説明

画像読取装置およびイメージセンサチップ

【課題】イメージセンサチップを長手方向に複数配列してなる1ラインのラインセンサにおいて、イメージセンサチップ間の光電変換素子の存在しない隙間部分に相当する欠損画素を補間する。
【解決手段】イメージセンサチップ1121の回路基板30の主走査方向における一方の端部に突出部31が形成され、回路基板30の主走査方向におけるもう一方の端部の、上記突出部31に対応する位置には後退部32が形成されており、イメージセンサチップ1121が主走査方向に複数直線状に並べられたときに、隣り合うイメージセンサチップ1121の突出部31と後退部32とは互いに嵌まり合う。当該突出部31上において、光電変換素子列40から副走査方向に所定距離離れた位置には、イメージセンサチップの繋ぎ目部分における画素欠陥領域の画素を補間するための補間用光電変換素子50が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿の画像を読取る画像読取装置、特に複数のイメージセンサチップから成るラインセンサを用いた画像の読み取りに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像読取装置(ファクシミリ、スキャナ、複写機等)に搭載される画像読取機構としては、縮小光学系のCCDを用いて原稿画像を電気信号に光電変換する画像読取機構が一般に広く用いられている。これに対し近年では、光路長が短く装置の小型化が可能であることから、例えばセルフォックレンズを介してリニアセンサで画像を直接読み取る等倍光学系の密着型イメージセンサ(CIS:Contact Image Sensor)が、広く用いられるようになってきている。
【0003】
しかし、上記のCISを用いた画像読取装置では、イメージセンサに結像する原稿画像が等倍であるため、原稿の主走査方向の長さと同じだけ撮像素子(光電変換素子)を並べる必要があり、このような長尺状のイメージセンサを1チップでこれを製造しようとすれば、コストが非常に高くなる。
そこで、このようなCISとして、例えば、所定数の光電変換素子を直線状に並べたイメージセンサチップを、その長手方向に複数個列設して主走査方向の長さを確保する構成が一般に採用されている。
【0004】
ところが、イメージセンサチップをウエハから切り出す際の切り出し誤差を考慮して、イメージセンサチップの端に位置する光電変換素子から当該イメージセンサチップの端部までには通常数十μm程度のマージンを設ける必要がある。また、複数のイメージセンサチップを基板に実装する際のばらつきを考慮して、イメージセンサチップは通常数十μm程度の隙間を空けて実装される。そのため、イメージセンサチップ間の繋ぎ目部分には光電変換素子が存在せず、上記マージンに隙間を加えた領域の画像を読取ることができず、画素が欠損する領域(以下、「画素欠損領域」という。)が発生し、直線画像の直線性が損なわれたり、ハーフトーン画像を読取った際に筋状のノイズが発生したりして、画質劣化を引き起こすことがある。
【0005】
そこで、例えば、特許文献1においては、複数のイメージセンサチップを1列に並べた構成において、その隣接するイメージセンサチップにおける光電変換素子のうち、上記画素欠損領域を挟んで存する一対の光電変換素子の出力に基づき、線形補間により当該画素欠損領域の画素の画像データを補間する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−196835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の構成のように、イメージセンサチップ間の画素欠損領域近傍の光電変換素子が受光した画像データから補間する方法では、補間された画像データはあくまでも擬似的にシミュレートされた画像データであり、実際のものとは異なる。
本発明の課題は、上記事情に鑑みてなされたものであって、複数個のイメージセンサチップを1列に並べてなるラインセンサにおいて、隣接するイメージセンサチップ間の画素欠損領域における欠損画素を、当該画素欠損領域の実際の画像データを用いて補間することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明に係る画像形成装置は、光電変換素子列が形成されたイメージセンサチップを、長手方向に複数個配列してなるラインセンサを有し、原稿を当該ラインセンサに対して副走査方向に相対的に移動させて、当該原稿の画像データを取得する画像読取装置であって、前記ラインセンサにおいて配列される前記イメージセンサチップの個数をn個とした場合に、少なくともn−1個のイメージセンサチップは、光電変換素子列から副走査方向に第1の距離離れ、かつ、主走査方向において隣合う2個のイメージセンサチップの光電変換素子列の列間に対応する位置において、第1の補間用光電変換素子を有し、前記第1の補間用光電変換素子の電荷の出力と、前記光電変換素子列の電荷の出力のうち、一方を他方に対して前記第1の距離に対応する副走査時間だけ相対的に遅延させる第1の電荷出力遅延手段と、前記各イメージセンサチップの光電変換素子列における個々の光電変換素子の電荷の出力と、前記遅延された第1の補間用光電変換素子の電荷の出力とを、主走査方向における走査順に出力する出力制御手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記構成により、イメージセンサを1列に並べて成るラインセンサの隣接するイメージセンサチップ間の画素欠損領域の画像について、画素欠損領域近傍の光電変換素子が受光した画像データを基に擬似的にシミュレートされた信号ではなく、補間用光電変換素子により実際に読取った画像を用いることで、より精度の高い画像読取を行うことができる。
ここで、前記第1の補間用光電変換素子は、前記光電変換素子列よりも原稿の移動方向上流側に配置され、前記第1の距離は、副走査方向における走査間隔のN倍(N=1、2、3、・・・)であって、前記光電変換素子列における各光電変換素子は、それぞれ1個の信号電荷転送素子に接続されており、前記第1の電荷出力遅延手段は、前記第1の補間用光電変換素子に、(N+1)個の信号電荷転送素子を直列に接続してなると共に、副走査方向の走査クロックを受信する度に、各信号電荷転送素子の電荷を後段の信号電荷転送素子に順次転送する構造となっており、前記出力制御手段は、前記光電変換素子列における各信号電荷転送素子および前記第1の電荷出力遅延手段における最終段の信号電荷転送素子からの電荷の出力を、主走査方向における走査順に出力してもよい。
【0010】
また、前記各イメージセンサチップが実装された基板は、その主走査方向における一方の端部に突出部を有すると共に、他方の端部の、当該突出部に対応した位置に後退部が形成され、隣接するイメージセンサチップ同士の前記突出部と前記後退部を係合させて、主走査方向に列設する構成であり、前記基板の突出部に、前記第1の補間用光電変換素子が配置されていてもよい。
【0011】
