動伝達機構は、少なくとも1つの遊星ギヤなどでなる中間ギヤで構成されており、ASFモータ115の駆動力は当該中間ギヤを介して第1ピニオンギヤ12へ伝達される。駆動伝達機構を構成する中間ギヤのうち、第1ピニオンギヤ12と噛合される中間ギヤ19(図4参照)は、本発明の駆動ギヤの一例である。なお、本実施形態においては、ASFモータ115が本発明の駆動源の一例であるが、他のモータであってもよい。
【0075】
図4に示されるように、欠歯ギヤ13は、第1ピニオンギヤ12と共に、支軸61に軸支されている。また、欠歯ギヤ13も第1ピニオンギヤ12と同様に、ASFモータ115から中間ギヤ19を介して駆動力が伝達されて回転される。また、欠歯ギヤ13は、第1ピニオンギヤ12と同じピッチの歯を有している。以上より、欠歯ギヤ13は、第1ピニオンギヤ12と同軸に配置されて中間ギヤ19と噛合可能に設けられている。
【0076】
また、支軸61に沿って、コイルバネ14が設けられている。具体的には、支軸61はコイルバネ14の中心を貫くように配置されている。コイルバネ14は、欠歯ギヤ13を、図4の紙面右側、つまり第1ピニオンギヤ12を押す向きに付勢する。つまり、コイルバネ14は、第1ピニオンギヤ12と欠歯ギヤ13とが圧接するようにスラスト方向へ付勢する。これにより、欠歯ギヤ13は、ASFモータ115からの駆動力の伝達の他に、第1ピニオンギヤ12との間に生じる摩擦力によって、第1ピニオンギヤ12の回転に伴って回転し得る。
【0077】
図5(B)に示されるように、欠歯ギヤ13の外周は、ギヤの歯が一部範囲にわたって欠落されている。つまり、欠歯ギヤ13には、歯が形成されている有歯部131と、歯が形成されていない欠歯部132が設けられている。キャップ55が第1位置と第2位置の間に位置される場合(図5(G)参照)、有歯部131が中間ギヤ19と対向する(図5(H)参照)。このとき、欠歯ギヤ13と中間ギヤ19が噛合し、駆動力が中間ギヤ19から欠歯ギヤ13に伝達され、欠歯ギヤ13が回転する。一方、キャップ55が第1位置に位置される場合(図5(A)参照)、及び、キャップ55が第2位置に位置される場合(図5(J)参照)、欠歯部132が中間ギヤ19と対向する(図5(B)、(K)参照)。このとき、欠歯ギヤ13と中間ギヤ19は噛合せず、駆動力が中間ギヤ19から欠歯ギヤ13に伝達されない。したがって、欠歯ギヤ13は中間ギヤ19からの駆動力の伝達によっては回転しない。
【0078】
図4に示されるように、第2ピニオンギヤ15は、第1ピニオンギヤ12及び欠歯ギヤ13と共に、支軸61に軸支されている。第2ピニオンギヤ15は、スラスト方向の一方の面を欠歯ギヤ13に固定されており、欠歯ギヤ13と一体に回転する。第2ピニオンギヤ15には、欠歯ギヤ13と固定されている面と反対側の面に凸部151が設けられている。凸部151は、後述する第3ピニオンギヤの凹部161に嵌め込まれており、凹部161に沿って摺動する。
【0079】
図4に示されるように、第3ピニオンギヤ16は、第1ピニオンギヤ12、欠歯ギヤ13及び第2ピニオンギヤ15と共に、支軸61に軸支されている。第3ピニオンギヤ16には、スラスト方向の面のうち、第2ピニオンギヤ15と当接する側の面に凹部161が設けられている。図5(C)に示されるように、凹部161は、欠歯ギヤ13の円周方向に所定角度φに亘り、且つ直径方向に所定の幅dを有している。
【0080】
凸部151が凹部161の円周方向の端部に当接している場合に、凸部151が凹部161の端部を押す向きに第2ピニオンギヤ15が回転すれば、第3ピニオンギヤ16は第2ピニオンギヤ15と一体に回転する。一方、凸部151が凹部161の円周方向の端部に当接していない場合、又は、当接していても凸部151が凹部161の端部を押す向きと反対向きに第2ピニオンギヤ15が回転した場合には、第2ピニオンギヤ15が回転しても、凸部151と凹部161は相対移動するため、第3ピニオンギヤ16は回転しない。つまり、第3ピニオンギヤ16は、第2ピニオンギヤ15及び第2ピニオンギヤ15と一体に回転する欠歯ギヤ13に対して円周方向に遊びを有して係合されている。
【0081】
図4〜図6に示されるように、第1ラックギヤ17は、スライドカム11の第2ガイド面112に、スライドカム11の移動方向に沿って設けられている。第1ラックギヤ17は第2ピニオンギヤ15と対向する位置に設けられており、第2ピニオンギヤ15と噛合可能である。
【0082】
第1ラックギヤ17は、その両端の所定範囲に亘ってギヤの歯が欠落されている。つまり、第1ラックギヤ17は、歯が形成されている有歯部171と、傾斜面113の側で歯が形成されていない第1欠歯部172と、傾斜面113と反対側で歯が形成されていない第2欠歯部173とが設けられている。
【0083】
キャップ55が第1位置に保持される場合(図3(C)及び図5(A)参照)、第1欠歯部172と第2ピニオンギヤ15が対向する。このとき、第1ラックギヤ17と第2ピニオンギヤ15は噛合せず、スライドカム11は第2ピニオンギヤ15からの駆動力の伝達によっては移動しない。このときのスライドカム11の位置が本発明の第1移動端部に相当する。
【0084】
キャップ55が第2位置に保持される場合(図3(A)及び図5(J)参照)、第2欠歯部173と第2ピニオンギヤ15が対向する。このとき、第1ラックギヤ17と第2ピニオンギヤ15は噛合せず、スライドカム11は第2ピニオンギヤ15からの駆動力の伝達によっては移動しない。このときのスライドカム11の位置が本発明の第2移動端部に相当する。
【0085】
以上より、第1ラックギヤ17は、第1移動端部及び第2移動端部において、第2ピニオンギヤ15と噛合しない範囲に設けられている。
【0086】
キャップ55が第1位置と第2位置の間に位置される場合(図3(B)及び図5(G)参照)、有歯部171と第2ピニオンギヤ15が対向する。このとき、第1ラックギヤ17と第2ピニオンギヤ15は噛合するので、第2ピニオンギヤ15に駆動力が伝達されていれば、スライドカム11は第2ピニオンギヤ15からの駆動力の伝達によって移動する。また、キャップ55が、傾斜面113の近傍の所定範囲において第1ガイド面111に支持されている場合も(図5(D)参照)、有歯部171と第2ピニオンギヤ15は対向する。このときも、第1ラックギヤ17と第2ピニオンギヤ15は噛合するので、第2ピニオンギヤ15に駆動力が伝達されていれば、スライドカム11は第2ピニオンギヤ15からの駆動力の伝達によって移動する。
【0087】
以上より、第1ラックギヤ17は、少なくともスライドカム11が傾斜面113によってキャップ55を支持する領域において第2ピニオンギヤ15と噛合する範囲に渡って設けられている。
【0088】
図4〜図6に示すように、第2ラックギヤ18は、スライドカム11の第2ガイド面112に、スライドカム11の移動方向に沿って、第1ラックギヤ17に並んで設けられている。第2ラックギヤ18は、第3ピニオンギヤ16と対向する位置に設けられており、第3ピニオンギヤ16と噛合可能である。
【0089】
第2ラックギヤ18は、第1ラックギヤ17の有歯部171に隣接する部分、第1欠歯部172に隣接する部分、及び第2欠歯部173に隣接する部分の全てに歯が設けられている。これにより、キャップ55が第1位置、第2位置、及び第1位置と第2位置の間の何れの位置であっても、第2ラックギヤ18は第3ピニオンギヤ16と噛合する。換言すると、第2ラックギヤ18は、第1移動端部及び第2移動端部に渡って第3ピニオンギヤ16と噛合するように設けられている。以上より、第3ピニオンギヤ16に駆動力が伝達されていれば、スライドカム11は第3ピニオンギヤ16の駆動力の伝達によって移動する。
【0090】
[カム機構60の動作]
以下、図5に基づいて、カム機構60の移動、及びキャップ55の姿勢変化について説明する。
【0091】
まず、キャップ55の第1位置から第2位置に伴うカム機構60の移動について説明する。図5(A)〜(C)に示されるように、キャップ55が、スライドカム11の第1ガイド面111、つまりカム機構60によって第1位置に保持されているとき、カム機構10は以下のような状態である。欠歯ギヤ13の欠歯部132が中間ギヤ19と対向しているため、欠歯ギヤ13と中間ギヤ19は噛合していない(図5(B)参照)。つまり、ASFモータ115はカム機構60と切り離されている。第2ピニオンギヤ15は第1ラックギヤ17の第1欠歯部172と対向している(図5(A)参照)。第2ピニオンギヤ15の凸部151は、第3ピニオンギヤ16の凹部161の左端に当接している(図5(C)参照)。
【0092】
図4に示されるように、ASFモータ115からの駆動力が中間ギヤ19を介して第1ピニオンギヤ12に伝達されて、第1ピニオンギヤ12が図5(B)に示される一点鎖線矢印の向きに回転すると、カム機構60は以下に説明する状態となる。欠歯ギヤ13は、コイルバネ14によって第1ピニオンギヤ12を押す向きに付勢されているため、第1ピニオンギヤ12の回転に伴って第1ピニオンギヤ12の回転と同じ向き、つまり図5(B)に示される一点鎖線矢印の向きに回転する。これにより、欠歯ギヤ13と中間ギヤ19は噛合し、欠歯ギヤ13も中間ギヤ19から駆動力を伝達される(図5(E)参照)。
【0093】
欠歯ギヤ13の回転により、第2ピニオンギヤ15が欠歯ギヤ13と一体に回転する。しかし、図5(A)に示されるように、第2ピニオンギヤ15は第1ラックギヤ17の第1欠歯部172と対向しており、第1ラックギヤ17と噛合していないため、第2ピニオンギヤ15が回転してもスライドカム11は移動しない。
【0094】
第2ピニオンギヤ15の回転は欠歯ギヤ13の回転と同じ向き、つまり図5(C)に示される一点鎖線矢印の向きであるため、第2ピニオンギヤ15が第3ピニオンギヤ16に対して相対移動するのみで第3ピニオンギヤ16は回転しない。具体的には、第2ピニオンギヤ15の凸部151が第3ピニオンギヤ16の凹部161の右端に向かって移動する。
【0095】
つまり、第3ピニオンギヤ16は、第2ピニオンギヤ15との間に有する遊びによって、第1移動端部において、スライドカム11を第2移動端部へ移動させるための回転方向へ第2ピニオンギヤ15と個別に回転可能である。換言すると、カム機構60がキャップ55を第1位置に保持している状態において、第3ピニオンギヤ16は第2ピニオンギヤ15と個別に、上記回転方向へ回転可能である。
【0096】
第2ピニオンギヤ15の凸部151が第3ピニオンギヤ16の凹部161の右端に到達すると(図5(F)参照)、第3ピニオンギヤ16が第2ピニオンギヤ15と一体に回転する。第3ピニオンギヤ16は第2ラックギヤ18と噛合しているため、スライドカム11が図5(A)の実線矢印の向きに移動を開始する。
【0097】
図5(D)に示されるように、スライドカム11が所定量移動すると、第2ピニオンギヤ15は第1ラックギヤ17の第1欠歯部172と対向する状態から有歯部171と対向する状態へ移行する。これにより、第2ピニオンギヤ15と第1ラックギヤ17は噛合する。その後、スライドカム11が更に所定量移動すると、キャップ55は第1ガイド面111に支持された状態から傾斜面113に支持された状態に移行する。つまり、キャップ55が、スライドカム11の第1ガイド面111に支持された状態から傾斜面113に支持された状態に移行する前に、第2ピニオンギヤ15と第1ラックギヤ17は噛合する。この条件を満たすように、カム機構60の構造が決定される。具体的には、第1欠歯部172の長さが、第1ガイド面111に支持されたキャップ55が傾斜面113に支持された状態に移行するまでに必要なスライドカム11の移動量より短く構成される。
【0098】
第2ピニオンギヤ15及び第1ラックギヤ17の噛合後、キャップ55がスライドカム11の傾斜面113に支持された状態に移行する(図5(G)〜(I)参照)。スライドカム11は、欠歯ギヤ13の欠歯部132と中間ギヤ19が対向することによって、欠歯ギヤ13と中間ギヤ19が噛合しなくなるまで、キャップ55を第1位置から第2位置へ下降させる向きへの移動を継続する。欠歯ギヤ13と中間ギヤ19が噛合しなくなると(図5(K)参照)、つまりキャップ55が第2位置に到達するとスライドカム11は停止する(図5(J)参照)。このときの第2ピニオンギヤ15の状態が図5(L)に示される。
【0099】
以上説明したとおり、第3ピニオンギヤ16が回転すると、スライドカム11が移動して、キャップ55が第2位置から第1位置へ姿勢変化する。つまり、カム機構60は、第3ピニオンギヤ16の回転方向の運動をキャップ55の姿勢変化の運動に変換する。
【0100】
以上、キャップ55の第1位置から第2位置への姿勢変化について説明したが、キャップ55の第2位置から第1位置への姿勢変化は、各ギヤの回転が逆向きである以外、第1位置から第2位置への姿勢変化と同様の手順で実行される。
【0101】
なお、キャップ55の第2位置から第1位置への姿勢変化、及び第1位置から第2位置への姿勢変化は、以下で説明する制御部130がASFモータ115を制御することによって実行される。
【0102】
[制御部130]
以下、図8が参照されて、制御部130の概略構成が説明される。制御部130は、複合機の全体動作を制御するものであり、CPU141、ROM142、RAM143、EEPROM144、ASIC145を主とするマイクロコンピュータとして構成されている。これらは内部バス147によって接続されている。
【0103】
ROM142には、CPU141が複合機の各種動作を制御するためのプログラムなどが格納されている。RAM143は、CPU141が上記プログラムを実行する際に用いるデータや信号等を一時的に記憶する領域などとして使用される。EEPROM144には、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ等が格納される。
【0104】
ASIC145には、ASFモータ115及びCRモータ96などが接続されている。ASIC145には、ASFモータ115及びCRモータ96などを制御する駆動回路が組み込まれている。例えば、CPU141から上記駆動回路にASFモータ115を回転させるための駆動信号が入力されると、駆動信号に応じた駆動電流(後述する第1電流または第3電流)が駆動回路からASFモータ115へ出力される。これにより、ASFモータ115が所定の回転速度で正回転又は逆回転する。なお、CRモータ96を駆動させる場合もASFモータ115の場合と同様、CRモータ96を回転させるための駆動信号に応じた電流が駆動回路からCRモータ96へ出力される。
【0105】
[キャッピング制御及び判定制御]
上述の如く構成されたプリンタ部11においては、キャップ55を第2位置から第1位置に姿勢変化させるキャッピング制御、及びキャッピング制御が適正に行われたか否か、つまりキャッピング制御によってキャップ55が第1位置に到達しているか否かを判定する判定制御が、制御部130によって行われる。以下、図9及び図10に基づいて、キャッピング制御及び判定制御の処理手順について説明する。キャッピング制御及び判定制御は、例えば、複合機のユーザによる操作パネル4の操作によって、画像記録ユニット24に対するクリーニング動作が指示された場合に実行される処理である。なお、以下で説明する各処理は、特に記載がある場合を除いて制御部130によって行われる。
【0106】
初めに、判定制御によってキャッピング制御が適正に行われていないと判定された回数が保持されるフラグがリセットされ、ゼロにセットされる(S10)。
【0107】
以下、キャッピング制御について説明する。CPU141から駆動回路に駆動信号が入力され、第1電流I1(本発明の第1電流に相当)がASFモータ115に供給される(S20)。ここで、第1電流I1は、キャップ55を姿勢変化させるために必要な大きさの電流である(図9参照)。詳細には、第1電流I1は、キャップ55を姿勢変化させるために最低限必要な大きさの第4電流I4よりも予め設定された所定量だけ大きい電流である。駆動電流が変動しても、確実にASFモータ115を駆動させるために、第1電流I1は第4電流I4よりも大きく設定されているのである。
【0108】
ASFモータ115は第1電流I1が供給されることによって駆動される。欠歯ギヤ13の空転などによる異常がない限り、キャップ55は、ASFモータ115の駆動によって、第2位置H2から第1位置H1に姿勢変化する。以上の処理が、第1電流I1をASFモータ115に流すことによって、キャップ55を第2位置H2から第1位置H1に姿勢変化させるキャッピング制御(本発明のキャッピング手段に相当)である。
【0109】
以下、判定制御について説明する。ステップS20においてASFモータ115が駆動されると、ロータリーエンコーダから送られてくるセンサ信号に基づいて、ASFモータ115の駆動量が算出される。ここで、駆動量は、上記センサ信号のパルス数で表される。パルス数が多い程、ASFモータ115の駆動量は大きい。算出されたASFモータ115の駆動量が、第1駆動量P1(本発明の第1駆動量に相当)以上である場合(S30:Yes)、ASFモータ115に供給される電流が、第1電流I1から第3電流I3(本発明の第3電流に相当)に切り換えられる(S40)。
【0110】
ここで、第1駆動量P1は、キャップ55の第2位置H2から第1位置H1への移動に設計上必要な駆動量である(図9参照)。第1駆動量P1は、第2位置H2と第1位置H1の距離、スライドカム11の構成、及びASFモータ115とキャップ55の間に存在するギヤの数、大きさ及び歯数などによって決定される。
