説明

画像識別回路

【課題】テキスト画と自然画の境界部分において不自然な輪郭補正が行われないように、テキスト画と自然画の識別に加えて境界部分の識別も可能な画像識別回路を提供すること。
【解決手段】入力ディジタル映像信号の着目画素についてその着目画素がテキスト画であるか自然画であるかを識別する画像識別回路において、着目画素を中心とした複数画素を単位として前記識別結果の分布を、テキスト画と自然画の境界部分を検出するために予め設定した複数の境界パターンと照合して、着目画素が境界部分であるか否かを検出する境界検出部を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディジタル画像処理におけるテキスト画(コンピュータ画像)と自然画とが混在する画像の精度の高い識別処理を行う画像識別回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像にはそれぞれ特質があり、その特質によって、例えば、テキスト画(コンピュータ画像)と自然画とに分類される。従来より、これらの画像の種類毎にフィルタ処理などの画像処理の方法を切り替えることが行われており、1画面にテキスト画と自然画が混在する画像には、それぞれの特質を抽出して識別を行い、その識別結果に基づいて画像処理を行っていた。従来の識別処理方法の一例として、(1)周波数帯域から識別する方法、(2)着目画素の周辺画素に使われる色数から識別する方法、(3)1画面全体又は一定領域に使用される色数のヒストグラムで識別する方法、などが存在するが、これらはいずれも何らかの問題点があり、識別精度が必ずしも良くないので、本出願人はより精度の高いテキスト画と自然画の識別方法として、特許文献1を既に提案している。この特許文献1によれば、従来の(1)〜(3)の識別方法に比べて識別精度を向上させることが出来るが、少ない画素数で構成された小さなテキストをテキスト画として判別することが出来ないという問題があったため、さらにこの問題を解決したものとして特許文献2を出願している。
【0003】
特許文献2に記載の画像識別回路の構成を図7に基づいて簡単に説明する。この図7に示す画像識別回路の特徴は、先ず、図8に示すような着目画素を中心とした4方向について、水平方向カウント部15、垂直方向カウント部16、斜め0方向カウント部17及び斜め1方向カウント部18のそれぞれで5画素の中から2画素を選ぶ全ての組合わせのうち同一輝度となる組合わせが幾つあるかをカウントする。次に、これらの各方向でのカウント値を合計した合計カウント値について、合計値判別部20において設定値と比較して設定値以上である場合には着目画素はテキスト画であると判別する。また、各方向でのカウント値について、方向別判別部21においてそれぞれの方向で設定値と比較して設定値以上である場合には着目画素はテキスト画であると判別する。最終的にOR回路22で合計値判別部20と方向別判別部21の出力の論理和をとって、いずれかの判別部でテキスト画と判別された場合には論理和として「1」が出力されてテキスト画と判別し、それ以外の場合には「0」が出力されて自然画と判別される。
【0004】
このように、特許文献2に記載の画像識別回路によれば、特許文献1での問題であった少ない画素数で構成された小さなテキストをテキスト画として判別することが出来ないという点を解決して、さらに識別精度を向上させることが可能となる。
【特許文献1】特開2004−56350号公報
【特許文献2】特願2004−153580
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このようにして画素毎に求めた識別結果は後段の回路において輪郭補正等の画像処理に用いられる。例えば、テキスト画と識別された画素には輪郭補正をせずに自然画と識別された画素においてのみ輪郭補正を施すことで、もともとコントラストがありくっきりしているテキスト画部分はそのままに、自然画部分は鮮鋭感を出すといった効果を与えることが出来る。