さらに、前記イメージセンサチップは、前記光電変換素子列に対して副走査方向において前記第1の補間用光電変換素子と反対側であって、当該光電変換列と副走査方向に第2の距離離れた位置に、第2の補間用光電変換素子を有し、前記第2の補間用光電変換素子の電荷の出力を、前記第2の距離に対応する時間だけ遅延させる第2の電荷出力遅延手段を備え、前記出力制御手段は、原稿の移動方向に応じて、前記第1と第2の電荷出力遅延手段からの出力を選択し、その出力と、光電変換素子列における個々の光電変換素子の電荷の出力とを、主走査方向における走査順に出力してもよい。
【0012】
また、本発明に係るイメージセンサチップは、光電変換により原稿画像を読取る撮像素子が、基板上に複数直線状に配列された撮像素子列を備えるイメージセンサチップであって、前記基板の主走査方向における一方の端部の一部は突出して第1の突出部を形成し、他方の端部の前記突出部に対応する部分は後退して第1の後退部を形成しており、前記第1の突出部において、前記撮像素子列から副走査方向に第1の距離離れ、かつ、主走査方向において隣接する前記光電変換素子列同士の隙間に対応する位置に、第1の補間用光電変換素子を有し、前記基板が主走査方向に複数直線状に並べられたときに、隣り合う前記第1の突出部と前記第1の後退部とが互いに嵌り合う構成であることを特徴とする。
【0013】
ここで、前記第1の突出部が存する前記基板の端部において、前記光電変換素子列に対して副走査方向における前記第1の突出部が存する側の反対側に、第2の突出部が形成され、前記第1の後退部が存する前記基板の端部において、前記光電変換素子列に対して副走査方向における前記第1の後退部が存する側の反対側に、第2の後退部とが形成され、前記第2の突出部において、前記撮像素子列から副走査方向に第2の距離離れ、かつ、主走査方向において隣接する前記光電変換素子列同士の隙間に対応する位置に、第2の補間用光電変換素子を有し、前記基板が主走査方向に複数直線状に並べられたときに、隣り合う前記第2の突出部と前記第2の後退部とが互いに嵌り合う構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像読取装置の全体構成を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るCISの概略構成を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るCISの分解構成を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態1および2に係るイメージセンサチップの形状および概略構成を示す平面図である。
【図5】は、本発明の実施の形態1におけるラインセンサの隣接する2つのイメージセンサチップの連結部分を拡大して示す図であり、(a)は、補間用光電変換素子による原稿上の直線画像の読み取りの様子を模式的に示す図であり、(b)は、光電変換素子列による原稿上の直線画像の読み取りの様子を模式的に示す図である。
【図6】本発明の実施の形態1における画像読取装置の主要な機能構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の実施の形態1における画像読取処理の内容を示すフローチャートである。
【図8】は、実施の形態1において、光電変換素子に発生した信号電荷がA/D変換された画像信号データのメモリ内での格納状態を示すテーブルであり、(a)は、補間用光電変換素子の画像信号のメモリ内での格納状態を示すテーブルであり、(b)は、光電変換素子列の画像信号のメモリ内での格納状態を示すテーブルである。
【図9】本発明の実施の形態2における光電変換素子列および補間用光電変換素子による原稿画像の読取状態を模式的に示した図である。
【図10】本発明の実施の形態2における画像読取装置の主要な機能構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の変形例(1)におけるラインセンサの隣接する2つのイメージセンサチップの連結部分を拡大して示す図であり、イメージセンサチップの端部の形状および構成を示す平面図である。
【図12】本発明の変形例(1)における画像読取装置の主要な機能構成を示すブロック図である。
【図13】本発明の変形例(1)における画像読取処理の内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る画像読取装置の実施の形態を、原稿両面読取可能な自動原稿搬送装置(ADF:Auto Document Feeder)を備え、原稿を搬送させながらその画像を読み取る、いわゆるシートスルー方式の画像読取装置(以下、単に「スキャナ」という)に適用した場合を例にして説明する。
<実施の形態1>
(1−1.スキャナの全体構成)
図1は、本発明の実施の形態1に係る、スキャナ1の概略構成を示す断面図である。
【0016】
同図に示すように、スキャナ1は、画像読取部10およびADF20により成り、画像読取部10は、固定光学系の一つであるシートスルー方式と移動光学系の一つであるスキャナ移動方式の両方で原稿画像の読取が可能なように構成されている。
ADF20は、シートスルー方式の読取り実行の際、原稿給紙トレイ201にセットされた原稿束(不図示)は、ピックアップローラ203と捌きローラ204とにより原稿束から1枚ずつ分離され、レジストローラ205まで搬送される。なお、原稿給紙トレイ201における208は、原稿給紙トレイ201上の原稿の有無を検出するための原稿検出センサであり、公知の反射型光電センサなどからなる。
【0017】
搬送された原稿は、レジストローラ205のニップ部に当接して、その傾き(スキュー)が補正された後、所定のタイミングで原稿読取位置Qへと搬送され、原稿押さえ部材209により原稿読取位置Qにおける原稿面とシートスルー用プラテンガラス12上面との距離が一定に保たれた状態で読取りが行われるようになっている。
上記原稿読取位置Qを通過した原稿は、さらに、読取後ローラ206および排出ローラ207を介して原稿排紙トレイ202上に排出される。
【0018】
原稿読取位置Qを通過する原稿画像は、その直下に配されたCIS11によって読み取られる。
なお、上記各ローラは、原稿搬送モータM1を動力源とし、歯車やベルトなどの動力伝達機構(図示せず)を介して回転駆動される。
一方、原稿を手置き用プラテンガラス13に載置して読み取る場合(スキャナ移動方式)には、ADF20を上方に開放して、原稿を手置き用プラテンガラス13上にセットする。
【0019】
この場合には、CIS11は、図1の矢印Aの方向に移動される。
なお、上記CIS11は、スキャンモータM2を動力源とし、ベルトやワイヤ等から成る図示しない動力伝達機構を介して走行駆動される。
また、画像読取部10には、白色補正のための基準白板(シェーディング板)14がシートスルー用プラテンガラス12と手置き用プラテンガラス13との間に配置されている。
【0020】
画像読取部10のハウジング15内には、制御部7が配設される。この制御部7は、上記ADF20による原稿の搬送動作を制御すると共に、CIS11の出力信号を適正に処理して画像データを生成する。当該画像データは、LAN等を介して他の端末に出力される。