【0111】
また、第3電流I3は、第1電流I1より小さく、かつASFモータ115を無負荷で駆動するために必要な大きさの第2電流I2より大きい電流である(図9参照)。第2電流I2は、他のギヤなどと一切連結されていないASFモータ115を駆動させるために必要な最小限の電流である。
【0112】
なお、図9においては、第1電流I1から第3電流I3に切り換えられるタイミングが、ASFモータ115の駆動量が第1駆動量P1となってから遅延している。これは、搬送ローラやASFモータ115などの部品ばらつきによるものである。
【0113】
一方、算出されたASFモータ115の駆動量が、第1駆動量P1より小さい場合(S30:No)、ASFモータ115の駆動量が第1駆動量P1以上となるまで、第1電流I1がASFモータ115に供給される(S20)。
【0114】
第3電流I3は、ASFモータ115に所定期間T1(図9参照)供給される。ここで、所定期間T1は、例えば、第3電流I3によってASFモータ115が駆動すると仮定した場合に、当該駆動の有無がロータリーエンコーダによって確実に検出可能なだけ、ASFモータ115を駆動させることができる期間である。
【0115】
以上より、ASFモータ115の駆動量が、第1駆動量P1であるとロータリーエンコーダにより検出されたことを条件として、第3電流I3をASFモータ115に流す処理(本発明の電流供給手段に相当)がステップS30、S40において実行される。
【0116】
ロータリーエンコーダから送られているセンサ信号に基づいて算出されたASFモータ115の第5駆動量P5が、第2駆動量P2(本発明の第2駆動量に相当)と比較される。
【0117】
ここで、第2駆動量P2は、所定期間T1の第3電流I3によって無負荷のASFモータ115が駆動する場合の駆動量よりも小さい任意の量である。また、第5駆動量は、第3電流I3がASFモータ115に供給される所定期間T1におけるASFモータ115の実際の駆動量である。
【0118】
第5駆動量P5が第2駆動量P2より大きい場合(S50:No)、キャップ55の姿勢変化に異常はないと判定される。キャップ55が第1位置H1へ姿勢変化した場合、カム機構60の動作において説明したとおり、ASFモータ115はカム機構60と切り離されているため負荷が小さく、第3電流I3で駆動可能だからである。つまり、図9(A)に示されるように、ASFモータ115の駆動量は、駆動電流が第1電流I1から第3電流I3に切り換えられた後にも増加する。その結果、第5駆動量P5は、第2駆動量P2よりも大きくなるのである。
【0119】
ここで、上記の異常は、例えば、キャップ55が、第2位置H2から第1位置H1への移動を開始したが、欠歯ギヤ13の空転などによって第1位置H1へ到達しなかったことによる異常である。しかし、ステップS50における判定では、キャップ55が全く移動せず、第2位置H2に存在している場合において異常であると判定できない。キャップ55が第2位置H2に存在している場合には、キャップ55が第1位置H1に存在している場合と同様に、ASFモータ115はカム機構60と切り離されているからである。そこで、第5駆動量P5が第2駆動量P2より大きい場合(S50:No)、キャップ55が全く移動しないことによる異常の判定をするために、後述するステップS90の処理へ進む。
【0120】
一方、第5駆動量P5が第2駆動量P2以下である場合(S50:Yes)、キャップ55の姿勢変化が正常に実行されておらず、キャップ55が第2位置H2と第1位置H1の間に存在していると判定される。キャップ55が第2位置H2と第1位置H1の間に存在している場合、ASFモータ115はカム機構60と連結されているため負荷が大きく、第3電流I3では駆動不可能だからである。つまり、図9(B)に示されるように、ASFモータ115の駆動量は、駆動電流が第1電流I1から第3電流I3に切り換えられると増加しない。その結果、第5駆動量P5は、第2駆動量P2よりも大きくならないのである。
【0121】
なお、負荷と連結されているキャップ55に第3電流I3が供給された場合であっても、ギヤ間のバックラッシ、各ギヤの製造ばらつき、及び慣性などによって、ASFモータ115が僅かに駆動するおそれがある。その場合でも、第2駆動量P2がASFモータ115の僅かの駆動量よりも大きく設定されることによって、誤判定が防止可能である。そのため、第2駆動量P2は、第1駆動量P1並びに後述する第3駆動量P3及び第4駆動量P4より小さく設定されることが好ましい。
【0122】
第5駆動量P5が第2駆動量P2以下である場合(S50:Yes)、キャップ55の姿勢変化が再試行される。つまり、フラグの値がインクリメントされた後に(S60)、フラグの値が2以上であるか否か判定される(S70)。フラグの値が1以下である場合、キャップ55の姿勢変化の再試行のために、キャッピング手段(S20及び、電流供給手段(S30、S40)が実行される。フラグの値が2以上である場合、キャップ55の移動が正常に行われなかった旨が、ユーザに対して報知される(S80)。当該報知は、例えば、操作パネルに設けられた液晶表示部へのメッセージの表示や、音声などによって行われる。なお、本実施形態においては、キャップ55の姿勢変化の再試行は1回だけ実行されるが、再試行は2回以上実行されてもよい。
【0123】
以上より、第3電流I3がASFモータ115に流れる所定期間T1に、ASFモータ115の駆動量P5が所定の第2駆動量P2以下であるとロータリーエンコーダにより検出されたことを条件として、キャッピング手段によるキャップ55の姿勢変化が正常に実行されていないと判定する処理(本発明の第1判定手段に相当)が、ステップS50〜S80において実行される。
【0124】
ステップS50において、第5駆動量P5が第2駆動量P2より大きい場合(S50:No)、キャリッジ38に移動の指示が出される(S90)。詳細には、CPU141から駆動回路にCRモータ96に駆動電流を供給すべき旨の駆動信号が入力される。そして、駆動回路からCRモータ96へ駆動電流が出力される。つまり、第3電流I3がASFモータ115に流れる所定期間T1に、ASFモータ115の駆動量P5が所定の第2駆動量P2より大きいとロータリーエンコーダにより検出されたことを条件として、CRモータ96を駆動させてキャリッジ38を移動させる処理(本発明の移動指示手段に相当)が、ステップ90において実行される。
【0125】
リニアエンコーダの光学センサ35から送られてくる検出信号に基づいて、キャリッジ38が移動したか否かが判定される(S100)。判定は、以下に記すように検出信号の信号レベルの切り替わりの有無によって行われる。
【0126】
キャリッジ38が移動した場合、光学センサ35と対向する位置におけるエンコーダストリップ50のパターンが透光部と遮光部で切り替わるため、検出信号の信号レベルが切り替わる。一方、キャリッジ38が移動していない場合、エンコーダストリップ50のパターンが切り替わることがないため、検出信号の信号レベルは一定である。
【0127】
キャップ55が第1位置H1に到達している場合、凸部58と凹部59は嵌合されているため、キャリッジ38の移動はキャップ55よりも突出する凸部58によって制止される。つまり、キャリッジ38が移動していない場合(S50:No)、キャップ55は第1位置H1へ正常に姿勢変化されたと判定される。
【0128】
一方、キャップ55が全く移動しておらず第2位置H2にとどまっている場合、凸部58と凹部59は嵌合されていない為、キャリッジ38は制御部130からの指示によって移動可能である。つまり、キャリッジ38が移動した場合(S50:Yes)、キャップ55の姿勢変化が正常に実行されていないと判定される。この場合、上述と同様の方法でキャップ55の姿勢変化が再試行される(S60〜S80)。
【0129】
以上より、移動指示手段によるキャリッジ38の移動でキャリッジ38の位置が変わったことをリニアエンコーダによって検出されたことを条件として、キャッピング手段によるキャップ55の姿勢変化が正常に実行されていないと判定する処理(本発明の第2判定手段に相当)が、ステップS100において実行される。
【0130】
[実施形態の効果]
中間ギヤ19と欠歯ギヤ13が噛合していない場合、ASFモータ115は、中間ギヤ19のみを駆動すればよい。しかし、中間ギヤ19と欠歯ギヤ13が噛合している場合、ASFモータ115は、中間ギヤ19に加えて欠歯ギヤ13及び欠歯ギヤ13と係合されたカム機構60やキャップ55を駆動する必要がある。そのため、中間ギヤ19と欠歯ギヤ13が噛合している場合のASFモータ115の負荷トルクは、中間ギヤ19と欠歯ギヤ13が噛合していない場合のASFモータ115の負荷トルクより大きい。
【0131】
キャッピング手段によるキャップ55の第1位置H1への姿勢変化が正常に完了した場合、中間ギヤ19は、欠歯ギヤ13の欠歯部132と対向しているため、欠歯ギヤ13と噛合していない。つまり、ASFモータ115の負荷は中間ギヤ19のみである。この状態において、電流供給手段によりASFモータ115に第3電流I3が流された場合、第3電流I3は第2電流I2より大きいために、ASFモータ115は駆動される。したがって、ASFモータ115の駆動量P5が第2駆動量P2以下であることがロータリーエンコーダによって検出されない。
【0132】
一方、キャッピング手段によるキャップ55の第1位置H1への姿勢変化が正常に完了していない場合、中間ギヤ19は欠歯ギヤ13と噛合している。つまり、ASFモータ115の負荷は、中間ギヤ19、欠歯ギヤ13、カム機構60及びキャップ55である。この状態において、電流供給手段によりASFモータ115に第3電流I3が流された場合、第3電流I3は第1電流I1より小さいために、ASFモータ115は駆動されない。したがって、ASFモータ115の駆動量P5が第2駆動量P2以下であることがロータリーエンコーダによって検出される。
【0133】
以上のように、本実施形態においては、キャップ55を姿勢変化させるよりも少ない電流を流した場合にASFモータ115が駆動するか否かによって、キャップ55の姿勢変化が正常に完了したか否かを検出している。ASFモータ115は、通常、必要な電流より少ない電流で駆動することはなく、駆動したとしても僅かである。よって、キャップ55が記録ヘッド39に密着していることを確実に検出することができる。
【0134】
また、本実施形態においては、キャップ55が記録ヘッド39に密着していることを検出するために新たにセンサを設ける必要がない。また、ASFモータ115の駆動量を検出するためのエンコーダは、既に搭載されているものを流用することができるため、専用のエンコーダを新たに設ける必要がない。よって、センサ及びエンコーダの両方を設けることによる装置のコストアップを防止できる。
【0135】
また、上述の実施形態においては、カム機構60として、図4〜図6に示される構成が用いられる。これにより、以下に記すような効果が奏される。
【0136】
欠歯13ギヤは第1移動端部において中間ギヤ19と噛合しない。つまり、欠歯ギヤ13が所定向きに回転した結果、欠歯ギヤ13の欠歯部132が中間ギヤ19と対向すると、欠歯ギヤ13と中間ギヤ19との噛合が解除されるのである。この場合、欠歯ギヤ13はそれ以上所定向きへ回転しない。
【0137】
この状態において、欠歯ギヤ13が反対向きに回転するには、欠歯ギヤ13は再び中間ギヤ19と噛合する必要がある。そのためには、欠歯ギヤ13が当該反対向きに回転する第1ピニオンギヤ12との摩擦によって第1ピニオンギヤ12と一体に回転すればよい。しかし、欠歯ギヤ13が第1ピニオンギヤ12との摩擦力によって回転するには、欠歯ギヤ13が他の負荷、例えば他のギヤから完全に切り離される必要がある。
【0138】
上述の構成では、欠歯ギヤ13と一体に回転する第2ピニオンギヤ15は、第1移動端部において、第1ラックギヤ17と噛合しない。また、第2ピニオンギヤ15は、第1移動端部において、第3ピニオンギヤ16との係合部分に設けられた遊びによって、第3ピニオンギヤ16と個別に回転可能である。つまり、第1移動端部において、欠歯ギヤ13は、他の負荷であるスライドカム11から完全に切り離される。よって、第1移動端部において、欠歯ギヤ13は、第1ピニオンギヤ12との摩擦によって第1ピニオンギヤ12と一体に、当該反対向きに回転可能である。
【0139】
また、上述の実施形態においては、移動指示手段及び第2判定手段が実行されることによって、以下に記すような効果が奏される。
【0140】
欠歯ギヤ13の空転、或いは中間ギヤ19、欠歯ギヤ13またはカム機構60の故障などが発生すると、キャッピング手段が実行されたにもかかわらず、キャップ55が全く動かないおそれがある。
【0141】
キャッピング手段が実行されたにもかかわらずキャップ55が全く動かなかった場合、中間ギヤ19は、キャッピング手段の実行完了後も欠歯ギヤ13の欠歯部132と対向しており、欠歯ギヤ13と噛合していない。そのため、電流供給手段により第3電流I3が流されると、ASFモータ115は駆動される。つまり、キャップ55の姿勢変化が正常に実行されていないにもかかわらず、第1判定手段は、キャップ55の姿勢変化が正常に実行されたと誤判定してしまう虞がある。
【0142】
そこで、上述の実施形態においては、移動指示手段によってキャリッジ38を移動させ、第2判定手段は、移動指示手段による指示でキャリッジ38が移動したか否かによって、キャップ55の姿勢変化が正常に実行されたか否かを判定する。つまり、キャップ55が第1位置H1に到達して記録ヘッド39に圧接されている場合、記録ヘッド39が搭載されたキャリッジ38はストッパとしてキャップ55に対して突出する凸部58によって移動を制止されている。一方、キャップ55が全く動かずに第1位置H1に到達していない場合には、凸部58とキャリッジの下面に設けられている凹部59は嵌合されていないため、移動指示手段によってキャリッジ38は移動する。これにより、第2判定手段は、キャップ55の姿勢変化が正常に実行されていないと判定可能である。
【0143】
[実施形態の変形例1]
上述の実施形態においては、判定制御が実行されているとき、ASFモータ115の駆動量が第1駆動量P1以上となった後に、ASFモータ115に供給される電流が、第1電流I1から第3電流I3に切り換えられる場合について説明した。しかし、ASFモータ115の駆動量が第1駆動量P1に達する前に、ASFモータ115に供給される電流が、第1電流I1から第3電流I3に切り換えられてもよい。
【0144】
以下に詳述する。図11に示されるように、第1駆動量P1は、第3駆動量P3(本発明の第3駆動量に相当)及び第4駆動量P4(本発明の第4駆動量に相当)が含まれている。なお、図11では、第1駆動量P1は、第3駆動量P3及び第4駆動量の合計に設定されている。
【0145】
ここで、第3駆動量P3は、キャップ55が第2位置H2から第1位置H1へ移動するのに必要最小限の駆動量である。第4駆動量P4は、第3駆動量分の駆動のあとに余分に駆動される駆動量である。つまり、ASFモータ115は必要最小限の第3駆動量P3だけ駆動された後も、余分に駆動されるのである。なお、第4駆動量P4は、例えば第3駆動量P3の半分程度に設定されている。
【0146】
そして、変形例1においては、電流供給手段は、ASFモータ115が第3駆動量P3分の駆動のあとに第4駆動量P4分の駆動をするときに、第1電流I1を第3電流I3に切り換えて、第3電流I3をASFモータ115に流す。
【0147】
つまり、図10のステップS30において、算出されたASFモータ115の駆動量が、第3駆動量P3以上である場合(S30:Yes)、ASFモータ115に供給される電流が、第1電流I1から第3電流I3に切り換えられる(S40)。
【0148】
また、第3電流I3は、ASFモータ115に所定期間T2供給される。ここで、所定期間T2は、ASFモータ115に第1電流I1が供給された場合に、ASFモータ115が第4駆動量P4だけ駆動する期間である。
【0149】
その他の各手段(キャッピング手段、電流供給手段、第1判定手段、移動指示手段、及び第2判定手段)の処理内容は、図9の場合と同様である。
【0150】
上述の実施形態においては、キャッピング手段が実行された際に、ASFモータ115は設計上必要な駆動量である第3駆動量P3に加えて第4駆動量P4余分に駆動される。これは、キャップ55を記録ヘッド39に確実に圧接させるためである。
【0151】
また、上述の実施形態においては、電流供給手段は、ASFモータ115が第4駆動量P4分の駆動をするときに、第3電流I3をASFモータ115に流す。その後、第2判定手段による判定が実行される。つまり、電流供給手段及び第2判定手段は、キャッピング手段の実行中に並行して実行される。これにより、キャップ55の姿勢変化が正常に行われたか否かの判定に要する時間が短縮可能である。
【0152】
[実施形態の変形例2]
上述の実施形態においては、カム機構60が、スライドカム11、第2ピニオンギヤ15、第3ピニオンギヤ16、第1ラックギヤ17、及び第2ラックギヤ18を備えた所謂ラックピニオン機構である場合について説明した。しかし、カム機構60はラックピニオン機構に限らない。例えば、以下に詳述するように、回転カムを用いた機構であってもよい。
【0153】