しかし、輪郭補正は隣接画素の情報を用いて行うものであるため、テキスト画との境界部分にある自然画に対して輪郭補正を行うと、テキスト画の影響で不自然な輪郭補正がなされてしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、テキスト画と自然画の境界部分において不自然な輪郭補正が行われないように、テキスト画と自然画の識別に加えて境界部分の識別も可能な画像識別回路を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1は、入力ディジタル映像信号の着目画素についてその着目画素がテキスト画であるか自然画であるかを識別する画像識別回路において、着目画素を中心とした複数画素を単位として前記識別結果の分布を、テキスト画と自然画の境界部分を検出するために予め設定した複数の境界パターンと照合して、着目画素が境界部分であるか否かを検出する境界検出部を設けたことを特徴とする画像識別回路である。
【0008】
本発明の請求項2は、入力ディジタル映像信号の着目画素について、着目画素を中心とする(2n+1)画素(nは1以上の整数)で構成される複数方向の各方向別に、(2n+1)画素から2画素を選択する全(2n2+n)通りの組合わせについて同一輝度値である組合わせの数をカウントする方向別カウント部と、この方向別カウント部のカウント値を全方向分合計した合計カウント値から画像の種類を識別する合計値判別部と、それぞれの方向毎に方向別カウント部のカウント値から画像の種類を識別する方向別判別部とを具備してなる画像識別回路において、着目画素を中心とした複数画素を単位として前記識別結果の分布を、テキスト画と自然画の境界部分を検出するために予め設定した複数の境界パターンと照合して、着目画素が境界部分であるか否かを検出する境界検出部を設けたことを特徴とする画像識別回路である。
【0009】
本発明の請求項3は、請求項1又は2に加えて、境界検出部は、識別結果の信号を順次1ラインずつ遅延させて連続する(2m+1)ライン(mは1以上の整数)分の信号を得るための2m個のラインメモリと、(2m+1)ライン分の信号を一時格納しておくレジスタと、レジスタから出力された着目画素を中心とした(2m+1)画素×(2k+1)画素(kは1以上の整数)分の識別結果の分布を予め設定した複数の境界パターンとそれぞれ照合するための複数のパターン検出部と、複数のパターン検出部の出力の論理和をとってこれを境界検出結果として出力するOR回路とからなることを特徴とする画像識別回路である。
【0010】
本発明の請求項4は、請求項3に加えて、各パターン検出部は、レジスタから出力された着目画素を中心とした(2m+1)画素×(2k+1)画素分の識別結果の分布について、境界パターンのテキスト画部分に対応する画素の合計値を演算する加算器と、境界パターンの自然画部分に対応する画素の合計値を演算する加算器と、前記テキスト画に対応した加算器の合計値を設定された条件と比較する比較器と、前記自然画に対応した加算器の合計値を設定された条件と比較する比較器と、これら2つの比較器の出力の論理積をとって出力するAND回路とからなることを特徴とする画像識別回路である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、テキスト画との境界部分にある自然画に対して輪郭補正を行うと、テキスト画の影響で不自然な輪郭補正がなされてしまうという従来の問題点があったが、本発明による境界検出出力の結果を同時に用いることにより、不自然な輪郭補正となってしまう境界を検出してこの部分には輪郭補正を行わないといった処理を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明による画像識別回路は、入力ディジタル映像信号の着目画素について、着目画素を中心とする(2n+1)画素(nは1以上の整数)で構成される複数方向の各方向別に、(2n+1)画素から2画素を選択する全(2n2+n)通りの組合わせについて同一輝度値である組合わせの数をカウントする方向別カウント部と、この方向別カウント部のカウント値を全方向分合計した合計カウント値から画像の種類を識別する合計値判別部と、それぞれの方向毎に方向別カウント部のカウント値から画像の種類を識別する方向別判別部とを具備してなる画像識別回路において、着目画素を中心とした複数画素を単位として前記識別結果の分布を、テキスト画と自然画の境界部分を検出するために予め設定した複数の境界パターンと照合して、着目画素が境界部分であるか否かを検出する境界検出部を設けたことを特徴とするものである。
