画像診断支援装置およびその動作方法、並びに画像診断支援プログラム
【課題】横隔膜のような胸腹部を分ける境界面や臓器を複数の区域に分ける組織の境界面を抽出することにより、画像診断を支援する。
【解決手段】
被写体を分割する境界面上に存在する複数の点を入力点として設定し(#2)、入力点を用いて、境界面に近似する平面を基準平面として決定する(#3)。被写体の外側において、基準平面上に複数の補助点を設定し(#4)、補助点と入力点を用いて入力点を補間して前記境界面に近似する曲面を生成して(#8)、生成した曲面を前記境界面として被写体を分けた領域に分割する(#10)。
【解決手段】
被写体を分割する境界面上に存在する複数の点を入力点として設定し(#2)、入力点を用いて、境界面に近似する平面を基準平面として決定する(#3)。被写体の外側において、基準平面上に複数の補助点を設定し(#4)、補助点と入力点を用いて入力点を補間して前記境界面に近似する曲面を生成して(#8)、生成した曲面を前記境界面として被写体を分けた領域に分割する(#10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は三次元画像の検出処理に関し、特に医用三次元画像における境界面の検出に関する装置および方法、並びにプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、医療現場では、CT(Computed Tomography)、MR(Magnetic Resonance)等の各種モダリティで取得された3次元の医用画像(ボクセルデータ)を用いて診断を行っている。ボクセルデータは多数の画素で構成される3次元データであり大量の情報を持っているが、大量の情報の中から診断に必要な情報を取り出すのは容易ではない。そのため、実際に診断を行うためには、画像処理装置を用いて診断の対象となる部位を抽出して様々な画像処理を施した上で診断を行っている。
【0003】
例えば、心臓などの臓器の表面の血管を診断対象とする場合には、臓器の表面の曲面を抽出した上で、曲面に所定の厚みを持たせた領域を関心領域とし、関心領域に対してMIP(maximum intensity projection)処理を施して血管のみを描出した画像を生成して、血管の診断を行っている。
【0004】
このような臓器の抽出方法として、ボクセルデータ中の任意の点の位置を3次元で指定して、指定された点を互いに接続して指定点を含む曲面を抽出する手法が提案されている。特許文献1では、まず、ボクセルデータ内に存在する臓器の表面上で複数の指定点を指定し、それら複数の指定点の外接球面を仮定し、さらに、その外接球面の重心に光源を仮定して、その光源から複数の指定点それぞれを外接球面上に射影した射影指定点間を接続する辺の接続関係を2次元デローネ分割(Delaunay2D)を用いて取得し、射影指定点間の接続関係を元の臓器の表面上の指定点の接続関係に適用することで曲面を定義して、臓器の表面の形状を抽出することを可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-187531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の手法は、臓器の表面のように閉曲面で構成される構造物の抽出には適しているが、面状の構造物、例えば、肺野と腹部を分ける横隔膜のような境界面、肺または肝臓を複数の区域に分ける境界面、あるいは、心臓を左右心室・心房などに分ける境界面を抽出するのには適していない。
【0007】
病変部の位置を正確に把握するには、横隔膜の位置や、組織の境界面をみて各組織内の何処に病変部が存在しているかを判断する必要があり、ボクセルデータ内の各組織の境界面の認識が重要になってくる。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、境界面を抽出することにより、画像診断を支援する画像診断支援装置およびその動作方法、並びに画像診断支援プログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の画像診断支援装置は、所定の被写体を撮影して得られたボリュームデータにおいて、前記被写体を分割する境界面上に存在する複数の点を入力点として設定する入力点設定手段と、前記入力点を用いて、前記境界面に近似する平面を基準平面として決定する基準平面決定手段と、前記被写体の外側において、前記基準平面上に複数の補助点を設定し、該補助点と前記入力点を用いて入力点を補間して、前記境界面に近似する曲面を生成する曲面生成手段と、前記生成した曲面を前記境界面として前記被写体を分けた領域に分割する領域分割手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0010】
本発明の上記の画像診断支援装置の動作方法は、前記入力点設定手段により、所定の被写体を撮影して得られたボリュームデータにおいて、前記被写体を分割する境界面上に存在する複数の点を入力点として設定する入力点設定ステップと、前記基準平面決定手段により、前記入力点を用いて、前記境界面に近似する平面を基準平面として決定する基準平面決定ステップと、前記曲面生成手段により、前記被写体の外側において、前記基準平面上に複数の補助点を設定し、該補助点と前記入力点を用いて入力点を補間して、前記境界面に近似する曲面を生成する曲面生成ステップと、前記領域分割手段により、前記生成した曲面を前記境界面として前記被写体を分けた領域に分割する分割ステップとを実行することを特徴とするものである。
【0011】
本発明の画像診断支援プログラムは、コンピュータを上記の画像診断支援装置として機能させるためのものである。
【0012】
本発明において、「被写体」の具体例としては、人や動物の体全体、人や動物の胸腹部などの特定の部位、あるいは、肺、肝臓、心臓などの臓器等が挙げられる。
【0013】
また、「境界面」には、例えば、胸腹部を分割する横隔膜、肺を複数の区域に分割する境界面(右肺を上葉・中葉・下葉に分ける境界面、左肺を上葉・下葉に分ける境界面など)、肝臓を複数の区域に分ける境界面(肝臓全体を右葉と左葉に分ける境界面、肝臓の右葉を前区域と後区域に分けるに分ける境界面、右葉を上区域と下区域に分ける境界面など)、心臓を左右心室・心房に分ける境界面などがある。
【0014】
「補間」とは、離れた数値の間にあるべき数値を全体の傾向から推測して補足することをいい、「入力点を補間して曲面を生成する」とは、離れた入力点の座標値を滑らかに繋げるための曲面を生成することをいう。生成した曲面は、入力点を通過する曲面でもよいし、入力点を通過しないが入力点の全体の変化に沿う曲面であってもよい。
【0015】
また、前記基準平面決定手段は、前記入力点に対する回帰平面を前記基準平面とするものであってもよい。
【0016】
また、前記曲面生成手段は、具体的には、前記補助点と前記入力点を用いたドロネー三角形分割により前記補間を行って前記曲面を生成するようにしてもよい。
【0017】
さらに、前記曲面生成手段は、前記入力点を前記基準平面に投影した投影点に対して2次元のドロネー三角形分割を用いて前記投影点間を接続する辺を決定し、該投影点間を接続する辺の接続関係を前記投影点を投影する前の前記入力点に適用することにより、前記入力点を接続する辺を決定して前記曲面を生成するようにしてもよい。
【0018】
また、前記ボリュームデータ中の所定の位置の指示入力を受け付ける指示入力受付手段をさらに備えるように構成して、前記入力点設定手段で、前記指示入力した位置の近傍における輝度または濃度勾配に基づいて前記境界面上に存在する点を検出して前記入力点として設定するものが望ましい。
【0019】
また、前記基準平面決定手段が、前記入力点に基づいて前記基準平面の候補となる複数の候補平面を取得する第1の候補平面取得手段と、前記複数の候補平面を表示装置上に表示する第1の候補平面表示手段と、前記表示された複数の候補平面の中から選択された候補平面の入力を受け付ける候補平面選択入力受付手段とを備えるように構成して、前記選択された候補平面を前記基準平面として決定するようにしてもよい。
【0020】
あるいは、前記基準平面決定手段が、前記入力点に基づいて前記基準平面の候補となる候補平面を取得する第2の候補平面取得手段と、前記候補平面を表示装置上に表示する第2の候補平面表示手段と、前記表示された候補平面の向きの変更入力を受け付ける候補平面向き変更入力受付手段とを備えるように構成して、前記向きを変更した候補平面を前記基準平面として決定するようにしてもよい。
【0021】
前記ボリュームデータは、具体的には医用画像であってもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ボリュームデータ中の被写体を分割する境界面上の点を入力点として設定し、さらに、境界面に近似する平面を基準平面とし、基準平面上の被写体の外側に複数の補助点を設定し、補助点と入力点を用いて境界面に近似する曲面を生成することで、横隔膜のような境界面や、肺、肝臓、心臓を複数の区域に分ける組織の境界面のような平面状の境界面を被写体の外側まで延長して定義することができる。ボリュームデータ自体は単にボクセルの集合であり、境界面の情報を持っていないため、生成された曲面で被写体を2つの領域に分割して、腫瘍の正確な位置の把握など様々な画像診断を支援することが可能である。