(1−2.CIS11の構成)
図2は、上記CIS11の長手方向(主走査方向)に直交する断面図であり、図3は当該CIS11の分解斜視図である。
【0021】
両図に示すように、CIS11は、光路を妨げない所定形状の内部空間を有する筐体115の底面部にラインセンサ112を配すると共に、内部にはランプ111と、このランプ111からの光の原稿Sからの反射光をライセンサ112の検出面に集光するセルフォックレンズ113とを備えてなる。
図3に示すように、ラインセンサ112は、基板112aに、5個のイメージセンサチップ1121, 1122, 1123, 1124, 1125を一直線上に配設してなる。各イメージセンサチップとしてCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等の撮像デバイスが使用される。基板112aは、板状の樹脂材料(例えば、ガラスエポキシ樹脂)で形成されている。
【0022】
また、ランプ111は、例えば複数のLED(Light Emitting Diode)を列状に配し、公知の拡散板を介して輝度を均一化して原稿に向けて射出するよう構成されている。
筐体115は、アルミ等の金属材料や、樹脂材料(例えば、ポリカーボネート樹脂)で形成されている。
【0023】
(1−3.イメージセンサチップの構成)
図4は、上記ラインセンサ112におけるイメージセンサチップ1121の構成を示す平面図である。なお、ここでは、イメージセンサチップ1121について以下に説明するが、他のイメージセンサチップ1122〜1125も全く同一の形状および構成を備える。
【0024】
同図に示すように、イメージセンサチップ1121は、回路基板30上に多数の光電変換素子(フォトダイオード)が直線状に形成された光電変換素子列40を備えている。
回路基板30は、シリコン単結晶をベース材とする。回路基板30の長手方向(主走査方向)における一方の端部(本例では右側端部)であって、光電変換素子列40の延長線上ではない、ほぼ上半分の部分が、主走査方向に突出して突出部31を形成し、当該突出部31上の所定の位置に補間用光電変換素子50が配設されている。
【0025】
また、長手方向において、回路基板30の突出部31が位置する側とは反対側(左側)の端部の、上記突出部31に対応する位置には、後退部32が形成されており、これにより、イメージセンサチップ1121が主走査方向に直線状に並べられた際に、隣り合うイメージセンサチップ1121の突出部31と後退部32が互いに嵌まり合うようになっており、当該突出部31上の所定の位置には、画素欠陥領域の画素を補間するための補間用光電変換素子50が設けられている。
【0026】
回路基板30上には、上記光電変換素子列40とほぼ平行して、回路部6が形成されている。回路部6には、転送された信号電荷を電圧に変換するため一旦信号電荷を蓄積する信号電荷蓄積部や、その電圧値を読み出すためのシフトレジスタ回路、およびその蓄積電荷をリセットするリセット回路が設けられており、各光電変換素子から出力された電荷を外部に転送する。
【0027】
なお、図4の「8」は、駆動パルスの印加や、電荷を出力するための端子群である。
図5(a)は、ラインセンサ112における隣接する2つのイメージセンサチップ1121、1122の連結部分を拡大して示す図であり、回路部6内の信号電荷蓄積部61, 62や補間用光電変換素子50の位置を具体的に開示している。
同図に示すように、光電変換素子列40と平行に、複数の信号電荷蓄積部61が個々の光電変換素子に対応して列状に配設されると共に、補間用光電変換素子50の横にも当該補間用光電変換素子50の電荷を蓄積するための信号電荷蓄積部62が設けられている。
【0028】
補間用光電変換素子50は、回路基板30の突出部31上の、光電変換素子列40より副走査方向に所定距離(本実施の形態では、4走査ライン分:隣接する主走査ラインの間隔をqとすると、4qの距離)離れた位置であって、かつ、主走査方向において、隣接する光電変換素子列40間の隙間、すなわち左側(イメージセンサチップ1121)の光電変換素子列40の右端の光電変換素子41と、右側(イメージセンサチップ1122)の光電変換素子列40の左端の光電変換素子42と距離のほぼ中間の位置となるように配設されている。
【0029】
本実施の形態では、光電変換素子41と42と距離が、略2ピッチ分(本実施の形態では約84μm)となるようにイメージセンサチップ1121が配列されており、その主走査方向における中間位置に設けられた補間用光電変換素子50と光電変換素子41、42との距離もほぼ画素ピッチpに等しくなるようにしている。
本実施の形態では、補間用光電変換素子50は、光電変換素子列40より副走査方向下流側に距離4q離れた位置に配設されているため、主走査方向と平行な方向の原稿上の直線画像Lを想定した場合、直線画像Lが補間用光電変換素子50による読取り位置に来た瞬間を時刻t1とすると、当該時刻t1において、補間用光電変換素子50には直線画像Lを読取った信号電荷Eが発生する。そして、原稿が距離q移動するのに要する時間をtとすると、原稿が距離4q移動するのに要する時間4tだけ時刻t1から経過した時刻t5において(図5(b)参照)、直線画像Lは、光電変換素子列40による読取位置に到達する。当該時刻t5において、光電変換素子列40には直線画像Lを読取った信号電荷Fが発生する。このように、主走査方向における同一ライン上にある原稿上の画像が、補間用光電変換素子50によって読取られる時刻t1と、光電変換素子列40によって読取られる時刻t5との間には、補間用光電変換素子50と光電変換素子列40との副走査方向における距離4qを原稿が移動するのに要する時間4t(=4q/副走査方向の走査スピード)だけの時間差が存在する。
【0030】
露光により各光電変換素子に発生した信号電荷は、後述の転送パルスを受けて、一斉に対応する信号電荷蓄積部に転送され、信号電荷蓄積部において、それぞれ転送された信号電荷に応じた電圧が発生し、続いて読出しクロック信号を受けて、各信号電荷蓄積部の電圧値が順次読み出される。詳しくは後述する。
(1−4.ラインセンサ112の出力制御ブロック図)
図6は、本実施の形態における制御部7によりCIS11のランプ111の点灯制御、およびラインセンサ112の出力を制御する構成を示すブロック図である。
【0031】
ランプ電源部71は、制御部7からの指示を受けて、原稿を照射するランプ111に電力を供給して発光させる。
駆動パルス発生部72は、ラインセンサ112の画像信号を読み出すためのセンサ駆動パルスを発生する。このセンサ駆動パルスには、駆動パルス発生部72から出力されるライン同期信号、および当該ライン同期信号に同期して、ラインセンサ112の各イメージセンサチップ1121における光電変換素子列40や補間用光電変換素子50の信号電荷を対応する信号電荷蓄積部61, 62に一斉に転送させる転送パルスや、信号電荷蓄積部に蓄積された信号電荷に応じて発生した電圧値をシフトレジスタ回路63が順次出力させるタイミングの基準となる読出しクロック信号、シフトレジスタ回路63に電圧値の順次読出しを開始させるトリガー信号、および次の走査ラインの画像読取に備えて信号電荷蓄積部61, 62に蓄積されている信号電荷をリセットするリセットパルス等が含まれる。