図12に、本実施形態のカム機構60が示されている。ここで、図12(B)は、カム機構60の平面図であり、図12(A)は、図12(B)におけるA−Aの断面図であり、図12(C)は、図12(B)を紙面右側から見た右側面図である。
【0154】
本実施形態のカム機構60は、上述の実施形態におけるラックピニオン機構と同様に、キャップ55の下側に設けられている。図12に示されるように、カム機構60は、リフトカム211(本発明の回転体の一例である回転カムの一例)と、リフトアーム213(本発明のカムフォロアの一例)とを備えている。
【0155】
図12(B)に示されるように、リフトカム211は円盤形状を有し、第1ピニオンギヤ12及び欠歯ギヤ13と共に、支軸61に軸支されている。
【0156】
図12(A)に示されるように、リフトカム211のスラスト方向の欠歯ギヤ13と当接する側の側面には、凹部214が設けられている。凹部214は、上述した凹部161と同様に、リフトカム211の円周方向に所定角度に亘り、且つ直径方向に所定の幅を有している。また、欠歯ギヤ13には、スラスト方向の面のうち、リフトカム211と当接する側の面に凸部215が設けられている。凸部215は、凹部214に嵌め込まれており、凹部214に沿って摺動する。
【0157】
凸部215が凹部214の円周方向の端部に当接している場合に、凸部215が凹部214の端部を押す向きに欠歯ギヤ13が回転すれば、リフトカム211は欠歯ギヤ13と一体に回転する。つまり、リフトカム211は、欠歯ギヤ13から駆動伝達されて回転する。
【0158】
一方、凸部215が凹部214の円周方向の端部に当接していない場合、又は、当接していても凸部215が凹部214の端部を押す向きと反対向きに欠歯ギヤ13が回転した場合には、欠歯ギヤ13が回転しても、凸部215と凹部214は相対移動するため、リフトカム211は回転しない。つまり、リフトカム211は、スラスト方向の一方の面において、欠歯ギヤ13に対して円周方向に遊びを有して係合されている。
【0159】
図12(C)に示されるように、リフトカム211におけるスラスト方向の欠歯ギヤ13と当接する側と反対側の側面には、当該側面の周方向に連続するカム溝212(本発明のカム溝の一例)が形成されている。リフトカム211のカム溝212には、リフトアーム213の一端側に設けられた突起(本発明の係合部の一例)が係入されている。
【0160】
リフトアーム213は、支軸214に軸支されるアーム形状をなしている。したがって、カム溝212に係入されたリフトアーム213の一端側が、リフトカム211の正逆転によって変動すると、その変動によって、リフトアーム213が支軸214周りに回転される。リフトアーム213の他端にはキャップ55を支持し、キャップ55と一体に移動可能なキャップホルダ216が回動可能に連結されている。前述されたように、リフトアーム213の突起が、リフトカム211の正逆転によって変動してリフトアーム213が支軸214を中心として回転されると、そのリフトアーム213の回転に伴って、キャップ55が上下方向(図12(B)において紙面に垂直な方向)へスライドされる。つまり、キャップ55が、第1位置と第2位置とに姿勢変化される。
【0161】
以上より、リフトアーム213は、突起がリフトカム211の径方向へ移動することに基づいてキャップ55を姿勢変化させる。
【0162】
以下、本実施形態におけるカム機構60の移動、及びキャップ55の姿勢変化について説明する。
【0163】
まず、キャップ55の第1位置から第2位置への移動に伴うカム機構60の移動について説明する。キャップ55が、リフトアーム213によって第1位置に保持されているとき、カム機構10は以下のような状態である。
【0164】
欠歯ギヤ13の欠歯部132が中間ギヤ19と対向しているため、欠歯ギヤ13と中間ギヤ19は噛合していない(図5(B)と同様の状態)。また、欠歯ギヤ13の凸部151は、リフトカム211の凹部214の円周方向の一端に当接している。これにより、欠歯ギヤ13の回転が凹部214の円周方向の一端から他端の向きである場合、欠歯ギヤ13とリフトカム211は相対移動するため、リフトカム211は欠歯ギヤ13にとって負荷とならない。つまり、凸部151が凹部214の他端に到達することによって、欠歯ギヤ13とリフトカム211が一体に回転可能となるまで、欠歯ギヤ13はリフトカム211を含むカム機構60と切り離されている。
【0165】
ASFモータ115からの駆動力が中間ギヤ19を介して第1ピニオンギヤ12に伝達されて、第1ピニオンギヤ12がキャップ55を第1位置から第2位置へ移動させる向きに回転すると、カム機構60は以下のような状態となる。
【0166】
欠歯ギヤ13は、コイルバネ14によって第1ピニオンギヤ12を押す向きに付勢されているため、第1ピニオンギヤ12の回転に伴って第1ピニオンギヤ12の回転と同じ向きに回転する。このような欠歯ギヤ13の回転は、上述したように欠歯ギヤ13がカム機構60と切り離されているために可能である。欠歯ギヤ13の回転により、欠歯ギヤ13と中間ギヤ19は噛合し、以後、欠歯ギヤ13も中間ギヤ19から駆動力の伝達が可能となる。
【0167】
欠歯ギヤ19が回転してもリフトカム211は回転しない。なぜなら、欠歯ギヤ19がリフトカム211に対して相対移動するのみだからである。具体的には、欠歯ギヤ19の凸部215がリフトカム211の凹部214の一端から他端に向かって移動するからである。つまり、リフトカム211は、欠歯ギヤ13との間に有する遊びによって、リフトアーム213がキャップ55を第1位置に保持している状態において、キャップ55を第1位置から第2位置へ移動させるための回転方向へ欠歯ギヤ13と個別に回転可能である。
【0168】
凸部151が凹部214の他端に到達することによって、欠歯ギヤ13とリフトカム211が一体に回転を開始する。すると上述したように、リフトカム211の回転によってリフトアーム213が回転され、リフトアーム213の回転に伴ってキャップ55が下方向にスライドされる。つまり、キャップ55が、第1位置から第2位置に姿勢変化される。
【0169】
なお、キャップ55の第2位置から第1位置への姿勢変化は、各ギヤ及びリフトアーム213の回転が逆向きである以外、第1位置から第2位置への姿勢変化と同様の手順で実行される。
【0170】
所定向きに回転することによって欠歯部分が中間ギヤ19と対向している欠歯ギヤ13が、第1ピニオンギヤ12との摩擦力によって所定向きと反対向きに回転するには、欠歯ギヤ13が他の負荷から完全に切り離される必要がある。
【0171】
上述の実施形態においては、欠歯ギヤ13は、リフトアーム213がキャップ55を第1位置に保持している状態において、リフトカム211との係合部分に設けられた遊びによって、リフトカム211と個別に回転可能である。つまり、リフトアーム213がキャップ55を第1位置に保持している状態において、欠歯ギヤ13は、他の負荷であるリフトカム211、リフトアーム213及びキャップ55から完全に切り離される。よって、リフトアーム213がキャップ55を第1位置に保持している状態において、欠歯ギヤ13は、第1ピニオンギヤ12との摩擦によって第1ピニオンギヤ12と一体に、当該反対向きに回転可能である。
【符号の説明】
【0172】
11・・・スライドカム
12・・・第1ピニオンギヤ
13・・・欠歯ギヤ
14・・・コイルバネ
15・・・第2ピニオンギヤ
16・・・第3ピニオンギヤ
17・・・第1ラックギヤ
18・・・第2ラックギヤ
38・・・キャリッジ
55・・・キャップ
60・・・カム機構
96・・・CRモータ
115・・・ASFモータ
130・・・制御部
211・・・リフトカム
213・・・リフトアーム
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッドからシートにインク滴を吐出することによって画像記録を行うインクジェット記録装置等の画像記録装置に関し、例えば、ポンプによって記録ヘッドからインクを排出するパージ処理のために、記録ヘッドの吐出口を覆うキャップを備え、当該キャップが吐出口を覆う位置と吐出口から離れた位置とに摺動可能な画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液滴を吐出することで文字、写真、配線パターン等の種々の画像記録を行う装置が知られている。例えば、入力信号に基づいてインクを吐出してシートに画像記録を行う画像記録装置が知られている。このような画像記録装置は、一般に「インクジェットプリンタ」と称される。インクジェットプリンタにおける画像記録は、記録ヘッドの吐出口からインクが選択的に吐出されることによって実現される。
【0003】
記録ヘッドにおいて、吐出口へ通ずるインク流路に気泡が生じたり異物が詰まったりすることが起こり得る。これらは、記録ヘッドからのインク滴の吐出に対して障害となり得る。このような障害を防止又は回復するために、記録ヘッドの吐出口から気泡や異物を除去する手法が知られている。このような手法は、一般に「パージ」と称される。パージはメンテナンスユニットによって実現される。メンテナンスユニットは、例えば、記録ヘッドの吐出口を覆うキャップ、キャップ内を減圧してインクを吸引するためのポンプ、吸引したインクを貯留する廃液タンク、ポンプと廃液タンクを接続するチューブなどを備えている。
【0004】
シートへの画像記録が実行されるときには、記録ヘッドはシートの搬送方向と直交する方向へ移動可能である。このとき、キャップは記録ヘッドの吐出口から離れている。パージが実行されるときには、記録ヘッドの吐出口がキャップで覆われ、記録ヘッドとキャップの間には気密空間が形成される。この状態でポンプが駆動されると、インクが吸引される。このように、インクジェットプリンタにおいては、キャップが、記録ヘッドに密着して吐出口を覆う位置と記録ヘッドから離れた位置とに摺動する「キャップリフト機構」が備えられている。
【0005】
キャップリフト機構には、キャップを摺動させるための手段として、摩擦クラッチ機構が用いられることがある。また、キャップの位置を検出するための手段として、一部に欠歯部分を有する欠歯ギヤが用いられることがある。
【0006】
例えば、摩擦クラッチ機構は、全周に歯を有する通常ギヤと、欠歯ギヤと、両ギヤを押しつける付勢部材とを備えている。通常ギヤと欠歯ギヤは駆動源から駆動伝達される駆動ギヤと噛合している。欠歯ギヤは、欠歯ギヤの回転方向の運動を上下方向などの運動に変換する機構を介してキャップと連結されている。このような構成によれば、欠歯ギヤと駆動ギヤと噛合されているとき、キャップは摺動する。一方、欠歯ギヤの欠歯部分が駆動ギヤと対向しているとき、つまり欠歯ギヤと駆動ギヤが噛合されていないとき、キャップは摺動しない。
【0007】
当該キャップリフト機構の動作について説明する。欠歯ギヤと駆動ギヤが噛合している状態において、欠歯ギヤが所定向きに所定量回転すると、欠歯ギヤの欠歯部分が駆動ギヤと対向する。これにより、欠歯ギヤと駆動ギヤの噛合が解除される。このとき、キャップの位置は記録ヘッドに密着する位置である。この状態において、欠歯ギヤが上記所定向きと逆向きに回転すると、キャップは記録ヘッドから離れる向きに摺動を開始する。なお、この状態において、欠歯ギヤと駆動ギヤの噛合は解除されているが、欠歯ギヤは通常ギヤとの摩擦によって通常ギヤと一体に回転することによって、再び駆動ギヤと噛合する。欠歯ギヤが逆向きに所定量回転すると、欠歯ギヤの欠歯部分が駆動ギヤと対向する。これにより、欠歯ギヤと駆動ギヤの噛合が解除される。このとき、キャップの位置は記録ヘッドから離れた位置である。
【0008】
なお、特許文献1には、当該キャップリフト機構と同様の構成を有したインクジェット式プリンタが開示されている。当該インクジェット式プリンタにおいては、モータから駆動伝達されるギヤが、摩擦クラッチ機構のみを介して、ノズル形成面に付着しているインクを払拭するためのワイピング手段と接続され、当該ワイピング手段が、モータからの駆動伝達によって上方あるいは下方に回転される。また、摩擦クラッチ機構は、欠歯ギヤ、通常ギヤ、及び両ギヤを相互に押し付ける圧縮バネを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−66755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したキャップリフト機構において通常ギヤと欠歯ギヤが当接する間隙には、インクジェット式プリンタの動作の過程において、紙粉やインクが入り込むおそれがある。これにより、通常ギヤと欠歯ギヤの間の摩擦力に変化が生じた場合、欠歯ギヤが空転してしまい、キャップの摺動が適正に実行されないおそれがある。その結果、キャップは、中途半端にしか摺動せず、記録ヘッドに密着されないおそれがある。
【0011】
ところで、当該キャップリフト機構においては、欠歯ギヤと駆動ギヤの噛合が解除されるとキャップが停止され、当該停止の位置がキャップの記録ヘッドに対する密着位置であるとされる。つまり、当該キャップリフト機構は、キャップの位置を検出する手段を有していない。そのため、上述したようにキャップの摺動が適正に実行されずに、キャップが記録ヘッドに密着されなかったとしても、当該キャップリフト機構において、キャップの摺動が適正でないことは検出不可能である。
【0012】
上記問題を解決するため、当該キャップリフト機構にキャップの位置を検出するセンサを設けることが考えられる。しかし、キャップを記録ヘッドに密着する向きへ付勢するためにキャップに取り付けられているバネの荷重、各ギヤ間のバックラッシ、及び各部品の製造時に生じる大きさなどのばらつきなどによって、摺動されたキャップの位置に誤差が生じるおそれがある。この場合、センサでは、当該誤差を補正できない。
【0013】
当該誤差を補正するために、キャップを摺動させる駆動源の駆動量を検出するエンコーダを、当該駆動源または当該駆動源と連結されているギヤに設けることが考えられる。しかし、センサ及びエンコーダの両方を設けることは、装置のコストアップを招いてしまう。
【0014】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、装置のコストアップを少なく抑えつつ、キャップが記録ヘッドに密着していることを確実に検出することのできる手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(1) 本発明の画像記録装置は、液滴を吐出する記録ヘッドに圧接して吐出口を覆う第1位置、及び上記記録ヘッドから離反した第2位置に姿勢変化可能なキャップと、第1駆動源と、上記第1駆動源から駆動伝達される駆動ギヤと噛合し、全周に歯を有する第1ギヤと、上記第1ギヤと同軸に配置されて上記駆動ギヤと噛合可能に設けられており、上記第1ギヤと同じピッチの歯を有し、当該歯の一部が上記駆動ギヤと噛合しないように欠落された第2ギヤと、上記第1ギヤと上記第2ギヤとが圧接するようにスラスト方向へ付勢する付勢部材と、上記第2ギヤに対して円周方向へ遊びを有して係合された回転体を有し、当該回転体の回転方向の運動を上記キャップの姿勢変化の運動に変換するとともに、上記キャップを上記第1位置及び上記第2位置に保持可能なカム機構と、上記第1駆動源の駆動量を検出する第1検出部と、制御部と、を備える。上記第2ギヤは、上記カム機構が上記キャップを上記第1位置に保持している状態において、上記駆動ギヤと噛合しない。上記回転体は、上記遊びによって、上記カム機構が上記キャップを上記第1位置に保持している状態において、上記キャップを上記第1位置から上記第2位置へ移動させるための回転方向へ上記第2ギヤと個別に回転可能である。上記制御部は、上記キャップを姿勢変化させるために必要な大きさの第1電流を上記第1駆動源に流すことによって、上記キャップを上記第2位置から上記第1位置に姿勢変化させるキャッピング手段と、上記第1駆動源の駆動量が、上記キャップの上記第2位置から上記第1位置への移動に設計上必要な第1駆動量であると上記第1検出部により検出されたことを条件として、上記第1電流より小さく、かつ上記第1駆動源を無負荷で駆動するために必要な大きさの第2電流より大きい第3電流を、上記第1駆動源に流す電流供給手段と、上記第3電流が上記第1駆動源に流れる所定期間に、上記第1駆動源の駆動量が所定の第2駆動量以下であると上記第1検出部により検出されたことを条件として、上記キャッピング手段による上記キャップの姿勢変化が正常に実行されていないと判定する第1判定手段と、を備える。
【0016】
駆動ギヤと第2ギヤが噛合していない場合、第1駆動源は、駆動ギヤのみを駆動すればよい。しかし、駆動ギヤと第2ギヤが噛合している場合、第1駆動源は、駆動ギヤに加えて第2ギヤ及び第2ギヤと係合されたカム機構やキャップを駆動する必要がある。そのため、駆動ギヤと第2ギヤが噛合している場合の第1駆動源の負荷トルクは、駆動ギヤと第2ギヤが噛合していない場合の第1駆動源の負荷トルクより大きい。
【0017】
キャッピング手段によるキャップの第1位置への姿勢変化が正常に完了した場合、駆動ギヤは、第2ギヤの欠歯部分と対向しているため、第2ギヤと噛合していない。つまり、第1駆動源の負荷は駆動ギヤのみである。この状態において、電流供給手段により第1駆動源に第3電流が流された場合、第3電流は第2電流より大きいために、第1駆動源は駆動される。したがって、第1駆動源の駆動量が第2駆動量以下であることが第1検出部によって検出されない。
【0018】