さらに、境界検出部は、識別結果の信号を順次1ラインずつ遅延させて連続する(2m+1)ライン(mは1以上の整数)分の信号を得るための2m個のラインメモリと、着目画素周辺の(2m+1)ライン分の信号を一時格納しておくレジスタと、レジスタから出力された着目画素を中心とした(2m+1)画素×(2k+1)画素(kは1以上の整数)分の識別結果の分布を予め設定した複数の境界パターンとそれぞれ照合するための複数のパターン検出部と、複数のパターン検出部の出力の論理和をとってこれを境界検出結果として出力するOR回路とからなる
【実施例1】
【0013】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明による画像識別回路の特徴は、図8に示すような着目画素を中心とした4方向でそれぞれ、5画素の中から2画素を選ぶ全ての組合わせのうち同一輝度となる組合わせが幾つあるかをカウントし、この各方向でのカウント値と全方向の合計カウント値とを用いて、当該着目画素がテキスト画であるのか自然画であるのかを識別し、この識別結果の分布から自然画とテキスト画の境界部分を検出するためのものである。これを実施するための構成を示したものが図1に示すブロック図であり、以下、この図1を用いて説明する。
【0014】
図1において、映像信号遅延処理部11は、入力された映像信号に対して、1ライン遅延回路と1ドット遅延回路(図示は省略)を組合わせて遅延させることで図8に示す4方向の各画素の信号を生成している。この生成した信号のうち、水平方向カウント部15には(x-2,y)、(x-1,y)、(x,y)、(x+1,y)、(x+2,y)の5画素の信号が入力され、垂直方向カウント部16には(x,y-2)、(x,y-1)、(x,y)、(x,y+1)、(x,y+2)の5画素の信号が入力され、斜め0方向カウント部17には(x-2,y-2)、(x-1,y-1)、(x,y)、(x+1,y+1)、(x+2,y+2)の5画素の信号が入力され、斜め1方向カウント部18には(x+2,y-2)、(x+1,y-1)、(x,y)、(x-1,y+1)、(x-2,y+2)の5画素の信号が入力される。
【0015】
水平方向カウント部15は、入力された(x-2,y)、(x-1,y)、(x,y)、(x+1,y)、(x+2,y)の5画素の信号を用いて、5画素の中から2画素を選ぶ全ての組合わせのうち同一輝度となる組合わせが幾つあるかをカウントして出力する。詳しくは、先ず、入力された5画素の信号を2画素ずつ比較する全10通りの組合わせについて、差分演算回路24で差分の絶対値の演算をする。この10通り分の組合わせの差分の絶対値を、同一輝度判定回路25においてそれぞれ許容誤差X入力端子12から入力された許容誤差Xと比較して、許容誤差Xよりも小さい場合には同一輝度であると判断する。ここで、基本的には2つの画素が同一輝度値である場合にはその差分は0となるはずであるが、アナログ信号をAD変換してディジタル信号にした場合には量子化誤差が生じる可能性があるため、許容誤差Xを設定することで差分が一定範囲内の場合には同一輝度値であると判定する。このようにして、同一輝度判定回路25において全10通りの組合わせについて同一輝度値であるかを判定して、同一輝度値である場合には後段の加算器26に「1」を出力し、輝度値が異なる場合には後段の加算器26に「0」を出力し、加算器26ではこれらの出力を合計する。この加算器26の合計値は、同一輝度値となった組合わせの数であり、例えば、水平方向の5画素が全て同一輝度値である場合には合計値は10(最大値)となり、水平方向の5画素が全て異なる輝度値である場合には合計値は0(最小値)となる。この加算器26の合計値は、同一輝度値となった組合わせの数のカウント値として、後段の加算器19と方向別判別部21に出力する。
【0016】