【0032】
主走査方向の走査周期は、ライン同期信号の発生周期に等しく、また、読出しクロック信号による信号電荷蓄積部からの電圧値の読出しは、一のライン同期信号と次のライン同期信号の間に行われ出力される。
上記信号電荷蓄積部61, 62として、例えば、フローティング・ディフュージョン・アンプ(FDアンプ)が用いられる。
【0033】
信号電荷蓄積部61, 62から出力された電圧値は、A/D変換部73でデジタルの画像信号に変換された後、並べ替え処理部74内のメモリ75に一時的に格納される。
メモリ75は、例えば揮発性メモリであるRAM(Random Access Memory)より成る。
メモリ75に格納された画像信号は、1ライン画像データ生成部76へ出力され、1走査ラインずつの画像データとして並び替えられ、画像処理部77で、シェーディング補正等の公知の補正処理を施された後、画像メモリ部78に格納され、必要に応じて画像データ出力部79を介してLANなどに接続された外部の端末に出力される。
【0034】
(1−5.ラインセンサ112の出力制御)
図7は、本実施の形態におけるCIS11による画像読取処理の内容を示すフローチャートである。
まず、ユーザがADF20の原稿給紙トレイ201上に原稿を載置して操作部2のスタートボタンを押下すると原稿が送られ、原稿の先端が原稿読取位置Q(図1参照)に到達すると、ラインセンサ112の各イメージセンサチップ1121における補間用光電変換素子50の信号電荷と、光電変換素子列40の信号電荷が、信号電荷蓄積部61, 62へと転送され、当該信号電荷蓄積部61, 62において転送されたそれぞれの信号電荷に応じて電圧が発生し、シフトレジスタ回路63はトリガー信号を受信すると、各信号電荷蓄積部に接続され電圧値の出力を制御するスイッチの役割を果たす選択トランジスタ(不図示)を読出しクロック信号に同期して順次作動させ、それにより、電圧値が読み出しラインを通じてA/D変換部73へと順次出力され、A/D変換部73でデジタルの画像信号に変換された後、その信号の属性情報と対応付けられてメモリ75に格納される(ステップS1、ステップS2、ステップS3)。
【0035】
次に、メモリ75に格納された画像信号は、主走査方向の走査順にメモリ75から読み出され、1ライン画像データ生成部76において各イメージセンサチップからの画像信号を主走査方向の走査順に並べて1ライン分の画像データを生成する並べ替え処理が行われ、1ライン分の画像データが生成される(ステップS4)。生成された1ライン分の画像データは画像処理部77に出力され、当該画像処理部77において所定の画像処理が行われた後、画像メモリ部78に格納される(ステップS5、ステップS6)。
【0036】
そして、原稿読み取りの最終ラインが読取られたかどうかを判定し、最終ラインが読取られた場合は(ステップS7:YES)、画像読取処理を終了する。最終ラインが読取られていない場合は、ステップS2に戻って(ステップS7:NO、ステップS2)、以下、ステップS7で最終ラインが読取られたと判定されるまで、ステップS2〜S7を繰り返す。
【0037】
図8は、画像信号のメモリ75内の格納状態の一例を示すテーブルである。図8(a)は、イメージセンサチップ1121〜1124の補間用光電変換素子50からの画像信号を格納するテーブルであり、画像信号が5ライン分(ライン番号C〜C+4)格納できるようになっている。図8(b)は、ライン番号(C+4)番目における各イメージセンサチップ1121〜1125の光電変換素子列40からの画像信号を格納するテーブルである。なお、ここでは、光電変換素子列40は(n−1)個の光電変換素子を含むものとして示している。
【0038】
1ライン画像データ生成部76は、これらのテーブルに格納されている画像信号を読み出して、主走査方向の走査順に画像信号を並べて、1ライン分の画像データを生成する。より詳しくは、以下の通りである。
1ライン画像データ生成部76は、先ず、主走査方向における1番目のイメージセンサチップ1121の光電変換素子列40からの画像信号を図8(b)の光電変換素子列用テーブルから読み出す。次に、1番目のイメージセンサ1121の補間用光電変換素子50、即ち、イメージセンサチップ1121と1122との繋ぎ目部分に位置する補間用光電変換素子50からの画像信号を図8(a)の補間用光電変換素子用テーブルから読み出すのであるが、この時、補間用光電変換素子50は、光電変換素子列40よりも副走査方向に4ライン分下流側に位置しているため、同一ラインの画像信号を得るためには、光電変換素子列40の画像信号よりも4ライン分前の補間用光電変換素子50の画像信号を読み出すことになる。即ち、例えば、光電変換素子列用テーブルからは、イメージセンサチップ1121のライン番号C+4の画像信号を読出し、それに続いて、補間用光電変換素子用テーブルからは、イメージセンサチップ1121のライン番号Cの画像信号を読み出して、先に光電変換素子列用テーブルから読み出したイメージセンサチップ1121のライン番号C+4の画像信号の後に続けて並べる。そして次に、光電変換素子列用テーブルからイメージセンサチップ1122のライン番号C+4の画像信号を読出して、先に読み出したイメージセンサチップ1121の画像信号の後に続けて並べ、次に、補間用光電変換素子用テーブルからイメージセンサチップ1122のライン番号Cの画像信号を読み出してその後に続けて並べる。以下、これをイメージセンサチップ1123、1124について順次行った後、最後に、光電変換素子列用テーブルからイメージセンサチップ1125のライン番号C+4の画像信号を読出して、それまでに読み出して並べられた画像信号の後ろに続けて並べ、1ライン分の画像データを生成する。
【0039】
そして、Cの値を順次インクリメントして、各テーブルの内容が更新され、原稿画像の全てのデータについて並べ替え処理を行う。
(1−6.実施の形態1のまとめ)
上記の構成により、イメージセンサチップ間の画素欠損領域であって光電変換素子列40よりも4ライン分離れた位置に補間用光電変換素子50を配し、それらの出力をメモリから読み出す際に、当該補間用光電変換素子50に対応するアドレスからの読み出しタイミングを光電変換素子列40に対応するアドレスの読み出しタイミングよりも4ライン分遅延させて実行することにより、従来のように模擬的に補間された画像データではなく、補間用光電変換素子50によって読取った実際の画像データを用いて画像読取を行うことができるので、鮮明な画像を得ることができる。
【0040】
なお、本実施の形態においては、主走査方向の読取方向において一番最後に配されたイメージセンサチップ1125の補間用光電変換素子50については、その信号電荷を使用していないので、補間用光電変換素子50のないチップを使用しても構わない。
また、イメージセンサチップ1125の補間用光電変換素子50の信号電荷の出力を積極的に使用する構成としてもよい。この場合は、当該信号電荷は他のチップの補間用光電変換素子50の信号電荷と同様の方法で処理される。
【0041】