【0023】
入力点に対する回帰平面を基準平面とするようにすれば、境界面の解剖学的な傾きに近い基準平面を決定することが可能である。
【0024】
補助点と入力点を用いたドロネー三角形分割を行うことで、入力点と補助点の接続関係を決定することができ、この接続関係に従って曲面を生成することで、境界面に近似した面を取得することが可能になる。
【0025】
また、入力点を基準平面に投影した投影点に対して2次元のドロネー三角形分割を用いて得た接続関係を、投影前の入力点に適用して3次元の入力点の接続関係を決定することにより、3次元のドロネー三角形分割を用いる場合より計算負荷を少なくすることが可能になる。
【0026】
指示入力した位置の近傍における輝度または濃度勾配に基づいて境界面上に存在する点を検出するようにすれば、ユーザーによって入力された入力点の位置が正確に境界面上になくとも自動的に正確な位置に移動させることが可能になる。
【0027】
入力点の配置によっては、基準平面の候補となる候補平面が複数取得される場合があるが、候補平面を表示装置上に表示して選択できるようにすれば、境界面の解剖学的な傾きに近い基準平面を選択することが可能になる。
【0028】
あるいは、入力点の配置によっては、本来の境界面の解剖学的な傾きとずれていた候補面が取得される場合があるが、候補平面を表示装置上に表示して、候補平面の向きを変更できるようにすれば、入力点の配置が十分でなくとも境界面の解剖学的な傾きに近い基準平面に修正することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態となる画像診断支援装置が導入された医用システムの概略構成図
【図2】本発明の実施形態における画像診断支援装置の構成を示したブロック図
【図3】本発明の実施形態における画像診断支援装置を用いた処理の流れを表したフローチャート
【図4】入力点に基づいて境界面に近似した基準平面を取得する方法を説明するための図
【図5】候補平面の選択を行うための基準平面決定手段の構成を示したブロック図
【図6】複数の候補平面の中から基準平面を選択するための表示画面の一例を示す図
【図7】候補平面の方向の変更を行うための基準平面決定手段の構成を示したブロック図
【図8】候補平面の向きを変えるための表示画面の一例を示す図
【図9】基準平面上に入力点を投影した投影点と補助点の一例を示す図
【図10】基準平面上に生成された分割三角形の一例を示す図
【図11】投影点を入力点の位置に戻したときに3次元空間上に生成された三角形群の一例を示す図
【図12】3次元空間上に生成された三角形群を細分化する様子を示す図
【図13】境界面に近似するように生成された曲面と入力点を被写体の断面画像に重ねて表示した表示画面の一例
【図14】指示入力受付手段の構成を示したブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して本発明の画像診断支援装置の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明の画像診断支援装置を含む医療システムの概略構成図である。医療システムは、モダリティ1、画像保管サーバ2、画像処理ワークステーション3、各機器を接続するネットワーク4で構成される。
【0031】
モダリティ1には、患者の診断対象となる部位(被写体)を撮影することにより、その被写体を表す3次元医用画像の画像データを生成し、その画像データにDICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)規格で規定された付帯情報を付加して、医用画像データとして出力する装置が含まれる。具体例としては、CT装置、MRI装置などが挙げられる。
【0032】
画像保管サーバ2は、モダリティ1で取得された医用画像データや、画像処理ワークステーション3で画像処理が施された画像データを画像データベースに保存・管理するコンピュータであり、大容量外部記憶装置やデータベース管理用ソフトウェアを備えている。モダリティ1で撮影された3次元医用画像データはボリュームデータVとして記憶される。
【0033】
画像処理ワークステーション3は、CPU、主記憶装置、補助記憶装置、入出力インターフェース、通信インターフェース、入力装置(マウス、キーボード等)、表示装置(ディスプレイモニタ)、データバス等の周知のハードウェア構成を備え、周知のオペレーティングシステム等がインストールされたものである。画像処理ワークステーション3にはGUI(Graphical User Interface)が実装されており、ユーザーは、GUIを利用してモダリティ1や画像保管サーバ2から所望の医用画像データを取得したり、各種の設定入力を行うことができる。さらに、画像処理ワークステーション3は、取得した医用画像データに対して種々の画像処理を施し、生成した画像を表示装置上に表示する機能を備えている。
【0034】
また、画像処理ワークステーション3は、画像診断支援プログラムをインストールすることにより画像診断支援処理が実装され、本発明の画像診断支援装置として機能する。この画像診断支援プログラムは、CD−ROM等の記憶媒体に記憶され、もしくはインターネット等のネットワークを介して配布され、コンピュータにインストールされる。
【0035】
医用画像データの記憶形式やネットワーク4経由での各装置間の通信は、DICOM等のプロトコルに基づいている。
【0036】
図2は、画像処理ワークステーション3の機能のうち、本発明の実施形態となる画像診断支援装置30に関連する部分のブロック図である。図に示すように、本発明の実施形態となる画像診断支援装置30は、指示入力受付手段31、入力点設定手段32、基準平面決定手段33、曲面生成手段34、領域分割手段35、ボリュームデータ記憶手段36で構成される。
【0037】
図3は、本発明の実施形態となる画像診断支援処理を行う際の処理の流れを示したフローチャートである。図2、図3を参照して、本発明の実施形態となる画像診断支援処理の流れについて説明する。本実施形態では、横隔膜を境界面として被写体を分割する場合について説明する。
【0038】
まず、画像処理ワークステーション3から、診断対象の患者の胸腹部が撮影されているボリュームデータVを要求すると、公知の画像検索システム、あるいは、公知のオーダリングシステムにおける画像検索・取得処理により、画像保管サーバ2から診断対象のボリュームデータVが取得される。取得されたボリュームデータVは画像処理ワークステーション3のボリュームデータ記憶手段36に一旦記憶される(#1)。
【0039】
次に、画像処理ワークステーション3の指示入力受付手段31を用いて、表示装置の画面上にボリュームデータVを表示し、ユーザーはGUIを用いて境界面上の点を複数指示入力する。例えば、表示装置上にアキシアル、サジタル、コロナル等の2次元断面画像を表示し、マウス等のポインティングデバイスを用いて、横隔膜上の点を指示する。点は横隔膜全体にまんべんなく配置されるように、断面画像を切り替え表示しながら、複数の2次元断面画像上で横隔膜上の点を指示する(#2)。
【0040】
入力点設定手段32は、指示された点を入力点として設定する。しかし、マウス等を用いて点を指示する場合、正確に横隔膜上の点を指示できるとは限らない。そこで、入力された点の近傍(具体的には指示された点を中心とした小さい範囲内)の画像中の輝度または濃度勾配を算出して横隔膜らしい部分を検出して、入力点を横隔膜上の点に修正して設定するようにしてもよい。
【0041】
入力点の配置に粗密があると、以下に説明する基準平面を算出する際に意図しない向きの基準平面が得られることが多い。そこで、入力点設定手段32では、入力点を設定する際に、指示入力受付手段31で指示された点の中から、近い位置に複数の入力点を配置させないように自動選択して設定する処理を付加するのが望ましい。あるいは、近接する複数の入力点を一つとみなして扱うなどの処理を付加するようにしてもよい。
【0042】
次に、基準平面決定手段33は、図4に示すように、入力点(●)に基づいて、横隔膜の全体のおおよその傾きを持つ平面を横隔膜に近似した基準平面として決定する。具体的には、入力点に対して主成分分析を行って基準平面の法線ベクトルの向きを求め、さらに、入力点に対する距離の最小2乗が最も小さくなる回帰平面を基準平面Pとして決定する(#3)。
【0043】
基準平面Pの法線ベクトルの向きは、入力点に対して主成分分析を行って得られた固有値が十分に小さい固有ベクトルの方向に決められるが、入力点が配置されている状態によっては固有値が十分に小さい固有ベクトルが2つ以上得られることがある。この場合には基準平面Pの候補となる候補平面は2つ以上存在することになる。横隔膜の傾きは解剖学的におおよそ決まっているが、固有値が十分に小さい固有ベクトルの候補平面の中には、固有値が最小の固有ベクトルの候補平面より解剖学的な傾きに近い候補平面がある。そこで、基準平面決定手段33は、複数の候補平面の中から解剖学的な傾きに近い平面を選択できるようなGUIを提供する。
【0044】
図5は、基準平面決定手段33の候補平面選択に関連するブロック図である。基準平面決定手段33には、第1の候補平面取得手段37a、第1の候補平面表示手段38a、候補平面選択入力受付手段39が設けられる。
【0045】
まず、第1の候補平面取得手段37aは、入力点に対して主成分分析を行って得られた固有値が十分に小さい固有ベクトルを法線ベクトルとする複数の平面を候補平面として取得する。