同様に、垂直方向カウント部16では、入力された垂直方向の5画素の信号(x,y-2)、(x,y-1)、(x,y)、(x,y+1)、(x,y+2)を2画素ずつ比較する全10通りの組合わせについて同一輝度値となった組合わせの数をカウントして、そのカウント値を後段の加算器19と方向別判別部21に出力する。同じく、斜め0方向カウント部17では、入力された斜め0方向の5画素の信号(x-2,y-2)、(x-1,y-1)、(x,y)、(x+1,y+1)、(x+2,y+2)を2画素ずつ比較する全10通りの組合わせについて同一輝度値となった組合わせの数をカウントして、そのカウント値を後段の加算器19と方向別判別部21に出力し、斜め1方向カウント部18では、入力された斜め0方向の5画素の信号(x+2,y-2)、(x+1,y-1)、(x,y)、(x-1,y+1)、(x-2,y+2)を2画素ずつ比較する全10通りの組合わせについて同一輝度値となった組合わせの数をカウントして、そのカウント値を後段の加算器19と方向別判別部21に出力する。
【0017】
加算器19では、水平方向カウント部15、垂直方向カウント部16、斜め0方向カウント部17及び斜め1方向カウント部18から入力された各方向でのカウント値を加算することで全方向の合計カウント値を算出して、これを後段の合計値判別部20に出力する。ここで算出する合計カウント値は0〜40の値をとる。
【0018】
合計値判別部20には、前記加算器19からの合計カウント値と、合計値判別レベル入力端子13からの合計値判別レベルとが入力される。ここで、合計カウント値が合計値判別レベルよりも大きいか否かを判別して、大きい場合には後段のOR回路22に「1」を出力し、小さい場合には後段のOR回路22に「0」を出力する。
【0019】
方向別判別部21は、水平判別部27、垂直判別部28、斜め0判別部29、及び、斜め1判別部30とで構成されており、水平判別部27には水平方向カウント部15からのカウント値、垂直判別部28には垂直方向カウント部16からのカウント値、斜め0判別部29には斜め0方向カウント部17からのカウント値、斜め1判別部30には斜め1方向カウント部18からのカウント値がそれぞれ入力されると共に、4つの判別部に共通に、方向別判別レベル入力端子14からの方向別判別レベルが入力される。これらの水平判別部27、垂直判別部28、斜め0判別部29、及び、斜め1判別部30では、カウント値が方向別判別レベルよりも大きいか否かをそれぞれ判別して、大きい場合には後段のOR回路22に「1」を出力し、小さい場合には後段のOR回路22に「0」を出力する。
【0020】
OR回路22では、合計値判別部20からの1つの入力と、方向別判別部21からの4つの入力との計5つの入力について論理和をとって、これを識別結果として後段の境界検出部31に出力する。論理和をとった結果が「1」である場合にはその着目画素についてはテキスト画であると識別し、論理和をとった結果が「0」である場合にはその着目画素については自然画であると識別する。
【0021】
境界検出部31は、OR回路22から入力される1ビットの識別結果の信号を用いて、予め境界部分と判別するパターンを設定しておき、着目画素を中心とした5×5の領域における識別結果の配置がパターンと一致するか否かで、着目画素がテキスト画と自然画の境界部分を検出する。境界部分であると検出した場合には「1」を、境界部分でない場合には「0」をそれぞれ境界検出出力端子33から出力する。本発明はこの境界検出部31に特徴を有するものであり、以下、図面を用いて詳細に説明を行う。
【0022】
図2に示すのは、境界検出部31の詳細な構成を表したブロック図である。この図2において、OR回路22から入力される1ビットの識別結果の信号は、ラインメモリ34a〜34dによって順次1ラインずつ遅延されて5ライン分の信号が後段のレジスタ35に入力される。また、ラインメモリ34bの出力は遅延回路36にも入力される。レジスタ35では、5ライン分の信号を一時的に格納してこれを後段のパターン検出部37に出力する。
【0023】
パターン検出部37は、予め想定して設定したパターンの数だけ設けられており、本実施例の場合には24通りのパターンを想定して、これを検出するためにそれぞれのパターン毎にパターン1検出部37a、パターン2検出部37b、・・・、パターン24検出部37xを設けて検出を行っている。これらのパターン検出部37の出力はOR回路38に入力され、パターン1検出部37a、パターン2検出部37b、・・・、パターン24検出部37xからの入力の論理和をとって、これを境界検出出力として出力端子33から出力する。