なお、本実施の形態では、光電変換素子列40と補間用光電変換素子50との副走査方向における距離を4qとしたため、メモリ75から読み出される補間用光電変換素子50からの画像信号のライン番号を、光電変換素子列40からの画像信号ライン番号よりも4つ前のものとしたが、これに限られないことは勿論である。副走査方向における光電変換素子列40と補間用光電変換素子50との距離に応じて、いくつ前のライン番号の補間用光電変換素子50からの画像信号がメモリ75から読み出されるかは、適宜決定される。
【0042】
また、メモリ75と1ライン画像データ生成部76とは独立した別個のデバイスでなくてもよく、1つのRAM等のメモリの特定の記憶領域をメモリ75として使用し、その他の記憶領域を1ライン画像データ生成部76として使用してもよい。
さらに、ラインセンサ112は5つのイメージセンサチップ1121〜1125から成るとしたが、5つに限られず、原稿の主走査方向の読取領域をカバーできれば、4つ以下でも良いし、6つ以上でもよい。
<実施の形態2>
(2−1.補間用光電変換素子による欠損画素の補間)
上記実施の形態1では、光電変換素子列40と補間用光電変換素子50からの出力を一旦メモリ75に格納し、それらをメモリ75から読み出す際に、補間用光電変換素子50からの出力の読み出しのタイミングを、光電変換素子列40からの出力の読み出しよりも4ライン分遅延させることにより、各ラインにつき画素欠損領域の画素データが補間された画像データを得るようにしたが、本実施の形態2では、複数個の信号電荷転送素子を用いて補間用光電変換素子50の信号電荷の出力を遅延させる構成としている。
【0043】
なお、説明の重複を避けるため、実施の形態1と同じ内容のものについてはその説明を省略し、同じ構成要素については、同符号を付すものとする。
図9は、本実施の形態におけるラインセンサ112の隣接する2つのイメージセンサチップ1121、1122の連結部分を拡大して示す図であり、時刻t1, t2, t3, t4, t5, t6における光電変換素子列40および補間用光電変換素子50による主走査方向と平行な方向の原稿上の直線画像Lの読取状態を模式的に示す。
【0044】
時刻t1, t2, t3, t4, t5, t6は、この順に時系列となっており、各時刻の間隔は、原稿が距離qだけ移動するのに要する時間、すなわち、パルス発生部72からのライン同期信号の発生周期tだけ開いている。
補間用光電変換素子50で発生した信号電荷Eは、信号電荷出力遅延部600に転送される。ここで、信号電荷出力遅延部600は、信号電荷蓄積部61と4個の信号電荷転送素子60とを直列に配列してなり、ライン同期信号に同期して出力される転送パルスを受信する毎に、電荷を後段の信号電荷転送素子60もしくは信号電荷蓄積部61に転送するように構成される。
【0045】
信号電荷転送素子60としては、例えば、光電変換素子の電荷を一旦保持した後、外部に転送する機能を有する、電荷結合素子(CCD: Charge Coupled Device)と呼ばれる電荷を保持するための公知の回路素子が用いられる。
次に、図9に従って、主走査方向と平行な方向の原稿上の直線画像Lが読取られる様子について説明する。時刻t1において直線画像Lを読取って補間用光電変換素子50上に発生した信号電荷Eは、時間tごとに出力される転送パルスを受信する度にひとつずつ後段の信号電荷転送素子60へと転送され、時間4t経過後の時刻t5においては、補間用光電変換素子50から4番目の信号電荷転送素子60上に保持されている。
【0046】
この時(時刻t5)、原稿上の直線画像Lが光電変換素子列40によって読取られて、当該光電変換素子列40上に信号電荷Fが発生する。そして、時刻t6において、転送パルスの受信とともに、信号電荷Eは信号電荷出力遅延部600の最後段(5番目)に配設されている信号電荷蓄積部62上に転送され、信号電荷Fは光電変換素子列40の各光電変換素子に接続されている信号電荷蓄積部61へと転送される。
【0047】
信号電荷出力遅延部600の5番目の(最後段の)信号電荷蓄積部62および信号電荷蓄積部61では、転送された信号電荷に応じて電圧が発生する。時刻t6における転送パルスに続いて駆動パルス発生部72からシフトレジスタ回路63へ供給されるトリガー信号を受けて、シフトレジスタ回路63は読出しクロックに同期して光電変換素子列40の信号電荷Fおよび補間用光電変換素子50の信号電荷Eから発生した電圧値を、主走査方向における走査順にA/D変換部73へと順次出力させる。
【0048】
図10は、本実施の形態における、制御部7によるCIS11のランプ111の点灯制御、およびラインセンサ112の出力制御の構成を示すブロック図である。図6の実施の形態1におけるブロック図と異っている部分について、以下に説明する。
補間用光電変換素子50において発生した信号電荷Eは、駆動パルス発生部72から出力される転送パルスにより信号電荷出力遅延部600の1番目の信号電荷転送素子60へと転送される。ここで、当該信号電荷Eは、当該信号電荷出力遅延部600を構成する信号電荷転送素子60の個数に信号電荷蓄積部62の個数1を加えた数に対応する時間(本実施の形態の場合、信号電荷転送素子60は4個であるので、信号電荷蓄積部の個数である1を加えた数は5であり、補間用光電変換素子50から信号電荷蓄積部62までの転送回数は5回となり、時間5t)後に、信号電荷出力遅延部600の最後段に配設されている信号電荷蓄積部62へと転送され、当該信号電荷蓄積部62において、転送された信号電荷Eに応じた電圧が発生する。
【0049】
一方、光電変換素子列40の各光電変換素子において発生した信号電荷Fは、駆動パルス発生部72から出力される転送パルスにより信号電荷蓄積部61へと転送され、当該信号電荷蓄積部61において、転送されたそれぞれの信号電荷Fに応じた電圧が発生する。そして、駆動パルス発生部72からシフトレジスタ回路63へ供給されるトリガー信号および読出しクロック信号により、シフトレジスタ回路63は選択トランジスタを順次作動させ、それにより、上記信号電荷蓄積部62において信号電荷Eより発生した電圧値と、信号電荷蓄積部61において信号電荷Fより発生した電圧値とが、主走査方向の走査順にイメージセンサチップ1121ごとにA/D変換部73へと出力される。
【0050】
これにより、光電変換素子列40からの信号電荷Fからの電圧値と、当該信号電荷Fが発生した時刻よりも時間4t前の時刻に補間用光電変換素子50において発生した信号電荷Eからの電圧値とが、主走査方向の走査順に同一のタイミングで、各イメージセンサチップ1121からA/D変換部73へと転送される。1ライン画像データ生成部76は、A/D変換部73によって変換された各イメージセンサチップ1121からのデジタルの画像信号を、イメージセンサチップ1121の主走査方向における走査順に並べて1ライン分の画像データを生成し、画像処理部77へと出力する。
【0051】
(2−2.実施の形態2のまとめ)