一方、キャッピング手段によるキャップの第1位置への姿勢変化が正常に完了していない場合、駆動ギヤは第2ギヤと噛合している。つまり、第1駆動源の負荷は、駆動ギヤ、第2ギヤ、カム機構及びキャップである。この状態において、電流供給手段により第1駆動源に第3電流が流された場合、第3電流は第1電流より小さいために、第1駆動源は駆動されない。したがって、第1駆動源の駆動量が第2駆動量以下であることが第1検出部によって検出される。
【0019】
(2) 上記回転体は、上記第2ギヤと一体に回転する第3ギヤに対して円周方向へ遊びを有して係合された第4ギヤである。上記カム機構は、上記キャップを上記第1位置に保持するための第1カム面、上記キャップを上記第2位置に保持するための第2カム面、及び上記第1カム面と上記第2カム面とを連結する第3カム面を有し、上記キャップの移動方向と交差する方向へ移動することによって上記キャップを姿勢変化させるスライドカムと、上記第3ギヤと、上記第4ギヤと、上記スライドカムにおいて上記スライドカムの移動方向へ沿って設けられており、上記第3ギヤと噛合可能な第1ラックギヤと、上記第1ラックギヤに並んで設けられており、上記第4ギヤと噛合可能な第2ラックギヤと、を備える。上記第1ラックギヤは、上記スライドカムが上記キャップを上記第1位置に保持する第1移動端部、及び上記第2位置に保持する第2移動端部において、上記第3ギヤと噛合しない範囲であって、かつ少なくとも上記スライドカムが上記第3カム面によって上記キャップを支持する領域において上記第3ギヤと噛合する範囲に渡って設けられている。上記第2ラックギヤは、上記スライドカムが上記キャップを上記第1位置に保持する第1移動端部、及び上記第2位置に保持する第2移動端部に渡って上記第4ギヤと噛合するように設けられている。上記第2ギヤは、上記スライドカムが上記キャップを上記第1位置に保持する第1移動端部において上記駆動ギヤと噛合しない。上記第4ギヤは、上記遊びによって、上記スライドカムが上記キャップを上記第1位置に保持する第1移動端部において、上記スライドカムを上記第2移動端部へ移動させるための回転方向へ上記第3ギヤと個別に回転可能である。
【0020】
上述の構成では、第2ギヤは第1移動端部において駆動ギヤと噛合しない。つまり、第2ギヤが所定向きに回転した結果、第2ギヤの欠歯部分が駆動ギヤと対向すると、第2ギヤと駆動ギヤとの噛合が解除されるのである。この場合、第2ギヤはそれ以上所定向きへ回転しない。
【0021】
この状態において、第2ギヤが反対向きに回転するには、第2ギヤは再び駆動ギヤと噛合する必要がある。そのためには、第2ギヤが当該反対向きに回転する第1ギヤとの摩擦によって第1ギヤと一体に回転すればよい。しかし、第2ギヤが第1ギヤとの摩擦力によって回転するには、第2ギヤが他の負荷、例えば他のギヤから完全に切り離される必要がある。
【0022】
上述の構成では、第2ギヤと一体に回転する第3ギヤは、第1移動端部において、第1ラックギヤと噛合しない。また、第3ギヤは、第1移動端部において、第4ギヤとの係合部分に設けられた遊びによって、第4ギヤと個別に回転可能である。つまり、第1移動端部において、第2ギヤは、他の負荷であるスライドカムから完全に切り離される。よって、第1移動端部において、第2ギヤは、第1ギヤとの摩擦によって第1ギヤと一体に、当該反対向きに回転可能である。
【0023】
(3) 上記回転体は、スラスト方向の一方の面において、上記第2ギヤに対して円周方向へ遊びを有して係合され、スラスト方向の他方の面において、周方向へ連続するカム溝を有し、上記第2ギヤから駆動伝達されて回転される回転カムである。上記カム機構は、上記回転カムと、上記カム溝に係入された係合部を有し、当該係合部が上記回転カムの径方向へ移動することに基づいて上記キャップを姿勢変化させるカムフォロアと、を備える。上記第2ギヤは、上記カムフォロアが上記キャップを上記第1位置に保持している状態において、上記駆動ギヤと噛合しない。上記回転カムは、上記遊びによって、上記カムフォロアが上記キャップを上記第1位置に保持している状態において、上記キャップを上記第1位置から上記第2位置へ移動させるための回転方向へ上記第2ギヤと個別に回転可能である。
【0024】
既に述べたように、所定向きに回転することによって欠歯部分が駆動ギヤと対向している第2ギヤが、第1ギヤとの摩擦力によって所定向きと反対向きに回転するには、第2ギヤが他の負荷から完全に切り離される必要がある。
【0025】
上述の構成では、第2ギヤは、カムフォロアがキャップを第1位置に保持している状態において、回転カムとの係合部分に設けられた遊びによって、回転カムと個別に回転可能である。つまり、カムフォロアがキャップを第1位置に保持している状態において、第2ギヤは、他の負荷である回転カム、カムフォロア及びキャップから完全に切り離される。よって、カムフォロアがキャップを第1位置に保持している状態において、第2ギヤは、第1ギヤとの摩擦によって第1ギヤと一体に、当該反対向きに回転可能である。
【0026】
(4) 本発明の画像記録装置は、上記記録ヘッドを搭載して上記キャップの移動方向と交差する方向へ往復動される走査部と、上記走査部を移動させる第2駆動源と、上記走査部が往復動される方向における上記走査部の位置を検出する第2検出部と、上記第1位置の上記キャップが上記記録ヘッドに圧接された状態において、上記走査部の移動を制止するストッパと、を更に備える。上記制御部は、上記第3電流が上記第1駆動源に流れる所定期間に、上記第1駆動源の駆動量が所定の第2駆動量より大きいと上記第1検出部により検出されたことを条件として、上記第2駆動源を駆動させて上記走査部を移動させる移動指示手段と、上記移動指示手段による上記走査部の移動で上記走査部の位置が変わったことを上記第2検出部によって検出されたことを条件として、上記キャッピング手段による上記キャップの姿勢変化が正常に実行されていないと判定する第2判定手段と、を更に備える。
【0027】
第2ギヤの空転、或いは駆動ギヤ、第2ギヤまたはカム機構の故障などが発生すると、キャッピング手段が実行されたにもかかわらず、キャップが全く動かないおそれがある。
【0028】
キャッピング手段が実行されたにもかかわらずキャップが全く動かなかった場合、駆動ギヤは、キャッピング手段の実行完了後も第2ギヤの欠歯部分と対向しており、第2ギヤと噛合していない。そのため、電流供給手段により第3電流が流されると、第1駆動源は駆動される。つまり、キャップの姿勢変化が正常に実行されていないにもかかわらず、第1判定手段は、キャップの姿勢変化が正常に実行されていないとは判定しない。
【0029】
そこで、上述の構成では、移動指示手段によって走査部を移動させ、第2判定手段は、移動指示手段による指示で走査部が移動したか否かによって、キャップの姿勢変化が正常に実行されたか否かを判定する。上述の構成においては、キャップが第1位置に到達して記録ヘッドに圧接されている場合、記録ヘッドが搭載された走査部はストッパによって移動を制止されている。一方、キャップが全く動かずに第1位置に到達していない場合には、移動指示手段によって走査部は移動する。これにより、第2判定手段は、キャップの姿勢変化が正常に実行されていないと判定可能である。
【0030】
(5) 上記第1駆動量は、上記キャップが上記第2位置から上記第1位置へ移動するのに必要最小限の駆動量である第3駆動量と、上記第3駆動量分の駆動のあとに余分に駆動する駆動量である第4駆動量とが含まれている。上記電流供給手段は、上記第1駆動源が上記第3駆動量分の駆動のあとに上記第4駆動量分の駆動をするときに、上記第1電流を上記第3電流に切り換えて、上記第3電流を上記第1駆動源に流す。
【0031】
上述の構成においては、キャッピング手段が実行された際に、第1駆動源は設計上必要な駆動量である第3駆動量に加えて第4駆動量余分に駆動される。これは、キャップを記録ヘッドに確実に圧接させるためである。
【0032】
また、上述の構成においては、電流供給手段は、第1駆動源が第4駆動量分の駆動をするときに、第3電流を第1駆動源に流す。その後、第2判定手段による判定が実行される。つまり、電流供給手段及び第2判定手段は、キャッピング手段の実行中に並行して実行される。これにより、キャップの姿勢変化が正常に行われたか否かの判定に要する時間が短縮可能である。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、キャップが記録ヘッドに密着していることを検出するためにセンサを設ける必要がない。よって、上述したようなセンサ及びエンコーダ(第1検出部)の両方を設けることによる装置のコストアップを防止できる。
【0034】
また、本発明では、キャップを姿勢変化させるよりも少ない電流を流した場合に第1駆動源が駆動するか否かによって、キャップの姿勢変化が正常に完了したか否かを検出している。第1駆動源は、必要な電流より少ない電流で駆動することはない。よって、キャップが記録ヘッドに密着していることを確実に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、プリンタ部2の主要構成を示す平面図であり、主としてプリンタ部2の略中央から装置背面側の構成が示されている。
【図2】図2は、メンテナンス機構51の側面構造を模式的に示す側面図である。
【図3】図3は、キャップ55の位置を説明するための模式図であり、(A)にはキャップ55が第2位置に保持された状態が示されており、(B)にはキャップ55が第1位置と第2位置の間を移動中の状態が示されており、(C)にはキャップ55が第1位置に保持された状態が示されている。
【図4】図4は、カム機構60の各ギヤの配置を示す模式図である。
【図5】図5は、カム機構60の動作を説明するための模式図であり、(A)にはキャップ55が第1位置に保持された状態の図4におけるA−A及びB−Bの断面が示されており、(B)にはキャップ55が第1位置に保持された状態の図4のC−Cの断面が示されており、(C)にはキャップ55が第1位置に保持された状態の図4のD−Dの断面が示されており、(D)にはキャップ55が第1位置の保持を解除される直前の図4におけるA−A及びB−Bの断面が示されており、(E)にはキャップ55が第1位置の保持を解除される直前の図4のC−Cの断面が示されており、(F)にはキャップ55が第1位置の保持を解除される直前の図4のD−Dの断面が示されており、(G)にはキャップ55が第1位置と第2位置の間に位置されている状態の図4におけるA−A及びB−Bの断面が示されており、(H)にはキャップ55が第1位置と第2位置の間に位置されている状態の図4のC−Cの断面が示されており、(I)にはキャップ55が第1位置と第2位置の間に位置されている状態の図4のD−Dの断面が示されており、(J)にはキャップ55が第2位置に保持された状態の図4におけるA−A及びB−Bの断面が示されており、(K)にはキャップ55が第2位置に保持された状態の図4のC−Cの断面が示されており、(L)にはキャップ55が第2位置に保持された状態の図4のD−Dの断面が示されている。
【図6】図6は、カム機構60付近を示す斜視図であり、(A)にはカム機構60全体の外観が示されており、(B)にはカム機構60のうち第ピニオンギヤ16、第1ラックギヤ17、及び第2ラックギヤ18が示されている。
【図7】図7は、キャリッジ38及びキャップ55の側面図である。
【図8】図8は、制御部130の構成を示すブロック図である。
【図9】図9は、ASFモータ115の駆動量に対する駆動電流及びキャップ55の位置を示す特性図であり、(A)にはキャップ55が正常に姿勢変化した場合が示されており、(B)にはキャップ55が正常に姿勢変化しなかった場合が示されている。
【図10】図10は、制御部130によって行われるキャッピング制御及び判定制御の手順の一例を示すフローチャートである。
【図11】図11は、変形例におけるASFモータ115の駆動量に対する駆動電流及びキャップ55の位置を示す特性図であり、(A)にはキャップ55が正常に姿勢変化した場合が示されており、(B)にはキャップ55が正常に姿勢変化しなかった場合が示されている。
【図12】図12は、変形例におけるカム機構60の左側面図、平面図及び右側面図であり、(A)には左側面図が示されており、(B)には平面図が示されており、(C)には右側面図が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。また、以下の説明において、番号が付されていないものは、基本的に不図示である。
【0037】
[複合機]
本発明の実施形態に係る画像記録装置の一例としての複合機は、プリンタ部2(図1参照)とスキャナ部とを一体的に備えた多機能装置(MFP:Multi Function Product)であり、プリント機能、スキャナ機能、コピー機能、ファクシミリ機能等を有する。複合機のうちプリンタ部2が、本発明に係る画像記録装置に相当する。複合機は概ね直方体に形成されている。複合機の下部がプリンタ部2であり、上部がスキャナ部である。なお、プリント機能以外の機能は任意であり、例えば、本発明に係る画像記録装置が、プリント機能のみを有するプリンタとして実施されてもよい。
【0038】
プリンタ部2は、主にコンピュータ等の外部情報機器と接続されて、該コンピュータ等から送信された画像データや文書データを含む印刷データに基づいて、記録用紙に画像や文書を記録する。プリンタ部2は、正面に開口が形成されている。給紙トレイ及び排紙トレイは、開口の内側に上下2段に設けられている。給紙トレイに収容された記録用紙がプリンタ部2の内部へ給送されて、その記録用紙に所望の画像が記録されると、その後、画像記録済みの記録用紙が排紙トレイへ排出される。
【0039】
スキャナ部は、所謂フラットベッドスキャナとして構成されている。複合機の天板としての原稿カバーがスキャナ部の上部に開閉自在に設けられている。原稿カバーの下側に、図示しないプラテンガラス及びイメージセンサが設けられている。プラテンガラスに載置された原稿の画像がイメージセンサによって読み取られる。なお、本発明を実現するうえでスキャナ部は関係しないため、ここでは、スキャナ部の詳細な説明は省略される。
【0040】
複合機の正面上部には、プリンタ部2やスキャナ部を操作するための操作パネルが設けられている。操作パネルは、各種操作ボタンや液晶表示部から構成されている。複合機は、操作パネルからの操作指示に基づいて動作する。複合機が外部のコンピュータに接続されている場合には、該コンピュータからプリンタドライバ又はスキャナドライバを介して送信される指示に基づいても複合機が動作する。
【0041】
[プリンタ部2]
複合機の底側に給紙トレイが設けられている。給紙トレイの上側に給紙ローラが設けられている。給紙ローラは、一端が基軸に回動可能に軸支された給紙アームの先端に回転可能に軸支されている。給紙ローラは、プリンタ部2の内部に設けられたASFモータ115(図8参照)を駆動源としてギヤ列を介して回転駆動される。なお、ASFモータ115は、図1において、プラテン42の左端部の裏側に配置されている。
【0042】
給紙トレイの奥側に傾斜板が設けられている。給紙ローラが給紙トレイ上の記録用紙に圧接された状態で、給紙ローラが回転されると、給紙ローラのローラ面と記録用紙との間の摩擦力により、最上位置の記録用紙が傾斜板側へ送り出される。記録用紙は、その先端が傾斜板に当接して上方へ案内される。傾斜板から記録用紙を搬送すべき経路に沿って、用紙搬送路が設けられている。用紙搬送路は、傾斜板から上方へ向けられ、複合機の正面側へ曲げられてから、複合機の背面側から正面側へと延ばされて、画像記録ユニット24(図1参照)の下部を通って、排紙トレイまで延設されている。したがって、給紙トレイに収容された記録用紙は、用紙搬送路により下方から上方へUターンするように案内されて画像記録ユニット24に至り、画像記録ユニット24により画像記録が行われた後、排紙トレイに排出される。
【0043】
用紙搬送路には、画像記録ユニット24が配置されている。図1及び図2に示されるように、画像記録ユニット24は、インクジェット方式の記録ヘッド39(本発明の記録ヘッドの一例、図2参照)と、記録ヘッド39を搭載するキャリッジ38(本発明の走査部の一例)とを備えている。キャリッジ38は、記録用紙の搬送方向と直交する主走査方向(図1の左右方向)へスライド可能に支持されている。なお、後述するキャップ55は図1の上下方向に移動する。つまり、キャリッジ38はキャップ55の移動方向と交差する方向へ往復動される。
【0044】
記録ヘッド39は、キャリッジ38の底面に配置されており、記録ヘッド39のノズル40(本発明の吐出口の一例)がキャリッジ38の下面に露出されている。複合機の内部に配置されたインクカートリッジから各色のインクが記録ヘッド39へ供給される。キャリッジ38が往復してスライドされる間に、記録ヘッド39のノズル40から各色インクが微小なインク滴(本発明の液滴の一例)として選択的に吐出される。これにより、プラテン42上を搬送される記録用紙に画像記録が行われる。
【0045】
図1に示されるように、用紙搬送路の上側において一対のガイドレール43,44が配置されている。ガイドレール43,44は、記録用紙の搬送方向(図1の上側から下側方向)に所定距離を隔てられて対向しており、且つ記録用紙の搬送方向と直交する主走査方向(図1の左右方向)に延設されている。ガイドレール43,44は、プリンタ部2の筐体内に設けられ、プリンタ部2を構成する各部材を支持するフレームの一部を構成している。キャリッジ38は、ガイドレール43,44を跨ぐようにして上記主走査方向に摺動可能に載置されている。