【0024】
パターン検出部37のより詳細な構成を図3に基づいて説明するが、先ず、本実施例において想定しているパターンの種類について図4及び図5を用いて説明を行う。図4に示すのは、テキスト画と自然画の識別例を表した模式図であるが、この図4のように、テキスト画と自然画が混在する場合にはその境界が水平方向、垂直方向に区切られて長方形領域となっていることが多いため、この様な長方形領域の境界を検出可能とするために、図5に示す24通りの5画素×5画素の境界パターンを想定している。これらのパターンは必ず中心の着目画素が自然画と識別され、かつ、自然画とテキスト画が混在しているものである。これら24通りの境界パターンのそれぞれに対応させてパターン1検出部37a、パターン2検出部37b、・・・、パターン24検出部37xを設けているが、ここで1例として、パターン1の場合を検出するためのパターン1検出部37aの構成を図3に基づいて説明する。
【0025】
パターン検出部37におけるパターン検出方法は、それぞれのパターン毎にテキスト画部分の画素の合計値と自然画部分の画素の合計値を求めて、2つの合計値が共にそれぞれ設定された値となった場合に、境界パターンであると判別するものであり、図3は、パターン1の場合を検出するためのパターン1検出部37aを表している。図3に示すように、パターン1の場合には、テキスト画部分に対応する16画素を加算器39において加算し、自然画に対応する9画素を加算器40において加算する。そして、加算器39の出力は比較器41において合計値≧16−Aであるかを判別され、加算器40の出力は比較器42において合計値≦Bであるかを判別される。
【0026】
ここで、パターン1と全く同じ識別結果の分布をした入力があると、加算器39の出力は16、加算器40の出力は0となるため、このような完全一致の場合のみを考える場合には上記A、Bの値は共に0に設定すればよい。しかし、若干の相違があっても境界パターンとして検出したい場合には、上記A、Bの値を適宜設定することで、識別誤差を吸収することが可能となる。このようにして比較器41、42で比較を行って、それぞれ条件を満たす場合には「1」を、満たさない場合には「0」をそれぞれ後段のAND回路43に出力する。AND回路43では、比較器41及び42の出力が共に「1」である場合のみOR回路38に「1」を出力し、それ以外の場合には「0」をOR回路38に出力する。
【0027】
図3は、パターン1の場合を検出するためのパターン1検出部37aであったが、同様に、図5に示すパターン2〜パターン24を検出するためのパターン2検出部37b〜パターン24検出部37xのそれぞれにおいても境界パターンの検出が同時に行われて、これらの検出結果もOR回路38に出力される。
【0028】
次に、このような構成における本発明の作用を図面に基づいて説明する。
入力された映像信号は、映像信号遅延処理部11において、図示しない1ライン遅延回路と1ドット遅延回路を組合わせて多段階に遅延され、図8に示す4方向の各画素の信号として、それぞれの方向毎に水平方向カウント部15、垂直方向カウント部16、斜め0方向カウント部17及び斜め1方向カウント部18に入力される。これらの水平方向カウント部15、垂直方向カウント部16、斜め0方向カウント部17及び斜め1方向カウント部18では、各方向でそれぞれ5画素の信号を2画素ずつ比較する全10通りの組合わせについて、差分演算回路24で差分の絶対値を演算した後に、同一輝度判定回路25において許容誤差Xと比較して、許容誤差Xよりも小さい場合には同一輝度であると判断し、同一輝度であった組合わせの数をそれぞれカウントする。
【0029】