【0046】
次に、第1の候補平面表示手段38aは、第1の候補平面取得手段37aで取得した複数の候補平面を表示装置上に表示する。図6に表示画面の一例を示す。複数の候補平面P1,P2が、横隔膜に重なるように表示され、ユーザーが複数の候補平面のうちのいずれかを選択することができるように表示される(図6の右枠を参照)。図6では便宜上2次元で候補平面をあらわしているが、3次元表示にして候補平面の3次元の向きが確認できるようにするのが好ましい。
【0047】
候補平面選択入力受付手段39は、第1の候補平面表示手段38aで表示装置上に表示された複数の候補平面の中から、画像処理ワークステーション3の入力装置を用いた操作によって、ユーザーが候補平面の中から1つ選択した候補平面の入力を受け付ける。基準平面決定手段33は、候補平面選択入力受付手段39で、選択入力された候補平面を基準平面Pとして決定する。
【0048】
あるいは、主成分分析を行って得られた固有値が十分に小さい固有ベクトルが1つしか得られなかった場合、その固有ベクトルを法線ベクトルの方向とする候補平面を基準平面として決定するが、入力点が配置された状態によっては横隔膜の解剖学的な傾きとは少し異なる方向に向いている場合が存在する。この場合には、基準平面決定手段33は、候補平面の向きを変えることができるようなGUIを提供する。
【0049】
図7は、基準平面決定手段33の候補平面の方向変更に関連するブロック図である。基準平面決定手段33には、第2の候補平面取得手段37b、第2の候補平面表示手段38b、候補平面向き変更入力受付手段40が設けられる。
【0050】
まず、第2の候補平面取得手段37bでは、入力点に対して主成分分析を行って得られた固有値が最小の固有ベクトルを法線ベクトルとする1つの平面を基準平面Pの候補となる候補平面として取得する。
【0051】
第2の候補平面表示手段38bは、第2の候補平面取得手段37bで取得した候補平面を表示装置上に表示する。図8に表示画面の一例を示す。候補平面は、ユーザーが候補平面P3の向きを変えることができるように表示される。さらに、上下左右に位置を移動することができるようにしてもよい。図8の例では、「回転」を選択すると、候補平面P3の端点を持って回転させることで、候補平面P3の向きを変えることができる。また、「移動」を選択すると、候補平面P3をマウスでドラッグすることで上下左右に移動させることができる。図8では便宜上2次元で候補平面をあらわしているが、3次元表示にして候補平面の3次元の向きを変更できるようにするのが好ましい。
【0052】
次に、候補平面向き変更入力受付手段40は、画像処理ワークステーション3の入力装置を用いた操作によって、ユーザーが変更入力した候補平面の向きあるいは位置を受け付ける。基準平面決定手段33は、候補平面向き変更入力受付手段40で、変更入力された向きあるいは位置の候補平面を基準平面Pとして決定する。
【0053】
上述では、ユーザーがGUIを用いて、候補平面の中から基準平面Pを選択したり、向きを変えた候補平面を基準平面Pとする場合について説明したが、横隔膜の解剖学的な傾きはある程度決まっているので、自動的に複数の候補平面の中から境界面の解剖学的な傾きに近いものを基準平面Pとして決定したり、境界面の候補平面の向きを解剖学的な傾きに近くなるように決定してもよい。
【0054】
曲面生成手段34は、入力点を補間して境界面に近似する曲面を生成する。
後述の領域分割手段35において境界面で被写体を分割するために、画像全体をカバーできる十分に広い境界面を得ることが必要である。入力点は被写体内の横隔膜上に設定された点であるため、入力点より外側に存在する被写体の部分の境界面は定義されない。そこで、被写体の外側は基準平面Pと一致する面であると仮定し、入力点に対して十分に離れている被写体の外側の基準平面P上に矩形の四隅となる4つの補助点(△)を設定する(図9参照)。補助点は基準平面P上に被写体が存在している領域を認識して、被写体を中心にした所定の大きさの矩形を自動的に設定する(#4)。この矩形は、経験的に1辺が被写体の厚さの約10倍程度が好ましい。
【0055】
次に、入力点と補助点の接続関係を決定するが、処理を単純にするため、図9に示すように、まずいったん基準平面P上に各入力点(●)を投影した投影点(○)を設定する(#5)。
【0056】
基準平面P上に設定した4つの補助点をドロネー三角形分割時の外接矩形を構成する四隅の点として、補助点と投影点に対して2次元のドロネー三角形分割を行ない、投影点間、投影点と補助点間、補助点間を接続する三角形の辺の接続関係を決定する。図10に、基準平面P上に生成された分割三角形の一例を示す(#6)。
【0057】
基準平面P上での分割三角形が得られたら、投影点間、投影点と補助点間、補助点間を接続する辺の接続関係を保ったまま投影前の入力点に適用することで、3次元空間上での各入力点間、入力点と補助点間、補助点間を結ぶ三角形群が得られる。図11に、投影点を入力点の位置に戻したときの3次元空間上の入力点と補助点を結ぶ三角形群の一例を示す(#7)。
【0058】
次に説明する補間処理では、入力点の接続関係に従って入力点を補間した曲面を生成する。入力点と外接矩形の四隅の補助点の間を補間した補間曲面は、外接矩形の四隅の補助点を含む三角形の周囲に存在する入力点の位置の変化を反映するように補間されるため、入力点と外接矩形の四隅の補助点が極端に離れていて外接矩形の四隅の補助点を含む三角形が非常に大きいときは被写体の外側に歪んだ曲面が生成される。そこで、被写体の外側を基準平面Pに近い面にするために、被写体の外側にある基準平面P上に複数の補助点を追加した上でドロネー三角形分割するのが望ましい。基準平面P上に補助点を追加することにより、補間曲面が追加した補助点に拘束されて被写体の外側の歪みが抑制される。具体的には、外接矩形の四隅の点と投影点を結ぶ基準平面P上の分割三角形の辺を分割する点、外接矩形の辺を分割する点などを補助点として自動的に追加する。
【0059】
以上では計算量の少なさを考慮して、入力点を2次元の基準平面P上に投影してドロネー三角形分割処理を行ったが、2次元に投影せず3次元空間上で直接ドロネー三角形分割するアルゴリズムを採用することもできる。
【0060】
次に、3次元空間上で入力点と補助点の接続関係に従って、入力点と補助点を補間した補間曲面を生成する補間処理について説明する。
【0061】
補間処理は、3次元空間上で補間点と入力点を結ぶ三角形群を細分割した三角形を用いて曲面を生成することができる。上記の手法で得られた三角形群に対してModified Butterfly schemeの手法を適用して、各三角形が細かく分割された三角形群に変換され、滑らかな曲面を生成することができる(例えば、非特許文献:D.Zorin, et al; "Interpolating Subdivision for Meshes with Arbitrary Topology", SIGGRAPH’96 Proceedingsを参照)。
【0062】
図12に三角形を細かく分割する様子を示す。図12の左の図に示すような分割された三角形の各辺の中点を結んで、右の図に示す細かく分割した三角形を生成する。各辺を分割した中点は周囲に存在する点の位置を補間した位置になる。この処理を繰り返すことにより、入力点と補助点を補間した滑らかな曲面を生成することができる。また、このModified Butterfly schemeの手法によれば、生成された曲面は各入力点を必ず通る曲面になる。また、細分割曲面を生成する方法には、Catmull-Clark、Loopなどの他の手法を用いることもできる(#8)。
【0063】
あるいは、曲面の生成には、上記の入力点と補助点の接続関係に従って、NURBS曲面や陰関数などを用いた種々の補間曲面を生成する手法を用いることができる。上記のModified Butterfly schemeで生成された曲面では各入力点を必ず通る曲面が生成されるが、生成された曲面が入力点を通るか通らないかは手法によって異なり、周知の通り入力点は通らないが入力点の変化に沿った曲面を生成することも可能である。
【0064】
また、境界面を滑らかにする必要がなければ、細分割曲面などを用いて滑らかな曲面を生成せずにドロネー三角形分割処理で得られた三角形群をそのまま境界面として採用してもよい。
【0065】
以上の処理によって得た境界面に近似した曲面Sは、図13に示すように、被写体の断面画像に重ねて表示装置上に表示され、実際の領域分割処理(領域分割手段35)に入る前に曲面Sによる切断面を確認することができる。曲面Sは表示されている画像の遠方まで生成されているので、入力点より外側の体外まで広がっている。結果の確認のためには、断面画像上に曲面Sを曲線で表示するだけでなく、切断後の結果がわかるよう2つの領域を色分け表示するようにしてもよいし、片方の領域を見えなくするようにしてもよい。
【0066】
次に、境界面の曲面が横隔膜からずれている場合の曲面の修正について説明する。図14に示すように、指示入力受付手段31には、境界面の修正を行うためのGUIを提供する入力点修正手段41が設けられる。
【0067】
入力点修正手段41は、入力点を追加して境界面の曲面Sを修正する方法と、既に設定されている入力点の位置を修正して境界面の曲面Sを修正する方法とを提供する(#9)。
【0068】