【0046】
ガイドレール43は、記録用紙の搬送方向上流側に配設されている。ガイドレール43は、用紙搬送路の幅方向(図1の左右方向)の長さがキャリッジ38の往復動範囲より長い平板状のものである。ガイドレール44は、記録用紙の搬送方向下流側に配設されている。ガイドレール44は、用紙搬送路の幅方向の長さがガイドレール43とほぼ同じ長さの平板状のものである。キャリッジ38の搬送方向上流側の端部がガイドレール43に載置され、キャリッジ38の搬送方向下流側の端部がガイドレール44に載置されている。キャリッジ38は、各ガイドレール43,44の長手方向に摺動される。
【0047】
ガイドレール44の搬送方向上流側の縁部45は、上方へ向かって略直角に曲折されている。ガイドレール43,44に担持されたキャリッジ38は、縁部45をローラ対等の狭持部材により摺動可能に狭持している。これにより、キャリッジ38は、記録用紙の搬送方向に対して位置決めされ、且つ、記録用紙の搬送方向と直交する方向に摺動することができる。
【0048】
ガイドレール44の上面には、ベルト駆動伝達機構46が配設されている。ベルト駆動伝達機構46は、駆動プーリ47と、従動プーリ48と、無端環状のベルト49とを有する。
【0049】
駆動プーリ47及び従動プーリ48は、用紙搬送路の幅方向の両端付近にそれぞれ設けられている。駆動プーリ47と従動プーリ48の間に、無端環状のベルト49が張架されている。駆動プーリ47の軸に、プリンタ部2の内部に設けられた本発明の第2駆動源の一例であるキャリッジモータ(以下、CRモータ96と記す。図8参照)の駆動軸が連結されている。CRモータ96の回転駆動力が駆動プーリ47に伝達されると、駆動プーリ47の回転によりベルト49が周運動する。なお、ベルト49は無端環状のもののほか、有端のベルトの両端部をキャリッジ38に固着するものも採用され得る。
【0050】
キャリッジ38は、その底面側においてベルト49に連結されている。したがって、ベルト49の周運動に基づいて、キャリッジ38が縁部45を基準としてガイドレール43,44上をスライドする。つまり、CRモータ96はキャリッジを移動させる。このようなキャリッジ38に記録ヘッド39が搭載されて、記録ヘッド39が、用紙搬送路の幅方向を主走査方向として往復動される。
【0051】
ガイドレール44には、エンコーダストリップ50が配設されている。エンコーダストリップ50は、透明な樹脂からなる帯状のものである。ガイドレール44の幅方向(キャリッジ38のスライド方向)の両端には、その上面から起立するように一対の支持用リブ33,34が形成されている。エンコーダストリップ50は、その両端部が支持用リブ33,34に係止されて、縁部45に沿って架設されている。なお、エンコーダストリップ50はバネなどによって張力が付与されている。
【0052】
エンコーダストリップ50には、光を透過させる透光部と光を遮断する遮光部とが、長手方向に等ピッチで交互に配置されたパターンが記されている。キャリッジ38の上面のエンコーダストリップ50に対応する位置には、透過型センサである光学センサ35が設けられている。エンコーダストリップ50と光学センサ35とによって、キャリッジ38の位置を検出するためのリニアエンコーダ(本発明の第2検出部の一例)が構成される。複合機の制御部130(本発明の制御部の一例、図8参照)には、光学センサ35からの検出信号が入力される。これにより、制御部130はキャリッジ38の位置を認識する。制御部130は、キャリッジ38の位置情報に基づいて、CRモータ96やASFモータ115を制御する。以上より、リニアエンコーダによって、キャリッジ38が往復動される方向におけるキャリッジ38の位置が検出される。
【0053】
図1及び図2に示されるように、用紙搬送路の下側には、記録ヘッド39と対向してプラテン42が配設されている。プラテン42は、キャリッジ38のスライド範囲のうち、記録用紙が通過する中央部分に渡って配設されている。プラテン42の幅は、搬送可能な記録用紙の最大幅より十分に大きいものであり、記録用紙の両端は常にプラテン42の上を通過する。
【0054】
図1に示されるように、記録用紙が通過しない範囲、すなわち記録ヘッド39による画像記録領域の外側には、メンテナンス機構51が配設されている。具体的には、メンテナンス機構51は、図1においてプラテン42の右端部に配置されている。メンテナンス機構51は、記録ヘッド39のノズル40(図2参照)内のインクの乾燥を防止したり、ノズル40から気泡や異物を吸引除去するものである。本実施形態では、画像記録を行わない場合は、キャリッジ38はメンテナンス機構51上に配置される。つまり、キャリッジ38は、次の画像記録指示があるまで、メンテナンス機構51上で待機する。なお、メンテナンス機構51については、後段で詳細に説明する。
【0055】
画像記録ユニット24の上流側には、搬送ローラとピンチローラとを有する一対の搬送ローラ対が設けられている。画像記録ユニット24の下流側には、排紙ローラと該排紙ローラの上方に設けられた拍車とを有する一対の排出ローラ対が設けられている。搬送ローラは、該搬送ローラの軸方向の一端にギヤなどを介して連結されたASFモータ115から駆動力が伝達されて、所定の改行幅で間欠駆動される。なお、搬送ローラは、ASFモータ115とは別に設けられたモータからの駆動力で駆動されてもよい。
【0056】
搬送ローラと排紙ローラとはギアなどの伝達機構により連結されており、該伝達機構を介して搬送ローラから駆動力が排紙ローラに伝達される。用紙搬送路を搬送されている記録用紙は、搬送ローラ対によってプラテン42上へ搬送される。そして、プラテン42上で画像が記録された記録済みの記録用紙は、排出ローラ対によって排紙トレイへ搬送される。
【0057】
[第1検出部]
搬送ローラには、エンコーダディスク及び光学センサ(リニアエンコーダに設けられている光学センサとは異なるセンサである。)で構成されるロータリーエンコーダ(本発明の第1検出部の一例)が設けられている。エンコーダディスクは、搬送ローラと共に回転する透明な円盤状のものであり、放射状のマークが所定ピッチで記されている。エンコーダディスクは、搬送ローラの軸に固定されており、搬送ローラと共に回転する。光学センサは、搬送ローラと近接する位置に配置されている。
【0058】
光学センサは、発光素子と受光素子との間の空間にエンコーダディスクの周縁が位置するように配置されている。受光素子で光が受光されると、受光した光の輝度に応じたレベルのセンサ信号(例えば、輝度に応じた電気信号)が生成される。発光素子と受光素子との間にマークが位置していない状態では、LOWレベルのセンサ信号が生成される。発光素子と受光素子との間にマークが位置する状態では、HIレベルのセンサ信号が生成される。
【0059】
LOWレベルとHIレベルの切換回数によってASFモータ115の駆動量が算出可能である。また、上述したように、搬送ローラはASFモータ115とギヤなどを介して連結されていることから、搬送ローラの駆動量に基づいてASFモータ115の駆動量は容易に算出可能である。したがって、ロータリーエンコーダによって、ASFモータ115の駆動量が検出可能である。
【0060】
制御部130には、光学センサで生成されたセンサ信号が入力される。これにより、制御部130はASFモータ115の駆動量を認識する。
【0061】
[メンテナンス機構51]
図1に示されるように、メンテナンス機構51は、記録ヘッド39による画像記録領域の外側に配設されている。図2に示されるように、メンテナンス機構51は、キャップ55(本発明のキャップの一例)と、フレーム57と、インク排出部63と、カム機構60などにより構成されている。
【0062】
キャップ55は、キャリッジ38がメンテナンス機構51の直上に設定されたキャッピング位置(図2において二点鎖線で示される位置)に移動された際に、記録ヘッド39のノズル40を覆うためのものである。本実施形態では、キャップ55は、その下部とフレーム57の底面との間に設けられたコイルバネ65を介して上下方向へ弾性的に支持されている。
【0063】
コイルバネ65が自然長である場合、つまりキャップ55に外力が加えられていない状態では、キャップ55は記録ヘッド39から離反した位置(本発明の第2位置に相当)に配置されている(図2及び図3(A)参照)。キャップ55が、後述するスライドカム11によって上向きに押されると、コイルバネ65が伸びる。このとき、コイルバネ65は、圧縮方向にバネ力を発生させて、キャップ55を下向きへ付勢する。キャップ55は、スライドカム11によって上向きに押されることによって、上記第2位置から記録ヘッド39を圧接してノズル40を覆う位置(本発明の第1位置に相当、図3(C)参照)に姿勢変化される。なお、キャップ55の姿勢変化については後段で更に詳細に説明する。
【0064】
フレーム57の下側にインク排出部63が取り付けられている。インク排出部63は、チューブ継手64を有する。チューブ継手64は、キャップ55に接続されている。チューブ継手64にチューブの一端が接続されており、チューブの他端は、ポンプに接続されている。キャップ55が第1位置に配置された状態、つまりキャップ55がノズル40を覆った状態でポンプが駆動すると、ノズル40内のインクはポンプによって強制的に吸引されて廃インクトレイへ排出される。このような動作はパージ処理と呼ばれる。
【0065】
[ストッパ]
図2、図6及び図7に示されるように、キャップ55に対して突出する凸部58が設けられている。図2に示されるように、キャリッジ38の下面における凸部58に対向する位置には凹部59が設けられている。図2に示されるように、凹部59の形状は、凸部58の形状と相対する形状であって、凸部58よりも大きい形状である。
【0066】
図7に示されるように、キャップ55が第1位置に姿勢変化して、記録ヘッド39を圧接した場合、凸部58と凹部59は嵌合される。凸部58と凹部59が嵌合された状態において、キャリッジの主走査方向への移動は、凹部59の側面が凸部58に当たることによって制止される。よって、キャリッジ38は、キャップ55が第1位置に位置付けられたときには移動されない。以上より、凸部58及び凹部59は、第1位置のキャップ55が記録ヘッド39に圧接された状態において、キャリッジ38の移動を制止する本発明のストッパの一例である。
【0067】
[カム機構60]
以下、図2〜図6に基づいて、カム機構60(本発明のカム機構の一例)について説明する。ここで、図4は、図3の紙面右側から左側を見た場合のカム機構60の断面図であり、図5(A)、(D)、(G)、(J)の上段は、図4のA−Aの断面図であり、図5(A)、(D)、(G)、(J)の下段は、図4のB−Bの断面図であり、図5(B)、(E)、(H)、(K)は、図4のC−Cの断面図であり、図5(C)、(F)、(I)、(L)は、図4のD−Dの断面図であり、図6(A)は、カム機構60付近の斜視図であり、図6(B)は、カム機構60の第3ピニオンギヤ16、第1ラックギヤ17、及び第2ラックギヤ18以外を省略した場合のカム機構60付近の斜視図である。
【0068】
図2、図3及び図6に示されるように、複合機は、第1ピニオンギヤ12(本発明の第1ギヤの一例)と、欠歯ギヤ13(本発明の第2ギヤの一例)と、コイルバネ14(本発明の付勢部材の一例)とを備えている。
【0069】
図2〜図6に示されるように、カム機構60は、キャップ55の下側に設けられている。カム機構60は、スライドカム11(本発明のスライドカムの一例)と、第2ピニオンギヤ15(本発明の第3ギヤの一例)と、第3ピニオンギヤ16(本発明の回転体の一例である第4ギヤの一例)と、第1ラックギヤ17(本発明の第1ラックギヤの一例)と、第2ラックギヤ18(本発明の第2ラックギヤの一例)と、により構成されている。また、以下で説明するように、カム機構60は、スライドカム11によって、キャップ55を第1位置及び第2位置に保持可能である。
【0070】
スライドカム11は、キャリッジ38のスライド方向と同方向、つまりキャップ55の移動方向と交差する方向へ移動可能に支持されている。スライドカム11は、キャップ55の下面に当接されるガイド面を有する。図5に示されるように、ガイド面は、各々が異なる高さであって高位置の第1ガイド面111(本発明の第1カム面に相当)及び低位置の第2ガイド面112(本発明の第2カム面に相当)と、第1ガイド面と第2ガイド面を連結する傾斜面113(本発明の第3カム面に相当)と、により構成されている。
【0071】
図3(A)に示されるように、第2ガイド面112のみがキャップ55の下面とフレーム57の上面との間隙に入り込み、第2ガイド面112とキャップ55の下面が当接している場合、キャップ55は第2位置に保持される。つまり、第2ガイド面112は、キャップ55を第2位置に保持する。
【0072】
スライドカム11が駆動源(後述するように本実施形態ではASFモータ115)から駆動伝達されて図2及び図3の紙面右側へ摺動すると、図3(B)に示されるように、第2ガイド面112に加えて傾斜面113がキャップ55とフレーム57の上面との間隙に入り込む。これにより、第2ガイド面112がキャップ55の下面から離れ、傾斜面113がキャップ55の下面に当接する。その結果、キャップ55は、傾斜面113の高さに応じて、第2位置から第1位置へ向かって移動される。
【0073】
スライドカム11が駆動源から駆動伝達されて更に図2及び図3の紙面右側へ摺動すると、図3(C)に示されるように、第2ガイド面112及び傾斜面113に加えて第1ガイド面111がキャップ55の下面とフレーム57の上面との間隙に入り込む。これにより、傾斜面113がキャップ55の下面から離れ、第1ガイド面111がキャップ55の下面に当接する。その結果、キャップ55は第1位置に保持される。つまり、第1ガイド面111は、キャップを第1位置に保持する。以上より、スライドカム11は、移動することによってキャップ55を姿勢変化させる。
【0074】
第1ピニオンギヤ12は全周に歯を有するギヤである。第1ピニオンギヤ12は、本実施形態ではASFモータ115(本発明の第1駆動源の一例)から駆動伝達機構を介して駆動力が伝達されて回転される。駆動伝達機構は、少なくとも1つの遊星ギヤなどでなる中間ギヤで構成されており、ASFモータ115の駆動力は当該中間ギヤを介して第1ピニオンギヤ12へ伝達される。駆動伝達機構を構成する中間ギヤのうち、第1ピニオンギヤ12と噛合される中間ギヤ19(図4参照)は、本発明の駆動ギヤの一例である。なお、本実施形態においては、ASFモータ115が本発明の駆動源の一例であるが、他のモータであってもよい。
【0075】
図4に示されるように、欠歯ギヤ13は、第1ピニオンギヤ12と共に、支軸61に軸支されている。また、欠歯ギヤ13も第1ピニオンギヤ12と同様に、ASFモータ115から中間ギヤ19を介して駆動力が伝達されて回転される。また、欠歯ギヤ13は、第1ピニオンギヤ12と同じピッチの歯を有している。以上より、欠歯ギヤ13は、第1ピニオンギヤ12と同軸に配置されて中間ギヤ19と噛合可能に設けられている。
【0076】
また、支軸61に沿って、コイルバネ14が設けられている。具体的には、支軸61はコイルバネ14の中心を貫くように配置されている。コイルバネ14は、欠歯ギヤ13を、図4の紙面右側、つまり第1ピニオンギヤ12を押す向きに付勢する。つまり、コイルバネ14は、第1ピニオンギヤ12と欠歯ギヤ13とが圧接するようにスラスト方向へ付勢する。これにより、欠歯ギヤ13は、ASFモータ115からの駆動力の伝達の他に、第1ピニオンギヤ12との間に生じる摩擦力によって、第1ピニオンギヤ12の回転に伴って回転し得る。
【0077】
図5(B)に示されるように、欠歯ギヤ13の外周は、ギヤの歯が一部範囲にわたって欠落されている。つまり、欠歯ギヤ13には、歯が形成されている有歯部131と、歯が形成されていない欠歯部132が設けられている。キャップ55が第1位置と第2位置の間に位置される場合(図5(G)参照)、有歯部131が中間ギヤ19と対向する(図5(H)参照)。このとき、欠歯ギヤ13と中間ギヤ19が噛合し、駆動力が中間ギヤ19から欠歯ギヤ13に伝達され、欠歯ギヤ13が回転する。一方、キャップ55が第1位置に位置される場合(図5(A)参照)、及び、キャップ55が第2位置に位置される場合(図5(J)参照)、欠歯部132が中間ギヤ19と対向する(図5(B)、(K)参照)。このとき、欠歯ギヤ13と中間ギヤ19は噛合せず、駆動力が中間ギヤ19から欠歯ギヤ13に伝達されない。したがって、欠歯ギヤ13は中間ギヤ19からの駆動力の伝達によっては回転しない。
【0078】
図4に示されるように、第2ピニオンギヤ15は、第1ピニオンギヤ12及び欠歯ギヤ13と共に、支軸61に軸支されている。第2ピニオンギヤ15は、スラスト方向の一方の面を欠歯ギヤ13に固定されており、欠歯ギヤ13と一体に回転する。第2ピニオンギヤ15には、欠歯ギヤ13と固定されている面と反対側の面に凸部151が設けられている。凸部151は、後述する第3ピニオンギヤの凹部161に嵌め込まれており、凹部161に沿って摺動する。
【0079】
図4に示されるように、第3ピニオンギヤ16は、第1ピニオンギヤ12、欠歯ギヤ13及び第2ピニオンギヤ15と共に、支軸61に軸支されている。第3ピニオンギヤ16には、スラスト方向の面のうち、第2ピニオンギヤ15と当接する側の面に凹部161が設けられている。図5(C)に示されるように、凹部161は、欠歯ギヤ13の円周方向に所定角度φに亘り、且つ直径方向に所定の幅dを有している。