このようにして各方向別にカウントしたカウント値は、加算器19を介して加算することで合計カウント値として、合計値判別部20に入力されるとともに、各方向別のカウント値それぞれが、方向別判別部21の水平判別部27、垂直判別部28、斜め0判別部29、又は、斜め1判別部30に入力される。合計値判別部20では、入力された合計カウント値が予め設定された合計値判別レベル(例えば、20)よりも大きいか否かを判別し、方向別判別部21の水平判別部27、垂直判別部28、斜め0判別部29、及び、斜め1判別部30では、各方向でのカウント値が予め設定された方向別判別レベル(例えば、7)よりも大きいか否かを判別する。ここでの合計値判別レベルと方向別判別レベルとは、適宜変更することが可能なものである。
【0030】
合計値判別部20での判別結果と、方向別判別部21の水平判別部27、垂直判別部28、斜め0判別部29、及び、斜め1判別部30の4つの判別結果は、共にOR回路22に入力され、OR回路22において論理和をとった結果が「1」である場合はテキスト画、「0」である場合には自然画であると識別して識別結果出力端子23から出力する。つまり、合計値判別レベル=20、方向別判別レベル=7とすると、テキスト画と識別されるためのカウント値の条件は以下のようになる。
全方向のカウント値の合計≧20 or ある一方向のカウント値≧7
【0031】
OR回路22の出力は、画素毎にテキスト画か自然画かを識別した結果として境界検出部31に入力される。境界検出部31では、図2に示すラインメモリ34a〜34d、及び、レジスタ35によって生成した5画素×5画素分の識別結果をパターン1検出部37a〜パターン24検出部37xに出力する。これらパターン1検出部37a〜パターン24検出部37xにおいて、入力された5画素×5画素分の識別結果が図5に示した24通りの境界パターンの何れかと一致するかを検出して、何れかに一致した場合には、着目画素が境界であることを検出した結果として「1」がOR回路38から出力される。何れにも一致しなかった場合には「0」が出力される。
【0032】
このようにして、着目画素がテキスト画と自然画の境界部分にあるか否かを表した境界検出出力が出力端子33から出力されるが、これと同時に、遅延回路36においてタイミングを調整された着目画素がテキスト画か自然画かを識別した結果である識別結果出力が出力端子32から出力され、これらの信号は輪郭補正等の画像処理に用いられる。例えば、テキスト画と識別された画素には輪郭補正をせずに自然画と識別された画素においてのみ輪郭補正を施す場合に、テキスト画との境界部分にある自然画に対して輪郭補正を行うと、テキスト画の影響で不自然な輪郭補正がなされてしまうという従来の問題点があったが、本発明による境界検出出力の結果を同時に用いることにより、不自然な輪郭補正となってしまう境界を検出してこの部分には輪郭補正を行わないといった処理を行うことが可能となる。
【実施例2】
【0033】
前記実施例1においては、テキスト画と自然画が混在する場合にはその境界が水平方向、垂直方向に区切られて長方形領域となっていることが多いため、この様な長方形領域の境界を検出可能とするために、図5に示す24通りの5画素×5画素の境界パターンを想定していたが、本発明はこれに限られるものではない。
【0034】
例えば、図6(a)に示すように、テキスト画と自然画の境界が斜め方向に区切られている場合も考えられるが、実施例1では境界が水平方向、垂直方向に区切られているものしか想定していないため、実施例1におけるパターン検出部37では、図6(a)に示すような場合の境界を検出することができない。
【0035】
そこで、図2に示す境界検出部31におけるパターン検出部37に、斜め方向の境界を検出するための検出部を追加する。具体的には、水平方向、垂直方向に区切られた24通りの境界パターンを検出するためのパターン1検出部37a〜パターン24検出部37xに加えて、図6(b)に示すような斜め方向に区切られた48通りの境界パターンを検出するためのパターン検出部を追加する。このような構成とすることで、境界が水平方向、垂直方向に区切られている場合のみならず、斜め方向に区切られている場合の境界も検出できるため、斜めの境界部分においても輪郭補正をかけずに自然な映像とすることが出来る。
【実施例3】
【0036】
前記実施例では、パターン検出部37で境界パターンを検出した場合にはOR回路38の出力が「1」となるため、これを用いることで後段の輪郭補正処理回路において境界部分には輪郭補正を行わないという処理を行うことが可能となっていた。しかし、この様に一律に輪郭補正を行わないとすると、輪郭補正を行ったとしてもテキスト画の影響が小さいような境界パターンにおいても輪郭補正が行われないこととなる。