入力点を追加して曲面Sを修正する場合、指示入力受付手段31と同様に2次元断面を表示して指示された入力点を追加する。しかし、入力点の追加後に上記のすべての処理を再度行うと、計算量が多くなって余分に時間がかかったり、追加した入力点を加えた主成分分析の結果によっては望ましくない向きの基準平面Pになったりすることがある。基準平面Pは、ユーザーによって既に好ましい向きになるように修正されている可能性が高いので、入力点追加時には、基準平面Pは変更せずに図3の#5に戻って、追加した入力点を投影した投影点を生成してドロネー三角形分割以降を再計算して新しい境界面の曲面Sを得る。
【0069】
また、Modified Butterfly schemeで生成された曲面のように各入力点を必ず通るように曲面が生成されている場合には、入力点を移動させて曲面Sを修正するほうが簡単である。例えば、図13のように、生成された境界面の曲面S上に入力点の位置にマーク(○の点)を付加して表示装置に表示し、マウスなどで入力点のマークをドラッグしながら適当な位置まで移動させる。
【0070】
このように既存の入力点の位置を移動して修正する場合は、入力点の接続関係を再度決定する必要はないので、ドロネー三角形分割は行わないで、接続関係を変更せず図3の#8に戻って、曲面Sの生成以降を行うようにしてもよい。
【0071】
以上の修正を繰り返し境界面の曲面Sを確定する。
【0072】
領域分割手段35は、上記で得られた曲面Sを境界面として領域を2つに分割する。
例えば、ボリュームデータVを構成する各ボクセルごとに、各ボクセルの位置から回帰平面の法線ベクトル方向へ延びる直線が生成された曲面Sと交わるかどうかを判定し、各ボクセルが境界面のどちらに属するかを決定して被写体を2つの領域に分割する。
【0073】
あるいは、ボリュームデータVの曲面S上のボクセルを境界ボクセルとして、領域拡張法を用いて境界ボクセルをまたがないよう領域を抽出するようにしてもよい。まず、ボリュームデータVの中の何処か一つのボクセルを注目点に指定する。次に、注目点が境界ボクセルではないかについて調べる。注目点が境界ボクセルではない場合は、注目点のボクセルにマーカをつけ注目点の周辺のボクセルを新たな注目点とする。再度、新たな注目点についても境界ボクセルでないかを調べる。注目点が無くなるまでこの処理を繰り返して、マーカの付いている部分を境界面を境にした片側の領域として抽出する。つまり、次々と隣を見てボクセルが境界ボクセルにぶつかるまで領域を広げていくことで被写体を2つの領域に分割する(#10)。
【0074】
上述では、横隔膜を境界面とする場合について説明したが、肺を複数の区域に分割する境界面(右肺を上葉・中葉・下葉に分ける境界面、左肺を上葉・下葉に分ける境界面など)、肝臓を複数の区域に分ける境界面(肝臓全体を右葉と左葉に分ける境界面、肝臓の右葉を前区域と後区域に分けるに分ける境界面、右葉を上区域と下区域に分ける境界面など)、あるいは、心臓を左右心室・心房などに分ける境界面の抽出にも用いることができる。この場合には、肺、肝臓、心臓のような1つの臓器を被写体として、上述の手法を適用して、臓器の境界面上の点を複数指定して、臓器を分ける境界面の曲面Sを生成する。
【0075】
また、上述の指示入力受付手段31では、2次元断面画像を表示して境界面上の入力点を設定する場合について説明したが、肺、心臓、肝臓などの臓器の表面上の位置を指示する場合には、臓器のボリュームレンダリング画像を表示しておき、表示画面を回転させながら、心臓や肝臓を区域に分ける境界面上の点を設定するようにしてもよい。
【0076】
また、肝臓は、肝臓を通る血管を基準に複数の区域に分ける境界面が決められるので、入力点設定手段32において、指定された点の周囲の濃度値から血管を抽出して血管の中心線などを検出して入力点を修正して設定するようにしてもよい。
【0077】
さらに、基準平面決定手段33において基準平面を決定する際 肺、心臓、肝臓などの臓器を複数の区域に分ける境界面の向きは解剖学的に決まっているため、ユーザーが指示した入力点の位置から、どの組織境界に配置されたかを自動的に判別し、認識結果から望ましい向きを選択させるなどの処理を付加するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 モダリティ
2 画像保管サーバ
3 画像処理ワークステーション
4 ネットワーク
30 画像診断支援装置
31 指示入力受付手段
32 入力点設定手段
33 基準平面決定手段
34 曲面生成手段
35 領域分割手段
36 ボリュームデータ記憶手段
37a 第1の候補平面取得手段
37b 第2の候補平面取得手段
38a 第1の候補平面表示手段
38b 第2の候補平面表示手段
39 候補平面選択入力受付手段
40 変更入力受付手段
41 入力点修正手段
S 曲面
V ボリュームデータ
P 基準平面
P1,P2,P3 候補平面
【技術分野】
【0001】
本発明は三次元画像の検出処理に関し、特に医用三次元画像における境界面の検出に関する装置および方法、並びにプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、医療現場では、CT(Computed Tomography)、MR(Magnetic Resonance)等の各種モダリティで取得された3次元の医用画像(ボクセルデータ)を用いて診断を行っている。ボクセルデータは多数の画素で構成される3次元データであり大量の情報を持っているが、大量の情報の中から診断に必要な情報を取り出すのは容易ではない。そのため、実際に診断を行うためには、画像処理装置を用いて診断の対象となる部位を抽出して様々な画像処理を施した上で診断を行っている。
【0003】
例えば、心臓などの臓器の表面の血管を診断対象とする場合には、臓器の表面の曲面を抽出した上で、曲面に所定の厚みを持たせた領域を関心領域とし、関心領域に対してMIP(maximum intensity projection)処理を施して血管のみを描出した画像を生成して、血管の診断を行っている。
【0004】
このような臓器の抽出方法として、ボクセルデータ中の任意の点の位置を3次元で指定して、指定された点を互いに接続して指定点を含む曲面を抽出する手法が提案されている。特許文献1では、まず、ボクセルデータ内に存在する臓器の表面上で複数の指定点を指定し、それら複数の指定点の外接球面を仮定し、さらに、その外接球面の重心に光源を仮定して、その光源から複数の指定点それぞれを外接球面上に射影した射影指定点間を接続する辺の接続関係を2次元デローネ分割(Delaunay2D)を用いて取得し、射影指定点間の接続関係を元の臓器の表面上の指定点の接続関係に適用することで曲面を定義して、臓器の表面の形状を抽出することを可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-187531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の手法は、臓器の表面のように閉曲面で構成される構造物の抽出には適しているが、面状の構造物、例えば、肺野と腹部を分ける横隔膜のような境界面、肺または肝臓を複数の区域に分ける境界面、あるいは、心臓を左右心室・心房などに分ける境界面を抽出するのには適していない。
【0007】
病変部の位置を正確に把握するには、横隔膜の位置や、組織の境界面をみて各組織内の何処に病変部が存在しているかを判断する必要があり、ボクセルデータ内の各組織の境界面の認識が重要になってくる。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、境界面を抽出することにより、画像診断を支援する画像診断支援装置およびその動作方法、並びに画像診断支援プログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の画像診断支援装置は、所定の被写体を撮影して得られたボリュームデータにおいて、前記被写体を分割する境界面上に存在する複数の点を入力点として設定する入力点設定手段と、前記入力点を用いて、前記境界面に近似する平面を基準平面として決定する基準平面決定手段と、前記被写体の外側において、前記基準平面上に複数の補助点を設定し、該補助点と前記入力点を用いて入力点を補間して、前記境界面に近似する曲面を生成する曲面生成手段と、前記生成した曲面を前記境界面として前記被写体を分けた領域に分割する領域分割手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0010】
本発明の上記の画像診断支援装置の動作方法は、前記入力点設定手段により、所定の被写体を撮影して得られたボリュームデータにおいて、前記被写体を分割する境界面上に存在する複数の点を入力点として設定する入力点設定ステップと、前記基準平面決定手段により、前記入力点を用いて、前記境界面に近似する平面を基準平面として決定する基準平面決定ステップと、前記曲面生成手段により、前記被写体の外側において、前記基準平面上に複数の補助点を設定し、該補助点と前記入力点を用いて入力点を補間して、前記境界面に近似する曲面を生成する曲面生成ステップと、前記領域分割手段により、前記生成した曲面を前記境界面として前記被写体を分けた領域に分割する分割ステップとを実行することを特徴とするものである。
【0011】
本発明の画像診断支援プログラムは、コンピュータを上記の画像診断支援装置として機能させるためのものである。