【0080】
凸部151が凹部161の円周方向の端部に当接している場合に、凸部151が凹部161の端部を押す向きに第2ピニオンギヤ15が回転すれば、第3ピニオンギヤ16は第2ピニオンギヤ15と一体に回転する。一方、凸部151が凹部161の円周方向の端部に当接していない場合、又は、当接していても凸部151が凹部161の端部を押す向きと反対向きに第2ピニオンギヤ15が回転した場合には、第2ピニオンギヤ15が回転しても、凸部151と凹部161は相対移動するため、第3ピニオンギヤ16は回転しない。つまり、第3ピニオンギヤ16は、第2ピニオンギヤ15及び第2ピニオンギヤ15と一体に回転する欠歯ギヤ13に対して円周方向に遊びを有して係合されている。
【0081】
図4〜図6に示されるように、第1ラックギヤ17は、スライドカム11の第2ガイド面112に、スライドカム11の移動方向に沿って設けられている。第1ラックギヤ17は第2ピニオンギヤ15と対向する位置に設けられており、第2ピニオンギヤ15と噛合可能である。
【0082】
第1ラックギヤ17は、その両端の所定範囲に亘ってギヤの歯が欠落されている。つまり、第1ラックギヤ17は、歯が形成されている有歯部171と、傾斜面113の側で歯が形成されていない第1欠歯部172と、傾斜面113と反対側で歯が形成されていない第2欠歯部173とが設けられている。
【0083】
キャップ55が第1位置に保持される場合(図3(C)及び図5(A)参照)、第1欠歯部172と第2ピニオンギヤ15が対向する。このとき、第1ラックギヤ17と第2ピニオンギヤ15は噛合せず、スライドカム11は第2ピニオンギヤ15からの駆動力の伝達によっては移動しない。このときのスライドカム11の位置が本発明の第1移動端部に相当する。
【0084】
キャップ55が第2位置に保持される場合(図3(A)及び図5(J)参照)、第2欠歯部173と第2ピニオンギヤ15が対向する。このとき、第1ラックギヤ17と第2ピニオンギヤ15は噛合せず、スライドカム11は第2ピニオンギヤ15からの駆動力の伝達によっては移動しない。このときのスライドカム11の位置が本発明の第2移動端部に相当する。
【0085】
以上より、第1ラックギヤ17は、第1移動端部及び第2移動端部において、第2ピニオンギヤ15と噛合しない範囲に設けられている。
【0086】
キャップ55が第1位置と第2位置の間に位置される場合(図3(B)及び図5(G)参照)、有歯部171と第2ピニオンギヤ15が対向する。このとき、第1ラックギヤ17と第2ピニオンギヤ15は噛合するので、第2ピニオンギヤ15に駆動力が伝達されていれば、スライドカム11は第2ピニオンギヤ15からの駆動力の伝達によって移動する。また、キャップ55が、傾斜面113の近傍の所定範囲において第1ガイド面111に支持されている場合も(図5(D)参照)、有歯部171と第2ピニオンギヤ15は対向する。このときも、第1ラックギヤ17と第2ピニオンギヤ15は噛合するので、第2ピニオンギヤ15に駆動力が伝達されていれば、スライドカム11は第2ピニオンギヤ15からの駆動力の伝達によって移動する。
【0087】
以上より、第1ラックギヤ17は、少なくともスライドカム11が傾斜面113によってキャップ55を支持する領域において第2ピニオンギヤ15と噛合する範囲に渡って設けられている。
【0088】
図4〜図6に示すように、第2ラックギヤ18は、スライドカム11の第2ガイド面112に、スライドカム11の移動方向に沿って、第1ラックギヤ17に並んで設けられている。第2ラックギヤ18は、第3ピニオンギヤ16と対向する位置に設けられており、第3ピニオンギヤ16と噛合可能である。
【0089】
第2ラックギヤ18は、第1ラックギヤ17の有歯部171に隣接する部分、第1欠歯部172に隣接する部分、及び第2欠歯部173に隣接する部分の全てに歯が設けられている。これにより、キャップ55が第1位置、第2位置、及び第1位置と第2位置の間の何れの位置であっても、第2ラックギヤ18は第3ピニオンギヤ16と噛合する。換言すると、第2ラックギヤ18は、第1移動端部及び第2移動端部に渡って第3ピニオンギヤ16と噛合するように設けられている。以上より、第3ピニオンギヤ16に駆動力が伝達されていれば、スライドカム11は第3ピニオンギヤ16の駆動力の伝達によって移動する。
【0090】
[カム機構60の動作]
以下、図5に基づいて、カム機構60の移動、及びキャップ55の姿勢変化について説明する。
【0091】
まず、キャップ55の第1位置から第2位置に伴うカム機構60の移動について説明する。図5(A)〜(C)に示されるように、キャップ55が、スライドカム11の第1ガイド面111、つまりカム機構60によって第1位置に保持されているとき、カム機構10は以下のような状態である。欠歯ギヤ13の欠歯部132が中間ギヤ19と対向しているため、欠歯ギヤ13と中間ギヤ19は噛合していない(図5(B)参照)。つまり、ASFモータ115はカム機構60と切り離されている。第2ピニオンギヤ15は第1ラックギヤ17の第1欠歯部172と対向している(図5(A)参照)。第2ピニオンギヤ15の凸部151は、第3ピニオンギヤ16の凹部161の左端に当接している(図5(C)参照)。
【0092】
図4に示されるように、ASFモータ115からの駆動力が中間ギヤ19を介して第1ピニオンギヤ12に伝達されて、第1ピニオンギヤ12が図5(B)に示される一点鎖線矢印の向きに回転すると、カム機構60は以下に説明する状態となる。欠歯ギヤ13は、コイルバネ14によって第1ピニオンギヤ12を押す向きに付勢されているため、第1ピニオンギヤ12の回転に伴って第1ピニオンギヤ12の回転と同じ向き、つまり図5(B)に示される一点鎖線矢印の向きに回転する。これにより、欠歯ギヤ13と中間ギヤ19は噛合し、欠歯ギヤ13も中間ギヤ19から駆動力を伝達される(図5(E)参照)。
【0093】
欠歯ギヤ13の回転により、第2ピニオンギヤ15が欠歯ギヤ13と一体に回転する。しかし、図5(A)に示されるように、第2ピニオンギヤ15は第1ラックギヤ17の第1欠歯部172と対向しており、第1ラックギヤ17と噛合していないため、第2ピニオンギヤ15が回転してもスライドカム11は移動しない。
【0094】
第2ピニオンギヤ15の回転は欠歯ギヤ13の回転と同じ向き、つまり図5(C)に示される一点鎖線矢印の向きであるため、第2ピニオンギヤ15が第3ピニオンギヤ16に対して相対移動するのみで第3ピニオンギヤ16は回転しない。具体的には、第2ピニオンギヤ15の凸部151が第3ピニオンギヤ16の凹部161の右端に向かって移動する。
【0095】
つまり、第3ピニオンギヤ16は、第2ピニオンギヤ15との間に有する遊びによって、第1移動端部において、スライドカム11を第2移動端部へ移動させるための回転方向へ第2ピニオンギヤ15と個別に回転可能である。換言すると、カム機構60がキャップ55を第1位置に保持している状態において、第3ピニオンギヤ16は第2ピニオンギヤ15と個別に、上記回転方向へ回転可能である。
【0096】
第2ピニオンギヤ15の凸部151が第3ピニオンギヤ16の凹部161の右端に到達すると(図5(F)参照)、第3ピニオンギヤ16が第2ピニオンギヤ15と一体に回転する。第3ピニオンギヤ16は第2ラックギヤ18と噛合しているため、スライドカム11が図5(A)の実線矢印の向きに移動を開始する。
【0097】
図5(D)に示されるように、スライドカム11が所定量移動すると、第2ピニオンギヤ15は第1ラックギヤ17の第1欠歯部172と対向する状態から有歯部171と対向する状態へ移行する。これにより、第2ピニオンギヤ15と第1ラックギヤ17は噛合する。その後、スライドカム11が更に所定量移動すると、キャップ55は第1ガイド面111に支持された状態から傾斜面113に支持された状態に移行する。つまり、キャップ55が、スライドカム11の第1ガイド面111に支持された状態から傾斜面113に支持された状態に移行する前に、第2ピニオンギヤ15と第1ラックギヤ17は噛合する。この条件を満たすように、カム機構60の構造が決定される。具体的には、第1欠歯部172の長さが、第1ガイド面111に支持されたキャップ55が傾斜面113に支持された状態に移行するまでに必要なスライドカム11の移動量より短く構成される。
【0098】
第2ピニオンギヤ15及び第1ラックギヤ17の噛合後、キャップ55がスライドカム11の傾斜面113に支持された状態に移行する(図5(G)〜(I)参照)。スライドカム11は、欠歯ギヤ13の欠歯部132と中間ギヤ19が対向することによって、欠歯ギヤ13と中間ギヤ19が噛合しなくなるまで、キャップ55を第1位置から第2位置へ下降させる向きへの移動を継続する。欠歯ギヤ13と中間ギヤ19が噛合しなくなると(図5(K)参照)、つまりキャップ55が第2位置に到達するとスライドカム11は停止する(図5(J)参照)。このときの第2ピニオンギヤ15の状態が図5(L)に示される。
【0099】
以上説明したとおり、第3ピニオンギヤ16が回転すると、スライドカム11が移動して、キャップ55が第2位置から第1位置へ姿勢変化する。つまり、カム機構60は、第3ピニオンギヤ16の回転方向の運動をキャップ55の姿勢変化の運動に変換する。
【0100】
以上、キャップ55の第1位置から第2位置への姿勢変化について説明したが、キャップ55の第2位置から第1位置への姿勢変化は、各ギヤの回転が逆向きである以外、第1位置から第2位置への姿勢変化と同様の手順で実行される。
【0101】
なお、キャップ55の第2位置から第1位置への姿勢変化、及び第1位置から第2位置への姿勢変化は、以下で説明する制御部130がASFモータ115を制御することによって実行される。
【0102】
[制御部130]
以下、図8が参照されて、制御部130の概略構成が説明される。制御部130は、複合機の全体動作を制御するものであり、CPU141、ROM142、RAM143、EEPROM144、ASIC145を主とするマイクロコンピュータとして構成されている。これらは内部バス147によって接続されている。
【0103】
ROM142には、CPU141が複合機の各種動作を制御するためのプログラムなどが格納されている。RAM143は、CPU141が上記プログラムを実行する際に用いるデータや信号等を一時的に記憶する領域などとして使用される。EEPROM144には、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ等が格納される。
【0104】
ASIC145には、ASFモータ115及びCRモータ96などが接続されている。ASIC145には、ASFモータ115及びCRモータ96などを制御する駆動回路が組み込まれている。例えば、CPU141から上記駆動回路にASFモータ115を回転させるための駆動信号が入力されると、駆動信号に応じた駆動電流(後述する第1電流または第3電流)が駆動回路からASFモータ115へ出力される。これにより、ASFモータ115が所定の回転速度で正回転又は逆回転する。なお、CRモータ96を駆動させる場合もASFモータ115の場合と同様、CRモータ96を回転させるための駆動信号に応じた電流が駆動回路からCRモータ96へ出力される。
【0105】
[キャッピング制御及び判定制御]
上述の如く構成されたプリンタ部11においては、キャップ55を第2位置から第1位置に姿勢変化させるキャッピング制御、及びキャッピング制御が適正に行われたか否か、つまりキャッピング制御によってキャップ55が第1位置に到達しているか否かを判定する判定制御が、制御部130によって行われる。以下、図9及び図10に基づいて、キャッピング制御及び判定制御の処理手順について説明する。キャッピング制御及び判定制御は、例えば、複合機のユーザによる操作パネル4の操作によって、画像記録ユニット24に対するクリーニング動作が指示された場合に実行される処理である。なお、以下で説明する各処理は、特に記載がある場合を除いて制御部130によって行われる。
【0106】
初めに、判定制御によってキャッピング制御が適正に行われていないと判定された回数が保持されるフラグがリセットされ、ゼロにセットされる(S10)。
【0107】
以下、キャッピング制御について説明する。CPU141から駆動回路に駆動信号が入力され、第1電流I1(本発明の第1電流に相当)がASFモータ115に供給される(S20)。ここで、第1電流I1は、キャップ55を姿勢変化させるために必要な大きさの電流である(図9参照)。詳細には、第1電流I1は、キャップ55を姿勢変化させるために最低限必要な大きさの第4電流I4よりも予め設定された所定量だけ大きい電流である。駆動電流が変動しても、確実にASFモータ115を駆動させるために、第1電流I1は第4電流I4よりも大きく設定されているのである。
【0108】
ASFモータ115は第1電流I1が供給されることによって駆動される。欠歯ギヤ13の空転などによる異常がない限り、キャップ55は、ASFモータ115の駆動によって、第2位置H2から第1位置H1に姿勢変化する。以上の処理が、第1電流I1をASFモータ115に流すことによって、キャップ55を第2位置H2から第1位置H1に姿勢変化させるキャッピング制御(本発明のキャッピング手段に相当)である。
【0109】
以下、判定制御について説明する。ステップS20においてASFモータ115が駆動されると、ロータリーエンコーダから送られてくるセンサ信号に基づいて、ASFモータ115の駆動量が算出される。ここで、駆動量は、上記センサ信号のパルス数で表される。パルス数が多い程、ASFモータ115の駆動量は大きい。算出されたASFモータ115の駆動量が、第1駆動量P1(本発明の第1駆動量に相当)以上である場合(S30:Yes)、ASFモータ115に供給される電流が、第1電流I1から第3電流I3(本発明の第3電流に相当)に切り換えられる(S40)。
【0110】
ここで、第1駆動量P1は、キャップ55の第2位置H2から第1位置H1への移動に設計上必要な駆動量である(図9参照)。第1駆動量P1は、第2位置H2と第1位置H1の距離、スライドカム11の構成、及びASFモータ115とキャップ55の間に存在するギヤの数、大きさ及び歯数などによって決定される。
【0111】
また、第3電流I3は、第1電流I1より小さく、かつASFモータ115を無負荷で駆動するために必要な大きさの第2電流I2より大きい電流である(図9参照)。第2電流I2は、他のギヤなどと一切連結されていないASFモータ115を駆動させるために必要な最小限の電流である。
【0112】
なお、図9においては、第1電流I1から第3電流I3に切り換えられるタイミングが、ASFモータ115の駆動量が第1駆動量P1となってから遅延している。これは、搬送ローラやASFモータ115などの部品ばらつきによるものである。
【0113】
一方、算出されたASFモータ115の駆動量が、第1駆動量P1より小さい場合(S30:No)、ASFモータ115の駆動量が第1駆動量P1以上となるまで、第1電流I1がASFモータ115に供給される(S20)。
【0114】
第3電流I3は、ASFモータ115に所定期間T1(図9参照)供給される。ここで、所定期間T1は、例えば、第3電流I3によってASFモータ115が駆動すると仮定した場合に、当該駆動の有無がロータリーエンコーダによって確実に検出可能なだけ、ASFモータ115を駆動させることができる期間である。
【0115】
以上より、ASFモータ115の駆動量が、第1駆動量P1であるとロータリーエンコーダにより検出されたことを条件として、第3電流I3をASFモータ115に流す処理(本発明の電流供給手段に相当)がステップS30、S40において実行される。
【0116】
ロータリーエンコーダから送られているセンサ信号に基づいて算出されたASFモータ115の第5駆動量P5が、第2駆動量P2(本発明の第2駆動量に相当)と比較される。
【0117】
ここで、第2駆動量P2は、所定期間T1の第3電流I3によって無負荷のASFモータ115が駆動する場合の駆動量よりも小さい任意の量である。また、第5駆動量は、第3電流I3がASFモータ115に供給される所定期間T1におけるASFモータ115の実際の駆動量である。
【0118】
第5駆動量P5が第2駆動量P2より大きい場合(S50:No)、キャップ55の姿勢変化に異常はないと判定される。キャップ55が第1位置H1へ姿勢変化した場合、カム機構60の動作において説明したとおり、ASFモータ115はカム機構60と切り離されているため負荷が小さく、第3電流I3で駆動可能だからである。つまり、図9(A)に示されるように、ASFモータ115の駆動量は、駆動電流が第1電流I1から第3電流I3に切り換えられた後にも増加する。その結果、第5駆動量P5は、第2駆動量P2よりも大きくなるのである。
【0119】
ここで、上記の異常は、例えば、キャップ55が、第2位置H2から第1位置H1への移動を開始したが、欠歯ギヤ13の空転などによって第1位置H1へ到達しなかったことによる異常である。しかし、ステップS50における判定では、キャップ55が全く移動せず、第2位置H2に存在している場合において異常であると判定できない。キャップ55が第2位置H2に存在している場合には、キャップ55が第1位置H1に存在している場合と同様に、ASFモータ115はカム機構60と切り離されているからである。そこで、第5駆動量P5が第2駆動量P2より大きい場合(S50:No)、キャップ55が全く移動しないことによる異常の判定をするために、後述するステップS90の処理へ進む。