例えば、図5に示す境界パターン1と境界パターン7とを比較すると、共にテキスト画と自然画の境界の角にあたるパターンであるが、パターン1では着目画素が境界に接しているのに対して、パターン7は着目画素と境界との間に1画素隔たりがある。通常、輪郭補正を行う場合、着目画素に近い画素ほど係数を大きくしているため、これらのパターンに共に輪郭補正を行った場合のテキスト画の影響量には差が存在する。
【0037】
そこで、図2のように全てのパターン検出部37の出力について論理和をとるのではなく、テキスト画の影響量の差に応じて異なる検出信号を出力するようにしてもよい。例えば、図5に示す24通りの境界パターンのうち、外側に面した境界パターン(パターン1〜6、10、11、14、15、19〜24)について検出を行って論理和をとるとともに、内側に面した境界パターン(パターン7〜9、12、13、16〜18)についても検出を行って論理和をとる。このようにして、異なる検出信号を得るようにすることで、例えば、テキスト画の影響の大きい外側に面した境界パターンについては輪郭補正を行わず、テキスト画の影響の小さい内側に面した境界パターンについては通常よりもゲインを小さくして輪郭補正を行う、といった処理の切替えを行うことが可能となる。
【0038】
前記実施例では、水平方向カウント部15、垂直方向カウント部16、斜め0方向カウント部17及び斜め1方向カウント部18では、各方向でそれぞれ着目画素を中心とした5画素の信号を2画素ずつ比較する全10通りの組合わせについて、同一輝度となる組合わせの数をカウントするようにしたが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、各方向でそれぞれ着目画素を中心とした3画素の信号を2画素ずつ比較する全3通りの組合わせについて、同一輝度となる組合わせの数をカウントするようにしてもよいし、また、各方向でそれぞれ着目画素を中心とした7画素の信号を2画素ずつ比較する全21通りの組合わせについて、同一輝度となる組合わせの数をカウントするようにしてもよい。
【0039】
前記実施例では、境界パターン検出のために着目画素を中心として5画素×5画素分の識別結果の分布を用いているが、この5画素×5画素の範囲としたのは、図示しない後段の回路において輪郭補正を行う場合に、輪郭成分抽出のために用いられる範囲が5画素×5画素の範囲であると想定していたためである。輪郭成分抽出の範囲と境界であると検出する範囲を合わせることによって初めて境界部分が自然な画像となる、当然この画素範囲は輪郭補正との関係で適宜変更可能なものである。
【0040】
また、必ずしも正方形領域とする必要はなく、輪郭補正処理時に用いる水平方向の画素範囲と垂直方向の画素範囲が異なることも想定されるので、一般化すると、2m個(mは1以上の整数)のラインメモリを用いて(2m+1)ライン分の信号をレジスタに一時格納し、レジスタから(2m+1)画素×(2k+1)画素(kは1以上の整数)をパターン検出部37に出力してパターン検出するようにしてもよい。
【0041】
この条件によれば、最小の境界検出の大きさは3画素×3画素となるが、勿論これよりも小さい範囲を対象として境界検出を行うことも可能である。また、上記条件では着目画素が必ず中心にくるようになっているが、必ずしもこれに限定されるものではない。ただし、境界部分の検出ミスや誤検出をなくし、適切な輪郭補正を行うためには、3画素×3画素以上の範囲で、かつ、着目画素が中心にくる範囲選択が好ましいと言える。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明による画像識別回路の構成を示したブロック図である。
【図2】境界検出部31の詳細な構成を表したブロック図である。
【図3】パターン検出部37の詳細な構成を表したブロック図である。
【図4】テキスト画と自然画が混在している場合の識別結果の一例を表した模式図である。
【図5】境界と判別するための境界パターンを表した模式図である。