上記の構成により、イメージセンサチップ間の画素欠損領域の原稿画像を補間用光電変換素子50によって読取った実際の画像データを用いて補間することができる。また、補間用光電変換素子50からの信号電荷の出力が、信号電荷出力遅延部600によって遅延され、光電変換素子列40からの信号電荷と同一タイミングで主走査方向の走査順に各イメージセンサチップごとにA/D変換部73へと出力されてA/D変換されることにより、その後の1ライン画像データ生成部76においては、イメージセンサチップごとの信号データを主走査方向の走査順につなぎ合わせる簡単な処理で済むこととなり、1ライン分の画像データを生成するプログラムやその処理内容の軽量化を図ることができ、また当該処理に要する時間も短縮することができるという利点がある。
【0052】
なお、本実施の形態では、光電変換素子列40と補間用光電変換素子50との副走査方向における距離を4qとしたため、信号電荷出力遅延部600を構成する信号電荷転送素子60の個数を4個としたが、これに限られないことは勿論であり、光電変換素子列40と補間用光電変換素子50との副走査方向における距離に応じて、信号電荷出力遅延部600を構成する信号電荷転送素子60の個数は適宜決定される。
【0053】
また、ラインセンサ112は5つのイメージセンサチップ1121〜1125から成るとしたが、5つに限られず、原稿の主走査方向の読取領域をカバーできれば、4つ以下でも良いし、6つ以上でもよい。
<変形例>
(1)実施の形態1および2では、ADF20は原稿両面自動読取り機能を備えておらず、シートスルー方式による原稿読取り時におけるCIS11による原稿読取方向は一方向のみであった。変形例(1)では、スイッチバック方式により原稿を反転させて原稿両面自動読取を行う機能を持つADFを備えた画像読取装置に適用した場合について説明する。なお、説明の重複を避けるため、実施の形態1および2と同じ内容のものについてはその説明を省略し、同じ構成要素については、同符号を付すものとする。
【0054】
図11は、本変形例におけるラインセンサ112の隣接する2つのイメージセンサチップ(同図においては、代表として1121および1122)の連結部分を拡大して示した図である。同図に示すように、イメージセンサチップ1121は、回路基板30の主走査方向(長手方向)における一方の端部において、光電変換素子列40に対して副走査方向における両側に突出部31を有し、双方の突出部31のうち、副走査方向の読取方向がCの時の読取方向下流側(実施の形態1および2と同じ側)には、補間用光電変換素子50が配置され、副走査方向の読取方向がDの時の読取方向下流側(実施の形態1および2と反対側)の突出部31には、補間用光電変換素子51が配置されている。
【0055】
イメージセンサチップ1121および1122は、左側(イメージセンサチップ1121)の光電変換素子列40の右端の光電変換素子41と、右側(イメージセンサチップ1122)の光電変換素子列40の左端の光電変換素子42との距離が略2pとなるように配列されている。補間用光電変換素子50および51は、主走査方向において、光電変換素子41と光電変換素子42との距離のほぼ中間の位置、即ち、主走査方向において当該光電変換素子41および42からそれぞれ略距離p離れた位置に配設されている。
【0056】
また、補間用光電変換素子50は、光電変換素子列40から副走査方向のC方向下流側に略距離4q離れた位置に配設され、補間用光電変換素子51は、光電変換素子列40から副走査方向のD方向下流側に略3q離れた位置に配設されている。
補間用光電変換素子50において発生した信号電荷は、信号電荷出力遅延部600に転送され、補間用光電変換素子51において発生した信号電荷は、信号電荷出力遅延部601に転送される。信号電荷出力遅延部601は信号電荷蓄積部64および3個の信号電荷転送素子60を直列に配列して成り、信号電荷出力遅延部600と同様に、ライン同期信号を受信する毎に、電荷を後段の信号電荷転送素子60および信号電荷蓄積部64に転送する。
【0057】
長手方向において、回路基板30の突出部31が位置する側とは反対側(左側)の端部の、突出部31に対応する位置には、後退部32が形成されており、実施の形態1および2と同様に、イメージセンサチップ1121が主走査方向に直線状に並べられた際に、隣り合うイメージセンサチップ1121の突出部31と後退部32が互いに嵌まり合うようになっている。
【0058】
図12は、本変形例における制御部7によりラインセンサ112の出力を制御する構成を示すブロック図である。なお、同図においては、制御部7によるCIS11のランプ111の点灯制御、およびラインセンサ112の出力制御におけるA/D変換部73以降の機能構成は、図10と同様であるので、ここでは省略している。
両面原稿読取の際の、第1面の副走査方向の読取方向をC(図11参照)、第2面の副走査方向の読取方向をD(図11参照)とすると、原稿第1面目の読取時には、補間用光電変換素子50が光電変換素子列40よりも副走査方向の読取方向下流側に位置しているので、当該補間用光電変換素子50を含む出力回路が信号電荷出力回路選択部9により選択される。そして、実施の形態2と同様にして、補間用光電変換素子50において発生した信号電荷Eは、信号電荷出力遅延部600において4回の転送を経て時間4tだけ遅延されて信号電荷蓄積部62へと転送される。そして、信号電荷蓄積部62において信号電荷Eによって発生した電圧値は、信号電荷Eが発生した時刻よりも時間4t後に光電変換素子列40の各光電変換素子において発生した信号電荷Fによって信号電荷蓄積部61に発生した電圧値と共に、同一のタイミングで、主走査方向の走査順にシフトレジスタ63によってA/D変換部73へと出力される。
【0059】
原稿第2面目の読取時には、補間用光電変換素子51が光電変換素子列40よりも副走査方向の読取方向下流側に位置することとなるため、当該補間用光電変換素子51を含む出力回路が信号電荷出力回路選択部9により選択される。そして、上記と同様に、補間用光電変換素子51において発生した信号電荷Eは、信号電荷出力遅延部601において3回の転送を経て時間3tだけ遅延されて信号電荷蓄積部64へと転送される。そして、信号電荷蓄積部64において信号電荷Eにより発生した電圧値は、当該信号電荷Eが発生した時刻の時間3t後に光電変換素子列40において発生した信号電荷Fによって信号電荷蓄積部61に発生した電圧値と共に、同一のタイミングで、主走査方向の走査順にシフトレジスタ63によりA/D変換部73へと出力される。
【0060】
上記信号電荷出力回路選択部9による出力回路の選択は、選択された方の補間用光電変換素子および当該選択された補間用光電変換素子に接続されている信号電荷出力遅延部にセンサ駆動パルスを供給することにより実行される。その際、選択されなかった方の補間用光電変換素子には、センサ駆動パルスが供給されず、当該補間用光電変換素子において発生した信号電荷は、転送されずにその場に保持される。そして、次の原稿面の読み取りが行われる前に、当該選択されなかった方の補間用光電変換素子に電子シャッタパルスが供給され、保持されていた信号電荷がリセットされて、次の原稿面の読み取りに備える。
【0061】