【0012】
本発明において、「被写体」の具体例としては、人や動物の体全体、人や動物の胸腹部などの特定の部位、あるいは、肺、肝臓、心臓などの臓器等が挙げられる。
【0013】
また、「境界面」には、例えば、胸腹部を分割する横隔膜、肺を複数の区域に分割する境界面(右肺を上葉・中葉・下葉に分ける境界面、左肺を上葉・下葉に分ける境界面など)、肝臓を複数の区域に分ける境界面(肝臓全体を右葉と左葉に分ける境界面、肝臓の右葉を前区域と後区域に分けるに分ける境界面、右葉を上区域と下区域に分ける境界面など)、心臓を左右心室・心房に分ける境界面などがある。
【0014】
「補間」とは、離れた数値の間にあるべき数値を全体の傾向から推測して補足することをいい、「入力点を補間して曲面を生成する」とは、離れた入力点の座標値を滑らかに繋げるための曲面を生成することをいう。生成した曲面は、入力点を通過する曲面でもよいし、入力点を通過しないが入力点の全体の変化に沿う曲面であってもよい。
【0015】
また、前記基準平面決定手段は、前記入力点に対する回帰平面を前記基準平面とするものであってもよい。
【0016】
また、前記曲面生成手段は、具体的には、前記補助点と前記入力点を用いたドロネー三角形分割により前記補間を行って前記曲面を生成するようにしてもよい。
【0017】
さらに、前記曲面生成手段は、前記入力点を前記基準平面に投影した投影点に対して2次元のドロネー三角形分割を用いて前記投影点間を接続する辺を決定し、該投影点間を接続する辺の接続関係を前記投影点を投影する前の前記入力点に適用することにより、前記入力点を接続する辺を決定して前記曲面を生成するようにしてもよい。
【0018】
また、前記ボリュームデータ中の所定の位置の指示入力を受け付ける指示入力受付手段をさらに備えるように構成して、前記入力点設定手段で、前記指示入力した位置の近傍における輝度または濃度勾配に基づいて前記境界面上に存在する点を検出して前記入力点として設定するものが望ましい。
【0019】
また、前記基準平面決定手段が、前記入力点に基づいて前記基準平面の候補となる複数の候補平面を取得する第1の候補平面取得手段と、前記複数の候補平面を表示装置上に表示する第1の候補平面表示手段と、前記表示された複数の候補平面の中から選択された候補平面の入力を受け付ける候補平面選択入力受付手段とを備えるように構成して、前記選択された候補平面を前記基準平面として決定するようにしてもよい。
【0020】
あるいは、前記基準平面決定手段が、前記入力点に基づいて前記基準平面の候補となる候補平面を取得する第2の候補平面取得手段と、前記候補平面を表示装置上に表示する第2の候補平面表示手段と、前記表示された候補平面の向きの変更入力を受け付ける候補平面向き変更入力受付手段とを備えるように構成して、前記向きを変更した候補平面を前記基準平面として決定するようにしてもよい。
【0021】
前記ボリュームデータは、具体的には医用画像であってもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ボリュームデータ中の被写体を分割する境界面上の点を入力点として設定し、さらに、境界面に近似する平面を基準平面とし、基準平面上の被写体の外側に複数の補助点を設定し、補助点と入力点を用いて境界面に近似する曲面を生成することで、横隔膜のような境界面や、肺、肝臓、心臓を複数の区域に分ける組織の境界面のような平面状の境界面を被写体の外側まで延長して定義することができる。ボリュームデータ自体は単にボクセルの集合であり、境界面の情報を持っていないため、生成された曲面で被写体を2つの領域に分割して、腫瘍の正確な位置の把握など様々な画像診断を支援することが可能である。
【0023】
入力点に対する回帰平面を基準平面とするようにすれば、境界面の解剖学的な傾きに近い基準平面を決定することが可能である。
【0024】
補助点と入力点を用いたドロネー三角形分割を行うことで、入力点と補助点の接続関係を決定することができ、この接続関係に従って曲面を生成することで、境界面に近似した面を取得することが可能になる。
【0025】
また、入力点を基準平面に投影した投影点に対して2次元のドロネー三角形分割を用いて得た接続関係を、投影前の入力点に適用して3次元の入力点の接続関係を決定することにより、3次元のドロネー三角形分割を用いる場合より計算負荷を少なくすることが可能になる。
【0026】
指示入力した位置の近傍における輝度または濃度勾配に基づいて境界面上に存在する点を検出するようにすれば、ユーザーによって入力された入力点の位置が正確に境界面上になくとも自動的に正確な位置に移動させることが可能になる。
【0027】
入力点の配置によっては、基準平面の候補となる候補平面が複数取得される場合があるが、候補平面を表示装置上に表示して選択できるようにすれば、境界面の解剖学的な傾きに近い基準平面を選択することが可能になる。
【0028】
あるいは、入力点の配置によっては、本来の境界面の解剖学的な傾きとずれていた候補面が取得される場合があるが、候補平面を表示装置上に表示して、候補平面の向きを変更できるようにすれば、入力点の配置が十分でなくとも境界面の解剖学的な傾きに近い基準平面に修正することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態となる画像診断支援装置が導入された医用システムの概略構成図
【図2】本発明の実施形態における画像診断支援装置の構成を示したブロック図
【図3】本発明の実施形態における画像診断支援装置を用いた処理の流れを表したフローチャート
【図4】入力点に基づいて境界面に近似した基準平面を取得する方法を説明するための図
【図5】候補平面の選択を行うための基準平面決定手段の構成を示したブロック図
【図6】複数の候補平面の中から基準平面を選択するための表示画面の一例を示す図
【図7】候補平面の方向の変更を行うための基準平面決定手段の構成を示したブロック図
【図8】候補平面の向きを変えるための表示画面の一例を示す図
【図9】基準平面上に入力点を投影した投影点と補助点の一例を示す図
【図10】基準平面上に生成された分割三角形の一例を示す図
【図11】投影点を入力点の位置に戻したときに3次元空間上に生成された三角形群の一例を示す図
【図12】3次元空間上に生成された三角形群を細分化する様子を示す図
【図13】境界面に近似するように生成された曲面と入力点を被写体の断面画像に重ねて表示した表示画面の一例
【図14】指示入力受付手段の構成を示したブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して本発明の画像診断支援装置の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明の画像診断支援装置を含む医療システムの概略構成図である。医療システムは、モダリティ1、画像保管サーバ2、画像処理ワークステーション3、各機器を接続するネットワーク4で構成される。
【0031】
モダリティ1には、患者の診断対象となる部位(被写体)を撮影することにより、その被写体を表す3次元医用画像の画像データを生成し、その画像データにDICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)規格で規定された付帯情報を付加して、医用画像データとして出力する装置が含まれる。具体例としては、CT装置、MRI装置などが挙げられる。
【0032】
画像保管サーバ2は、モダリティ1で取得された医用画像データや、画像処理ワークステーション3で画像処理が施された画像データを画像データベースに保存・管理するコンピュータであり、大容量外部記憶装置やデータベース管理用ソフトウェアを備えている。モダリティ1で撮影された3次元医用画像データはボリュームデータVとして記憶される。
【0033】
画像処理ワークステーション3は、CPU、主記憶装置、補助記憶装置、入出力インターフェース、通信インターフェース、入力装置(マウス、キーボード等)、表示装置(ディスプレイモニタ)、データバス等の周知のハードウェア構成を備え、周知のオペレーティングシステム等がインストールされたものである。画像処理ワークステーション3にはGUI(Graphical User Interface)が実装されており、ユーザーは、GUIを利用してモダリティ1や画像保管サーバ2から所望の医用画像データを取得したり、各種の設定入力を行うことができる。さらに、画像処理ワークステーション3は、取得した医用画像データに対して種々の画像処理を施し、生成した画像を表示装置上に表示する機能を備えている。
【0034】
また、画像処理ワークステーション3は、画像診断支援プログラムをインストールすることにより画像診断支援処理が実装され、本発明の画像診断支援装置として機能する。この画像診断支援プログラムは、CD−ROM等の記憶媒体に記憶され、もしくはインターネット等のネットワークを介して配布され、コンピュータにインストールされる。
【0035】
医用画像データの記憶形式やネットワーク4経由での各装置間の通信は、DICOM等のプロトコルに基づいている。
【0036】
図2は、画像処理ワークステーション3の機能のうち、本発明の実施形態となる画像診断支援装置30に関連する部分のブロック図である。図に示すように、本発明の実施形態となる画像診断支援装置30は、指示入力受付手段31、入力点設定手段32、基準平面決定手段33、曲面生成手段34、領域分割手段35、ボリュームデータ記憶手段36で構成される。