【図6】(a)は、テキスト画と自然画が混在している場合の識別結果の一例を表した模式図、(b)は、境界と判別するための境界パターンを表した模式図である。
【図7】従来の画像識別回路の構成を示したブロック図である。
【図8】従来及び本発明の画像識別回路における各カウント部でカウントする方向を示した模式図である。
【符号の説明】
【0043】
11…映像信号遅延処理部、12…許容誤差X入力端子、13…合計値判別レベル入力端子、14…方向別判別レベル入力端子、15…水平方向カウント部、16…垂直方向カウント部、17…斜め0方向カウント部、18…斜め1方向カウント部、19…加算器、20…合計値判別部、21…方向別判別部、22…OR回路、23…識別結果出力端子、24…差分演算回路、25…同一輝度判定回路、26…加算器、27…水平判別部、28…垂直判別部、29…斜め0判別部、30…斜め1判別部、31…境界検出部、32…識別結果出力端子、33…境界検出出力端子、34…ラインメモリ、35…レジスタ、36…遅延回路、37…パターン検出回路、38…OR回路、39…加算器、40…加算器、41…比較器、42…比較器、43…AND回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力ディジタル映像信号の着目画素についてその着目画素がテキスト画であるか自然画であるかを識別する画像識別回路において、着目画素を中心とした複数画素を単位として前記識別結果の分布を、テキスト画と自然画の境界部分を検出するために予め設定した複数の境界パターンと照合して、着目画素が境界部分であるか否かを検出する境界検出部を設けたことを特徴とする画像識別回路。
【請求項2】
入力ディジタル映像信号の着目画素について、着目画素を中心とする(2n+1)画素(nは1以上の整数)で構成される複数方向の各方向別に、(2n+1)画素から2画素を選択する全(2n2+n)通りの組合わせについて同一輝度値である組合わせの数をカウントする方向別カウント部と、この方向別カウント部のカウント値を全方向分合計した合計カウント値から画像の種類を識別する合計値判別部と、それぞれの方向毎に方向別カウント部のカウント値から画像の種類を識別する方向別判別部とを具備してなる画像識別回路において、着目画素を中心とした複数画素を単位として前記識別結果の分布を、テキスト画と自然画の境界部分を検出するために予め設定した複数の境界パターンと照合して、着目画素が境界部分であるか否かを検出する境界検出部を設けたことを特徴とする画像識別回路。
【請求項3】
境界検出部は、識別結果の信号を順次1ラインずつ遅延させて連続する(2m+1)ライン(mは1以上の整数)分の信号を得るための2m個のラインメモリと、(2m+1)ライン分の信号を一時格納しておくレジスタと、レジスタから出力された着目画素を中心とした(2m+1)画素×(2k+1)画素(kは1以上の整数)分の識別結果の分布を予め設定した複数の境界パターンとそれぞれ照合するための複数のパターン検出部と、複数のパターン検出部の出力の論理和をとってこれを境界検出結果として出力するOR回路とからなることを特徴とする請求項1又は2記載の画像識別回路。
【請求項4】
各パターン検出部は、レジスタから出力された着目画素を中心とした(2m+1)画素×(2k+1)画素分の識別結果の分布について、境界パターンのテキスト画部分に対応する画素の合計値を演算する加算器と、境界パターンの自然画部分に対応する画素の合計値を演算する加算器と、前記テキスト画に対応した加算器の合計値を設定された条件と比較する比較器と、前記自然画に対応した加算器の合計値を設定された条件と比較する比較器と、これら2つの比較器の出力の論理積をとって出力するAND回路とからなることを特徴とする請求項3記載の画像識別回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−174499(P2007−174499A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−372167(P2005−372167)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)
【Fターム(参考)】