図13は、本変形例における画像読取処理の内容を示すフローチャートである。原稿画像の読取が開始されると、読み取るべき原稿が第1面目であるかどうかの判定が行われる(ステップS11、ステップS12)。読み取るべき原稿が第1面目である場合、第1面目用の信号回路(本変形例の場合は、補間用光電変換素子50が含まれる出力回路)が選択される(ステップS12:YES、ステップS13)。そして、補間用光電変換素子50からの信号電荷による電圧値は、駆動パルス発生部72からのセンサ駆動パルスにより、光電変換素子列40の信号電荷による電圧値と共に、各イメージセンサチップから主走査方向の走査順に、シフトレジスタ63によりA/D変換部73へと出力される(ステップS15)。
【0062】
読み取るべき原稿が第1面目ではない場合、即ち、読み取るべき原稿が第2面目である場合は、第2面目用の信号回路(本変形例の場合は、補間用光電変換素子51が含まれる出力回路)が選択される(ステップS12:NO、ステップS14)。そして、光電変換素子51からの信号電荷による電圧値は、上記と同様にして、光電変換素子列40からの信号電荷による電圧値と共に、各イメージセンサチップから主走査方向の走査順に、シフトレジスタ63によりA/D変換部73へと出力される(ステップS15)。
【0063】
A/D変換部73へと出力された信号電荷は、当該A/D変換部73においてデジタルの画像信号に変換された後、続いて1ライン画像データ生成部76に出力され、当該1ライン画像データ生成部76において、各イメージセンサチップからの画像信号を主走査方向の走査順に並べて1ライン分の画像データを生成する並べ替え処理が行われる(ステップS16、ステップS17)。
【0064】
ここで、原稿の第2面目読取りの場合、原稿は反転されて走査されるため、第1面目読取り時と第2面目読取り時とでは、原稿紙面に対して主走査方向の走査方向が逆になる。従って、補間用光電変換素子51の信号電荷は、光電変換素子列40の信号電荷と共に、各イメージセンサチップから主走査方向の走査順とは逆の順番でA/D変換部73へと並べ替えがなされる。
【0065】
生成された1ライン分の画像データは画像処理部77に出力され、当該画像処理部77において所定の画像処理が行われた後、画像メモリ部78に出力され、格納される(ステップS18、ステップS19)。
なお、ここで、原稿の第1面目読取りの場合と第2面目読取りの場合とでは、原稿紙面に対する副走査方向の走査方向も逆になる。即ち、例えば、第1面目の場合には、原稿の上部から下部に向けて読取られるのに対し、第2面目の場合には、原稿の下部から上部に向けて読取られるので、画像メモリ部78に格納される1ライン分の画像データは、1面目と2面目とでは、副走査方向において格納される順番が逆になる。
【0066】
そして、読取った画像が最終ラインであるかどうかの判定が行われる。最終ラインでない場合、ステップS15に戻り(ステップS20:NO、ステップS15)、以下、ステップS20において最終ラインであると判定されるまで、ステップS15〜ステップS20を繰り返す。
最終ラインである場合、次に読み取るべき全ての原稿の読み取りが終了したかどうかの判定が行われる(ステップS20:YES、ステップS21)。当該判定は、原稿検出センサ208(図1参照)による原稿給紙トレイ201(図1参照)上の原稿検出の有無により行われる。
【0067】
全ての原稿の読み取りが終了したと判定された場合(ステップS21:YES)、画像読取処理を終了する。全ての原稿の読み取りが終了していないと判定された場合、ステップS12に戻り(ステップS21:NO、ステップS12)、以下、ステップS21において全原稿の読み取りが終了した判定されるまで、ステップS12〜ステップS21を繰り返す。
(2)上記変形例(1)においては、イメージセンサチップ1121の補間用光電変換素子50および51は、それぞれ信号電荷出力遅延部600および601を備えており、当該信号電荷出力遅延部600および601により、信号電荷から発生した電圧値の出力タイミングを所定の時間遅延させる構成であったが、これに限られず、以下のようにしてもよい。即ち、副走査方向の読取方向に応じて信号電荷出力回路選択部9によって選択された補間用光電変換素子からの信号電荷による電圧値がA/D変換部73へと出力され、A/D変換部73においてデジタルの画像信号に変換された後、メモリ75内の補間用光電変換素子用テーブル(図8(a)参照)に格納されるとしてもよい。1ライン画像データ生成部76は、実施の形態1と同様にして、光電変換素子列40からの画像信号と、選択された補間用光電変換素子に応じた所定ライン番号前の補間用光電変換素子からの画像信号とをメモリ75から読出し、主走査方向の走査順に並べて1ライン分の画像データを生成する。
【0068】
なお、この場合においても、原稿の1面目読取り時と2面目読取り時とでは、原稿面に対する主走査方向および副走査方向の走査方向が逆になるため、1ライン画像データ生成時および1ページ分の画像データ生成時においては、画像データの並べ順が逆になる。
(3)上記実施の形態2および変形例(1)においては、光電変換素子列に対して副走査方向の原稿読取方向下流側に配置された補間用光電変換素子からの信号電荷の出力を、光電変換素子列からの信号電荷の出力よりも所定時間遅延させることにより、原稿上の主走査方向における同一走査ラインの画像を読み取った信号電荷を同一タイミングでA/D変換部へと出力し、これらの信号電荷を主走査方向1ライン分の画像データとして処理する構成であった。しかし、これに限られず、以下のようにしてもよい。
【0069】
即ち、光電変換素子列40からの信号電荷の出力を、当該光電変換素子列に対して副走査方向の原稿読取方向下流側に配置された補間用光電変換素子からの信号電荷の出力よりも所定時間遅延させるようにしてもよい。
ただし、この場合、補間用光電変換素子50と比較して、光電変換素子列40の光電変換素子の個数は非常に多いため、遅延させる対象となる信号電荷量も非常に大きい。そのため、実施の形態1のようにメモリ75によって遅延させる場合、メモリ75にはメモリ容量の大きなものが必要となる。
【0070】
また、実施の形態2および変形例(1)のように、複数の信号電荷転送素子60より成る信号電荷出力遅延部600もしくは601を用いる場合、光電変換素子列40における個々の光電変換素子が信号電荷出力遅延部600(もしくは601)をそれぞれ備えることとなり、信号電荷転送素子60が多数必要となる。
(4)上記各実施の形態においては、A/D変換部73はラインセンサ112から独立した構成としたが、当該A/D変換部73をイメージセンサチップ1121の回路部6に組み込んだ構成としてもよい。
(5)上記実施の形態1においては、A/D変換部73およびメモリ75はラインセンサ112から独立した構成としたが、当該A/D変換部73およびメモリ75をイメージセンサチップ1121の回路部6に組み込んだ構成としてもよい。その場合は、各イメージセンサチップ1121がメモリ75を備え、それぞれのメモリ75には、それぞれのイメージセンサチップ1121の画像信号のみが格納される。