【0120】
一方、第5駆動量P5が第2駆動量P2以下である場合(S50:Yes)、キャップ55の姿勢変化が正常に実行されておらず、キャップ55が第2位置H2と第1位置H1の間に存在していると判定される。キャップ55が第2位置H2と第1位置H1の間に存在している場合、ASFモータ115はカム機構60と連結されているため負荷が大きく、第3電流I3では駆動不可能だからである。つまり、図9(B)に示されるように、ASFモータ115の駆動量は、駆動電流が第1電流I1から第3電流I3に切り換えられると増加しない。その結果、第5駆動量P5は、第2駆動量P2よりも大きくならないのである。
【0121】
なお、負荷と連結されているキャップ55に第3電流I3が供給された場合であっても、ギヤ間のバックラッシ、各ギヤの製造ばらつき、及び慣性などによって、ASFモータ115が僅かに駆動するおそれがある。その場合でも、第2駆動量P2がASFモータ115の僅かの駆動量よりも大きく設定されることによって、誤判定が防止可能である。そのため、第2駆動量P2は、第1駆動量P1並びに後述する第3駆動量P3及び第4駆動量P4より小さく設定されることが好ましい。
【0122】
第5駆動量P5が第2駆動量P2以下である場合(S50:Yes)、キャップ55の姿勢変化が再試行される。つまり、フラグの値がインクリメントされた後に(S60)、フラグの値が2以上であるか否か判定される(S70)。フラグの値が1以下である場合、キャップ55の姿勢変化の再試行のために、キャッピング手段(S20及び、電流供給手段(S30、S40)が実行される。フラグの値が2以上である場合、キャップ55の移動が正常に行われなかった旨が、ユーザに対して報知される(S80)。当該報知は、例えば、操作パネルに設けられた液晶表示部へのメッセージの表示や、音声などによって行われる。なお、本実施形態においては、キャップ55の姿勢変化の再試行は1回だけ実行されるが、再試行は2回以上実行されてもよい。
【0123】
以上より、第3電流I3がASFモータ115に流れる所定期間T1に、ASFモータ115の駆動量P5が所定の第2駆動量P2以下であるとロータリーエンコーダにより検出されたことを条件として、キャッピング手段によるキャップ55の姿勢変化が正常に実行されていないと判定する処理(本発明の第1判定手段に相当)が、ステップS50〜S80において実行される。
【0124】
ステップS50において、第5駆動量P5が第2駆動量P2より大きい場合(S50:No)、キャリッジ38に移動の指示が出される(S90)。詳細には、CPU141から駆動回路にCRモータ96に駆動電流を供給すべき旨の駆動信号が入力される。そして、駆動回路からCRモータ96へ駆動電流が出力される。つまり、第3電流I3がASFモータ115に流れる所定期間T1に、ASFモータ115の駆動量P5が所定の第2駆動量P2より大きいとロータリーエンコーダにより検出されたことを条件として、CRモータ96を駆動させてキャリッジ38を移動させる処理(本発明の移動指示手段に相当)が、ステップ90において実行される。
【0125】
リニアエンコーダの光学センサ35から送られてくる検出信号に基づいて、キャリッジ38が移動したか否かが判定される(S100)。判定は、以下に記すように検出信号の信号レベルの切り替わりの有無によって行われる。
【0126】
キャリッジ38が移動した場合、光学センサ35と対向する位置におけるエンコーダストリップ50のパターンが透光部と遮光部で切り替わるため、検出信号の信号レベルが切り替わる。一方、キャリッジ38が移動していない場合、エンコーダストリップ50のパターンが切り替わることがないため、検出信号の信号レベルは一定である。
【0127】
キャップ55が第1位置H1に到達している場合、凸部58と凹部59は嵌合されているため、キャリッジ38の移動はキャップ55よりも突出する凸部58によって制止される。つまり、キャリッジ38が移動していない場合(S50:No)、キャップ55は第1位置H1へ正常に姿勢変化されたと判定される。
【0128】
一方、キャップ55が全く移動しておらず第2位置H2にとどまっている場合、凸部58と凹部59は嵌合されていない為、キャリッジ38は制御部130からの指示によって移動可能である。つまり、キャリッジ38が移動した場合(S50:Yes)、キャップ55の姿勢変化が正常に実行されていないと判定される。この場合、上述と同様の方法でキャップ55の姿勢変化が再試行される(S60〜S80)。
【0129】
以上より、移動指示手段によるキャリッジ38の移動でキャリッジ38の位置が変わったことをリニアエンコーダによって検出されたことを条件として、キャッピング手段によるキャップ55の姿勢変化が正常に実行されていないと判定する処理(本発明の第2判定手段に相当)が、ステップS100において実行される。
【0130】
[実施形態の効果]
中間ギヤ19と欠歯ギヤ13が噛合していない場合、ASFモータ115は、中間ギヤ19のみを駆動すればよい。しかし、中間ギヤ19と欠歯ギヤ13が噛合している場合、ASFモータ115は、中間ギヤ19に加えて欠歯ギヤ13及び欠歯ギヤ13と係合されたカム機構60やキャップ55を駆動する必要がある。そのため、中間ギヤ19と欠歯ギヤ13が噛合している場合のASFモータ115の負荷トルクは、中間ギヤ19と欠歯ギヤ13が噛合していない場合のASFモータ115の負荷トルクより大きい。
【0131】
キャッピング手段によるキャップ55の第1位置H1への姿勢変化が正常に完了した場合、中間ギヤ19は、欠歯ギヤ13の欠歯部132と対向しているため、欠歯ギヤ13と噛合していない。つまり、ASFモータ115の負荷は中間ギヤ19のみである。この状態において、電流供給手段によりASFモータ115に第3電流I3が流された場合、第3電流I3は第2電流I2より大きいために、ASFモータ115は駆動される。したがって、ASFモータ115の駆動量P5が第2駆動量P2以下であることがロータリーエンコーダによって検出されない。
【0132】
一方、キャッピング手段によるキャップ55の第1位置H1への姿勢変化が正常に完了していない場合、中間ギヤ19は欠歯ギヤ13と噛合している。つまり、ASFモータ115の負荷は、中間ギヤ19、欠歯ギヤ13、カム機構60及びキャップ55である。この状態において、電流供給手段によりASFモータ115に第3電流I3が流された場合、第3電流I3は第1電流I1より小さいために、ASFモータ115は駆動されない。したがって、ASFモータ115の駆動量P5が第2駆動量P2以下であることがロータリーエンコーダによって検出される。
【0133】
以上のように、本実施形態においては、キャップ55を姿勢変化させるよりも少ない電流を流した場合にASFモータ115が駆動するか否かによって、キャップ55の姿勢変化が正常に完了したか否かを検出している。ASFモータ115は、通常、必要な電流より少ない電流で駆動することはなく、駆動したとしても僅かである。よって、キャップ55が記録ヘッド39に密着していることを確実に検出することができる。
【0134】
また、本実施形態においては、キャップ55が記録ヘッド39に密着していることを検出するために新たにセンサを設ける必要がない。また、ASFモータ115の駆動量を検出するためのエンコーダは、既に搭載されているものを流用することができるため、専用のエンコーダを新たに設ける必要がない。よって、センサ及びエンコーダの両方を設けることによる装置のコストアップを防止できる。
【0135】
また、上述の実施形態においては、カム機構60として、図4〜図6に示される構成が用いられる。これにより、以下に記すような効果が奏される。
【0136】
欠歯13ギヤは第1移動端部において中間ギヤ19と噛合しない。つまり、欠歯ギヤ13が所定向きに回転した結果、欠歯ギヤ13の欠歯部132が中間ギヤ19と対向すると、欠歯ギヤ13と中間ギヤ19との噛合が解除されるのである。この場合、欠歯ギヤ13はそれ以上所定向きへ回転しない。
【0137】
この状態において、欠歯ギヤ13が反対向きに回転するには、欠歯ギヤ13は再び中間ギヤ19と噛合する必要がある。そのためには、欠歯ギヤ13が当該反対向きに回転する第1ピニオンギヤ12との摩擦によって第1ピニオンギヤ12と一体に回転すればよい。しかし、欠歯ギヤ13が第1ピニオンギヤ12との摩擦力によって回転するには、欠歯ギヤ13が他の負荷、例えば他のギヤから完全に切り離される必要がある。
【0138】
上述の構成では、欠歯ギヤ13と一体に回転する第2ピニオンギヤ15は、第1移動端部において、第1ラックギヤ17と噛合しない。また、第2ピニオンギヤ15は、第1移動端部において、第3ピニオンギヤ16との係合部分に設けられた遊びによって、第3ピニオンギヤ16と個別に回転可能である。つまり、第1移動端部において、欠歯ギヤ13は、他の負荷であるスライドカム11から完全に切り離される。よって、第1移動端部において、欠歯ギヤ13は、第1ピニオンギヤ12との摩擦によって第1ピニオンギヤ12と一体に、当該反対向きに回転可能である。
【0139】
また、上述の実施形態においては、移動指示手段及び第2判定手段が実行されることによって、以下に記すような効果が奏される。
【0140】
欠歯ギヤ13の空転、或いは中間ギヤ19、欠歯ギヤ13またはカム機構60の故障などが発生すると、キャッピング手段が実行されたにもかかわらず、キャップ55が全く動かないおそれがある。
【0141】
キャッピング手段が実行されたにもかかわらずキャップ55が全く動かなかった場合、中間ギヤ19は、キャッピング手段の実行完了後も欠歯ギヤ13の欠歯部132と対向しており、欠歯ギヤ13と噛合していない。そのため、電流供給手段により第3電流I3が流されると、ASFモータ115は駆動される。つまり、キャップ55の姿勢変化が正常に実行されていないにもかかわらず、第1判定手段は、キャップ55の姿勢変化が正常に実行されたと誤判定してしまう虞がある。
【0142】
そこで、上述の実施形態においては、移動指示手段によってキャリッジ38を移動させ、第2判定手段は、移動指示手段による指示でキャリッジ38が移動したか否かによって、キャップ55の姿勢変化が正常に実行されたか否かを判定する。つまり、キャップ55が第1位置H1に到達して記録ヘッド39に圧接されている場合、記録ヘッド39が搭載されたキャリッジ38はストッパとしてキャップ55に対して突出する凸部58によって移動を制止されている。一方、キャップ55が全く動かずに第1位置H1に到達していない場合には、凸部58とキャリッジの下面に設けられている凹部59は嵌合されていないため、移動指示手段によってキャリッジ38は移動する。これにより、第2判定手段は、キャップ55の姿勢変化が正常に実行されていないと判定可能である。
【0143】
[実施形態の変形例1]
上述の実施形態においては、判定制御が実行されているとき、ASFモータ115の駆動量が第1駆動量P1以上となった後に、ASFモータ115に供給される電流が、第1電流I1から第3電流I3に切り換えられる場合について説明した。しかし、ASFモータ115の駆動量が第1駆動量P1に達する前に、ASFモータ115に供給される電流が、第1電流I1から第3電流I3に切り換えられてもよい。
【0144】
以下に詳述する。図11に示されるように、第1駆動量P1は、第3駆動量P3(本発明の第3駆動量に相当)及び第4駆動量P4(本発明の第4駆動量に相当)が含まれている。なお、図11では、第1駆動量P1は、第3駆動量P3及び第4駆動量の合計に設定されている。
【0145】
ここで、第3駆動量P3は、キャップ55が第2位置H2から第1位置H1へ移動するのに必要最小限の駆動量である。第4駆動量P4は、第3駆動量分の駆動のあとに余分に駆動される駆動量である。つまり、ASFモータ115は必要最小限の第3駆動量P3だけ駆動された後も、余分に駆動されるのである。なお、第4駆動量P4は、例えば第3駆動量P3の半分程度に設定されている。
【0146】
そして、変形例1においては、電流供給手段は、ASFモータ115が第3駆動量P3分の駆動のあとに第4駆動量P4分の駆動をするときに、第1電流I1を第3電流I3に切り換えて、第3電流I3をASFモータ115に流す。
【0147】
つまり、図10のステップS30において、算出されたASFモータ115の駆動量が、第3駆動量P3以上である場合(S30:Yes)、ASFモータ115に供給される電流が、第1電流I1から第3電流I3に切り換えられる(S40)。
【0148】
また、第3電流I3は、ASFモータ115に所定期間T2供給される。ここで、所定期間T2は、ASFモータ115に第1電流I1が供給された場合に、ASFモータ115が第4駆動量P4だけ駆動する期間である。
【0149】
その他の各手段(キャッピング手段、電流供給手段、第1判定手段、移動指示手段、及び第2判定手段)の処理内容は、図9の場合と同様である。
【0150】
上述の実施形態においては、キャッピング手段が実行された際に、ASFモータ115は設計上必要な駆動量である第3駆動量P3に加えて第4駆動量P4余分に駆動される。これは、キャップ55を記録ヘッド39に確実に圧接させるためである。
【0151】
また、上述の実施形態においては、電流供給手段は、ASFモータ115が第4駆動量P4分の駆動をするときに、第3電流I3をASFモータ115に流す。その後、第2判定手段による判定が実行される。つまり、電流供給手段及び第2判定手段は、キャッピング手段の実行中に並行して実行される。これにより、キャップ55の姿勢変化が正常に行われたか否かの判定に要する時間が短縮可能である。
【0152】
[実施形態の変形例2]
上述の実施形態においては、カム機構60が、スライドカム11、第2ピニオンギヤ15、第3ピニオンギヤ16、第1ラックギヤ17、及び第2ラックギヤ18を備えた所謂ラックピニオン機構である場合について説明した。しかし、カム機構60はラックピニオン機構に限らない。例えば、以下に詳述するように、回転カムを用いた機構であってもよい。
【0153】
図12に、本実施形態のカム機構60が示されている。ここで、図12(B)は、カム機構60の平面図であり、図12(A)は、図12(B)におけるA−Aの断面図であり、図12(C)は、図12(B)を紙面右側から見た右側面図である。
【0154】
本実施形態のカム機構60は、上述の実施形態におけるラックピニオン機構と同様に、キャップ55の下側に設けられている。図12に示されるように、カム機構60は、リフトカム211(本発明の回転体の一例である回転カムの一例)と、リフトアーム213(本発明のカムフォロアの一例)とを備えている。
【0155】
図12(B)に示されるように、リフトカム211は円盤形状を有し、第1ピニオンギヤ12及び欠歯ギヤ13と共に、支軸61に軸支されている。
【0156】
図12(A)に示されるように、リフトカム211のスラスト方向の欠歯ギヤ13と当接する側の側面には、凹部214が設けられている。凹部214は、上述した凹部161と同様に、リフトカム211の円周方向に所定角度に亘り、且つ直径方向に所定の幅を有している。また、欠歯ギヤ13には、スラスト方向の面のうち、リフトカム211と当接する側の面に凸部215が設けられている。凸部215は、凹部214に嵌め込まれており、凹部214に沿って摺動する。
【0157】
凸部215が凹部214の円周方向の端部に当接している場合に、凸部215が凹部214の端部を押す向きに欠歯ギヤ13が回転すれば、リフトカム211は欠歯ギヤ13と一体に回転する。つまり、リフトカム211は、欠歯ギヤ13から駆動伝達されて回転する。
【0158】
一方、凸部215が凹部214の円周方向の端部に当接していない場合、又は、当接していても凸部215が凹部214の端部を押す向きと反対向きに欠歯ギヤ13が回転した場合には、欠歯ギヤ13が回転しても、凸部215と凹部214は相対移動するため、リフトカム211は回転しない。つまり、リフトカム211は、スラスト方向の一方の面において、欠歯ギヤ13に対して円周方向に遊びを有して係合されている。
【0159】
図12(C)に示されるように、リフトカム211におけるスラスト方向の欠歯ギヤ13と当接する側と反対側の側面には、当該側面の周方向に連続するカム溝212(本発明のカム溝の一例)が形成されている。リフトカム211のカム溝212には、リフトアーム213の一端側に設けられた突起(本発明の係合部の一例)が係入されている。
【0160】
リフトアーム213は、支軸214に軸支されるアーム形状をなしている。したがって、カム溝212に係入されたリフトアーム213の一端側が、リフトカム211の正逆転によって変動すると、その変動によって、リフトアーム213が支軸214周りに回転される。リフトアーム213の他端にはキャップ55を支持し、キャップ55と一体に移動可能なキャップホルダ216が回動可能に連結されている。前述されたように、リフトアーム213の突起が、リフトカム211の正逆転によって変動してリフトアーム213が支軸214を中心として回転されると、そのリフトアーム213の回転に伴って、キャップ55が上下方向(図12(B)において紙面に垂直な方向)へスライドされる。つまり、キャップ55が、第1位置と第2位置とに姿勢変化される。
【0161】
以上より、リフトアーム213は、突起がリフトカム211の径方向へ移動することに基づいてキャップ55を姿勢変化させる。
【0162】
以下、本実施形態におけるカム機構60の移動、及びキャップ55の姿勢変化について説明する。