【0037】
図3は、本発明の実施形態となる画像診断支援処理を行う際の処理の流れを示したフローチャートである。図2、図3を参照して、本発明の実施形態となる画像診断支援処理の流れについて説明する。本実施形態では、横隔膜を境界面として被写体を分割する場合について説明する。
【0038】
まず、画像処理ワークステーション3から、診断対象の患者の胸腹部が撮影されているボリュームデータVを要求すると、公知の画像検索システム、あるいは、公知のオーダリングシステムにおける画像検索・取得処理により、画像保管サーバ2から診断対象のボリュームデータVが取得される。取得されたボリュームデータVは画像処理ワークステーション3のボリュームデータ記憶手段36に一旦記憶される(#1)。
【0039】
次に、画像処理ワークステーション3の指示入力受付手段31を用いて、表示装置の画面上にボリュームデータVを表示し、ユーザーはGUIを用いて境界面上の点を複数指示入力する。例えば、表示装置上にアキシアル、サジタル、コロナル等の2次元断面画像を表示し、マウス等のポインティングデバイスを用いて、横隔膜上の点を指示する。点は横隔膜全体にまんべんなく配置されるように、断面画像を切り替え表示しながら、複数の2次元断面画像上で横隔膜上の点を指示する(#2)。
【0040】
入力点設定手段32は、指示された点を入力点として設定する。しかし、マウス等を用いて点を指示する場合、正確に横隔膜上の点を指示できるとは限らない。そこで、入力された点の近傍(具体的には指示された点を中心とした小さい範囲内)の画像中の輝度または濃度勾配を算出して横隔膜らしい部分を検出して、入力点を横隔膜上の点に修正して設定するようにしてもよい。
【0041】
入力点の配置に粗密があると、以下に説明する基準平面を算出する際に意図しない向きの基準平面が得られることが多い。そこで、入力点設定手段32では、入力点を設定する際に、指示入力受付手段31で指示された点の中から、近い位置に複数の入力点を配置させないように自動選択して設定する処理を付加するのが望ましい。あるいは、近接する複数の入力点を一つとみなして扱うなどの処理を付加するようにしてもよい。
【0042】
次に、基準平面決定手段33は、図4に示すように、入力点(●)に基づいて、横隔膜の全体のおおよその傾きを持つ平面を横隔膜に近似した基準平面として決定する。具体的には、入力点に対して主成分分析を行って基準平面の法線ベクトルの向きを求め、さらに、入力点に対する距離の最小2乗が最も小さくなる回帰平面を基準平面Pとして決定する(#3)。
【0043】
基準平面Pの法線ベクトルの向きは、入力点に対して主成分分析を行って得られた固有値が十分に小さい固有ベクトルの方向に決められるが、入力点が配置されている状態によっては固有値が十分に小さい固有ベクトルが2つ以上得られることがある。この場合には基準平面Pの候補となる候補平面は2つ以上存在することになる。横隔膜の傾きは解剖学的におおよそ決まっているが、固有値が十分に小さい固有ベクトルの候補平面の中には、固有値が最小の固有ベクトルの候補平面より解剖学的な傾きに近い候補平面がある。そこで、基準平面決定手段33は、複数の候補平面の中から解剖学的な傾きに近い平面を選択できるようなGUIを提供する。
【0044】
図5は、基準平面決定手段33の候補平面選択に関連するブロック図である。基準平面決定手段33には、第1の候補平面取得手段37a、第1の候補平面表示手段38a、候補平面選択入力受付手段39が設けられる。
【0045】
まず、第1の候補平面取得手段37aは、入力点に対して主成分分析を行って得られた固有値が十分に小さい固有ベクトルを法線ベクトルとする複数の平面を候補平面として取得する。
【0046】
次に、第1の候補平面表示手段38aは、第1の候補平面取得手段37aで取得した複数の候補平面を表示装置上に表示する。図6に表示画面の一例を示す。複数の候補平面P1,P2が、横隔膜に重なるように表示され、ユーザーが複数の候補平面のうちのいずれかを選択することができるように表示される(図6の右枠を参照)。図6では便宜上2次元で候補平面をあらわしているが、3次元表示にして候補平面の3次元の向きが確認できるようにするのが好ましい。
【0047】
候補平面選択入力受付手段39は、第1の候補平面表示手段38aで表示装置上に表示された複数の候補平面の中から、画像処理ワークステーション3の入力装置を用いた操作によって、ユーザーが候補平面の中から1つ選択した候補平面の入力を受け付ける。基準平面決定手段33は、候補平面選択入力受付手段39で、選択入力された候補平面を基準平面Pとして決定する。
【0048】
あるいは、主成分分析を行って得られた固有値が十分に小さい固有ベクトルが1つしか得られなかった場合、その固有ベクトルを法線ベクトルの方向とする候補平面を基準平面として決定するが、入力点が配置された状態によっては横隔膜の解剖学的な傾きとは少し異なる方向に向いている場合が存在する。この場合には、基準平面決定手段33は、候補平面の向きを変えることができるようなGUIを提供する。
【0049】
図7は、基準平面決定手段33の候補平面の方向変更に関連するブロック図である。基準平面決定手段33には、第2の候補平面取得手段37b、第2の候補平面表示手段38b、候補平面向き変更入力受付手段40が設けられる。
【0050】
まず、第2の候補平面取得手段37bでは、入力点に対して主成分分析を行って得られた固有値が最小の固有ベクトルを法線ベクトルとする1つの平面を基準平面Pの候補となる候補平面として取得する。
【0051】
第2の候補平面表示手段38bは、第2の候補平面取得手段37bで取得した候補平面を表示装置上に表示する。図8に表示画面の一例を示す。候補平面は、ユーザーが候補平面P3の向きを変えることができるように表示される。さらに、上下左右に位置を移動することができるようにしてもよい。図8の例では、「回転」を選択すると、候補平面P3の端点を持って回転させることで、候補平面P3の向きを変えることができる。また、「移動」を選択すると、候補平面P3をマウスでドラッグすることで上下左右に移動させることができる。図8では便宜上2次元で候補平面をあらわしているが、3次元表示にして候補平面の3次元の向きを変更できるようにするのが好ましい。
【0052】
次に、候補平面向き変更入力受付手段40は、画像処理ワークステーション3の入力装置を用いた操作によって、ユーザーが変更入力した候補平面の向きあるいは位置を受け付ける。基準平面決定手段33は、候補平面向き変更入力受付手段40で、変更入力された向きあるいは位置の候補平面を基準平面Pとして決定する。
【0053】
上述では、ユーザーがGUIを用いて、候補平面の中から基準平面Pを選択したり、向きを変えた候補平面を基準平面Pとする場合について説明したが、横隔膜の解剖学的な傾きはある程度決まっているので、自動的に複数の候補平面の中から境界面の解剖学的な傾きに近いものを基準平面Pとして決定したり、境界面の候補平面の向きを解剖学的な傾きに近くなるように決定してもよい。
【0054】
曲面生成手段34は、入力点を補間して境界面に近似する曲面を生成する。
後述の領域分割手段35において境界面で被写体を分割するために、画像全体をカバーできる十分に広い境界面を得ることが必要である。入力点は被写体内の横隔膜上に設定された点であるため、入力点より外側に存在する被写体の部分の境界面は定義されない。そこで、被写体の外側は基準平面Pと一致する面であると仮定し、入力点に対して十分に離れている被写体の外側の基準平面P上に矩形の四隅となる4つの補助点(△)を設定する(図9参照)。補助点は基準平面P上に被写体が存在している領域を認識して、被写体を中心にした所定の大きさの矩形を自動的に設定する(#4)。この矩形は、経験的に1辺が被写体の厚さの約10倍程度が好ましい。
【0055】
次に、入力点と補助点の接続関係を決定するが、処理を単純にするため、図9に示すように、まずいったん基準平面P上に各入力点(●)を投影した投影点(○)を設定する(#5)。
【0056】
基準平面P上に設定した4つの補助点をドロネー三角形分割時の外接矩形を構成する四隅の点として、補助点と投影点に対して2次元のドロネー三角形分割を行ない、投影点間、投影点と補助点間、補助点間を接続する三角形の辺の接続関係を決定する。図10に、基準平面P上に生成された分割三角形の一例を示す(#6)。
【0057】
基準平面P上での分割三角形が得られたら、投影点間、投影点と補助点間、補助点間を接続する辺の接続関係を保ったまま投影前の入力点に適用することで、3次元空間上での各入力点間、入力点と補助点間、補助点間を結ぶ三角形群が得られる。図11に、投影点を入力点の位置に戻したときの3次元空間上の入力点と補助点を結ぶ三角形群の一例を示す(#7)。
【0058】
次に説明する補間処理では、入力点の接続関係に従って入力点を補間した曲面を生成する。入力点と外接矩形の四隅の補助点の間を補間した補間曲面は、外接矩形の四隅の補助点を含む三角形の周囲に存在する入力点の位置の変化を反映するように補間されるため、入力点と外接矩形の四隅の補助点が極端に離れていて外接矩形の四隅の補助点を含む三角形が非常に大きいときは被写体の外側に歪んだ曲面が生成される。そこで、被写体の外側を基準平面Pに近い面にするために、被写体の外側にある基準平面P上に複数の補助点を追加した上でドロネー三角形分割するのが望ましい。基準平面P上に補助点を追加することにより、補間曲面が追加した補助点に拘束されて被写体の外側の歪みが抑制される。具体的には、外接矩形の四隅の点と投影点を結ぶ基準平面P上の分割三角形の辺を分割する点、外接矩形の辺を分割する点などを補助点として自動的に追加する。