(6)上記各実施の形態および各変形例においては、ラインセンサ112の各イメージセンサチップ1121は同一の形状としたが、これに限られず、以下のようにしてもよい。即ち、主走査方向における最下流側のイメージセンサチップ1121の補間用光電変換素子によって原稿画像を読取る必要が無い場合には、当該主走査方向最下流側のイメージセンサチップ1121は、補間用光電変換素子を備えない構成でもよく、さらには、当該最下流側の突出部31を備えない構成でもよい。
(7)上記各実施の形態および変形例においては、イメージセンサチップ1121をシフトレジスタ回路を備えたCMOS様の回路構成で説明したが、これに限られず、CCDにより信号電荷を転送する構成としてもよい。
【0071】
また、上記各実施の形態および上記各変形例の内容をそれぞれ組み合わせるとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、CISにより原稿画像を読取る画像読取装置に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 スキャナ
10 画像読取部
11 CIS
111 ランプ
112 ラインセンサ
112a 基板
1121、1122、1123、1124、1125 イメージセンサチップ
113 セルフォックレンズ
115 筐体
12 シートスルー用プラテンガラス
13 手置き用プラテンガラス
20 ADF
201 原稿給紙トレイ
202 原稿排紙トレイ
208 原稿検出センサ
209 原稿押さえ部材
30 回路基板
31 突出部
32 後退部
40 光電変換素子列
41、42 光電変換素子
50、51 補間用光電変換素子
6 回路部
60 信号電荷転送素子
600、601 信号電荷出力遅延部
61、62、64 信号電荷蓄積部
63 シフトレジスタ回路
7 制御部
8 端子群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換素子列が形成されたイメージセンサチップを、長手方向に複数個配列してなるラインセンサを有し、原稿を当該ラインセンサに対して副走査方向に相対的に移動させて、当該原稿の画像データを取得する画像読取装置であって、
前記ラインセンサにおいて配列される前記イメージセンサチップの個数をn個とした場合に、少なくともn−1個のイメージセンサチップは、光電変換素子列から副走査方向に第1の距離離れ、かつ、主走査方向において隣合う2個のイメージセンサチップの光電変換素子列の列間に対応する位置において、第1の補間用光電変換素子を有し、
前記第1の補間用光電変換素子の電荷の出力と、前記光電変換素子列の電荷の出力のうち、一方を他方に対して前記第1の距離に対応する副走査時間だけ相対的に遅延させる第1の電荷出力遅延手段と、
前記各イメージセンサチップの光電変換素子列における個々の光電変換素子の電荷の出力と、前記遅延された第1の補間用光電変換素子の電荷の出力とを、主走査方向における走査順に出力する出力制御手段と
を備えることを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記第1の補間用光電変換素子は、前記光電変換素子列よりも原稿の移動方向上流側に配置され、
前記第1の距離は、副走査方向における走査間隔のN倍(N=1、2、3、・・・)であって、
前記光電変換素子列における各光電変換素子は、それぞれ1個の信号電荷転送素子に接続されており、
前記第1の電荷出力遅延手段は、前記第1の補間用光電変換素子に、(N+1)個の信号電荷転送素子を直列に接続してなると共に、副走査方向の走査クロックを受信する度に、各信号電荷転送素子の電荷を後段の信号電荷転送素子に順次転送する構造となっており、
前記出力制御手段は、前記光電変換素子列における各信号電荷転送素子および前記第1の電荷出力遅延手段における最終段の信号電荷転送素子からの電荷の出力を、主走査方向における走査順に出力する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記各イメージセンサチップが実装された基板は、その主走査方向における一方の端部に突出部を有すると共に、他方の端部の、当該突出部に対応した位置に後退部が形成され、隣接するイメージセンサチップ同士の前記突出部と前記後退部を係合させて、主走査方向に列設する構成であり、
前記基板の突出部に、前記第1の補間用光電変換素子が配置されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記イメージセンサチップは、さらに、前記光電変換素子列に対して副走査方向において前記第1の補間用光電変換素子と反対側であって、当該光電変換列と副走査方向に第2の距離離れた位置に、第2の補間用光電変換素子を有し、
前記第2の補間用光電変換素子の電荷の出力を、前記第2の距離に対応する時間だけ遅延させる第2の電荷出力遅延手段を備え、
前記出力制御手段は、原稿の移動方向に応じて、前記第1と第2の電荷出力遅延手段からの出力を選択し、その出力と、光電変換素子列における個々の光電変換素子の電荷の出力とを、主走査方向における走査順に出力する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の画像読取装置。
【請求項5】
光電変換により原稿画像を読取る撮像素子が、基板上に複数直線状に配列された撮像素子列を備えるイメージセンサチップであって、
前記基板の主走査方向における一方の端部の一部は突出して第1の突出部を形成し、他方の端部の前記突出部に対応する部分は後退して第1の後退部を形成しており、
前記第1の突出部において、前記撮像素子列から副走査方向に第1の距離離れ、かつ、主走査方向において隣接する前記光電変換素子列同士の隙間に対応する位置に、第1の補間用光電変換素子を有し、
前記基板が主走査方向に複数直線状に並べられたときに、隣り合う前記第1の突出部と前記第1の後退部とが互いに嵌り合う
ことを特徴とするイメージセンサチップ。
【請求項6】
前記第1の突出部が存する前記基板の端部において、前記光電変換素子列に対して副走査方向における前記第1の突出部が存する側の反対側に、第2の突出部が形成され、
前記第1の後退部が存する前記基板の端部において、前記光電変換素子列に対して副走査方向における前記第1の後退部が存する側の反対側に、第2の後退部とが形成され、
前記第2の突出部において、前記撮像素子列から副走査方向に第2の距離離れ、かつ、主走査方向において隣接する前記光電変換素子列同士の隙間に対応する位置に、第2の補間用光電変換素子を有し、
前記基板が主走査方向に複数直線状に並べられたときに、隣り合う前記第2の突出部と前記第2の後退部とが互いに嵌り合う
ことを特徴とする請求項5に記載のイメージセンサチップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−3956(P2011−3956A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143082(P2009−143082)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.セルフォック
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】