【0163】
まず、キャップ55の第1位置から第2位置への移動に伴うカム機構60の移動について説明する。キャップ55が、リフトアーム213によって第1位置に保持されているとき、カム機構10は以下のような状態である。
【0164】
欠歯ギヤ13の欠歯部132が中間ギヤ19と対向しているため、欠歯ギヤ13と中間ギヤ19は噛合していない(図5(B)と同様の状態)。また、欠歯ギヤ13の凸部151は、リフトカム211の凹部214の円周方向の一端に当接している。これにより、欠歯ギヤ13の回転が凹部214の円周方向の一端から他端の向きである場合、欠歯ギヤ13とリフトカム211は相対移動するため、リフトカム211は欠歯ギヤ13にとって負荷とならない。つまり、凸部151が凹部214の他端に到達することによって、欠歯ギヤ13とリフトカム211が一体に回転可能となるまで、欠歯ギヤ13はリフトカム211を含むカム機構60と切り離されている。
【0165】
ASFモータ115からの駆動力が中間ギヤ19を介して第1ピニオンギヤ12に伝達されて、第1ピニオンギヤ12がキャップ55を第1位置から第2位置へ移動させる向きに回転すると、カム機構60は以下のような状態となる。
【0166】
欠歯ギヤ13は、コイルバネ14によって第1ピニオンギヤ12を押す向きに付勢されているため、第1ピニオンギヤ12の回転に伴って第1ピニオンギヤ12の回転と同じ向きに回転する。このような欠歯ギヤ13の回転は、上述したように欠歯ギヤ13がカム機構60と切り離されているために可能である。欠歯ギヤ13の回転により、欠歯ギヤ13と中間ギヤ19は噛合し、以後、欠歯ギヤ13も中間ギヤ19から駆動力の伝達が可能となる。
【0167】
欠歯ギヤ19が回転してもリフトカム211は回転しない。なぜなら、欠歯ギヤ19がリフトカム211に対して相対移動するのみだからである。具体的には、欠歯ギヤ19の凸部215がリフトカム211の凹部214の一端から他端に向かって移動するからである。つまり、リフトカム211は、欠歯ギヤ13との間に有する遊びによって、リフトアーム213がキャップ55を第1位置に保持している状態において、キャップ55を第1位置から第2位置へ移動させるための回転方向へ欠歯ギヤ13と個別に回転可能である。
【0168】
凸部151が凹部214の他端に到達することによって、欠歯ギヤ13とリフトカム211が一体に回転を開始する。すると上述したように、リフトカム211の回転によってリフトアーム213が回転され、リフトアーム213の回転に伴ってキャップ55が下方向にスライドされる。つまり、キャップ55が、第1位置から第2位置に姿勢変化される。
【0169】
なお、キャップ55の第2位置から第1位置への姿勢変化は、各ギヤ及びリフトアーム213の回転が逆向きである以外、第1位置から第2位置への姿勢変化と同様の手順で実行される。
【0170】
所定向きに回転することによって欠歯部分が中間ギヤ19と対向している欠歯ギヤ13が、第1ピニオンギヤ12との摩擦力によって所定向きと反対向きに回転するには、欠歯ギヤ13が他の負荷から完全に切り離される必要がある。
【0171】
上述の実施形態においては、欠歯ギヤ13は、リフトアーム213がキャップ55を第1位置に保持している状態において、リフトカム211との係合部分に設けられた遊びによって、リフトカム211と個別に回転可能である。つまり、リフトアーム213がキャップ55を第1位置に保持している状態において、欠歯ギヤ13は、他の負荷であるリフトカム211、リフトアーム213及びキャップ55から完全に切り離される。よって、リフトアーム213がキャップ55を第1位置に保持している状態において、欠歯ギヤ13は、第1ピニオンギヤ12との摩擦によって第1ピニオンギヤ12と一体に、当該反対向きに回転可能である。
【符号の説明】
【0172】
11・・・スライドカム
12・・・第1ピニオンギヤ
13・・・欠歯ギヤ
14・・・コイルバネ
15・・・第2ピニオンギヤ
16・・・第3ピニオンギヤ
17・・・第1ラックギヤ
18・・・第2ラックギヤ
38・・・キャリッジ
55・・・キャップ
60・・・カム機構
96・・・CRモータ
115・・・ASFモータ
130・・・制御部
211・・・リフトカム
213・・・リフトアーム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出する記録ヘッドに圧接して吐出口を覆う第1位置、及び上記記録ヘッドから離反した第2位置に姿勢変化可能なキャップと、
第1駆動源と、
上記第1駆動源から駆動伝達される駆動ギヤと噛合し、全周に歯を有する第1ギヤと、
上記第1ギヤと同軸に配置されて上記駆動ギヤと噛合可能に設けられており、上記第1ギヤと同じピッチの歯を有し、当該歯の一部が上記駆動ギヤと噛合しないように欠落された第2ギヤと、
上記第1ギヤと上記第2ギヤとが圧接するようにスラスト方向へ付勢する付勢部材と、
上記第2ギヤに対して円周方向へ遊びを有して係合された回転体を有し、当該回転体の回転方向の運動を上記キャップの姿勢変化の運動に変換するとともに、上記キャップを上記第1位置及び上記第2位置に保持可能なカム機構と、
上記第1駆動源の駆動量を検出する第1検出部と、
制御部と、を備え、
上記第2ギヤは、上記カム機構が上記キャップを上記第1位置に保持している状態において、上記駆動ギヤと噛合せず、
上記回転体は、上記遊びによって、上記カム機構が上記キャップを上記第1位置に保持している状態において、上記キャップを上記第1位置から上記第2位置へ移動させるための回転方向へ上記第2ギヤと個別に回転可能であり、
上記制御部は、
上記キャップを姿勢変化させるために必要な大きさの第1電流を上記第1駆動源に流すことによって、上記キャップを上記第2位置から上記第1位置に姿勢変化させるキャッピング手段と、
上記第1駆動源の駆動量が、上記キャップの上記第2位置から上記第1位置への移動に設計上必要な第1駆動量であると上記第1検出部により検出されたことを条件として、上記第1電流より小さく、かつ上記第1駆動源を無負荷で駆動するために必要な大きさの第2電流より大きい第3電流を、上記第1駆動源に流す電流供給手段と、
上記第3電流が上記第1駆動源に流れる所定期間に、上記第1駆動源の駆動量が所定の第2駆動量以下であると上記第1検出部により検出されたことを条件として、上記キャッピング手段による上記キャップの姿勢変化が正常に実行されていないと判定する第1判定手段と、を備える画像記録装置。
【請求項2】
上記回転体は、上記第2ギヤと一体に回転する第3ギヤに対して円周方向へ遊びを有して係合された第4ギヤであり、
上記カム機構は、
上記キャップを上記第1位置に保持するための第1カム面、上記キャップを上記第2位置に保持するための第2カム面、及び上記第1カム面と上記第2カム面とを連結する第3カム面を有し、上記キャップの移動方向と交差する方向へ移動することによって上記キャップを姿勢変化させるスライドカムと、
上記第3ギヤと、
上記第4ギヤと、
上記スライドカムにおいて上記スライドカムの移動方向へ沿って設けられており、上記第3ギヤと噛合可能な第1ラックギヤと、
上記第1ラックギヤに並んで設けられており、上記第4ギヤと噛合可能な第2ラックギヤと、を備え、
上記第1ラックギヤは、上記スライドカムが上記キャップを上記第1位置に保持する第1移動端部、及び上記第2位置に保持する第2移動端部において、上記第3ギヤと噛合しない範囲であって、かつ少なくとも上記スライドカムが上記第3カム面によって上記キャップを支持する領域において上記第3ギヤと噛合する範囲に渡って設けられており、
上記第2ラックギヤは、上記スライドカムが上記キャップを上記第1位置に保持する第1移動端部、及び上記第2位置に保持する第2移動端部に渡って上記第4ギヤと噛合するように設けられており、
上記第2ギヤは、上記スライドカムが上記キャップを上記第1位置に保持する第1移動端部において上記駆動ギヤと噛合せず、
上記第4ギヤは、上記遊びによって、上記スライドカムが上記キャップを上記第1位置に保持する第1移動端部において、上記スライドカムを上記第2移動端部へ移動させるための回転方向へ上記第3ギヤと個別に回転可能である請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
上記回転体は、スラスト方向の一方の面において、上記第2ギヤに対して円周方向へ遊びを有して係合され、スラスト方向の他方の面において、周方向へ連続するカム溝を有し、上記第2ギヤから駆動伝達されて回転される回転カムであり、
上記カム機構は、
上記回転カムと、
上記カム溝に係入された係合部を有し、当該係合部が上記回転カムの径方向へ移動することに基づいて上記キャップを姿勢変化させるカムフォロアと、を備え、
上記第2ギヤは、上記カムフォロアが上記キャップを上記第1位置に保持している状態において、上記駆動ギヤと噛合せず、
上記回転カムは、上記遊びによって、上記カムフォロアが上記キャップを上記第1位置に保持している状態において、上記キャップを上記第1位置から上記第2位置へ移動させるための回転方向へ上記第2ギヤと個別に回転可能である請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項4】
上記記録ヘッドを搭載して上記キャップの移動方向と交差する方向へ往復動される走査部と、
上記走査部を移動させる第2駆動源と、
上記走査部が往復動される方向における上記走査部の位置を検出する第2検出部と、
上記第1位置の上記キャップが上記記録ヘッドに圧接された状態において、上記走査部の移動を制止するストッパと、を更に備え、
上記制御部は、
上記第3電流が上記第1駆動源に流れる所定期間に、上記第1駆動源の駆動量が所定の第2駆動量より大きいと上記第1検出部により検出されたことを条件として、上記第2駆動源を駆動させて上記走査部を移動させる移動指示手段と、
上記移動指示手段による上記走査部の移動で上記走査部の位置が変わったことを上記第2検出部によって検出されたことを条件として、上記キャッピング手段による上記キャップの姿勢変化が正常に実行されていないと判定する第2判定手段と、を更に備える請求項1から3のいずれかに記載の画像記録装置。
【請求項5】
上記第1駆動量は、上記キャップが上記第2位置から上記第1位置へ移動するのに必要最小限の駆動量である第3駆動量と、上記第3駆動量分の駆動のあとに余分に駆動する駆動量である第4駆動量とが含まれており、
上記電流供給手段は、上記第1駆動源が上記第3駆動量分の駆動のあとに上記第4駆動量分の駆動をするときに、上記第1電流を上記第3電流に切り換えて、上記第3電流を上記第1駆動源に流す請求項1から4のいずれかに記載の画像記録装置。
【請求項1】
液滴を吐出する記録ヘッドに圧接して吐出口を覆う第1位置、及び上記記録ヘッドから離反した第2位置に姿勢変化可能なキャップと、
第1駆動源と、
上記第1駆動源から駆動伝達される駆動ギヤと噛合し、全周に歯を有する第1ギヤと、
上記第1ギヤと同軸に配置されて上記駆動ギヤと噛合可能に設けられており、上記第1ギヤと同じピッチの歯を有し、当該歯の一部が上記駆動ギヤと噛合しないように欠落された第2ギヤと、
上記第1ギヤと上記第2ギヤとが圧接するようにスラスト方向へ付勢する付勢部材と、
上記第2ギヤに対して円周方向へ遊びを有して係合された回転体を有し、当該回転体の回転方向の運動を上記キャップの姿勢変化の運動に変換するとともに、上記キャップを上記第1位置及び上記第2位置に保持可能なカム機構と、
上記第1駆動源の駆動量を検出する第1検出部と、
制御部と、を備え、
上記第2ギヤは、上記カム機構が上記キャップを上記第1位置に保持している状態において、上記駆動ギヤと噛合せず、
上記回転体は、上記遊びによって、上記カム機構が上記キャップを上記第1位置に保持している状態において、上記キャップを上記第1位置から上記第2位置へ移動させるための回転方向へ上記第2ギヤと個別に回転可能であり、
上記制御部は、
上記キャップを姿勢変化させるために必要な大きさの第1電流を上記第1駆動源に流すことによって、上記キャップを上記第2位置から上記第1位置に姿勢変化させるキャッピング手段と、
上記第1駆動源の駆動量が、上記キャップの上記第2位置から上記第1位置への移動に設計上必要な第1駆動量であると上記第1検出部により検出されたことを条件として、上記第1電流より小さく、かつ上記第1駆動源を無負荷で駆動するために必要な大きさの第2電流より大きい第3電流を、上記第1駆動源に流す電流供給手段と、
上記第3電流が上記第1駆動源に流れる所定期間に、上記第1駆動源の駆動量が所定の第2駆動量以下であると上記第1検出部により検出されたことを条件として、上記キャッピング手段による上記キャップの姿勢変化が正常に実行されていないと判定する第1判定手段と、を備える画像記録装置。
【請求項2】
上記回転体は、上記第2ギヤと一体に回転する第3ギヤに対して円周方向へ遊びを有して係合された第4ギヤであり、
上記カム機構は、
上記キャップを上記第1位置に保持するための第1カム面、上記キャップを上記第2位置に保持するための第2カム面、及び上記第1カム面と上記第2カム面とを連結する第3カム面を有し、上記キャップの移動方向と交差する方向へ移動することによって上記キャップを姿勢変化させるスライドカムと、
上記第3ギヤと、
上記第4ギヤと、
上記スライドカムにおいて上記スライドカムの移動方向へ沿って設けられており、上記第3ギヤと噛合可能な第1ラックギヤと、
上記第1ラックギヤに並んで設けられており、上記第4ギヤと噛合可能な第2ラックギヤと、を備え、
上記第1ラックギヤは、上記スライドカムが上記キャップを上記第1位置に保持する第1移動端部、及び上記第2位置に保持する第2移動端部において、上記第3ギヤと噛合しない範囲であって、かつ少なくとも上記スライドカムが上記第3カム面によって上記キャップを支持する領域において上記第3ギヤと噛合する範囲に渡って設けられており、
上記第2ラックギヤは、上記スライドカムが上記キャップを上記第1位置に保持する第1移動端部、及び上記第2位置に保持する第2移動端部に渡って上記第4ギヤと噛合するように設けられており、
上記第2ギヤは、上記スライドカムが上記キャップを上記第1位置に保持する第1移動端部において上記駆動ギヤと噛合せず、
上記第4ギヤは、上記遊びによって、上記スライドカムが上記キャップを上記第1位置に保持する第1移動端部において、上記スライドカムを上記第2移動端部へ移動させるための回転方向へ上記第3ギヤと個別に回転可能である請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
上記回転体は、スラスト方向の一方の面において、上記第2ギヤに対して円周方向へ遊びを有して係合され、スラスト方向の他方の面において、周方向へ連続するカム溝を有し、上記第2ギヤから駆動伝達されて回転される回転カムであり、
上記カム機構は、
上記回転カムと、
上記カム溝に係入された係合部を有し、当該係合部が上記回転カムの径方向へ移動することに基づいて上記キャップを姿勢変化させるカムフォロアと、を備え、
上記第2ギヤは、上記カムフォロアが上記キャップを上記第1位置に保持している状態において、上記駆動ギヤと噛合せず、
上記回転カムは、上記遊びによって、上記カムフォロアが上記キャップを上記第1位置に保持している状態において、上記キャップを上記第1位置から上記第2位置へ移動させるための回転方向へ上記第2ギヤと個別に回転可能である請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項4】
上記記録ヘッドを搭載して上記キャップの移動方向と交差する方向へ往復動される走査部と、
上記走査部を移動させる第2駆動源と、
上記走査部が往復動される方向における上記走査部の位置を検出する第2検出部と、
上記第1位置の上記キャップが上記記録ヘッドに圧接された状態において、上記走査部の移動を制止するストッパと、を更に備え、
上記制御部は、
上記第3電流が上記第1駆動源に流れる所定期間に、上記第1駆動源の駆動量が所定の第2駆動量より大きいと上記第1検出部により検出されたことを条件として、上記第2駆動源を駆動させて上記走査部を移動させる移動指示手段と、
上記移動指示手段による上記走査部の移動で上記走査部の位置が変わったことを上記第2検出部によって検出されたことを条件として、上記キャッピング手段による上記キャップの姿勢変化が正常に実行されていないと判定する第2判定手段と、を更に備える請求項1から3のいずれかに記載の画像記録装置。
【請求項5】
上記第1駆動量は、上記キャップが上記第2位置から上記第1位置へ移動するのに必要最小限の駆動量である第3駆動量と、上記第3駆動量分の駆動のあとに余分に駆動する駆動量である第4駆動量とが含まれており、
上記電流供給手段は、上記第1駆動源が上記第3駆動量分の駆動のあとに上記第4駆動量分の駆動をするときに、上記第1電流を上記第3電流に切り換えて、上記第3電流を上記第1駆動源に流す請求項1から4のいずれかに記載の画像記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−136436(P2011−136436A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−296358(P2009−296358)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
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