【0059】
以上では計算量の少なさを考慮して、入力点を2次元の基準平面P上に投影してドロネー三角形分割処理を行ったが、2次元に投影せず3次元空間上で直接ドロネー三角形分割するアルゴリズムを採用することもできる。
【0060】
次に、3次元空間上で入力点と補助点の接続関係に従って、入力点と補助点を補間した補間曲面を生成する補間処理について説明する。
【0061】
補間処理は、3次元空間上で補間点と入力点を結ぶ三角形群を細分割した三角形を用いて曲面を生成することができる。上記の手法で得られた三角形群に対してModified Butterfly schemeの手法を適用して、各三角形が細かく分割された三角形群に変換され、滑らかな曲面を生成することができる(例えば、非特許文献:D.Zorin, et al; "Interpolating Subdivision for Meshes with Arbitrary Topology", SIGGRAPH’96 Proceedingsを参照)。
【0062】
図12に三角形を細かく分割する様子を示す。図12の左の図に示すような分割された三角形の各辺の中点を結んで、右の図に示す細かく分割した三角形を生成する。各辺を分割した中点は周囲に存在する点の位置を補間した位置になる。この処理を繰り返すことにより、入力点と補助点を補間した滑らかな曲面を生成することができる。また、このModified Butterfly schemeの手法によれば、生成された曲面は各入力点を必ず通る曲面になる。また、細分割曲面を生成する方法には、Catmull-Clark、Loopなどの他の手法を用いることもできる(#8)。
【0063】
あるいは、曲面の生成には、上記の入力点と補助点の接続関係に従って、NURBS曲面や陰関数などを用いた種々の補間曲面を生成する手法を用いることができる。上記のModified Butterfly schemeで生成された曲面では各入力点を必ず通る曲面が生成されるが、生成された曲面が入力点を通るか通らないかは手法によって異なり、周知の通り入力点は通らないが入力点の変化に沿った曲面を生成することも可能である。
【0064】
また、境界面を滑らかにする必要がなければ、細分割曲面などを用いて滑らかな曲面を生成せずにドロネー三角形分割処理で得られた三角形群をそのまま境界面として採用してもよい。
【0065】
以上の処理によって得た境界面に近似した曲面Sは、図13に示すように、被写体の断面画像に重ねて表示装置上に表示され、実際の領域分割処理(領域分割手段35)に入る前に曲面Sによる切断面を確認することができる。曲面Sは表示されている画像の遠方まで生成されているので、入力点より外側の体外まで広がっている。結果の確認のためには、断面画像上に曲面Sを曲線で表示するだけでなく、切断後の結果がわかるよう2つの領域を色分け表示するようにしてもよいし、片方の領域を見えなくするようにしてもよい。
【0066】
次に、境界面の曲面が横隔膜からずれている場合の曲面の修正について説明する。図14に示すように、指示入力受付手段31には、境界面の修正を行うためのGUIを提供する入力点修正手段41が設けられる。
【0067】
入力点修正手段41は、入力点を追加して境界面の曲面Sを修正する方法と、既に設定されている入力点の位置を修正して境界面の曲面Sを修正する方法とを提供する(#9)。
【0068】
入力点を追加して曲面Sを修正する場合、指示入力受付手段31と同様に2次元断面を表示して指示された入力点を追加する。しかし、入力点の追加後に上記のすべての処理を再度行うと、計算量が多くなって余分に時間がかかったり、追加した入力点を加えた主成分分析の結果によっては望ましくない向きの基準平面Pになったりすることがある。基準平面Pは、ユーザーによって既に好ましい向きになるように修正されている可能性が高いので、入力点追加時には、基準平面Pは変更せずに図3の#5に戻って、追加した入力点を投影した投影点を生成してドロネー三角形分割以降を再計算して新しい境界面の曲面Sを得る。
【0069】
また、Modified Butterfly schemeで生成された曲面のように各入力点を必ず通るように曲面が生成されている場合には、入力点を移動させて曲面Sを修正するほうが簡単である。例えば、図13のように、生成された境界面の曲面S上に入力点の位置にマーク(○の点)を付加して表示装置に表示し、マウスなどで入力点のマークをドラッグしながら適当な位置まで移動させる。
【0070】
このように既存の入力点の位置を移動して修正する場合は、入力点の接続関係を再度決定する必要はないので、ドロネー三角形分割は行わないで、接続関係を変更せず図3の#8に戻って、曲面Sの生成以降を行うようにしてもよい。
【0071】
以上の修正を繰り返し境界面の曲面Sを確定する。
【0072】
領域分割手段35は、上記で得られた曲面Sを境界面として領域を2つに分割する。
例えば、ボリュームデータVを構成する各ボクセルごとに、各ボクセルの位置から回帰平面の法線ベクトル方向へ延びる直線が生成された曲面Sと交わるかどうかを判定し、各ボクセルが境界面のどちらに属するかを決定して被写体を2つの領域に分割する。
【0073】
あるいは、ボリュームデータVの曲面S上のボクセルを境界ボクセルとして、領域拡張法を用いて境界ボクセルをまたがないよう領域を抽出するようにしてもよい。まず、ボリュームデータVの中の何処か一つのボクセルを注目点に指定する。次に、注目点が境界ボクセルではないかについて調べる。注目点が境界ボクセルではない場合は、注目点のボクセルにマーカをつけ注目点の周辺のボクセルを新たな注目点とする。再度、新たな注目点についても境界ボクセルでないかを調べる。注目点が無くなるまでこの処理を繰り返して、マーカの付いている部分を境界面を境にした片側の領域として抽出する。つまり、次々と隣を見てボクセルが境界ボクセルにぶつかるまで領域を広げていくことで被写体を2つの領域に分割する(#10)。
【0074】
上述では、横隔膜を境界面とする場合について説明したが、肺を複数の区域に分割する境界面(右肺を上葉・中葉・下葉に分ける境界面、左肺を上葉・下葉に分ける境界面など)、肝臓を複数の区域に分ける境界面(肝臓全体を右葉と左葉に分ける境界面、肝臓の右葉を前区域と後区域に分けるに分ける境界面、右葉を上区域と下区域に分ける境界面など)、あるいは、心臓を左右心室・心房などに分ける境界面の抽出にも用いることができる。この場合には、肺、肝臓、心臓のような1つの臓器を被写体として、上述の手法を適用して、臓器の境界面上の点を複数指定して、臓器を分ける境界面の曲面Sを生成する。
【0075】
また、上述の指示入力受付手段31では、2次元断面画像を表示して境界面上の入力点を設定する場合について説明したが、肺、心臓、肝臓などの臓器の表面上の位置を指示する場合には、臓器のボリュームレンダリング画像を表示しておき、表示画面を回転させながら、心臓や肝臓を区域に分ける境界面上の点を設定するようにしてもよい。
【0076】
また、肝臓は、肝臓を通る血管を基準に複数の区域に分ける境界面が決められるので、入力点設定手段32において、指定された点の周囲の濃度値から血管を抽出して血管の中心線などを検出して入力点を修正して設定するようにしてもよい。
【0077】
さらに、基準平面決定手段33において基準平面を決定する際 肺、心臓、肝臓などの臓器を複数の区域に分ける境界面の向きは解剖学的に決まっているため、ユーザーが指示した入力点の位置から、どの組織境界に配置されたかを自動的に判別し、認識結果から望ましい向きを選択させるなどの処理を付加するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 モダリティ
2 画像保管サーバ
3 画像処理ワークステーション
4 ネットワーク
30 画像診断支援装置
31 指示入力受付手段
32 入力点設定手段
33 基準平面決定手段
34 曲面生成手段
35 領域分割手段
36 ボリュームデータ記憶手段
37a 第1の候補平面取得手段
37b 第2の候補平面取得手段
38a 第1の候補平面表示手段
38b 第2の候補平面表示手段
39 候補平面選択入力受付手段
40 変更入力受付手段
41 入力点修正手段
S 曲面
V ボリュームデータ
P 基準平面
P1,P2,P3 候補平面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の被写体を撮影して得られたボリュームデータにおいて、前記被写体を分割する境界面上に存在する複数の点を入力点として設定する入力点設定手段と、
前記入力点を用いて、前記境界面に近似する平面を基準平面として決定する基準平面決定手段と、
前記被写体の外側において、前記基準平面上に複数の補助点を設定し、該補助点と前記入力点を用いて入力点を補間して、前記境界面に近似する曲面を生成する曲面生成手段と、
前記生成した曲面を前記境界面として前記被写体を分けた領域に分割する領域分割手段とを備えたことを特徴とする画像診断支援装置。
【請求項2】
前記基準平面決定手段が、前記入力点に対する回帰平面を前記基準平面とすることを特徴とする請求項1記載の画像診断支援装置。
【請求項3】
前記曲面生成手段が、前記補助点と前記入力点を用いたドロネー三角形分割により前記補間を行って前記曲面を生成することを特徴とする請求項1または2記載の画像診断支援装置。
【請求項4】
前記曲面生成手段が、前記入力点を前記基準平面に投影した投影点に対して2次元のドロネー三角形分割を用いて前記投影点間を接続する辺を決定し、該投影点間を接続する辺の接続関係を前記投影点を投影する前の前記入力点に適用することにより、前記入力点を接続する辺を決定して前記曲面を生成することを特徴とする請求項3記載の画像診断支援装置。
【請求項5】
前記ボリュームデータ中の所定の位置の指示入力を受け付ける指示入力受付手段をさらに備え、
前記入力点設定手段が、前記指示入力した位置の近傍における輝度または濃度勾配に基づいて前記境界面上に存在する点を検出して、前記入力点として設定することを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の画像診断支援装置。
【請求項6】
前記基準平面決定手段が、
前記入力点に基づいて前記基準平面の候補となる複数の候補平面を取得する第1の候補平面取得手段と、
前記複数の候補平面を表示装置上に表示する第1の候補平面表示手段と、
前記表示された複数の候補平面の中から選択された候補平面の入力を受け付ける候補平面選択入力受付手段とを有し、
前記選択された候補平面を前記基準平面として決定するものであることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の画像診断支援装置。
【請求項7】
前記基準平面決定手段が、
前記入力点に基づいて前記基準平面の候補となる候補平面を取得する第2の候補平面取得手段と、
前記候補平面を表示装置上に表示する第2の候補平面表示手段と、
前記表示された候補平面の向きの変更入力を受け付ける候補平面向き変更入力受付手段とを有し、
前記向きを変更した候補平面を前記基準平面として決定するものであることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の画像診断支援装置。
【請求項8】
前記ボリュームデータが医用画像であることを特徴とする請求項1〜7いずれか1項記載の画像診断支援装置。
【請求項9】
所定の被写体を撮影して得られたボリュームデータにおいて入力点を設定する入力点設定手段と、
基準平面を決定する基準平面決定手段と、
前記入力点を補間して得られる曲面を生成する曲面生成手段と、
前記被写体を複数の領域に分割する領域分割手段を備えた画像診断支援装置の動作方法であって、
前記入力点設定手段により、所定の被写体を撮影して得られたボリュームデータにおいて、前記被写体を分割する境界面上に存在する複数の点を入力点として設定する入力点設定ステップと、
前記基準平面決定手段により、前記入力点を用いて、前記境界面に近似する平面を基準平面として決定する基準平面決定ステップと、
前記曲面生成手段により、前記被写体の外側において、前記基準平面上に複数の補助点を設定し、該補助点と前記入力点を用いて入力点を補間して、前記境界面に近似する曲面を生成する曲面生成ステップと、
前記領域分割手段により、前記生成した曲面を前記境界面として前記被写体を分けた領域に分割する領域分割ステップを実行する画像診断支援装置の動作方法。
【請求項10】
コンピュータを、
所定の被写体を撮影して得られたボリュームデータにおいて、前記被写体を分割する境界面上に存在する複数の点を入力点として設定する入力点設定手段と、
前記入力点を用いて、前記境界面に近似する平面を基準平面として決定する基準平面決定手段と、
前記被写体の外側において、前記基準平面上に複数の補助点を設定し、該補助点と前記入力点を用いて入力点を補間して、前記境界面に近似する曲面を生成する曲面生成手段と、
前記生成した曲面を前記境界面として前記被写体を分けた領域に分割する領域分割手段として機能させる画像診断支援プログラム。
【請求項1】
所定の被写体を撮影して得られたボリュームデータにおいて、前記被写体を分割する境界面上に存在する複数の点を入力点として設定する入力点設定手段と、
前記入力点を用いて、前記境界面に近似する平面を基準平面として決定する基準平面決定手段と、
前記被写体の外側において、前記基準平面上に複数の補助点を設定し、該補助点と前記入力点を用いて入力点を補間して、前記境界面に近似する曲面を生成する曲面生成手段と、
前記生成した曲面を前記境界面として前記被写体を分けた領域に分割する領域分割手段とを備えたことを特徴とする画像診断支援装置。
【請求項2】
前記基準平面決定手段が、前記入力点に対する回帰平面を前記基準平面とすることを特徴とする請求項1記載の画像診断支援装置。
【請求項3】
前記曲面生成手段が、前記補助点と前記入力点を用いたドロネー三角形分割により前記補間を行って前記曲面を生成することを特徴とする請求項1または2記載の画像診断支援装置。
【請求項4】
前記曲面生成手段が、前記入力点を前記基準平面に投影した投影点に対して2次元のドロネー三角形分割を用いて前記投影点間を接続する辺を決定し、該投影点間を接続する辺の接続関係を前記投影点を投影する前の前記入力点に適用することにより、前記入力点を接続する辺を決定して前記曲面を生成することを特徴とする請求項3記載の画像診断支援装置。
【請求項5】
前記ボリュームデータ中の所定の位置の指示入力を受け付ける指示入力受付手段をさらに備え、
前記入力点設定手段が、前記指示入力した位置の近傍における輝度または濃度勾配に基づいて前記境界面上に存在する点を検出して、前記入力点として設定することを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の画像診断支援装置。
【請求項6】
前記基準平面決定手段が、
前記入力点に基づいて前記基準平面の候補となる複数の候補平面を取得する第1の候補平面取得手段と、
前記複数の候補平面を表示装置上に表示する第1の候補平面表示手段と、
前記表示された複数の候補平面の中から選択された候補平面の入力を受け付ける候補平面選択入力受付手段とを有し、
前記選択された候補平面を前記基準平面として決定するものであることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の画像診断支援装置。
【請求項7】
前記基準平面決定手段が、
前記入力点に基づいて前記基準平面の候補となる候補平面を取得する第2の候補平面取得手段と、
前記候補平面を表示装置上に表示する第2の候補平面表示手段と、
前記表示された候補平面の向きの変更入力を受け付ける候補平面向き変更入力受付手段とを有し、
前記向きを変更した候補平面を前記基準平面として決定するものであることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の画像診断支援装置。
【請求項8】
前記ボリュームデータが医用画像であることを特徴とする請求項1〜7いずれか1項記載の画像診断支援装置。
【請求項9】
所定の被写体を撮影して得られたボリュームデータにおいて入力点を設定する入力点設定手段と、
基準平面を決定する基準平面決定手段と、
前記入力点を補間して得られる曲面を生成する曲面生成手段と、
前記被写体を複数の領域に分割する領域分割手段を備えた画像診断支援装置の動作方法であって、
前記入力点設定手段により、所定の被写体を撮影して得られたボリュームデータにおいて、前記被写体を分割する境界面上に存在する複数の点を入力点として設定する入力点設定ステップと、
前記基準平面決定手段により、前記入力点を用いて、前記境界面に近似する平面を基準平面として決定する基準平面決定ステップと、
前記曲面生成手段により、前記被写体の外側において、前記基準平面上に複数の補助点を設定し、該補助点と前記入力点を用いて入力点を補間して、前記境界面に近似する曲面を生成する曲面生成ステップと、
前記領域分割手段により、前記生成した曲面を前記境界面として前記被写体を分けた領域に分割する領域分割ステップを実行する画像診断支援装置の動作方法。
【請求項10】
コンピュータを、
所定の被写体を撮影して得られたボリュームデータにおいて、前記被写体を分割する境界面上に存在する複数の点を入力点として設定する入力点設定手段と、
前記入力点を用いて、前記境界面に近似する平面を基準平面として決定する基準平面決定手段と、
前記被写体の外側において、前記基準平面上に複数の補助点を設定し、該補助点と前記入力点を用いて入力点を補間して、前記境界面に近似する曲面を生成する曲面生成手段と、
前記生成した曲面を前記境界面として前記被写体を分けた領域に分割する領域分割手段として機能させる画像診断支援プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図6】
【図8】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図6】
【図8】
【図13】
【公開番号】特開2012−179272(P2012−179272A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44661(P2011−44661)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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